説明

農業用樹脂フィルム

【課題】優れた機械的強度と、優れた耐候性(耐光性)及び防塵性とを有し、長期間の屋外展張に耐え得る、農業用フィルムを提供する。
【解決手段】基体樹脂フィルムの少なくとも片面に、アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体(A)とフッ化ビニリデン系樹脂(B)の2成分を主成分とする組成物の被膜が形成されてなり、該被膜と該基体樹脂フィルムとの間に、アクリル系単量体と、紫外線吸収性単量体と、シクロアルキル基を有するアクリル系単量体と、紫外線安定性単量体とを重合させてなる重合体(C)を含有する接着性アクリル樹脂層を設けた農業用樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルムに関するものである。更に詳しくは優れた機械的強度と、優れた耐候性(耐光性)及び防塵性とを有し、長期間の屋外展張に耐え得る、農業用フィル
ムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、高い結晶性、高い融点を示し、耐熱性、耐薬品性を示し、更に強度、弾性率等の機械的性質においても優れた性質を示すことが知られているが、このフィルムは紫外線を吸収する性質を有し、特に320nm以下の紫外線を強く吸収する性質があり、このフィルムを屋外に長期間展張すると、その機械的性質が著しく低下するという欠点がある。
【0003】
上記欠点を排除する方法として、下記のような、農業用のポリエチレンテレフタレートフィルムの表面を、特定の樹脂や塗料で被覆する方法が提案されている。
(i)紫外線吸収剤をフィルム表面に緊密に結合する方法(特公昭46−24160号公報)
(ii)紫外線吸収剤が配合されてなる、アクリル系樹脂の被膜を形成する方法(実公昭62−37729号公報)
(iii)紫外線吸収剤が配合されてなる、特定のアクリル系樹脂の被膜を形成する方法(特開昭60−178049号公報)
【0004】
しかし(i)では、紫外線吸収剤を均一な濃度で、フィルム表面に強固に結合することは難しく、長期間の屋外展張、屋外曝露に充分に耐えるだけの耐候性を付与することは、困難であり、(ii)では、優れた耐候性を有し、長期間屋外に曝露しても、機械的強度、透明性等の低下は小さいが、被膜の伸縮性耐衝撃性が劣るものだと、フィルムをハウス(温室)やトンネルに展張する際、展張の方法、ハウスやトンネルの構造、設置されている場所・方向、展張時の気象条件等によって、フィルムが折り曲げられたり、風であおられたりした場合、被膜にクラックが発生し、フィルムのみかけ上の白化の原因となり、又、被膜が剥離して、実用的に充分なものではなかった。これらの改良として(iii)が提案されたが、長期間の屋外展張、屋外曝露に充分に耐えるだけの耐候性を付与するには充分なものではなかった。
【0005】
一方、二軸方向にそれぞれ2.0〜5.0倍に延伸された厚さ0.01〜0.3mmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体〔A〕とフッ化ビニリデン系樹脂〔B〕の2成分を主成分とする組成物の被膜が形成されてなり、ポリエチレンテレフタレートフィルムと上述組成物の被膜との間に、紫外線吸収剤を含有する接着性アクリル樹脂層を設けた農業用ポリエチレンテレフタレートフィルムが提案された(特許第3203929号)。
【0006】
特許第3203929号で提案された農業用ポリエチレンテレフタレートフィルムは、表面にフッ素系樹脂被膜が形成されていることから、優れた耐候性(耐光性)を有するものの、紫外線吸収剤を含有する接着性アクリル樹脂層の上に、含フッ素アクリル系重合体とフッ化ビニリデン系樹脂を溶剤に溶解させて塗工液を塗布するため、接着性アクリル樹脂層に含まれる紫外線吸収剤の一部が塗工時にフッ素系樹脂被膜の側に取込まれる。その結果、紫外線吸収剤は一般にはフッ化ビニリデン系樹脂との相溶性が低いために、紫外線吸収剤がフッ素系樹脂被膜から外部に流失してしまい、長期間の耐候性が低下してしまうという問題があることを本発明者等は知見した。
【0007】
一方、ポリオレフィン系樹脂等の農業用フィルムにおいても、長期間の耐候性を向上させることは強く望まれている。しかしながら、特にポリオレフィン系樹脂では表面の疎水性が高いため、フッ素系樹脂被膜を形成することは困難であり、表面にフッ素系樹脂被膜が形成された耐候性に優れた農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは未だ得られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、かかる状況に鑑み、優れた耐候性(耐光性)とを有し、長期間の屋外展張に耐え得る農業用フィルムを提供すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかして、本発明の要旨とするところは、
(1)基体樹脂フィルムの少なくとも片面に、アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体(A)とフッ化ビニリデン系樹脂(B)の2成分を主成分とする組成物の被膜が形成されてなり、該被膜と該基体樹脂フィルムとの間に、アクリル系単量体と、紫外線吸収性単量体と、シクロアルキル基を有するアクリル系単量体と、紫外線安定性単量体とを重合させてなる重合体(C)を含有する接着性アクリル樹脂層を設けた農業用樹脂フィルム、
(2)該基体樹脂フィルムが、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、セロハンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムの単体あるいは複合体であることを特徴とする(1)に記載の農業用樹脂フィルム、
(3)該紫外線吸収性単量体が、下記式(1)で表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収基を有するアクリル系単量体であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の農業用樹脂フィルム、
一般式(1)
【化5】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜6の直鎖状または枝分れ鎖状のアルキレン基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す)
(4)該シクロアルキル基を有するアクリル系単量体が、下記式(2)で表される単量体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の農業用樹脂フィルム、
一般式(2)
【化6】

(式中、R4は水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基を表し、Zは置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す)
(5)該紫外線安定性単量体が、一般式(3)で表される紫外線安定性単量体および/または一般式(4)で表される紫外線安定性単量体であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の農業用樹脂フィルム。
一般式(3)
【化7】

(式中、R5は水素原子またはシアノ基を表し、R6、R7はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基を表し、R8は水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す)
一般式(4)
【化8】

(式中、R5は水素原子またはシアノ基を表し、R6、R7はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す)
【0010】
本発明においては、少なくともフィルムを展張した際にハウス外側に相当する側の基体樹脂フィルム表面にフッ素系樹脂被膜と接着性アクリル層を形成させる。
【0011】
基体樹脂フィルム
本発明に使用する基体樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、セロハンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムの単体あるいは複合体が挙げられる。中でも、農業用フィルムに用いられる公知のポリエチレンテレフタレートフィルム、及びポリオレフィン系樹脂に添加剤を混合したポリオレフィン系樹脂フィルムを好適に用いることができる。
【0012】
本発明で使用されるポリエチレンテレフタレートとは、共重合されていないポリエチレンテレフタレート・ホモポリマーのみならず、繰り返し単位の数の85%以上がポリエチレンテレフタレート単位よりなり、残りが他の成分であるような共重合ポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレンテレフタレート85重量%以上であり、残りの15重量%以下が、他の重合体であるポリマーブレンド物を含む。ブレンドできる他の重合体としては、ポリアミド類、ポリオレフィン類、他種のポリエステル類があげられる。このポリエチレンテレフタレートには、必要に応じ滑剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤等を配合することができる。
【0013】
本発明で使用するポリエチレンテレフタレートフィルムは、二軸に延伸されたものである。二軸延伸フィルムを製造する方法は、特に限定されるものではなく、例えば逐次に、又は同時に縦横二軸に延伸する、公知の方法を採用すればよい。延伸倍率は二軸方向に、各々2.0〜5.0倍、特に2.5〜4.0倍延伸されたものが好ましい。延伸倍率が2.0倍未満であると、製品の強度が充分なものとならないので好ましくなく、5.0倍を越えたものでは、製品の強度は充分なものとなるが、製造作業が困難となるので、好ましくない。本発明に係わる農業用ポリエチレンテレフタレートは、厚みが0.01〜0.3mmのものがよい。厚みが0.01mm以下であると製品の強度が充分なものとならないので好ましくなく、0.3mm以上ではフィルムが硬くなり、取り扱い難くなるので、好ましくない。
【0014】
本発明で使用されるポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系の単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体および酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性や耐候性および価格の点から農業用フィルムとして好ましい。
【0015】
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂の一成分としてメタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を使用することができる。
【0016】
これは、通常、メタロセンポリエチレンといわれているものであり、エチレンとブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン等炭素原子数4〜10のα−オレフィンとの共重合体であり、この共重合体は、たとえば(A法)特開昭58−19309号等に記載されている方法や、(B法)特開平6−9724号等に記載されている方法により得られる。
【0017】
本発明においてポリオレフィン系樹脂の一成分として使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、好ましくは以下の物性を示すものである。
メルトフローレート(MFR)
JIS−K7210により測定されたMFRが0.01〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分の値を示すものである。該MFRがこの範囲より大きいと成形時にフィルムが蛇行し安定しにくい。また、該MFRがこの範囲より小さすぎると成形時の樹脂圧力が増大し、成形機に負荷がかかるため、生産量を減少させて圧力の増大を抑制しなければならず、実用性に乏しい。
密度
JIS−K7112により測定された密度が0.880〜0.930g/cm 、好ましくは0.880〜0.920g/cm の値を示すものである。該密度がこの範囲より大きいと透明性が悪化しやすい。また、密度がこの範囲より小さいと、フィルム表面のべたつきによりブロッキングが生じやすく実用性に乏しくなる。
分子量分布
ゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.0の値を示すものである。該分子量分布がこの範囲より大きいと機械的強度が低下し好ましくない。該分子量分布がこの範囲より小さいと成形時にフィルムが蛇行し安定しにくい。
【0018】
本発明における基体樹脂フィルムには、ハウス外側又は内側に相当する面に形成される塗膜(防曇塗膜等)の密着性を損なわない範囲で、必要に応じて、可塑剤、防曇剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、熱安定剤、顔料、染料等の着色剤、防霧剤、帯電防止剤・無機微粒子等を配合することができる。
【0019】
可塑剤としては、例えば、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、マレイン酸誘導体、クエン酸誘導体、イタコン酸誘導体、オレイン酸誘導体、リシノール酸誘導体、その他トリクレジルホスフェート、エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂系可塑剤等が挙げられる。
【0020】
光安定剤としては、農業用に通常配合される種々の化合物を使用することができる。具体的には、特公昭62−59745号公報第5欄第37行〜第16欄第18行目、特開平2−30529号明細書第20頁第15行〜第38頁第3行目に記載されているヒンダードアミン系化合物である。
【0021】
本発明で使用可能な市販のヒンダードアミン系化合物を例示すれば、TINUVIN770、TINUVIN780、TINUVIN144、TINUVIN622LD、CHIMASSORB119FL、CHIMASSORB944(以上、チバガイギー社製)、サノールLS−765(三共(株)製)、MARK LA−63、MARK LA−68、MARK LA−62、MARK LA−67、MARK LA−57(以上、アデカ・アーガス社製)等が挙げられる。酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、ジラウリルチオジプロピオネート等を挙げることができる。
【0022】
滑剤ないし熱安定剤としては、例えばポリエチレンワックス、流動パラフィン、ビスアマイド、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、脂肪族アルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、有機リン酸金属塩、有機ホスファイト化合物、フェノール類、β−ジケトン化合物等が挙げられる。
【0023】
着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0024】
防霧剤としては、フッ素系界面活性剤が挙げられ、具体的には、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。
【0025】
無機微粒子としては、保温剤として有効なMg、Ca、Zn、Al、SiおよびLiの少なくとも1つの原子を含有する無機酸化物、無機水酸化物等が挙げられる。具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸チタン、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カリウム、アルミノケイ酸カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、クレー、ハイドロタルサイト類化合物、リチウム・アルミニウム複合水酸化物、リチウム・アルミニウム・マグネシウム複合炭酸塩化合物、リチウム・アルミニウム・マグネシウム複合ケイ酸塩化合物、アルミニウム・マグネシウム・ケイ素複合水酸化物、アルミニウム・マグネシウム・ケイ素複合炭酸塩化合物、アルミニウム・マグネシウム・ケイ素複合硫酸塩化合物、チャルコアルマイト化合物等の無機微粒子が挙げられる。これらの中でも、樹脂中の分散性、透明性、及び保温性の点からハイドロタルサイト類化合物が好ましい。
【0026】
これら無機微粒子は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。その平均粒子径は、0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。無機微粒子の平均粒子径が上記範囲より小さいと、樹脂中での分散性が劣り、ブツ(二次凝集物)が生成してフィルム外観が悪化すると共に、樹脂との混練時に粉立ちが激しく、ハンドリング性が劣り実用性に乏しい。逆に、無機微粒子の平均粒子径が上記範囲より大きいと、透明性で劣ったり、押出し機のブレーカースクリーン部まで目詰まりを生じ生産性が低下するので好ましくない。
【0027】
かかる保温剤の配合量は、特に規定されるものではないが、樹脂組成中の1〜20重量%が好ましい。無機微粒子の含有量が、上記範囲より小さいと保温性の点で不十分であり、上記範囲より大きいと透明性が悪化すると共に機械強度が低下するので好ましくない。
【0028】
防曇剤及び界面活性剤としては、ソルビタン脂肪族エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪族エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、フルオロアルキル基やフルオロアルケニル基を含有するフッ素系界面活性剤等が挙げられる。これら防曇剤(界面活性剤)は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、通常1.0〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0029】
以上の各種添加剤は、それぞれ1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。上記各種添加剤の配合量は、フィルムの性能、特に外面塗膜、防曇塗膜の密着性を悪化させない範囲で選ぶことができる。
【0030】
基体樹脂に、各種添加剤を配合するには、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、スーパーミキサーその他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー成形法等の従来から知られている方法によればよい。
【0031】
本発明の基体樹脂フィルムは単層でもよいが、柔軟性及び強度などの点から3層以上の積層フィルムとしてもよく、積層フィルムの方が好ましい。
【0032】
特に本発明において、基体樹脂フィルムとしてポリオレフィン系樹脂フィルムを使用する場合は、3層以上の積層フィルムが好適に使用され、ハウス展張時に外側となる外層を、メタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を樹脂成分中45重量%以上100重量%以下、好ましくは50重量%以上99重量%以下含有する組成物で構成することが、本発明の被膜との相性の点で好ましい。更に好ましくは、ハウス内層も同様に、メタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を樹脂成分中45重量%以上100重量%以下、好ましくは50重量%以上99重量%以下含有する組成物で構成し、それら外層及び内層の中に位置する中間層を、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が、樹脂成分中50重量%以上100重量%以下である樹脂組成物で構成することが好ましい。
【0033】
本発明における基体樹脂フィルムは、透明でも、梨地でも、半梨地でもよく、その用途は農業用ハウス(温室)、トンネル等の被覆用に使用できるほか、マルチング用、袋掛用等にも使用できる。
【0034】
また、フィルム厚みについては強度やコストの点で0.03〜0.3mmの範囲のものが好ましく、0.05〜0.2mmのものがより好ましい。
【0035】
本発明においては、アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体(A)とフッ化ビニリデン系樹脂(B)の2成分を主成分とする組成物の被膜が基体樹脂フィルムの少なくとも片面に形成されている。これにより、長期間の耐候性が付与される上、防塵性も向上するという効果がある。
【0036】
含フッ素アクリル系重合体〔A〕
アクリル系単量体とは、アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル類であって、パーフルオロアルキル基のようなフッ素含有基を有しないものをいう。
【0037】
アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のようなアクリル酸のC〜C22のアルキルエステル類:メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のようなメタクリル酸のC〜C22のアルキルエステル類等があげられる。
【0038】
上記のアクリル系単量体は、各々単独で、もしくは混合物として使用することができる。また、これらアクリル系単量体は、共重合可能な他の単量体と共に使用してもよい。このような他の単量体としては、例えば、分子内に1個もしくは2個以上のカルボキシル基を含むα,β−不飽和カルボン酸化合物があり、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アコニット酸、クロトン酸等があげられる。又、例えばスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ブトキシアクリルアミド、n−ブトキシメタクリルアミド等も使用することができる。
【0039】
パーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体
パーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体とは、パーフルオロアルキル基を有するアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステル類であって、具体的には、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルメタクリレート、2−パーフルオロノニルエチルアクリレート、2−パーフルオロノニルエチルメタクリレート等が挙げられる。中でも特に、パーフルオロ基のフッ素の数が5以上のものが好ましい。これらは、各々単独で用いても、2種以上の併用であってもよい。
【0040】
アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合割合は、通常前者が20〜99重量%の範囲であることが好ましい。アクリル系単量体がこの範囲より少ないと、形成被膜の基材との密着性が充分でなく、又この範囲より多いと、含フッ素アクリル系重合体としての機能を発揮しない。
【0041】
アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体を所定量配合して有機溶媒とともに重合缶に仕込み、重合開始剤、必要に応じて分子量調節剤を加えて、攪拌しつつ加熱し、重合する。重合は、通常公知の方法、例えば懸濁重合法、溶液重合法などが採用される。この際、使用しうる重合開始剤としては、α,α−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のラジカル生成触媒があげられ、分子量調節剤としてはブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、β−メルカプトエタノール等があげられる。
【0042】
重合に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジ−n−アミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン等があり、これらは1種もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0043】
フッ化ビニリデン系樹脂〔B〕
フッ化ビニリデン系樹脂〔B〕とは、フッ化ビニリデンの単独重合体、もしくはフッ化ビニリデンと他のフッ素系不飽和単量体及び/もしくはフッ素を含有しない共重合可能な単量体との共重合体、さらにこれら重合体の一部を改質もしくは変性した重合体も包含される。これらフッ化ビニリデン系樹脂は1種もしくは2種以上で用いることができる。又他のフッ素を含有した樹脂、例えば、4フッ化エチレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロエチレン等と混合して用いても構わない。
【0044】
被膜含フッ素アクリル系重合体〔A〕とフッ化ビニリデン系樹脂〔B〕の配合量は、〔A〕5〜80重量部、〔B〕20〜95重量部である。樹脂〔B〕に対する重合体〔A〕の割合が少なすぎると、形成被膜の透明性が充分でない。又、樹脂〔B〕に対する重合体〔A〕の割合が多すぎると、耐候性への効果が充分でなく好ましくない。
【0045】
この被膜組成物には、これら成分の外に必要に応じて紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、防藻剤、防カビ剤等を配合することができ、有機溶媒に分散及び/又は溶解して用いることができる。上記の被膜組成物により被膜を形成するには、成形品の形状に応じて公知の各種方法が適用される。例えば、溶液又は分散状態で被膜を形成する場合は、ドクターブレードコート法、グラビアロールコート法、エヤナイフコート法、リバースロールコート法、デイプコート法、カーテンロールコート法、スプレーコート法、ロッドコート法等の塗布方法が用いられる。
【0046】
溶液又は分散状態とするための有機溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素としてヘプタン、シクロヘキサン等;芳香族炭化水素としてベンゼン、トルエン、キシレン等;アルコール類としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ポリオキシエチレングリコール等;ハロゲン化炭化水素としてクロロホルム、四塩化炭化水素、クロルベンゼン等;ケトン類としてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等;エステル類としてメチルアセテート、アリルアセテート、エチルステアレート等;アミン類としてはトリメチルアミン、ジフェニルアミン、ヘキサメチレンジアミン等;その他ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジエチレンジチオグリコール、ジアセトンアルコール、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキサイド等があり、これらは単独もしくは2種以上の併用で使うことができる。又、溶融状態で被膜を形成する場合は、溶融押出しラミネート法等が用いられる。
【0047】
本発明において、被膜の厚みは0.05〜20g/m(固形分)の範囲とするのがよい。この範囲より薄いと耐候性が不充分であり、この範囲より厚いと被膜量が多すぎて経済的に不利となりフィルム自体の機械的強度が低下することがある。通常は0.2〜15g/m(固形分)の範囲が好ましい。
【0048】
接着性アクリル樹脂層
本発明においては、アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体(A)とフッ化ビニリデン系樹脂(B)の2成分を主成分とする組成物の被膜と基体樹脂フィルムとの間に、アクリル系単量体と、紫外線吸収性単量体と、シクロアルキル基を有するアクリル系単量体と、紫外線安定性単量体とを重合させてなる重合体(C)を含有する接着性アクリル樹脂層を設けることに特徴の一つがある。これにより、基体樹脂フィルムとフッ素系樹脂被膜の接着性を高めることができる上、接着性アクリル樹脂に含まれる紫外線吸収性単量体と紫外線安定性単量体により、紫外線が基体樹脂フィルムに到達する前にこれを遮断することができより一層耐候性(耐光性)を向上させることが可能である。特に、本発明においては、紫外線吸収剤が重合体(C)の単量体成分として取込まれているため、フッ素系樹脂被膜の形成時に紫外線吸収剤がフッ素系樹脂被膜に移行するという問題がないため、長期間安定した耐候性を実現することができる。
【0049】
紫外線吸収性単量体は、前記一般式(1)で表される紫外線吸収性単量体(以下、紫外線吸収性単量体(1)と記す)、即ち、式中、Rで示される置換基が水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基で構成され、Rで示される置換基が炭素数1〜6の直鎖状または枝分れ鎖状のアルキレン基で構成され、Rで示される置換基が水素原子またはメチル基で構成され、Xで示される置換基が水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で構成されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収基を有するアクリル単量体が好適に使用される。
【0050】
上記の紫外線吸収性単量体(1)としては、具体的には、例えば、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収基を有するアクリル単量体が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら紫外線吸収性単量体(1)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0051】
該ベンゾトリアゾール系紫外線吸収基を有するアクリル単量体の使用量は、特に限定されないが、全単量体中に占める比率で0.1〜90重量%とすることが好ましく、より好ましくは、下限値として、5重量%以上、上限値としては、70重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0052】
本発明において、シクロアルキル基を有するアクリル系単量体として、前記一般式(2)で表される不飽和単量体、即ち、式中、Rで示される置換基が水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基で構成され、Zで示される置換基が、置換基を有していてもよいシクロアルキル基で構成される化合物が好適に使用される。式中Zで示される置換基におけるシクロアルキル基とは、具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の単環式飽和炭化水素残基である。そして、該シクロアルキル基は、炭素数1〜7のアルキル基を置換基として有していてもよい。該置換基とは、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等である。
【0053】
シクロアルキル基を有するアクリル系単量体としては、具体的には、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらは、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0054】
シクロアルキル基を有するアクリル系単量体の含有率は、特に限定されるものではないが、全単量体に対する比率で2重量%〜95重量%の範囲が好ましく、更には5重量%〜85重量%の範囲が好ましい。
【0055】
本発明において、紫外性安定性単量体としては、前記一般式(3)で表される紫外線安定性単量体(以下、紫外線安定性単量体(3)と記す)が好適に使用される。式中、Rで示される置換基が水素原子またはシアノ基で構成され、R、Rで示される置換基がそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基で構成され、Rで示される置換基が水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基で構成され、Yで示される置換基が酸素原子またはイミノ基で構成されるピペリジン類である。上記R、Rで示される置換基とは、具体的には、例えば、水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rで示される置換基とは、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の、直鎖状または枝分れ鎖状の炭化水素残基である。
【0056】
上記の紫外線安定性単量体(3)としては、具体的には、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6− ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6− ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。紫外線安定性単量体(3)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0057】
また、本発明における紫外線安定性単量体として、前記一般式(4)で表される紫外線安定性単量体(以下、紫外線安定性単量体(4)と記す)が好適に使用される。式中、R で示される置換基が水素原子またはシアノ基で構成され、R 、R で示される置換基がそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基で構成され、Yで示される置換基が酸素原子またはイミノ基で構成されるピペリジン類である。上記R 、R で示される置換基とは、具体的には、例えば、水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0058】
上記の紫外線安定性単量体(4)としては、具体的には、例えば、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。紫外線安定性単量体(4)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0059】
該紫外線安定性単量体(3)及び/または紫外線安定性単量体(4)の合計量は、全単量体において、0.1重量%〜15重量%の範囲が好ましく、0.5重量%〜10重量%の範囲が更に好ましい。
【0060】
また、本発明における重合体(C)には、上記単量体以外のアクリル系単量体が含まれる。
【0061】
上記アクリル系単量体としては、具体的には、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製;商品名 プラクセルFM)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3− クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルリン酸等の酸性リン酸エステル系単量体等の、酸性官能基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N’− ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、特に限定されるものではない。アクリル系単量体は、必要に応じて一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。メチルメタクリレートは、全単量体において、0〜5重量%の範囲であると、接着性アクリル樹脂層が可撓性に優れ、また接着性も優れるので好ましい。
【0062】
本発明における重合体Cには上記4成分以外の単量体も含有させることができる。このような単量体としては、例えば、ダイアセトンアクリルアミド、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、4 −ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0063】
上記アクリル系単量体と、紫外線吸収性単量体と、シクロアルキル基を有するアクリル系単量体と、紫外線安定性単量体の重合方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合方法、たとえば、溶液重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合方法等により重合することができる。
【0064】
重合体(C)は、硬化させてもよく、重合体(C)自身の単量体として、熱硬化性や、紫外線・電子線硬化性の官能基を有する単量体を使用して硬化させてもよいし、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、アミノプラスト樹脂などの硬化剤を添加してもよい。
【0065】
本発明に使用される重合体(C)を溶解する有機溶剤としては、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジオキサン,テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル,セロソルブアセテート等のエステル類、トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素、テトラリン、ミネラルスピリッツやこれらの混合溶媒が挙げられ、上記溶剤は重合反応に用いた溶液をそのまま使用することもできる。
【0066】
本発明においては、アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体(A)とフッ化ビニリデン系樹脂(B)の2成分を主成分とする組成物の被膜と基体樹脂フィルムとの間に、上記重合体(C)を含有する接着性アクリル樹脂層が設けられる。基体樹脂フィルムの表面に重合生成物(C)よりなる被膜を形成するには、重合体(C)の溶液をドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。塗布後の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常50〜250℃、好ましくは70〜200℃の温度範囲で乾燥すればよい。加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法等適宜方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが有利である。
【0067】
被膜の厚さは、好ましくは、0.5μm以上〜10μm以下、好ましくは1μm以上〜5μm未満の範囲から選ぶことができる。
【0068】
また、本発明においては、上記基体樹脂フィルムの展張時ハウス内面に、バインダー樹脂と無機質コロイドゾルを主成分とする防曇被膜を形成することができる。バインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられるが、好ましくはガラス転移温度が35〜80℃の範囲にあるアクリル系樹脂を用いることが好ましく、更に、疎水性であることが好ましい。その他、親水性のアクリル系樹脂を用いることも可能である。該疎水性アクリル系樹脂のガラス転移温度が低すぎる場合、無機質コロイド粒子が数次凝集して不均一な分散状態をとりやすく、また無機質コロイド粒子の塗布基材に対する固着が十分でないため、時間の経過とともに無機質コロイド粒子が基材表面から脱落・流失して防曇性能を損なうことがあり、また高すぎる場合、透明性のある均一な被膜を得るのが困難になり、実用性に乏しい。
【0069】
疎水性アクリル系樹脂以外のバインダー成分として、たとえばポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系の水分散性ウレタン樹脂などをアクリル系樹脂の含有量未満の量範囲で、混合する態様も、防曇性の初期濡れと持続性が高いため好ましい。
【0070】
形成される被膜の疎水性アクリル系樹脂として好ましく用いられる1つの例としては、少なくとも合計60重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0〜40重量%の共重合しうるα、β−エチレン性不飽和単量体とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重合体または共重合体を挙げることができる。
【0071】
疎水性アクリル系樹脂の製造に用いるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸デシルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸−n−プロピルエステル、メタクリル酸イソプロピルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸デシルエステル等が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1〜20個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜20個のメタクリル酸アルキルエステルが使用される。
【0072】
アルケニルベンゼン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0073】
本発明で用いることができる疎水性アクリル系樹脂は、上記のようなアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル類、又は、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物を、少なくとも計60重量%を含有することが好ましい。60重量%に満たないときは、形成被膜の耐水性が十分でないために、防曇持続性能を発揮しえないことがあり好ましくない。
【0074】
疎水性アクリル系樹脂を得るために用いるα、β−エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β−エチレン性不飽和スルホン酸類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸;α、β−エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよく、0〜40重量%の範囲で使用するのが好ましい。使用量が多すぎると、防曇性能を低下させることがあり、好ましくない。
【0075】
疎水性アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によって得ることができる。乳化剤の存在下での重合方法の場合、これら乳化剤は、単量体の仕込み合計量に対し0.1〜10重量%の範囲で使用するのが、重合速度の調整、合成される樹脂の分散安定性の点から好ましい。
【0076】
疎水性アクリル系樹脂の製造に好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アセチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%の範囲で使用することができる。
【0077】
本発明で用いることができる無機質コロイドゾルは、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に塗布することにより、フィルム表面に親水性を付与する機能を果たすものである。
【0078】
無機質コロイドゾルとしては、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質水性コロイド粒子を、種々の方法で、水又は親水性媒体中に分散させた、水性ゾルが挙げられる。中でも好ましく用いられるのは、シリカゾルとアルミナゾルで、これらは、単独で用いても併用しても良い。
【0079】
無機質コロイドゾルとしては、その平均粒子径が5〜100nmの範囲で選ぶのが好ましく、また、この範囲であれば、平均粒子径の異なる2種以上のコロイドゾルを組み合わせて用いても良い。平均粒子径が大きすぎると、被膜が白く失透することがあり、また、平均粒子径が小さすぎると、無機質コロイドゾルの安定性に欠けることがあるため好ましくない。
【0080】
無機質コロイドゾルは、その配合量をアクリル系樹脂の固形分重量に対して、固形分として50〜400重量%にするのが好ましい。すなわち、配合量が少なすぎる場合は、十分な防曇効果が発揮できないことがあり、一方、配合量が多すぎる場合は、防曇効果が配合量に比例して向上しないばかりでなく、塗布後に形成される被膜が白濁化してフィルムの光線透過率を低下させる現象があらわれ、また、被膜が粗雑で脆弱になることがあり、好ましくない。
【0081】
本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤を添加することができる。
【0082】
これら界面活性剤の添加は、疎水性アクリル系樹脂と無機質コロイドゾルとを容易にかつ速やかに均一に分散することができ、また無機質コロイドゾルと併用することにより、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に親水性を付与する機能を果たす。界面活性剤の添加量は、疎水性アクリル系樹脂の固形分100重量部に対し0.1〜50重量部の範囲で選ぶと良い。界面活性剤の添加量が少なすぎると、疎水性アクリル系樹脂及び無機質コロイドゾルが十分に分散するのに時間がかかり、また、無機質コロイドゾルとの併用での防曇効果を十分に発揮しえず、一方界面活性剤の添加量が多すぎると塗布後に形成される被膜表面へのブリードアウト現象により被膜の透明性が低下し、顕著な場合は被膜の耐ブロッキング性の悪化や被膜の耐水性低下を引き起こす場合がある。
【0083】
本発明の防曇被膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、架橋剤を添加することができる。架橋剤は、アクリル系樹脂同士を架橋させ、被膜の耐水性を向上させる効果がある。架橋剤としては、フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、アミン化合物類、アジリジン化合物類、アゾ化合物類、イソシアネート化合物類、エポキシ化合物類、シラン化合物類等が挙げられるが、特にアミン化合物類、アジリジン化合物類、エポキシ化合物類が好ましく使用できる。
【0084】
本発明に使用される防曇剤組成物には、必要に応じて、液状分散媒を配合することができる。かかる液状分散媒としては、水を含む親水性ないし水混合性溶媒がふくまれ、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブアセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら液状分散媒は単独で用いても併用しても良い。防曇剤組成物は、疎水性アクリル系樹脂、無機質コロイドの固形分として一般に0.5〜50重量%の濃度で調製し、これを希釈して使用することが多い。本発明で調製される防曇剤組成物には、更に必要に応じて、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、造粘剤、顔料、顔料分散剤等の慣用の添加剤を混合することができる。
【0085】
防曇性被膜を形成するには、防曇剤組成物をドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。
【0086】
防曇性被膜の厚みには特に制限は無いが、基体樹脂フィルムの1/10以下を目安に選択すると良い。被膜の厚さが基体樹脂フィルムの1/10より大であると、基体樹脂フィルムと被膜とでは屈曲性に差があるため、被膜が基体樹脂フィルムから剥離する等の現象がおこりやすく、また、被膜に亀裂が生じて基材フィルムの強度を低下させるという現象が生起し好ましくない。
【0087】
また、基体樹脂フィルムと被膜組成物に由来する被膜との接着性が充分でない場合には、基体フィルムの表面を予めアルコールまたは水で洗浄したり、プラズマ放電処理、あるいはコロナ放電処理を施しておいてもよい。
【0088】
本発明に係る農業用フィルムを、実際に使用するにあたっては、重合体(C)による被膜と、含フッ素アクリル系重合体(A)とフッ化ビニリデン系樹脂(B)の2成分を主成分とする組成物の被膜が設けられた側をハウス又はトンネルの外側となるようにして展張するのがよい。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例にもとづいて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
実施例1〜4、比較例1〜12
(1) 基材フィルム
・基材−1:ポリエステルフィルム
縦、横それぞれ3.5倍に延伸され、密度が1.392g/cm、厚さが150μmのフィルム
・基材−2,基材−3:ポリオレフィンフィルム
三層インフレーション成形装置として三層ダイに100mmΦ((株)プラ工研製)を用い、押出機は外内層を30mmΦ((株)プラ工研製)2台、中間層を40mmΦ((株)プラ工研製)として成形温度190℃、ブロー比3.0、引取速度4m/分にて、表−1に示した成分からなるポリオレフィン系基材フィルムを得た。このポリオレフィン系基材フィルムに接着性アクリル樹脂層のコート面にコロナ処理52dyn/cmを施したフィルム
【0090】
【表1】

【0091】
(2)含フッ素アクリル系重合体(A)の調製
温度計、攪拌機、還流冷却器および原材料添加用ノズルを備えた反応器に、メチルエチルケトン70重量部、トルエン30重量部、過酸化ベンゾイル1.0重量部及び表−2に示した各単量体の混合物100重量部を仕込み、窒素ガス気流中で攪拌しつつ、80℃で3時間更に過酸化ベンゾイルを0.5重量部添加して反応を約3時間、同温度で継続して含フッ素アクリル系重合体である樹脂a、bを得た。
【0092】
【表2】

【0093】
(3)フッ化ビニリデン系樹脂(B)
市販品であるARKEMA社製カイナー7201
(4)接着性アクリル樹脂層の形成
表−3に記載の組成よりなる重合組成物を重合して得られた重合体と表−4,5で示した種類及び量の紫外線吸収剤を酢酸エチルに溶解し、固形分濃度が20%になるように調製した被膜形成用塗布液を得た。この塗布液をロールコート法により連続的に塗布し、乾燥炉中100℃で1分間保持して、溶剤を揮散させると同時に熱処理を行い、各々フィルムを巻取った。得られた各フィルムの付着樹脂量は約2g/mであった。
【0094】
【表3】


【0095】
【表4】


【0096】
【表5】

【0097】
(5)被膜の形成
表−4、5に示した種類及び量の含フッ素アクリル系重合体(A)とフッ化ビニリデン系樹脂(B)を配合し、これに固形分が20重量%となるようにメチルエチルケトンを加え、被膜組成物を得た。形成された接着性アクリル樹脂層の上面に、上記被膜組成物をロールコート法により連続的に塗布し、乾燥炉中100℃で1分間保持して、溶剤を揮散させると同時に熱処理を行い、各々フィルムを巻取った。得られた各フィルムの被膜の量は接着性アクリル樹脂層と合わせて約3g/mであった。
(6)フィルムの評価以下の方法においてフィルムの性能を評価し、その結果を表−6,7に示した。
(i)波長555nmにおける初期直光線透過率分光光度計(日立製作所製、日立U−3500型)によって測定した。
(ii)被膜の接着強度
被膜(*被膜が形成されていない場合は接着性アクリル樹脂層)上に、セロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、セロハンテープを剥がした後の被膜の変化を肉眼で観察し、判定したもの。判定の基準は、次のとおりとした。
◎・・・被膜が全く剥離せず、完全に残ったもの。
○・・・被膜の2/3以上が剥離せず、残ったもの。(被膜凝集剥離も含む)
△・・・被膜の2/3以上が剥離したもの。(被膜凝集剥離も含む)
×・・・被膜が完全に剥離したもの。(被膜凝集剥離も含む)
(iii)防塵性試験
フィルムを、静岡県焼津市の試験圃場に設置した屋根型ハウスに、被膜を設けた面をハウスの外側にして被覆し、平成17年3月から平成19年3月までの2年間展張試験を行った。展張したフィルムについて、波長555nmにおける直光線透過率分光光度計(日立製作所製、日立U−3500型)によって測定した。
(iv)耐久性試験
フィルムを蛍光紫外線凝縮試験機に4000時間曝露後、フィルムの波長555nmにおける直光線透過率分光光度計(日立製作所製、日立U−3500型)によって測定した。また、フィルムの強度保持率を評価した。フィルムの強度保持率は、次式により算出した値を意味する。
(展張後のフィルムの伸度)×(展張前のフィルムの伸度)×100(%)
【0098】
【表6】

【0099】
【表7】

【0100】
(発明の効果)
上記実施例で示したように、本発明の構成を採用することにより、基体樹脂フィルムとフッ素系樹脂被膜の接着性が優れ、耐久性に優れた農業用フィルムが提供される。また、本発明の農業用フィルムは、表面にフッ素系樹脂皮膜が形成されていることから、防塵性も非常に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体樹脂フィルムの少なくとも片面に、アクリル系単量体とパーフルオロアルキル基含有アクリル系単量体との共重合体からなる含フッ素アクリル系重合体(A)とフッ化ビニリデン系樹脂(B)の2成分を主成分とする組成物の被膜が形成されてなり、該被膜と該基体樹脂フィルムとの間に、アクリル系単量体と、紫外線吸収性単量体と、シクロアルキル基を有するアクリル系単量体と、紫外線安定性単量体とを重合させてなる重合体(C)を含有する接着性アクリル樹脂層を設けた農業用樹脂フィルム。
【請求項2】
該基体樹脂フィルムが、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、セロハンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムの単体あるいは複合体であることを特徴とする請求項1記載の農業用樹脂フィルム。
【請求項3】
該紫外線吸収性単量体が、下記式(1)で表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収基を有するアクリル系単量体であることを特徴とする請求項1又は2記載の農業用樹脂フィルム。
一般式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜6の直鎖状または枝分れ鎖状のアルキレン基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す)
【請求項4】
該シクロアルキル基を有するアクリル系単量体が、下記式(2)で表される単量体であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の農業用樹脂フィルム。
一般式(2)
【化2】

(式中、R4は水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基を表し、Zは置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す)
【請求項5】
該紫外線安定性単量体が、一般式(3)で表される紫外線安定性単量体および/または一般式(4)で表される紫外線安定性単量体であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の農業用樹脂フィルム。
一般式(3)
【化3】

(式中、R5は水素原子またはシアノ基を表し、R6、R7はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基を表し、R8は水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す)
一般式(4)
【化4】

(式中、R5は水素原子またはシアノ基を表し、R6、R7はそれぞれ独立して水素原子
または炭素数1〜2の炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す)

【公開番号】特開2009−296893(P2009−296893A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151352(P2008−151352)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(504137956)MKVドリーム株式会社 (59)
【Fターム(参考)】