説明

近接センサ及びそれを用いた挟み込み検出装置

【課題】静電容量型の近接センサを用いて人体とそれ以外の水滴などを判別して人体の接近を確実に検出する。
【解決手段】ドア1の閉側に外側電極2aを、開側に内側電極2bを配置し、外側電極を波形成形回路5を介して差分回路6に接続しかつ内側電極も差分回路に接続し、両電極の電位Va・Vbの差に対応する出力電圧Vcを判定回路7に入力する。判定回路では、電圧Vcが閾値電圧Vd以上になったら人体接近であると判定する。一対の電極をそれぞれ非接地状態にし、その一方を振回路からの振幅信号の入力により帯電させた帯電極とし、他方を帯電極との間に生じるコンデンサ作用により帯電極から電荷を受け取って帯電する検出極として、大地に対して直接経路が無い物体(水滴など)と経路が生じる物体(人体)とを区別することができ、人体の接近検出で水滴を誤検出することを防止し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接センサ及びそれを用いた挟み込み検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体としての人体や物の接近や接触などを検出するために種々のセンサが用いられているが、車両や建物におけるドアなどの開閉体にあっては、非接触型センサを用いて人体や異物の挟み込みを接触する前に検出すると良い。例えば静電容量型センサを用いて人体の接近を検出するようにしたものがある。
【特許文献1】特開平14−147117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記静電容量型センサを用いた原理回路を図6に示す。開閉体としての例えばスライドドア1の閉側の縁部に近接センサのセンサヘッド12が内蔵されて設けられている。センサヘッド12は互いに平行な一対の電極12a・12bにより構成されている。そのドア1の閉側に位置する外側電極12aには発振回路3の出力端子がレギュレート回路4及び抵抗R2をこの順に介して接続され、開側に位置する内側電極12bは接地されている。また、レギュレート回路4の出力端子から分岐された分岐ラインが、一対の入力ポートを有する差分回路6の一方の入力ポートに基準値Vsを入力するべく接続されている。その差分回路6の他方の入力ポートには波形成形回路5を介して外側電極が接続されている。
【0004】
上記回路にあっては、図7に示されるように基準値Vsは一定値であるが、外側電極12aの電位を示す電極電位Vaは、物体(人体Mや浮遊状態の水滴Wなど)の遠近の影響を受けて接近する程低下する。その電極電位Vaの変化は、遠い場合には人体Mも水滴Wも同様に変化し、近い場合には、水滴Wに対しては図の想像線に示されるように遠い場合とほぼ同じ低下率(斜度)で変化し(Vaw)、人体Mに対しては図の実線に示されるように水滴Wよりも大きく低下する(Vam)。これは、水滴Wの場合には地面に対して浮いており、人体Mの場合には接地していることによる。
【0005】
それにより、差分回路6の出力Vc(=Vs−Va)は図8に示されるようになり、接近するほど基準値Vsに対して人体Mに対する電極電位Vamの変化が大きくなり、その差に対応する出力Vdを閾値Vdと比較して、出力Vdが閾値Vd以上になった(点P1)ことにより人体Mの接近を非接触状態で検出することができる。しかしながら、水滴Wに対する電極電位Vawも小さな傾斜ではあるが接近するにしたがって変化するため、例えば図8の点P2で閾値Vd以上になり、その場合には水滴Wを人体もとして誤検出してしまう。開閉体の挟み込み制御において閉動作時に人体Mの接近を検出した場合には開閉体を開側に反転させるなどしており、雨天時などに上記水滴Wを誤検出した場合には人体Mの挟み込みでないにもかかわらず開閉体を反転させてしまうことになり、開閉動作が不安定になるという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決して、静電容量型の近接センサを用いて人体とそれ以外の水滴などを判別して人体の接近を確実に検出することを実現するために本発明に於いては、接近する物体の影響を受けて静電容量が変化することにより当該物体の接近を検出するための一対の電極を有する近接センサであって、前記一対の電極をそれぞれ非接地状態にすると共に、前記一対の電極の一方に発振回路からの振幅信号を入力し、前記一対の電極の各電位を比較して前記物体の接近を検出するものとした。
【0007】
特に、前記一対の電極の他方が前記物体の接近する側に配置されていると良い。
【0008】
あるいは、接近する物体の影響を受けて静電容量が変化することにより当該物体の接近を検出するための一対の電極を有する近接センサと、前記近接センサによる検出信号に基づき前記開閉体による前記物体の挟み込みを判定する判定手段とを有する近接センサを用いた挟み込み検出装置であって、前記一対の電極をそれぞれ非接地状態にすると共に、前記一対の電極の一方に発振回路からの振幅信号を入力し、前記検出信号が前記一対の電極の各電位の差であり、前記判定手段が、前記検出信号が所定の閾値以上になったら前記挟み込みであると判定するものとした。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によれば、一対の電極をそれぞれ非接地状態にし、その一方の電極に発振回路からの振幅信号を入力して、発振回路により帯電させた帯電極と、その帯電極との間に生じるコンデンサ作用により帯電極からの電荷を受け取って帯電する他方の電極である検出極とにより近接センサを構成して、大地に対して直接経路が無い物体(水滴など)と経路が生じる物体(人体)とを区別して検出することができ、人体の接近を検出する場合に水滴を誤検出してしまうことを防止し得る。
【0010】
上記構成にあっては、非接地状態の物体として例えば水滴が浮遊していてもあるいはセンサに付着していても、水滴は大地に対して直接的な経路が無いため両電極共にほぼ同等の影響を受け、水滴の遠近に対して両電極の電位の比率が同一のまま変化し得るのに対して、人体にあっては直接大地との経路が生じるため、検出極を人体の接近側に配置することにより人体の接近に対して検出極が先にその影響を受け、両電極の電位の比率が変化する。これにより、電位の比率の違いを監視することにより水滴と人体とを区別して検出することができる。
【0011】
さらに、上記構成の近接センサを用いて挟み込み判定装置に適用することにより、物体を挟み込む前に物体の接近を検出して、挟み込みを判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明が適用された自動車用スライドドアにおける近接センサを用いた挟み込み検出装置の原理回路図である。図において、開閉体としてのドア1の閉側縁部の適所にセンサヘッド2が内蔵されている。センサヘッド2は互いに平行に対峙する一対の電極2a・2bからなる。また、ドア1の閉側に外側電極2aが配置され、ドア1の開側に内側電極2bが配置されている。
【0013】
図示例の回路にあっては、発振回路3の出力端子がレギュレート回路4及び抵抗R1をこの順に介して内側電極2bに検出電圧を印加して接続され、外側電極2aが波形成形回路5を介して差分回路6の一対の入力端子の一方に接続されている。差分回路6の他方の入力端子には、抵抗R1と内側電極2bとのノードが接続されている。これにより、差分回路6の一方の端子には外側電極2aの電位Vaが入力し、差分回路6の他方の端子には内側電極2bの電位Vbが入力する。差分回路6からは両電位Va・Vbの差(Vb−Va)に対応する電圧Vcが出力され、その出力電圧Vcは判定手段としての判定回路7の判定信号入力端子に入力する。判定回路7の基準信号入力端子には図示されない定電圧回路から閾値電圧Vdが入力し、判定回路7では電圧Vcと閾値電圧Vdとを比較し、電圧Vcが閾値電圧Vd以上の場合には物体としての人体Mがドア1に極めて接近したとして人体接近信号を図示されない自動開閉制御回路へ出力する。
【0014】
上記両電位Va・Vbは、静電容量を有する物体の接近の影響を受けて両電極2a・2bの静電容量が変化することにより高低変化する。その変化を、物体であって非接地体としての水滴Wと接地体としての人体Mとの各場合について図2に示す。水滴Wにあっては直接大地との経路が無いため、両電極2a・2bのいずれも対大地影響が同等となることにより、両電極2a・2bの電位Va・Vbは、両電極2a・2bが水滴Wの接近を検出する影響度の中域から高域にかけては、Vaw・Vbwのように共にほぼ同等の影響を受けて低下する。一方、人体Mの場合には、大地に接地した状態で接近してくることになるため、対大地影響を受けて、両電極2a・2bが人体Mの接近を検出する影響度の中域から高域にかけては、Vam・Vbmのように共に急激に静電容量が低下する。ここで、人体Mを検出した場合のVam・Vbmの変化をよく見ると、接近する人体Mに近い側の電極2aの方がより影響を受けやすいため、電極2aの静電容量の変化率(低減率)が大きい。尚、上記説明においては、静電容量を有する物体の接近の影響を受けた両電極2a・2bの静電容量の変化は、ほぼ同等の影響を受けるとしているが、図2に示すように、両電極2a・2bの静電容量変化の傾きは全く同じではない。したがって、例えば、影響度の低から中までの変化量から、両電極2a・2bの静電容量変化の傾きがほぼ同等であると判断された場合には、図示しない制御装置により、影響度の中(接近する物体が検出されない領域)までの両電極2a・2bの静電容量変化の傾きが等しくなるように補正することも可能である。これにより、実際に人体Mを検出した場合の検出精度をより高めることができる。
【0015】
図3に水滴Wの場合の等価回路を示す。なお、図では分かり易くするために波形成形回路5を省略し、検出極となる外側電極2aの電位Vaを電圧計Vで示している。図に示されるように、水滴Wによるセンサ2に対する影響をコンデンサCwと抵抗Rwとで示すと、非接地体となることから、コンデンサCw及び抵抗Rwの各両端が各電極2a・2bに並列に接続された状態とみなすことができる。したがって上記したように、水滴Wの遠近にかかわらず両電極2a・2bが共に影響を受けるため、遠近に対して各電極2a・2bの電位がそれぞれほぼ同じ低減率となる。
【0016】
また、人体Mの場合の図3に対応する等価回路を図4に示す。上記と同様に人体Mによるセンサ2に対する影響をコンデンサCmと抵抗Rmとで示すと、人体Mの場合には接地体となることから、コンデンサCm及び抵抗Rmの各一端が検出極となる外側電極2aに接続され、各他端が接地された状態とみなすことができる。この場合には、人体Mが遠い場合には接地体として影響が弱く、図2における影響度の低域から中域までは上記水滴Wと同様になり、影響度の中域から高域にあっては接地体としての影響を受けて実線で示されるように両電位Va・Vbが共に大きく低減する。その影響にあっては、等価回路からも明らかなように外側電極2aの方が大きくなるため、その電位Vaの低減率の方が大きい。
【0017】
その結果、差分回路6の出力電圧Vcは図5に示されるようになる。図では図2に対応して影響度の中から高側において、水滴Wに対応する出力を二点鎖線で示し、人体Mに対応する出力を実線で示している。図に示されるように、水滴Wの場合には影響度の底から高に至る全領域(検出可能領域)で両電位Va・Vbの差(Vb−Va)がほぼ一定のままとなるのに対して、人体Mの場合には影響度が高くなるに連れて両電極2a・2b間の電位差が大きくなって、その比の出力電圧Vcが増大する。したがって、人体Mの接近を検出する閾値電圧Vdを、水滴Mにおける出力電圧Vc(=Vw)よりも大きく、影響度の中域から高域での人体Mにおける出力増大を検出し得る値に設定する(図5参照)ことにより、判定回路7で電圧Vcが閾値電圧Vd以上になったことを判別して、水滴Wを誤検出することなく人体Mの接近を検出することができる。
【0018】
このように、本近接センサは、検出極としての外側電極2aのみならず帯電極としての内側電極2bも接地極とせず、発振回路3から安定した発振電圧を分圧抵抗R1を経由して印加して内側電極2bを帯電し、電圧印加回路を接続しない外側電極2aを内側電極2bとの間に生じるコンデンサ作用により内側電極2bからの電荷を受け取って帯電するように構成されている。これにより、上記したようにそれぞれ帯電した両電極2a・2bに対して接近する物体を両電極2a・2b間の電位差をもって検出することにより、接近する物体が誘電体もしくは非接地体か導電体もしくは接地体かを判別することができ、人体(接地体)Mと水滴(非接地体)Wとを区別して検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明にかかる近接センサは、人体と同程度の静電容量をもつ物体が接近した場合でも誤検出することなく人体を検出して、近接センサを開閉体の挟み込み判定制御に用いた場合の開閉体の誤動作を防止し得るものであり、自動開閉制御を行う開閉装置等に適用する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に基づく近接センサを用いた挟み込み検出回路の原理回路図である。
【図2】接近物体に対する電極電位を示す図である。
【図3】水滴の場合を示す等価回路図である。
【図4】人体の場合を示す等価回路図である。
【図5】差分回路の出力を示す図である。
【図6】従来の近接センサを用いた挟み込み検出回路の原理回路図である。
【図7】従来の接近物体に対する電極電位を示す図である。
【図8】従来の差分回路の出力を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ドア
2a 外側電極
2b 内側電極
3 発振回路
6 差分回路
7 判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接近する物体の影響を受けて静電容量が変化することにより当該物体の接近を検出するための一対の電極を有する近接センサであって、
前記一対の電極をそれぞれ非接地状態にすると共に、前記一対の電極の一方に発振回路からの振幅信号を入力し、前記一対の電極の各電位を比較して前記物体の接近を検出することを特徴とする近接センサ。
【請求項2】
前記一対の電極の他方が前記物体の接近する側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
接近する物体の影響を受けて静電容量が変化することにより当該物体の接近を検出するための一対の電極を有する近接センサと、前記近接センサによる検出信号に基づき前記開閉体による前記物体の挟み込みを判定する判定手段とを有する近接センサを用いた挟み込み検出装置であって、
前記一対の電極をそれぞれ非接地状態にすると共に、前記一対の電極の一方に発振回路からの振幅信号を入力し、
前記検出信号が前記一対の電極の各電位の差であり、
前記判定手段が、前記検出信号が所定の閾値以上になったら前記挟み込みであると判定することを特徴とする近接センサを用いた挟み込み検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−78422(P2006−78422A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265089(P2004−265089)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】