説明

近接センサ及び電子機器

【課題】従来の近接センサよりも応答性が向上した近接センサ及び電子機器を提供する。
【解決手段】近接センサ1は、電流信号S3の電流値が第2閾値電流以下になったとき、記憶部21に格納されている状態情報を状態ST1に更新し、状態情報が状態ST1であって、かつ、上記電流値が第2閾値電流を越えたとき、状態情報を状態ST2に更新し、上記電流値が第1閾値電流以上になったとき、状態情報を状態ST3に更新し、状態情報が状態ST3であって、かつ、上記電流値が第1閾値電流を下回ったとき、状態情報を状態ST4に更新する状態更新部22と、状態情報が状態ST1または状態ST4に更新されたとき、被検出対象Bが近接していないことを示す信号S6を外部に出力するとともに、状態情報が状態ST2または状態ST3に更新されたとき、被検出対象Bが近接していることを示す信号S6を外部に出力する制御部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の電子機器に搭載される近接センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォンなどに代表される、タッチパネル付きの画面(例えば液晶画面)を備えるモバイル機器(電子機器、より具体的にはポータブル電子機器)が、幅広く利用されている。多機能化、小型化または薄型化が進む上記モバイル機器に、近接する物体の有無を検出(検知)する近接センサを搭載したものが登場している。
【0003】
近接センサの用途としては、例えば以下の例が挙げられる。即ち、電話がかかってくると、電話機を耳に当てる動作を行うが、画面の表示がONであるとともに、タッチパネル機能がアクティブである状態で電話機を耳に当てて、タッチパネル付きの画面が人肌に当たると、電話機が誤動作する可能性がある。
【0004】
このような誤動作を防止するために、以下の制御を行う。画面の表示がONであるとともに、タッチパネル機能がアクティブである状態で電話がかかってきて、電話機が耳に当てられる時に、近接センサが近接する人肌を検出すると、電話機が備える制御部は、近接センサの検出結果に応じて、以下の制御を行う。
【0005】
即ち、制御部は、画面の表示をOFFするとともに、タッチパネル機能をアクティブから非アクティブへ切り替える。そして、電話が終了して電話機が人肌から離れることにより、近接センサが、人肌と電話機との間の状態が、近接状態から非近接状態へ遷移したことを検出すると、画面の表示を再びONするとともに、タッチパネル機能を再びアクティブに切り替える。
【0006】
次に、モバイル機器であるメディアプレーヤーに近接センサを用いる場合の例を示すが、その前に、近接センサを搭載していないメディアプレーヤーについて述べる。近接センサを搭載していないメディアプレーヤーにおいて、ユーザーが、メディアプレーヤーが備えるパネルの電源をOFFするためには、通常、ボタンを押す。パネルの電源は、例えば、メディアプレーヤーをポケットに入れるときにOFFされる。
【0007】
ここで、近接センサを搭載したメディアプレーヤーについて、画面の表示がONであるとともに、タッチパネル機能がアクティブである状態で、メディアプレーヤーがポケットに入れられて、メディアプレーヤーと服の生地(またはポケットの生地)とが近接していることが検出された場合を考える。この場合、メディアプレーヤーの画面の表示をOFFするとともに、メディアプレーヤーが備えるタッチパネルの機能を非アクティブに切り替える。
【0008】
逆に、メディアプレーヤーがポケットから出されて、メディアプレーヤーと服の生地(またはポケットの生地)とが非近接であることが検出された場合は、メディアプレーヤーの画面の表示を再びONするとともに、メディアプレーヤーが備えるタッチパネルの機能を再びアクティブに切り替える。
【0009】
以上のような制御を行うことにより、ユーザーが意図していない期間にタッチパネル機能がアクティブであることによってモバイル機器が誤動作することを防止することができる。これとともに、画面の表示をOFFすることで、消費電力の低減を実現することが可能となる。
【0010】
近接センサは、携帯電話やメディアプレーヤー等の多様な電子機器への搭載が見込まれている。ここで、近接センサの電子機器における搭載位置や、近接センサ搭載後の電子機器の筐体表面における形状等の条件(即ち近接センサの実装条件)は、メーカー毎や機種毎に様々である。この理由として、電子機器のデザイン面や設計上の制約が挙げられる。このような経緯から、様々な実装条件において同等の特性を有する近接センサ(物体検出装置)の実現が強く求められている。なお、上記特性を示す指標として、検出距離(被検出対象が近接したと判断される際の、被検出対象と近接センサとの間の距離)や誤動作の発生確率が挙げられる。
【0011】
従来の近接センサを開示する文献として、特許文献1及び特許文献2を示す。特許文献1では、被検出物体の近接状態を検知する精度を損なうことなく、消費電力量を低減できる照度検知機能付き近接センサが開示されている。特許文献2では、赤外線センサおよび近接センサの出力信号により人が接近しているか否かを判定する人感センサ10とを備えた携帯電話装置1が開示されている。
【0012】
図6は、特許文献1の照度検知機能付き近接センサの要部を抜き出して構成した従来の近接センサ101を示すブロック図である。
【0013】
図6の近接センサ101は、電子機器に搭載される近接センサであって、投射光106を所定の空間へ投射(照射)する発光素子102と、近接センサ101に近接しているか否かが検出される対象である被検出対象Bによって投射光106が反射された光である反射光107を受光して、反射光107の光量に応じた電流信号S103を出力する受光素子103と、所定の第1閾値電流を出力する第1電流源と、所定の第2閾値電流を出力する第2電流源とを備えているとともに、反射光107の光量に応じた電流信号S103の電流値が、上記第2閾値電流以下であるか、上記第1閾値電流を越えているかを判定し、当該判定の結果を示す信号である判定結果信号S104を出力する判定部104と、発光素子102に投射光106の投射を指示する信号である発光指示信号S102を発光素子102に出力するとともに、反射光107の光量に応じた電流信号S103の電流値が、上記第2閾値電流以下である場合は、近接センサ101が、近接センサ101と被検出対象Bとが近接していない状態である非近接状態であることを決定し、反射光107の光量に応じた電流信号S103の電流値が、上記第1閾値電流を越えている場合は、近接センサ101が、近接センサ101と被検出対象Bとが近接している状態である近接状態であることを決定し、
上記非近接状態または上記近接状態であることを決定した後に、上記非近接状態または上記近接状態を示す信号であって、上記電子機器の動作を制御する信号である信号S106を、上記電子機器へ出力する制御部105とを備えている。なお、制御部105は、必要に応じて、外部から信号S101が入力されてもよい。
【0014】
発光素子102および受光素子103はそれぞれ、モールド樹脂でモールドされてワンパッケージに収められている。現在発売されている近接センサのなかには、ワンパッケージではなく、発光素子102と受光素子103とが分離したものもある。
【0015】
図6の近接センサ101の動作原理を以下に説明する。近接センサ101において、発光素子102から所定の空間へ投射された投射光106は、被検出対象Bにより反射され、反射光107として受光素子103に入射する。
【0016】
判定部104は、所定の閾値電流を出力する電流源を有しており、判定部104において、反射光107の光量に応じた電流信号S103と、上記閾値電流とが比較され、電流信号S103の電流値が、上記閾値電流以下であるか否かが判定(判断)される。この判定結果が、判定結果信号S104として制御部105へ出力されことにより、被検出対象Bが近接センサ101に近接しているか否かを示す状態が決定される。以下に詳細を説明する。
【0017】
被検出対象Bが近接センサ101に近接していない場合、制御部105から出力された発光指示信号S102に応じて発光素子102から投射された投射光106は、拡散する。よって、受光素子103には、反射光107がほとんど入射しない。
【0018】
よって、近接センサ101の判定部104は、反射光107の光量に応じた電流信号S3の電流値が、上記閾値電流以下であることを判定する。判定部104は、電流信号S3の電流値が上記閾値電流以下であることを示す判定結果信号S104を、制御部105へ出力する。これにより、近接センサ101は、非近接状態(被検出対象Bと近接センサ101とが近接していない状態)へ切り替わる。
【0019】
一方、被検出対象Bが近接センサ101に近接している場合、制御部105から出力された発光指示信号S102に応じて発光素子102から投射された投射光106は、被検出対象Bにより反射して、反射光107として受光素子103に入射する。
【0020】
近接センサ101の判定部104は、反射光107の光量に応じた電流が、上記閾値電流を超えたことを判定する。判定部104は、電流信号S103の電流値が上記閾値電流を超えたことを示す判定結果信号S104を、制御部105へ出力する。これにより、近接センサ101は、近接状態(被検出対象Bと近接センサ101とが近接している状態)へ切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2010−199706号公報(2010年9月9日公開)
【特許文献2】特開2010−50943号公報(2010年3月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
スマートフォンなどのモバイル機器に搭載される近接センサの使用例では、被検出対象が近接センサに近接する場合は、被検出対象が近接していることを早く検出して、モバイル機器の画面の表示をOFFするなどの制御を早く行うことが求められている。
【0023】
また、被検出対象が近接センサから離れる場合は、被検出対象が近接していない状態へ切り替わったことを早く検出(認識)して、モバイル機器の画面の表示をONするなどの制御を早く行うことが求められている。
【0024】
このように、スマートフォンなどのモバイル機器に搭載される近接センサに対しては、応答性のさらなる向上が要求されている。
【0025】
近接センサでは、通常、被検出対象が近接しているか否かを判定するための値である閾値が設定される。図6の近接センサ101では、閾値は電流である(閾値電流)。
【0026】
ここで、閾値が1つである場合を考える。この場合、被検出対象と近接センサとの間の距離が、手ぶれなどにより増減してしまう(ゆらゆらと揺れてしまう)。これにより、近接センサの状態が、被検出対象と近接センサとが近接している状態である近接状態と、被検出対象と近接センサとが近接していない状態である非近接状態とを、交互に繰り返すこととなる。このように、近接状態と非近接状態とを交互に繰り返すことを、本明細書ではチャタリングと称する。
【0027】
特許文献2では、閾値を1つ設定するとともに、センサの時定数を大きくすることで、上記チャタリングを防止している。しかしながら、設定された時定数より長い時間のチャタリングが起きた場合には、チャタリングを防止することが出来ない。
【0028】
そこで、チャタリングを防止するために、一般的な近接センサでは、第1閾値と第2閾値との2つの閾値を設定する。図6の近接センサ101を例に取ると、判定部104が、第1電流源及び第2電流源を有している構成である。第1電流源の電流であって、第1閾値に相当する第1閾値電流は、第2電流源の電流であって、第2閾値に相当する第2閾値電流よりも大きい。
【0029】
反射光107の光量に応じた電流信号S3の電流値が、距離X(被検出対象Bと近接センサ101との間の距離)がD〔mm〕の場合の閾値である第1閾値電流を超えたら、近接センサ101は、被検出対象Bと近接センサ101とが近接している状態である近接状態へ切り替わる。
【0030】
一方、反射光107の光量に応じた電流信号S3の電流値が、距離XがE〔mm〕の場合の閾値である第2閾値電流以下となれば、近接センサ101は、被検出対象Bと近接センサ101とが近接していない状態である非近接状態へ切り替わる。
【0031】
図7は、図6の近接センサ101において、近接状態・非近接状態がどのように判定されるかを示すグラフである。図7のグラフにおいて、横軸は、被検出対象Bと近接センサ101との間の距離Xを、縦軸は電流Iを示している。また、距離Xが負の領域は、被検出対象Bを示している。さらに、グラフの第1象限の曲線C103は、電流信号S103の電流値を示している。
【0032】
被検出対象Bが近接センサ101に近づく場合、図7のグラフにおいて、距離Xは、F(F>>E)→E→D→0と変化する。そして、距離XがD未満になると、電流信号S3の電流が第1閾値電流を越えて、近接センサ101は近接状態へ切り替わる。
【0033】
逆に、被検出対象Bが近接センサ101から離れる場合、距離Xは、0→D→E→Fと変化する場合、そして、距離XがE以上になると、電流信号S3の電流が第2閾値電流以下となり、近接センサ101は非近接状態へ切り替わる。
図6の近接センサ101において、図7のグラフに示される判定を行うことで、手ぶれなどの要因によるチャタリングを防止することが可能である。
【0034】
しかしながら、図7のグラフに示される判定では、閾値電流を2つ設定しているにもかかわらず、電流信号S3の電流が第1閾値電流より大きくならないと、近接センサ101の状態が、近接状態へ切り替わらない。即ち、電流信号S3の電流が第1閾値電流より大きくなって初めて、近接センサ101の状態が、近接状態へ切り替わる。
【0035】
第2閾値電流についても同様であり、電流信号S3の電流が第2閾値電流以下にならないと、近接センサ101の状態が、非近接状態へ切り替わらない。即ち、電流信号S3の電流が第2閾値電流以下になって初めて、近接センサ101の状態が、非近接状態へ切り替わる。
【0036】
従って、図7のグラフに示される判定を行う、図6の従来の近接センサ101では、近接状態と非近接状態との間での切り替えを早く行うことである「応答性の向上」が達成出来ていない。
【0037】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、従来の近接センサよりも応答性が向上した近接センサ及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の近接センサは、上記課題を解決するために、被検出対象が近接しているか否かを検出する近接センサであって、投射光を所定の空間へ投射する発光素子と、上記被検出対象によって上記投射光が反射された光である反射光を受光して、上記反射光の光量に応じた電流信号を出力する受光素子と、上記電流信号の電流値の状態を示す情報である状態情報を記憶する記憶手段と、上記電流信号の電流値と、第1閾値および上記第1閾値より小さい第2閾値との大小関係を判定する判定手段と、上記電流信号の電流値が上記第2閾値以下になったとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第2閾値以下であることを示す第1情報に更新し、上記記憶手段に格納されている状態情報が上記第1情報であって、かつ、上記電流信号の電流値が上記第2閾値を越えたとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第2閾値を越えたことを示す第2情報に更新し、上記電流信号の電流値が上記第1閾値以上になったとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第1閾値以上であることを示す第3情報に更新し、上記記憶手段に格納されている状態情報が上記第3情報であって、かつ、上記電流信号の電流値が上記第1閾値を下回ったとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第1閾値を下回ったことを示す第4情報に更新する状態更新手段と、上記記憶手段に格納されている状態情報が、上記第1情報または上記第4情報に更新されたとき、上記被検出対象が近接していないことを示す信号を外部に出力するとともに、上記記憶手段に格納されている状態情報が、上記第2情報または上記第3情報に更新されたとき、上記被検出対象が近接していることを示す信号を外部に出力する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0039】
上記発明によれば、上記制御手段は、上記記憶手段に格納されている状態情報が、上記第1情報または上記第4情報に更新されたとき、上記近接センサと上記被検出対象とが近接していないことを示す信号を上記電子機器に出力するとともに、上記記憶手段に格納されている状態情報が、上記第2情報または上記第3情報に更新されたとき、上記近接センサと上記被検出対象とが近接していることを示す信号を外部に出力する。
【0040】
従来の近接センサの判定手段では、被検出対象が、近接している状態から近接していない状態へ遷移する機会は、1度であるとともに、第1閾値を下回っても、第2閾値以下となるまでは、状態が遷移しない。
【0041】
これに対して、本発明の近接センサでは、被検出対象が、近接している状態から近接していない状態へ遷移する機会は、2度である(即ち、上記第1情報に更新された時と、上記第4情報に更新された時との併せて2度の機会である)。よって、第1閾値を下回った時、及び第2閾値を下回った時に、即座に状態が遷移するので、従来の近接センサよりも応答性が向上している。
【0042】
同様に、従来の近接センサの判定手段では、被検出対象が、近接していない状態から近接している状態へ遷移する機会は、1度であるとともに、第2閾値を越えても、第1閾値以上となるまでは、状態が遷移しない。
【0043】
これに対して、本発明の近接センサでは、被検出対象が、近接していない状態から近接している状態へ遷移する機会は、2度である(即ち、上記第2情報に更新された時と、上記第3情報に更新された時との併せて2度の機会である)。よって、第2閾値を超えた時、及び第1閾値を超えた時に、即座に状態が遷移するので、従来の近接センサよりも応答性が向上している。
【0044】
よって、本発明の近接センサでは、近接状態から非近接状態、及び、非近接状態から近接状態へ遷移する機会が、従来の近接センサよりも多くなるとともに、遷移に要する時間も短縮される。従って、本発明の近接センサは、従来の近接センサよりも応答性が向上する。
【0045】
上記近接センサでは、上記記憶手段は、2ビットのレジスタであり、上記第1情報を示す値として“00”を記憶し、上記第2情報を示す値として“01”を記憶し、上記第3情報を示す値として“11”を記憶し、上記第4情報を示す値として“10”を記憶するものであって、上記制御手段は、上記レジスタに記憶されている値の下位1ビットが“1”に更新されたとき、上記被検出対象が近接していることを示す信号を外部に出力するとともに、上記レジスタに記憶されている値の下位1ビットが“0”に更新されたとき、上記被検出対象が近接していないことを示す信号を外部に出力してもよい。
【0046】
これにより、上記制御手段は、上記レジスタに記憶されている値の下位1ビットのみを使用すればよく、信号の伝送量を低減して応答性を向上することが出来る。
【0047】
上記いずれかの近接センサでは、上記第1閾値および上記第2閾値の少なくともいずれかは、外部から入力される信号に応じて設定されてもよい。
【0048】
このように、上記第1閾値および上記第2閾値の少なくともいずれかを、外部から入力される信号に応じて設定することにより、近接状態・非近接状態と判定する際の、上記近接センサと上記被検出対象との間の距離を、任意に調整することが可能となる。
【0049】
本発明の電子機器は、上記いずれかの近接センサを備えるので、従来の近接センサを備える電子機器よりも応答性が向上する。
【0050】
上記電子機器は、タッチパネルを備え、上記制御手段から出力される信号に応じて、上記タッチパネルの機能のアクティブと非アクティブとを切り替えてもよい。これにより、タッチパネルの誤動作を防止することが出来る。
【0051】
上記いずれかの電子機器は、画像を表示する表示画面を備え、上記制御手段から出力される信号に応じて、上記表示画面のオンとオフとを切り替えてもよい。これにより、消費電力を低減することが出来る。
【0052】
上記いずれかの電子機器は、携帯電話またはデジタルカメラであってもよい。これにより、上記近接センサにより奏される応答性の向上の恩恵に浴することが出来る。
【発明の効果】
【0053】
本発明の近接センサは、以上のように、投射光を所定の空間へ投射する発光素子と、被検出対象によって上記投射光が反射された光である反射光を受光して、上記反射光の光量に応じた電流信号を出力する受光素子と、上記電流信号の電流値の状態を示す情報である状態情報を記憶する記憶手段と、上記電流信号の電流値と、第1閾値および上記第1閾値より小さい第2閾値との大小関係を判定する判定手段と、上記電流信号の電流値が上記第2閾値以下になったとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第2閾値以下であることを示す第1情報に更新し、上記記憶手段に格納されている状態情報が上記第1情報であって、かつ、上記電流信号の電流値が上記第2閾値を越えたとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第2閾値を越えたことを示す第2情報に更新し、上記電流信号の電流値が上記第1閾値以上になったとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第1閾値以上であることを示す第3情報に更新し、上記記憶手段に格納されている状態情報が上記第3情報であって、かつ、上記電流信号の電流値が上記第1閾値を下回ったとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第1閾値を下回ったことを示す第4情報に更新する状態更新手段と、上記記憶手段に格納されている状態情報が、上記第1情報または上記第4情報に更新されたとき、上記被検出対象が近接していないことを示す信号を外部に出力するとともに、上記記憶手段に格納されている状態情報が、上記第2情報または上記第3情報に更新されたとき、上記被検出対象が近接していることを示す信号を外部に出力する制御手段とを備えるものである。
【0054】
それゆえ、従来の近接センサよりも応答性が向上した近接センサ及び電子機器を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る近接センサを示すブロック図である。
【図2】図1の近接センサにおいて、近接状態・非近接状態がどのように判定されるかを示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態に係る判定部の状態と、上記判定部が有する2ビットのレジスタの値と、上記レジスタの下位1ビットと、被検出対象が、本発明の実施形態に係る近接センサに近接しているか否かの検出結果とを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電子機器としての携帯電話の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電子機器としてのデジタルカメラの正面図である。
【図6】特許文献1の照度検知機能付き近接センサの要部を抜き出して構成した従来の近接センサを示すブロック図である。
【図7】図6の近接センサ101において、近接状態・非近接状態がどのように判定されるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の一実施形態について図1〜図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0057】
〔近接センサ1〕
図1は、本実施形態に係る近接センサ1を示すブロック図である。
【0058】
図1の近接センサ1は、被検出対象Bが近接しているか否かを検出する近接センサであって、投射光6を所定の空間へ投射(照射)する発光素子2と、被検出対象Bによって投射光6が反射された光である反射光7を受光して、反射光7の光量に応じた電流信号S3を出力する受光素子3と、電流信号S3の電流値の状態を示す情報である状態情報を記憶する記憶部21(記憶手段)と、電流信号S3の電流値と、第1閾値電流(第1閾値)および上記第1閾値電流より小さい第2閾値電流(第2閾値)との大小関係を判定する判定部4(判定手段)と、電流信号S3の電流値が上記第2閾値電流以下になったとき、記憶部21に格納されている状態情報を、電流信号S3の電流値が上記第2閾値電流以下であることを示す状態ST1(第1情報)に更新し、記憶部21に格納されている状態情報が状態ST1であって、かつ、電流信号S3の電流値が上記第2閾値電流を越えたとき、記憶部21に格納されている状態情報を、電流信号S3の電流値が上記第2閾値電流を越えたことを示す状態ST2(第2情報)に更新し、電流信号S3の電流値が上記第1閾値電流以上になったとき、記憶部21に格納されている状態情報を、電流信号S3の電流値が上記第1閾値電流以上であることを示す状態ST3(第3情報)に更新し、記憶部21に格納されている状態情報が状態ST3であって、かつ、電流信号S3の電流値が上記第1閾値電流を下回ったとき、記憶部21に格納されている状態情報を、電流信号S3の電流値が上記第1閾値電流を下回ったことを示す状態ST4(第4情報)に更新する状態更新部22(状態更新手段)と、記憶部21に格納されている状態情報が、状態ST1または状態ST4に更新されたとき、被検出対象Bが近接していないことを示す信号S6を外部に(例えば電子機器へ)出力するとともに、記憶部21に格納されている状態情報が、状態ST2または状態ST3に更新されたとき、被検出対象Bが近接していることを示す信号S6を外部に出力する制御部5(制御手段)とを備える。
【0059】
なお、記憶部及び状態更新部は、例えば判定部4に含まれるが、判定部4とは別に設けられてもよい。
【0060】
近接センサ1が搭載される電子機器は、信号S6が、近接センサ1が、近接センサ1と被検出対象Bとが近接していない状態である非近接状態から、近接センサ1と被検出対象Bとが近接している状態である近接状態へ遷移したことを示すか、上記近接状態から上記非近接状態へ遷移したことを示す場合のみ、近接状態・非近接状態をチェックすればよい。この点については、以下の〔判定部4の判定〕において説明する。
【0061】
なお、制御部5は、外部から信号S1が入力されるが、信号S1については後述する。
【0062】
発光素子2および受光素子3は、例えば、それぞれモールド樹脂でモールドされて、ワンパッケージに収められていてもよく、ワンパッケージではなく、発光素子2と受光素子3とが分離していてもよい。
【0063】
図1の近接センサ1の動作原理を以下に説明する。近接センサ1において、制御部5から出力された発光指示信号S2に応じて発光素子2から所定の空間へ投射された投射光6は、被検出対象Bにより反射され、反射光7として受光素子3に入射する。
【0064】
判定部4は、例えば、第1閾値電流を出力する第1電流源と、第2閾値電流を出力する第2電流源とを有してもよい。第1閾値電流は、第2閾値電流よりも大きい。
【0065】
また、判定部4は、2ビットのレジスタを有しており、2ビットのレジスタの下位1ビットを、判定結果信号S4とする。この点については後に詳述するが、下位1ビットが0であれば非近接状態であり、下位1ビットが1であれば近接状態である。判定結果信号S4は、制御部5へ出力される。
【0066】
〔判定部4の判定〕
図2は、図1の近接センサ1において、近接状態・非近接状態がどのように判定されるかを示すグラフである。図2を用いて、本実施形態に係る判定部4が、どのようにして判定を行うかを、以下に説明する。
【0067】
図2のグラフにおいて、横軸は、被検出対象Bと近接センサ1との間の距離Xを、縦軸は電流Iを示している。また、距離Xが負の領域は、被検出対象Bを示している。さらに、グラフの第1象限の曲線C3は、電流信号S3の電流値を示している。電流Iは、被検出対象Bが近接センサ1に近づくにつれて(距離Xが近くなるにつれて)大きくなる。グラフの第1象限に示されている4つの丸はそれぞれ、近接状態または非近接状態を示す4つの状態(状態ST1〜ST4)を示している。第1閾値電流及び第2閾値電流については、上述したとおりである。
【0068】
まず、被検出対象Bが、距離Xが遠いほうから近接センサ1に近づく場合について説明する。最初に、被検出対象Bが近接センサ1から十分遠い場合である(即ち、距離Xが、E〔mm〕以上である場合である。なお、図2の横軸の距離Xについて、F>>E>Dが成立する)。
【0069】
この場合、受光素子3に反射光7が入射することにより判定部4出力される電流信号S3の電流値は、第2閾値電流よりも小さい。この状態を、状態ST1と定義する。電流信号S3の電流値が、第2閾値電流よりも小さいという第1判定が、判定部4によりなされた場合は、判定部4が有する2ビットのレジスタには、値2’b00(2ビットで二進数の値“00”を意味する)が記憶される(即ち、状態ST1に対して値2’b00が割り当てられている)。
【0070】
レジスタの下位1ビットが“0”なので、近接センサ1は非近接状態となる。また、“0”である下位1ビットは、判定結果信号S4として、制御部5へ出力される。そして、制御部5は、近接センサ1が搭載されている電子機器に、近接センサ1が非近接状態であることを示す信号であって、上記電子機器の動作を制御する信号である信号S6として、判定結果信号S4を出力する。
【0071】
次に、状態ST1である時から、被検出対象Bが近接センサ1に近づき、電流信号S3の電流値が、第2閾値電流より小さいの電流値から、第1閾値電流より小さく第2閾値電流以上の電流値へと大きくなる状態を、状態ST2と定義する。電流信号S3の電流値が、第2閾値電流より小さいの電流値から、第1閾値電流より小さく第2閾値電流以上の電流値へと大きくなるという第2判定が、判定部4によりなされた場合(即ち、状態ST1から状態ST2へ遷移した場合)は、判定部4が有するレジスタには、値2’b01が記憶される(即ち、状態ST2に対して値2’b01が割り当てられている)。
【0072】
レジスタの下位1ビットが“0”から“1”へ変化するので、近接センサ1は、非近接状態から近接状態へと切り替わる。また、“0”から“1”へ変化する下位1ビットは、割り込み信号S4’として、制御部5へ出力される。そして、制御部5は、近接センサ1が搭載されている電子機器に、近接センサ1が、非近接状態から近接状態へ切り替わったことを示す信号であって、上記電子機器の動作を制御する信号である信号S6として、割り込み信号S4’を出力する。
【0073】
なお、判定結果信号S4と割り込み信号S4’とは、同一の信号経路から出力されるが、別々の信号経路から出力してもよい。
【0074】
ここで、状態ST2である時から、被検出対象Bが近接センサ1から遠ざかり、電流信号S3の電流値が、第2閾値電流より小さくなる場合を考える。即ち、状態ST2である時から、電流信号S3の電流値が、第1閾値電流より小さく第2閾値電流以上の電流値から、第2閾値電流より小さい電流になるという第3判定が、判定部4によりなされた場合を考える。この場合は、状態ST1に戻り、判定部が有するレジスタには、値2’b00が記憶される。
【0075】
レジスタの下位1ビットが“1”から“0”へ変化するので、近接センサ1は、近接状態から非近接状態へと切り替わる。また、“1”から“0”へ変化する下位1ビットは、割り込み信号S4’として、制御部5へ出力される。そして、制御部5は、近接センサ1が搭載されている電子機器に、近接センサ1が、近接状態から非近接状態へ切り替わったことを示す信号であって、上記電子機器の動作を制御する信号である信号S6として、割り込み信号S4’を出力する。
【0076】
上述したように、状態ST1から状態ST2へ遷移した時、または、状態ST2から状態ST1へ遷移した時に、判定部4は、割り込み信号S4’を生成して制御部5に出力する(伝達させる)。
【0077】
制御部5は、信号S6として、割り込み信号S4’を電子機器へ出力する。信号S6は、例えば、電子機器が備える、画像を表示する画面(ディスプレイ)のオン・オフを制御する。これにより、消費電力を低減することが出来る。また、タッチパネルを搭載した電子機器では、信号S6は、タッチパネルの機能を非アクティブにしたり、アクティブにしたりする。これにより、タッチパネルの誤動作を防止することが出来る。
【0078】
このように、割り込み信号S4’は、近接センサ1の状態が遷移したことを外部の電子機器に知らせる信号である。電子機器が近接状態・非近接状態を常にチェックしていると、電子機器が備えるホストCPUに負担がかかる。
【0079】
そこで、近接センサ1の状態が遷移したときだけ、即ち割り込み信号S4’が生成された場合のみ、近接状態・非近接状態をチェックするようにする。こうすることによって、上記ホストCPUは、ポーリング等を用いて常に近接状態・非近接状態をチェックする必要が無くなるので、負担が少なくなる。
【0080】
電子機器が備えるタッチパネルなどを制御するための信号は、信号S6が入力された上記ホストCPUにより出力される。
【0081】
ここで図2に戻り、状態ST2である時から、被検出対象Bが近接センサ1にさらに近づいて、電流信号S3の電流値が、第1閾値電流以上になる場合を説明する。電流信号S3の電流値が、第1閾値電流以上である状態を、状態ST3と定義する。
【0082】
電流信号S3の電流値が、第1閾値電流以上になるという第4判定が、判定部4によりなされた場合は、判定部4が有する2ビットのレジスタには、値2’b11が記憶される(即ち、状態ST3に対して値2’b11が割り当てられている)。
【0083】
レジスタの下位1ビットが“1”のままであるので、近接センサ1は近接状態のままである。また、“1”である下位1ビットは、判定結果信号S4として、制御部5へ出力される。そして、制御部5は、近接センサ1が搭載されている電子機器に、近接センサ1が近接状態であることを示す信号であって、上記電子機器の動作を制御する信号である信号S6として、判定結果信号S4を出力する。
【0084】
次に、状態ST3である時から、被検出対象Bが近接センサ1から遠ざかり、電流信号S3の電流値が、第1閾値電流より小さくなる場合を考える。即ち、電流信号S3の電流値が、第1閾値電流以上の電流値から、第1閾値電流より小さく第2閾値電流以上の電流値となる状態を、状態ST4と定義する。
【0085】
電流信号S3の電流値が、第1閾値電流以上の電流値から、第1閾値電流より小さく第2閾値電流以上の電流値となるという第5の判定が、判定部4によりなされた場合は、判定部4が有するレジスタには、値2’b10が記憶される(即ち、状態ST4に対して値2’b10が割り当てられている)。
【0086】
レジスタの下位1ビットが“1”から“0”へ変化するので、近接センサ1は、近接状態から非近接状態へと切り替わる。また、“1”から“0”へ変化する下位1ビットは、割り込み信号S4’として、制御部5へ出力される。そして、制御部5は、近接センサ1が搭載されている電子機器に、近接センサ1が、近接状態から非近接状態へ切り替わったことを示す信号であって、上記電子機器の動作を制御する信号である信号S6として、割り込み信号S4’を出力する。
【0087】
ここで、状態ST4である時から、被検出対象Bが近接センサ1へ近づいて、電流信号S3の電流値が、第1閾値電流以上となる場合を考える。即ち、電流信号S3の電流値が、第1閾値電流より小さく第2閾値電流以上の電流値から、第1閾値電流以上の電流値になるという第6の判定が、判定部4によりなされた場合を考える。この場合は、状態ST3に戻り、判定部4が有するレジスタには、値2’b11が記憶される。
【0088】
レジスタの下位1ビットが“0”から“1”へ変化するので、近接センサ1は、非近接状態から近接状態へと切り替わる。また、“0”から“1”へ変化する下位1ビットは、割り込み信号S4’として、制御部5へ出力される。そして、制御部5は、近接センサ1が搭載されている電子機器に、近接センサ1が、非近接状態から近接状態へ切り替わったことを示す信号であって、上記電子機器の動作を制御する信号である信号S6として、割り込み信号S4’を出力する。
【0089】
上述したように、状態ST3から状態ST4へ遷移した時、または、状態ST4から状態ST3へ遷移した時に、判定部4は、割り込み信号S4’を生成して制御部5に出力する(伝達させる)。
【0090】
制御部5は、信号S6として、割り込み信号S4’を電子機器へ出力する。信号S6は、例えば、電子機器の画面(ディスプレイ)のオン・オフを制御する。また、タッチパネルを搭載した電子機器では、信号S6は、タッチパネルの機能を非アクティブにしたり、アクティブにしたりする。これにより、タッチパネルの誤動作を防止することが出来る。
【0091】
最後に、状態ST4の時から、電流信号S3の電流値が、第2閾値電流より小さくなる場合を考える。即ち、状態ST4である時から、電流信号S3の電流値が、第1閾値電流より小さく第2閾値電流以上の電流値から、第2閾値電流より小さい電流になるという第7の判定が、判定部4によりなされた場合を考える。この場合は、状態ST1に戻る。この場合、判定部4が有する2ビットのレジスタには、値2’b00が記憶される。
【0092】
レジスタの下位1ビットが“0”のままであるので、近接センサ1は非近接状態のままである。また、“0”である下位1ビットは、判定結果信号S4として、制御部5へ出力される。そして、制御部5は、近接センサ1が搭載されている電子機器に、近接センサ1が非近接状態であることを示す信号であって、上記電子機器の動作を制御する信号である信号S6として、判定結果信号S4を出力する。
【0093】
図3は、本実施形態に係る判定部4の状態と、判定部4が有する2ビットのレジスタの値と、上記レジスタの下位1ビットと、被検出対象Bが、近接センサ1に近接しているか否かの検出結果とを示す図である。
【0094】
図3に示すように、近接状態となるのは、上記レジスタの下位1ビットが“1”のときである。また、検知結果が非近接状態となるには、上記レジスタの下位1ビットが“0”のときである。
【0095】
本実施形態に係る近接センサ1について総括する。まず、従来の近接センサ101の判定部104では、被検出対象Bが、近接している状態から近接していない状態へ遷移する機会は、1度であるとともに、第1閾値電流を下回っても、第2閾値電流以下となるまでは、状態が遷移しない。
【0096】
これに対して、本実施形態に係る近接センサ1では、被検出対象Bが、近接している状態から近接していない状態へ遷移する機会は、2度である(即ち、状態ST1に更新された時と、状態ST4に更新された時との併せて2度の機会である)。よって、第1閾値電流を下回った時、及び第2閾値電流を下回った時に、即座に状態が遷移するので、従来の近接センサ101よりも応答性が向上している。
【0097】
同様に、従来の近接センサ101の判定部104では、被検出対象Bが、近接していない状態から近接している状態へ遷移する機会は、1度であるとともに、第2閾値電流を越えても、第1閾値電流以上となるまでは、状態が遷移しない。
【0098】
これに対して、本実施形態に係る近接センサ1では、被検出対象Bが、近接していない状態から近接している状態へ遷移する機会は、2度である(即ち、状態ST2に更新された時と、状態ST3に更新された時との併せて2度の機会である)。よって、第2閾値電流を超えた時、及び第1閾値電流を超えた時に、即座に状態が遷移するので、従来の近接センサ101よりも応答性が向上している。
【0099】
よって、本発明の近接センサでは、近接状態から非近接状態、及び、非近接状態から近接状態へ遷移する機会が、従来の近接センサよりも多くなるとともに、遷移に要する時間も短縮される。従って、本発明の近接センサは、従来の近接センサよりも応答性が向上する。
【0100】
なお、本実施形態に係る近接センサ1では、判定部4における第1及び第2閾値電流を外部から調整(変更)することが出来る。具体的には、近接センサ1の外部から制御部5へ、信号S1(外部から入力される信号)が入力される。制御部5は、信号S1が、第1及び第2閾値電流の調整を指示する信号であった場合は、閾値電流調整信号S5を、判定部4へ出力する。
【0101】
このように、第1閾値電流と第2閾値電流とを調整することにより、近接状態・非近接状態と判定する距離D,Eを任意に調整することが可能となる。
【0102】
上記説明では、第1及び第2閾値電流の両方を調整することを述べたが、信号S1が、第1閾値電流または第2閾値電流の調整を指示する信号であって、閾値電流調整信号S5が判定部4へ入力されることにより、第1閾値電流と第2閾値電流とのいずれか一方のみが調整されてもよいことは言うまでも無い。
【0103】
図4及び図5は、それぞれ、本実施形態に係る電子機器の一実施形態を示している。図4は、本実施形態に係る電子機器としての携帯電話900の斜視図である。図5は、本実施形態に係る電子機器としてのデジタルカメラ905の正面図である。
【0104】
図4に示すように、携帯電話900は、近接センサ901として、上述した近接センサ1のいずれか1つを備える。携帯電話900は、液晶モニタ902を備え、被検出対象Bの近接状態・非近接状態に応じて、液晶モニタ902の表示のオン・オフの切り替えと、液晶モニタ902を液晶モニタ902の背面側から照らすLEDバックライトの点灯・非点灯の切り替えとを、近接センサ901として従来の近接センサを備える場合よりも、早く行うことが出来る。これにより、従来の近接センサを備える携帯電話よりも応答性を向上させることが出来るとともに、ユーザーの使用感を向上させることが出来る。
【0105】
図5に示すように、デジタルカメラ905は、近接センサ903として、上述した近接センサ1のいずれか1つを備える。デジタルカメラ905は、液晶モニタ904を備え、被検出対象Bの近接状態・非近接状態に応じて、液晶モニタ904の表示のオン・オフの切り替えと、液晶モニタ904を液晶モニタ904の背面側から照らすLEDバックライトの点灯・非点灯の切り替えとを、近接センサ903として従来の近接センサを備える場合よりも、早く行うことが出来る。これにより、従来の近接センサを備えるデジタルカメラよりも応答性を向上させることが出来るとともに、ユーザーの使用感を向上させることが出来る。
【0106】
このように、図4及び図5に示される電子機器は、従来の近接センサよりも応答性が向上した近接センサ901,903を備えることにより、ユーザーの使用感を向上することができる。
【0107】
〔適用例〕
本発明の電子機器は、上記いずれかの近接センサ1を備えるので、従来の近接センサを備える電子機器よりも応答性が向上する。従って、携帯電話やスマートフォンなどに代表される、タッチパネル付きの画面を備えるモバイル機器に、本発明の電子機器を適用することが出来る。
【0108】
本実施形態に係る近接センサ1では、記憶部21は、2ビットのレジスタであり、状態ST1を示す値として“00”を記憶し、状態ST2を示す値として“01”を記憶し、状態ST3を示す値として“11”を記憶し、状態ST4を示す値として“10”を記憶するものであって、制御部5は、上記レジスタに記憶されている値の下位1ビットが“1”に更新されたとき、被検出対象Bが近接していることを示す信号を外部に出力するとともに、上記レジスタに記憶されている値の下位1ビットが“0”に更新されたとき、被検出対象Bが近接していないことを示す信号を外部に出力してもよい。
【0109】
これにより、制御部5は、上記レジスタに記憶されている値の下位1ビットのみを使用すればよく、信号の伝送量を低減して応答性を向上することが出来る。
【0110】
本実施形態に係る近接センサ1では、上記第1閾値電流および上記第2閾値電流の少なくともいずれかは、外部から入力される信号S1に応じて設定されてもよい。
【0111】
このように、上記第1閾値電流および上記第2閾値電流の少なくともいずれかを、外部から入力される信号S1に応じて設定することにより、近接状態・非近接状態と判定する際の、近接センサ1と被検出対象Bとの間の距離D,Eを、任意に調整することが可能となる。
【0112】
本発明の電子機器は、上記いずれかの近接センサ1を備えるので、従来の近接センサ101を備える電子機器よりも応答性が向上する。
【0113】
上記電子機器は、タッチパネルを備え、制御部5から出力される信号S6に応じて、上記タッチパネルの機能のアクティブと非アクティブとを切り替えてもよい。これにより、タッチパネルの誤動作を防止することが出来る。
【0114】
上記いずれかの電子機器は、画像を表示する表示画面を備え、制御部5から出力される信号に応じて、上記表示画面のオンとオフとを切り替えてもよい。これにより、消費電力を低減することが出来る。
【0115】
上記いずれかの電子機器は、携帯電話900またはデジタルカメラ905であってもよい。これにより、上記近接センサにより奏される応答性の向上の恩恵に浴することが出来る。
【0116】
〔付記事項〕
最後に、近接センサ1の各ブロックは、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェアとして構成してもよいし、次のようにCPU(central processing unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0117】
ソフトウェアによって実現する場合は、近接センサ1(特に、判定部4)は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである近接センサ1の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、近接センサ1に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0118】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ類、PLD(Programmable logic device)等の論理回路類などを用いることができる。
【0119】
また、近接センサ1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR(High Data Rate)、NFC(Near Field Communication)、DLNA(Digital Living Network Alliance)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。
【0120】
このように本明細書において、手段とは必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウェアによって実現される場合も含む。さらに、1つの手段の機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、もしくは2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されてもよい。
【0121】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の近接センサは、電子機器に搭載される近接センサに適用することが出来る。特に、携帯電話やスマートフォンなどに代表される、タッチパネル付きの画面を備えるモバイル機器に好適に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0123】
1 近接センサ
2 発光素子
3 受光素子
4 判定部(判定手段)
5 制御部(制御手段)
6 投射光
7 反射光
21 記憶部(記憶手段)
22 状態更新部(状態更新手段)
900 携帯電話
901,903 近接センサ
902 液晶モニタ
904 液晶モニタ
905 デジタルカメラ
B 被検出対象
I 電流
S1 信号(外部から入力される信号)
S2 発光指示信号
S3 電流信号
S4 判定結果信号
S4’ 割り込み信号
S5 閾値電流調整信号
S6 信号
ST1 状態(第1情報)
ST2 状態(第2情報)
ST3 状態(第3情報)
ST4 状態(第4情報)
X 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出対象が近接しているか否かを検出する近接センサであって、
投射光を所定の空間へ投射する発光素子と、
上記被検出対象によって上記投射光が反射された光である反射光を受光して、上記反射光の光量に応じた電流信号を出力する受光素子と、
上記電流信号の電流値の状態を示す情報である状態情報を記憶する記憶手段と、
上記電流信号の電流値と、第1閾値および上記第1閾値より小さい第2閾値との大小関係を判定する判定手段と、
上記電流信号の電流値が上記第2閾値以下になったとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第2閾値以下であることを示す第1情報に更新し、上記記憶手段に格納されている状態情報が上記第1情報であって、かつ、上記電流信号の電流値が上記第2閾値を越えたとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第2閾値を越えたことを示す第2情報に更新し、上記電流信号の電流値が上記第1閾値以上になったとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第1閾値以上であることを示す第3情報に更新し、上記記憶手段に格納されている状態情報が上記第3情報であって、かつ、上記電流信号の電流値が上記第1閾値を下回ったとき、上記記憶手段に格納されている状態情報を、上記電流信号の電流値が上記第1閾値を下回ったことを示す第4情報に更新する状態更新手段と、
上記記憶手段に格納されている状態情報が、上記第1情報または上記第4情報に更新されたとき、上記被検出対象が近接していないことを示す信号を外部に出力するとともに、上記記憶手段に格納されている状態情報が、上記第2情報または上記第3情報に更新されたとき、上記被検出対象が近接していることを示す信号を外部に出力する制御手段とを備えることを特徴とする近接センサ。
【請求項2】
上記記憶手段は、2ビットのレジスタであり、
上記第1情報を示す値として“00”を記憶し、
上記第2情報を示す値として“01”を記憶し、
上記第3情報を示す値として“11”を記憶し、
上記第4情報を示す値として“10”を記憶するものであって、
上記制御手段は、
上記レジスタに記憶されている値の下位1ビットが“1”に更新されたとき、上記被検出対象が近接していることを示す信号を外部に出力するとともに、
上記レジスタに記憶されている値の下位1ビットが“0”に更新されたとき、上記被検出対象が近接していないことを示す信号を外部に出力することを特徴とする請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
上記第1閾値および上記第2閾値の少なくともいずれかは、外部から入力される信号に応じて設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の近接センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の近接センサを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
タッチパネルを備え、
上記制御手段から出力される信号に応じて、上記タッチパネルの機能のアクティブと非アクティブとを切り替えることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
画像を表示する表示画面を備え、
上記制御手段から出力される信号に応じて、上記表示画面のオンとオフとを切り替えることを特徴とする請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項7】
携帯電話またはデジタルカメラであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−117963(P2012−117963A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269362(P2010−269362)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】