説明

近赤外線吸収フィルター

【課題】液晶ディスプレイにおいて、800〜1100nm、640〜700nm、または570〜600nmに最大吸収波長を有する色素が、経時的に安定に維持され、長期間遮断効果を維持すること。
【解決手段】ハードコート層または粘着剤層の少なくとも一方が樹脂微粒子を有し、前記樹脂微粒子は、800〜1100nmに最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素;640〜750nmに最大吸収波長を有する色素;および570〜600nmに最大吸収波長を有する色素からなる群から選ばれる少なくとも1種の色素を含有する、近赤外線吸収フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収フィルターに関する。詳細には、特定の波長域に最大吸収波長を有する色素を樹脂微粒子が含有する、近赤外線吸収フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型で大画面にできるディスプレイとしてフラットパネルディスプレイが注目されている。なかでもプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)や液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等が市場に大きく広がり注目されている。しかしながら、これらのフラットパネルディスプレイは、近赤外線光が発生し、この近赤外線が家電用テレビ、クーラー、ビデオデッキ等のリモコン等の周辺電子機器、さらには伝送系光通信の誤動作を誘発することがあり、この近赤外線をカットする赤外線吸収フィルターを設置することが必要とされる。液晶ディスプレーの場合、起動時に特に800〜1100nm程度、具体的には880、1100nmの近赤外線が発生しやすく、これらの範囲の近赤外線が周辺機器の誤動作を誘発する可能性が高いため、該範囲の近赤外線を遮断するフィルターが求められる。
【0003】
上記目的として、近赤外領域の波長を吸収する色素を樹脂中に配合したフィルターが種々提案されている。例えば、特許文献1では、特定構造を有するジイモニウム化合物と、特定構造を有するフタロシアニン化合物とを、共にアクリル樹脂中に配合した近赤外線吸収性組成物にて形成される近赤外線吸収層を、透明基材の一面に設ける近赤外線吸収フィルタが提案されている。また、特許文献2では、近赤外線吸収色素としてのジイモニウム塩系、フタロシアニン系化合物およびニッケル錯体系化合物と、ポリエステル樹脂とを含有した赤外線吸収フィルターが開示されている。該フィルターは可視光線透過率が高く、800〜1200nmの近赤外線を効率よく遮断する。
【0004】
また、570〜600nmの波長は、画像を不鮮明にするオレンジ光であるため、かような波長の範囲をカットするフィルターを設置することが必要とされる。例えば、特許文献3では、570〜600nmに最大吸収波長を有する色素を含有する樹脂層が透明基材上に形成されてなるフィルターが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
一方、近年、情報量増加の流れが非常に早まり、例えばCD−Rが大容量光ディスクとしてDVD±Rに変貌しつつあるように記録波長の短波長化が要求されている。そのため、携帯電話やゲーム機などに利用されている800〜900nmの波長で現在同様にして使用されている光通信システムも将来は700nm前後の波長へと短波長化が図られると考えられる。しかしながら、現状のフラットパネルディスプレイは700〜750nmの波長に余分な発光があるものの、700〜750nmの波長をカットするものは設置されておらず、伝送系光通信の誤動作を誘発する恐れがあり、この波長域の光線をカットすることが将来的に必要であると考えられる。
【0006】
同時に640〜700nmの波長の光は、赤色の発色が弱い一部のLCDに利用される例もあるが、610〜635nmの波長域の純粋な赤色とは異なり「深紅」と呼ばれる色調であることから、フラットパネルディスプレイの分野では必ずしも好ましい色調の光とはいえず、純粋な赤色を再現する為に、この波長域の光線をカットすることが必要となってきている。
【0007】
上記の通り、従来の適切な波長の光を除去する色素を有するフィルターは、樹脂中にカットすべき波長を最大吸収波長に有する色素を含有させ、基材に塗布して形成される。しかしながら、樹脂中に色素を直接混合混錬するため、耐久性の低い色素の場合、問題となる場合があった。
【0008】
このような問題を解決すべく、特許文献4では、ハードコート層に近赤外線吸収剤を含有する樹脂成形品が提案されている。
【特許文献1】特開2007−121578号公報
【特許文献2】特開2001−264532号公報
【特許文献3】特開2002−200711号公報
【特許文献4】特開平10−193522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ハードコート層に近赤外線吸収剤を含有させた形態であっても、近赤外線吸収剤の耐久性、特に耐熱性や耐光性は十分なものとは言いがたかった。
【0010】
したがって、フラットパネルディスプレイにおいて、800〜1100nm、640〜700nm、または570〜600nmに最大吸収波長を有する色素が、経時的に安定に維持され、長期間遮断効果が維持される形態が求められていた。
【0011】
本発明者らは上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、ハードコート層または粘着剤層に樹脂微粒子を含有させ、該微粒子に特定の波長を吸収する色素を含有させることによって、長期間遮断効果が維持されることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、ハードコート層または粘着剤層の少なくとも一方が樹脂微粒子を有し、前記樹脂微粒子は、800〜1100nmに最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素;640〜750nmに最大吸収波長を有する色素;および570〜600nmに最大吸収波長を有する色素からなる群から選ばれる少なくとも1種の色素を含有する、近赤外線吸収フィルターである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、含有される色素の耐久性が高いため、例えば光通信システムの誤作動誘発を防止する効果が長時間発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、樹脂微粒子を有するハードコート層または樹脂微粒子を有する粘着剤層を有し、前記樹脂微粒子は、800〜1100nmに最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素;640〜750nmに最大吸収波長を有する色素;および570〜600nmに最大吸収波長を有する色素からなる群から選ばれる少なくとも1種の色素(以下、特定波長吸収色素とも称する)を含有する、近赤外線吸収フィルターに関する。
【0015】
図1は、本発明の近赤外線吸収フィルターの一実施形態であるフラットパネルディスプレイ用防眩性フィルムである(以下、第1実施形態とも称する)。図1に示すように、第1実施形態の防眩性フィルム10においては、透明基材1上に、ハードコート層である防眩層4が積層されている。防眩層4は、透明樹脂2および樹脂微粒子3を含む。樹脂微粒子3によって、防眩層4の表面に凹凸が形成され、該凹凸により外光(蛍光灯等からの光)からの反射光が散乱され、また、透明樹脂と粒子の内部散乱が起きるため、映り込みを防止することができる。防眩層には、表面に微細な凹凸が形成されており、かような凹凸により外光(蛍光灯等からの光)の反射光が散乱し、画面への映り込みが抑えられる。防眩性フィルムは、通常、フラットパネルディスプレイの最外層に配置される。
【0016】
特定波長吸収色素は、樹脂微粒子3中に混合される。樹脂微粒子3中に色素を含有させることで、水分・イオン・酸素等に色素が直接接触しにくいため、色素の劣化が低減される。したがって、色素の耐久性が向上し、長時間遮断効果が維持される。
【0017】
防眩層に凹凸を形成させるためには、樹脂微粒子によって形成される形態に限られず、ほかにサンドブラスト、エッチング、凹凸を転写する方法などがある。また、樹脂微粒子以外の無機微粒子によって凹凸を形成させてもよい。無機微粒子としては、酸化チタン、シリカ等が用いられる。無機微粒子は1種類のみ用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0018】
防眩層表面の微細凹凸は、十点平均粗さ(Rz)が0.1〜2μm程度であることが好ましい。十点平均粗さRzは、JIS B0601−1994に準じて、例えば、ダイヤモンドからなる先端部を頂角55度の円錐形とした直径1mmの測定針を介して凹凸構造面上を一定方向に3mmの長さで走査し、その場合の測定針の上下方向の移動変化を測定してそれを記録した表面粗さ曲線から算出される。
【0019】
防眩層の厚みは、特に限定されるものではないが、1〜50μmであることが好ましい。かような範囲であれば、防眩効果が適当であるため好ましい。
【0020】
防眩層における樹脂微粒子(特定波長吸収色素を含む場合は、特定波長吸収色素を含む樹脂微粒子全体)の含有量は、微粒子の効果が適切に得られることから、防眩層を構成する透明樹脂100質量%に対して、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0021】
防眩性フィルムは、防眩性を有するフィルムである限り、上記第1実施形態のほか、種々の改良および変形を含有する。例えば、透明基材と防眩層の間に、他の層が存在する形態も含まれる。他の層としては、下記に詳述する光拡散層(光拡散性ハードコート層)、電磁波遮蔽層、色調整層、衝撃吸収層などが挙げられる。
【0022】
電磁波遮蔽層はエッチング、印刷等の手法で金属のメッシュをフィルム上にパターニングしたものを樹脂で平滑化したフィルムや、繊維メッシュの上に金属を蒸着させたものを樹脂中に抱埋したフィルムが使用される。
【0023】
衝撃吸収層は表示装置を外部からの衝撃から保護するためのものである。支持体を使用しない光学フィルターで使用するのが好ましい。衝撃吸収材としては特開2004−246365号公報、特開2004−264416号公報に示されているような、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ウレタン系、シリコン系樹脂等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、第1実施形態の変形として、図2の形態が挙げられる。図2の防眩性フィルム20は、防眩層4上に反射防止層6を有する。反射防止層は、光干渉を利用し、画面の表面反射・映り込みを抑える効果を有する。なお、図2において、図1の符号と同一の符号を付したものは、同一の機能を有するものであり、その説明は省略する。
【0025】
反射防止層は、低屈折率層の単層からなる場合(LR)や、ハードコート層上に高屈折率層、低屈折率層の順に積層して形成される場合(AR)が挙げられる。好ましくは、低屈折率の単層からなるLRである。低屈折率層および高屈折率層は従来公知のものが用いられる。反射防止層としては、具体的には、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなる場合と、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたものからなる場合とがあり、前者の場合には、蒸着やスパッタリング法を用いて単層あるいは多層の形態で、透明基材上に形成させる方法がある。また、後者の場合は、透明フィルム上に、コンマコーター等のナイフコーター、スロットコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターを用いて透明基材の表面に反射防止コーティングを塗布する方法がある。低屈折率層としては、シリカ、フッ化マグネシウムまたはフッ素系樹脂等が好適に用いられ、高屈折率層としては、TiO、Y、La、ZrO、Al等が好適に用いられる。
【0026】
本発明の好適な他の実施形態としては、図3のフラットパネルディスプレイ用防眩性フィルムが挙げられる(以下、第2実施形態とも称する)。図3の防眩性フィルムは、透明基材1上に光拡散性ハードコート層5、その上に防眩層7を積層させた形態である。光拡散性ハードコート層5は、透明樹脂2’中に樹脂微粒子3が分散されて形成される。本実施形態においては、樹脂微粒子3中に、特定波長吸収色素が含有されてなる。防眩層7は、凹凸を形成するための微粒子11を含む。微粒子11としては、樹脂微粒子であってもよいし、無機微粒子であってもよい。樹脂微粒子および無機微粒子の詳細は、下記樹脂微粒子の欄で述べる。防眩層としては、上記形態に限定されず、防眩性を有する限り、従来公知の防眩層を用いることができる。例えば、第1実施形態で用いられた、特定波長吸収色素を含有した防眩層4を用いてもよい。なお、図3において、図1の符号と同一の符号を付したものは、同一の機能を有するものであり、その説明は省略する。防眩層中の透明樹脂2と、光拡散層中の透明樹脂2’は、同一の種類の樹脂であっても、異なる種類の樹脂であってもよい。
【0027】
光拡散性ハードコート層5も、透明樹脂2’中に樹脂微粒子3が分散したものであって、この限りにおいては、防眩層4と同じである。光拡散性ハードコート層は、ディスプレイからの光を層内において拡散させることにより、防眩層7の凹凸部から外に向かって出る光のうち、法線方向に出る光線の割合を減らし、法線方向以外の方向に出る光線の割合を増加させる機能を果たす。
【0028】
光拡散性ハードコート層においては、樹脂微粒子と透光性樹脂との屈折率の差が0.01〜0.5であることが好ましい。また、光拡散性ハードコート層の厚みは、ディスプレイの解像度にもよるが、1〜50μmであることが好ましい。かような範囲であれば、光拡散効果が適当であるため好ましい。そのほかの点や層の形成に関する事項は、防眩層4に関するものとして既に説明した内容と共通である。
【0029】
光拡散性ハードコート層5は、上面に特に微細凹凸を形成しないよう、平坦に塗工する必要がある。平坦の度合いが低ければ低いほど、光拡散性ハードコート層上への防眩層の塗工適性が低下する。また、より効果的な光拡散性を得るためにも、光拡散性ハードコート層の上面は平坦であることが好ましい。また、光拡散性ハードコート層は、内部ヘイズが8〜50であることが好ましく、より好ましくは、15〜30である。上限を超えると、防眩性フィルムをディスプレイに適用したときに、映像が白化して見え、また下限未満では、シンチレーションを防止する効果が低下する。
【0030】
本発明の好適な他の実施形態としては、図4のフラットパネルディスプレイ用防眩性フィルムが挙げられる(以下、第3実施形態とも称する)。図4の防眩性フィルム40は、透明基材1上に防眩層7を積層させ、透明基材の防眩層と対向する側に、粘着剤層8を有する形態である。防眩層7は、凹凸を形成するための微粒子11が透明基材2に分散されてなる。微粒子11としては、樹脂微粒子であってもよいし、無機微粒子であってもよい。防眩層7としては、上記形態に限定されず、防眩性を有する限り、従来公知の防眩層を用いることができる。粘着剤層8は、他の部材、例えば、液晶ディスプレイに用いられる場合には、防眩性フィルムと偏光子とを接着させるために設けられる。粘着剤層8は、特定波長吸収色素を含有する樹脂微粒子3を含む。樹脂微粒子に色素を含有させることによって、水分・イオン・酸素等に色素が直接接触しにくいため、色素の劣化が低減され、色素の耐久性が向上し、長時間遮断効果が維持されることは上述したとおりである。そして、樹脂微粒子は、粘着剤層にも容易かつ安定的に含ませることができるので、粘着剤層が樹脂微粒子を有する形態であっても、本発明の効果が有意に得られる。
【0031】
本発明の近赤外線吸収フィルターの他の好適な実施形態としては、防眩性フィルムと偏光子と粘着剤層とを有する偏光板が挙げられる。図5に、偏光板の一実施形態を示す(以下、第4実施形態とも称する)。図5の偏光板60は、粘着剤層8’、保護フィルム9、偏光子12、および防眩性フィルム50がこの順に積層されてなる。そして、粘着剤層8’は、特定波長吸収色素を含有する樹脂微粒子3を含む。樹脂微粒子に色素を含有させることによって、水分・イオン・酸素等に色素が直接接触しにくいため、色素の劣化が低減され、色素の耐久性が向上し、長時間遮断効果が維持されることは上述したとおりである。そして、樹脂微粒子は、粘着剤層にも容易かつ安定的に含ませることができるので、粘着剤層が樹脂微粒子を有する形態であっても、本発明の効果が有意に得られる。粘着剤層8’は、他の部材、例えば、液晶ディスプレイに用いられる場合には、偏光板と液晶セル(または液晶セル中のガラス基板)とを接着させるために設けられる。
【0032】
偏光子としては、例えばポリビニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコール等の従来に準じた適宜なビニルアルコール系ポリマーよりなるフィルムに、ヨウ素や二色性染料等よりなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適宜な処理を適宜な順序や方式で施したもので、自然光を入射させると直線偏光を透過する適宜なものを用いることができる。特に、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。偏光子の厚みは、5〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。保護フィルムとしては、例えばトリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂や脂環式構造を有する重合体樹脂からなるフィルムが挙げられるが、透明性、低複屈折性、寸法安定性などに優れる点から脂環式構造を有する重合体樹脂が好ましい。脂環式構造を有する重合体樹脂としては、後述の本発明の防眩性フィルムに用いる透明基材の欄で記載するものと同様のものが挙げられる。
【0033】
第4実施形態において、防眩性フィルム50は、上記第1〜3実施形態の防眩性フィルムおよびこの変形を用いてもよく、また従来公知の防眩性フィルムを用いてもよい。防眩性フィルム50中の透明基材が、偏光子12と接するように配置されるので、透明基材が、保護フィルムと反対側の偏光子の面を保護する役割を果たす。粘着剤層8’の積層体中の配置は、上記形態に限定されず、偏光子と保護フィルムの間に配置してもよく、また、保護フィルムの両面に粘着剤層が形成されてもよい。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態である第1〜第4実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特定波長吸収色素を含む微粒子がハードコート層または粘着剤層に含有される限り、本発明に包含される。
【0035】
本発明においては、近赤外線吸収色素を樹脂微粒子が含有しているため、該樹脂微粒子がハードコート層または粘着剤層に存在する限り、種々の積層体の形態が本発明の近赤外線吸収フィルターに包含される。第1〜第4実施形態では、防眩性フィルムまたは偏光板を用いて説明したが、近赤外線吸収フィルターは、その名称に拘束されるものではなく、色素を含む樹脂微粒子がハードコート層または粘着剤層に存在すれば足りる。
【0036】
以下、上記で説明した各部材について説明する。
【0037】
(ハードコート層)
ハードコート層を構成する透明樹脂としては、バインダーとしての性質を有し、ハードコート層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、さらに透明性のあるものであれば、特に限定されない。具体的には、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂など)が挙げられるが、皮膜の強度、加工性の点で、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。例えば、特開2003−302506号公報、特開2007−062102号公報に記載の透明樹脂を用いることができる。
【0038】
これらの中でも、屈折率が1.40〜1.70の熱硬化性樹脂や放射線硬化性樹脂は、ハードコート層の硬さや耐擦傷性を向上できるので、望ましい。とくに放射線硬化性樹脂として、紫外線硬化性樹脂を使用すると、紫外線の照射による硬化処理で簡単かつ効率良くハードコート層を形成できるので、望ましい。
【0039】
活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することにより重合して硬化皮膜等を形成する多官能単量体及び/又は単官能単量体から構成される樹脂を指す。多官能単量体、単官能単量体はそれぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】
活性エネルギー線硬化性樹脂には、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキッド系樹脂、スピロアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリチオールポリエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー又はプレポリマー、などの各種のものがある。
【0041】
たとえば、アクリル系の紫外線硬化性樹脂として、紫外線重合性の官能基(例えばビニル基)を有する、とくに上記官能基を2個以上、より好ましくは3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーさらにはこれにポリマーを加えたものに、紫外線重合開始剤を配合したものが用いられる。具体的には、多官能のビニル基を有するアクリル系のモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールまたはトリエチレングリコール等のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールまたはトリプロピレングリコール等のポリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールまたは1,4−ジメチロールベンゼン等の二価アルコールの(メタ)アクリレート;上記二価アルコールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを反応させて得られる二価アルコールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート;グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリンにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを反応させて得られる三価アルコールのジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールにエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを反応させて得られる四価アルコールのトリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;同一分子内に(メタ)アクリル基とビニルエーテル基とを有する2−ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等の異種重合性化合物等を挙げることができる。
【0042】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、ハードコート層としての強度および透明性の点から、重量平均分子量が5,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜100,000であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて、下記条件で測定された値を採用する。
【0043】
【表1】

【0044】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂は、必要に応じて公知の開始剤を用いてもよい。開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類等が挙げられる。これらの中でも、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類が好適である。中でも、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1オンが好ましい。開始剤は、イルガキュア184(チバスペシャリティ・ケミカルズ製)等の市販品を用いることができる。
【0045】
熱硬化性樹脂または反応性樹脂は、被膜形成過程もしくは被膜形成した後に加熱、活性エネルギー線照射、乾燥その他の手段によって、付加反応、縮合反応等に起因した架橋構造を形成しうるものであり、具体的に例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂等のフェノール系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ系樹脂、各種アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、硬化性アクリル系樹脂、イソシアナート基含有ポリエステル、イソシアナート基含有ポリエーテル等のウレタン変性樹脂、ポリアミン系樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂は、ハードコート層としての強度および透明性の点から、重量平均分子量が5,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜100,000であることがより好ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂としては重量平均分子量が10,000〜100,000程度のものが好適に使用され、その具体例としては、例えば塩化ビニル重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−メタクリル酸メチル共重合体等のビニルエステル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステル−アクリルニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ(ε−カプロラクタム)、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの縮合体等のポリアミド系樹脂、テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合体、アジピン酸とエチレングリコールとの縮合体等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシル変性ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース等のセルロース誘導体、その他ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は市販品をそのまま使用してもよいし、通常公知の方法によって合成したものを用いることもできる。
【0047】
ハードコート層の厚さは特に限定する必要はないが、ハードコート層としての機能を十分に発揮するためには、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.5〜20μmである。
【0048】
なお、本発明のハードコート層は、JIS K5600−5−4で示す鉛筆硬度試験(試験板はガラス板)でHB以上の硬度を示すことが好ましく、H以上の硬度を示すことがより好ましく、4H以上の硬度を示すことがさらに好ましい。
【0049】
ハードコート層には、下記樹脂微粒子の他、無機微粒子を含んでもよい。無機微粒子としては酸化チタン、シリカ等が用いられる。無機微粒子は1種類のみ用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。ハードコート層における無機微粒子の含有量は、ハードコート層100質量%に対して、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。また無機微粒子の平均粒子径は0.1〜15μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。
【0050】
また、ハードコート層には、適宜その他の添加剤を添加してもよい。
【0051】
(樹脂微粒子)
樹脂微粒子としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合系樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、アミノ系樹脂、ユリア系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、キシレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる微粒子が好ましい。また、透明性の点から、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合系樹脂、ポリスチレン系樹脂からなる微粒子が好ましく、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合系樹脂、ポリスチレン系樹脂からなる微粒子がより好ましい。樹脂微粒子は1種単独で用いられてもよく、2種以上併用して用いられてもよい。樹脂微粒子に用いられる樹脂は合成して得てもよいし、市販品を用いてよい。
【0052】
上記スチレン系樹脂には、ポリスチレン系樹脂、その他、スチレンと他の単量体との共重合体が挙げられる。ポリスチレン系樹脂は、主成分としてスチレン系の単量体を主成分として重合させたものであり、スチレンと共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。スチレン系の単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレンまたはp−クロロスチレンなどが挙げられる。これらのスチレン系単量体は単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。なお、本発明で主成分とは、全単量体中、70〜100質量%含有するのものを指し、好ましくは85〜100質量%以上、より好ましくは95〜100質量%含有するものである。スチレンと共重合可能な他の単量体としては、下記に記載の(メタ)アクリル系単量体などが挙げられる。なお、ポリスチレン系樹脂からなる微粒子の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000であることが好ましく、50,000〜500,000であることがより好ましい。
【0053】
スチレンと他の単量体との共重合体に用いられる他の単量体としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤、などを使用することも可能である。中でも、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
【0054】
上記アクリル系樹脂とは、主成分として(メタ)アクリル系単量体を用いて重合させたものであり、(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。(メタ)アクリル系の単量体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル系単量体は単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系モノマー、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。なお、アクリル系樹脂からなる微粒子の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000であることが好ましく、50,000〜500,000であることがより好ましい。
【0055】
さらに分子間に架橋構造を有する樹脂粒子を得ようとする場合、重合性二重結合を分子中に複数個有する(メタ)アクリル系モノマーを上記(メタ)アクリル系モノマーと共重合させることが可能である。このような架橋性(メタ)アクリル系モノマーとしては、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコール等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられ、これらを複数種組合せて用いることも可能である。また、さらに(メタ)アクリル系モノマーの配合割合を阻害しない範囲内において、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤、さらに、ポリブダジエン、ポリイソプレン不飽和ポリエステルおよび特公昭57−56,507号公報、特開昭59−221,304号公報、特開昭59−221,305号公報、特開昭59−221,306号公報、特開昭59−221,307号公報等に記載される反応性重合体などを使用することも可能である。
【0056】
アクリル−スチレン共重合系樹脂は、主成分として上記スチレン系単量体および(メタ)アクリル系単量体を用いて重合したものであり、(メタ)アクリル系単量体およびスチレン系単量体と共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。スチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との重合比は、モル比でスチレン系単量体:(メタ)アクリル系単量体=50:100〜500:100であることが好ましく、100:100〜300:100であることがより好ましい。なお、アクリル−スチレン共重合系樹脂からなる微粒子の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000であることが好ましく、50,000〜500,000であることがより好ましい。
【0057】
樹脂微粒子の平均粒子径は0.1〜15μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。微粒子の平均粒子径は、コールターカウンターによって測定される。
【0058】
(粘着剤層)
粘着剤層に用いられる粘着剤としては、電離放射線硬化型接着剤、感圧接着剤、感熱接着剤(ホットメルト型)などを用いることができるが、作業性などの点から、電離放射線硬化型接着剤及び感圧接着剤が好ましく、さらに、接着保持性の点から電離放射線硬化型接着剤が好ましい。
【0059】
前記電離放射線硬化型接着剤としては、例えば(1)側鎖に電離放射線架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、及び所望により光重合開始剤を含む接着剤、(2)(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、光重合性オリゴマー及び/又は光重合性モノマーと、所望により光重合開始剤を含む接着剤などが挙げられる。一方感圧接着剤としては、光学用途のもの、例えばアクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルブチラール系(PVA)、エチレン−酢酸ビニル系(EVA)等の感圧接着剤を好ましく用いることができるが、これらの中で、耐侯性などに優れる点から、アクリル系接着剤が特に好ましい。アクリル系接着剤は、通常(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、必要に応じて架橋剤成分を含む組成物である。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に使用される単量体としては、各種アルキル(メタ)アクリレートを使用できるが、中でも炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0061】
また、上記アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他の単量体を用いてもよい。これらの他の単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;アミノ基、アミド基、エポキシ基およびエーテル基等のいずれかを有する(メタ)アクリレート類;エチレンおよびブタジエン等の脂肪族不飽和炭化水素類ならびに塩化ビニル等の脂肪族不飽和炭化水素類のハロゲン置換体;スチレンおよびα−メチルスチレン等の芳香族不飽和炭化水素類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルエーテル類;アリルアルコールと各種有機酸とのエステル類;アリルアルコールと各種アルコールとのエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン化化合物等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、得られるアクリル系重合体に極性を付与するために前記(メタ)アクリル酸アルキルの一部に代えて(メタ)アクリル酸を少量使用してもよい。また、前記粘着剤は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。さらに、前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤を等を本発明の目的を逸脱しない範囲で各適宜に使用することもできる。
【0062】
また、粘着剤層に用いられる好適な粘着剤として、特開2006−124640号に開示されているように、オキサゾリン基を含有するアクリル系粘着性ポリマー(A)100質量部と、カルボキシル基を含有する架橋用ポリマー(B)0.01〜10質量部とを含むと共に、この架橋用ポリマー(B)がカルボキシル基含有モノマーを30質量%以上有する原料モノマー混合物から得られたものである、粘着剤組成物が挙げられる。
【0063】
粘着性ポリマー(A)は、オキサゾリン基含有モノマー(a−1)と、アルキル(メタ)アクリレート(a−2)と、必要により用いられるその他のモノマー(a−3)とからなる原料モノマー混合物(a)をラジカル重合することによって得られる。
【0064】
オキサゾリン基含有モノマー(a−1)は、下記一般式(1)で表される。
【0065】
【化1】

【0066】
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ同一または異なっていてもよく、独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、または置換アリール基を示し、Rはアルケニル基を示す)。
【0067】
具体的には、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。中でも、入手の容易な2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0068】
このオキサゾリン基含有モノマー(a−1)は、架橋点となるオキサゾリン基を粘着性ポリマー(A)に導入するためのモノマーであり、原料モノマー混合物(a)100質量%中、0.01質量%以上とするのが好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。ただし、架橋が進み過ぎないために、オキサゾリン基含有モノマー(a−1)は、原料モノマー混合物(a)100質量%中、5質量%以下であることが好ましい。
【0069】
アルキル(メタ)アクリレート(a−2)としては、炭素数4〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等を好ましく挙げることができ、なかでもブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートおよびイソオクチルアクリレートがより好ましい。これらは、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよく、限定はされない。このアルキル(メタ)アクリレート(a−2)は、粘着力発現のための必須モノマーであり、原料モノマー混合物(a)100質量%中、60質量%以上使用することが好ましい。ただし、粘着力発現以外の性質とのバランスから、アルキル(メタ)アクリレート(a−2)は、原料モノマー混合物(a)100質量%中、90質量%以下であることが好ましい。
【0070】
その他のモノマー(a−3)とは、上記オキサゾリン基含有モノマー(a−1)およびアルキル(メタ)アクリレート(a−2)と共重合することができ、かつ、これら以外のモノマーである。ただし、カルボキシル基含有モノマーは用いないことが望ましい。重合中にオキサゾリン基含有モノマー(a−1)と反応し、ゲル化するおそれがあるためである。その他のモノマー(a−3)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の前記アルキル(メタ)アクリレート(a−2)以外のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;アミノ基、アミド基、エポキシ基およびエーテル基等のいずれかを有する(メタ)アクリレート類;エチレンおよびブタジエン等の脂肪族不飽和炭化水素類ならびに塩化ビニル等の脂肪族不飽和炭化水素類のハロゲン置換体;スチレンおよびα−メチルスチレン等の芳香族不飽和炭化水素類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルエーテル類;アリルアルコールと各種有機酸とのエステル類;アリルアルコールと各種アルコールとのエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン化化合物等が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよく、限定はされない。上記その他のモノマー(a−3)は、原料モノマー混合物(a)100質量%中、0〜30質量%が好ましい。
【0071】
架橋用ポリマー(B)は、上記粘着性ポリマー(A)のオキサゾリン基の架橋反応相手であるため、架橋用ポリマー(B)は単独で粘着性を示す必要はない。この架橋用ポリマー(B)は、カルボキシル基含有モノマー(b−1)と、必要により用いられるその他のモノマー(b−2)とからなる原料モノマー混合物(b)をラジカル重合することにより得ることができる。カルボキシル基含有モノマー(b−1)としては、(メタ)アクリル酸、ケイ皮酸およびクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸のモノエステル等が挙げられ、これらのうちの1種以上を用いることができる。中でも、(メタ)アクリル酸およびイタコン酸が好ましい。
【0072】
このカルボキシル基含有モノマー(b−1)は、原料モノマー混合物(b)100質量%中、30質量%以上必要である。ただし、他の原料とのバランスから、カルボキシル基含有モノマー(b−1)は、原料モノマー混合物(b)100質量%中、90質量%以下であることが好ましい。また、カルボキシル基含有モノマー(b−1)とその他のモノマー(b−2)を共重合して、架橋用ポリマー(B)を得てもよい。その他のモノマー(b−2)としては、前記アルキル(メタ)アクリレート(a−2)と、前記その他のモノマー(a−3)のいずれか1種以上を用いることができる。また、エチレン(グリコール)ジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーを一部に用いてもよい。
【0073】
粘着剤層の厚さは、用いられる箇所により適宜調整されうるが、通常1〜50μm程度である。
【0074】
粘着剤層に樹脂微粒子を含有させる場合、樹脂微粒子の含有量は、粘着剤層100質量%に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。かような範囲であれば、本発明の効果を適切に得られるため好ましい。
【0075】
粘着剤層には、粘着剤、樹脂微粒子の他、従来公知のその他の添加剤を添加してもよい。
【0076】
(色素)
本発明は、樹脂微粒子に、最大吸収波長を800〜1100nmの領域に有する近赤外線吸収色素;640〜750nmに最大吸収波長を有する色素;および570〜600nmに最大吸収波長を有する色素のうち、少なくとも1種を含有する。従来から、近赤外領域の波長を吸収する色素を粘着剤中に配合した液晶ディスプレイが種々提案されている。本発明のように、微粒子に特定波長吸収色素を含有させることにより、色素の耐久性が格段に向上する。
【0077】
微粒子中の特定波長吸収色素の含有量は、特に限定されるものではない。微粒子が樹脂微粒子の場合、(色素を含む)樹脂微粒子100質量%に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0078】
本発明に用いられる特定波長吸収色素は、800〜1100nmの領域に有する近赤外線吸収色素;640〜750nmに最大吸収波長を有する色素;および570〜600nmに最大吸収波長を有する色素の少なくとも1種である。これらの色素は目的に応じて適宜選択されるが、少なくとも800〜1100nmの領域に有する近赤外線吸収色素を含むことが好ましく、800〜1100nmの領域に有する近赤外線吸収色素と640〜750nmに最大吸収波長を有する色素または570〜600nmに最大吸収波長を有する色素とを有することがさらに好ましく、800〜1100nmの領域に有する近赤外線吸収色素;640〜750nmに最大吸収波長を有する色素;および570〜600nmに最大吸収波長を有する色素の3種全てを含むことが特に好ましい。
【0079】
フラットパネルディスプレイ用途においては、プラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイから発生する近赤外線光が家電用テレビ、クーラー、ビデオデッキ等のリモコン等の周辺電子機器、さらには伝送系光通信の誤動作を誘発することがあり、この近赤外線をカットする赤外線吸収フィルターを前面に設置することが必要とされる。これを目的として、800〜1100nmの領域に有する近赤外線吸収色素や640〜750nmに最大吸収波長を有する色素が用いられる。また、640〜700nmの波長の光は、赤色の発色が弱い一部のLCDに利用される例もあるが、610〜635nmの波長域の純粋な赤色とは異なり「深紅」と呼ばれる色調であることから、フラットパネルディスプレイや液晶ディスプレイの分野では必ずしも好ましい色調の光とはいえないため、この波長域をカットする目的で色素が配合される場合もある。さらに、570〜600nmの領域は、画像が不鮮明となるネオン発光に由来するオレンジ光に該当するため、570〜600nmに最大吸収波長を有する色素が用いられる。
【0080】
本発明に用いられる800〜1100nmに最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、ジイモニウム系色素などが挙げられる。これらのうち、フタロシアニン系色素としては、特開2001−106689号公報に記載のフタロシアニン系色素、特に特開2001−106689号公報の実施例8で製造されるフタロシアニン[CuPc(2,5−ClPhO){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)](λmax:807nm)、同公報の実施例7で製造されるフタロシアニン[VOPc(2,5−ClPhO){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)](λmax:870nm)、同公報の実施例9で製造されるフタロシアニン[VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)](λmax:912nm);特開2007−56105号公報の実施例2で製造されるフタロシアニン[CuPc(PhS){2,6−(CHPhO}{CH(CHCH(C)CHNH}](λmax:903nm);特開2004−18561号公報に記載のフタロシアニン系色素、特に特開2004−18561号公報の実施例8で製造されるフタロシアニン[VOPc(PhS){2,6−(CHPhO}{CHCHO(CHNH}](λmax:928nm)、同公報の実施例17(または特開2005−344021号公報の合成例1)で製造されるフタロシアニン[VOPc(4−(CHO)PhS){2,6−(CHPhO}{CH(CHCH(C)CHNH}](λmax:962nm);下記式:
【0081】
【化2】

【0082】
で示される、フタロシアニン化合物[以下、{CuPc(3−メトキシカルボニルフェノキシ)(2−クロロベンジルアミノ)F}とも称する](λmax:916nm)、下記式:
【0083】
【化3】

【0084】
で示される、フタロシアニン化合物[以下、{CuPc(3−メトキシカルボニルフェノキシ)(2−エチルヘキシルアミノ)}とも称する](λmax:963nm)などが好ましく使用される。この場合では、耐久性、耐候性を考慮すると、800〜1100nmのフタロシアニン系色素は、フタロシアニン骨格の中心金属は銅であることが特に好ましい。また、ジイモニウム系色素としては、(N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(イモニウム)・ヘキサフルオロアンチモン酸塩(λmax:1090nm)、N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−ビス(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)イモニウム塩(市販品としては、日本カーリット(株)製、商標:CIR−1085)、N,N,N’,N’−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン−ビス(六弗化アンチモン酸)イモニウム塩(市販品としては、日本カーリット(株)製、商標:CIR−1081)、ジイモニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドアニオン(市販品としては、CIR−RL(日本カーリット製))などが好ましく使用される。ニッケル錯体系色素としては、Bis(1,2−diphenylethene−1,2−dithiol)nickelなどが好ましく使用される。シアニン系色素としては、安定化シアニン色素が好ましい。安定化シアニン色素とは、シアニン系カチオンとクエンチャーアニオン(励起状態にある活性分子(たとえば、一重項酸素()等。)を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するアニオン)とからなる塩化合物を指す。シアニン系カチオンまたはクエンチャーアニオンとしては、特開2007−163644号公報に記載の化合物を用いることができる。具体的には、シアニン系カチオンとしては、下記式で表されるカチオンNo.1またはカチオンNo.2が好ましく用いられ、クエンチャーアニオンとしては、アニオンNo.11またはアニオンNo.22が好ましく用いられる。
【0085】
【化4】

【0086】
【化5】

【0087】
【化6】

【0088】
上記列挙した色素の中でも、ジイモニウム系色素、920nmを超え1100nm以下に最大吸収波長を有するフタロシアニン(II)、シアニン系色素などは特に耐光性に劣る。したがって、これらの色素を樹脂微粒子中に含有させることにより、本発明の効果が顕著に得られることから好ましい。
【0089】
また、複数の近赤外線吸収剤を含有することによって、液晶ディスプレイ等から発生する不要な波長を幅広く吸収できる。優れた近赤外線吸収能及び透明性を発揮すると同時に、熱安定性(耐熱性)、耐湿熱性や耐光性などの諸性にも優れることから、近赤外線吸収色素が、800〜920nmに最大吸収波長を有するフタロシアニン(I)と、920nmを超え1100nm以下に最大吸収波長を有するフタロシアニン(II)とを含む、または近赤外線吸収色素が、800〜920nmに最大吸収波長を有するフタロシアニン(I)と、ジイモニウム系色素とを含む、ことが好ましく、近赤外線吸収色素が、800〜920nmに最大吸収波長を有するフタロシアニン(I)と、920nmを超える領域に最大吸収波長を有するフタロシアニン(II)とを含むことがより好ましい。
【0090】
本発明で用いられうる800〜920nmに最大吸収波長を有するフタロシアニン(I)としては、特開2001−106658号公報に記載されるフタロシアニン化合物、特開2001−133623号公報に記載される、含フッ素フタロシアニン系化合物(日本触媒社製、「Excolor IR−1」)、(日本触媒社製、「TX−EX810K」)、(三井東圧染料社製、「SIR−159」)、特開2002−822193号公報に記載される、含フッ素フタロシアニン系色素(日本触媒社製、「イーエクスカラー801K」)、(日本触媒社製、「イーエクスカラー802K」)、(日本触媒社製、「イーエクスカラー803K」)、その他イーエクスカラーIR−10、イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−14、イーエクスカラーIR−12、特開2004−309655号公報に記載される、800nm以上850nm未満に最大吸収波長を有するフタロシアニン系色素および850〜920nmに最大吸収波長を有するフタロシアニン系色素などを使用することができる。
【0091】
本発明で用いられうる920nmを超え1100nm以下に最大吸収波長を有するフタロシアニン(II)としては、特開2004−309655号公報に記載されるフタロシアニン系色素などを使用することができる。
【0092】
(特定波長吸収色素を含有する樹脂微粒子の製造方法)
特定波長吸収色素を含有する樹脂微粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂を形成する単量体の重合時に特定波長吸収色素を含有させて製造する方法;溶解した樹脂に特定波長吸収色素を混合した後、微粒子化する方法などを挙げることができる。好ましくは、樹脂を形成する単量体の重合時に特定波長吸収色素を含有させて製造する方法である。
【0093】
樹脂を形成する単量体を重合する方法としては、懸濁重合によるもの、乳化重合によるものなどが知られている。中でも、懸濁重合により樹脂微粒子を得ると、所望の粒径の樹脂粒子を比較的容易に得ることができ、また溶剤を使用しないこと、反応制御が容易であることなどの利点があり、好ましい。
【0094】
懸濁重合は、重合性単量体を、単量体に可溶な重合開始剤存在下で、好ましくは水を含む溶媒中で重合させる。用いられる重合開始剤としては、重合に用いる重合開始剤としては、通常懸濁重合に用いられる油溶性の過酸化物系あるいはアゾ系開始剤が利用できる。一例を挙げると、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(アゾイソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等がある。該重合開始剤は、重合性単量体に対して、0.01〜20重量%、特に、0.1〜10重量%使用されるのが好ましい。
【0095】
また、上記水を含む溶媒中には、水以外に有機溶剤を含めることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のアステル類;イソオクタン、シクロへキサン等の(シクロ)パラフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類などを挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0096】
なお、特定波長吸収色素は、重合性単量体および重合開始剤と混合させてから、重合を行うことが好ましい。この際の混合順序は問わない。
【0097】
また懸濁重合においては、懸濁粒子の安定化を図るために分散安定剤を添加することができる。分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、トラガント、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等があり、その他アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等が用いられる。アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等がある。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等がある。カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等がある。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等がある。
【0098】
これら分散安定剤は、得られる樹脂粒子の粒子径が所定の大きさ、例えば0.1〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは0.5〜30μmとなるように、その組成や使用量を適宜調節して使用すべきものであり、例えば、重合性単量体に対して0.01〜29重量%、好ましくは0.1〜10重量%の量で用いられる。
【0099】
さらに、懸濁重合に際しては、必要に応じて、重合性単量体中、または溶媒中にその他の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、顔料、染料などの着色剤、可塑剤、重合安定剤、蛍光増白剤、磁性粉、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などを挙げることができる。なお、これらの添加剤は、種々の方法により表面処理されたものであってもよい。
【0100】
また、懸濁重合を行う際、懸濁粒子界面において生起する乳化重合を効果的に抑制することを目的として、−SH、−S−S−、−COOH、−NOおよび−OHからなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有し、水に対して実質的に不溶性でかつ重合性単量体に対して難溶性である化合物を添加してもよい。かような化合物としては、具体的には、サリチル酸、チオサリチル酸、ジチオサリチル酸、ニトロ安息香酸、3,4−ジニトロ安息香酸、ニトロフェノール等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0101】
懸濁重合は、通常10〜90℃、好ましくは30〜80℃で行われる。この粒子径の規制は、例えば、所定の成分を水性媒体に分散させた懸濁液をT.K.ホモミキサーにより撹拌して行なう。あるいはラインミキサー(例えばエバラマイルダー)等の高速撹拌機に1回ないし数回通過させることにより行われる。懸濁重合の時間は、特に限定されるものではないが、通常1〜30分、好ましくは2〜10分で行われる。
【0102】
重合性単量体と、特定波長吸収色素との混合比は、特に限定されるものではないが、重合性単量体に対して、色素が0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0103】
溶解した樹脂に特定波長吸収色素を混合した後、微粒子化する方法は、一例を挙げれば、樹脂を溶媒に溶解した後、特定波長吸収色素をこれに溶解し、高粘度になるまで濃縮して得られたペレットを粉砕することにより微粒子を得る。
【0104】
樹脂を溶解する際に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではないが、テトラ
ヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。溶媒量は特に限定されるものではないが、樹脂に対して、質量で5〜20倍程度である。
【0105】
さらに、混合に際しては、必要に応じて、溶媒中にその他の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、顔料、染料などの着色剤、可塑剤、重合安定剤、蛍光増白剤、磁性粉、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などを挙げることができる。
【0106】
得られたペレットは、乾燥した後、所望の粒子径の微粒子を得るために、適宜粉砕・分級を行う。
【0107】
(透明基材)
透明基材1としては、従来公知のものが使用でき、透明樹脂フィルム、透明樹脂シート、透明樹脂板(例;アクリル樹脂板)や透明ガラスがあり得るが、工業的には、連続加工が容易でフレキシブルな透明樹脂フィルムを使用することが好ましい。透明樹脂フィルムとしては、トリアセチルセルロース(略してTAC、セルローストリアセテートとも言う。)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルサルホン、アクリル系もしくはメタクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリロニトリル等の樹脂系のフィルムが使用できる。中でも、複屈折がないTACが好ましい。透明樹脂フィルムの厚みは、通常25μm〜1000μm程度、好ましくは、200μm以下とする。
【0108】
ハードコート層を透明基材に積層するための方法は特に限定されない。例えば、透明樹脂、色素を含有する微粒子、および必要に応じて重合開始剤、増感剤、希釈溶剤、フィラー、顔料分散剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、乾燥防止剤、浸透剤、pH調整剤、金属封鎖剤、防菌防かび剤、界面活性剤等を加えて、均一に混合分散して、混合物を形成した後、スピンコーティング法、ホイーラーコーティング法、ディップコーティング法、スプレイコーティング法、スライドコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアリバースコーティング法、メニスカスコーティング法、またはビードコーティング法等のコーティング法;フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、またはグラビア印刷法等の印刷法により、透明基材の表面に塗付を行ない、塗膜を形成する。その後、熱硬化型樹脂を含有する場合には加熱により、活性エネルギー線硬化型樹脂を含有する場合には活性エネルギー線(電磁波、紫外線(UV)、可視光線、赤外線、電子線、ガンマー線等)により、硬化を行う。ハードコート層を形成する樹脂に色素が含有される場合は、透明樹脂および色素、その他必要に応じて必要な成分を均一に混合分散して、混合物を形成した後、透明基材の表面に塗布を行ない、塗膜を形成し、硬化を行う。
【0109】
紫外線の照射による硬化の場合、波長150〜450nmの光を含む光源を用いることが好ましい。このような光源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等が好適である。これらの光源と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0110】
電子線の照射による硬化の場合、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線を利用することができる。また、電子線と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0111】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、高い安定性を有するため、長期間の保管や使用でも外観と近赤外線吸収能が維持される。本発明の近赤外線吸収フィルターは、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、もしくはLEDディスプレイ等のディスプレイに用いることができる。好ましくは、液晶ディスプレイまたはプラズマディスプレイであり、より好ましくは液晶ディスプレイに用いられる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を、合成例、実施例を参照しながらより詳細に説明する。
【0113】
合成例1:色素含有微粒子Aの合成
攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに、ポリオキシエチレンスルファアンモニウム(ハイテノールN−08、第一工業製薬株式会社製)0.5部を溶解した脱イオン水900部を仕込んだ。そこへスチレンを70部、ジビニルベンゼン30部、アゾイソブチロニトリル1部および3,4−ジニトロ安息香酸1部および特開平2005−344021号公報の合成例1と同様にして合成されたフタロシアニン[VOPc{4−(CHO)PhS}{2,6−(CHPhO}{CH(CHCH(C)CHNH}](λmax:962nm)1.5部を配合した混合物を仕込み、T.K.ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製)により8000rpmで5分間攪拌して均一な懸濁液とした。次いで、窒素ガスを吹き込みながら75℃に加熱し、この温度で5時間攪拌を続けて懸濁重合反応を行った後冷却した。この懸濁液をろ過した後乾燥して着色樹脂微粒子Aを得た。得られた色素含有微粒子Aをコールターカウンターで測定した結果、平均粒子径が約2μmであった。
【0114】
合成例2:色素含有微粒子Bの製法
スチレン−アクリル酸エステル共重合体(商品名:ハイマーTB−1000F、三洋化成株式会社製)共重合体100部をテトラヒドロフラン900部に溶解した後、ジイモニウム系化合物(N,N,N’、N’−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(イモニウム)・ヘキサフルオロアンチモン酸塩)0.5部を溶解し、高粘度になるまで濃縮しペレット化した。得られたペレットを室温で乾燥した後、60℃で一晩真空乾燥した。その後ハンマーミルを用いて粗粉砕し、今一度60℃で一晩真空乾燥した後、エアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。得られた微粉末をさらに分級して2μmを選別して色素含有微粒子Bを得た。
【0115】
(実施例1)
市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(約50μm)上に、下記組成の光拡散層(光拡散性ハードコート層)形成用塗料組成物を、フィルム上にグラビアリバースコーティング法により、膜厚が10g/mとなるように塗工し、塗工後の塗膜を温度70℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射線量が100mJになるように照射して硬化させ、光拡散層を形成した(光拡散層の膜厚:約10μm)。その後、光拡散層上に、下記組成の防眩層形成塗料組成物を、グラビアリバースコーティング法により、膜厚が3g/m2となるように塗工し、塗工後の塗膜を温度70℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射線量が100mJになるように照射して硬化させ、防眩層を形成して(防眩層の膜厚:約3μm)、防眩性フィルムを得た。得られたフィルムの硬度は、2Hであった。また、JIS−K7136ヘイズ(曇度)に準じてヘイズを測定し、ヘイズ値は、51.6であった。
【0116】
【表2】

【0117】
但し、近赤外吸収色素1は特開2007−56105号公報の実施例2と同様にして製造された下記フタロシアニン化合物を表す。
【0118】
【化7】

【0119】
また、同じく近赤外吸収色素2は特開2001−106689号公報の実施例8と同様にして製造された下記フタロシアニン化合物を表す。
【0120】
【化8】

【0121】
【表3】

【0122】
次いで、このようにして得られた防眩性フィルムの基材上に、紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、TINUVIN384)2.7質量部、酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、IRGANOX−1010)0.9質量部、アクリル系粘着剤(東亞合成(株)製、アロンS−1601)96.4質量部を混合して得た混合物を、乾燥塗膜の厚みが15μmとなるように塗工して、紫外線吸収剤を含有する透明粘着層を積層した。この粘着加工を施した近赤外吸収剤を含むフィルムの粘着面を、ロールラミネータにより厚さ3mmの強化ガラス基材に貼り付けて、近赤外吸収フィルターを製造した。
【0123】
(実施例2)
実施例1の光拡散層形成用塗料組成物における色素含有微粒子Aのかわりに色素含有微粒子Bを、トルエンの代わりにメチルセロソルブを用いた以外は、実施例1と全く同様に操作し近赤外吸収フィルターを製造した。得られたフィルムの硬度は、2Hであった。
【0124】
合成例3:粘着性ポリマーエマルションの重合
2−エチルヘキシルアクリレート78部、n−ブチルアクリレート10部、エチルアクリレート5部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート6部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン1部と、分子量調整剤としてtert−ドデシルメルカプタン(TDM)0.04部、乳化剤として「ハイテノールLA−16」(第一工業製薬社製)2.5部と脱イオン水32部を混合し、良く攪拌してプレエマルションを作製した。次いで、滴下ロート、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えたフラスコに、脱イオン水を30部仕込み、窒素置換して70℃に昇温した。ここに、過硫酸カリウム0.4部、重亜硫酸水素ナトリウム0.015部を添加した後、前記プレエマルションのうちの0.29部を添加して、重合反応を開始した。反応開始から10分経過してから、前記プレエマルションの残りを約2.5時間かけて連続滴下すると共に、並行して重亜硫酸水素ナトリウム0.135部を滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、70℃で1.5時間熟成した後、室温まで冷却し粘着性ポリマーエマルションE−1が得られた(固形分55.0%)。
【0125】
(合成例4)
エチルアクリレート59.8部、メタクリル酸40部、エチレン(グリコール)ジメタクリレート0.2部と、乳化剤として「ハイテノールLA‐10」(第一工業製薬社製)1.5部とイオン交換水76.96部を良く混合し、良く攪拌して、プレエマルションを作製した。次いで滴下ロート、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えたフラスコに、脱イオン水を157.16部と前記「ハイテノールLA‐10」を1.5部仕込み、窒素置換して68℃に昇温した。ここに、前記プレエマルションのうちの8.92部を投入し、5分後に、過硫酸アンモニウム0.012部と重亜硫酸水素ナトリウム0.02部を添加して、72℃で重合反応を開始した。反応時間から20分経過してから、前記プレエマルションの残りを約2時間かけて連続滴下する共に、並行して過硫酸アンモニウム0.219部を滴下し、架橋用ポリマーエマルションE−2を得た(固形分28.0%)。
【0126】
(実施例3)
粘着性ポリマーエマルションE−1を100部(ウェット)とり、架橋用ポリマーエマルションE−2を1.01部(ウェット)加え、更に色素含有微粒子Aを5.5部、上記の近赤外吸収色素1を0.45部、上記近赤外吸収色素2を0.4部を加えてよく攪拌し、近赤外色素含有の粘着剤エマルションを得た。この近赤外色素含有の粘着剤エマルションを市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(約50μm)上に乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗工し、105℃の熱風乾燥機で90秒間乾燥後、透明コーティングフィルムの粘着面を、ロールラミネータにより厚さ3mmの強化ガラス基材に貼り付けて、近赤外吸収フィルターを製造した。
【0127】
(実施例4)
実施例4の色素含有微粒子Aにかわりに色素含有微粒子B5.5部を用いた以外、実施例3と全く同様に操作し、近赤外吸収フィルターを製造した。
【0128】
(比較例1)
実施例2で色素含有微粒子B20部のかわりに合成例2で色素を加えずに作製した微粒子20部と、コーティング膜に含まれるジイモニウム系化合物(N,N,N’、N’−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(イモニウム)・ヘキサフルオロアンチモン酸塩)色素量が実施例2と全く同量になるように塗料液にジイモニウム系化合物を直接加えた以外は、実施例2と全く同様に操作し、近赤外吸収フィルターを製造した。
【0129】
(比較例2)
実施例4で色素含有微粒子B5.5部のかわりに合成例2で色素を加えずに作製した微粒子5.5部と、コーティング膜に含まれるジイモニウム系化合物(N,N,N’、N’−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−ベンゾキノン−ビス(イモニウム)・ヘキサフルオロアンチモン酸塩)色素量が実施例4と全く同量になるように塗料液にジイモニウム系化合物を直接加えた以外は、実施例4と全く同様に操作し、近赤外吸収フィルターを製造した。
【0130】
上記で得られた近赤外吸収フィルターを下記の試験方法で耐光性、耐久性の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0131】
(耐光性の評価)
キセノン耐光性試験機(ATLAS社製サンテストCPS)を用い、13万ルクスの光を照射し、780〜1000nmまでの初期の吸光度の平均値と1000時間後の吸光度の平均値を測定し、初期に対する吸光度の平均値の残存率が80%以上を◎、70〜80%を○、50〜60%を△、50%以下のものを×として評価した。
【0132】
(耐熱性の評価)
イナートオーブン(TABAI製INERT OVEN IPHH−200)を用いて、温度80℃の条件で1000時間の耐熱テストを行い、その後780〜1000nmまでの初期の吸光度の平均値と1000時間後の吸光度の平均値を測定し、初期に対する吸光度の平均値の残存率が97%以上を◎、97〜95%を○、95%未満のものを×として評価した。
【0133】
【表4】

【0134】
(実施例5〜9)
実施例1〜4に記載の近赤外線吸収フィルターを、プラズマディスプレイの前面部に取り付け、リモコンにより動作制御を行なう電気機器をディスプレイから2.5mの位置に設置し、誤作動が誘発されないかを観察したところ、フィルターを取り付けない場合には誤作動が誘発されたが、実施例1〜4に記載の近赤外線吸収フィルターをプラズマディスプレイの前面部に取り付けた場合には、誤作動の誘発が全く認められなかった。
【0135】
これから、実施例1〜4の本発明による近赤外線吸収フィルターは、リモコンなどの誤作動を抑制できると考察される。
【0136】
(実施例10〜14)
実施例1〜4で得られたフィルターを図6に示すように、直射日光に対してほぼ直角となるように調節された支柱台102に対して垂直方向(直射日光の入射方向)に支柱103を設け、該支柱103の先端に測定用フィルター104を設置し、該支柱103の下部付近に上下方向に調節可能なサンプル支持板105を設けてなる温度測定装置106(測定用のパネルは風が吹き抜けるので、熱がこもらないような構造)を用い、該サンプル支持板105上にブラックパネル107をセットし、該ブラックパネル107の表面と測定用フィルター104の距離を200mmにセットし、該ブラックパネル107の表面に温度センサー108を接触させた。この温度センサー108は、導線109を介して測定装置(図示せず)に連結している。この温度測定装置を用いて、直射日光下で上記フィルターを透過した光のあたる部分の温度を測定した。また、湿度50%、ブラックパネル温度63℃、紫外線強度90mW/cmで50時間の耐光性テストを行った後再び上記と同様にして温度測定を行った。その結果を表2に示す。
【0137】
(比較例3、4)
実施例10において、比較例1および2で得られたフィルターを用いた以外は、実施例10と全く同様に操作して温度変化を測定した。
【0138】
(比較例5)
比較例1において色素化合物を一切添加しない以外は比較例1と全く同様に操作し、実施例10と全く同様に操作して温度変化を測定した。
【0139】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の防眩性フィルムの一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の防眩性フィルムの一実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の防眩性フィルムの一実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明の防眩性フィルムの一実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明の偏光板の一実施形態を示す模式図である。
【図6】実施例で用いた温度測定装置を示す図である。
【符号の説明】
【0141】
1、1’ 透明基材、
2、2’ 透明樹脂、
3 樹脂微粒子、
4、7 防眩層、
5 光拡散性ハードコート層、
6 反射防止層、
8、8’ 粘着剤層、
9 保護フィルム、
10、20、30、40、50 防眩性フィルム、
11 微粒子、
12 偏光子、
60 偏光板、
101 直射日光、
102 支持台、
104 測定用フィルター、
106 温度測定装置、
107 ブラックパネル、
108 温度センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコート層または粘着剤層の少なくとも一方が樹脂微粒子を有し、前記樹脂微粒子が、800〜1100nmに最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素;640〜750nmに最大吸収波長を有する色素;および570〜600nmに最大吸収波長を有する色素からなる群から選ばれる少なくとも1種の色素を含有する、近赤外線吸収フィルター。
【請求項2】
前記ハードコート層が防眩層である、請求項1に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項3】
前記樹脂微粒子が、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合系樹脂またはスチレン系樹脂からなる微粒子から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項4】
前記樹脂微粒子が、最大吸収波長を800〜1100nmの領域に有する、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素およびジイモニウム系色素からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項5】
前記樹脂微粒子に含まれる色素が、ジイモニウム系色素、920nmを超え1100nm以下に最大吸収波長を有するフタロシアニン(II)およびシアニン系色素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項6】
さらに、800〜920nmに最大吸収波長を有するフタロシアニン(I)を含む、請求項5に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルターを含む、フラットパネルディスプレイ。
【請求項8】
前記フラットパネルディスプレイが液晶ディスプレイである、請求項7に記載のフラットパネルディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−60617(P2010−60617A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223450(P2008−223450)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】