説明

近距離無線ネットワークの改善

本発明は、ネットワーク装置と、コーディネータと、を含む装置の無線ネットワークに関し、コーディネータは、無線通信のための送信及び受信手段を有し、且つ、ネットワーク装置は、無線通信のための送信手段及び受信手段と、比較的高いスループット方式と比較的低いスループット方式という2つの異なるチャネルアクセス方式に従ってネットワーク装置に選択的に通信させるべく動作可能な制御手段と、を有し、比較的低いスループット方式から比較的高いスループット方式への切替えのためにネットワーク内においてトリガが提供され、トリガは、ネットワーク装置の送信必要性を考慮して判定される。送信必要性は、本発明によれば、ネットワークに基づいたものであってよく、送信必要性は、ネットワーク装置のバッファ内において待機しているデータ、装置の非常事態の状況、装置の緊急事態の状況、及び電池レベルという要因のうちの1つ又は複数のものに基づいて判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線パーソナルエリアネットワークに関し、更に詳しくは、但し、必ずしもこれに限定されないが、無線センサネットワークと、人間又は動物の身体上に又はその周辺に配設された無線通信センサを含むボディエリアネットワークと、に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂ボディエリアネットワーク、即ち、BAN(Body Area Network)は、相対的に短い距離において情報を搬送するべく使用される無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Network:WPAN)の一例である。無線ローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Network:WLAN)とは異なり、WPANを介して実現される接続は、インフラストラクチャをほとんど又はまったく必要としない。この特徴により、様々な装置のために、小型で電力効率に優れた廉価な解決手段を実現できる。特に興味深い点は、センサを使用して患者の状態を監視する医療BAN(Medical BAN:MBAN)の可能性である。検知されたデータをデータシンク(これは、ネットワークコーディネータであってもよい)に供給するべくセンサを主に利用しているBANが、無線センサネットワーク(Wireless Sensor Network:WSN)の一例である。これに代えて又はこれに加えて、MBANとして機能するWSN内には、アクチュエータなどの更に能動的な装置を包含することも可能である。
【0003】
近距離無線ネットワークの他の興味深い使用法は、産業用の監視における使用法である。このような無線ネットワークは、センサ及びその他の装置を包含するように設計可能である。例えば、配備の一形態は、監視のためにタービンブレード又はその他の産業用装置上の様々な位置の温度などのパラメータを計測するべく構成されたセンサを包含することになろう。この場合にも、このような無線ネットワーク内には、更に能動的な装置を包含可能であり、且つ、インフラストラクチャは、ほとんど又はまったく必要とされない。
【0004】
IEEE802.15.4規格は、低データレートのWPAN用の物理レイヤ(PHY)及びMAC(Medium Access Control:媒体アクセス制御)サブレイヤの仕様を規定しているが、IEEE802.15.4ネットワークのカバレージは、WPANを通常規定するパーソナル動作空間(Personal Operating Space:POS)を超えて拡大可能であり、且つ、従って、もう少し大規模な産業用の配備にも好適である。本出願においては、このようなもう少し規模の大きなネットワークも、WSN、WPAN、及びBANという用語に含まれている。IEEE802.15.4は、アドホックピコネット用の規格であるIEEE802.15.3との間に、いくつかの類似性を具備している。このような人間又は物体周辺のピコネットは、通常、すべての方向において少なくと10mをカバーし、且つ、静止するか又は運動中であるかに拘わらず、人間又は物体を包み込む。これらは、更に高データレートのWPANを含む。IEEE802.15.4規格(2006)及びIEEE802.15.3規格(2003)は、本引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0005】
IEEE802.15.4において想定されているタイプのWPANは、産業用の監視などのアプリケーションには好適であるが、MBANに必要とされるような種類のデータ信頼性を提供しない。
【0006】
医療アプリケーションには、信頼性及びプロセスの自動化を向上させると共にヒューマンエラーを低減しつつ、人間の労働と関連した費用を低減するという要件が存在している。センサは、必要とされる情報を提供可能であり、且つ、医療装置内において既に広く利用されている。これには、病院での回復治療、自宅治療、集中治療ユニット、及び高度な外科的処置が含まれる。脈拍や体温などのための外部センサ、体液との接触状態となるセンサ、(切れ込みを通じて)カテーテル内において使用されるセンサ、外部アプリケーション用のセンサ、無線センサを有する使い捨て型のスキンパッチ、及び埋植可能なセンサを含む医療用途に利用される多くの異なるタイプのセンサが存在している。
【0007】
病院又は病室の患者周辺のセンサのWPANは、患者の移動性、監視の柔軟性、現在監視されていない治療エリアへの監視の拡大、臨床過誤の低減、及び監視費用の全体的な低減を含む多数の臨床的な利益を提供可能であろう。身体着用型のセンサは、一人の患者の身体上の様々なセンサタイプを包含可能である。これらは、患者の身体に迅速に適用され且つ除去される能力を必要としている。
【0008】
このようなセンサは、個別には、最低で患者当たりに1〜2kbpsというビットレートを具備可能であり、且つ、集合的には、10kbpsのビットレートを必要としよう。レンジは、わずかに1メートルで十分であろう。但し、医療WSNアプリケーションは、臨床環境においては、ミッションクリティカルなアプリケーションである。限られたデータ損失及び限られたレイテンシのための安定した無線リンク、患者及びセンサ密度のための能力、その他の無線との共存、数日にもわたる連続動作のための電池寿命、及び身体着用型装置のための小さなフォームファクタは、医療WSN又はMBAN用の要件の例である。これらの要件は、FEC(Forwad Error Correction:前方誤り訂正)及びARQ(Adaptive Repeat reQuest:適応再送要求)、センサ情報レートのための低デューティサイクルTDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)、及び相対的に効率的な小さなアンテナを含む時間及び周波数ドメインにおけるダイバーシティ及び誤り制御法などの技法を利用して満足させることができる。このため、特に医療アプリケーション用のボディエリアネットワークの特性を規定することを目的とした更なるIEEE802.15.6規格を規定するための作業が進行中である。
【0009】
IEEE802.15.3、IEEE802.15.4、IEEE802.15.6、及び電池電力供給型のネットワーク装置を含む無線ネットワークに関係したその他の規格における主要な要件の1つは、電池寿命の節約である。これは、患者の生命が医療アプリケーションの無線リンクの信頼性によって左右される非常事態の状況においては、或いは、発電所などのミッションクリティカルな産業環境を監視するには、特に重要である。但し、この要件は、通常の状態において、且つ、非常事態の状況においても、十分なネットワークスループットを提供するというニーズと均衡させなければならない。チャネルアクセス方式には、高データスループットのために設計されているものも存在するが、その他のものは、低スループット且つ低パワーの状況に適している。
【発明の概要】
【0010】
ネットワーク装置が比較的低いスループット方式から比較的高いスループット方式に切り替え可能であることが有利であろう。一態様によれば、本発明の実施例は、ネットワーク装置と、コーディネータを含む装置の無線ネットワークを提供し、コーディネータは、ネットワーク内のその他の装置との無線通信のための送信及び受信手段を有し、且つ、ネットワーク装置は、ネットワーク内のその他の装置との無線通信のための送信手段及び受信装置と、比較的高いスループット方式と比較的低いスループット方式という2つの異なるチャネルアクセス方式に従ってネットワーク装置に選択的に通信を実行させるべく動作可能な制御手段を有し、比較的低いスループット方式から比較的高おスループット方式への切替えのためにネットワーク内においてトリガが提供され、トリガは、ネットワーク装置の送信必要性を考慮して定義される。
【0011】
本発明の実施例のネットワークによれば、センサなどのネットワーク装置は、2つの異なるチャネルアクセス方式のうちの1つのものに従って通信可能であるのみならず、ネットワーク装置の送信必要性に基づくトリガの結果として、比較的低いスループット方式から比較的高いスループット方式へ切替えることができる。切替えは、ダウンリンク送信及び/又はアップリンク送信におけるものであってよい。後述するように低スループット方式に戻るための対応する切替えも提供可能である。
【0012】
従って、本発明の実施例は装置の要件に基づいてチャネルアクセス方式を切り替えることができるようにするメカニズムを提供する。これは、いくつかの非常事態の状況において高スループットが不可欠であるが通常の電池消費量を可能な限り低く維持するというニーズが存在するボディエリアネットワークに特に有用である。
【0013】
IEEE802.15.6の主要な要件の1つは、医療アプリケーションに適した効率的なチャネルアクセス及び無線リソースの管理である。既知のチャネルアクセスメカニズムは、IEEE802.15.3及びIEEE802.15.4などの商用規格によって既に広く活用されているが、医療装置及び非常事態の状況下におかれるその他の装置に対する特別な注意が払われていない。特に、既存の規格には医学的な非常事態及び産業的な非常事態の課題が反映されていない。
【0014】
新しいトリガを使用した2つのチャネルアクセス方式間における切替えが、本発明の実施例によって提供され、これら2つのチャネルアクセス方式は、WiseMAC(Wireless Sensor Medium Access Control:無線センサ媒体アクセス制御)とCSMA(Carrier Sense Multiple Access:搬送波感知多重アクセス)、好ましくは非同期CSMAなどのコンテンションに基づいたものであってよく、従って、これによりこれらの特殊なケースにおけるネットワーク機能を改善可能である。
【0015】
トリガは、ネットワーク装置の送信必要性の増大を考慮して判定される。これらの送信必要性は、送信のために装置バッファ内において待機しているデータ、装置の非常事態の状況、或いは、例えば、装置のスリープパターンの変更又は適切なスリープパターンの変更の形態を有する装置の緊急状態の通知を含む要因に基づいて定義可能である。他のトリガは電池レベルであってよいであろう。装置の電池レベルが非常に低くなった場合には、電池が完全に消耗する前に警告信号をコーディネータに送信して電池の交換/充電を要求する必要があるためその送信必要性が特定の状況において増大しうる。これらのうち、装置の非常事態の状況と、スリープパターンの変更又は適切なスリープパターンの変更の通知は、ネットワーク装置がセンサである場合に特に好適である。一方、装置バッファ内において待機しているデータをトリガが考慮するという方式は格段に一般的に適用可能である。当然のことながら、後述するようにこれらの要因のうちのいずれか又はすべてのものの組合せを考慮してそれぞれのトリガを判定可能である。
【0016】
ネットワーク装置の送信必要性を考慮して提供されたトリガは、必要に応じて、ネットワーク内において送信される。トリガは、任意の適切な方式により、データフレーム内において送信可能である。好ましくは、無線ネットワークが送信フレームを使用している際には、使用される送信フレームがトリガを送信するためのフィールドを包含可能である。トリガを生成可能な場所についてはいくつかの可能性が存在する。例えば、トリガは、コーディネータによって生成され、センサ又はその他のネットワーク装置に送信可能である。この代わりに、トリガはネットワーク装置内において生成されコーディネータに送信可能である。当業者であれば、この送信は、ネットワーク構造に応じてその他のネットワークノードを介した間接的なものであってもよいことを理解するであろう。或いは、この代わりに、トリガは、中央監視ユニット又はその他のエンティティによって生成され、コーディネータに送信することも可能である。中央監視ユニットは、コーディネータとの有線又は無線通信状態にあってよく、その特定の配備の形態に応じて、センサネットワークの一部であってもよく、そうでなくてもよい。
【0017】
中央監視ユニット(医療アプリケーションにおいては、しばしば、中央監視及び医学治療ユニットとも呼ばれる)は、(例えば、多数の患者のための)多数のステーションから非常事態データの連続的な又は不定期のストリームを受信する能力を有する監視装置を具備したステーションであってよい。中央監視ユニットは、その役割が受信されたデータを監視することである要員(看護師や医療専門家など)を包含可能である。これらの要員は、例えば、個別の患者又は産業用部品の状態の変化に応答して処置を講じることができる。
【0018】
これらの場合のいずれにおいても、関連するネットワークエンティティにトリガを伝達することが必要となろう。更には、複数のタイプのトリガを同一ネットワーク内において提供する場合には、そのうちの1つのトリガは、ネットワーク装置内において生成可能であり、他のトリガは、コーディネータ内において生成可能である。好ましくは、ネットワーク装置の送信手段及び/又はコーディネータの送信手段は、送信フレーム内においてトリガの通知を送信するべく動作可能である。それによって、直接的であるか又は間接的であるかを問わず、送信経路のもう1つの端部にはトリガのための受信手段が提供されることになる。トリガの通知は、フレームコントロールフィールド又はフレームコマンドフィールドなどのフィールド内に設定された値の形態であってよいであろう。好適な一実施例においては、値はトリガを表すように組合わされて機能する1つ又は複数のビットであってよい。従って、有利には、このようなフィールド内の異なる値はトリガの無効化又は「取消し(lifting)」として機能可能であると共に/又は、異なる値は、異なるトリガレベルに対応可能である。
【0019】
トリガは、高スループットアクセス方式への切替え命令を起動可能である。但し、特定の状況においては、切替え命令は、後述するように、必ずしも、1つのトリガ要因から自動的に導出されることにはならないであろう。
【0020】
複数の要因を組み合わせて組合せ型のトリガを形成することができる。例えば、組合せ型のトリガは、緊急/非常事態ビットと電池レベル又はモアビットと電池レベルの組合せに基づいたものであってよい。本明細書に記述されているトリガ要因又はその他の適切なトリガタイプの任意のその他の組合せも想定可能である。組合せにより、実在するアプリケーションに良好に適合可能な比較的複雑なトリガが得られる。複数の要因を同一又は反対の方向においてセンサへ、又はセンサから送信可能である(或いは、それらのうちの1つ又は複数ものを送信しないことも可能であろう)。このような組合せによって、組合せ型のトリガが形成され、且つ切替えが起動される。
【0021】
トリガの中断は、低スループットのチャネルアクセスに戻る切替えを起動可能である。但し、いくつかの状況においては、組合せ型のトリガのうちの1つの要因の中断により、低スループット方式に戻る切替えに対して影響を与えることができる。具体的には、電池レベルが適切であると共に非常事態が存在している場合にのみ、比較的高いスループット方式への切替えが実行され、その一方で、比較的低いスループットチャネルアクセス方式に戻る切替えを低電池レベルによって起動することができるように、ネットワーク装置の低電池電荷を組合せ型のトリガのうちの1つの要因として含めてもよい。
【0022】
トリガ(並びに、トリガ要因)の場合と同様に、ネットワーク装置の送信手段及びコーディネータの送信手段は、切替え命令の通知を送信するべく動作可能であってよい。切替え命令は、トリガの場合と同様に送信フレームのコントロール/コマンドフィールド内に収容可能である。但し、好適な実施例においては、通知はアクノリッジメントフレーム内において(トリガを受信した装置から)送信される。アクノリッジメントは、WiseMACの場合に周知のように、それぞれの単一フレームを受信した後に直ちに送出される即時アクノリッジメントフレームであってよい。この代わりに、これは、例えば、データ転送の完了の後にのみ送出され、且つ、正常に受信されたフレームの数をペイロードとして通知する遅延アクノリッジメントフレームやペイロードを具備しない遅延アクノリッジメントに類似した単純なアクノリッジメントなどの異なるタイプのアクノリッジメントであってもよい。好ましくは、アクノリッジメントは、即時アクノリッジメントフレームである。遅延アクノリッジメントによれば、他のネットワーク機能が可能となる。一実施例においては、少なくとも2つのタイプのアクノリッジメントが提供され、且つ、使用するタイプをネットワークシグナリングによって指示してもよい。
【0023】
上述でネットワーク内のコーディネータとネットワーク装置について言及したが、ネットワーク装置は、複数のネットワーク装置のうちの1つであってよい。これらのうちの1つ又は複数のものは、無線センサ又はアクチュエータであってよい。ネットワークは、ネットワーク装置の少なくとも1つのものについて、並びに、好ましくは、電池電力供給型であるそれぞれのネットワーク装置について、切替えを実装するべく動作可能であってよい。いくつかの実施例においては、その他の装置のうちの1つ又は複数のものが、切替え命令を傍受して、これに応じて動作してもよい。例えば、トリガを1つのセンサから送信し、これにより、そのセンサについて比較的高いスループットチャネルアクセス方式への切替えを起動可能である。近隣のセンサは、この切替え命令を傍受して、この結果、これらのセンサも、比較的高いスループットチャネルアクセス方式を使用することができる。
【0024】
複数のネットワーク装置がネットワーク内に存在しており、且つ、複数のネットワーク装置が比較的高いスループットチャネルアクセス方式に切り替えた状況においては、低優先順位のネットワーク装置のスループットの増大によって高優先順位のネットワーク装置のスループットが妨げられるという問題が発生しうる。優先順位は、装置のカテゴリ(例えば、重要な医療装置は高い優先順位を持っていてよく、医療装置は中程度の優先順位を持っていてよく、且つ、非医療装置は低い優先順位を持っていてよい)に従って設定可能であると共に/又は、優先順位は、それぞれのネットワーク装置の送信必要性に従って設定することも可能である。従って、例えば、トリガが様々なレベルを具備可能である場合には、高いレベルのトリガは低いレベルのトリガよりも高い優先順位を具備可能であり、且つ、低いレベルのトリガと高いレベルのトリガは、いずれも、トリガが無効化/中断されているネットワーク装置よりも高い優先順位を持っていてよい。当業者であれば、送信フレームの同一のコントロール/コマンドフィールドが、装置の種類及び/又は異なるトリガレベルを区別するために十分な値を提供可能であることを理解するであろう。
【0025】
それぞれのネットワーク装置に割り当てられた優先順位を使用することにより(装置の種類又は送信必要性又はこれらの両方を考慮しているかどうかとは無関係に)、切替え命令の傍受の問題を軽減できる。具体的には、それぞれの装置の優先順位レベルを使用することにより、正常な送信の可能性に影響を与える送信パラメータを判定可能である。一例において、例えば、CSMAの高優先順位の装置の場合には、比較的短いプリアンブル又は比較的短いバックオフ時間を使用している。
【0026】
(実際にトリガされたため又は切替え命令を傍受したために)比較的高いスループットチャネルアクセス方式に切り替えられた装置の数が、ネットワーク動作の確実性の問題を生じることがある。従って、好ましくはネットワークは、例えば第3の異なるチャネルアクセス方式に切り替えることにより、或いは、比較的高いスループットチャネルアクセス方式の異なる機能を使用することにより、装置を保証時間スロット(Guaranteed Time Slot:GTS)に切り替えるように動作してよい。この場合に、好ましくは、比較的高いスループットチャネルアクセス方式に切り替えるべく具体的にトリガされたネットワーク装置のみがGTSに切り替えられる。第3のチャネルアクセスは、ビーコンを伴うTDMA/GTSなど、同期型のものであってよい。GTSに切り替えられたトリガされたネットワーク装置は、既定数の周期の後に又はトリガされたネットワーク装置の数が閾値を下回ったら、コンテンションに基づいたものに戻るべく切り替え可能である。
【0027】
前述のように、トリガ及び切替えの生成及び送信のためのいくつかの異なるシナリオが存在し、それぞれのものは異なる状況に適しており、且つ、それぞれのものはネットワークの中央集中化の程度に影響を及ぼす。一実施例においては、トリガは、コーディネータ(又は、中央監視ユニット)内において生成され、且つ、コーディネータの送信手段によって送信され、且つ、切替えはネットワーク装置内において生成され、且つ、ネットワーク装置の送信手段によって送信される。
【0028】
この代わりに、異なる実施例においては、トリガはネットワーク装置内において生成され、且つ、ネットワーク装置の送信手段によって送信され、且つ、切替えはコーディネータ(又は、中央監視ユニット)内において生成され、且つ、コーディネータの送信手段によって送信される。最後に、トリガ及び切替えはいずれもコーディネータ又は中央監視ユニット内において生成し、且つ、コーディネータの送信手段によって送信することも可能である。好ましくは、トリガ及び/又は切替えは、なんらかの切替え制御がコーディネータ内において維持されるようにコーディネータ内において生成される。
【0029】
好ましくは、切替えの時点において、アップリンク送信とダウンリンク送信の両方が低スループット方式から高スループット方式に切り替わる。更には、多くのケースにおいて、コーディネータは異なるネットワーク装置について同時に2つの異なるモード(例えば、WiseMACとCSMA)をサポートすることが不可能であり、従って、ネットワークの全体がダウンリンク及びアップリンクの両方について新しいモードに切り替わることになろう。
【0030】
本発明の更なる態様によれば、ネットワーク装置と、コーディネータを含む装置の無線ネットワーク内におけるネットワーク装置が提供され、ネットワーク装置は、ネットワーク内のその他の装置との無線通信のための送信手段及び受信手段と、比較的高いスループット方式と比較的低いスループット方式という2つの異なるチャネルアクセス方式に従ってネットワーク装置に通信を選択的に実行させるべく動作可能な制御手段を有し、送信手段及び/又は受信手段は、それぞれ、比較的低いスループット方式から比較的高いスループット方式への切替えのためのトリガを送信及び/又は受信するべく動作可能である。
【0031】
好適な実施例においては、ネットワーク装置のトリガは、以前と同様に、例えば、装置バッファ内において待機しているデータ、装置の非常事態の状況、又は装置のスリープパターンの変更の通知に基づいて、ネットワーク装置の送信必要性の増大を考慮して判定される。
【0032】
第1の好適な実施例においては、ネットワーク装置の送信手段は、そのパケットに後続して更なるパケットが送信されるという旨の通知を送信するべく動作可能である。送信フレームのコントロールフィールド又はコマンドフィールド内において、予め定義された値を使用することによりこの通知をトリガとして使用可能である。
【0033】
他の好適な実施例においては、ネットワーク装置は、パラメータの値を検出するべく動作可能な検知手段を有するセンサであり、且つ、その制御手段は、センサのスリープパターンを制御するべく更に動作可能である。センサの送信手段は、パラメータ値に関する値情報を送信するべく動作可能であってよく、且つ、コーディネータの送信手段は、値情報を考慮した適切なセンサのスリープパターンの通知を送信するべく動作可能であってよく、或いは、センサの制御手段は適切なスリープパターンを判定し、且つ、適切なスリープパターンの通知をコーディネータに送信するべく動作可能である。いずれのケースにおいても、適切なスリープパターンの通知はトリガとして機能可能である。即ち、適切なスリープパターンの通知はネットワーク装置の送信必要性を反映している。
【0034】
更なる好適な実施例においては、ネットワーク装置はパラメータの値を検出するべく構成されたセンサであり、且つ、非常事態の状態を判定するべく値に応答する判定手段がネットワーク内に提供されている。
【0035】
更なる態様によれば、本発明の実施例は、ネットワーク装置と、コーディネータを含む装置の無線ネットワーク内におけるコーディネータを提供し、コーディネータは、その他の装置との無線通信のための送信及び受信手段と、比較的高いスループット方式と比較的低いスループット方式という2つの異なるチャネルアクセス方式に従ってコーディネータに通信を選択的に実行させるべく動作可能な制御手段を有し、送信手段及び/又は受信手段は、それぞれ、比較的低いスループット方式から比較的高いスループット方式への切替えのためのトリガを送信及び/又は受信するべく動作可能である。
【0036】
本発明を更に十分に理解するべく、且つ、本発明を実施可能な方法を更に明瞭に示すべく、以下、添付図面を参照するが、これは、例示を目的としたものに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】IEEE802.15.4のWPANにおけるプロトコルレイヤを示す。
【図2】IEEE802.15.4のWPANの可能なPHY帯域を示す。
【図3】WPANのスター及びピアツーピアトポロジーを示す。
【図4A】ビーコン対応型のIEEE802.15.4のWPAN内のスーパーフレームの構造を示す。
【図4B】WiseMACのチャネルアクセス方式を示すブロック信号図を示す。
【図5】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間のデータ転送の可能なモードを示す。
【図6】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間のデータ転送の可能なモードを示す。
【図7】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間のデータ転送の可能なモードを示す。
【図8】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間のデータ転送の可能なモードを示す。
【図9】IEEE802.15.4のWPAN内のデータフレームに使用されるフレームフォーマットを示す。
【図10】図9のフレームフォーマット内のフレームコントロールフィールドの構造を示す。
【図11】図10のフレームコントロールフィールド内のフレームタイプビットの可能な値の表である。
【図12】本発明の実施例によるWSN内の無線センサ及びコーディネータを示す概略図である。
【図13】WiseMACとCSMAの間の切替えを示すブロック信号図を示す。
【図14A】「モアビット」トリガを伴う部分的に分散化されたシナリオにおけるWiseMACとCSMAの間の切替えを示すブロック信号図を示す。
【図14B】図14Aのシグナリングに基づいた信号の流れ図である。
【図15A】「非常事態ビット」トリガを伴う部分的に分散化されたシナリオにおけるWiseMACとCSMAの間の切替えを示すブロック信号図を示す。
【図15B】図15Aのシグナリングに基づいた信号の流れ図である。
【図16A】「緊急ビット」トリガを伴う部分的に分散化されたシナリオにおけるWiseMACとCSMAの間の切替えを示すブロック信号図を示す。
【図16B】図16Aのシグナリングに基づいた信号の流れ図である。
【図17】電池電荷レベルを表すべく送信フレームのコントロールフィールドにおいて使用可能な電池ビットの一例を示す表である。
【図18】予め定義されたスリープパターンを電池電荷のレベルと関連付ける1つの方法を示す表である。
【図19A】「緊急ビット」と「電池ビット」の組合せ型のトリガを伴うブロック信号図を示す。
【図19B】図19Aのシグナリングに基づいた信号の流れ図である。
【図20】緊急レベルが低下すると共に電池レベルが依然として十分な状態にある際にWiseMACに戻る切替えを示す信号の流れ図である。
【図21A】非常事態ビットトリガを伴う部分的に中央集中化されたシナリオにおけるWiseMACとCSMAの間の切替えを示すブロック信号図である。
【図21B】図21Aのシグナリングに基づいた信号の流れ図である。
【図22A】緊急ビットトリガを伴う部分的に中央集中化されたシナリオにおけるWiseMACとCSMAの間の切替えを示すブロック信号図である。
【図22B】図22Aのシグナリングに基づいた信号の流れ図である。
【図23】WiseMACとCSMAの間の切替えを示す完全に中央集中化されたシナリオにおける信号の流れ図である。
【図24A】WiseMACとCSMAの間の切替えを示す他の完全に中央集中化されたシナリオにおけるブロック信号図である。
【図24B】図24Aのシグナリングに基づいた信号の流れ図である。
【図25A】WiseMACとCSMAの間の切替えを示す他の完全に中央集中化されたシナリオにおけるブロック信号図である。
【図25B】図25Aのシグナリングに基づいた信号の流れ図である。
【図26】同一レベルの非常事態にあるいくつかの装置を示す信号の流れ図である。
【図27】異なるレベルの非常事態にあるいくつかの装置を示す信号の流れ図である。
【図28】本発明の実施例と共に使用されるフレームコントロールフィールドの新しい構造を示す。
【図29】図28のフレームコントロールフィールド内の可能なフレームタイプビットを示す。
【図30】本発明の実施例に使用されるフレームコントロールフィールドの他の新しい構造を示す。
【図31】可能な対応するフレームタイプビットを示す。
【図32】現在のIEEE802.15.4規格におけるMACフレームの基本的なフォーマットを示す。
【図33】IEEE802.15.4規格の現在のバージョンのコマンドフレーム識別子リストを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施例について説明する前に、まず、無線ネットワークにおいて使用されるチャネルアクセスプロトコル(これは、マルチアクセスプロトコルとも呼ばれる)について背景を説明した後に、現在開発中のIEEE802.15.6規格及びMBANを含むボディエリアネットワークに関連すると思われるIEEE802.15.4の部分について概説することとする。
【0039】
マルチアクセスとは、無線ネットワーク内の複数のネットワーク装置が同一の無線チャネルを共有する可能性を意味している。マルチアクセスを可能にするべく、無線ネットワークは、一般に周波数分割(異なる周波数を使用することによって個別のネットワーク装置からの送信を別個に維持する方式)又は時分割(異なる時間において実行することによって送信を分離する方式)に基づいて編成される。周波数分割及び時分割の両方を同時に利用可能である。尚、この説明の残りの部分においては時分割方式を参照するが、当業者であれば、説明対象の技法に類似した技法は周波数分割の場合にも適用可能であることを理解するであろう。
【0040】
時分割に基づいたネットワークは、通常、時間を「フレーム」と呼ばれる等しい時間間隔に分割する。ネットワークに提供される情報の量に従ってそれなりの通信の信頼性(これは、所与の送信が正常に受信される確率を意味している)を提供する様々なプロトコルが考案されている。
【0041】
パケットに基づいたプロトコルであると共にタイミング基準に対するニーズを回避する1つの既知のプロトコルは、CSMA−CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance:搬送波感知多重アクセス/衝突回避方式)と呼ばれている。CSMA−CAにおいては、装置は、CAP内において送信を所望する場合にはランダムな期間にわたって待機する。ランダムなバックオフ時間に続いて、チャネルがアイドル状態にあると判明した場合には装置はそのデータを送信する。ランダムなバックオフ時間に続いて、チャネルがビジー状態にあると判明した場合には装置はチャネルに再度アクセスするべく試行する前に、他のランダムな期間にわたって待機する。
【0042】
TDMA(Time Division Multiple Access)と呼ばれる更なるプロセスは、ネットワーク装置の排他的な使用のための時間スロットを割り当てて衝突の可能性を回避するべく、ネットワークコントローラ又はコーディネータを必要としている。但し、この方式は、中央コーディネータを設けることを必要とするのみならず、すべてのネットワーク装置が、送信を開始する前にビーコンと自身に割り当てられた1つ又は複数のスロットの通知を受信することを必要としている。
【0043】
同一のネットワーク内において、例えば、アップリンク(即ち、コーディネータ又は基地局などの中央地点へのデータ送信)及びダウンリンク(センサなどのネットワーク装置へのデータ送信)について、異なるプロトコルを使用可能である。
【0044】
この観点において、WSNのダウンリンク用に提案された1つのプロトコルは、WiseMACと呼ばれている。WiseMACは、ダウンリンクとアップリンクの両方において使用可能である。これは、ビーコンなし方式であり、それぞれのネットワーク装置は同一の一定の期間を有する短い時間にわたって無線チャネルを受信する。ネットワーク装置が活動を検出した場合には、ネットワーク装置はデータフレームが受信される時点まで、又はチャネルが再度アイドル状態になる時点まで受信を継続する。その一方で、送信機は、フレームのデータ部分が到達した際に受信機がウェークアップ状態になることを保証するべく、すべてのデータフレームの前にウェークアッププリアンブルを追加する。
【0045】
WiseMACプロトコルは、CSMAに基づいており、間欠動作を伴うと共に、図4Bに示されているように同期化プリアンブルサンプリングを使用する。これは、基本的に、近隣モードのスケジュールを知るための特定の仕組みを有する非同期型のCSMAタイプの方式である。WiseMACは、制御とデータの両方のために1つのチャネルのみを使用するものと仮定される。それぞれのノードは、チャネルを定期的(Tw)にサンプリングしてチャネルの活動をチェックする。即ち、それぞれのネットワーク装置(ノード)は所定の期間にわたって定期的にウェークアップする。送信対象のデータを有する送信機は、到来データについて受信機に通知するべくデータの前にプリアンブルを送信する。プリアンブルは、受信機のサンプリング時間と同時となるように十分に長いものであることを要する。受信機は、その定期的なサンプリング時間/ウェークアップ時間においてウェークアップする。チャネルが活動状態にない場合には、受信機はスリープ状態に戻る。さもなければ受信機はデータを受信する時点までウェークアップ状態に留まる。データを受信した後に、受信機は自身のウェークアップ時間までの残りの時間を含むアクノリッジメントACKを送信する。従って、このACKを受信した後に、送信機は受信機の次のウェークアップ時間について認知する。次いで、送信機はスリープ状態に戻る。次のサイクルにおいては、受信機のウェークアップスケジュールを認知しているため、送信機は格段に短いプリアンブルを使用可能である。WiseMACのMRP(Medium Reservation Preamble:媒体予約プリアンブル)は、ノード送信の衝突を回避するべく、それぞれのノードにより、短いプリアンブルを有するデータパケットについてランダムに生成される。
【0046】
図4Bは、最初の長いウェークアッププリアンブル、データ送信、及びアクノリッジメントと、これに後続する次の受信機サイクルにおける短いプリアンブル、データ転送、及びアクノリッジメントを示している。WiseMACは、低電力アクセス方式であるが、IEEE802.15.4において使用されるCSMA−CAとの関係においては、低スループットであるという欠点を具備している。
【0047】
非常事態やストリーミングなどの特定の状況においてチャネルアクセスのスループット及び可用性を増大させるべく、ノードをIEEE802.15.4のCSMAモードに切り替え可能であろう。チャネルアクセスのスループット及び可用性を増大させるべく、最近、WiseMAC HA(High Availability)と呼ばれるWiseMACの変形が提案されており、この場合にはいくつかのノードがIEEE802.15.4のCSMAモードに切り替え可能である。しかしながら、このような切替えのための可能な切替え基準及び必要なシグナリングに関する議論が行われておらず、且つ、従って、影響を受けたノードがCSMAモードに永久的に留まるのか又は一時的に留まるのかが不明である。WiseMAC HAにおいてはスタートポロジーが採用されており、中央ノード(コーディネータ/シンク)が検知データ(又は、その他のネットワーク装置からのデータ)の収集を担当している。シンクは、相対的に大きな電池電力を具備しており、且つ、従って、オン状態にあるか、限られた電池容量を有するセンサよりも多少積極的なウェークアップパターンに従うことができると想定される。
【0048】
IEEE802.15.4においては、後述するように、ビーコン対応型及びビーコンなしトポロジーの両方が提供されている。ビーコン対応型トポロジーは、CSMA−CAを介したコンテンションに基づいたアクセスのためのスロットと、ネットワーク装置の排他的な使用のためにTDMAに基づいて割り当てられた保証時間スロット(GTS)を収容する「スーパーフレーム」によって置換された「フレーム」の概念を有するプロトコルの組合せを使用している。これは、GTSの割当による信頼性の高いデータ送信を提供するが、タイミング及びスロット割当情報についてコーディネータを受信するべく、ネットワーク装置がパワーアップ状態(「ウェークアップ状態」)に留まらなければならないという欠点を有する。但し、装置は、その他の装置の送信スロットにおいてスリープ可能であるため、TDMAは電力節約の利点を有する。
【0049】
要すれば、時間基準及び(スーパー)フレーム構造を提供するビーコンに基づいた通信プロトコルによれば、衝突の数を低減可能であり、且つ、従って、信頼性の高い通信が可能となるが、これはネットワーク装置の電力消費量を犠牲したものである。一方、ビーコンなし方式によれば、非アクティブ期間において電力消費量を非常に低く維持可能であるが、ビーコンに基づいた方式よりも保証されるスループットが小さく、且つ、レンテンシー時間(チャネルアクセスを得る時点までの遅延)が大きい。
【0050】
本発明は、ネットワーク装置の電力消費量を低減可能であるが、必要に応じて、高い信頼性を提供するIEEE802.15.6に好適なチャネルアクセス方式の切替えを提案する。その動作法について説明する前に、類似の構成がIEEE802.15.6に使用されると予想されることから、まず、IEEE802.15.4ネットワークの一般的な構成に関する更なる情報を提供しておくこととする。
【0051】
図1は、無線トランシーバ及びその低レベルコントロールを含むPHYレイヤを介して物理媒体にアクセスする層状のOSI(Open Systems Interconnection:開放型システム間相互接続)モデルの観点におけるIEEE802.15.4のWPANの概略的なアーキテクチャを示しており、これには、参照符号100が付与されている。図示のように、PHY用の2つの代替周波数帯域101、102が存在しており、これらが図2に示されている。低周波数帯域101は、868.3MHzに中心を有する単一の20kb/sのチャネル及び/又は915MHzに中心を有するそれぞれが40kb/sの10個のチャネルを提供する。高い帯域102は、それぞれが250kb/sであり、且つ、2.44GHzの周波数に中心を有する16個のチャネルを提供する。これらの帯域のうちのいずれが使用されるかは、当該地域の規制要件によって左右されることになる。
【0052】
このPHYに対するアクセスは、図1に参照符号105によって示されているMAC(Medium Access Control)サブレイヤによって提供される。従って、この上位には、且つ、WPAN100の外部には、その他のネットワークからのWPANに対するアクセスを許容するLLC(Link Layer Control)が提供されており、これは、IEEE802.2規格によるものであってもよく、或いは、その他のタイプのものであってもよい。最終的に、LLCより上方の上位レイヤ109は、ネットワークの構成、操作、及びメッセージのルーティングを提供するためのネットワークレイヤと、意図されている全体的な機能を提供するアプリケーションレイヤを含む。
【0053】
MACサブレイヤの1つのタスクは、ネットワークトポロジーを制御することにある。スター及びピアツーピアが、通信ネットワーク内における2つの既知のトポロジーであり、且つ、いずれも、IEEE802.15.4において提供されている。いずれの場合にも、トポロジーは、装置とコーディネータという2つの基本的な種類のネットワークノードを区別している。図3に示されているように、スタートポロジーにおいては、いくつかの装置11が、中央コーディネータ10と直接通信しており、ピアツーピア構成においては、装置11Aによるコーディネータとの通信は、リレーとして機能する中間の装置11B及び11Cにより、1つ又は複数のホップに沿って実行される。コーディネータは、上位レイヤへのアクセスポイントとして機能しており、WSNの場合には、コーディネータは、センサによって収集されたデータ用のシンクとして機能する。それぞれの装置の通信レンジを相当に限定することができる場合には(数メートル)、ピアツーピアトポロジーによれば、相対的に大きなエリアをカバー可能である。トポロジーは、動的であってよく、装置のネットワークへの追加又は除去に伴って変化する。
【0054】
産業用のWSNの場合に、例えば、可動部品を有する機械の単一の静止した物品上のセンサからの読取値を監視するには、スターネットワークが適当であろう。一方、ピアツーピアトポロジーは、コンベヤベルト上の物体を監視するべく使用可能であろう。
【0055】
MBANの場合には、例えば、コーディネータがそれぞれの患者サイト(病院のベッドなど)に提供され、一人の患者上の装置と信号を交換する場合には、スターネットワークが適当であろう。ピアツーピアは、複数の患者に対してサービスするべく1つのコーディネータが提供される場合に、より適切なトポロジーであろう(コーディネータは、病室内の固定された地点に配置可能であろう)。従って、装置11は、一般に、移動型となり、コーディネータは、移動型又は固定型であってよい。又、ピアツーピアネットワークは、ネットワークを迅速にセットアップ又は変更したり、或いは、ネットワークの自己組織化及び自己回復の実現が必要とされる高速に変化する環境に好適であろう。自己回復は、例えば、既存のコーディネータに障害が発生するか又は既存のコーディネータがネットワークを離脱した場合に、新しいコーディネータを確立するステップを包含可能である。
【0056】
病院や工場などの同一の場所に、多数のスター及び/又はピアツーピアネットワークをセットアップ可能であり、そのそれぞれが、独自のコーディネータを有する。この場合には、相互干渉を回避すると共にデータの共有又は照合を許容するべく、個々のコーディネータが協働する必要がある。IEEE802.15.4においては、このようなネットワークをクラスタと呼んでおり、且つ、クラスタ用の全体的なコーディネータを確立するステップと、クラスタを分割及びマージするステップが提供されている。
【0057】
WPAN内のノードは、様々な能力のユニットによって構成可能である。一般に、コーディネータの役割は、なんらかの処理パワーを有する相対的に高機能な装置と、複数の供給源からの送信を同時に処理する能力を有するトランシーバを必要とすることになる。そして、この結果、電力の十分な供給を必要とすることになる(場合によっては、商用電源供給型であってよい)。一方、ネットワーク内のその他の装置は、相対的に限られた処理能力と、電池電力のみへのアクセスを具備可能であり、且つ、場合によっては、リレーホップとして機能することができないほどに単純なものであってもよい。非常にわずかな電力しか利用できない装置は、大部分の時間にわたってシャットダウン可能であり、且つ、例えば、センサデータを他のノードに送信する際にのみ、ときどき、「ウェークアップ」可能である。従って、IEEE802.15.4規格は、「フル機能」装置と「部分的機能」装置を区別している。MBANの場合に、且つ、センサを身体又は装置内に埋植可能であり、大きな又は充電式の電池を具備することができないその他のWPANの場合に、電力の利用可能性は特有の課題である。
【0058】
IEEE802.15.4において想定されている2つのタイプのWPANが、ビーコン対応型及びビーコン非対応型である。
【0059】
ビーコン対応型のネットワークにおいては、コーディネータが、ビーコンを定期的に送信し、且つ、装置が、そのビーコンを定期的に受信し、ネットワークに対して同期化すると共にチャネルにアクセスする。チャネルアクセスは、図4Aに示されているスーパーフレーム構造に基づいており、これは、コーディネータによって規定される。それぞれのスーパーフレーム30は、アクティブと非アクティブという2つの部分から構成されている。アクティブ部分は、コンテンションアクセス期間CAP(contention access period)36と、これに後続する、サービスの質要件を有するアプリケーション用の保証されたアクセスのための任意選択のコンテンションフリー期間CFP(contention free period)37と、に分割される。
【0060】
図4Aの垂直分割によって示されているように、スーパーフレームは、それぞれがコーディネータ又は装置からのデータのフレームを搬送する能力を有する16個の等しく離隔した時間スロットに分割されている。最初に、コーディネータによって送信されたビーコンフレーム(以下を参照されたい)のスロット31が到来する。この後に、CAP内において、いくつかのスロット32が提供され、これにより、前述のように、既知のCSMA−CAアルゴリズムに従って、コンテンションに基づいた装置との間のデータ送信が可能となっている。
【0061】
次に、CFPの保証時間スロットGTS33が後続し、且つ、図示されているように、これらのそれぞれのものは、複数の基本時間スロットにわたって延長可能である。非アクティブ期間の満了後に、コーディネータが他のビーコンフレーム31を送信することにより、次のスーパーフレームがマーキングされる。装置は、スーパーフレームの非アクティブ期間34において、スリープ状態に移行可能である。従って、非アクティブ期間34の長さを拡張することにより、装置の電池電力を可能な限り節約可能である。
【0062】
ビーコン非対応型のネットワークにおいては、コーディネータは、(例えば、ネットワークディスカバリのために)要求されない限り、同期化のためにビーコンを送信する必要はない。チャネルアクセスは、スーパーフレーム構造によって制限されてはおらず、且つ、装置は、非同期であって、CSMA−CAによってすべてのデータ転送が実行される。これらは、センサ−MACなどの特定のプロトコルに従って、その装置固有のスリーピングパターン(又は、デューティサイクル)を踏襲可能である。
【0063】
MBANアプリケーションの場合には、コーディネータは、監視対象の1つ又は複数の身体の外部に位置している。これは、PDA、携帯電話機、ベッドサイドのモニタステーション、或いは、場合によっては、一時的にコーディネータとして機能する十分に高機能なセンサであってよい。産業用のWSNにおいては、コーディネータは、PDA、センサ、ラップトップ又はその他のコンピュータ、或いは、場合によっては、中央又はリジョナルプロセッサであってよい。前述のように、ビーコン対応型ネットワーク内のコーディネータは、ネットワーク装置に対する同期化及びチャネルアクセスの提供を担当している。又、スーパーフレームの開始及び終了は、コーディネータによって規定される。コーディネータは、その他のネットワークに対する潜在的な通信と、例えば、充電済みの電池の容易な交換による十分な電源に対するアクセスと、という2つの主要な機能を具備している。
【0064】
図5〜図8は、IEEE802.15.4ネットワーク内における装置とコーディネータの間のデータ転送を示している。IEEE802.15.4には、以下のような3つの基本的な転送タイプが規定されている。
【0065】
(i)装置(送信機)がそのデータを送信する先である受信機としてのコーディネータに対するデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
【0066】
(ii)装置がデータを受信する送信機としてのコーディネータからのデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
【0067】
(iii)2つのピア間におけるデータ転送―ピアツーピアネットワークにおいてのみ使用される。
【0068】
図5及び図6は、それぞれ、ビーコン対応型及びビーコン非対応型の場合の両方における装置(ネットワーク装置11)とコーディネータ(コーディネータ10)からの転送を示す。相違点は、ビーコン対応型の場合には、装置11は、CFPにおいてCSMA−CAを使用して、又はCAPにおいてGTSを使用して、データ(データフレーム42)を送信する前に、コーディネータからビーコンフレーム41を受信するべく待機しなければならず、ビーコン非対応型の場合には、通常、ビーコンフレームが存在せず、且つ、装置11は、CSMA−CAを使用してデータフレーム42を自由に送信するという点にある。いずれの場合にも、コーディネータは、任意に、アクノリッジメントフレーム43を送信することによりデータの正常な受信をアクノリッジする。これらの異なるタイプのフレームについては、更に詳細に後述する。
【0069】
受信機がなんらかの理由から受信したデータフレームを処理することができない場合には、そのメッセージはアクノリッジされない。送信機が所定の期間の後にアクノリッジメントを受信しない場合には、送信機は、その送信が不成功であったと仮定し、且つ、フレーム送信を再試行する。何回かの再試行の後に、アクノリッジメントが依然として受信されない場合には、送信機は、そのトランザクションを終了させるか又は再度試行するべく選択可能である。アクノリッジメントが不要である際には、送信機は、送信が成功したものと仮定する。
【0070】
図7及び図8は、コーディネータ10から装置11へのデータ転送を示している。コーディネータがビーコン対応型WPAN(図7)においてデータを装置に転送すべく所望する際には、コーディネータは、データメッセージが保留中であるという旨をビーコンフレーム41内において通知する。装置は、定期的にビーコンフレームを受信し、且つ、メッセージが保留中である場合には、データ要求(MAC命令)44を送信し、CSMA−CAによってデータを要求する。コーディネータ10は、アクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データ要求の正常な受信をアクノリッジする。次いで、保留中のデータフレーム42が、スロット型のCSMA−CAを使用して、或いは、可能な場合には、アクノリッジメントの直後に、送信される。装置11は、アクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データの正常な受信をアクノリッジ可能である。この段階で、トランザクションが完了する。データトランザクションが正常に完了した際に、そのメッセージは、ビーコン内の保留メッセージのリストから除去される。
【0071】
ビーコン非対応型の場合には、特定の装置11用の準備が整ったデータを具備するコーディネータ10は、コンテンションに基づいて送信されるその装置からのデータ要求44を待たなければならない。この要求を受信した際に、コーディネータは、アクノリッジメントフレーム43を送信する(これは、該当する場合には、準備されたデータが存在しないことを通知するべく使用することも可能である)。次いで、データフレーム42が送信され、これに応答し、装置11は、返信として他のアクノリッジメントフレーム43を送信可能である。
【0072】
わかりやすくするべく、以上の手順においては、装置とコーディネータの間のデータ転送のうちの前述のケース(i)及び(ii)のみが考慮されているが、ピアツーピアネットワークにおいては、前述のように、データ転送は、一般に、1つ又は複数の中間ノードを伴うメカニズム(iii)を介して実行されることになり、その結果、関係する衝突及び遅延が増大する。
【0073】
図5〜図8に示されているように、IEEE802.15.4ネットワーク内における通信には、以下のように4つの異なるタイプのフレームが関係している。
−ビーコンを送信するべくコーディネータによって使用されるビーコンフレーム41
―すべてのデータ転送用に使用されるデータフレーム42
−正常なフレームの受信を確認するべく使用されるアクノリッジメントフレーム43
−データ要求などのすべてのMACピアエンティティの制御転送を処理するべく使用されるMACコマンドフレーム44
【0074】
4つのフレームタイプのそれぞれのものの構造は、非常に類似しており、且つ、例として、データフレーム42のものが図9に示されている。この図において、2つの水平のバーは、MACサブレイヤと、PHYレイヤをそれぞれ表している。時間は左から右に進行し、且つ、フレームのそれぞれの連続したフィールドの時間長が、関係するフィールドの上方に示されている(単位:オクテット)。すべてのフレームは、特定順序のフィールドのシーケンスから構成されており、これらは、左から右に、PHYによって送信される順序において示されており、最も左側のビットが、時間的に最初に送信される。それぞれのフィールド内のビットには、0(最も左側であり、且つ、最下位である)からk−1(最も右側であり、且つ、最上位である)までが付番されており、この場合に、フィールドの長さは、kビットである。
【0075】
データフレーム42を介して送信されるデータは、上位レイヤに由来している。データペイロードは、MACサブレイヤに伝達され、且つ、MACサービスデータユニット(MAC Service data unit:MSDU)と呼称される。MACペイロードには、先頭にMACヘッダMHR(MAC Header)が付加され、且つ、末尾にMACフッタMFR(MAC Footer)が付加される。MHRは、フレームコントロールフィールド50(以下を参照されたい)、データ連番(DSN:data sequence number)、アドレス指定フィールド、及び任意選択の補助セキュリティヘッダを含む。MFRは、16ビットのフレームチェックシーケンスFCS(Frame check sequence)から構成されている。MHR、MACペイロード、及びMFRが、1つのMACデータフレーム、即ち、MPDU(MAC protocol data unit)を形成する。MPDUは、PHYサービスデータユニットPSDU(Physical Layer Convergence Protocol Service Data Unit:物理層収束プロトコルサービスデータユニット)としてPHYに伝達され、これが、PHYペイロードになる。PHYペイロードには、先頭に、プリアンブルシーケンス及びフレーム開始デリミタSFD(start of frame delimiter)を含む同期化ヘッダSHR(synchronisation header)と、オクテットを単位とするPHYペイロードの長さを含むPHYヘッダPHR(PHY header)が付加される。プリアンブルシーケンス及びデータSFDにより、受信機は、シンボル同期化を実現可能である。SHR、PHR、及びPHYペイロードが、1つのPHYパケット、すなわちPHYプロトコルデータユニットPPDU(PHY Protocol data unit)を形成する。
【0076】
ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACペイロードがそれぞれのケースにおいて異なる機能を具備し、アクノリッジメントフレームがMACペイロードを具備していないことを除いて、類似の構造を具備している。又、ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACサブレイヤに由来しており、上位レイヤの関与を伴っていない。
【0077】
図10には、それぞれのタイプのフレーム内において使用されるフレームコントロールフィールド50が更に詳細に示されている。これは、図示のように、異なる目的のためのサブフィールドに割り当てられた16ビットから構成されている。具体的には、フィールドの最初の3ビットは、ビーコンフレーム41、データフレーム42、アクノリッジメントフレーム43、又はMACコマンドフレーム44というフレームタイプ51を表している。フレームタイプを表記する方法が図11に示されている。フレームタイプビット51に後続するのが、単一ビットのセキュリティ有効化サブフィールド52であり、これは、セキュリティがMACサブレイヤによって有効化されているかどうかを表している。これに後続しているが、フレームペンディングサブフィールド53であり、これは、送信機が受信機用の更なるデータを具備しているかどうかを通知する。次が、アクノリッジメントが受信機から要求されているかどうかを通知するアクノリッジメント要求サブフィールド54である。この後に、更なるいくつかのサブフィールド55〜59が後続しており、これらは、アドレス指定のために使用されるか、又は現在のIEEE802.15.4の仕様においては予約されている。
【0078】
前述のように、図11は、フレームタイプサブフィールド51の可能なビット値の表であり、IEEE802.15.4の仕様においては、値100及び101が使用されていないことを示している。
【0079】
以上において本発明の背景の概説を終了し、次に、本発明の実施例を参照する。図12は、センサノード61を使用してパラメータを計測し、且つ、その計測値を無線回路62を使用して他の装置に送信するセンサ60の形態のネットワーク装置を示す概略図である。
【0080】
センサは、無線回路62によって制御されるその送信/受信手段を有するものとして示されている。センサ制御手段63は、トリガに従ってチャネルアクセス方式を選択するべく機能する。コーディネータ64との間には、双方向通信が存在しており、且つ、当業者は、これが直接的なものであってもよく、或いは、(その他の装置を介した)間接的なものであってもよいことを理解するであろう。前述のように、比較的低いスループットチャネルアクセス方式から比較的高いスループット方式に切り替えるためのセンサ用のトリガは、コーディネータにおいて、センサにおいて、或いは、例えば、中央監視ユニット内などネットワークの外部においても生成可能である。トリガがセンサ内において生成される場合には、トリガはコーディネータに送信されることになる。トリガがセンサ内において生成されない場合にはトリガがセンサに送信されることになる。トリガは、1つの方式から他のものに切り替えるための切替え命令を起動する。切替え命令は、センサとの間において送信可能であり、或いは、センサ内における内部的な切替えであってもよい。
【0081】
好適な実施例を更に詳細に観察すれば、WiseMAC方式によって始まった状態において、シンク/コーディネータは、非常事態の状況にあるなどの必要な際に、適宜、CSMAステージへの切替えをトリガ可能である。切替えの後に、コーディネータは、ACKメカニズムを通じて現在の動作モード(CSMA)に関する切替え命令をセンサに送信可能である。
【0082】
図13は、一例として、WiseMACモードとCSMAモードの間において切替えを実行するためのいくつかの好適なステップを示している。
【0083】
S10:センサが、WiseMACプロトコルに従ってデータをシンクに送信する。
【0084】
S11:第1ウェークアップ時間において、ACKは、シンクの次のウェークアップ時間に関する情報を含んでいる。
【0085】
S12:第2ウェークアップ時間において、且つ、データが到着した際に、センサは、シンクのウェークアップ時間(Dw)まで待機した後に、プリアンブル及びデータを送信し、且つ、シンクからのACKの受信を待つ。
【0086】
S13:センサは、現在はCSMAであるシンクの動作モードに関する切替え命令と共に、シンクからACKを受信する。
【0087】
S14:その結果、センサは、シンクがセンサの動作モードを変更したことを認知する。センサノード上におけるデータの次の到着の際に、センサは、シンクの次のウェークアップ時間を待たない。その代わりに、センサは、チャネルについて競合し、そのデータを送信するためのDcsmaに等しいコンテンションウィンドウを待つ。
【0088】
以下の頁においては、チャネルアクセス方式の間の切替えが実行される様々な状況を示すいくつかのシナリオについて説明し、様々なレベルの中央集中化と様々なトリガを示す。これらの例は、いずれも、WiseMACとCSMAの間の切替えを参照しているが、これらのメカニズムは、その第1のものが第2のものよりも低いスループットを具備するその他のチャネルアクセスモードの間の切替えにも同様に好適である。又、これらの例は、比較的高いスループットモードから比較的低いスループットモードに戻る切替えについても参照している。
【0089】
検討対象のシナリオのうちのいくつかのものは部分的に分散化されており、これは、モードの間において切り替えるためのトリガがセンサによって起動され、且つ、コーディネータに送信されることを意味している。但し、モードの間において切り替えるための決定はコーディネータによって下される。部分的に中央集中化されたシナリオにおいては、モードの間において切り替えるためのトリガは、コーディネータによって起動され、且つ、センサに送信される。但し、動作モードの間において切り替えるための決定は、センサによって下される。更に他の中央集中化されたシナリオにおいては、少なくとも1つのトリガ(又は、トリガ要因)と切替えが、いずれもコーディネータによって起動される。自律的なシナリオに従う場合には、トリガ及び切替えはいずれもセンサによって起動可能であろう。
【0090】
WiseMAC動作モードとCSMA動作モードの間の切替えのための一連のイベントは、以下のもののいずれであってよいであろう。
【0091】
トリガ1は、部分的に分散化されたシナリオであり、トラフィックの増大の通知として、「モアデータ(more data)」トリガを有する。この状況は、送信側ノードが複数のパケットをそのキュー内に具備する際に発生する。「モアビット」トリガは、高負荷又はストリーミングなどのトラフィックの増大(送信の必要性)に関する通知であり、且つ、従って、送信されるパケットの「モアビット」において、宛先又はコーディネータに通知可能である。次いで、宛先は、ACKにおいて、CSMAモードへの切替えを送信機(並びに、傍受機)に通知する。この結果、送信機は、更なる送信のために、CSMAに切り替え可能である。ACKにおいてトリガを受信した傍受機が存在する場合には、それらの傍受機は、送信機とチャネルについて競合しうる。
【0092】
図14A及び図14Bは、スループットの増大とレイテンシの低減のために、送信機がCSMAへの切替えをトリガした際の一連のイベントを示している。
【0093】
WiseMACにおいて、パケット内に「モアビット」通知を有する送信機は、受信機からACKを受信した後に第2パケットを送信する。但し、CSMAに切り替えた場合には、送信機と傍受機がCSMAプロトコルを使用することによりチャネルについて競合する。「モアビット」は、スループットを増大させるがいくつかのノードがチャネルにアクセスすることを完全に妨げる可能性があるため、フェアネスを低減可能であることに留意することが重要である。その理由は、それらのノードが、通常、CSMAを使用しており、且つ、従って、コンテンションに敗北する可能性があるためである。他の送信ノードが依然としてWiseMACを使用している場合には、例えば、それらが(「モアビット」指示子を使用して)更なるデータを送信しており、依然としてチャネルを保持していると、それらによるACKの受信も妨げられる可能性がある。
【0094】
このシナリオにおいては、CSMAにおける送信機(又は、コーディネータ)は、ACKを受信不能であり、従って、送信機はWiseMACに戻るための切替えを実行する時期について通知されないという課題が存在している。即ち、ACKが送信される際に送信している(これは、非同期システムにおいて発生可能である)あらゆる装置(センサ、コーディネータ、又はその他の装置)はACKを受信不能である。1つの可能な解決策は、切替えをパケットに含めるか、又は変更をブロードキャストするというものである。
【0095】
図14A及び図14Bを更に詳細に観察すれば、ステップ20においてセンサは、データと更なるデータが後続するという旨の指示子を、例えば、IEEE802.15.4におけるフレームペンディングビットなどの1に設定されたビットを使用して送信する。ステップS21においてコーディネータは、例えば、フレームのアクノリッジメントのコントロール又はコマンドフィールド内の1に設定されたビットとしてCSMAへの切替えの通知を含むアクノリッジメントをセンサに送信する。ステップS22において傍受機S2は、コンテンションに勝利し、且つ、更なるデータが後続するという旨の通知と共にパケットを送信する。従って、傍受機S2もトリガをコーディネータに送信する。ステップS23において、元の送信機S1がコンテンションに勝利し、且つ、送信対象のデータが存在しない旨を通知するパケットを送信する。これは、S1のトリガを無効にする。この後に、ステップS24において、傍受機S2がコンテンションに勝利し、且つ、送信対象のデータが存在せず、且つ、従って、そのトリガも無効になるという旨の通知を有するパケットを送信する。この結果、CSMAモードに対する要求はもはや存在せず、従って、コーディネータは、ステップ25において復帰の切替え命令をセンサS1及び傍受機S2に送信する。次いで、これらのセンサは、図14Aに示されているように、ステップS26において、新しいデータ転送の一部として送信される長いプリアンブルによって示されているようにWiseMACパターンに戻る。
【0096】
図14A及び図14Bは、CSMAへの切替えをトリガするセンサ内における負荷の増大を伴うが、切替え命令はコーディネータによって送信されるという部分的に分散化されたシナリオに関する。
【0097】
同様に、部分的に分散化されたシナリオに関係しているトリガ2の場合には、非常事態ビットがトリガとしてセンサから送信され、且つ、コーディネータが切替え命令を送信する。図15A及び図15Bは、このシナリオを示している。センサは、収集されたデータを分析し、且つ、例えば、閾値を使用することにより自身が非常事態の状況にあることを認識する。ステップS30においてセンサは、非常事態ビットを1に設定して非常事態を通知することにより、メッセージをコーディネータに送信しコーディネータに状況について通知する。ステップS31においてコーディネータは、非常事態の状況に対処するために動作モードをCSMAに切り替えるべくメッセージを送信する。この後に、CSMAに切り替えた後のステップS32において、センサは、非常事態から離脱し、且つ、非常事態ビットが0に設定される。この結果、S33においてWiseMACに戻るための切替え命令が送信され、この命令はその動作のモードをWiseMACに戻すように切り替えるべくセンサに通知する。
【0098】
トリガ3の場合にも、センサからトリガが送信されるが、比較的高いスループットチャネルアクセス方式への切替えはコーディネータにおいて決定されるという部分的に分散化されたシナリオを示している。トリガ3は、CSMAへの切替えのためのトリガとして緊急ビットを使用している。当業者であれば、所与のネットワークにおいて、前述の非常事態ビットに加えて、又はこれに代えて、緊急ビットを使用可能であることを理解するであろう。
【0099】
ステップS40においてセンサは、収集されたデータを分析し、且つ、自身が非常事態の状況にあると認識し、これにより非常事態のレベルに従ってビットu1及びu2を適切に設定することによりコーディネータにメッセージを送信し、状況についてコーディネータに対して通知する。これらのビットは、以下の表1に記述されているスリープパターンに対応可能である。
【0100】
次の表1には、WSN内の装置の異なる緊急レベルに基づいた異なる適切な予め定義されたスリープパターンの一例が付与されている。例えば、MBANなどの医療目的に使用されるネットワーク内においては、(例えば、WSNに接続されている医師のPDAや患者の腕時計又は携帯電話などの)非医療装置には、低デューティサイクルのスリープパターンを使用可能である。この結果、表1から判るように、このような非医療装置は、最も長いスリープ時間又はスリープ時間率を持つ。このスリープパターンの通知は、例えば、送信フレームのフレームコントロールフィールド内の緊急ビットなどによりWSN上において送信可能である。この例においては、非医療装置は緊急ビット00を持つように示されている。表1は、正常医療パターンのスリープを持つ正常状態にある医療装置を示しており、これは、わずかに高いデューティサイクルを有し、且つ、緊急ビット01によって表記されている。このような医療装置においてわずかに異常な状態が発生した場合にデューティサイクルが再度わずかに増大し、且つ、緊急ビットが10になる。最後に、非常事態の状況にある医療装置の場合にはデューティサイクルは劇的に増大するか連続的にウェークアップする。この非常事態の状況を表記するべく、緊急ビット11が使用される。この例においては、医療センサ装置の場合には、正常な状況とわずかに異常な状況の間及びわずかに異常な状況と非常事態の状況の間の遷移を、それぞれの場合において、計測されたパラメータがそれぞれの閾値と超過することにより引き起こすことができる。当業者であれば理解するように、緊急性の増大は、パラメータが受け入れ可能な値の範囲を具備する場合に、そのパラメータが上昇又は降下するか、或いは、これらの両方が発生した場合に、発生可能であり、いくつかの閾値によって規定された受け入れ可能な範囲のいずれかの限度に接近するほど、受け入れ不能なものに近づく。
【0101】
【表1】

【0102】
また、簡潔に上述したように、いくつかの実施例においては、時間に伴うパラメータ値の又は時間に伴うパラメータ値の変化率の変化、或いは、任意のその他の基準により、スリープパターンの変更をトリガ可能である。例えば、非常に迅速な脈拍数の変化は、生理学的な状態ではなく、病理学的な不整脈に起因する可能性があり、且つ、従って、変化率を考慮しつつ、スリープパターンの変更をトリガするのに好適であろう。
【0103】
表1のビット値は、すべての装置について固定されており、且つ、その解釈は、センサ、コーディネータ、又はコントローラにとって、又はBANの一部として又は別個に提供可能である任意の中央監視ユニットにとって、既知である。
【0104】
ステップS41においてセンサは、非常事態の状況に対処するために動作モードをCSMAに切り替えるべくメッセージを送信する。この後において、CSMAに切り替えた後にセンサが非常事態を離脱した際に、コーディネータは、ステップS42においてトリガを無効化することを通知し、且つ、ステップS43においてセンサは、その動作のモードをWiseMACに戻すように切り替えるべく命令される。
【0105】
次のトリガは、送信機が状況の重大性を認識し、且つ、緊急ビットU1及びU2並びに電池ビットB1及びB2を使用することによってトリガを送信するという他の部分的に分散化されたシナリオである。コーディネータは、トリガに基づいて切替え命令を起動可能であり、従って、この命令は電池状態を考慮している。
【0106】
以前の例は、単一要因のトリガのみを考慮していたが、トリガ4は、(センサパラメータの関数として以前と同様に導出される)緊急性と電池レベルという2つの要因を有する組合せ型のトリガを具備している。
【0107】
当業者であれば、例えば、緊急ビットを電池レベルと組み合わせるか又はモアビットを電池レベルと組み合わせるなど、その他の要因組合せ型のトリガを生成可能であることを理解するであろう。
【0108】
図17は、電池の電荷レベルを表すべく送信フレームのフレームコントロールフィールド、フレームヘッダ、又はMACコマンドペイロード内において使用可能な電池ビットの一例を示す表である。
【0109】
パーセンテージ電荷を、それぞれが25%の範囲を有する4つの異なるレベルに分割している。或いは、この代わりに、更に少ない数の又は更に多くの数のレベルを選択することも可能であり、且つ、線形的に分割することも必須ではない。例えば、最上位の電荷レベルは、例えば50〜100%であってよく、且つ、その他の電荷レベルは更に小さな範囲をカバー可能である。緊急ビットの場合と同様に、2つのビットが使用されており、これにより電池電荷を4つの異なるレベルに分割可能である。
【0110】
このような場合には、電池レベルをトリガに包含することにより、比較的高いスループットのアクセス方法が電池電荷の完全な消耗に結び付かないことを保証することができる。これらの本発明の実施例においては、計測されたパラメータ値に照らして適切である比較的高いスループット方式は、電池レベルが適当である場合にのみ実行可能である。さもなければ現在の方式が維持される。同様に、電池レベルが低下した場合には更に低いスループットの方式を選択する必要があろう。
【0111】
このシナリオにおいては、非常事態データが依然として記録されるが理想的なものを下回るペースにおいて記録される。これは、例えば、装置が埋植型であり、且つ、(電池にアクセスするべく操作が必要であるため)電池を即座に交換不能である際に特に有利である。又、これは、非埋植型アプリケーションの電池を交換するべく夜間において看護師又は医療アシスタントが周辺に存在していない際のテレメトリ非常事態アプリケーションの場合にも有用である。例えば、自宅治療においては、相対的に高い精度及びサンプリングレートにおいて、夜間に数分間にわたってのみ発生可能なまれな医学的又は非常事態の状況の記録を継続することが有利である。同時に、センサは低電池レベルのメッセージをコーディネータに送信可能である。
【0112】
図18は、スリープパターンを電池電荷のレベルに対して関連付ける1つの方法を示す表70である。この場合に示されているスリープパターンは、単一装置カテゴリ用のものであり、従って、以前の図及び表1に示されている医療装置と非医療装置への分割には当てはまらない。最も低いレベルL1(0〜25%)は、閾値比較の結果がどのようなものであっても低ウェークアップスリープパターンのみを許容し、第2レベルL2は、中程度のウェークアップパターンを更に許容し、第3レベルL3(50〜75%)は、更に高いウェークアップパターンを更に許容し、且つ、トップレベルL4(75〜100%)は、すべての可能なスリープパターンが許容されるように連続したウェークアップパターンを更に許容する。従って、電池電荷レベルは、必要に応じてパラメータ値に従って選択されたスリープパターンを無効にする。レベルL1〜L4の間の限度とパラメータ用に定義されている閾値の間には、実用性の理由から1対1の対応関係が存在しており、従って、それぞれの限度が2つのレベルの間を超えた場合に1つの予め定義されたスリープパターンの分だけ受け入れ可能なスリープパターンの境界を移動する。
【0113】
次の表2は、1つの装置カテゴリを考慮しており、且つ、緊急ビットをスリープパターン及びチャネルアクセスモードと関連付けている。右手の列は、スリープパターンとチャネルアクセスモードの間の可能なリンクを示しているが、その他の関連付けも可能である。
【0114】
【表2】

【0115】
正常な状態においては、コーディネータは緊急ビット00(パラメータ値が最大でTh1である)を送信する。わずかに異常である場合には(計測されたパラメータがTh1から最大で閾値Th2である)緊急ビット01が送信される。計測されたパラメータが最大で閾値Th3である異常な状態では装置は緊急ビット10を送信する。計測されたパラメータ値がTh3を上回った状態から、装置は非常事態となり緊急ビット11を送信する。
【0116】
送信される緊急ビット及び電池レベルは、電池ビットが純粋に電池レベルを通知し、且つ、緊急ビットが純粋にパラメータレベルから導出されるように、別個に利用可能である。更に複雑な方式においては、緊急ビットは、パラメータの計測値のみを考慮した適切なスリープパターンを表すことが可能であり、且つ、電池ビットは、動作の際の実際のスリープパターンを示すことが可能であって、この実際のスリープパターンは電池レベルを考慮して許容される最高のスリープパターンである。
【0117】
図19A及び図19Bは、緊急ビットと電池ビットの組合せ型のトリガを有する部分的に分散化されたシナリオにおけるトリガ4を表す信号図を示している。
【0118】
まず、センサは収集されたデータを分析し、且つ、自身が非常事態の状況にあることを認識し、センサは電池状態をもチェックする。次いで、ステップS50においてセンサは、緊急ビットu1及びu2を非常事態のレベルに従って適切に設定し、且つ、電池ビットb1及びb2を電池状態(この場合には、問題がない)に従って設定することにより、メッセージをコーディネータに送信し、状況についてコーディネータに通知する。電池状態に問題がない場合には、コーディネータは、ステップS51において非常事態の状況に対処するために動作モードをCSMAに切り替えるべくメッセージを送信する。一方、電池が低レベルであり、且つ、センサが非常事態の状況にある場合には、コーディネータは、センサにおける動作モードのCSMAへの変更を強制することなしに、非常事態の状況と低レベルの電池に対処するべく必要な処置を講じる。
【0119】
その後CSMAに切り替えた後に、電池が低レベルになり、且つ、センサが依然として非常事態にある場合には、ステップS52において組合せ型のトリガが無効化され、且つ、ステップS53においてコーディネータは、センサの動作モードをWiseMACに戻るように切り替えるべくセンサに通知する。コーディネータは非常事態の状況及び低レベルの電池に対処するべく必要な処置を講じる。
【0120】
代替シナリオにおいては、電池のレベルが低下し、その結果、この要因によって組合せ型トリガが無効化されるのではなく、緊急レベルが低下し、且つ、従って、この要因により組合せ型のトリガが無効化される。図19Bとの相違点は、図20のステップS52に示されている。
【0121】
以上のシナリオにおいては、センサが、何らかの理由から送信必要性の増大を有することを自律的に理解し、且つ、その結果、トリガをコーディネータに送信している。その他の実施例においては、コーディネータは、センサから送信されたデータからセンサにおける送信必要性の増大の存在を認識し、且つ、その結果、トリガがコーディネータからセンサに送信される。部分的に中央集中化されたシナリオにおいては切替え命令がセンサからコーディネータに送信される。
【0122】
これらの部分的に中央集中化されたシナリオは、上述の側面においてのみ以前のシナリオと異なるため、異なる側面についてのみ詳細に説明する。
【0123】
図21A及び図21Bは、コーディネータからの非常事態ビットによってCSMAモードへの切替えがトリガされ、且つ、切替えがセンサによって送信されるというトリガ5の部分的に中央集中化されたシナリオを示しており、これは、部分的に中央集中化されたシナリオである。
【0124】
コーディネータは、センサから送信された生命パラメータパケットを分析することにより非常事態を検出する。分析に基づいて、コーディネータは非常事態の状況を検出し、且つ、パケット内において、設定された非常事態ビットのトリガにより、この非常事態をセンサに通知する(S60)。次いで、ステップS61においてセンサは、ACKを送信し、これにより1に設定されたモードビットにより、CSMAモードへの切替えを通知する。そして、この後にコーディネータがCSMAに切り替える。この後においては、送信機からの更なるパケットは、緊急事態がもはや存在していないことをコーディネータが検出する時点までCSMAに従って送信される。この検出結果は、ステップS62において、センサに送信されるメッセージ内において1に設定された非常事態ビットにより(トリガの無効化)通知されることになる。
【0125】
次に送信機は、ステップS63においてACKを送信し、ゼロに設定されたビットモードにより、自身がWiseMACに切り替えて戻ったことをコーディネータに通知する。
【0126】
トリガ6は部分的に中央集中化されたシナリオであり、コーディネータが状況の重大性を認識し、且つ、u1及びu2ビットを通じてセンサに通知するが、電池の状態は考慮されていない。トリガ6によれば緊急ビットが前述のように使用される。これは、部分的に中央集中化されたシナリオであるため、状況の重大性を認識すると共にu1及びu2ビットとしてトリガを送信するのはコーディネータである。図22A及び図22Bは、このシナリオを示している。
【0127】
センサは、通常どおりにデータをコーディネータに送信する。コーディネータは、メッセージを分析し、且つ、そのメッセージを特定の閾値と比較するか、或いは、前述のその他の方法のうちのいずれかにより緊急レベルを導出する。センサパラメータのレベルに従って、コーディネータは、ステップS70において緊急ビットu1及びu2を有するメッセージをセンサに返送し、緊急性のレベルに従ってビットu1及びu2を適切に設定することによりセンサが非常事態にあるかどうかをセンサに通知する。センサは、メッセージを送信し、非常事態の状況に対処するために動作モードをCSMAに切り替えるようにコーディネータに通知するS71。次にコーディネータは、CSMAに切り替えてその可用性を増大させる。センサが非常事態の状況を離脱し、且つ、ステップS72において、これがコーディネータによって識別された際に、センサは、ステップ73において自身がWiseMACに切り替えて戻ることをコーディネータに通知する。
【0128】
以上の部分的に分散化されたシナリオ及び部分的に中央集中化されたシナリオでは、ある程度の自律性/処理能力がセンサに与えられている。完全に中央集中化された以下のシナリオにおいては、トリガと切替え命令の両方がコーディネータからセンサに送信される。その他の観点においては、これらのシナリオは以前のシナリオに対応しており、且つ、従って、これらの対応する部分に関する詳細な説明は簡潔性を考慮して省略する。
【0129】
トリガ7は、完全に中央集中化されたシナリオであり、コーディネータが状況の重大性を認識し、且つ、u1及びu2ビットを通じてセンサに通知するが、電池の状態は考慮されていない。図23は、完全に中央集中化されたシナリオにおける信号の流れ図であり、WiseMACとCSMAの間における切替えを示している。
【0130】
センサは、通常どおりにデータをコーディネータに送信する。コーディネータは、データを分析し、且つ、ステップS80において送信されるビットu1及びu2を非常事態のレベルに従って適切に設定することにより、以前と同様に緊急ビットを生成する。センサはトリガをアクノリッジでき、、これがステップS81に示されている。次いで、コーディネータはメッセージを送信し、非常事態の状況に対処するために動作モードをCSMAに切り替えるべくセンサに通知するS82。コーディネータは、CSMAに切り替えてその可用性を増大させる。センサが非常事態を離脱し、これがコーディネータによって識別され、且つ、ステップS83において緊急ビットを使用してセンサに送信された際に、コーディネータは、S84においてWiseMACに戻るように切り替えるべくセンサに通知する。この図は、電池の考慮を伴わない完全に中央集中化されたシナリオにおける切替えを示している。
【0131】
トリガ8は、完全に中央集中化されたシナリオであり、コーディネータが状況の重大性を認識し、且つ、u1及びu2ビットのトリガ要因を通じてセンサに通知し、もう1つのトリガ要因がb1及びb2を通じてセンサからコーディネータに送信され、コーディネータが切替えについて決定する。
【0132】
従って、この場合には、切替えを起動するべく電池の状態が考慮されている。従って、緊急ビットのトリガ要因はコーディネータから送信機に送信されるが、コーディネータが、送信機からコーディネータに送信される電池ビットを使用することにより、後続の電池レベルチェックを実行し、第2トリガ要因を生成した後にアクセスモードの切替えを起動する。当業者であれば、このシナリオにおいては、緊急ビットは、その段階において電池レベルがまだ考慮されていないため、センサの送信必要性に純粋に対応していることを理解するであろう。従って、電池ビットは、電池レベルの単純な指示子である。前掲した緊急ビットと電池状態ビットの表を参照されたい。
【0133】
図24A及び図24Bは、このシナリオを示している。センサは、通常どおりに、データをコーディネータに送信する。コーディネータは、ステップS90においてデータを分析し、且つ、非常事態のレベルに従って適切にビットu1及びu2を設定することにより緊急ビットを生成し、これにより、メッセージをセンサに送信してセンサが非常事態にあることをセンサに対して通知する。次いでセンサは、ステップS91において電池レベルをチェックし、且つ、その結果をコーディネータに送信する。電池レベルに問題がない場合には、コーディネータはステップS92において非常事態の状況に対処するために動作モードをCSMAに切り替えるべくメッセージを送信する。電池が低レベルである場合には、コーディネータはセンサにその動作モードを変更させることなしに、非常事態の状況及び低電池レベルに対処するべく必要な処置を講じる。
【0134】
ステップS93において送信される電池ビットによって通知される電池のレベルが低く、且つ、センサが依然として非常事態にある場合には、コーディネータは、ステップS94においてWiseMACに戻るように切り替えるべく、センサにモード切替えメッセージを送信し、次にコーディネータは必要な対策を実行する。図24A及び図24Bは、CSMAへの切替えと、低電池レベルに起因したWiseMACへの復帰の切替えを示す。
【0135】
一方、センサの電池が低レベルであり、且つ、センサが非常事態にない際には、コーディネータは、WiseMACに戻るための切替えメッセージをセンサに送信し、且つ、低電池レベルの状況に対処するべく適切な処置を講じることができる。図25A及び図25Bは、非常事態が解消された際の切替えのケースを示している。ここで、図25A及び図25Bにおいては、ステップS93は、コーディネータからセンサへの緊急ビットの送信を示しており、ステップS94において、切替え命令がコーディネータから送信されている。或いは、この代わりに、センサが緊急ビットをコーディネータに送信可能であり、次いで、コーディネータが、ステップS94において切替えを命令することも可能である。この第2の選択肢は、中央集中化のレベルが低い。
【0136】
トリガ8は、センサが非常事態にあり、且つ、電池の状態に問題がなく復帰の切替えが非常事態通知の解消によって実行される中央集中化されたシナリオを示している。この最後のシナリオは、切替えと組合せ型のトリガの要因のうちの少なくとも1つのものがコーディネータによって処理されているため、中央集中型のシナリオに分類される。
【0137】
複数非常事態の管理
本節においては、複数の装置が同時に非常事態となり、且つ、本発明の実施例によるプロトコルがそれらに対処するという状況について説明する。1)センサ(又は、その他のネットワーク装置)が同一レベルの非常事態を具備するもの(図26を参照されたい)と、2)センサが異なる非常事態レベルを具備するもの(図27を参照されたい)と、という2つのシナリオが考えられ、且つ、これらについて説明する。中央集中方式により両方のシナリオをコーディネータによって制御する。
【0138】
シナリオ1においては、装置/センサは、同一の非常事態レベルを有する非常事態にある。非常事態の状況が存在しない際には、センサは大部分の時間にわたってスリープ状態に移行し、且つ、チャネルの活動をチェックするべく定期的にウェークアップする。非常事態にない際には、センサはチャネルアクセスのためにWiseMACプロトコルに準拠しているものと仮定する。次いで、いくつかのセンサが、同一の緊急レベルを有する非常事態の状況に移行する。センサは、そのスリープパターンを変更しなければならず、且つ、非常事態の状況に対処するべく更に高度なウェークアップ状態にならなければならない。コーディネータは、以前の実施例に記述されているように、スループットと可用性を改善するためにその動作モードをWiseMACからCSMAモードに変更するべく関連するセンサに対して通知する(ステップS100)。この場合に、関連するセンサは、図26のステップS101〜S103に示されているように、チャネルにアクセスするべくその間において競合しなければならない。又、これらのセンサは、非常事態の状況にはないその他のセンサともそのサンプリング期間中に、且つ、それらのセンサが送信対象のデータを具備する場合に競合することになろう。パケットのプリアンブルは、通常、競合者の間の衝突を回避するべくランダムに選択される。本発明の実施例においては、このプリアンブルを、その長さが非常事態のレベルに反比例するように選択可能であり、従って、非常事態にないセンサには非常事態にあるセンサよりも低い優先順位が付与される。非常事態の状況にあるセンサの数が特定の閾値を超過した場合には、コーディネータは、TDMA/GTSなどの更に同期レベルが高く且つ保証されているネットワーク動作モードに切り替わるべく決定可能である(ステップS104)。従って、コーディネータは、チャネルにアクセスするべく関連するセンサ(即ち、トリガされたセンサ)のためにGTS仕様を有するビーコンを送出する。関連するセンサは、ステップS105において、自身の割り当てられたスロット上においていくつかの周期にわたって又は非常事態の状況が解消される時点まで送信する。非常事態にあるセンサの数が閾値を下回った場合には、コーディネータはCSMAモードに戻るように切り替わるべくセンサに通知する。
【0139】
更には、非常事態が解消された場合には、コーディネータは、ステップS107において、非常事態にない場合の既定のネットワーク動作モードであるWiseMACに戻るように切り替わるべく関連するセンサに通知する。
【0140】
シナリオ2においては、装置/センサは、異なる非常事態のレベルを有する非常事態にある。図27は、いくつかの装置が非常事態にあり、且つ、異なる非常事態のレベルを具備するという非常事態の状況における切替えプロトコルを示している。
【0141】
以前と同様に、非常事態の状況が存在しない際には、センサは大部分の時間にわたってスリープ状態に移行しており、且つ、チャネルの活動をチェックするべく定期的にウェークアップする。非常事態にない際には、センサは、チャネルアクセスのためにWiseMACプロトコルに準拠しているものと仮定する。次いで、いくつかのセンサが異なる非常事態のレベルを有する非常事態の状況に移行する。センサは、非常事態の状況に対処するべく、更に高度なウェークアップ状態に移行しなければならない。従って、ステップS110においてコーディネータは、スループット及び可用性を改善するべくその動作モードをCSMAに変更するように関連するセンサに通知する。この場合に、関連するセンサは、ステップS111〜S113に示されているように、チャネルにアクセスするべくその間において競合しなければならない。又、これらのセンサは、非常事態の状態にはないその他のセンサとも、そのサンプリング期間に、且つ、それらが送信対象のデータを持っている場合に競合することになろう。
【0142】
パケットのプリアンブルは、通常、競合者の間の衝突を回避するべくランダムに選択される。いくつかの本発明の実施例においては、このプリアンブルは、その長さが非常事態のレベルに反比例するように選択され、従って、非常事態にないセンサには、関連する(トリガされた)センサとの関係において低い優先順位が付与される。更には、より高いレベルの非常事態にあるセンサにはより低いレベルの非常事態にあるセンサよりも高い優先順位が付与されることになる。非常事態の状況にある関連するセンサの数が特定の閾値を超過した場合には、コーディネータは、TDMA/GTSなどの更に同期レベルが高く且つ保証されているネットワーク動作モードに切り替えるように、それらのセンサに通知する(S114)。
【0143】
シンクは、関連するセンサのためにGTS仕様を有するビーコンを送出する。関連するセンサは、その割り当てられたスロット上において、いくつかの周期にわたって又は非常事態の状況が解消される時点まで送信する(S115)。非常事態にあるセンサの数が予想の既知を下回った場合には、コーディネータは、CSMAモードに戻るように切り替えるべく関連するセンサに通知する(S116)。非常事態が解消された場合には(例えば、すべてのトリガが解消された場合には)、WiseMACが非常事態にない際の既定のネットワーク動作モードであることから、コーディネータは、WiseMACに戻るように切り替えるべく関連するセンサに通知する(S117)。
【0144】
以下の説明は、非常事態ビット、緊急ビット、及び電池レベルビット(これらのそれぞれのものは、アクセス変更フィールドを提供可能である)を送信するための新しいシグナリングプロトコルをIEEE802.15.4に基づいて現在開発中のIEEE802.15.6などの通信規格に適応させる方法を示している。IEEE802.15.4のフレームフォーマットは、既にフレームペンディングビットを導入している。
【0145】
図28は、緊急メッセージに対してその他のものよりも高い優先順位が割り当てられるように、メッセージの緊急性を通知するためのIEEE802.15.4のフレームフォーマットに対する1つの可能な変更を示している。2つの緊急ビット81、82が示されており、且つ、センサは、例えばセンサの変化するスリープパターンをコーディネータに通知するべく、データフレーム、アクノリッジメントフレーム、及びMACコマンドフレームのいずれか又はすべてなどの送信フレーム内において、これらの緊急ビットを利用する。
【0146】
又、これらの緊急ビットは、例えば、表1に示されているように、非医療装置と医療装置を区別するべく、或いは産業用アプリケーションにおいて異なる装置タイプ間の優先順位を区別するべく使用することも可能である。図10との比較から観察可能なように、フレームコントロールが、1オクテットだけ拡張されており、この1オクテット内において2つのビット(緊急U1及び緊急U2)を使用し異なるスリープパターンに対応した異なる緊急レベルを通知している。
【0147】
図28は、電池レベルに関係した2つのビット83、84を更に含む。これらのビットは、電池レベル1であるL1とレベル2であるL2として示されている。いくつかのケースにおいては、緊急ビットは、動作の際の実際のスリープパターンを反映することはできないが、その代わりに、電池レベルを考慮したことに起因して許容されないために実行不能な場合にも、適切なスリープパターンを通知することは可能である。同様に、電池ビットは、緊急ビットと共に電池レベルを考慮して実行される実際のスリープパターンの通知として参照する必要があろう。
【0148】
又、図28は、非常事態ビットと、アクノリッジメントタイプを表す2つのビットを包含するべくIEEE802.15.4のフレームコントロールフィールドに必要とされる対応する変更をも示している。下位互換性を考慮し、これらの非常事態及びアクノリッジメントタイプのためにIEEE.802.15.4の予備のビット(7〜9)を使用している。IEEE802.15.4の変更済みのフレームタイプが図29に示されている。下位互換性を考慮し、予備のビット100〜111を使用して異なるタイプのアクノリッジメントフレームと、非常事態の状況について生成される新しいタイプのフレームである非常事態フレームを通知している。
【0149】
「グリーンフィールド」方式の規格から開始し、前述の改善は、以下の内容を使用することによりフレームコントロール内に包含可能であろう。
・アクノリッジメントタイプのための2つのビット
・緊急レベルのための2つのビット
・電池レベルのための2つのビット
・フレームタイプを通知するための3つのビット
【0150】
更には、コントロールフレーム内のフレームタイプは、データフレーム、MACフレーム、及びビーコンフレームなどのその他のタイプのフレームに加えて、以下のもののうちのいずれかを通知するための値を包含可能であろう。
・非常事態フレーム
・アクノリッジメントフレーム
・即時アクノリッジメントフレーム
・遅延アクノリッジメントフレーム
【0151】
図30は、IEEE802.15.6などの新しい規格の一部としての改善を示している。この図は、MACレイヤにおけるヘッダフレームの提案部分を示しており、これは、フレームペンディングビットをも包含可能であろう。図31は、可能なフレームタイプビットの対応する表を示している。
【0152】
図32は、MACコマンドオクテットの場所を示す現在のIEEE802.15.4規格におけるMACフレームの基本的なフォーマットを示している。図33は、IEEE802.15.4規格の現在のバージョンのコマンドフレーム識別子のリストを示している。
【0153】
コントロールフィールドシグナリングを伴う本発明の実施例は、MACフレームヘッダのMACフレームコントロール内の少なくとも4つのビット(モアビットu1 u2 b1 b2)の任意の組合せを使用し、BAN装置の状態を規定可能である。これらの状態情報ビットは、いずれも独立して設定可能であり、且つ、一般的には、但し、限定を伴うことなしに、非常事態の状況においてBAN、BANトラフィック、及びBAN装置管理において多数の方法によって組み合わせ可能である。これらは、図32に示されているようにMACコマンドフレーム又はその他の任意のタイプの送信フレーム内において送信可能である。
【0154】
代替ソリューションにおいては、新しいMACコマンドフレームを追加可能であり、新しいコマンドフレーム識別子が図33のリストに追加される。前述のビットを使用することにより、又はなんらかのその他の方法によりペイロード(存在する場合)を使用して装置の状態を区別可能であろう。
【0155】
MACコマンドフレームを含む任意の送信フレームタイプに好適な更なる代替の且つ好ましい方式は、フレームコントロールの外に、但し、依然としてMACヘッダの内部に、前述のビット、或いは、好ましくは、以下に示されている装置状態の列挙リストを有する単一のオクテットを導入するというものである。この1オクテットは、合計で256個の可能な装置状態を提供することになり、例えば、限定を伴うことなしに、以下のようなものがある。
【0156】
状態ID−装置状態の説明
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0x01−正常(即ち、非常事態ではなく、電池も正常である)
0x02−非常事態ではなく、電池は中レベルである。
0x03−非常事態ではなく、電池が低レベルである。
0x04−非常事態ではなく、電池が正常である。
0x05−非常事態であり、電池が中レベルである。
0x06−非常事態であり、電池が低レベルである。
【0157】
受信装置が、このフィールドを判読及び解釈するべきかどうかを知るために、単一の「装置状態」(ds)ビットをMACフレームコントロール内に導入し、装置状態を判読及び解釈するか(ds=1)、又は装置状態を無視するか(ds=0)を通知可能である。
【0158】
本発明は、以下のような有利な側面を具備する。
【0159】
(1)BAN規格、特に、非常事態及びビデオストリーミングへの対処に適したWiseMAC HAに対する改善。実施例は、必要に応じて動作モードを切り替えるための新しいトリガをも導入する。
【0160】
(2)非常事態の状況と、トラフィックの増大又はストリーミングフローと、についてコーディネータに通知するための新しいトリガを包含するBAN規格に適したWiseMAC HAプロトコルメッセージに対する変更。
【0161】
(3)非常事態ビットがセンサから送信され、且つ、切替えがコーディネータによって決定され、CSMAへの切替えのために、トリガがセンサーからの非常事態ビットによって生成される部分的に分散化されたシナリオ。
【0162】
(4)センサからコーディネータに送信されるモアビットが負荷の増大又はストリーミンングフローを通知し、モアビットが動作モードのCSMAへの切替えをトリガし、且つ、コーディネータが切替えを決定する部分的に分散化されたシナリオ。
【0163】
(5)送信機が、緊急ビットを使用して状況の重大性を認識し、且つ、コーディネータに通知し、電池の状態は考慮されない部分的に分散化されたシナリオ。
【0164】
(6)送信機が、緊急ビット及び電池状態ビットを使用して状況の重大性を認識し、且つ、コーディネータに通知し、コーディネータが切替えを決定する部分的に分散化されたシナリオ。
【0165】
(7)本発明者らによって既存のプロトコルに導入されたトリガ及び切替えという少なくとも2つの新しいシグナリング要素。
【0166】
(8)既存の切替えプロトコルに対する詳細な優先順位付け概念の埋め込みと新しいシグナリング要素と関連付けられた新しいプロトコル。
【0167】
(9)WiseMAC及びCSMAに基づいたチャネルアクセスの共同動作のための中央集中型の切替え及びシグナリングのプラットフォーム。
【0168】
(10)コーディネータからの非常事態ビットがCSMAモードへの切替えをトリガする部分的に中央集中化されたシナリオ。
【0169】
(11)コーディネータが、状況の重大性を認識し、且つ、緊急ビットu1及びu2を通じてセンサに通知し、電池の状態は考慮されない部分的に中央集中化されたシナリオ。
【0170】
(12)コーディネータが、状況の重大性を認識し、且つ、u1及びu2ビットを通じてセンサに通知し、コーディネータが切替えを決定する完全に中央集中化されたシナリオ。
【0171】
(13)コーディネータが、状況の重大性を認識し、且つ、u1及びu2ビットを通じてセンサに通知し、センサからコーディネータへのb1及びb2を通じてトリガされ、コーディネータが切替えを決定し、電池の状態が考慮される完全に中央集中化されたシナリオ。
【0172】
(14)復帰の切替えが、コーディネータからセンサに送信される非常事態ビット(非常事態の解消)を通じてトリガされ、且つ、コーディネータが切替えを決定する部分的に中央集中化されたシナリオ。
【0173】
(15)復帰の切替えが、コーディネータからセンサに送信されるu1u2(非常事態の解消)を通じてトリガされ、且つ、コーディネータが切替えを決定する部分的に中央集中化されたシナリオ。
【0174】
(16)復帰の切替えが、センサによって送信されるb1及びb2を通じてトリガされ、且つ、コーディネータが切替えを決定する完全に中央集中化されたシナリオ。
【0175】
(17)復帰の切替えが、コーディネータからセンサに送信されるu1u2(非常事態の解消)を通じてトリガされ、且つ、コーディネータが切替えを判定する完全に中央集中化されたシナリオ。
【0176】
(18)装置/センサが非常事態にあり、装置/センサが同一の非常事態レベルを具備する際の異なるモード間における切替えプロトコル。
【0177】
(19)装置/センサが非常事態にあり、且つ、装置/センサが異なる非常事態レベルを具備する際の異なるモード間における切替えプロトコル。
(20)非常事態にある装置の数が特定の閾値を超過した際の深刻な非常事態の状況における更に保証されたタイプのモードであるTDMA/GTSへの切替え。
【0178】
(21)非常事態にある装置の数が特定の閾値を下回った際のCSMAなどの更に緩和されたモードへの復帰の切替え。
【0179】
2つのチャネルアクセスモードの間における切替えのために本発明の実施例において提案されている切替え基準及び関連するプロトコルによれば、チャネルアクセスにおけるレイテンシの低減とエネルギーの節約の両方の観点において、無線BAN装置の動作を最適化可能である。本発明の実施例によるWiseMACとCSMAの間における切替えにより、同一の無線BAN内において混在している医療装置及び非医療装置の動作を最適化可能である。
【0180】
本発明の実施例は、MBANの使用による非常事態管理の円滑な実行において重要な役割を果たすことができる。
【0181】
(i)心臓に問題を有する世界中の数億人の患者を、彼らの身体上においてMBANを形成する無線センサを利用することにより、病院において、又は自宅において、監視可能である。MBANは、このような患者に更なる移動性を提供可能である。但し、心機能の異常や心臓発作などの更に深刻なケースなどの状況にある患者のグループの場合には、信頼性の高い通信チャネルを確保して非常事態又はアラーム信号を見逃さないことを保証することが極めて重要である。
【0182】
(ii)世界中で数億人の人々が糖尿病を患っている。最近、グルコースの計測のための埋植可能な又は非侵襲的な方法が検討されている。MBANを使用し、24時間にわたって患者のグルコースレベル情報を監視可能である。患者のグルコースレベルがチャートを逸脱し、且つ、患者のための非常ジオロケーション及びその他の必要な緊急的な医学的手順が必要とされる状態が存在する。
【0183】
(iii)MBANを使用することにより、データの喪失によって生命が脅かされる可能性がある集中治療の状態にある患者を監視しつつ、検知データを収集可能である。
【0184】
(iv)主には、低データレートのアプリケーションが想定されているが、MBANは、個々のパケットの喪失が致命的であると共に品質に影響を及ぼすストリーミングビデオ/オーディオデータの転送に適用することも可能であろう。非常事態の状況においては、誤ったデータは、疾病の診断に悪影響を付与可能である。
【0185】
(v)医療診断の場合には、MMR又はX線画像は、医師が患者を適切に診断するべく、非常に明瞭であることを要する。従って、この場合にも、信頼性の高いデータ転送が不可欠である。
【0186】
本発明は、新しいネットワーク、ネットワーク装置(又はセンサ)、コーディネータ、又はこれらのためのハードウェアモジュールの形態をとることが可能であり、且つ、1つ又は複数のセンサ及び/又はコーディネータのプロセッサによって実行されるソフトウェアを置換又は変更することより、実装可能である。
【0187】
従って、本発明の実施例は、ハードウェアにおいて、或いは、1つ又は複数のプロセッサ上において稼働するソフトウェアとして、或いは、これらの組合せとして、実装可能である。又、本発明は、本明細書に記述されている技法のいずれかのものの一部又はすべてを実行する1つ又は複数の装置又は機器プログラム(例えば、コンピュータプログラム及びコンピュータプログラムプロダクト)として実施可能である。このような本発明を実施するプログラムは、コンピュータ可読媒体上に保存可能であり、或いは、例えば、1つ又は複数の信号の形態を有することも可能であろう。このような信号は、インターネットウェブサイトからダウンロード可能なデータ信号であってよく、或いは、搬送波信号上において、又は任意のその他の形態において提供することも可能である。
【0188】
以上の説明においては、一例として、IEEE802.15.4及びIEEE802.15.6を参照しているが、本発明は、IEEE802.15.6に従って動作するかどうかとは無関係に、任意のタイプのMBANに対して、且つ、医療ボディエリアネットワークでない場合にも、非常事態の状況における通信の信頼性の改善に対する要件を具備するその他のタイプのBAN及びその他の近距離無線ネットワークに対して、適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク装置と、コーディネータと、を含む装置の無線ネットワークであって、
前記コーディネータは、無線通信のための送信及び受信手段を有し、且つ、
前記ネットワーク装置は、無線通信のための送信手段及び受信手段と、比較的高いスループット方式と比較的低いスループット方式という2つの異なるチャネルアクセス方式に従って前記ネットワーク装置に選択的に通信させるべく動作可能な制御手段と、を有し、
前記比較的低いスループット方式から前記比較的高いスループット方式への切替えのために前記ネットワーク内においてトリガが提供され、前記トリガは、前記ネットワーク装置の送信必要性を考慮して判定される、ネットワーク。
【請求項2】
前記送信必要性は、前記ネットワーク装置のバッファ内において待機しているデータ、装置の非常事態の状況、装置の緊急事態の状況、及び電池レベルという要因のうちの1つ又は複数のものに基づいて定義される請求項1に記載のネットワーク。
【請求項3】
前記ネットワーク装置の送信手段及び/又はコーディネータの送信手段は、前記トリガの通知を、送信フレームのアクセス変更フィールド内において、好ましくは、前記フィールド内の既定値に設定された値を使用することにより、送信するべく動作可能である請求項1又は2に記載のネットワーク。
【請求項4】
前記トリガは、トリガ要因の組合せに基づいて生成された組合せ型のトリガであり、且つ、好ましくは、前記トリガ要因のうちの1つ又は複数は、送信フレームのアクセス変更フィールド内において送信される請求項1〜3のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項5】
前記トリガによって起動される切替え命令に基づいて前記比較的低いスループットチャネルアクセス方式から前記比較的高いスループットチャネルアクセス方式への切替えを行う請求項1〜4のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項6】
アクセス変更フィールド内の異なる値は、前記トリガの中断を生じ、且つ、前記比較的低いスループットチャネルアクセス方式への復帰の切替え命令を起動する請求項1〜5のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項7】
前記ネットワーク装置の送信手段及び/又はコーディネータの送信手段は、切替え命令の通知を、送信フレームのフィールド内において、好ましくは、前記フィールド内の既定値に設定された値を使用することにより、送信するべく動作可能である請求項1〜6のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項8】
前記切替え命令の前記通知は、アクノリッジメントフレーム内において提供される請求項7に記載のネットワーク。
【請求項9】
前記ネットワーク装置は、前記ネットワーク内の複数のネットワーク装置のうちの1つであり、前記ネットワークは、これらのネットワーク装置のうちの複数のものについてトリガを生成するべく動作可能であり、前記ネットワーク装置のそれぞれのものには、その装置タイプ及び/又は送信必要性に合致した優先順位が割り当てられ、且つ、前記ネットワーク装置の優先順位は、正常な送信の可能性に影響を及ぼす前記比較的高いスループット方式における送信パラメータを判定するべく使用される請求項1〜8のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項10】
前記ネットワーク装置は、前記ネットワーク内の複数のネットワーク装置のうちの1つであり、前記ネットワークは、これらのネットワーク装置のうちの複数のものについてトリガを生成するべく動作可能であり、
これらのネットワーク装置のうちの既定数を上回るものについてトリガが所与の時間において生成される場合に、前記ネットワークは、少なくとも生成されたトリガを有するネットワーク装置を、好ましくは、保証時間スロットを使用することにより、更に好ましくは、それらのネットワーク装置を更なる他のアクセスチャネル方式に切り替えることにより、コンテンションを伴わない通信に切り替えるべく動作可能である請求項1〜9のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項11】
前記トリガ又は前記切替え、或いは、これらの両方は、コーディネータ内において生成される請求項1〜10のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項12】
アップリンク送信及びダウンリンク送信は、いずれも、前記切替えの時点において、前記比較的低いスループット方式から前記比較的高いスループット方式に切り替わる請求項1〜11のいずれか一項に記載のネットワーク。
【請求項13】
装置の無線ネットワーク内におけるネットワーク装置であって、前記装置の無線ネットワークは、前記ネットワーク装置と、コーディネータと、を含む、ネットワーク装置であって、
無線通信のための送信手段及び受信手段と、
比較的高いスループット方式と比較的低いスループット方式という2つの異なるチャネルアクセス方式に従って前記ネットワーク装置に選択的に通信させるべく動作可能な制御手段と、
を有し、
前記送信手段及び/又は受信手段は、それぞれ、前記比較的低いスループット方式から前記比較的高いスループット方式への切替えのためのトリガを送信及び/又は受信するべく動作可能である、ネットワーク装置。
【請求項14】
無線センサネットワークにおいて、前記センサは、パラメータの値を検出するべく動作可能な検知手段を有する請求項13に記載のネットワーク装置。
【請求項15】
装置の無線ネットワーク内におけるコーディネータであって、前記装置の無線ネットワークは、ネットワーク装置と、前記コーディネータと、を含む、コーディネータであって、
無線通信のための送信及び受信手段と、
比較的高いスループット方式と比較的低いスループット方式という2つの異なるチャネルアクセス方式に従って前記コーディネータに選択的に通信させるべく動作可能な制御手段と、
を有し、
前記送信手段及び/又は受信手段は、それぞれ、前記比較的低いスループット方式から前記比較的高いスループット方式への切替えのためのトリガを送信及び/又は受信するべく動作可能である、コーディネータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2012−519440(P2012−519440A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552378(P2011−552378)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051594
【国際公開番号】WO2010/100014
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】