説明

送り速度制御方法および送り速度制御装置

【課題】局所的な加工焼けの発生を防止できる送り速度制御方法および送り速度制御装置を提供する。
【解決手段】加工中の各瞬間tにおける工具30による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に、各微小領域における加工能率Q"(w,θ,t)が設定上限値Q"set1以下となるように、工具30の被加工物15に対する相対的な送り速度Fを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具により被加工物を加工する際に、被加工物に対する工具の相対的な送り速度を制御する送り速度制御方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高精度な加工を行うために、砥石の回転駆動電力を目標電力に保つように、砥石の送り速度を制御することが、特許文献1に記載されている。つまり、加工中のある瞬間における砥石全体による加工能率が設定上限値を超えないように、砥石の送り速度を制御している。ここで、「加工能率」とは、単位時間あたりの加工体積に相当する。例えば、円柱状の砥石により円柱状の被加工物の外周面を研削加工する場合には、砥石の送り速度に切込量および研削幅を乗算することにより、砥石全体の加工能率を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−291064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ある瞬間における砥石全体による加工能率が設定上限値以下であったとしても、砥石と被加工物の形状によっては、ある瞬間における砥石による加工領域を局所的に見ると、ある微小領域における加工能率は相対的に低く、他の微小領域における加工能率は相対的に高い場合が存在することがある。このような場合には、微小領域における加工能率が高い領域において、加工焼けが発生するおそれがある。このように、ある瞬間における砥石全体による加工能率だけを監視したとしても、局所的に見ると加工焼けが発生するおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、局所的な加工焼けの発生を防止できる送り速度制御方法および送り速度制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように、送り速度を制御することとした。
すなわち、請求項1に係る送り速度制御方法の発明の特徴は、工具により被加工物を加工する際に、前記被加工物に対する前記工具の相対的な送り速度を制御する送り速度制御方法において、加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に、各前記微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように前記送り速度を制御することである。
【0007】
請求項2に係る発明の特徴は、加工中の各瞬間における前記微小領域の加工能率の最大値が設定下限値以上となるように前記送り速度を制御することである。
請求項3に係る発明の特徴は、前記被加工物は、凹歯と凸歯が周方向に連続して形成され、当該凹歯が相手歯車の凸歯に噛合することにより前記相手歯車との間で動力伝達可能な凹凸歯車であって、前記相手歯車の回転中心軸に対して交差する交差軸を中心として回転する歯車であることである。
請求項4に係る発明の特徴は、前記工具は、中心軸周りに回転しながら前記被加工物を研削する円盤状砥石であり、前記微小領域は、前記円盤状砥石による加工領域を前記円盤状砥石の軸方向断面の表面上に沿って分割された領域であることである。
【0008】
請求項5に係る発明の特徴は、加工中の各瞬間における前記円盤状砥石による前記微小領域を平面状とみなし、かつ、加工中の各瞬間における前記円盤状砥石の前記被加工物に対する相対的な移動方向を直進方向とみなした場合に、前記微小領域における加工能率は、前記円盤状砥石の軸方向断面における砥石表面上の各位置における前記被加工物との接触弧長さと、前記円盤状砥石の前記被加工物に対する相対的な送り速度における前記平面状とみなした前記微小領域の法線方向成分と、を乗算することにより算出することである。
【0009】
請求項6に係る発明の特徴は、前記工具の表面位置に応じてクーラントの届きにくさを表す係数を設定しておき、前記微小領域における加工能率は、前記微小領域の面積と当該微小領域における前記工具の前記被加工物に対する送り速度とに基づいて算出された基本加工能率に対して、前記係数を乗算して補正された値であることである。
【0010】
以上は、本発明を送り速度制御方法として把握した場合について説明した。この他に、本発明は、送り速度制御装置としても把握することができる。
すなわち、請求項7に係る送り速度制御装置の発明の特徴は、工具により被加工物を加工する際に、前記被加工物に対する前記工具の相対的な送り速度を制御する送り速度制御装置において、加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に、各前記微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように前記送り速度を制御することである。
【0011】
請求項8に係る発明の特徴は、前記送り速度制御装置が、NCプログラムに基づいてNC工作機械を制御すると共に、NCプログラムにおける前記工具の前記被加工物に対する送り速度に対して、各前記微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように補正した送り速度により制御するNC装置であることである。
【0012】
請求項9に係る発明の特徴は、加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に、各前記微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように算出された前記送り速度に基づいて、NCプログラムを生成するNCプログラム生成装置と、前記NCプログラムの前記送り速度に基づいて前記工具の前記被加工物の相対的な送り速度を制御して、前記工具により前記被加工物を加工するNC装置と、を備えることである。
【0013】
請求項10に係る送り速度制御方法の発明の特徴は、
工具により被加工物を加工する際に、前記被加工物に対する前記工具の相対的な送り速度を制御する送り速度制御方法において、
加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に各前記微小領域における加工能率を算出し、
算出された前記微小領域における加工能率に、当該微小領域の法線方向単位ベクトルにおける所定方向成分を乗算し、
当該乗算値について、前記工具による加工領域に亘って積分を行い、
当該積分値が設定上限値以下となるように前記送り速度を制御することである。
【0014】
請求項11に係る発明の特徴は、前記工具は、中心軸周りに回転しながら前記被加工物を研削する円盤状砥石であり、前記所定方向は、前記円盤状砥石の回転軸方向および前記円盤状砥石の回転軸に直交する方向の少なくとも何れかであることである。
【0015】
請求項12に係る送り速度制御装置の発明の特徴は、
工具により被加工物を加工する際に、前記被加工物に対する前記工具の相対的な送り速度を制御する送り速度制御装置において、
加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に各前記微小領域における加工能率を算出し、
算出された前記微小領域における加工能率に、当該微小領域の法線方向単位ベクトルにおける所定方向成分を乗算し、
当該乗算値について、前記工具による加工領域に亘って積分を行い、
当該積分値が設定上限値以下となるように前記送り速度を制御することである。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように、工具の相対的な送り速度を制御している。従って、加工中のある瞬間における工具による加工領域を局所的に見たとしても、各部位において加工焼けが発生することを防止できる。
【0017】
工具の相対的な送り速度を低くすればするほど、加工焼けが発生することは防止できる。この一方で、工具の相対的な送り速度を低くすると、加工時間の長期化を招く。そこで、 請求項2に係る発明によれば、微少量域の加工能率の最大値が設定下限値以上となるように、工具の相対的な送り速度を制御しているため、局所的な加工焼けを防止しつつ、加工時間の短縮を図ることができる。
被加工物を請求項3に係る発明のようにする場合には、ある瞬間におけるそれぞれの微小領域の加工能率が異なる状態となる。従って、本発明を当該被加工物に適用することで、当該被加工物に加工焼けが発生することを防止できる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、円盤状砥石による研削加工を対象としている。円盤状砥石を用いる加工においては、当該円盤状砥石と被加工物との接触が連続的となるため、微小領域における加工能率の演算が容易となる。従って、確実に所望の送り速度制御が可能となる。
請求項5に係る発明によれば、円盤状砥石を用いた研削加工において、微小領域の加工能率を、円盤状砥石の回転位相θを考慮することなく算出することができる。従って、微小領域の加工能率を非常に容易に算出できるようになる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、加工中のクーラントの影響を考慮して、加工能率を決定している。例えば、加工焼けの発生しないようにするための微小領域の加工能率の最大値は、クーラントの届きにくい部位の方がクーラントの届きやすい部位よりも低くなる。このようにクーラントの届きにくさを表す係数を用いて、微小領域の加工能率を算出することで、確実に加工焼けの発生を防止できる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、請求項1に係る送り速度制御方法における効果と同一の効果を奏する。また、請求項8に係る発明によれば、送り速度制御装置をNC装置とし、当該NC装置が入力された送り速度に対して所望の送り速度に補正して制御している。ここで、一般に、NC装置は、入力されたNCプログラムを解析して、実際の工作機械を制御するための送り速度に補間を行っている。例えば、NCプログラム中の送り速度が変更される瞬間においては、実際の送り速度が滑らかに変化するように補間する。そこで、NC装置において、補間前のNCプログラムの送り速度に対して本発明の所望の送り速度に補正するようにしてもよいし、補間後の送り速度に対して本発明の所望の送り速度に補正するようにしてもよい。
【0021】
また、請求項9に係る発明によれば、NCプログラム生成装置において、本発明の所望の送り速度に補正を行っている。つまり、NC装置は、本発明の所望の送り速度の情報に基づいて工作機械を制御する。これらの何れの場合にも、工具の相対的な送り速度を所望の送り速度とすることができる。
なお、上述した本発明の送り速度制御方法としての他の特徴について、本発明の送り速度制御装置に同様に適用できる。この場合、同様の効果を奏する。
【0022】
また、請求項10に係る発明によれば、各微小領域の加工能率を用いることで、工具にかかる所定方向成分の力の合計値を算出することができる。この所定方向成分の力の合計値が設定上限値以下となるように送り速度制御を行うことで、所定方向成分の力に対して、工具の支持剛性に応じた適切な送り速度とすることができる。
【0023】
請求項11に係る発明によれば、回転軸方向(アキシャル方向)成分の力、または、回転軸に直交する方向(ラジアル方向)成分の力に対して把握することができる。つまり、工具のアキシャル方向とラジアル方向の支持剛性について適切に考慮した上で、送り速度を制御できる。
請求項12に係る送り速度制御装置の発明の特徴は、請求項10に係る送り速度制御方法における効果と同一の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】揺動型歯車装置の軸方向断面図である。(a)は凸歯ピンが固定軸本体および出力軸本体に対して別体に形成されている場合を示し、(b)は凸歯ピンが固定軸本体および出力軸本体に対して一体に形成されている場合を示す。
【図2】凸歯ピン(凸歯)と揺動歯車の噛み合い部の拡大図であって、凸歯ピンの軸方向から見た図である。(a)は凸歯ピンが固定軸に対して別体形成されている場合を示し、(b)は凸歯ピンが固定軸に対して一体形成されている場合を示す。
【図3】揺動凹歯の斜視図である。
【図4】(a)は、揺動凹歯を揺動歯車の径方向外方から見た図である。(b)は、揺動凹歯を揺動歯車の回転中心軸方向から見た図である。
【図5】揺動歯車の揺動凹歯と凸歯ピン(凸歯)との相対的な動作を示す図である。(a1)は、凸歯ピンが揺動凹歯に噛み合う前の状態の両者の相対位置における揺動歯車の回転中心軸方向から見た図である。(a2)は、(a1)の右側から見た図である。(b1)は、凸歯ピンが揺動凹歯に噛み合っている状態の両者の相対位置における揺動歯車の回転中心軸方向から見た図である。(b2)は、(b1)の右側から見た図である。(c1)は、凸歯ピンが揺動凹歯に対して噛み合い状態から離れた時の状態の両者の相対位置における揺動歯車の回転中心軸方向から見た図である。(c2)は、(c1)の右側から見た図である。図5において、凸歯ピンの基準軸(凸歯ピンの長手方向の一点鎖線)および凸歯ピンの中心位置(黒丸)を示す。
【図6】(a)は、揺動歯車の回転中心軸方向から見た場合における、揺動歯車に対する凸歯ピンの基準軸および凸歯ピンの中心位置の動作軌跡を示す図である。(b)揺動歯車の径方向から見た場合における、揺動歯車に対する凸歯ピンの基準軸および凸歯ピンの中心位置の動作軌跡を示す図である。丸の中の数字は、軸番号に一致する。
【図7】第一実施形態において、必要とする工作機械の軸構成を説明する図である。(a)は第二直動軸および第三直動軸に平行な平面における工作機械の軸構成を示し、(b)は、第一直動軸および第二直動軸に平行な平面における工作機械の軸構成を示す。丸の中の数字は、軸番号に一致する。
【図8】トロイダル砥石(円盤状砥石)を示す図である。(a)は、トロイダル砥石を当該回転軸方向から見た図であり、(b)は、径方向から見た図である。
【図9】(a)はトロイダル砥石の斜視図であり、(b)は微小領域dAを示す図である。
【図10】時刻t1,t2,t3のそれぞれにおける加工能率Q"(w,θ,t)の分布図である。
【図11】設定上限値Q"set1および設定下限値Q"set2を示す図である。
【図12】第二実施形態:トロイダル砥石と被加工物との関係を示し、送り速度ベクトルF、法線ベクトルNおよび接触弧長Lを示す図である。
【図13】第二実施形態:(a)は、軸方向断面における砥石表面上の位置wと、軸断面の表面位置wにおける被加工物15との接触弧長Lとの2次元座標において、トロイダル砥石と被加工物との接触範囲を示す図である。(b)は、軸方向断面における砥石表面上の位置wに対する加工能率Q'(w)を示す図である。
【図14】第二実施形態:時刻t1,t2,t3のそれぞれにおける加工能率Q'(w,t)の分布図である。
【図15】時刻t1,t2,t3のそれぞれにおける加工能率Q'(w,t)の最大値を設定値Q'setに一致させた場合を示す図である。
【図16】第三実施形態:時刻t1,t2,t3のそれぞれにおいて、係数Cを考慮した加工能率Q'(w,t)の分布図である。
【図17】第四実施形態:装置構成を示すブロック図である。
【図18】第五実施形態:装置構成を示すブロック図である。
【図19】第六実施形態:装置構成を示すブロック図である。
【図20】第七実施形態において、交差軸を有する凹凸歯車により構成される動力伝達装置の断面図である。(a)は凸歯ピンが入力軸本体に対して別体に形成されている場合を示し、(b)は凸歯ピンが入力軸本体に対して一体に形成されている場合を示す。
【図21】第八実施形態において、微小領域の法線方向単位ベクトルN(w,θ)におけるアキシャル方向成分およびラジアル方向成分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の送り速度制御方法および装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。ここで、被加工物として、揺動型歯車装置を構成する揺動歯車とし、加工部位は、当該揺動歯車の凹歯とした場合を例に挙げて説明する。この揺動型歯車装置は、凹凸歯車の回転中心軸と相手歯車の回転中心軸とが交差する場合における凹凸歯車と相手歯車との関係を2組有するものに相当する。なお、以下の説明において、揺動歯車が本発明の「凹凸歯車」に相当し、固定軸12および出力軸13が本発明の「相手歯車」に相当する。
【0026】
<第一実施形態>
(1)工作機械の軸構成
第一実施形態の送り速度制御方法および送り速度制御装置による制御対象としての工作機械は、3つの直交する直動軸と、3つの回転軸を有する6軸構成の場合として説明する。後述するが、1つの回転軸は3つの直動軸のうち所定の直動軸に平行な軸を中心に回転する軸であり、残り2つの回転軸は他の1つの直動軸に平行な軸を中心に回転する軸である。つまり、残り2つの回転軸は、相互に平行な軸を中心に回転する軸である。
【0027】
(2)揺動型歯車装置の構成
本発明の加工対象である揺動歯車が用いられる揺動型歯車装置の構成について、図1〜図4を参照して説明する。ここで、図1(a)は、凸歯ピン12b,13bが、固定軸本体12aおよび出力軸本体13aに対して別体形成されている場合を示し、図1(b)は、凸歯ピン12b,13bが、固定軸本体12aおよび出力軸本体13aに対して一体形成されている場合を示す。なお、以下において、主として図1(a)を参照して説明し、図1(b)については、図1(a)と相違する点のみについて説明する。
【0028】
揺動型歯車装置は、減速機として用いられ、非常に大きな減速比を得ることができる減速機として注目されている。この揺動型歯車装置は、図1(a)に示すように、主として、入力軸11と、固定軸12(本発明の「相手歯車」に相当)と、出力軸13(本発明の「相手歯車」に相当)と、外輪14と、内輪15(本発明の「凹凸歯車」に相当)と、転動体16とを備えている。
【0029】
入力軸11は、モータ(図示せず)のロータを構成し、モータが駆動することで回転する軸である。この入力軸は、円筒状をなしており、回転中心軸A(図1(a)に示す)の回りに回転する。入力軸11の内周面には、傾斜面11aが形成されている。この傾斜面11aは、回転中心軸Aに対して僅かな角度だけ傾斜した軸線Bを中心軸とする円筒内周面である。
【0030】
固定軸12(本発明の「相手歯車」に相当する)は、図示しないハウジングに固定されている。固定軸12は、固定軸本体12aと、複数の凸歯ピン12bとから構成される。固定軸本体12aは、軸線Aを回転中心軸とする円筒状の部材である。凸歯ピン12b(本発明の「相手歯車の凸歯」に相当する)は、固定軸本体12aの軸方向端面に、回転中心軸Aの周方向に等間隔に複数(G1)個支持されている。そして、それぞれの凸歯ピン12bは、円柱状または円筒状に形成されており、当該凸歯ピン12bが放射状に配置されるようにその両端を固定軸本体12aに支持されている。さらに、それぞれの凸歯ピン12bは、凸歯ピン12bの軸方向(基準軸方向)で、かつ、固定軸本体12aの径方向の軸を中心として回転可能となるように、固定軸本体12aに支持されている。さらに、凸歯ピン12bの一部は、固定軸本体12aの軸方向端面から突出している。つまり、固定軸12は、歯数Z1の凸歯を有する歯車として機能する。
【0031】
また、上記説明においては、図1(a)および図2(a)に示すように、固定軸12の凸歯ピン12bは、固定軸本体12aに対して別体形成し、固定軸本体12aに支持されるようにした。この他に、図1(b)および図2(b)に示すように、凸歯ピン12bを、固定軸本体12aに一体形成することもできる。この場合、一体形成した凸歯ピン12bは、別体形成された場合における凸歯ピン12bの固定軸本体12aの軸方向端面から突出している部分と同様に、固定軸本体12aに相当する部分の軸方向端面から突出している。
【0032】
出力軸13(本発明の「相手歯車」に相当する)は、図示しないハウジングに対して回転中心軸Aの回りに回転可能に支持され、図示しない出力部材に連結されている。出力軸13は、出力軸本体13aと、複数の凸歯ピン13bとから構成される。出力軸本体13aは、軸線Aを回転中心軸とする円筒状の部材である。つまり、出力軸本体13aは、入力軸11および固定軸本体12aと同軸状に設けられている。
【0033】
凸歯ピン13b(本発明の「相手歯車の凸歯」に相当する)は、出力軸本体13aの軸方向端面に、回転中心軸Aの周方向に等間隔に複数(G4)個支持されている。そして、それぞれの凸歯ピン13bは、円柱状または円筒状に形成されており、当該凸歯ピン13bが放射状に配置されるようにその両端を出力軸本体13aに支持されている。さらに、それぞれの凸歯ピン13bは、凸歯ピン13bの軸方向(基準軸方向)で、かつ、出力軸本体13aの径方向の軸を中心として回転可能となるように、出力軸本体13aに支持されている。さらに、出力軸本体13aのうち凸歯ピン13bを支持する軸方向端面は、固定軸本体12aのうち凸歯ピン12bを支持する軸方向端面に対して、軸方向所定距離だけ離隔して対向するように設けられている。さらに、凸歯ピン13bの一部は、出力軸本体13aの軸方向端面から突出している。つまり、出力軸13は、歯数Z4の凸歯を有する歯車として機能する。
【0034】
また、上記説明においては、出力軸13の凸歯ピン13bは、出力軸本体13aに対して別体形成し、出力軸本体13aに支持されるようにした。この他に、図1(b)および図2(b)に相当するように、凸歯ピン13bを、出力軸本体13aに一体形成することもできる。この場合、一体形成した凸歯ピン13bは、別体形成された場合における凸歯ピン13bの出力軸本体13aの軸方向端面から突出している部分と同様に、出力軸本体13aに相当する部分の軸方向端面から突出している。
【0035】
外輪14は、内周面に軌道面を有する円筒状に形成されている。この外輪14は、入力軸11の傾斜面11aに圧入嵌合されている。つまり、外輪14は、入力軸11と一体的となり、回転中心軸Bの回りに回転可能となる。
【0036】
内輪15(本発明の「凹凸歯車」に相当する)は、ほぼ円筒状に形成されている。この内輪15の外周面には、転動面15aが形成されている。さらに、内輪15の軸方向一方(図1(a)の右側)の端面には、周方向に等間隔に複数(G2)個の揺動凹歯15bが形成されている。また、内輪15の軸方向他方(図1(a)の左側)の端面には、周方向に等間隔に複数(G3)個の揺動凹歯15cが形成されている。
【0037】
この内輪15は、外輪14の径方向内方に離隔して配置され、複数の転動体(球体)16を挟んでいる。つまり、内輪15は、回転中心軸Aに対して傾斜した回転中心軸Bを有する。従って、内輪15は、入力軸11に対して、回転中心軸Bの回りに回転可能となる。さらに、内輪15は、モータ駆動により入力軸11が回転中心軸Aの回りに回転することに伴って、回転中心軸Aの回りに回転可能となる。
【0038】
さらに、内輪15は、固定軸12と出力軸13との軸方向の間に配置されている。具体的には、内輪15は、固定軸本体12aのうち凸歯ピン12bを支持する軸方向端面と、出力軸本体13aのうち凸歯ピン13bを支持する軸方向端面との間に配置されている。そして、内輪15の一方の揺動凹歯15bは、固定軸12の凸歯ピン12bに噛合する。また、内輪15の他方の揺動凹歯15cは、出力軸13の凸歯ピン13bに噛合する。
【0039】
そして、内輪15は、固定軸12に対して回転中心軸Aの回りに揺動するため、内輪15の一方の揺動凹歯15bの一部(図1(a)の上側の部分)は、固定軸12の凸歯ピン12bに噛合しているが、当該一方の揺動凹歯15bの他の一部(図1(a)の下側の部分)は、固定軸12の凸歯ピン12bから離間している。また、内輪15は、出力軸13に対して回転中心軸Aの回りに揺動するため、内輪15の他方の揺動凹歯15cの一部(図1(a)の下側の部分)は、出力軸13の凸歯ピン13bに噛合しているが、当該他方の揺動凹歯15cの他の一部(図1(a)の上側の部分)は、出力軸13の凸歯ピン13bから離間している。
【0040】
そして、例えば、固定軸12の凸歯ピン12bの歯数Z1が、内輪15の一方の揺動凹歯15bの歯数Z2より少なく設定されており、出力軸13の凸歯ピン13bの歯数Z4と内輪15の他方の揺動凹歯15cの歯数Z3とが同一に設定されている。これにより、入力軸11の回転に対して、出力軸13は減速(差動回転)することになる。つまり、この例では、内輪15と固定軸12との間で差動回転がされるのに対して、内輪15と出力軸13との間では差動回転がされない。ただし、出力軸13の凸歯ピン13bの歯数Z4と内輪15の他方の揺動凹歯15cの歯数Z3とを異なるように設定することで、両者の間に差動回転が生じるようにすることもできる。これらは適宜、減速比に応じて設定可能である。
【0041】
図1(a)に示す揺動型歯車装置において、差動回転を生じる固定軸12の凸歯ピン12bと内輪15の一方の揺動凹歯15bとの噛合部分は、図2(a)に示すようになる。また、図1(b)に示す揺動型歯車装置において、差動回転を生じる固定軸12の凸歯ピン12bと内輪15の一方の揺動凹歯15bとの噛合部分は、図2(b)に示すようになる。ここで、図2(a)は、固定軸12における凸歯ピン12bが、固定軸本体12aに対して別体形成されている場合を示す。図2(b)は、固定軸12における凸歯ピン12bが、固定軸本体12aに一体形成されている場合を示す。図2(a)(b)のどちらの場合も、本実施形態を適用できる。なお、出力軸13と内輪15との間で差動回転を生じる場合には、出力軸13の凸歯ピン13bと内輪15の他方の揺動凹歯15cとの噛合部分についても、図2(a)(b)と同様となる。そして、以下の説明においては、固定軸12と揺動歯車15との噛合部分のみについて説明する。
【0042】
ここで、揺動凹歯15bは、図3および図4に示すような形状となる。つまり、揺動凹歯15bの歯溝方向に直交する方向の断面形状は、全体的には、図2および図4(a)に示すように、ほぼ半円弧凹状をなしている。詳細には、当該断面形状は、円弧凹状の開口縁部分が垂れた形状をなしている。さらに、揺動凹歯15bは、図3および図4(b)に示すように、歯溝方向の両端側に向かって溝幅が広がるような形状をなしている。これは、凸歯ピン12bの歯数Z1と揺動凹歯15bの歯数Z2とが相違するためである。
【0043】
(2)揺動歯車の凹歯を加工するNCプログラムの生成方法
(2.1)基本概念
次に、上述した揺動型歯車装置における内輪15(以下、「揺動歯車」と称する)の揺動凹歯15bを加工するNCプログラムの生成方法について説明する。なお、揺動歯車15の揺動凹歯15cを加工するNCプログラムの生成方法についても同様である。まず、揺動歯車15および凸歯ピン12bの三次元CADのモデルまたは数式モデルを生成する。このモデルは、揺動歯車15と固定軸12とが差動回転する動作モデルである。
【0044】
続いて、両者が差動回転する際における、揺動凹歯15bに対する凸歯ピン12bの相対動作軌跡を抽出する(軌跡抽出工程)。この相対動作軌跡の抽出に際しては、揺動凹歯15bを固定したと考えて、凸歯ピン12bが揺動凹歯15bに対して移動するとして、凸歯ピン12bの動作軌跡を抽出する。そして、この凸歯ピン12bの動作軌跡には、凸歯ピン12bの中心軸12X(以下、「基準軸」と称する)、および、凸歯ピン12bの中心軸方向の中心の点12C(以下、「ピン中心点」と称する)の動作軌跡が含まれる。なお、凸歯ピン12bの基準軸12Xとは、凸歯ピン12bの歯厚中心面と基準円錐面との交線に平行な軸に相当する。
【0045】
続いて、抽出された揺動歯車15に対する凸歯ピン12bの相対動作軌跡を座標変換することにより、加工工具の動作軌跡であるNCプログラムを生成する(座標変換工程)。このNCプログラムは、ワーク座標系における揺動凹歯15bを加工するための加工工具の動作軌跡に相当する。この詳細は、後述する。
【0046】
なお、生成されたNCプログラムに基づいて、NC装置が、加工工具を円盤状ワークに対して相対的に移動させることにより、揺動歯車15の揺動凹歯15bを加工する。ここで、円盤状ワークに対する加工工具の相対動作軌跡が、上述にて抽出された凸歯ピン12bの動作軌跡に一致するように、加工工具を円盤状ワークに対して相対的に移動させる。ここで、円盤状ワークとは、揺動凹歯15bの加工前における揺動歯車15の形状をなす材料である。
【0047】
以下、軌跡抽出工程および座標変換工程について詳細に説明する。
(2.2)軌跡抽出工程
軌跡抽出工程について、図5(a1)(a2)(b1)(b2)(c1)(c2)を参照して説明する。図5の各図において、凸歯ピン12bの形状は、図2(a)(b)にて示す固定軸12の固定軸本体12aに対して突出している凸歯ピン12bの部分のみについて示す。つまり、図5の各図においては、凸歯ピン12bは、図2(a)(b)に示す凸歯ピン12bの共通する部分を示している。
【0048】
凸歯ピン12bが揺動凹歯15bに噛み合う前の状態では、図5(a1)に示すように、揺動歯車15の回転中心軸方向(図1(a)(b)の「B」)から見た場合には、凸歯ピン12bの基準軸12Xは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに対して図5(a1)の右側に傾斜している。さらに、図5(a2)に示すように、揺動凹歯15bの基準円錐面の接面のうち歯溝方向15Xに直交する方向から見た場合には、凸歯ピン12bの基準軸12Xは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに対して図5(a2)の左側に傾斜している。そして、両図において、凸歯ピン12bのピン中心点12Cは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xからずれた位置に位置している。
【0049】
次に、凸歯ピン12bが揺動凹歯15bに噛み合っている状態では、図5(b1)(b2)に示すように、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xと凸歯ピン12bの基準軸12Xとが一致している。当然に、凸歯ピン12bのピン中心点12Cも、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに一致している。
【0050】
次に、凸歯ピン12bが揺動凹歯15bに対して噛み合い状態から離れた時の状態では、図5(c1)に示すように、揺動歯車15の回転中心軸方向(図1(a)(b)の「B」)から見た場合には、凸歯ピン12bの基準軸12Xは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに対して図5(c1)の左側に傾斜している。さらに、図5(c2)に示すように、揺動凹歯15bの基準円錐面の接面のうち歯溝方向15Xに直交する方向から見た場合には、凸歯ピン12bの基準軸12Xは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに対して図5(c2)の左側に傾斜している。そして、両図において、凸歯ピン12bのピン中心点12Cは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xからずれた位置に位置している。
【0051】
つまり、凸歯ピン12bの基準軸12Xの動作軌跡およびピン中心点12Cの動作軌跡は、図6に示すようなものになる。この基準軸12Xの動作軌跡は、第一直動軸、第二直動軸、第三直動軸、第四回転軸、第五回転軸および第六割出軸に分解して表すことができる。ここで、図6および以下の図において、○の中の数字が、当該各軸の番号に一致する。例えば、○の中の数字が「1」で示される軸は、第一直動軸となる。
【0052】
つまり、第一直動軸とは、凸歯ピン12bの基準位置(所定位置)を、円盤状ワーク(揺動歯車15)の凹歯形成面(本実施形態においては「軸方向端面」である)に接する面に直交する方向に移動させる軸である。第二直動軸とは、凸歯ピン12bの基準位置を、円盤状ワーク(揺動歯車15)の凹歯形成面に接する面上であって、揺動凹歯15bの歯溝方向に移動させる軸である。第三直動軸とは、凸歯ピン12bの基準位置を、円盤状ワーク(揺動歯車15)の凹歯形成面に接する面上であって、第二直動軸に直交する方向に移動させる軸である。
【0053】
第四回転軸とは、凸歯ピン12bの基準位置を第一直動軸の回りに回転させる軸である。第五回転軸とは、凸歯ピン12bの基準位置を第三直動軸の回りに回転させる軸である。ここで示す第四回転軸および第五回転軸は、凸歯ピン12bのピン中心点12Cを中心に回転する軸である。第六割出軸とは、揺動歯車15の回転中心軸B(図1(a)(b)に示す)に一致し揺動歯車15の回転位相を割り出す軸である。
【0054】
(2.3)座標変換工程(座標変換手段)
ここで、本実施形態における工作機械は、第一〜第六の軸を有する機械構成を対象としている。つまり、本実施形態におけるNCプログラムは、上述した凸歯ピン12bの動作軌跡と同様に、3つの直動軸と3つの回転軸とにより表されている。つまり、当該座標変換工程においては、凸歯ピン12bの動作軌跡と実質的に同様の動作を行うように、3つの直動軸と3つの回転軸とを含むNCプログラムが生成される。このNCプログラムには、加工工具の円盤状ワークに対する相対的な送り速度が含まれている。
【0055】
なお、加工工程では、座標変換工程にて座標変換されたNCプログラムに基づいて加工が行われる。つまり、図7に示すように、第一直動軸、第二直動軸、第三直動軸、第四回転軸(ピン中心点12C回り)、第五回転軸(ピン中心点12C回り)および第六割出軸(揺動歯車15の回転中心軸Bの回り)からなる6つの軸により、円盤状ワークと加工工具とを相対的に移動させることにより揺動凹歯15bが加工される。つまり、加工工具がピン形状の加工工具の場合には、当該ピン形状の加工工具を、凸歯ピン12bと同様の動作を行うように移動させている。また、回転ベルト状の工具の場合には、当該工具の直線部をピン形状の加工工具と同様の動作をさせることになる。
【0056】
(3)加工工具
次に、本実施形態における加工工具について図8を参照して説明する。図8に示すように、本実施形態においては、トロイダル砥石30を用いることとする。ただし、凸歯ピン12bの外周形状を表現することができる加工工具であれば、トロイダル砥石30に限るものではない。
【0057】
このトロイダル砥石30の外周形状は、図8(b)に示すように、軸方向中央部が径方向外方に突出するように形成されている。そして、この突出部分の形状の軸方向断面形状は、半円弧状としている。主として、トロイダル砥石30の突出部分により、揺動凹歯15bを加工する。
【0058】
(4)本実施形態の送り速度制御の説明
ここで、上述したような揺動凹歯15bを加工する場合には、トロイダル砥石30と円盤状ワークとの接触部位(本発明の「工具による加工領域」に相当)が、加工中の各瞬間において、複雑に変化している。例えば、ある瞬間において、トロイダル砥石30の突出部分における軸方向全体が円盤状ワークを加工していたり、また別の瞬間においては、トロイダル砥石30の突出部分における軸方向の一部のみが円盤状ワークを加工していたりする。さらに、加工中のある瞬間に着目してみると、トロイダル砥石30のうち円盤状ワークに接触して加工している加工領域の中でも、加工しようとしている体積が異なることがある。
【0059】
そして、上述したように生成されたNCプログラムの送り速度に従ってトロイダル砥石30を円盤状ワークに対して相対的に移動させると、加工能率が極めて高い円盤状ワークの局所的な部位では、加工焼けが発生するおそれがある。そこで、トロイダル砥石30の外周面の局所的に見て、どの局所的な部位がどの程度の加工能率であるかを把握するようにする。そして、局所的な部位毎の加工能率の全てが設定上限値以下であって、局所的な部位の加工能率のうちでの最大値が設定下限値以上となるように、トロイダル砥石30の円盤状ワークに対する相対的な送り速度を変更することとする。
【0060】
そこで、まずは、トロイダル砥石30による加工領域を複数の微小領域に分割する。ここで、図8(a)(b)に示すように、トロイダル砥石30の外周面の各部位の位置座標は、軸方向断面における砥石表面上の位置w(以下、「軸断面の表面位置w」と称する)と回転位相θとにより表される。つまり、軸断面の表面位置wの基準点w0および回転位相θの基準点θ0は、図8(a)(b)に示すとおりである。そして、トロイダル砥石30による加工領域(外周面)のある微小領域dAは、図9(a)(b)に示すとおりである。つまり、各微小領域dAは、トロイダル砥石30の軸断面の表面位置wの微小幅dwと、トロイダル砥石30の回転位相θの微小位相dθと、位置wにおけるトロイダル砥石30の半径r(w)により表すことができる。
【0061】
ここで、時刻tにおける全体の加工能率(以下、「全体加工能率」と称する)Q(t)は、式(1)により表される。式(1)において、Q"(w,θ,t)は、各微小領域dAにおける加工能率である。ここで、加工能率とは、単位時間当たりの加工体積に相当する。つまり、式(1)によれば、ある時刻tにおける全ての微小領域の加工能率Q"(w,θ,t)を、回転位相θおよびトロイダル砥石30の軸断面の表面位置wについて積分することにより、ある時刻tにおける全体加工能率Q(t)を得ることができる。
【0062】
【数1】

【0063】
また、微小領域における加工能率Q"(w,θ,t)は、微小領域の面積dAと、時刻tのときに当該微小領域におけるトロイダル砥石30の被加工物に対する相対的な送り速度ベクトルF(w,θ,t)と、各微小領域における法線ベクトルN(w,θ)とにより、式(2)のように表される。つまり、微小領域における加工能率Q"(w,θ,t)は、微小面積dAに、送り速度Fにおける当該微小領域の法線方向成分をかけたものといえる。
【0064】
【数2】

【0065】
そして、時刻t1,t2,t3のそれぞれにおいて、各微小領域の加工能率Q"(w,θ,t)の分布の一例を図10に示す。例えば、時刻t1における微小領域の加工能率Q"(w,θ,t1)は、トロイダル砥石30の軸断面の表面位置wが中央付近よりも僅かにw=0側において、最大値Q"max(t1)を示している。また、時刻t2における微小領域の加工能率Q"(w,θ,t2)は、トロイダル砥石30の軸断面の表面位置wが中央付近において、最大値Q"max(t2)を示している。時刻t3における微小領域の加工能率Q"(w,θ,t3)も、トロイダル砥石30の軸断面の表面位置wが中央付近よりも僅かにw=0側において、最大値Q"max(t3)を示している。さらに、時刻t3における微小領域の加工能率Q"(w,θ,t3)は、トロイダル砥石30の軸断面の表面位置wが中央付近よりも僅かにw=W側において、極大値を示している。
【0066】
そして、時刻t1における微小領域の加工能率Q"(w,θ,t1)の最大値Q"max(t1)は、時刻t2における微小領域の加工能率Q"(w,θ,t2)の最大値Q"max(t2)より大きく、当該最大値Q"max(t2)は、時刻t3における微小領域の加工能率Q"(w,θ,t3)の最大値Q"max(t3)より大きな値となっている。このように、時刻が異なると、それぞれの時刻における微小領域の加工能率Q"(w,θ,t)のうちでの最大値Q"max(t)が異なる。
【0067】
このようにして、分割した各微小領域における加工能率Q"(w,θ,t)の全てが、図11に示すように設定上限値Q"set1以下となるように、トロイダル砥石30の円盤状ワークに対する相対的な送り速度を変更することとする。例えば、補正後の送り速度Fn(t)と、補正前の送り速度F0(t)との関係は、式(3)のように表される関係とする。これにより、微小領域における加工能率Q"(w,θ,t)の最大値を設定上限値Q"set1以下とできるので、局所的に見た場合であっても、加工焼けの発生を防止できる。
【0068】
【数3】

【0069】
さらに、分割した各微小領域における加工能率Q"(w,θ,t)の最大値が、図11に示すように設定下限値Q"set2以上となるように、トロイダル砥石30の円盤状ワークに対する相対的な送り速度を変更することとする。つまり、補正後の送り速度Fn(t)と、補正前の送り速度F0(t)との関係は、式(4)のように表される。これにより、できるだけ加工能率を高く設定することができるため、加工時間の長期化を防止できる。
【0070】
【数4】

【0071】
ここで、上記した式(3)(4)を満たすようにするためには、設定上限値Q"set1と設定下限値Q"set2を同一値にするとよい。この場合の設定値をQ"setとした場合には、補正後の送り速度Fn(t)と、補正前の送り速度F0(t)との関係は、式(5)のように表される。これにより、局所的に見た場合であっても加工焼けの発生を防止でき、かつ、可能な限り加工時間の短縮を図ることができる。
【0072】
【数5】

【0073】
このようにして、各時刻tにおいて補正後の送り速度Fn(t)を算出する。そして、各時刻tにおける送り速度が補正された送り速度Fn(t)となるように、工作機械を制御する。以上より、非常に複雑な形状である揺動歯車15の揺動凹歯15bを加工する場合であっても、局所的な加工焼けを防止しつつ、可能な限り加工時間の短縮を図ることができる。つまり、高精度な加工を加工時間の長期化を防止しつつ実現できる。
【0074】
<第二実施形態>
第一実施形態においては、微小領域における加工能率Q"(w,θ,t)を、回転位相θと軸断面の表面位置wをパラメータとして説明した。これでは、微小領域における加工能率Q"(w,θ,t)を算出するのに、演算処理が非常に複雑となる。そこで、より簡易的に微小領域における加工能率を算出できる手法を以下に説明する。
【0075】
ただし、簡易演算を行うために条件を要するため、まずその条件について図12を参照して説明する。トロイダル砥石30により被加工物15を加工する加工領域において、トロイダル砥石30の回転位相θ方向の範囲は、非常に小さいものとする。実際に高精度に加工しようとすると、トロイダル砥石30のうち接触する回転位相θは、非常に小さくなる。そうすると、図12に示すように、加工中の各瞬間におけるトロイダル砥石30による微小領域は、平面P状とみなすことができる。そうすると、送り速度ベクトルF(w,θ,t)と、各微小領域における法線ベクトルN(w,θ)は、式(6)のように、回転位相θをパラメータとしない関係式に簡略化できる。
【0076】
【数6】

【0077】
さらに、トロイダル砥石30の被加工物15に対する相対的な移動方向に、回転運動がほとんど含まれておらず、直進方向の運動とみなすことができる場合には、送り速度ベクトルF(w,θ,t)は、式(7)のように、回転位相θのみならず軸断面の表面位置wをパラメータとしない関係式に簡略化できる。
【0078】
【数7】

【0079】
上記条件を満たす場合には、微小領域における加工能率Q'(w,t)を、式(8)のように、表すことができる。
【0080】
【数8】

【0081】
ここで、トロイダル砥石30において、軸断面の表面位置wにおける被加工物15との接触弧長Lは、図12に示すように、あるトロイダル砥石30の軸断面の表面位置wを通る径方向断面形状において、被加工物15と接触する周方向長さである。例えば、ある時刻tにおいて、トロイダル砥石30の軸断面の表面位置wと、トロイダル砥石30の回転位相θとの2次元座標において、トロイダル砥石30と被加工物15との接触範囲を、図13(a)に示すような囲まれた範囲であるとする。この場合、軸断面の表面位置w1における接触弧長L1は、図13(a)に示す長さとなる。つまり、軸断面の表面位置wに応じて、接触弧長L1が異なる。そうすると、図13(a)に示すような接触範囲の場合に、図13(b)のように表される。
【0082】
このように上記条件を前提として簡略化することで、ある時刻tにおける微小領域の加工能率Q'(w,t)は、非常に容易に算出することができる。そして、時刻t1,t2,t3のそれぞれにおける各微小領域の加工能率Q'(w,t)を算出すると、その分布の一例として、図14に示すようになる。パラメータとしては、軸断面の表面位置wと時刻tであるため、2次元座標により表すことができる。そして、時刻t1,t2,t3のそれぞれの最大値Q'max(t1), Q'max(t2), Q'max(t3)も、図14に示すとおりである。
【0083】
ここで、第二実施形態においては、第一実施形態において説明した設定上限値と設定下限値を同一の値Q'setとして説明する。そうすると、図15に示すように、時刻t1,t2,t3のそれぞれにおける最大値Q'max(t1), Q'max(t2), Q'max(t3)に一致するように、送り速度Fn(t)が補正される。
【0084】
つまり、補正後の送り速度Fn(t)と、補正前の送り速度F0(t)との関係は、式(9)のように表される。これにより、演算処理が容易となり、局所的に見た場合であっても加工焼けの発生を防止でき、かつ、可能な限り加工時間の短縮を図ることができる。
【0085】
【数9】

【0086】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態では、第二実施形態に対して、さらに、微小領域における加工能率Q'(w,t)を算出する際に、クーラントの届きにくさを表す係数C(w,t)を考慮することにする。ここで、研削加工や切削加工を行う場合には、加工により発生する熱を低減するためや、高精度に加工するために、クーラントを利用している。被加工物の形状や砥石などの工具の形状によって、クーラントが届きやすい部位と、クーラントが届きにくい部位とが存在する。クーラントが届きにくい部位では、クーラントが届きやすい部位に比べて、冷却性能が低いために、高熱となりやすい。加工焼けが発生するおそれがある。そこで、本実施形態においては、クーラントの届きにくさを表す係数C(w)を用いて、微小領域における加工能率Q'(w,t)を補正することとする。
【0087】
具体的には、補正後の微小領域における加工能率Qc'(w,t)は、式(10)に示すように表される。ここでは、係数C(w)は、軸断面の表面位置wによってクーラントの届きにくさが変化する場合を想定して、軸断面の表面位置wをパラメータとする関数としている。
【0088】
【数10】

【0089】
そして、この場合、時刻t1,t2,t3のそれぞれにおいて、第二実施形態にて説明した時刻t1,t2,t3のそれぞれの最大値Q'max(t1), Q'max(t2), Q'max(t3)は、図16の破線にて示すように、最大値Qc'max(t1), Qc'max(t2), Qc'max(t3)に補正される。なお、図16に示す一例では、軸断面の表面位置wの中央部が、クーラントが届きにくい部位として図示している。このようにすることで、クーラントの届きにくさを考慮することで、より確実に、局所的な加工焼けの発生を防止しつつ、可能な限り加工時間の短縮を図ることができる。
【0090】
<第四実施形態>
次に、本実施形態においては、上述した実施形態を実現するための具体的な構成について、図17を参照して説明する。図17に示すように、本実施形態の送り速度制御装置としては、NCプログラム生成装置110と、NC装置120と、各種情報記憶部131〜134とを備えている。
【0091】
NCプログラム生成装置110は、いわゆるCAMに相当し、素材形状、製品形状および加工条件などを入力されることで、NCプログラムを生成する。このNCプログラムには工具の被加工物に対する相対的な送り速度の情報が含まれている。
【0092】
NC装置120は、NCプログラムを入力して、工作機械を制御する制御装置である。このNC装置120は、送り速度補正部121と、補間処理部122と、制御部123とを備えている。送り速度補正部121は、入力されたNCプログラムに含まれている送り速度を補正する。この補正の方法としては、上述の第一〜第三実施形態において説明したとおりであるので、詳細な説明を省略する。この補正に際して、機械情報131、工具情報132、被加工物情報および設定値情報134を用いて行う。なお、設定値情報134とは、設定下限値Q"set1および設定上限値Q"set2などである。
【0093】
続いて、NC装置120の補間処理部122は、各種記憶情報を用いて、送り速度補正部121にて補正された送り速度に対して、実際の工作機械を制御するための送り速度に補間している。例えば、NCプログラム中の送り速度を、連続して滑らかに変化するように補間する。続いて、NC装置120の制御部123は、補正かつ補間されたNCプログラムに基づいて、工作機械の各軸のサーボモータ(図示せず)を制御する。
【0094】
<第五実施形態>
次に、本実施形態においては、第四実施形態に対して、送り速度補正部と補間処理部との順序を逆にした構成としている。ここで、第五実施形態において、第四実施形態と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0095】
すなわち、図18に示すように、本実施形態の送り速度制御装置としては、NCプログラム生成装置110と、NC装置220と、各種情報記憶部131〜134とを備えている。NC装置220は、補間処理部221と、送り速度補正部222と、制御部123とを備えている。
【0096】
NC装置220の補間処理部221は、各種記憶情報を用いて、NCプログラム生成装置110により生成されたNCプログラムに含まれる送り速度に対して、実際の工作機械を制御するための送り速度に補間する。続いて、送り速度補正部222は、補間処理部221にて補間された送り速度を補正する。この補正の方法としては、上述の第一〜第三実施形態において説明したとおりであるので、詳細な説明を省略する。上述した補間および補正に際して、機械情報131、工具情報132、被加工物情報133および設定値情報134を用いて行う。
【0097】
<第六実施形態>
次に、本実施形態においては、第四実施形態に対して、送り速度補正部をNC装置の内部ではなく、NCプログラム生成装置に含ませる構成としている。ここで、第六実施形態において、第四実施形態と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
図18に示すように、本実施形態の送り速度制御装置としては、NCプログラム生成装置310と、NC装置320と、各種情報記憶部131〜134とを備えている。
【0098】
NCプログラム生成装置310は、第四実施形態におけるNCプログラム生成装置110に相当するNCプログラム生成部311を備える。このNCプログラム生成部311は、いわゆるCAMに相当し、素材形状、製品形状および加工条件などを入力されることで、NCプログラムを生成する。このNCプログラムには工具の被加工物に対する相対的な送り速度の情報が含まれている。
【0099】
さらに、NCプログラム生成装置310は、当該NCプログラム生成部311により生成されたNCプログラムに含まれている送り速度を補正する送り速度補正部312を備える。この補正の方法としては、上述の第一〜第三実施形態において説明したとおりであるので、詳細な説明を省略する。この補正に際して、機械情報131、工具情報132、被加工物情報および設定値情報134を用いて行う。
【0100】
NC装置320は、補間処理部321と、制御部322とを備えている。補間処理部321は、各種記憶情報を用いて、NCプログラム生成装置310から入力されたNCプログラムの送り速度に対して、実際の工作機械を制御するための送り速度に補間している。例えば、NCプログラム中の送り速度を、連続して滑らかに変化するように補間する。続いて、制御部322は、補間されたNCプログラムに基づいて、工作機械の各軸のサーボモータ(図示せず)を制御する。
【0101】
<第七実施形態>
上記実施形態においては、加工対象として、揺動型歯車装置の揺動歯車の場合について説明した。揺動型歯車装置は、それぞれの回転中心軸が交差する凹凸歯車と相手歯車との関係を2組有する構成である。このような凹凸歯車と相手歯車との関係を1組有する構成からなる動力伝達装置について図20(a)(b)を参照して説明する。
ここで、図20(a)は、凸歯ピン112bが、入力軸本体112aに対して別体形成されている場合を示し、図20(b)は、凸歯ピン112bが、入力軸本体112aに対して一体形成されている場合を示す。
【0102】
図20(a)(b)に示すように、動力伝達装置は、入力軸112と出力軸115とから構成される。入力軸112(本発明の「相手歯車」に相当する)は、第一実施形態における出力軸13とほぼ同様の構成からなる。入力軸112は、入力軸本体112aと、複数の凸歯ピン112bとから構成される。入力軸本体112aは、軸線Aを回転中心軸とする円筒状の部材である。そして、入力軸本体112aは、軸受を介して、図示しないハウジングに対して回転中心軸Aの回りに回転可能に支持されている。
【0103】
出力軸115(本発明の「凹凸歯車」に相当する)は、第一実施形態における内輪(揺動歯車)15のうち一方の端面形状がほぼ共通する。つまり、出力軸115の軸方向一方(図20(a)(b)の左側)の端面には、周方向に等間隔に複数(G2)個の凹歯115bが形成されている。この出力軸115は、回転中心軸Aに対して傾斜した回転中心軸Bを中心に回転可能となるように、軸受を介して図示しないハウジングに支持されている。そして、出力軸115の軸方向他方(図20(a)(b)の右側)は、他の動力伝達部材に連結される。
【0104】
このように、入力軸112の回転中心軸Aに対して交差する回転中心軸Bを中心に回転する出力軸115の凹歯を加工対象とした場合に、上述した実施形態における送り速度制御方法および装置を同様に適用できる。そして、同様の効果を奏する。
【0105】
<第八実施形態>
本実施形態における送り速度制御は、トロイダル砥石30のアキシャル方向成分の力の合計値QA(t)が設定値QAset以下となるように、かつ、トロイダル砥石30のラジアル方向成分の力の合計値QR(t)が設定値QRset以下となるように、トロイダル砥石30の送り速度を制御する。以下、図21を参照して詳細に説明する。
【0106】
まず、トロイダル砥石30のアキシャル方向成分の力の合計値QA(t)は、式(11)により表される。トロイダル砥石30のアキシャル方向とは、トロイダル砥石30の軸方向である。式(11)において、Q"(w,θ,t)は、上記実施形態において説明した各微小領域dAにおける加工能率である。つまり、式(11)によれば、ある時刻tにおける加工能率Q"(w,θ,t)に当該微小領域の法線方向単位ベクトルN(w,θ)におけるアキシャル方向成分VA(w,θ)を乗算して、当該乗算値についてトロイダル砥石30による加工領域に亘って積分を行うことにより、ある時刻tにおけるトロイダル砥石30にかかるアキシャル方向成分の力の合計値QA(t)を得ることができる。なお、図21に、微小領域の法線方向単位ベクトルN(w,θ)、および、微小領域の法線方向単位ベクトルN(w,θ)におけるアキシャル方向成分VA(w,θ)を示す。
【0107】
【数11】

【0108】
さらに、トロイダル砥石30のラジアル方向成分の力の合計値QR(t)は、式(12)により表される。トロイダル砥石30のラジアル方向とは、トロイダル砥石30の軸方向である。式(12)において、Q"(w,θ,t)は、上記実施形態において説明した各微小領域dAにおける加工能率である。つまり、式(12)によれば、ある時刻tにおける加工能率Q"(w,θ,t)に当該微小領域の法線方向単位ベクトルN(w,θ)におけるラジアル方向成分VR(w,θ)を乗算して、当該乗算値についてトロイダル砥石30による加工領域に亘って積分を行うことにより、ある時刻tにおけるトロイダル砥石30にかかるラジアル方向成分の力の合計値QR(t)を得ることができる。なお、図21に、微小領域の法線方向単位ベクトルN(w,θ)におけるラジアル方向成分VR(w,θ)を示す。
【0109】
【数12】

【0110】
このようにして算出されたトロイダル砥石30のアキシャル方向成分の力の合計値QA(t)、および、トロイダル砥石30のラジアル方向成分の力の合計値QR(t)が、それぞれの設定上限値QAset, QRset以下となるように、トロイダル砥石30の円盤状ワークに対する相対的な送り速度を変更することとする。例えば、補正後の送り速度Fn(t)と、補正前の送り速度F0(t)との関係は、式(13)(14)のように表される関係とする。
【0111】
【数13】

【0112】
本実施形態によれば、各微小領域の加工能率Q"(w,θ,t)を用いることで、トロイダル砥石30にかかるアキシャル方向成分またはラジアル方向成分の力の合計値QA(t), QR(t)を算出することができる。これらの力の合計値QA(t), QR(t)が設定上限値QAset, QRset以下となるように送り速度制御を行うことで、アキシャル方向成分またはラジアル方向成分の力に対して、トロイダル砥石30の支持剛性に応じた適切な送り速度とすることができる。
【0113】
なお、微小領域の加工能率は、上述した第一実施形態にて説明した方法により算出することもできるし、他の実施形態にて説明した簡略化した方法によっても算出することができる。
【符号の説明】
【0114】
11:入力軸、 11a:傾斜面
12:固定軸、 12a:固定軸本体、 12b:凸歯ピン
12C:ピン中心点、 12X:基準軸
13:出力軸、 13a:出力軸本体、 13b:凸歯ピン
14:外輪
15:内輪(揺動歯車)、 15a:転動面、 15b,15c:揺動凹歯
15X:歯溝方向
16:転動体
30:トロイダル砥石


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具により被加工物を加工する際に、前記被加工物に対する前記工具の相対的な送り速度を制御する送り速度制御方法において、
加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に、各前記微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように前記送り速度を制御することを特徴とする送り速度制御方法。
【請求項2】
請求項1において、
加工中の各瞬間における前記微小領域の加工能率の最大値が設定下限値以上となるように前記送り速度を制御することを特徴とする送り速度制御方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記被加工物は、凹歯と凸歯が周方向に連続して形成され、当該凹歯が相手歯車の凸歯に噛合することにより前記相手歯車との間で動力伝達可能な凹凸歯車であって、前記相手歯車の回転中心軸に対して交差する交差軸を中心として回転する歯車であることを特徴とする送り速度制御方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記工具は、中心軸周りに回転しながら前記被加工物を研削する円盤状砥石であり、
前記微小領域は、前記円盤状砥石による加工領域を前記円盤状砥石の軸方向断面の表面上に沿って分割された領域であることを特徴とする送り速度制御方法。
【請求項5】
請求項4において、
加工中の各瞬間における前記円盤状砥石による前記微小領域を平面状とみなし、かつ、加工中の各瞬間における前記円盤状砥石の前記被加工物に対する相対的な移動方向を直進方向とみなした場合に、
前記微小領域における加工能率は、前記円盤状砥石の軸方向断面における砥石表面上の各位置における前記被加工物との接触弧長さと、前記円盤状砥石の前記被加工物に対する相対的な送り速度における前記平面状とみなした前記微小領域の法線方向成分と、を乗算することにより算出することを特徴とする送り速度制御方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項において、
前記工具の表面位置に応じてクーラントの届きにくさを表す係数を設定しておき、
前記微小領域における加工能率は、前記微小領域の面積と当該微小領域における前記工具の前記被加工物に対する送り速度とに基づいて算出された基本加工能率に対して、前記係数を乗算して補正された値であることを特徴とする送り速度制御方法。
【請求項7】
工具により被加工物を加工する際に、前記被加工物に対する前記工具の相対的な送り速度を制御する送り速度制御装置において、
加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に、各前記微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように前記送り速度を制御することを特徴とする送り速度制御装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記送り速度制御装置は、NCプログラムに基づいてNC工作機械を制御すると共に、NCプログラムにおける前記工具の前記被加工物に対する送り速度に対して、各前記微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように補正した送り速度により制御するNC装置であることを特徴とする送り速度制御装置。
【請求項9】
請求項7において、
加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に、各前記微小領域における加工能率が設定上限値以下となるように算出された前記送り速度に基づいて、NCプログラムを生成するNCプログラム生成装置と、
前記NCプログラムの前記送り速度に基づいて前記工具の前記被加工物の相対的な送り速度を制御して、前記工具により前記被加工物を加工するNC装置と、
を備えることを特徴とする送り速度制御装置。
【請求項10】
工具により被加工物を加工する際に、前記被加工物に対する前記工具の相対的な送り速度を制御する送り速度制御方法において、
加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に各前記微小領域における加工能率を算出し、
算出された前記微小領域における加工能率に、当該微小領域の法線方向単位ベクトルにおける所定方向成分を乗算し、
当該乗算値について、前記工具による加工領域に亘って積分を行い、
当該積分値が設定上限値以下となるように前記送り速度を制御することを特徴とする送り速度制御方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記工具は、中心軸周りに回転しながら前記被加工物を研削する円盤状砥石であり、
前記所定方向は、前記円盤状砥石の回転軸方向および前記円盤状砥石の回転軸に直交する方向の少なくとも何れかであることを特徴とする送り速度制御方法。
【請求項12】
工具により被加工物を加工する際に、前記被加工物に対する前記工具の相対的な送り速度を制御する送り速度制御装置において、
加工中の各瞬間における前記工具による加工領域を複数の微小領域に分割した場合に各前記微小領域における加工能率を算出し、
算出された前記微小領域における加工能率に、当該微小領域の法線方向単位ベクトルにおける所定方向成分を乗算し、
当該乗算値について、前記工具による加工領域に亘って積分を行い、
当該積分値が設定上限値以下となるように前記送り速度を制御することを特徴とする送り速度制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−165065(P2011−165065A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29170(P2010−29170)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】