説明

送信システム及び励振器

【課題】 メモリの数を減少させ、大型化及び複雑化を解消することが可能な送信システム及びこのシステムで用いられる励振器を提供する。
【解決手段】 単一周波数網を構築する送信システムであって、前記送信システムに固有の遅延設定量が書き込まれたTS信号を、複数の伝送経路を介して受信する送信システムは、励振器、増幅器及びアンテナを具備する。励振器は、前記複数の伝送経路毎に受信したTS信号を前記遅延設定量に基づいて遅延させることで前記TS信号間の遅延差を解消する遅延合せ部と、前記遅延させた複数のTS信号のうち正常な一つのTS信号を出力する切替部とを備える。増幅器は、前記励振器からのRF信号を増幅する。アンテナは、前記増幅されたRF信号を空間へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、単一周波数網を構築し、受信信号を送信する送信システム及びこのシステムに用いられる励振器に関する。
【背景技術】
【0002】
単一周波数網を構築する従来の送信システムは、複数の伝送経路を経由してきたTS(Transport Stream)信号を、伝送経路毎に設置された同期装置により同期させることで、TS信号間の遅延差を吸収する。送信システムは、各同期装置からの複数のTS信号のうち正常なTS信号を、TS切替器により選択的に切り替える。送信システムは、TS切替器からのTS信号を、TS信号が有する遅延情報を参照して励振器で遅延させる。ここで、遅延情報とは、単一周波数網を構築させるため、隣接する送信システムとの遅延合わせを行うための情報であり、送信システム毎に予め設定される情報である。そして、送信システムは、励振器でTS信号を元に変調をかけ、RF帯の変調信号へ変換し、電力増幅器で増幅した後、アンテナから空間へ送信する。
【0003】
このような従来の送信システムでは、同期装置で遅延差を吸収し、励振器で単一周波数網構築のための遅延合わせを行うため、同期装置及び励振器に一時記憶用のメモリを搭載させなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−20096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の送信システムでは、同期装置及び励振器にメモリを搭載させなければならないため、送信システムの大型化及び複雑化の要因となっている。
【0006】
そこで目的は、メモリの数を減少させ、大型化及び複雑化を解消することが可能な送信システム及びこのシステムで用いられる励振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、単一周波数網を構築する送信システムであって、前記送信システムに固有の遅延設定量が書き込まれたTS信号を、複数の伝送経路を介して受信する送信システムは、励振器、増幅器及びアンテナを具備する。励振器は、前記複数の伝送経路毎に受信したTS信号を前記遅延設定量に基づいて遅延させることで前記TS信号間の遅延差を解消する遅延合せ部と、前記遅延させた複数のTS信号のうち正常な一つのTS信号を出力する切替部とを備える。増幅器は、前記励振器からのRF信号を増幅する。アンテナは、前記増幅されたRF信号を空間へ送信する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る送信システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1の遅延合せ部の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図2の励振器がサテライト受信部及び光電変換部からのTS信号の遅延合せを行う際の図である。
【図4】実施形態に係る送信システムの機能構成のその他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る送信システム10の機能構成を示すブロック図である。図1に示す送信システム10は、例えば、サテライト受信部20及び光電変換部30と接続する。サテライト受信部20は、衛星回線を経由して伝送されるTS(Transport Stream)信号を受信し、受信したTS信号を送信システム10へ出力する。また、光電変換部30は、光回線を経由して伝送されるTS信号を受信し、受信したTS信号を送信システム10へ出力する。ここで、TS信号には、単一周波数網を構築するため、隣接する送信システムとの遅延合わせを行うためのSFN(Single Frequency Network)遅延設定量が書き込まれている。このSFN遅延設定量は、送信システム毎に予め設定されている。
【0011】
図1に示す送信システム10は、励振器11、電力増幅器12及びアンテナ13を具備する。
【0012】
励振器11は、検出部111−1,111−2、遅延合せ部112−1,112−2、切替部113、変調部114及び周波数変換部115を備える。
【0013】
検出部111−1は、サテライト受信部20からのTS信号を検出し、検出したTS信号を遅延合せ部112−1へ出力する。検出部111−1は、サテライト受信部20からのTS信号が正常に検出されない場合、切替信号を切替部113へ出力する。また、検出部111−2は、光電変換部30からのTS信号を検出し、検出したTS信号を遅延合せ部112−2へ出力する。検出部111−2は、光電変換部30からのTS信号が正常に検出されない場合、切替信号を切替部113へ出力する。
【0014】
図2は、図1の遅延合せ部112−1,112−2の機能構成を示すブロック図である。遅延合せ部112−1,112−2の動作はそれぞれ同様であるため、ここでは、遅延合せ部112−1について説明する。遅延合せ部112−1は、解析部1121、バッファメモリ部1122及び制御部1123を備える。
【0015】
検出部111−1からのTS信号は、2つに分配され、一方が解析部1121へ供給され、他方がバッファメモリ部1122へ供給される。
【0016】
解析部1121は、TS信号を解析し、TS信号に書き込まれたSFN遅延設定量を読み出し、読み出したSFN遅延設定量を制御部1123へ出力する。
【0017】
制御部1123は、時刻を把握する際の基準となるクロック信号を外部から取得する。制御部1123は、解析部1121からSFN遅延設定量を受け取ると、そのSFN遅延設定量に基づいた出力指示をバッファメモリ部1122へ与える。
【0018】
バッファメモリ部1122は、TS信号を受信し、受信したTS信号を一時的に保持する。バッファメモリ部1122は、制御部1123からの出力指示に応じて保持するTS信号を出力する。
【0019】
このように、遅延合せ部112−1,112−2それぞれでSFN構築のための遅延合せを行うため、遅延合せ部112−1,112−2からは同期されたTS信号が切替部113へ出力されることとなる。
【0020】
切替部113は、検出部111−1,111−2からの切替信号に基づき、遅延合せ部112−1,112−2からのTS信号のうち、正常に検出されたTS信号を変調部114へ出力する。切替部113から出力されたTS信号は、変調部114で変調され、周波数変換部115で周波数変換されてRF信号となり、電力増幅器12へ出力される。
【0021】
電力増幅器12は、励振器11からのRF信号を増幅し、増幅したRF信号をアンテナ13から空間へ送信する。
【0022】
次に、以上のように構成された励振器11からRF信号が出力される際の処理を説明する。
【0023】
図3は、図2の励振器がサテライト受信部20及び光電変換部30からのTS信号の遅延合せを行う際の模式図を示す。
【0024】
励振器11は、(b)に示すTS信号S1をサテライト受信部20から受信し、(c)に示すTS信号S2を光電変換部30から受信する。TS信号S1とTS信号S2とには、遅延差D1が存在する。
【0025】
遅延合せ部112−1は、TS信号S1に書き込まれたSFN遅延設定量に基づき、(d)に示すタイミングでTS信号S1を切替部113へ出力する。ここで、SFN遅延設定量には、例えば、TS信号が送信元から送信された時刻(以下、基準時刻と称する)からの遅延時刻が含まれる。遅延合せ部112−2は、TS信号S2に書き込まれた遅延情報に基づき、(e)に示すタイミングでTS信号S2を切替部113へ出力する。
【0026】
切替部113は、(d)及び(e)に示すTS信号S1,S2のうちいずれか一方を変調部114へ出力する。
【0027】
以上のように、上記実施形態では、励振器11で単一周波数網を構築するための遅延合せを行うことで、複数の伝送経路を経て受信されたTS信号間の遅延差を吸収するようにしている。これにより、複数のTS信号の同期とSFN遅延合せとを同時に行うことが可能となる。つまり、従来の送信システムのように伝送経路毎に同期装置を設ける必要がなくなる。
【0028】
したがって、本実施形態に係る送信システムによれば、従来の送信システムよりメモリの数を減少させることが可能であり、送信システムの大型化及び複雑化を解消することができる。
【0029】
なお、上記実施形態では、励振器11がサテライト受信部20及び光電変換部30からのTS信号を受信する例を説明した。しかしながら、本実施形態はこれに限定される訳ではない。例えば、励振器11と接続される伝送経路は、2つに限定される訳ではない。また、励振器11と接続される伝送経路は、衛星回線及び光回線に限定される訳ではなく、その他の回線であっても構わない。
【0030】
また、上記実施形態では、変調部114及び周波数変換部115によりTS信号をRF信号へ変換する場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定される訳ではない。例えば、図4に示すように、直接変調部116で放送周波数帯の搬送波に直接変調をかけるようにしても構わない。
【0031】
また、本発明における実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
10…送信システム
11…励振器
111−1,111−2…検出部
112−1,112−2…遅延合せ部
1121…解析部
1122…バッファメモリ部
1123…制御部
113…切替部
114…変調部
115…周波数変換部
116…直接変調部
12…電力増幅部
13…アンテナ
20…サテライト受信部
30…光電変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一周波数網を構築する送信システムであって、前記送信システムに固有の遅延設定量が書き込まれたTS信号を、複数の伝送経路を介して受信する送信システムにおいて、
前記複数の伝送経路毎に受信したTS信号を前記遅延設定量に基づいて遅延させることで、前記TS信号間の遅延差を解消する遅延合せ部と、前記遅延させた複数のTS信号のうち正常な一つのTS信号を出力する切替部とを備える励振器と、
前記励振器からのRF信号を増幅する増幅器と、
前記増幅されたRF信号を空間へ送信するアンテナと
を具備することを特徴とする送信システム。
【請求項2】
前記遅延合せ部は、
前記TS信号を解析し、前記TS信号から前記遅延設定量を読み出す解析部と、
前記解析部からの前記遅延設定量に基づいて出力指示信号を生成する制御部と、
前記複数の伝送経路からの前記TS信号を一時的に保持し、前記出力指示信号に応じて保持したTS信号を出力するバッファメモリ部と
を備えることを特徴とする請求項1記載の送信システム。
【請求項3】
前記励振器は、
遅延合せ部の前段に前記TS信号を検出する検出部であって、前記複数のTS信号のうちいずれかのTS信号が正常に検出されない場合、正常なTS信号に出力を切り替える旨の切替信号を前記切替部へ出力する前記検出部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の送信システム。
【請求項4】
単一周波数網を構築する送信システムであって、前記送信システムに固有の遅延設定量が書き込まれたTS信号を、複数の伝送経路を介して受信する送信システムに用いられる励振器であって、
前記複数の伝送経路毎に受信したTS信号を前記遅延設定量に基づいて遅延させることで、前記TS信号間の遅延差を解消する遅延合せ部と、
前記遅延させた複数のTS信号のうち正常な一つのTS信号を出力する切替部と
を具備えることを特徴とする励振器。
【請求項5】
前記遅延合せ部は、
前記TS信号を解析し、前記TS信号から前記遅延設定量を読み出す解析部と、
前記解析部からの前記遅延設定量に基づいて出力指示信号を生成する制御部と、
前記複数の伝送経路からの前記TS信号を一時的に保持し、前記出力指示信号に応じて保持したTS信号を出力するバッファメモリ部と
を備えることを特徴とする請求項4記載の励振器。
【請求項6】
遅延合せ部の前段に前記TS信号を検出する検出部であって、前記複数のTS信号のうちいずれかのTS信号が正常に検出されない場合、正常なTS信号に出力を切り替える旨の切替信号を前記切替部へ出力する前記検出部をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の励振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−65045(P2012−65045A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205994(P2010−205994)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】