送信装置、送信方法および光伝送システム
【課題】適切な補償分散量を効率的に探索すること。
【解決手段】送信装置110は、送信機111と、ビットレート制御部112と、を備えている。送信機111は、受信装置120へ信号光を送信する。ビットレート制御部112は、送信機111によって送信される信号光のビットレートを、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートにし、低いビットレートの信号光に基づいて受信装置120が信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、信号光のビットレートを運用ビットレートにする。また、ビットレート制御部112は、信号光のビットレートを、信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御する。
【解決手段】送信装置110は、送信機111と、ビットレート制御部112と、を備えている。送信機111は、受信装置120へ信号光を送信する。ビットレート制御部112は、送信機111によって送信される信号光のビットレートを、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートにし、低いビットレートの信号光に基づいて受信装置120が信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、信号光のビットレートを運用ビットレートにする。また、ビットレート制御部112は、信号光のビットレートを、信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信において、波長分散によって波形が劣化した信号光に対して分散補償をおこなう送信装置、送信方法および光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信において、10Gb/sを超える伝送速度で長距離伝送をおこなうと波長分散によって波形が劣化し、受信側でデータを正確に復調できなくなるという問題がある。そのため、一般的に、受信側では、分散補償ファイバ(DCF:Dispersion Compensating Fiber)を利用して分散補償をおこなうことでデータの正確な復調を可能としている。
【0003】
また、発生する波長分散の量は光伝送路の距離によって変わるため、DCFを用いた分散補償では、補償する分散量の異なる複数のDCFユニット(DCFをモジュール化したユニット)を用意し、光伝送路の距離に応じてDCFユニットを選択して分散補償をおこなっている。しかし、10Gb/sを超える光伝送では許容できる波長分散の幅(分散トレランス)が狭くなるため、数十ps単位の分散補償が必要である。このため、用意する必要のあるDCFユニットの種類が多くなり、10Gb/sを超える光伝送ではDCFだけを用いた分散補償は現実的でない。
【0004】
このことから、10Gb/sを超える光伝送では、一般的に、DCFによる分散補償だけではなく、補償分散量を変化させることが可能な可変分散補償器も併せて用いられている(たとえば、下記特許文献1参照。)。可変分散補償器は、たとえば、光路の長さや光ファイバの温度を制御することによって補償分散量を変化させることができる。
【0005】
可変分散補償器を用いて分散補償をおこなう場合、適切な補償分散量を設定する必要がある。これに対して、分散量検出器を設けることによって適切な補償分散量を検出する方法(たとえば、下記特許文献2参照。)や、補償分散量を変化させながらクロック抽出状態やエラー状態を監視して適切な補償分散量を探索する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−273804号公報
【特許文献2】特開平11−88261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、分散量検出器を設ける方法をとると、分波器を用いて信号光を分波する必要があり、受信側での信号光の入力レベルが低下して伝送可能距離が短縮するという問題がある。また、分散量検出器や分波器に加えて、分散量検出器で用いるクロック検出器などがさらに必要となり、装置全体の部品数が増加するという問題がある。
【0008】
また、補償分散量を変化させながらクロック抽出状態やエラー状態を監視して適切な補償分散量を探索する方法では、伝送距離が長くなるほど必要な補償分散量が増加するため、適切な補償分散量を探し出すまでの時間が長くなる。このため、光伝送装置が立ち上がってからデータ通信を開始するまでに要する時間が長くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解消するため、適切な補償分散量を効率的に探索することができる送信装置、送信方法および光伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一側面によれば、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を受信装置へ送信し、前記低いビットレートの信号光に基づいて前記受信装置が前記信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、前記運用ビットレートの信号光を送信する送信方法であって、前記信号光のビットレートを、前記信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御する送信装置、送信方法および光伝送システムが提案される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、適切な補償分散量を効率的に探索することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかる光伝送システムの処理の概要を示すシーケンス図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる送信装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施の形態1にかかる受信装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、分散量制御部が適切な補償分散量を探索する処理の具体例を説明する説明図である。
【図6】図6は、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図(その1)である。
【図7】図7は、実施の形態2にかかる光伝送システムの処理の概要を示すシーケンス図である。
【図8】図8は、実施の形態2にかかる送信装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施の形態2にかかる受信装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図(その2)である。
【図11】図11は、実施の形態3にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、送信機がビットレートを擬似的に変化させる場合を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる送信装置、送信方法および光伝送システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
(実施の形態1にかかる光伝送システムの基本的構成)
まず、実施の形態1にかかる光伝送システムの基本的構成について説明する。図1は、実施の形態1にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図である。図1に示すように、光伝送システム100は、送信側の光伝送装置(以下、「送信装置」という)110と、受信側の光伝送装置(以下、「受信装置」という)120と、伝送路130と、から構成されている。
【0015】
送信装置110は、送信機111と、ビットレート制御部112と、合波器113と、から構成されている。送信機111はここでは複数設けられている。送信機111は、送信する情報に対応する電気信号を信号光に変換して送信する。送信機111には、ビットレート制御部112の制御によって、異なるビットレートの信号光を切り替えて送信することができるマルチレートタイプの送信機を用いる。各送信機111から送信される信号光は、合波器113によって多重化され、送信される。
【0016】
各送信機111はそれぞれ波長の異なる信号光を送信する。合波器113は、各送信機111が送信する信号光を合波し、波長多重する。
【0017】
受信装置120は、分波器121と、可変分散補償器122と、受信機123と、分散量制御部124と、から構成されている。分波器121は、波長多重信号光を元の複数の信号光に多重分離する。
【0018】
可変分散補償器122は、波長分散によって波形が劣化した信号光に対して分散補償をおこなう。可変分散補償器122は、受信機123のそれぞれについて複数設けられている。
【0019】
伝送信号光の受ける波長分散量は伝送距離や温度などによって変化する。これに対応するため、可変分散補償器122は、後述の分散量制御部124の制御によって補償分散量を変化させることができる。可変分散補償器122は、たとえば、FBG(Fiber Bragg Grating)、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)板、リング共振器などを用いて実現することができる。
【0020】
受信機123は、送信装置110から送信された信号光を電気信号に変換する。信号光を電気信号に変換するために、受信機123において、信号光のクロック抽出が行われる。受信機123は、送信装置110の送信機111と同じ数だけ備えられている。受信機123には、送信装置110から送信される複数種類のビットレートの信号光を受信することができるマルチレートタイプの受信機を用いる。複数種類のビットレートの信号光を受信可能な受信機123においては、各信号光のクロック抽出が可能であるから、信号光のビットレートについても検出することができる。
【0021】
分散量制御部124は、可変分散補償器122を制御して補償分散量を所定の変化単位量Δずつ変化させる。また、分散量制御部124は、補償分散量を単位変化量Δずつ変化させながら、受信機123のクロック抽出状態または受信機123の信号光の受信状態を監視することで、適切な補償分散量を探索する。
【0022】
ここで、可変分散補償器122および受信機123は複数あるが、分散量制御部124は、受信機123の監視をそれぞれ独立しておこない、各受信機123に対応した可変分散補償器122をそれぞれ独立して制御する。すなわち、分散量制御部124は、送信装置110から受信した波長の異なる複数の信号光のそれぞれに対して、適切な補償分散量を探索する。
【0023】
分散量制御部124は、信号光の受信状態として、たとえば、受信機123が受信した信号光のビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を監視する。BERを監視するためには、受信した信号光の誤りを検出する必要がある。誤り検出には、パリティ検査方式や巡回符号(CRC:Cyclic Redundancy Check)方式などの各種方式を用いることができる。
【0024】
なお、ここでは送信装置110から受信装置120への片方向の光伝送について説明したが、別の伝送路を用いた両方向、同じ伝送路による双方向の光伝送をおこなうことも可能である。
【0025】
また、送信装置110の送信機111は一つであってもよい。この場合、合波器113と、受信装置120の分波器121と、を省くことも可能である。また、この場合、受信装置120の可変分散補償器122および受信機123もそれぞれ一つでよい。
【0026】
(実施の形態1にかかる光伝送システムの処理の概要)
つぎに、実施の形態1にかかる光伝送システムの処理の概要について説明する。図2は、実施の形態1にかかる光伝送システムの処理の概要を示すシーケンス図である。以下の説明では、送信装置110が送信する信号光のビットレートはビットレートA、B、Cの順に高くなる。所定のビットレートCは、実際にデータ通信をおこなう際の運用ビットレートおよび運用ビットレートに近いビットレートであるとする。
【0027】
図2に示すように、まず、送信装置110が、受信装置120に対して、ビットレートAで信号光を送信する(ステップS201)。つぎに、受信装置120が、補償分散量を単位変化量Δaで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS202)。ここで、Δaは、ビットレートAの信号光について分散量制御部124が適切な補償分散量を探索する際に、補償分散量を一度に変化させる単位変化量Δである。同様に、ビットレートB、Cの場合の単位変化量ΔをそれぞれΔb、Δcとする。
【0028】
つぎに、送信装置110が、ステップS201から時間h(A)が経過するのを待って、ビットレートBで信号光を送信する(ステップS203)。ここで、時間h(A)は、たとえば、分散量制御部124がビットレートAにおける適切な補償分散量を探索するために必要な時間を確保できる時間hとする。時間h(A)は、具体的には、たとえばh=(t1+t2)×(X/Δa)とする。
【0029】
ここで、Xは、可変分散補償器122の補償分散量の最大補償分散量である。t1は、分散量制御部124が補償分散量を単位変化量Δaだけ変化させるために必要な時間である。t2は、ある一定の補償分散量のときにBERがしきい値より低いか否かを分散量制御部124が判断するために必要な時間である。また、ビットレートB、Cの際の時間hをそれぞれh(B)、h(C)とする。
【0030】
つぎに、受信装置120が、補償分散量を単位変化量Δbで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS204)。Δbは、Δaよりも小さい単位変化量Δである。つぎに、送信装置110が、ステップS203から時間h(B)が経過するのを待って、ビットレートC(運用ビットレート)で信号光を送信する(ステップS205)。
【0031】
つぎに、受信装置120が、補償分散量を単位変化量Δcで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS206)。Δcは、ΔaおよびΔbよりも小さい単位変化量Δである。つぎに、送信装置110が、ステップS205から時間h(C)が経過するのを待って、データ通信を開始し(ステップS207)、本発明における一連の処理を終了する。このように、送信装置110は、時間hが経過する毎に送信する信号光を切り替える。
【0032】
また、分散量制御部124は、受信機123が受信する信号光のビットレートに対応して設定された単位変化量Δずつ補償分散量を変化させる。単位変化量Δは、具体的には、送信装置110から送信される信号光のビットレートが高くなるほど小さくなるように分散量制御部124に設定されている。
【0033】
また、分散量制御部124は、ビットレートCの信号光について適切な補償分散量を探索した結果に基づいて、実際のデータ通信をおこなう場合に送信装置110から受信する信号光に対して分散補償をおこなうための補償分散量を求める。
【0034】
なお、ここでは信号光のビットレートをA、B、Cと変化させる場合について説明したが、ビットレートの変化は3段階のものに限られない。たとえば、ビットレートの変化は、低ビットレート、運用ビットレートの2段階に設定してもよいし、4段階以上に設定してもよい。
【0035】
(実施の形態1にかかる送信装置の処理の手順)
つぎに、実施の形態1にかかる送信装置110の処理の手順について説明する。図3は、実施の形態1にかかる送信装置の処理の手順を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、送信機111が、運用ビットレートよりも低いビットレート(たとえば、ビットレートA)で信号光を送信する(ステップS301)。つぎに、ビットレート制御部112が、所定の時間h(たとえば、h(A))が経過するのを待つ(ステップS302:Noのループ)。
【0036】
所定の時間hが経過すると(ステップS302:Yes)、ビットレート制御部112は、そのときに送信機111が送信している信号光のビットレートがデータ通信をおこなう際の運用ビットレート(ビットレートC)であるか否かを判断する(ステップS303)。ビットレートが運用ビットレートでない場合(ステップS303:No)、ビットレート制御部112は送信機111を制御して、そのときのビットレートよりも高いビットレート(たとえば、ビットレートBあるいはC)によって信号光を送信する(ステップS304)。そして、ステップS302に戻って処理を続行する。
【0037】
ステップS303において、ビットレートが運用ビットレートである場合(ステップS303:Yes)、送信機111が、データ通信を開始し(ステップS305)、本発明における一連の処理を終了する。
【0038】
(実施の形態1にかかる受信装置の処理の手順)
つぎに、実施の形態1にかかる受信装置120の処理の手順について説明する。図4は、実施の形態1にかかる受信装置の処理の手順を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、受信機123が、送信装置110から送信される信号光を受信する(ステップS401)。
【0039】
つぎに、分散量制御部124が、受信した信号光のクロックが抽出されたか否かを判断する(ステップS402)。クロックが抽出されていない場合(ステップS402:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を、信号光のビットレートに対応した単位変化量Δ(たとえば、Δa)だけ変化させる(ステップS403)。そして、ステップS402に戻って処理を続行する。
【0040】
ステップS402において、クロックが抽出された場合(ステップS402:Yes)、分散量制御部124は、受信した信号光のBERが所定のしきい値よりも低いか否かを判断する(ステップS404)。BERがしきい値以上である場合(ステップS404:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を単位変化量Δ(たとえば、Δa)だけ変化させる(ステップS405)。そして、ステップS404に戻って処理を続行する。
【0041】
ステップS404において、BERがしきい値よりも低い場合(ステップS404:Yes)、分散量制御部124は、所定の時間h(たとえば、h(A))が経過するのを待つ(ステップS406:Noのループ)。所定の時間hが経過すると(ステップS406:Yes)、分散量制御部124は、受信した信号光のビットレートが運用ビットレート(ビットレートC)であるか否かを判断する(ステップS407)。
【0042】
ステップS407において、ビットレートが運用ビットレートでない場合(ステップS407:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を一度に変化させる単位変化量Δを小さくする(たとえば、ΔbあるいはΔc)(ステップS408)。そして、ステップS402に戻って処理を続行する。ビットレートが運用ビットレートである場合(ステップS407:Yes)、送信装置110とのデータ通信を開始し(ステップS409)、本発明における一連の処理を終了する。
【0043】
(補償分散量の探索処理の具体例)
つぎに、受信装置120の分散量制御部124が適切な補償分散量を探索する処理の具体例を説明する。図5は、分散量制御部が適切な補償分散量を探索する処理の具体例を説明する説明図である。図5の曲線501(501a〜501c)は、それぞれ、送信装置110から送信される信号光のビットレートがA、B、Cの場合の補償分散量とBERとの関係を示している。
【0044】
符号502は、あらかじめ定められた一定のしきい値を示す。図5から分かるように、送信装置110から送信される信号光のビットレートがA、B、Cと高くなるほど、BERが一定のしきい値502よりも低くなるために必要な補償分散量の幅(分散トレランス)が狭くなる。
【0045】
まず、ビットレートAの場合、分散量制御部124は、補償分散量を0に設定して(ステップa−1)、BERと所定のしきい値502とを比較する。この場合、BERがしきい値502より高いため、分散量制御部124は、可変分散補償器122の補償分散量を単位変化量Δa(ビットレートAに対応)だけ変化させる(ステップa−2)。
【0046】
この場合も、BERがしきい値502よりも高いため、分散量制御部124は、可変分散補償器122の補償分散量を変化幅Δaだけさらに変化させる(ステップa−3)。この場合、BERがしきい値502よりも低くなったため、分散量制御部124は、現在の補償分散量α(Δa×2に相当)を保持し、ビットレートAにおける補償分散量の探索を終了する。
【0047】
つぎに、ビットレートがBに変化した場合、現在の補償分散量αにおけるBERを判断する(ステップb−1)。この場合、BERがしきい値502より高いため、分散量制御部124は、可変分散補償器122の補償分散量を単位変化量Δb(ビットレートBに対応。Δaより小さい)だけ変化させる(ステップb−2)。
【0048】
その後もビットレートAの場合について説明したように、分散量制御部124は、補償分散量を変化幅Δbずつ変化させ、その都度BERがしきい値502より低いか否かを判断する。ここでは、補償分散量αよりもさらにΔb×3だけ変化させたとき(ステップb−4)に初めてBERがしきい値502より低くなるため、分散量制御部124は、現在の補償分散量β(Δa×2+Δb×3に相当)を保持し、ビットレートBにおける補償分散量の探索を終了する。
【0049】
つぎに、ビットレートがCに変化した場合も、ビットレートAの場合またはビットレートBの場合について説明したように、分散量制御部124は、補償分散量を単位変化量Δc(ビットレートCに対応、Δbより小さい)だけ変化させながらその都度BERがしきい値502より低いか否かを判断する(ステップc−1〜ステップc−3)。
【0050】
この場合、補償分散量βよりもさらにΔc×2だけ変化させたとき(ステップc−3)に初めてBERがしきい値502より低くなる。ここで、ビットレートCは運用ビットレートであるため、分散量制御部124は、現在の補償分散量γ(Δa×2+Δb×3+Δc×2に相当)を最終的な補償分散量として設定し、補償分散量の探索を終了する。
【0051】
このように、分散量制御部124は、送信装置110から順次送信されるビットレートの異なる信号光毎に適切な補償分散量を探索する。また、送信装置110から順次送信されるビットレートが変化する毎に、ビットレートが変化する前に適切な補償分散量を探索した結果に基づいて、ビットレートが変化した後の適切な補償分散量を探索することで、効率よく最終的な補償分散量を探索することができる。
【0052】
また、分散量制御部124は、補償分散量を単位変化量Δずつ変化させ、BERが最初にしきい値502よりも低くなった時点の補償分散量を適切な補償分散量として探索することで、一のビットレートの信号光における適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0053】
なお、ここではそれぞれのビットレートにおいてBERが初めてしきい値502よりも低くなった時点で適切な補償分散量の探索を終了したが、分散量制御部124は、この時点で終了せずに、BERがさらに低くなる補償分散量を探索してもよい。たとえば、分散量制御部124は、運用ビットレートにおいて、補償分散量をさらにΔc(あるいはΔcよりもさらに小さい変化単位量Δd)ずつ変化させながらその都度BERを判定することで、BERがさらに低くなる補償分散量を探索することができる。
【0054】
また、ここでは、分散量制御部124は、所定のしきい値502を一定の値に固定したまま適切な補償分散量を探索したが、しきい値502を変化させながら適切な補償分散量を探索してもよい。たとえば、あるビットレートにおける適切な補償分散量の探索に失敗した場合、すなわち、可変分散補償器122の最大補償分散量Xまで補償分散量を変化させたにも拘わらずBERが一度もしきい値502より低くならなかった場合、分散量制御部124は、しきい値502をより高い値に設定して適切な補償分散量の探索を再度おこなってもよい。
【0055】
以上説明した、本発明の実施の形態1にかかる光伝送システム100によれば、最初は運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光によって適切な補償分散量を大まかに探索し、その後運用ビットレートの信号光によって適切な補償分散量を高い精度で探索することができる。このため、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0056】
(実施の形態2)
(実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成)
つぎに、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成について説明する。図6は、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図(その1)である。なお、実施の形態2にかかる光伝送システムの構成のうち、実施の形態1にかかる光伝送システム100と同様の構成については、図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、光伝送システム600は、送信装置610と、受信装置620と、伝送路130と、伝送路630と、から構成されている。送信装置610は、送信機111と、ビットレート制御部112と、合波器113と、監視用受信機611と、から構成されている。監視用受信機611は、後述する受信装置620の監視用送信機621から送信される探索終了信号を伝送路630を介して受信する。また、監視用受信機611は、探索終了信号を受信すると、この探索終了信号をビットレート制御部112に出力する。
【0058】
ビットレート制御部112は、実施の形態1においては所定の時間hが経過する毎に送信機111が送信する信号光のビットレートを変化させていたが、実施の形態2においては監視用受信機611から探索終了信号を入力する毎にこのビットレートを変化させる。
【0059】
受信装置620は、分波器121と、可変分散補償器122と、受信機123と、分散量制御部124と、監視用送信機621と、から構成されている。監視用送信機621は、分散量制御部124があるビットレートでの適切な補償分散量の探索を終了すると、送信装置610に対して探索終了信号を伝送路630を介して送信する。
【0060】
(実施の形態2にかかる光伝送システムの処理の概要)
つぎに、実施の形態2にかかる光伝送システム600の処理の概要について説明する。図7は、実施の形態2にかかる光伝送システムの処理の概要を示すシーケンス図である。図7に示すように、まず、送信装置610が、受信装置620に対して、ビットレートAで信号光を送信する(ステップS701)。つぎに、受信装置620が、補償分散量を単位変化量Δaで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS702)。
【0061】
つぎに、受信装置620が、送信装置610に対して、探索終了信号を送信する(ステップS703)。つぎに、送信装置610が、ビットレートBで信号光を送信する(ステップS704)。つぎに、受信装置620が、補償分散量を単位変化量Δbで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS705)。
【0062】
つぎに、受信装置620が、送信装置610に対して、探索終了信号を送信する(ステップS706)。つぎに、送信装置610が、ビットレートC(運用ビットレート)で信号光を送信する(ステップS707)。つぎに、受信装置620が、補償分散量を単位変化量Δcで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS708)。
【0063】
つぎに、受信装置620が、送信装置610に対して、探索終了信号を送信する(ステップS709)。つぎに、送信装置610が、受信装置620とのデータ通信を開始し(ステップS710)、本発明における一連の処理を終了する。このように、受信装置620が、適切な補償分散量を探索した後に送信装置610に対して探索終了信号を送信することで、送信装置610は探索終了信号を受信した後すぐにビットレートを変化させることができる。このように、送信装置610は、受信装置620から探索終了信号を受信する毎に送信する信号光を切り替える。
【0064】
なお、ここでは信号光のビットレートをA、B、Cと変化させる場合について説明したが、ビットレートの変化はこのような3段階のものに限られない。たとえば、ビットレートの変化は、低ビットレート、運用ビットレートの2段階に設定してもよいし、4段階以上に設定してもよい。
【0065】
(実施の形態2にかかる送信装置の処理の手順)
つぎに、実施の形態2にかかる送信装置610の処理の手順について説明する。図8は、実施の形態2にかかる送信装置の処理の手順を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、送信機111が、低ビットレート(たとえば、ビットレートA)で信号光を送信する(ステップS801)。
【0066】
つぎに、ビットレート制御部112が、受信装置620から探索終了信号を受信するまで待つ(ステップS802:Noのループ)。探索終了信号を受信すると(ステップS802:Yes)、ビットレート制御部112は、そのときに送信機111が送信している信号光のビットレートがデータ通信をおこなう際の運用ビットレート(ビットレートC)であるか否かを判断する(ステップS803)。
【0067】
ステップS803において、ビットレートが運用ビットレートでない場合(ステップS803:No)、ビットレート制御部112は送信機111を制御して、そのときのビットレートよりも高いビットレート(たとえば、ビットレートBあるいはC)によって信号光を送信する(ステップS804)。そして、ステップS802に戻って処理を続行する。
【0068】
ステップS803において、ビットレートが運用ビットレートである場合(ステップS803:Yes)、受信装置620とのデータ通信を開始し(ステップS805)、本発明における一連の処理を終了する。
【0069】
(実施の形態2にかかる受信装置の処理の手順)
つぎに、実施の形態2にかかる受信装置620の処理の手順について説明する。図9は、実施の形態2にかかる受信装置の処理の手順を示すフローチャートである。図9に示すように、まず、受信機123が、送信装置610から送信される信号光を受信する(ステップS901)。
【0070】
つぎに、分散量制御部124が、受信した信号光のクロックが抽出されたか否かを判断する(ステップS902)。クロックが抽出されていない場合(ステップS902:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を、信号光に対応した単位変化量Δ(たとえば、Δa)だけ変化させる(ステップS903)。そして、ステップS902に戻って処理を続行する。
【0071】
ステップS902において、クロックが抽出された場合(ステップS902:Yes)、分散量制御部124は、受信した信号光のBERが所定のしきい値502よりも低いか否かを判断する(ステップS904)。BERがしきい値502以上である場合(ステップS904:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を単位変化量Δ(たとえば、Δa)だけ変化させる(ステップS905)。そして、ステップS904に戻って処理を続行する。
【0072】
ステップS904において、BERがしきい値502より低い場合(ステップS904:Yes)、監視用送信機621が、送信装置610に対して探索終了信号を送信する(ステップS906)。つぎに、分散量制御部124は、受信した信号光のビットレートが運用ビットレート(ビットレートC)であるか否かを判断する(ステップS907)。
【0073】
ステップS907において、ビットレートが運用ビットレートでない場合(ステップS907:No)、分散量制御部124は、信号光に対する補償分散量を一度に変化させる単位変化量Δを小さくする(たとえば、ΔbあるいはΔc)(ステップS908)。そして、ステップS902に戻って処理を続行する。ビットレートが運用ビットレートである場合(ステップS907:Yes)、送信装置610とのデータ通信を開始し(ステップS909)、本発明における一連の処理を終了する。なお、補償分散量の探索処理の具体例については、実施の形態1で説明した通り(図5参照)であるので、ここでは説明を省略する。
【0074】
以上説明した、実施の形態2にかかる光伝送システム600によれば、受信装置620があるビットレートでの適切な補償分散量の探索を終了すると送信装置610に探索終了信号を送信するため、送信装置610はこの探索終了信号を受信した後すぐにビットレートを変化させることができる。このため、送信装置610が信号光のビットレートを変化させるまでの時間を必要最小限にすることができ、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0075】
なお、実施の形態2の説明においては、受信装置620は、送信機111から送信された信号光に対して補償分散量を変化させながらBERを監視することで適切な補償分散量を探索する構成とした。これに対して、送信装置610は監視用送信機をさらに備え、受信装置620はこの監視用送信機から送信される信号光を用いて適切な補償分散量を探索する構成とすることもできる。
【0076】
ここで、この構成を実施の形態2の光伝送システム600で実現した例を説明する。図10は、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図(その2)である。送信装置610は、実施の形態2の上述した構成に加えて、監視用送信機1001を備える。監視用送信機1001は、ビットレート制御部112の制御によって、伝送路130および伝送路630とは異なる伝送路1002を介して信号光を受信装置620に送信する。
【0077】
ビットレート制御部112は、上述の送信機111に対する制御と同様の制御を監視用送信機1001に対しておこなう。すなわち、ビットレート制御部112は監視用送信機1001を制御して、まず、データ通信をおこなう際の運用ビットレートよりも低いビットレートで信号光を送信する。そして、ビットレート制御部112は、送信する信号光のビットレートを順次上げていき、最終的にビットレートが運用ビットレートとなるように監視用送信機1001を制御する。ビットレート制御部112は、監視用受信機611から探索終了信号を入力する毎にビットレートを変化させる。
【0078】
受信装置620は、実施の形態2の上記構成に加えて、可変分散補償器1003と、監視用受信機1004と、分散量制御部1005と、を備える。可変分散補償器1003と、監視用受信機1004と、分散量制御部1005と、の機能は、それぞれ上述した可変分散補償器122と、受信機123と、分散量制御部124と、の機能と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0079】
すなわち、可変分散補償器1003は、分散量制御部1005の制御によって送信装置610から送信された信号光に対して分散補償をおこなう。分散量制御部1005は、可変分散補償器1003を制御して補償分散量を変化させながら、監視用受信機1004が受信する信号光のBERを監視することによって適切な補償分散量を探索する。また、分散量制御部1005は、あるビットレートにおいて適切な補償分散量を探索すると、監視用送信機621に対して探索終了信号を送信する。ここで、分散量制御部1005は、分散量制御部124と別に構成したが、これらは一体的に構成してもよい。
【0080】
以上説明したように光伝送システム600を構成することによって、送信機111が送信し、データ通信に用いられる信号光(以下、「主信号」という)によってではなく、監視用送信機1001が送信し、光伝送の制御に用いる信号光(以下、「監視用信号」という)によっても適切な補償分散量の探索をおこなうことができる。
【0081】
なお、送信装置610が送信する信号光が低ビットレート(たとえば、ビットレートA)である場合には監視用信号によって分散量制御部1005が適切な補償分散量の探索をおこない、この信号光が所定の高さのビットレート(たとえば、ビットレートBあるいはC)の場合には主信号を用いて分散量制御部124が適切な補償分散量の探索をおこなうように構成してもよい。
【0082】
(実施の形態3)
(実施の形態3にかかる光伝送システムの基本的構成)
つぎに、実施の形態3にかかる光伝送システムの基本的構成について説明する。図11は、実施の形態3にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図である。なお、実施の形態3にかかる光伝送システムの構成のうち、実施の形態2にかかる光伝送システム600と同様の構成については、図6と同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
図11に示すように、光伝送システム1100は、伝送装置1と、伝送装置2と、伝送路130と、から構成されている。伝送装置1および伝送装置2は、それぞれ、実施の形態2における送信装置610および受信装置620の構成を備えている。すなわち、伝送装置1および伝送装置2は、それぞれ、送信機111と、ビットレート制御部112と、合波器113と、分波器121と、可変分散補償器122と、受信機123と、分散量制御部124と、監視用受信機611と、監視用送信機621と、を備えている。
【0084】
さらに、伝送装置1および伝送装置2は、それぞれ、合波器1101と、カプラ1102と、分波器1103と、を備える。合波器1101は、複数の送信機111が送信した複数の信号光を合波器113が重ね合わせた信号光(主信号または監視用信号)と、監視用送信機621から出力された探索終了信号と、を重ね合わせる。カプラ1102は、合波器1101によって重ね合わされた信号光の経路を伝送路130方向に切り替える。また、カプラ1102は、他方の伝送装置から伝送路130を介して送信された信号光の経路を分波器1103方向に切り替える。
【0085】
分波器1103は、他方の送信装置から伝送路130およびカプラ1102を介して送信された信号光を主信号と探索終了信号とに分波する。分波された主信号は分波器121に、探索終了信号は監視用受信機611に出力される。また、実施の形態3においては、伝送装置1から信号光を送信する場合と、伝送装置2から信号光を送信する場合とで異なる波長を用いることにより、一の伝送路130による双方向のデータ通信を可能としている。なお、伝送装置1および伝送装置2が信号光の送信および受信をおこなう際の処理は、実施の形態2で説明した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
以上説明した、実施の形態3にかかる光伝送システム1000によれば、一の伝送路によって双方向のデータ通信を可能にしつつ、最初は運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光によって適切な補償分散量を大まかに探索し、その後運用ビットレートの信号光によって適切な補償分散量を高い精度で探索することができる。このため、一の伝送路によって双方向のデータ通信を可能にしつつ、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0087】
なお、上述の各実施の形態において、送信機111は、ビットレート制御部112の制御によって、送信する信号光のビットレートを変化させる構成としたが、実際のビットレートを変化させるのではなく、送信する信号光を制御することでビットレートを擬似的に変化させることも可能である。図12は、送信機がビットレートを擬似的に変化させる場合を説明する説明図である。
【0088】
図12に示すように、送信機111は、たとえば、固定ビットパターンである「111000111000111000」の信号光1201と、「110011001100」の信号光1202と、「101010」の信号光1203と、を運用ビットレートで送信する。この場合、信号光1201の波形は、信号光1203を運用ビットレートの1/3のビットレートで送信した信号光と同様の信号となる。また、信号光1202の波形は、信号光1203を運用ビットレートの1/2のビットレートで送信した信号光と同様の信号となる。
【0089】
したがって、送信機111は、たとえば、運用ビットレートのみを用いて、「111000111000111000」、「110011001100」、「101010」と送信する信号光のパターンを変化させることによって擬似的にビットレートを変化させることができる。この場合、送信する信号光の実際のビットレートを変化させる必要がないため、ビットレート制御部112を省くことも可能となる。
【0090】
このように、送信機111は、運用ビットレートで、同じ値を複数回繰り返すビット信号列と、この値とは異なる値を複数回繰り返すビット信号列と、を交互に送信し、ビット信号列の繰り返し回数を変化させることで、運用ビットレートと異なるビットレートの信号光を擬似的に送信することができる。
【0091】
また、上述の各実施の形態において(ここでは実施の形態1について説明する)、分散量制御部124は、運用ビットレートで最適な補償分散量を探索してデータ通信を開始した後に、受信機123の受信している信号光の受信状態を監視し続けてもよい。そして、光伝送システム100は、送信装置110から送信される信号光のクロックが抽出できなくなり、またはBERがデータ通信中にしきい値502よりも高くなると、一度データ通信を中止し、適切な補償分散量を再度探索する。
【0092】
この場合、光伝送システム100は、ビットレートを再度低いビットレート(たとえば、ビットレートA)に変化させたり、補償分散量が0の状態から探索を始めたりしなくてもよい。たとえば、光伝送システム100は、運用ビットレートのまま、補償分散量を補償分散量β(図5参照)から始めて再度適切な補償分散量を探索してもよい。
【0093】
そして、光伝送システム100は、運用ビットレートにおいて、可変分散補償器122の最大補償分散量Xまで補償分散量を変化させたにも拘わらずBERが一度もしきい値502より低くならなかった場合、ビットレートを低くして(たとえば、ビットレートB)、補償分散量αから始めて再度適切な補償分散量を探索してもよい。
【0094】
また、上述の各実施の形態において、分散量制御部124は、受信機123が受信する信号光のビットレートのそれぞれについて、クロックが抽出され、かつ、BERがしきい値502よりも低くなる補償分散量を探索したが、運用ビットレート以外のビットレートの信号光については、BERがしきい値502よりも低いか否かの判断を省略してもよい。
【0095】
たとえば、分散量制御部124は、運用ビットレート以外のビットレートの信号光については、それぞれクロックが抽出された時点で補償分散量の探索を終了する。一方、分散量制御部124は、運用ビットレートの信号光については、クロックが抽出され、かつ、BERがしきい値502よりも低くなるまで補償分散量を探索する構成としてもよい。
【0096】
以上説明したように、本発明にかかる送信装置、送信方法および光伝送システムによれば、最初は運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光によって適切な補償分散量を大まかに探索し、その後運用ビットレートの信号光によって適切な補償分散量を高い精度で探索することができる。このため、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0097】
また、受信装置が、あるビットレートでの適切な補償分散量の探索を終了すると送信装置に探索終了信号を送信することで、送信装置はこの探索終了信号を受信した後すぐにビットレートを変化させることができる。このため、送信装置が信号光のビットレートを変化させるまでの時間を必要最小限にすることができ、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0098】
(付記1)複数のビットレートを送信可能な送信装置からの信号光を受信可能な受信装置であって、
入力信号光に対し、波長分散を補償する分散補償手段と、
前記分散補償手段の出力を光電変換し信号を受信するとともに、前記入力信号光のビットレートを検出する受信手段と、
前記受信手段の信号受信結果および検出されたビットレートに基づき、前記分散補償手段の分散量を制御する分散量制御手段と、
を備え、
前記分散量制御手段は、前記検出されたビットレートに応じた単位変化量Δ毎に前記分散補償手段の分散量を変化させることを特徴とする受信装置。
【0099】
(付記2)データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を受信し、前記分散量制御手段が当該信号光に対する前記分散量を制御した後、前記運用ビットレートの信号光を受信することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0100】
(付記3)前記分散量制御手段は、前記検出されたビットレートが高いほど小さい単位変化量Δ毎に前記分散量を変化させることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0101】
(付記4)前記分散量制御手段が前記信号光に対する前記分散量を制御する毎に、送信装置に対して探索終了信号を送信する送信手段をさらに備えることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0102】
(付記5)前記信号光の受信状態を監視する監視手段をさらに備え、
前記分散量制御手段は、前記分散量を、前記監視手段によって監視される前記受信状態が所定の受信状態となる分散量とすることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0103】
(付記6)前記分散量制御手段は、前記分散量を、前記信号光のクロックが抽出された状態、あるいは前記信号光の前記クロックが抽出され、前記信号光のエラー状態が所定のエラー状態となる分散量とすることを特徴とする付記5に記載の受信装置。
【0104】
(付記7)前記分散量制御手段は、前記分散量を、前記所定のエラー状態として、前記信号光のビット誤り率が所定のしきい値よりも低い状態となる分散量とすることを特徴とする付記6に記載の受信装置。
【0105】
(付記8)前記分散量制御手段は、前記分散量を適当に制御できなかった場合、前記所定の前記しきい値を上げて前記分散量を再度制御することを特徴とする付記7に記載の受信装置。
【0106】
(付記9)前記分散量制御手段は、前記分散量を、前記単位変化量Δずつ変化させ、前記ビット誤り率が前記所定のしきい値よりも最初に低くなったときの分散量に制御することを特徴とする付記7に記載の受信装置。
【0107】
(付記10)前記運用ビットレートの信号光を受信し、前記分散量制御手段が当該信号光に対する前記分散量を制御した後、前記送信装置とのデータ通信を開始することを特徴とする付記2に記載の受信装置。
【0108】
(付記11)前記分散量制御手段が前記分散量を制御した結果を保持する保持手段をさらに備え、
前記監視手段は、データ通信を開始した後の前記信号光の受信状態を監視し、
前記分散量制御手段は、データ通信を開始した後に前記信号光のクロックの抽出に失敗した場合、または前記ビット誤り率が前記所定のしきい値よりも高くなった場合に、前記保持手段が保持する前記結果に基づいて、前記運用ビットレートの信号光に対する前記分散補償手段の分散量を再度制御することを特徴とする付記2に記載の受信装置。
【0109】
(付記12)受信装置に対して複数のビットレートの信号光を送信可能な送信手段と、
前記送信手段が送信する前記信号光のビットレートを制御するビットレート制御手段と、を備え、
前記ビットレート制御手段は、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を送信し、前記受信装置が当該信号光に対する分散量を制御した後に、前記運用ビットレートの信号光を送信するように前記送信手段を制御することを特徴とする送信装置。
【0110】
(付記13)前記送信手段は、前記運用ビットレートで、同じ値を複数回繰り返すビット信号列と、当該値とは異なる値を複数回繰り返すビット信号列と、を交互に送信し、当該ビット信号列の繰り返し回数を変化させることで、前記運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を擬似的に送信することを特徴とする付記12に記載の送信装置。
【0111】
(付記14)複数のビットレートを送信可能な送信装置からの信号光を受信する受信方法であって、
入力信号光に対し、波長分散を補償する分散補償工程と、
前記分散補償工程による出力を光電変換し信号を受信するとともに、前記入力信号光のビットレートを検出する受信工程と、
前記受信工程による信号受信結果および検出されたビットレートに基づき、前記入力信号光に対する分散量を制御する分散量制御工程とを含み、
前記分散量制御工程では、前記検出されたビットレートに応じた単位変化量Δ毎に前記信号光に対する分散量を変化させることを特徴とする受信方法。
【0112】
(付記15)受信装置に対して、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を送信する第1の送信工程と、
前記第1の送信工程によって送信した前記信号光に対して前記受信装置が分散補償を行った後に、前記運用ビットレートの信号光を送信する第2の送信工程と、
を含むことを特徴とする送信方法。
【符号の説明】
【0113】
100 光伝送システム
110 送信装置
111 送信機
112 ビットレート制御部
120 受信装置
122 可変分散補償器
123 受信機
124 分散量制御部
130 伝送路
611 監視用受信機
621 監視用送信機
1201,1202,1203 信号光
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信において、波長分散によって波形が劣化した信号光に対して分散補償をおこなう送信装置、送信方法および光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信において、10Gb/sを超える伝送速度で長距離伝送をおこなうと波長分散によって波形が劣化し、受信側でデータを正確に復調できなくなるという問題がある。そのため、一般的に、受信側では、分散補償ファイバ(DCF:Dispersion Compensating Fiber)を利用して分散補償をおこなうことでデータの正確な復調を可能としている。
【0003】
また、発生する波長分散の量は光伝送路の距離によって変わるため、DCFを用いた分散補償では、補償する分散量の異なる複数のDCFユニット(DCFをモジュール化したユニット)を用意し、光伝送路の距離に応じてDCFユニットを選択して分散補償をおこなっている。しかし、10Gb/sを超える光伝送では許容できる波長分散の幅(分散トレランス)が狭くなるため、数十ps単位の分散補償が必要である。このため、用意する必要のあるDCFユニットの種類が多くなり、10Gb/sを超える光伝送ではDCFだけを用いた分散補償は現実的でない。
【0004】
このことから、10Gb/sを超える光伝送では、一般的に、DCFによる分散補償だけではなく、補償分散量を変化させることが可能な可変分散補償器も併せて用いられている(たとえば、下記特許文献1参照。)。可変分散補償器は、たとえば、光路の長さや光ファイバの温度を制御することによって補償分散量を変化させることができる。
【0005】
可変分散補償器を用いて分散補償をおこなう場合、適切な補償分散量を設定する必要がある。これに対して、分散量検出器を設けることによって適切な補償分散量を検出する方法(たとえば、下記特許文献2参照。)や、補償分散量を変化させながらクロック抽出状態やエラー状態を監視して適切な補償分散量を探索する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−273804号公報
【特許文献2】特開平11−88261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、分散量検出器を設ける方法をとると、分波器を用いて信号光を分波する必要があり、受信側での信号光の入力レベルが低下して伝送可能距離が短縮するという問題がある。また、分散量検出器や分波器に加えて、分散量検出器で用いるクロック検出器などがさらに必要となり、装置全体の部品数が増加するという問題がある。
【0008】
また、補償分散量を変化させながらクロック抽出状態やエラー状態を監視して適切な補償分散量を探索する方法では、伝送距離が長くなるほど必要な補償分散量が増加するため、適切な補償分散量を探し出すまでの時間が長くなる。このため、光伝送装置が立ち上がってからデータ通信を開始するまでに要する時間が長くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解消するため、適切な補償分散量を効率的に探索することができる送信装置、送信方法および光伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一側面によれば、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を受信装置へ送信し、前記低いビットレートの信号光に基づいて前記受信装置が前記信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、前記運用ビットレートの信号光を送信する送信方法であって、前記信号光のビットレートを、前記信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御する送信装置、送信方法および光伝送システムが提案される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、適切な補償分散量を効率的に探索することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかる光伝送システムの処理の概要を示すシーケンス図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかる送信装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施の形態1にかかる受信装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、分散量制御部が適切な補償分散量を探索する処理の具体例を説明する説明図である。
【図6】図6は、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図(その1)である。
【図7】図7は、実施の形態2にかかる光伝送システムの処理の概要を示すシーケンス図である。
【図8】図8は、実施の形態2にかかる送信装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施の形態2にかかる受信装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図(その2)である。
【図11】図11は、実施の形態3にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、送信機がビットレートを擬似的に変化させる場合を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる送信装置、送信方法および光伝送システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
(実施の形態1にかかる光伝送システムの基本的構成)
まず、実施の形態1にかかる光伝送システムの基本的構成について説明する。図1は、実施の形態1にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図である。図1に示すように、光伝送システム100は、送信側の光伝送装置(以下、「送信装置」という)110と、受信側の光伝送装置(以下、「受信装置」という)120と、伝送路130と、から構成されている。
【0015】
送信装置110は、送信機111と、ビットレート制御部112と、合波器113と、から構成されている。送信機111はここでは複数設けられている。送信機111は、送信する情報に対応する電気信号を信号光に変換して送信する。送信機111には、ビットレート制御部112の制御によって、異なるビットレートの信号光を切り替えて送信することができるマルチレートタイプの送信機を用いる。各送信機111から送信される信号光は、合波器113によって多重化され、送信される。
【0016】
各送信機111はそれぞれ波長の異なる信号光を送信する。合波器113は、各送信機111が送信する信号光を合波し、波長多重する。
【0017】
受信装置120は、分波器121と、可変分散補償器122と、受信機123と、分散量制御部124と、から構成されている。分波器121は、波長多重信号光を元の複数の信号光に多重分離する。
【0018】
可変分散補償器122は、波長分散によって波形が劣化した信号光に対して分散補償をおこなう。可変分散補償器122は、受信機123のそれぞれについて複数設けられている。
【0019】
伝送信号光の受ける波長分散量は伝送距離や温度などによって変化する。これに対応するため、可変分散補償器122は、後述の分散量制御部124の制御によって補償分散量を変化させることができる。可変分散補償器122は、たとえば、FBG(Fiber Bragg Grating)、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)板、リング共振器などを用いて実現することができる。
【0020】
受信機123は、送信装置110から送信された信号光を電気信号に変換する。信号光を電気信号に変換するために、受信機123において、信号光のクロック抽出が行われる。受信機123は、送信装置110の送信機111と同じ数だけ備えられている。受信機123には、送信装置110から送信される複数種類のビットレートの信号光を受信することができるマルチレートタイプの受信機を用いる。複数種類のビットレートの信号光を受信可能な受信機123においては、各信号光のクロック抽出が可能であるから、信号光のビットレートについても検出することができる。
【0021】
分散量制御部124は、可変分散補償器122を制御して補償分散量を所定の変化単位量Δずつ変化させる。また、分散量制御部124は、補償分散量を単位変化量Δずつ変化させながら、受信機123のクロック抽出状態または受信機123の信号光の受信状態を監視することで、適切な補償分散量を探索する。
【0022】
ここで、可変分散補償器122および受信機123は複数あるが、分散量制御部124は、受信機123の監視をそれぞれ独立しておこない、各受信機123に対応した可変分散補償器122をそれぞれ独立して制御する。すなわち、分散量制御部124は、送信装置110から受信した波長の異なる複数の信号光のそれぞれに対して、適切な補償分散量を探索する。
【0023】
分散量制御部124は、信号光の受信状態として、たとえば、受信機123が受信した信号光のビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を監視する。BERを監視するためには、受信した信号光の誤りを検出する必要がある。誤り検出には、パリティ検査方式や巡回符号(CRC:Cyclic Redundancy Check)方式などの各種方式を用いることができる。
【0024】
なお、ここでは送信装置110から受信装置120への片方向の光伝送について説明したが、別の伝送路を用いた両方向、同じ伝送路による双方向の光伝送をおこなうことも可能である。
【0025】
また、送信装置110の送信機111は一つであってもよい。この場合、合波器113と、受信装置120の分波器121と、を省くことも可能である。また、この場合、受信装置120の可変分散補償器122および受信機123もそれぞれ一つでよい。
【0026】
(実施の形態1にかかる光伝送システムの処理の概要)
つぎに、実施の形態1にかかる光伝送システムの処理の概要について説明する。図2は、実施の形態1にかかる光伝送システムの処理の概要を示すシーケンス図である。以下の説明では、送信装置110が送信する信号光のビットレートはビットレートA、B、Cの順に高くなる。所定のビットレートCは、実際にデータ通信をおこなう際の運用ビットレートおよび運用ビットレートに近いビットレートであるとする。
【0027】
図2に示すように、まず、送信装置110が、受信装置120に対して、ビットレートAで信号光を送信する(ステップS201)。つぎに、受信装置120が、補償分散量を単位変化量Δaで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS202)。ここで、Δaは、ビットレートAの信号光について分散量制御部124が適切な補償分散量を探索する際に、補償分散量を一度に変化させる単位変化量Δである。同様に、ビットレートB、Cの場合の単位変化量ΔをそれぞれΔb、Δcとする。
【0028】
つぎに、送信装置110が、ステップS201から時間h(A)が経過するのを待って、ビットレートBで信号光を送信する(ステップS203)。ここで、時間h(A)は、たとえば、分散量制御部124がビットレートAにおける適切な補償分散量を探索するために必要な時間を確保できる時間hとする。時間h(A)は、具体的には、たとえばh=(t1+t2)×(X/Δa)とする。
【0029】
ここで、Xは、可変分散補償器122の補償分散量の最大補償分散量である。t1は、分散量制御部124が補償分散量を単位変化量Δaだけ変化させるために必要な時間である。t2は、ある一定の補償分散量のときにBERがしきい値より低いか否かを分散量制御部124が判断するために必要な時間である。また、ビットレートB、Cの際の時間hをそれぞれh(B)、h(C)とする。
【0030】
つぎに、受信装置120が、補償分散量を単位変化量Δbで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS204)。Δbは、Δaよりも小さい単位変化量Δである。つぎに、送信装置110が、ステップS203から時間h(B)が経過するのを待って、ビットレートC(運用ビットレート)で信号光を送信する(ステップS205)。
【0031】
つぎに、受信装置120が、補償分散量を単位変化量Δcで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS206)。Δcは、ΔaおよびΔbよりも小さい単位変化量Δである。つぎに、送信装置110が、ステップS205から時間h(C)が経過するのを待って、データ通信を開始し(ステップS207)、本発明における一連の処理を終了する。このように、送信装置110は、時間hが経過する毎に送信する信号光を切り替える。
【0032】
また、分散量制御部124は、受信機123が受信する信号光のビットレートに対応して設定された単位変化量Δずつ補償分散量を変化させる。単位変化量Δは、具体的には、送信装置110から送信される信号光のビットレートが高くなるほど小さくなるように分散量制御部124に設定されている。
【0033】
また、分散量制御部124は、ビットレートCの信号光について適切な補償分散量を探索した結果に基づいて、実際のデータ通信をおこなう場合に送信装置110から受信する信号光に対して分散補償をおこなうための補償分散量を求める。
【0034】
なお、ここでは信号光のビットレートをA、B、Cと変化させる場合について説明したが、ビットレートの変化は3段階のものに限られない。たとえば、ビットレートの変化は、低ビットレート、運用ビットレートの2段階に設定してもよいし、4段階以上に設定してもよい。
【0035】
(実施の形態1にかかる送信装置の処理の手順)
つぎに、実施の形態1にかかる送信装置110の処理の手順について説明する。図3は、実施の形態1にかかる送信装置の処理の手順を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、送信機111が、運用ビットレートよりも低いビットレート(たとえば、ビットレートA)で信号光を送信する(ステップS301)。つぎに、ビットレート制御部112が、所定の時間h(たとえば、h(A))が経過するのを待つ(ステップS302:Noのループ)。
【0036】
所定の時間hが経過すると(ステップS302:Yes)、ビットレート制御部112は、そのときに送信機111が送信している信号光のビットレートがデータ通信をおこなう際の運用ビットレート(ビットレートC)であるか否かを判断する(ステップS303)。ビットレートが運用ビットレートでない場合(ステップS303:No)、ビットレート制御部112は送信機111を制御して、そのときのビットレートよりも高いビットレート(たとえば、ビットレートBあるいはC)によって信号光を送信する(ステップS304)。そして、ステップS302に戻って処理を続行する。
【0037】
ステップS303において、ビットレートが運用ビットレートである場合(ステップS303:Yes)、送信機111が、データ通信を開始し(ステップS305)、本発明における一連の処理を終了する。
【0038】
(実施の形態1にかかる受信装置の処理の手順)
つぎに、実施の形態1にかかる受信装置120の処理の手順について説明する。図4は、実施の形態1にかかる受信装置の処理の手順を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、受信機123が、送信装置110から送信される信号光を受信する(ステップS401)。
【0039】
つぎに、分散量制御部124が、受信した信号光のクロックが抽出されたか否かを判断する(ステップS402)。クロックが抽出されていない場合(ステップS402:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を、信号光のビットレートに対応した単位変化量Δ(たとえば、Δa)だけ変化させる(ステップS403)。そして、ステップS402に戻って処理を続行する。
【0040】
ステップS402において、クロックが抽出された場合(ステップS402:Yes)、分散量制御部124は、受信した信号光のBERが所定のしきい値よりも低いか否かを判断する(ステップS404)。BERがしきい値以上である場合(ステップS404:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を単位変化量Δ(たとえば、Δa)だけ変化させる(ステップS405)。そして、ステップS404に戻って処理を続行する。
【0041】
ステップS404において、BERがしきい値よりも低い場合(ステップS404:Yes)、分散量制御部124は、所定の時間h(たとえば、h(A))が経過するのを待つ(ステップS406:Noのループ)。所定の時間hが経過すると(ステップS406:Yes)、分散量制御部124は、受信した信号光のビットレートが運用ビットレート(ビットレートC)であるか否かを判断する(ステップS407)。
【0042】
ステップS407において、ビットレートが運用ビットレートでない場合(ステップS407:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を一度に変化させる単位変化量Δを小さくする(たとえば、ΔbあるいはΔc)(ステップS408)。そして、ステップS402に戻って処理を続行する。ビットレートが運用ビットレートである場合(ステップS407:Yes)、送信装置110とのデータ通信を開始し(ステップS409)、本発明における一連の処理を終了する。
【0043】
(補償分散量の探索処理の具体例)
つぎに、受信装置120の分散量制御部124が適切な補償分散量を探索する処理の具体例を説明する。図5は、分散量制御部が適切な補償分散量を探索する処理の具体例を説明する説明図である。図5の曲線501(501a〜501c)は、それぞれ、送信装置110から送信される信号光のビットレートがA、B、Cの場合の補償分散量とBERとの関係を示している。
【0044】
符号502は、あらかじめ定められた一定のしきい値を示す。図5から分かるように、送信装置110から送信される信号光のビットレートがA、B、Cと高くなるほど、BERが一定のしきい値502よりも低くなるために必要な補償分散量の幅(分散トレランス)が狭くなる。
【0045】
まず、ビットレートAの場合、分散量制御部124は、補償分散量を0に設定して(ステップa−1)、BERと所定のしきい値502とを比較する。この場合、BERがしきい値502より高いため、分散量制御部124は、可変分散補償器122の補償分散量を単位変化量Δa(ビットレートAに対応)だけ変化させる(ステップa−2)。
【0046】
この場合も、BERがしきい値502よりも高いため、分散量制御部124は、可変分散補償器122の補償分散量を変化幅Δaだけさらに変化させる(ステップa−3)。この場合、BERがしきい値502よりも低くなったため、分散量制御部124は、現在の補償分散量α(Δa×2に相当)を保持し、ビットレートAにおける補償分散量の探索を終了する。
【0047】
つぎに、ビットレートがBに変化した場合、現在の補償分散量αにおけるBERを判断する(ステップb−1)。この場合、BERがしきい値502より高いため、分散量制御部124は、可変分散補償器122の補償分散量を単位変化量Δb(ビットレートBに対応。Δaより小さい)だけ変化させる(ステップb−2)。
【0048】
その後もビットレートAの場合について説明したように、分散量制御部124は、補償分散量を変化幅Δbずつ変化させ、その都度BERがしきい値502より低いか否かを判断する。ここでは、補償分散量αよりもさらにΔb×3だけ変化させたとき(ステップb−4)に初めてBERがしきい値502より低くなるため、分散量制御部124は、現在の補償分散量β(Δa×2+Δb×3に相当)を保持し、ビットレートBにおける補償分散量の探索を終了する。
【0049】
つぎに、ビットレートがCに変化した場合も、ビットレートAの場合またはビットレートBの場合について説明したように、分散量制御部124は、補償分散量を単位変化量Δc(ビットレートCに対応、Δbより小さい)だけ変化させながらその都度BERがしきい値502より低いか否かを判断する(ステップc−1〜ステップc−3)。
【0050】
この場合、補償分散量βよりもさらにΔc×2だけ変化させたとき(ステップc−3)に初めてBERがしきい値502より低くなる。ここで、ビットレートCは運用ビットレートであるため、分散量制御部124は、現在の補償分散量γ(Δa×2+Δb×3+Δc×2に相当)を最終的な補償分散量として設定し、補償分散量の探索を終了する。
【0051】
このように、分散量制御部124は、送信装置110から順次送信されるビットレートの異なる信号光毎に適切な補償分散量を探索する。また、送信装置110から順次送信されるビットレートが変化する毎に、ビットレートが変化する前に適切な補償分散量を探索した結果に基づいて、ビットレートが変化した後の適切な補償分散量を探索することで、効率よく最終的な補償分散量を探索することができる。
【0052】
また、分散量制御部124は、補償分散量を単位変化量Δずつ変化させ、BERが最初にしきい値502よりも低くなった時点の補償分散量を適切な補償分散量として探索することで、一のビットレートの信号光における適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0053】
なお、ここではそれぞれのビットレートにおいてBERが初めてしきい値502よりも低くなった時点で適切な補償分散量の探索を終了したが、分散量制御部124は、この時点で終了せずに、BERがさらに低くなる補償分散量を探索してもよい。たとえば、分散量制御部124は、運用ビットレートにおいて、補償分散量をさらにΔc(あるいはΔcよりもさらに小さい変化単位量Δd)ずつ変化させながらその都度BERを判定することで、BERがさらに低くなる補償分散量を探索することができる。
【0054】
また、ここでは、分散量制御部124は、所定のしきい値502を一定の値に固定したまま適切な補償分散量を探索したが、しきい値502を変化させながら適切な補償分散量を探索してもよい。たとえば、あるビットレートにおける適切な補償分散量の探索に失敗した場合、すなわち、可変分散補償器122の最大補償分散量Xまで補償分散量を変化させたにも拘わらずBERが一度もしきい値502より低くならなかった場合、分散量制御部124は、しきい値502をより高い値に設定して適切な補償分散量の探索を再度おこなってもよい。
【0055】
以上説明した、本発明の実施の形態1にかかる光伝送システム100によれば、最初は運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光によって適切な補償分散量を大まかに探索し、その後運用ビットレートの信号光によって適切な補償分散量を高い精度で探索することができる。このため、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0056】
(実施の形態2)
(実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成)
つぎに、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成について説明する。図6は、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図(その1)である。なお、実施の形態2にかかる光伝送システムの構成のうち、実施の形態1にかかる光伝送システム100と同様の構成については、図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、光伝送システム600は、送信装置610と、受信装置620と、伝送路130と、伝送路630と、から構成されている。送信装置610は、送信機111と、ビットレート制御部112と、合波器113と、監視用受信機611と、から構成されている。監視用受信機611は、後述する受信装置620の監視用送信機621から送信される探索終了信号を伝送路630を介して受信する。また、監視用受信機611は、探索終了信号を受信すると、この探索終了信号をビットレート制御部112に出力する。
【0058】
ビットレート制御部112は、実施の形態1においては所定の時間hが経過する毎に送信機111が送信する信号光のビットレートを変化させていたが、実施の形態2においては監視用受信機611から探索終了信号を入力する毎にこのビットレートを変化させる。
【0059】
受信装置620は、分波器121と、可変分散補償器122と、受信機123と、分散量制御部124と、監視用送信機621と、から構成されている。監視用送信機621は、分散量制御部124があるビットレートでの適切な補償分散量の探索を終了すると、送信装置610に対して探索終了信号を伝送路630を介して送信する。
【0060】
(実施の形態2にかかる光伝送システムの処理の概要)
つぎに、実施の形態2にかかる光伝送システム600の処理の概要について説明する。図7は、実施の形態2にかかる光伝送システムの処理の概要を示すシーケンス図である。図7に示すように、まず、送信装置610が、受信装置620に対して、ビットレートAで信号光を送信する(ステップS701)。つぎに、受信装置620が、補償分散量を単位変化量Δaで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS702)。
【0061】
つぎに、受信装置620が、送信装置610に対して、探索終了信号を送信する(ステップS703)。つぎに、送信装置610が、ビットレートBで信号光を送信する(ステップS704)。つぎに、受信装置620が、補償分散量を単位変化量Δbで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS705)。
【0062】
つぎに、受信装置620が、送信装置610に対して、探索終了信号を送信する(ステップS706)。つぎに、送信装置610が、ビットレートC(運用ビットレート)で信号光を送信する(ステップS707)。つぎに、受信装置620が、補償分散量を単位変化量Δcで変化させながら適切な補償分散量を探索する(ステップS708)。
【0063】
つぎに、受信装置620が、送信装置610に対して、探索終了信号を送信する(ステップS709)。つぎに、送信装置610が、受信装置620とのデータ通信を開始し(ステップS710)、本発明における一連の処理を終了する。このように、受信装置620が、適切な補償分散量を探索した後に送信装置610に対して探索終了信号を送信することで、送信装置610は探索終了信号を受信した後すぐにビットレートを変化させることができる。このように、送信装置610は、受信装置620から探索終了信号を受信する毎に送信する信号光を切り替える。
【0064】
なお、ここでは信号光のビットレートをA、B、Cと変化させる場合について説明したが、ビットレートの変化はこのような3段階のものに限られない。たとえば、ビットレートの変化は、低ビットレート、運用ビットレートの2段階に設定してもよいし、4段階以上に設定してもよい。
【0065】
(実施の形態2にかかる送信装置の処理の手順)
つぎに、実施の形態2にかかる送信装置610の処理の手順について説明する。図8は、実施の形態2にかかる送信装置の処理の手順を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、送信機111が、低ビットレート(たとえば、ビットレートA)で信号光を送信する(ステップS801)。
【0066】
つぎに、ビットレート制御部112が、受信装置620から探索終了信号を受信するまで待つ(ステップS802:Noのループ)。探索終了信号を受信すると(ステップS802:Yes)、ビットレート制御部112は、そのときに送信機111が送信している信号光のビットレートがデータ通信をおこなう際の運用ビットレート(ビットレートC)であるか否かを判断する(ステップS803)。
【0067】
ステップS803において、ビットレートが運用ビットレートでない場合(ステップS803:No)、ビットレート制御部112は送信機111を制御して、そのときのビットレートよりも高いビットレート(たとえば、ビットレートBあるいはC)によって信号光を送信する(ステップS804)。そして、ステップS802に戻って処理を続行する。
【0068】
ステップS803において、ビットレートが運用ビットレートである場合(ステップS803:Yes)、受信装置620とのデータ通信を開始し(ステップS805)、本発明における一連の処理を終了する。
【0069】
(実施の形態2にかかる受信装置の処理の手順)
つぎに、実施の形態2にかかる受信装置620の処理の手順について説明する。図9は、実施の形態2にかかる受信装置の処理の手順を示すフローチャートである。図9に示すように、まず、受信機123が、送信装置610から送信される信号光を受信する(ステップS901)。
【0070】
つぎに、分散量制御部124が、受信した信号光のクロックが抽出されたか否かを判断する(ステップS902)。クロックが抽出されていない場合(ステップS902:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を、信号光に対応した単位変化量Δ(たとえば、Δa)だけ変化させる(ステップS903)。そして、ステップS902に戻って処理を続行する。
【0071】
ステップS902において、クロックが抽出された場合(ステップS902:Yes)、分散量制御部124は、受信した信号光のBERが所定のしきい値502よりも低いか否かを判断する(ステップS904)。BERがしきい値502以上である場合(ステップS904:No)、分散量制御部124は可変分散補償器122を制御して、信号光に対する補償分散量を単位変化量Δ(たとえば、Δa)だけ変化させる(ステップS905)。そして、ステップS904に戻って処理を続行する。
【0072】
ステップS904において、BERがしきい値502より低い場合(ステップS904:Yes)、監視用送信機621が、送信装置610に対して探索終了信号を送信する(ステップS906)。つぎに、分散量制御部124は、受信した信号光のビットレートが運用ビットレート(ビットレートC)であるか否かを判断する(ステップS907)。
【0073】
ステップS907において、ビットレートが運用ビットレートでない場合(ステップS907:No)、分散量制御部124は、信号光に対する補償分散量を一度に変化させる単位変化量Δを小さくする(たとえば、ΔbあるいはΔc)(ステップS908)。そして、ステップS902に戻って処理を続行する。ビットレートが運用ビットレートである場合(ステップS907:Yes)、送信装置610とのデータ通信を開始し(ステップS909)、本発明における一連の処理を終了する。なお、補償分散量の探索処理の具体例については、実施の形態1で説明した通り(図5参照)であるので、ここでは説明を省略する。
【0074】
以上説明した、実施の形態2にかかる光伝送システム600によれば、受信装置620があるビットレートでの適切な補償分散量の探索を終了すると送信装置610に探索終了信号を送信するため、送信装置610はこの探索終了信号を受信した後すぐにビットレートを変化させることができる。このため、送信装置610が信号光のビットレートを変化させるまでの時間を必要最小限にすることができ、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0075】
なお、実施の形態2の説明においては、受信装置620は、送信機111から送信された信号光に対して補償分散量を変化させながらBERを監視することで適切な補償分散量を探索する構成とした。これに対して、送信装置610は監視用送信機をさらに備え、受信装置620はこの監視用送信機から送信される信号光を用いて適切な補償分散量を探索する構成とすることもできる。
【0076】
ここで、この構成を実施の形態2の光伝送システム600で実現した例を説明する。図10は、実施の形態2にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図(その2)である。送信装置610は、実施の形態2の上述した構成に加えて、監視用送信機1001を備える。監視用送信機1001は、ビットレート制御部112の制御によって、伝送路130および伝送路630とは異なる伝送路1002を介して信号光を受信装置620に送信する。
【0077】
ビットレート制御部112は、上述の送信機111に対する制御と同様の制御を監視用送信機1001に対しておこなう。すなわち、ビットレート制御部112は監視用送信機1001を制御して、まず、データ通信をおこなう際の運用ビットレートよりも低いビットレートで信号光を送信する。そして、ビットレート制御部112は、送信する信号光のビットレートを順次上げていき、最終的にビットレートが運用ビットレートとなるように監視用送信機1001を制御する。ビットレート制御部112は、監視用受信機611から探索終了信号を入力する毎にビットレートを変化させる。
【0078】
受信装置620は、実施の形態2の上記構成に加えて、可変分散補償器1003と、監視用受信機1004と、分散量制御部1005と、を備える。可変分散補償器1003と、監視用受信機1004と、分散量制御部1005と、の機能は、それぞれ上述した可変分散補償器122と、受信機123と、分散量制御部124と、の機能と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0079】
すなわち、可変分散補償器1003は、分散量制御部1005の制御によって送信装置610から送信された信号光に対して分散補償をおこなう。分散量制御部1005は、可変分散補償器1003を制御して補償分散量を変化させながら、監視用受信機1004が受信する信号光のBERを監視することによって適切な補償分散量を探索する。また、分散量制御部1005は、あるビットレートにおいて適切な補償分散量を探索すると、監視用送信機621に対して探索終了信号を送信する。ここで、分散量制御部1005は、分散量制御部124と別に構成したが、これらは一体的に構成してもよい。
【0080】
以上説明したように光伝送システム600を構成することによって、送信機111が送信し、データ通信に用いられる信号光(以下、「主信号」という)によってではなく、監視用送信機1001が送信し、光伝送の制御に用いる信号光(以下、「監視用信号」という)によっても適切な補償分散量の探索をおこなうことができる。
【0081】
なお、送信装置610が送信する信号光が低ビットレート(たとえば、ビットレートA)である場合には監視用信号によって分散量制御部1005が適切な補償分散量の探索をおこない、この信号光が所定の高さのビットレート(たとえば、ビットレートBあるいはC)の場合には主信号を用いて分散量制御部124が適切な補償分散量の探索をおこなうように構成してもよい。
【0082】
(実施の形態3)
(実施の形態3にかかる光伝送システムの基本的構成)
つぎに、実施の形態3にかかる光伝送システムの基本的構成について説明する。図11は、実施の形態3にかかる光伝送システムの基本的構成を示すブロック図である。なお、実施の形態3にかかる光伝送システムの構成のうち、実施の形態2にかかる光伝送システム600と同様の構成については、図6と同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
図11に示すように、光伝送システム1100は、伝送装置1と、伝送装置2と、伝送路130と、から構成されている。伝送装置1および伝送装置2は、それぞれ、実施の形態2における送信装置610および受信装置620の構成を備えている。すなわち、伝送装置1および伝送装置2は、それぞれ、送信機111と、ビットレート制御部112と、合波器113と、分波器121と、可変分散補償器122と、受信機123と、分散量制御部124と、監視用受信機611と、監視用送信機621と、を備えている。
【0084】
さらに、伝送装置1および伝送装置2は、それぞれ、合波器1101と、カプラ1102と、分波器1103と、を備える。合波器1101は、複数の送信機111が送信した複数の信号光を合波器113が重ね合わせた信号光(主信号または監視用信号)と、監視用送信機621から出力された探索終了信号と、を重ね合わせる。カプラ1102は、合波器1101によって重ね合わされた信号光の経路を伝送路130方向に切り替える。また、カプラ1102は、他方の伝送装置から伝送路130を介して送信された信号光の経路を分波器1103方向に切り替える。
【0085】
分波器1103は、他方の送信装置から伝送路130およびカプラ1102を介して送信された信号光を主信号と探索終了信号とに分波する。分波された主信号は分波器121に、探索終了信号は監視用受信機611に出力される。また、実施の形態3においては、伝送装置1から信号光を送信する場合と、伝送装置2から信号光を送信する場合とで異なる波長を用いることにより、一の伝送路130による双方向のデータ通信を可能としている。なお、伝送装置1および伝送装置2が信号光の送信および受信をおこなう際の処理は、実施の形態2で説明した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
以上説明した、実施の形態3にかかる光伝送システム1000によれば、一の伝送路によって双方向のデータ通信を可能にしつつ、最初は運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光によって適切な補償分散量を大まかに探索し、その後運用ビットレートの信号光によって適切な補償分散量を高い精度で探索することができる。このため、一の伝送路によって双方向のデータ通信を可能にしつつ、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0087】
なお、上述の各実施の形態において、送信機111は、ビットレート制御部112の制御によって、送信する信号光のビットレートを変化させる構成としたが、実際のビットレートを変化させるのではなく、送信する信号光を制御することでビットレートを擬似的に変化させることも可能である。図12は、送信機がビットレートを擬似的に変化させる場合を説明する説明図である。
【0088】
図12に示すように、送信機111は、たとえば、固定ビットパターンである「111000111000111000」の信号光1201と、「110011001100」の信号光1202と、「101010」の信号光1203と、を運用ビットレートで送信する。この場合、信号光1201の波形は、信号光1203を運用ビットレートの1/3のビットレートで送信した信号光と同様の信号となる。また、信号光1202の波形は、信号光1203を運用ビットレートの1/2のビットレートで送信した信号光と同様の信号となる。
【0089】
したがって、送信機111は、たとえば、運用ビットレートのみを用いて、「111000111000111000」、「110011001100」、「101010」と送信する信号光のパターンを変化させることによって擬似的にビットレートを変化させることができる。この場合、送信する信号光の実際のビットレートを変化させる必要がないため、ビットレート制御部112を省くことも可能となる。
【0090】
このように、送信機111は、運用ビットレートで、同じ値を複数回繰り返すビット信号列と、この値とは異なる値を複数回繰り返すビット信号列と、を交互に送信し、ビット信号列の繰り返し回数を変化させることで、運用ビットレートと異なるビットレートの信号光を擬似的に送信することができる。
【0091】
また、上述の各実施の形態において(ここでは実施の形態1について説明する)、分散量制御部124は、運用ビットレートで最適な補償分散量を探索してデータ通信を開始した後に、受信機123の受信している信号光の受信状態を監視し続けてもよい。そして、光伝送システム100は、送信装置110から送信される信号光のクロックが抽出できなくなり、またはBERがデータ通信中にしきい値502よりも高くなると、一度データ通信を中止し、適切な補償分散量を再度探索する。
【0092】
この場合、光伝送システム100は、ビットレートを再度低いビットレート(たとえば、ビットレートA)に変化させたり、補償分散量が0の状態から探索を始めたりしなくてもよい。たとえば、光伝送システム100は、運用ビットレートのまま、補償分散量を補償分散量β(図5参照)から始めて再度適切な補償分散量を探索してもよい。
【0093】
そして、光伝送システム100は、運用ビットレートにおいて、可変分散補償器122の最大補償分散量Xまで補償分散量を変化させたにも拘わらずBERが一度もしきい値502より低くならなかった場合、ビットレートを低くして(たとえば、ビットレートB)、補償分散量αから始めて再度適切な補償分散量を探索してもよい。
【0094】
また、上述の各実施の形態において、分散量制御部124は、受信機123が受信する信号光のビットレートのそれぞれについて、クロックが抽出され、かつ、BERがしきい値502よりも低くなる補償分散量を探索したが、運用ビットレート以外のビットレートの信号光については、BERがしきい値502よりも低いか否かの判断を省略してもよい。
【0095】
たとえば、分散量制御部124は、運用ビットレート以外のビットレートの信号光については、それぞれクロックが抽出された時点で補償分散量の探索を終了する。一方、分散量制御部124は、運用ビットレートの信号光については、クロックが抽出され、かつ、BERがしきい値502よりも低くなるまで補償分散量を探索する構成としてもよい。
【0096】
以上説明したように、本発明にかかる送信装置、送信方法および光伝送システムによれば、最初は運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光によって適切な補償分散量を大まかに探索し、その後運用ビットレートの信号光によって適切な補償分散量を高い精度で探索することができる。このため、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0097】
また、受信装置が、あるビットレートでの適切な補償分散量の探索を終了すると送信装置に探索終了信号を送信することで、送信装置はこの探索終了信号を受信した後すぐにビットレートを変化させることができる。このため、送信装置が信号光のビットレートを変化させるまでの時間を必要最小限にすることができ、適切な補償分散量を効率的に探索することができる。
【0098】
(付記1)複数のビットレートを送信可能な送信装置からの信号光を受信可能な受信装置であって、
入力信号光に対し、波長分散を補償する分散補償手段と、
前記分散補償手段の出力を光電変換し信号を受信するとともに、前記入力信号光のビットレートを検出する受信手段と、
前記受信手段の信号受信結果および検出されたビットレートに基づき、前記分散補償手段の分散量を制御する分散量制御手段と、
を備え、
前記分散量制御手段は、前記検出されたビットレートに応じた単位変化量Δ毎に前記分散補償手段の分散量を変化させることを特徴とする受信装置。
【0099】
(付記2)データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を受信し、前記分散量制御手段が当該信号光に対する前記分散量を制御した後、前記運用ビットレートの信号光を受信することを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0100】
(付記3)前記分散量制御手段は、前記検出されたビットレートが高いほど小さい単位変化量Δ毎に前記分散量を変化させることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0101】
(付記4)前記分散量制御手段が前記信号光に対する前記分散量を制御する毎に、送信装置に対して探索終了信号を送信する送信手段をさらに備えることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0102】
(付記5)前記信号光の受信状態を監視する監視手段をさらに備え、
前記分散量制御手段は、前記分散量を、前記監視手段によって監視される前記受信状態が所定の受信状態となる分散量とすることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0103】
(付記6)前記分散量制御手段は、前記分散量を、前記信号光のクロックが抽出された状態、あるいは前記信号光の前記クロックが抽出され、前記信号光のエラー状態が所定のエラー状態となる分散量とすることを特徴とする付記5に記載の受信装置。
【0104】
(付記7)前記分散量制御手段は、前記分散量を、前記所定のエラー状態として、前記信号光のビット誤り率が所定のしきい値よりも低い状態となる分散量とすることを特徴とする付記6に記載の受信装置。
【0105】
(付記8)前記分散量制御手段は、前記分散量を適当に制御できなかった場合、前記所定の前記しきい値を上げて前記分散量を再度制御することを特徴とする付記7に記載の受信装置。
【0106】
(付記9)前記分散量制御手段は、前記分散量を、前記単位変化量Δずつ変化させ、前記ビット誤り率が前記所定のしきい値よりも最初に低くなったときの分散量に制御することを特徴とする付記7に記載の受信装置。
【0107】
(付記10)前記運用ビットレートの信号光を受信し、前記分散量制御手段が当該信号光に対する前記分散量を制御した後、前記送信装置とのデータ通信を開始することを特徴とする付記2に記載の受信装置。
【0108】
(付記11)前記分散量制御手段が前記分散量を制御した結果を保持する保持手段をさらに備え、
前記監視手段は、データ通信を開始した後の前記信号光の受信状態を監視し、
前記分散量制御手段は、データ通信を開始した後に前記信号光のクロックの抽出に失敗した場合、または前記ビット誤り率が前記所定のしきい値よりも高くなった場合に、前記保持手段が保持する前記結果に基づいて、前記運用ビットレートの信号光に対する前記分散補償手段の分散量を再度制御することを特徴とする付記2に記載の受信装置。
【0109】
(付記12)受信装置に対して複数のビットレートの信号光を送信可能な送信手段と、
前記送信手段が送信する前記信号光のビットレートを制御するビットレート制御手段と、を備え、
前記ビットレート制御手段は、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を送信し、前記受信装置が当該信号光に対する分散量を制御した後に、前記運用ビットレートの信号光を送信するように前記送信手段を制御することを特徴とする送信装置。
【0110】
(付記13)前記送信手段は、前記運用ビットレートで、同じ値を複数回繰り返すビット信号列と、当該値とは異なる値を複数回繰り返すビット信号列と、を交互に送信し、当該ビット信号列の繰り返し回数を変化させることで、前記運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を擬似的に送信することを特徴とする付記12に記載の送信装置。
【0111】
(付記14)複数のビットレートを送信可能な送信装置からの信号光を受信する受信方法であって、
入力信号光に対し、波長分散を補償する分散補償工程と、
前記分散補償工程による出力を光電変換し信号を受信するとともに、前記入力信号光のビットレートを検出する受信工程と、
前記受信工程による信号受信結果および検出されたビットレートに基づき、前記入力信号光に対する分散量を制御する分散量制御工程とを含み、
前記分散量制御工程では、前記検出されたビットレートに応じた単位変化量Δ毎に前記信号光に対する分散量を変化させることを特徴とする受信方法。
【0112】
(付記15)受信装置に対して、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を送信する第1の送信工程と、
前記第1の送信工程によって送信した前記信号光に対して前記受信装置が分散補償を行った後に、前記運用ビットレートの信号光を送信する第2の送信工程と、
を含むことを特徴とする送信方法。
【符号の説明】
【0113】
100 光伝送システム
110 送信装置
111 送信機
112 ビットレート制御部
120 受信装置
122 可変分散補償器
123 受信機
124 分散量制御部
130 伝送路
611 監視用受信機
621 監視用送信機
1201,1202,1203 信号光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信装置へ信号光を送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信される信号光のビットレートを、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートにし、前記低いビットレートの信号光に基づいて前記受信装置が前記信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、前記信号光のビットレートを前記運用ビットレートにするビットレート制御手段と、
を備え、前記ビットレート制御手段は、前記信号光のビットレートを、前記信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を受信装置へ送信し、
前記低いビットレートの信号光に基づいて前記受信装置が前記信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、前記運用ビットレートの信号光を送信する送信方法であって、
前記信号光のビットレートを、前記信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御することを特徴とする送信方法。
【請求項3】
データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を受信装置へ送信し、前記低いビットレートの信号光に基づいて前記受信装置が前記信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、前記運用ビットレートの信号光を送信する送信方法であって、前記信号光のビットレートを、前記信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御する送信装置と、
前記送信装置から受信した信号光の分散補償をおこなう受信装置であって、前記受信した信号光のビットレートを検出し、検出したビットレートが高いほど小さい単位変化量毎に前記分散補償の分散量を変化させ、前記受信した信号光の受信状態が所定の受信状態となる分散量とする受信装置と、
を含むことを特徴とする光伝送システム。
【請求項1】
受信装置へ信号光を送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信される信号光のビットレートを、データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートにし、前記低いビットレートの信号光に基づいて前記受信装置が前記信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、前記信号光のビットレートを前記運用ビットレートにするビットレート制御手段と、
を備え、前記ビットレート制御手段は、前記信号光のビットレートを、前記信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を受信装置へ送信し、
前記低いビットレートの信号光に基づいて前記受信装置が前記信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、前記運用ビットレートの信号光を送信する送信方法であって、
前記信号光のビットレートを、前記信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御することを特徴とする送信方法。
【請求項3】
データ通信をおこなう場合の運用ビットレートよりも低いビットレートの信号光を受信装置へ送信し、前記低いビットレートの信号光に基づいて前記受信装置が前記信号光に対する分散補償の分散量を制御した後に、前記運用ビットレートの信号光を送信する送信方法であって、前記信号光のビットレートを、前記信号光のビット信号列の繰り返し回数を変化させることで制御する送信装置と、
前記送信装置から受信した信号光の分散補償をおこなう受信装置であって、前記受信した信号光のビットレートを検出し、検出したビットレートが高いほど小さい単位変化量毎に前記分散補償の分散量を変化させ、前記受信した信号光の受信状態が所定の受信状態となる分散量とする受信装置と、
を含むことを特徴とする光伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−217199(P2012−217199A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143946(P2012−143946)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2006−278413(P2006−278413)の分割
【原出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2006−278413(P2006−278413)の分割
【原出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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