説明

送信装置および送信方法

【課題】放送されたコンテンツを携帯機器において利用する場合のチャネルの選択をユーザに意識させないようにする。
【解決手段】ワンセグメント送信機1においては、13〜52Chのうちの1つのチャネルである例えば15Chの信号が高周波信号の送信機によって生成され、送信対象のコンテンツのベースバンド信号に基づいて変調される。また変調後の15Chの信号に周波数変換処理を施すことによって、15Ch以外の、13,14,16〜52Chの各チャネルの信号が生成され、無線局の設置に免許が不要な強度である35μV/m以下の強度の電波を使って送信される。携帯機器2においては、電波の到達範囲内に存在する限り、ワンセグメント放送のどのチャネルを選択している場合であってもコンテンツを受信することが可能になる。本発明は、ワンセグメント放送の電波を送信する機器に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置および送信方法に関し、特に、放送形態での配信に適したコンテンツを携帯機器において受信する場合のチャネルの選択をユーザに意識させないようにした送信装置および送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワンセグメント放送対応の携帯機器が普及してきている。ワンセグメント放送は、UHF帯の470〜710MHzの帯域を13〜52Chの40のチャネルに分け、1つのチャネルの周波数帯域幅である6MHzを13のセグメントに分割し、そのうちの1セグメント分の帯域を使って行われる携帯機器向けの放送である。
【0003】
ワンセグメント放送対応の携帯機器の普及に伴い、そのようなワンセグメント放送対応の携帯機器を持つユーザ向けのサービスを提供するシステムが提案、または実現されている。
【0004】
特許文献1には、地域限定のワンセグメント放送を行うシステムが記載されている。
【0005】
特許文献2には、広いエリアを数キロメートル圏などのエリアに区切り、それぞれのエリアに特化した内容の放送を行うシステムが開示されている。
【0006】
特許文献3には、さらに狭い数百メートル程度のエリアを公営競馬場などに形成し、オッズ情報を配信するシステムが開示されている。
【0007】
このようなワンセグメント放送の技術を使った地域限定の放送・情報サービスは非常に有益な新しいサービスであるが、サービスを受けるためには、ユーザは、まず、受信可能なチャネルのスキャンを行わせるなどして、その地域におけるチャネル設定を行う必要がある。
【0008】
また、ユーザは、サービスの提供が行われているチャネルを選択する操作を行う必要があり、チャネルを選択する操作を行った場合、携帯機器において、選択されたチャネルの電波の受信が開始され、受信された電波によって搬送される情報を取得する。
【0009】
特許文献4には、チャネルの情報と放送内容を対応付けた情報が記述されたリストを携帯機器に格納しておくことによって、チャネル設定のためのスキャンを不要にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−279376号公報
【特許文献2】特開2007−295341号公報
【特許文献3】特開2008−97389号公報
【特許文献4】特開2008−153995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
チャネル設定のためのスキャンが不要であるとしても、特許文献4に記載されている技術によっては、ワンセグメント放送によって提供されるコンテンツを視聴したりして利用するためには、ユーザはチャネルの選択を行う必要がある。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、放送されたコンテンツを携帯機器において利用する場合のチャネルの選択をユーザに意識させないようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の送信装置は、高周波信号を生成する高周波信号生成手段と、高調波成分を有する信号を生成する高調波生成手段と、前記高周波信号と、前記高調波生成手段により生成された前記高調波成分を有する信号を乗算する乗算手段と、前記乗算手段による乗算結果の信号をあらたな高周波信号として送信する送信手段とを備える。
【0014】
前記高調波生成手段には、所定の基本波から所望の高調波成分を有する信号を生成させることができる。
【0015】
前記乗算手段による乗算結果の信号に含まれる所定の周波数帯域の信号を除去、または通過させるフィルタ手段をさらに設けることができる。
【0016】
前記乗算手段による乗算結果の信号の振幅を調整する振幅調整手段をさらに設けることができる。
【0017】
前記高周波信号生成手段を、第1の高周波信号を生成する第1の高周波信号生成手段と、送信対象のコンテンツのベースバンド信号を前記第1の高周波信号生成手段により生成された前記第1の高周波信号に基づいて変調する第1の変調手段と、前記第1の高周波信号の中心周波数と所定の中心周波数の差がある第2の高周波信号を生成する第2の高周波信号生成手段と、送信対象のコンテンツのベースバンド信号を前記第2の高周波信号生成手段により生成された前記第2の高周波信号に基づいて変調する第2の変調手段と、変調後の前記第1の高周波信号と、変調後の前記第2の高周波信号を加算する加算手段とから構成することができる。
【0018】
本発明の送信方法は、高周波信号を生成し、高調波成分を有する信号を生成し、変調後の前記高周波信号と、前記高調波成分を有する信号を乗算し、乗算結果の信号をあらたな高周波信号として送信するステップを含む。
【0019】
本発明の送信装置または送信方法においては、高周波信号が生成され、高調波成分を有する信号が生成され、前記高周波信号と、前記高調波成分を有する信号が乗算され、乗算結果の信号があらたな高周波信号として送信される。
【0020】
「高周波」とは、三百万メガヘルツ以下の周波数の電磁波をいう。
【0021】
また、「高調波」とは、ある周波数成分をもつ波動に対し、その整数倍の高次の周波数成分や周波数のことをいう。「基本波」は、高調波の基本となる元の波動や周波数のことをいう。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、放送されたコンテンツを携帯機器において利用する場合のチャネルの選択をユーザに意識させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るワンセグメント送信機が送信する電波の到達範囲の例を示す図である。
【図2】コンテンツの送信の例を示す図である。
【図3】電波の周波数と強度の関係を示す図である。
【図4】地上デジタル放送の物理チャネルと周波数の関係を示す図である。
【図5】ワンセグメント送信機によるコンテンツの送信の概念を示す図である。
【図6】コンテンツの送信の概念を示す図である。
【図7】ワンセグメント送信機の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7の信号処理部の構成例を示すブロック図である。
【図9】図8の高周波信号発生部の構成例を示すブロック図である。
【図10】高周波信号の時間軸上の波形と周波数スペクトラムの例を示す図である。
【図11】矩形波の時間軸上の波形と周波数スペクトラムの例を示す図である。
【図12】他の矩形波の時間軸上の波形と周波数スペクトラムの例を示す図である。
【図13】ワンセグメント送信機の送信処理について説明するフローチャートである。
【図14】信号処理部の他の構成例を示すブロック図である。
【図15】BPFの例を示す図である。
【図16】BPFを用いたフィルタリングの対象になる信号とフィルタリング後の信号の例を示す図である。
【図17】BEFの例を示す図である。
【図18】BEFを用いたフィルタリングの対象になる信号とフィルタリング後の信号の例を示す図である。
【図19】ワンセグメント送信機の他の送信処理について説明するフローチャートである。
【図20】信号処理部のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【図21】周波数スペクトラムの例を示す図である。
【図22】ワンセグメント送信機のさらに他の送信処理について説明するフローチャートである。
【図23】高周波信号の中心周波数の例を示す図である。
【図24】微弱電波の周波数スペクトラムの例を示す図である。
【図25】外部からの高周波受信信号を高周波信号発生部の機能として用いる例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の一実施形態に係るワンセグメント送信機1が送信する電波の到達範囲の例を示す図である。
【0025】
ワンセグメント送信機1は、ワンセグメント放送で使われる電波を使って、電波の到達範囲であるエリアA内にいる携帯機器2等にコンテンツを送信する機器である。
【0026】
図2に示すように、ワンセグメント送信機1に対しては、送信対象となるビデオコンテンツなどの所定のコンテンツ(情報)が、メモリカードなどの記録媒体を介して、または、LAN(Local Area Network)などのネットワークを介して入力される。ワンセグメント送信機1は、ワンセグメント放送の全てのチャネルの電波を使って同じコンテンツを送信する。携帯機器2においてはコンテンツの再生が行われ、ユーザはそれを視聴したりして利用することが可能になる。
【0027】
ワンセグメント送信機1が出力する電波は、特許文献2,3に示すような数百メートル圏、数キロメートル圏を対象にするような強いものに限らず、無線局の設置に免許を必要としない「微弱な電波」でもよい。
【0028】
ここでいう「微弱な電波」とは、総務省関連法規に規定されている、免許を必要としない「発射する電波が著しく微弱な無線局(以下、微弱無線局)」に規定される範囲での無線設備が出力する電波のことである。微弱無線局を設け、運用することにより、無線局の免許取得などが不要で、放送・情報サービスを早期に提供することができる。
【0029】
以下、適宜、無線局の設置に免許が不要な強度の電波のことを、単に微弱電波という。
【0030】
図3は、電波の周波数と強度の関係を示す図である。
【0031】
図3の横軸は周波数を表し、縦軸は強度を表す。図3に示すように、免許が不要な電波の強さが、その電波を出力する無線局から3m離れた位置における電界強度として周波数に応じて規定されている。
【0032】
例えば、0kHzから322MHz以下の周波数帯域においては、無線局から3m離れた位置での電界強度が常に500μV/m以下であれば免許は不要となる。
【0033】
また、322MHzを超え、10GHz以下の周波数帯域においては、無線局から3m離れた位置での電波の強度が常に35μV/m以下であれば免許は不要となる。ISDB-T仕様の地上デジタル放送規格に基づくワンセグメント放送に使われる電波の周波数はUHF帯の470〜710MHzであるので、それと同じ周波数の電波を使う場合、無線局から3m離れた位置での強度が35μV/m以下であれば免許は不要となる。
【0034】
図4は、地上デジタル放送の物理チャネルと周波数の関係を示す図である。
【0035】
図4に示すように、UHF帯の470〜710MHzの帯域を40の物理チャネルに分け、それぞれの物理チャネルを13〜52Chとして地上デジタル放送が行われている。周波数fu13とfu14間、fu14とfu15間、・・・、fu51とfu52間、といったように、それぞれの物理チャネルの中心周波数の間隔は6MHzである。
【0036】
ISDB-T仕様の地上デジタル放送規格に基づくワンセグメント放送においては、このようにして物理チャネルと周波数の関係が規定されている。ワンセグメント放送は、各物理チャネルを構成する13のセグメントのうちの周波数方向に見て中央にある1つのセグメントを利用して行われる。
【0037】
ワンセグメント送信機1は、送信対象のコンテンツを、13〜52Chの全ての物理チャネルの微弱電波によって送信する。
【0038】
図5は、ワンセグメント送信機1によるコンテンツの送信の概念を示す図である。
【0039】
図5に示すように、ワンセグメント送信機1は、13〜52Chのうちの1つのチャネルである例えば15Chの信号を高周波信号の送信機によって生成し、送信対象のコンテンツのベースバンド信号に基づいて変調する。
【0040】
また、ワンセグメント送信機1は、変調後の15Chの信号に周波数変換処理を施すことによって、15Ch以外の、13,14,16〜52Chの各チャネルの信号を生成し、無線局の設置に免許が不要な強度である35μV/m以下の強度の電波を使って送信する。
【0041】
全てのチャネルを使って同じコンテンツの送信が行われることにより、携帯機器2においては、電波の到達範囲内に存在する限り、ワンセグメント放送のどのチャネルを選択している場合であってもコンテンツを受信することが可能になる。受信されたコンテンツは携帯機器2において再生され、ユーザに提示される。
【0042】
すなわち、携帯機器2のユーザは、物理チャネルの15Chだけでなく、例えば13Chを受信させることによってもコンテンツを利用することができるし、50Chを受信させることによってもコンテンツを利用することができる。
【0043】
これにより、ユーザは、ワンセグメント送信機1が送信するコンテンツを携帯機器2を用いて利用する際、受信可能なチャネルのスキャンを行わせるなどしてチャネル設定を行う必要がない。
【0044】
また、どのチャネルを選択した場合であってもコンテンツを利用することができるため、ユーザはチャネルの選択を意識する必要がない。
【0045】
全てのチャネルの信号を生成する元になる信号として1チャネルの信号を生成する1台の送信機を搭載すればよいため、ワンセグメント送信機1の構成を単純なものにすることが可能になる。図15の15Ch送信機は、中心周波数が485.143MHzの、ワンセグメント放送の1チャネル分の所定の帯域幅の信号を生成する機器である。
【0046】
例えば、図6に示すようにして40台の送信機を搭載することによっても40チャネルの信号を生成することは可能であるが、このような方法での実施は明らかに不経済なものとなり、実現性に乏しい。一方、本発明の実施形態で説明する図5に示した方法では、送信機としては1台だけ用意し、その送信機によって生成された信号を元にして40チャネル分の信号を生成するようにすることにより、ワンセグメント送信機1を小型化することが可能になる。
【0047】
[ワンセグメント送信機1の構成]
図7は、ワンセグメント送信機1の構成例を示すブロック図である。
【0048】
図7に示すように、ワンセグメント送信機1は、コンテンツ再生部11、信号処理部12、送信部13、およびアンテナ14から構成される。
【0049】
コンテンツ再生部11は、記録媒体やネットワークなどを介して入力されたコンテンツを取得し、再生する。コンテンツ再生部11は、所定のフォーマットでエンコードされているコンテンツをデコードし、コンテンツのベースバンド信号を信号処理部12に出力する。
【0050】
信号処理部12は、対象のコンテンツを送信するための、ワンセグメント放送の40チャネル分の信号を生成する。信号処理部12は、生成した信号を送信部13に出力する。
【0051】
送信部13は、信号処理部12から供給された信号を微弱電波によってアンテナ14から送信する。
【0052】
図8は、図7の信号処理部12の構成例を示すブロック図である。
【0053】
図8に示すように、信号処理部12は、高周波信号発生部21、矩形波信号発生部22、およびミキサ部23から構成される。高周波信号発生部21に対しては、コンテンツ再生部11から出力されたベースバンド信号が入力される。
【0054】
高周波信号発生部21は、13〜52Chのうちのいずれかの物理チャネルの周波数を有する高周波信号を生成し、生成した高周波信号に基づいて送信対象のコンテンツのベースバンド信号を変調する。高周波信号発生部21は、変調後の高周波信号をミキサ部23に出力する。高周波信号発生部21が、図5に示す1つの送信機に相当する。
【0055】
矩形波信号発生部22は、物理チャンネルの中心周波数の間隔である6MHzの高調波の成分を有する信号を生成する。矩形波信号発生部22は、そのような信号として例えば基本周波数が6MHzの矩形波を生成し、ミキサ部23に出力する。
【0056】
ミキサ部23は、高周波信号発生部21から供給された変調後の高周波信号と、矩形波信号発生部22により生成された矩形波のアナログ乗算(時間領域での乗算)を行い、乗算結果の信号を送信部13に出力する。
【0057】
高周波信号発生部21により生成された高周波信号の周波数をfMHz、矩形波信号発生部22により生成された矩形波の基本周波数をsMHzとすると、ミキサ部23からの出力は、2つの入力信号の和差成分で表される、f,f±s,f±2s,f±3s,・・・MHzの周波数系列の信号となる。矩形波の基本周波数sは、物理チャネルの中心周波数の間隔である6MHzである。
【0058】
図9は、図8の高周波信号発生部21の構成例を示すブロック図である。
【0059】
図9に示すように、高周波信号発生部21は変調部31と信号発生部32から構成される。
【0060】
変調部31は、コンテンツ再生部11から供給されたベースバンド信号を、信号発生部32から供給された高周波信号に基づいて変調し、変調後の高周波信号をミキサ部23に出力する。
【0061】
信号発生部32は、13〜52Chのうちのいずれかの物理チャネルの周波数を有する高周波信号を生成し、変調部31に出力する。
【0062】
図10は、信号発生部32により生成される高周波信号の波形と周波数スペクトラムの例を示す図である。
【0063】
図10Aに示すように、時間軸上において正弦波として表される高周波信号が信号発生部32により生成される。高周波信号e(t)は下式(1)によって表される。ωはω=2πsで表される。sは、物理チャネルの中心周波数の間隔である6MHzである。
【数1】

【0064】
高周波信号の周波数スペクトラムを図10Bに示す。図10Bに示すように、信号発生部32により生成される高周波信号にはω以外の周波数の成分は含まれない。このような高周波信号に対して変調が施され、変調後の高周波信号がミキサ部32に出力される。
【0065】
図11は、矩形波信号発生部22により生成される矩形波の波形と周波数スペクトラムの例を示す図である。
【0066】
図11Aに示すように、1の値をとる期間を矩形波の1周期の期間で割って得られる比であるデューティ比が50%ではない、所定の比を有する矩形波が矩形波信号発生部22により生成される。図11Aの矩形波のデューティ比は50%以下である。図11Aの矩形波e(t)は下式(2)によって表される。
【数2】

【0067】
矩形波の周波数スペクトラムの例を図11Bに示す。図11Bに示すように、矩形波信号発生部22により生成される矩形波には、偶数次の高調波と奇数次の高調波の成分が含まれる。矩形波に含まれる各周波数成分の強度は周波数が高くにつれて弱くなる。
【0068】
矩形波のフーリエ級数S(ω)は下式(3)によって表される。nは1以上の整数である。
【数3】

【0069】
このように、50%ではない、所定のデューティ比を有する矩形波を生成し、13〜52Chのうちのいずれかの物理チャネルの周波数を有する高周波信号とアナログ乗算を行うことによって、6MHz間隔の各周波数成分を有する信号を生成することが可能になる。基準となる高周波信号の周波数帯域と周波数が離れるにつれて強度は弱くなるが、ミキサ部23による乗算結果の信号には13〜52Chの40チャネル分の周波数成分が含まれる。
【0070】
図12は、τ=πとして、デューティ比を50%にしたときの矩形波の波形と周波数スペクトラムを示す図である。
【0071】
基本周波数s、デューティ比50%の矩形波の波形を図12Aに示す。この矩形波は下式(4)によって表される。
【数4】

【0072】
デューティ比が50%である矩形波の周波数スペクトラムを図12Bに示す。図12Bに示すように、デューティ比が50%である矩形波には、奇数次の高調波の成分は含まれるが、偶数次の高調波の成分は含まれない。仮に、このような矩形波を高周波信号発生部21により生成された高周波信号との乗算に用いた場合、乗算結果の信号は、13〜52Chのうちの1チャネルおきの物理チャネルの成分しか含んでいない信号になる。デューティ比が50%である矩形波のフーリエ級数S(ω)を下式(5)に示す。
【数5】

【0073】
[ワンセグメント送信機1の動作]
ここで、図13のフローチャートを参照して、以上のような構成を有するワンセグメント送信機1の処理について説明する。
【0074】
この処理は、例えば、送信対象とするコンテンツがワンセグメント送信機1に入力され、コンテンツの送信を開始することが指示されたときに開始される。
【0075】
ステップS1において、コンテンツ再生部11は送信対象のコンテンツを再生する。
【0076】
ステップS2において、信号処理部12の信号発生部32(図9)は、13〜52Chのうちのいずれかの物理チャネルの周波数を有する高周波信号を生成する。
【0077】
ステップS3において、変調部31は、送信対象のコンテンツのベースバンド信号を高周波信号に基づいて変調する。
【0078】
ステップS4において、矩形波信号発生部22は、50%ではない所定のデューティ比を有する矩形波を生成する。
【0079】
ステップS5において、ミキサ部23は、変調後の高周波信号と、矩形波のアナログ乗算を行う。
【0080】
ステップS6において、送信部13は、乗算結果の信号を微弱電波によってアンテナ14から送信する。コンテンツの送信が行われている間、以上の処理が繰り返し実行される。コンテンツの送信を終了することが指示されたとき、処理は終了される。
【0081】
微弱電波を受信した携帯機器2においては、そのとき受信しているチャネルのRF信号の復調が行われ、ベースバンド信号が取得される。また、ベースバンド信号に基づいてコンテンツの映像をLCD(Liquid Crystal Display)などよりなる表示部に表示させたり、コンテンツの音声をスピーカから出力させたりすることが行われる。
【0082】
以上の処理により、携帯機器2のユーザはチャネルの選択を意識することなく、ワンセグメント放送のいずれかのチャネルを受信するようにしておくだけで、ワンセグメント送信機1から送信されたコンテンツを利用することができる。
【0083】
なお、図13は、ワンセグメント送信機1の処理を手順を追って説明したフロー図であり、実際の放送・情報配信の形態としてのサービスでは、常に、コンテンツの再生以降の一連の処理が行われ、コンテンツが送信されている。
【0084】
サービス提供に用いられる電波の強度は無線局の設置に免許が不要な強度であるため、ワンセグメント送信機1の管理者は、ワンセグメント放送を使ったコンテンツの提供サービスを容易に実現することが可能になる。
【0085】
ワンセグメント送信機1を使用したコンテンツの提供サービスは、例えば半径数メートルから数十メートル以下の空間である飲食店などの店舗内全体、あるいは、それぞれのテーブルや商品展示コーナーなどの一区画を対象として行われる。
【0086】
対象とするサービス区域としては、映画館、列車などの空間内全体や、それらの各座席を対象にして行われるようにしてもよいし、美術館、博物館のフロア全体や、それぞれの展示物周辺などの限定された区域を対象として行われるようにしてもよい。
【0087】
また、ワンセグメント送信機1を、ワンセグメント放送対応機器の試験のために用いることも可能である。例えばワンセグメント放送の受信機が正常に動作しているか否かを、受信機に実際に電波を受信させて検証する場合、ワンセグメント放送の送信機としてワンセグメント送信機1を用いることによりそれを容易に行うことが可能になる。
【0088】
このようなサービスは、無線局の免許の取得が不要な微弱電波を使うことにより、図1に示すエリアAはそのような限定されたエリアでの実施のみならず、特許文献2,3に示されるような無線局免許取得を前提とした広いエリアでのサービスにも適用可能である。
【0089】
<第2の実施の形態>
[ワンセグメント送信機1の構成]
図14は、信号処理部12の他の構成例を示すブロック図である。
【0090】
図14において、図8に示す構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。図14に示す信号処理部12の構成は、フィルタ/振幅調整部41が追加して設けられている点で図8に示す構成と異なる。
【0091】
フィルタ/振幅調整部41は、ミキサ部23による乗算結果の信号に対してフィルタリングを施す。
【0092】
図15は、フィルタ/振幅調整部41により用いられるBPF(Band Pass Filter)の例を示す図である。
【0093】
図15のBPFは、中心周波数f、帯域幅2sのフィルタであり、周波数f−sからf+sの帯域の信号を通過させる。図16Aに示すような周波数スペクトラムによって表される信号を対象として図15に示すBPFを用いてフィルタリングを施すことによって、図16Bに示すように周波数f−sからf+sの帯域に含まれる信号だけを通過させることが可能になる。
【0094】
図16Aは、フィルタ/振幅調整部41に対する入力信号の周波数スペクトラムを表し、図16Bは、フィルタ/振幅調整部41からの出力信号の周波数スペクトラムを表す。図16Bの実線矢印はフィルタを通過する信号の周波数スペクトラムを表し、点線矢印はフィルタによって通過が制限される信号の周波数スペクトラムを表す。
【0095】
図17は、フィルタ/振幅調整部41により用いられるBEF(Band Elimination Filter)の例を示す図である。
【0096】
図17のBEFは、中心周波数f、帯域幅2sのフィルタであり、周波数f−sからf+sの帯域の信号を除去する。図18Aに示すような周波数スペクトラムによって表される信号を対象として図17に示すBEFを用いてフィルタリングを施すことによって、図18Bに示すように周波数f−sからf+sの帯域の信号を除去し、それ以外の信号を通過させることが可能になる。
【0097】
図18Aは、フィルタ/振幅調整部41に対する入力信号の周波数スペクトラムを表し、図18Bは、フィルタ/振幅調整部41からの出力信号の周波数スペクトラムを表す。図18Bの実線矢印はフィルタを通過する信号の周波数スペクトラムを表し、点線矢印はフィルタによって除去される信号の周波数スペクトラムを表す。
【0098】
フィルタ/振幅調整部41においては、このようなBPFを用いて、またはBEFを用いてフィルタリングが行われる。
【0099】
BPFを用いてフィルタリングを行うことにより、連続するチャネルの周波数系列をコンテンツの搬送波信号として利用することが可能になる。
【0100】
また、BEFを用いてフィルタリングを行うことにより、既存のワンセグメント放送で使用されている周波数帯域は使用せず、空いている周波数帯域のみに限定した周波数系列をコンテンツの搬送波信号として利用することが可能になる。
【0101】
13〜52Chの各物理チャネルは放送局などに割り当てられている。たとえ半径数メートルといった狭い範囲を対象にした放送であっても、自分に割り当てられているチャネルの電波をワンセグメント送信機1が出力することを許可しない放送局が現れることも想定されるため、そのような放送局が使用しているチャネルの電波を出力しないようにする必要がある。
【0102】
電波を出力することを許可しない放送局に割り当てられているチャネルの信号の通過をBPFを用いて制限したり、その信号をBEFを用いて除去したりすることにより、放送局の要望に対応することも可能になる。
【0103】
また、フィルタ/振幅調整部41は、フィルタリングが適宜施された乗算結果の信号の振幅を調整する。
【0104】
上述したように、ワンセグメント送信機1が出力する電波の強度を無線局の設置に免許が不要な強度である微弱電波の範囲に設定する場合、フィルタ/振幅調整部41は、ワンセグメント送信機1からの出力電波の強度が電波法などの関連法規に定められる制限を満たすものになるように振幅の調整を行う。
【0105】
また、微弱電波での運用でなく無線局の免許の取得を前提とした場合は、そこで規定される電波出力になるように振幅が設定される。
【0106】
また、図11Bを参照して説明したように、矩形波信号発生部22により生成される矩形波に含まれる各周波数成分の強度は周波数が高くなるにつれて弱くなる。このような矩形波と高周波信号の乗算結果の信号も、周波数帯域毎にその成分の強度を見た場合、周波数が高くなるにつれて弱くなり、振幅も小さくなる。
【0107】
例えばフィルタ/振幅調整部41は、低い周波数帯域の信号の振幅と、高い周波数帯域の信号の振幅がほぼ一定になるように振幅を調整する。
【0108】
フィルタ/振幅調整部41を構成する回路は、以上のようなフィルタリングと振幅調整処理をアナログ方式で行うアナログ回路によって構成されるようにしてもよいし、デジタル方式で行うデジタル回路によって構成されるようにしてもよい。また、アナログ回路とデジタル回路を混在させた回路によって構成されるようにしてもよい。
【0109】
さらに、フィルタ/振幅調整部41を構成する図15や図17のBPFやBEFは、その一例を示したものであり、複数の通過帯域や複数の阻止域の組み合わせを実現するよう、複数のLPF(Low Pass Filter)や複数のHPF(High Pass Filter)の組みあわせ回路で実現してもよい。
【0110】
[ワンセグメント送信機1の動作]
図19のフローチャートを参照して、図14に示す構成の信号処理部12を有するワンセグメント送信機1の処理について説明する。
【0111】
図19の処理は、フィルタリングと振幅調整の処理が追加されている点を除いて図13を参照して説明した処理と同様の処理である。
【0112】
ステップS11において、コンテンツ再生部11は送信対象のコンテンツを再生する。
【0113】
ステップS12において、信号処理部12の信号発生部32は高周波信号を生成する。
【0114】
ステップS13において、変調部31は、送信対象のコンテンツのベースバンド信号を高周波信号に基づいて変調する。
【0115】
ステップS14において、矩形波信号発生部22は、50%ではない所定のデューティ比を有する矩形波を生成する。
【0116】
ステップS15において、ミキサ部23は、変調後の高周波信号と、矩形波のアナログ乗算を行う。
【0117】
ステップS16において、フィルタ/振幅調整部41は、ミキサ部23による乗算結果の信号に対して、上述したようにしてBPFを用いて、またはBEFを用いてフィルタリングを施す。
【0118】
ステップS17において、フィルタ/振幅調整部41は、フィルタリングを施して得られた信号の振幅を調整する。
【0119】
ステップS18において、送信部13は、振幅調整後の信号を微弱電波によってアンテナ14から送信し、処理を終了させる。
【0120】
<第3の実施の形態>
[ワンセグメント送信機1の構成]
図20は、信号処理部12のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【0121】
図20に示す信号処理部12の構成は、第1の高周波信号発生手段としての高周波信号発生部51と、第2の高周波信号発生手段としての高周波信号発生部52が設けられ、それらの出力側に混合部53が設けられる点が図14に示す信号処理部12の構成と異なる。矩形波との乗算に用いる高周波信号を生成するという点では、高周波信号発生部51、高周波信号発生部52、および混合部53をまとめた構成が、図14等に示す高周波信号発生部21に対応する。
【0122】
高周波信号発生部51と高周波信号発生部52に対しては、送信対象のコンテンツが再生されることによって得られたベースバンド信号が入力される。コンテンツ再生部11から入力されるベースバンド信号は、同じコンテンツを再生して得られた信号であってもよいし、異なるコンテンツを再生して得られたコンテンツであってもよい。内容は同じであるが、日本語の音声のものと英語の音声のものといったように言語の異なるコンテンツが再生され、例えば、日本語の音声のコンテンツを再生して得られたベースバンド信号が高周波信号発生部51に入力され、英語の音声のコンテンツを再生して得られたベースバンド信号が高周波信号発生部52に入力されるようにしてもよい。
【0123】
高周波信号発生部51は、13〜52Chのうちのいずれかの物理チャネルの周波数を有する高周波信号を生成し、生成した高周波信号に基づいて、入力されたベースバンド信号を変調する。高周波信号発生部51も、図9に示す構成と同じ構成を有する。高周波信号発生部51は、変調後の高周波信号を混合部53に出力する。
【0124】
高周波信号発生部52は、高周波信号発生部51により生成される高周波信号の中心周波数と6MHzの中心周波数の差がある高周波信号を生成し、生成した高周波信号に基づいて、入力されたベースバンド信号を変調する。高周波信号発生部52も、図9に示す構成と同じ構成を有する。
【0125】
高周波信号発生部51により生成される高周波信号の中心周波数をf、高周波信号発生部52により生成される高周波信号の中心周波数をfとすると、f−f=sとして表される。上述したように、sは、物理チャネルの中心周波数の間隔である6MHzである。高周波信号発生部51と高周波信号発生部52においては、物理チャネルの番号が隣同士のチャネルの高周波信号が生成されることになる。
【0126】
混合部53は、高周波信号発生部51から供給された変調後の高周波信号と、高周波信号発生部52から供給された変調後の高周波信号を加算し、加算結果の高周波信号をミキサ部55に出力する。混合部53から出力される高周波信号の周波数スペクトラムの例を図21Aに示す。図21Aに示す実線矢印は高周波信号発生部51により生成される高周波信号を表し、点線矢印は高周波信号発生部52により生成される高周波信号を表す。
【0127】
この例においては、高周波信号発生部52により生成される高周波信号の中心周波数の方が、高周波信号発生部51により生成される高周波信号の中心周波数よりsMHzだけ高いものとしたが、中心周波数の間隔がsMHzであれば、高周波信号発生部51により生成される高周波信号の周波数の方が、高周波信号発生部52により生成される高周波信号の周波数より高くなるようにしてもよい。
【0128】
矩形波信号発生部54は、50%のデューティ比を有する矩形波を生成し、ミキサ部55に出力する。50%のデューティ比を有する矩形波を図21Bに示す。矩形波信号発生部54により生成される矩形波の基本周波数もsMHz(6MHz)である。
【0129】
ミキサ部55は、混合部53から供給された加算結果の高周波信号と、矩形波信号発生部54により生成された50%のデューティ比を有する矩形波のアナログ乗算を行う。
【0130】
図21Cは、ミキサ部55による乗算結果の信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【0131】
図21Cに示すように、ミキサ部55による乗算結果の信号は、周波数fを中心として、f,f±s,f±s,f±3s,f±3s,・・・MHzの周波数系列の信号となる。
【0132】
このように、50%のデューティ比の矩形波を用いた場合であっても、矩形波との乗算に用いる信号として、中心周波数の間隔が6MHzの2つの高周波信号の和信号を用いることにより、13〜52Chの全てのチャネルの成分を含む信号を生成することが可能になる。
【0133】
図20の説明に戻り、フィルタ/振幅調整部56は、図14のフィルタ/振幅調整部41と同様に、ミキサ部55による乗算結果の信号に対してフィルタリングと振幅調整処理を施し、それらの処理を施して得られた信号を出力する。
【0134】
[ワンセグメント送信機1の動作]
図22のフローチャートを参照して、図20に示す構成の信号処理部12を有するワンセグメント送信機1の処理について説明する。
【0135】
ステップS21において、コンテンツ再生部11は送信対象のコンテンツを再生する。
【0136】
ステップS22において、信号処理部12の高周波信号発生部51は中心周波数がfの高周波信号を生成し、高周波信号発生部52は中心周波数がfの高周波信号を生成する。
【0137】
ステップS23において、高周波信号発生部51は、中心周波数がfの高周波信号に基づいて、送信対象のコンテンツのベースバンド信号を変調する。また、高周波信号発生部52は、中心周波数がfの高周波信号に基づいて、送信対象のコンテンツのベースバンド信号を変調する。
【0138】
ステップS24において、混合部53は、高周波信号発生部51から供給された変調後の高周波信号と、高周波信号発生部52から供給された変調後の高周波信号を加算する。
【0139】
ステップS25において、矩形波信号発生部54は50%のデューティ比を有する矩形波を生成する。
【0140】
ステップS26において、ミキサ部55は、混合部53による加算結果の高周波信号と、矩形波のアナログ乗算を行う。
【0141】
ステップS27において、フィルタ/振幅調整部56は、ミキサ部55による乗算結果の信号に対して、BPFを用いて、またはBEFを用いてフィルタリングを施す。
【0142】
ステップS28において、フィルタ/振幅調整部56は、フィルタリングを施して得られた信号の振幅を調整する。
【0143】
ステップS29において、送信部13は、振幅調整後の信号を微弱電波によってアンテナ14から送信し、処理を終了させる。
【0144】
以上の処理によっても、携帯機器2を使ってコンテンツを利用するユーザに、チャネルの選択を意識させないで済む。
【0145】
例えば、高周波信号発生部51に入力されたベースバンド信号と高周波信号発生部52に入力されたベースバンド信号が同じ信号である場合、ユーザは、どのチャネルを選択した場合であっても同じコンテンツを利用することができることになる。
【0146】
また、高周波信号発生部51に入力されたベースバンド信号と高周波信号発生部52に入力されたベースバンド信号が音声の言語の異なるコンテンツを再生して得られた信号である場合、ユーザは、奇数のチャネルを選択したときには日本語のコンテンツを利用することができ、偶数のチャネルを選択したときには英語のコンテンツを利用することができるといったように、1チャネルおきに同じコンテンツを利用することができることになる。
【0147】
以上においては、周波数f,fの2つの高周波信号が生成され、それらが混合された後、矩形波との乗算が行われるものとしたが、生成する高周波信号は2つの信号に限られない。すなわち、中心周波数の間隔が所定の周波数を有する3つ以上の信号が生成され、混合された後、矩形波との乗算が行われるようにしてもよい。
【0148】
[変形例]
以上においては、ISDB-T仕様の地上デジタル放送規格に基づくワンセグメント放送を実施対象として、チャンネルの選択をユーザに意識させない送信装置、送信方法を示してきた。また、複数のチャネルの信号を生成する元になる高周波信号として、ワンセグメント放送の13〜52Chのうちのいずれかの物理チャネルの中心周波数を有する信号がワンセグメント送信機1により生成されるものとしたが、13〜52Chの周波数帯域から外れた周波数を有する信号が生成されるようにしてもよい。
【0149】
例えば、図23に示すように、13Chの中心周波数である473.143MHzより6MHzだけ周波数が低い467.143MHzの信号が生成されるようにすることによっても、この信号を元にして、ワンセグメント放送の複数のチャネルの信号を生成することが可能になる。同様に、52Chの中心周波数である707.143MHzより6MHzだけ周波数が高い713.143MHzの信号が生成されるようにしてもよい。
【0150】
すなわち、ワンセグメント放送のいずれかの物理チャネルの中心周波数と6MHzの整数倍の周波数だけ差がある周波数を中心周波数とする信号であれば、どの周波数を有する信号が生成されるようにしてもよい。
【0151】
また、ワンセグメント放送のいずれかの物理チャネルの中心周波数を基準として、例えば、6MHzを14分割した428kHzの整数倍の周波数だけ差がある周波数を中心周波数とする信号が生成されるようにしてもよい。
【0152】
以上においては、図20の高周波信号発生部51により生成される高周波信号の中心周波数fと、高周波信号発生部52により生成される高周波信号の中心周波数fの差が6MHzであるとしたが、中心周波数fとfの間隔は、6MHzを14分割した428kHz(1セグメント)であってもよい。
【0153】
第1の実施の形態や第2の実施の形態では、矩形波のデューティ比が50%以外であるとしたが、この50%以外のデューティ比を有する矩形波を生成する具体的な回路構成は多数存在する。例えば、精度が保障された正弦波の振幅を指定した電圧値で比較するコンパレータの出力を使って、任意のデューティ比の矩形波を生成する回路構成を採用することも可能である。
【0154】
高周波信号との乗算に用いる信号として矩形波を生成するものとしたが、高周波信号との乗算に用いる信号は時間領域での矩形波に限定されるものではなく、例えば、時間領域で三角形の波形で観測される三角波、鋸歯状の波形で観測される鋸波、台形の波形が観測される台形波など、所望する周波数領域において十分な高調波成分を発生させることが可能で、安定的、かつ効率的に信号生成することが可能な時間領域の波形であれば、適切な方法で生成すればよい。
【0155】
アナログ乗算を行うミキサ部を実現する回路構成には様々なものがある。例えば、4本のダイオードを使ったDBMをはじめ、2本のダイオードで実現するSBMなど、変換利得が得られないが線形性の良い特性が得られるパッシブミキサ回路で実現しても良いし、トランジスタやFET,専用ICなどを使い変換利得が得られるアクティブミキサ回路で実現しても良い。
【0156】
複数のチャネルの信号を微弱電波によって送信するものとしたが、この微弱電波の周波数スペクトラムは、図24に上向きの矢印として示すように、無線局の設置に免許が必要になる強度以下の強度を有するものになる。
【0157】
以上においては、ISDB-T仕様の地上デジタル放送規格に基づくワンセグメント放送の各物理チャネルの電波を出力するものとしたが、無線局の設置に免許が必要になる強度以下の強度の電波であれば、ワンセグメント放送で使われる帯域以外の周波数の電波を出力するようにしてもよい。
【0158】
例えば、AMラジオ放送であれば 9kHz間隔、FMラジオ放送であれば100kHz間隔というように、それぞれの通信放送メディアにおいて定められているチャネル間隔に応じた9kHzまたは100kHzの周波数系列を有する複数のチャネルの信号を電波によって送信したり、アナログテレビジョン放送の場合は、6MHz間隔となるよう生成した周波数系列を有する複数のチャネルの信号を電波によって送信したりするようにしてもよい。すなわち、一定の周波数間隔でチャネルの間隔が規定され、それぞれのチャネルを使って情報を伝送する各種の放送に本発明は適用可能である。
【0159】
AM/FMラジオ放送のあるチャネルの中心周波数を有する信号を元にして生成した複数のチャネルの信号を電波によって送信するとした場合、AMチューナ、あるいはFMチューナを搭載した機器のユーザは、チャネルの選択を意識することなく、伝送される音声を聞くことができる。
【0160】
また、アナログテレビジョン放送のあるチャネルの中心周波数を有する信号を元にして生成した複数のチャネルの信号を電波によって送信するとした場合、アナログテレビジョン放送チューナを搭載した機器のユーザは、チャネルの選択を意識することなく、伝送される番組を視聴することができる。
【0161】
本発明の実施例では、サービス対象のコンテンツをベースバンド信号から扱い高周波信号発生部で所定の高周波信号として扱う例を示したが、図25に示すように、空間波や同軸ケーブルを伝った高周波信号を入力として、高周波受信部61で所望の周波数と振幅に調整したのち、ミキサ部23に入力することも可能である。
【0162】
図25に示す方式により、特定のチャンネルの中継をすべてのチャンネルで実施することが可能となり、ユーザにチャネル合わせを意識させないサービスが実施できる。
【0163】
本発明の実施例では、電波による出力を提示したが、空間を伝搬する電波でなくとも、例えばツイストケーブル、同軸ケーブル、導波管、漏洩同軸ケーブルや表面波伝送線路などを使った高周波信号の伝送、伝播にも適用できる。
【0164】
本発明の実施例では、無線局の免許の取得が不要な微弱電波を例に説明を行っているが、無線局の免許の取得の有無と本発明の技術は独立した事柄であり、免許取得が必要な無線局にもついても技術的には本発明が適用可能である。
【0165】
本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0166】
1 ワンセグメント送信機, 2 携帯機器, 11 コンテンツ再生部, 12 信号処理部, 13 送信部, 14 アンテナ, 21 高周波信号発生部, 22 矩形波信号発生部, 23 ミキサ部, 31 変調部, 32 信号発生部, 41 フィルタ/振幅調整部, 51,52 高周波信号発生部, 53 混合部, 54 矩形波信号発生部, 55 ミキサ部, 56 フィルタ/振幅調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を生成する高周波信号生成手段と、
高調波成分を有する信号を生成する高調波生成手段と、
前記高周波信号と、前記高調波生成手段により生成された前記高調波成分を有する信号を乗算する乗算手段と、
前記乗算手段による乗算結果の信号をあらたな高周波信号として送信する送信手段と
を備える送信装置。
【請求項2】
前記高調波生成手段は所定の基本波から所望の高調波成分を有する信号を生成する
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記乗算手段による乗算結果の信号に含まれる所定の周波数帯域の信号を除去、または通過させるフィルタ手段をさらに備える
請求項1または2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記乗算手段による乗算結果の信号の振幅を調整する振幅調整手段をさらに備える
請求項1,2または3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記高周波信号生成手段は、
第1の高周波信号を生成する第1の高周波信号生成手段と、
送信対象のコンテンツのベースバンド信号を前記第1の高周波信号生成手段により生成された前記第1の高周波信号に基づいて変調する第1の変調手段と、
前記第1の高周波信号の中心周波数と所定の中心周波数の差がある第2の高周波信号を生成する第2の高周波信号生成手段と、
送信対象のコンテンツのベースバンド信号を前記第2の高周波信号生成手段により生成された前記第2の高周波信号に基づいて変調する第2の変調手段と、
変調後の前記第1の高周波信号と、変調後の前記第2の高周波信号を加算する加算手段と
を備える請求項1乃至4のいずれかに記載の送信装置。
【請求項6】
高周波信号を生成し、
高調波成分を有する信号を生成し、
変調後の前記高周波信号と、前記高調波成分を有する信号を乗算し、
乗算結果の信号をあらたな高周波信号として送信する
ステップを含む送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−212905(P2010−212905A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55612(P2009−55612)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【特許番号】特許第4347411号(P4347411)
【特許公報発行日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(307022424)ソフトバンクテレコム株式会社 (42)
【Fターム(参考)】