説明

送流装置およびそれを用いた冷却装置

【課題】 冷却対象物に近接して配置しても冷却効果が高い冷却装置およびそれを実現する送流装置を提供する。
【解決手段】 ダイアフラムによって少なくとも一部が構成された壁部11およびそれと対向する壁部12を含む壁で囲まれた空間14を有する筐体10と、壁部12を貫通する貫通穴15を含んで構成された、空間14と外部とを接続し、内部を通過して空間14から流出する流体が、壁部12の外側の壁面に平行な第1方向側へ向かって流れるように形成された第1流路31と、内部を通過した流体が、第1流路31の貫通穴15に対して空間14と反対側に供給される第2流路32と、第1方向側へ向かって流れる流体と接触する位置に、壁部12と間隔を開けて配置された可動部材28とを備える送流装置およびそれを用いた冷却装置とする。冷却対象物に近接して配置しても冷却効果が高い冷却装置およびそれを実現する送流装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送流装置およびそれを用いた冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1の壁がダイアフラムで構成されるとともに、ダイアフラムと対向する第2の壁に壁面に垂直に第1の貫通穴が形成された筐体と、第2の壁との間に第2の壁に平行に流体が流れる複数の流路を形成する第3の壁と、第3の壁の第1の貫通穴と対向する位置に壁面に垂直に形成された第2の貫通穴と、ダイアフラムに取り付けた圧電素子とを備える送流装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。この送流装置によれば、圧電素子を駆動させることによってダイアフラムを振動させることにより、第2の貫通穴から第2および第3の壁の壁面に垂直に流体を放出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−97393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にて提案された従来の送流装置は、送流装置の表面(第3の壁の外側の壁面)に垂直に流体が放出されることから、例えば、送流装置から放出される流体によって冷却対象物を冷却するような場合には、送流装置と冷却対象物との間隔を小さくすると、風量が少なくなって冷却効果が小さくなるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、冷却対象物に近接して配置したときの冷却効果の低下が低減された冷却装置およびその冷却装置に用いることが可能な送流効率の高い送流装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の送流装置は、ダイアフラムによって少なくとも一部が構成された第1壁部および該第1壁部と対向する第2壁部を含む壁で囲まれた第1空間を有する筐体と、前記ダイアフラムと対向する位置に前記第2壁部を貫通するように形成された貫通穴を少なくとも含んで構成され、該貫通穴を通過して前記第1空間から流出する流体が、前記第2壁部の外側の壁面に平行な第1方向側へ向かって流れるように形成された第1流路と、内部を通過する流体を、前記第1流路の前記貫通穴に対して前記第1空間と反対側に導く少なくとも一本の第2流路と、前記貫通穴よりも前記第1方向側において該第1方向側へ向かって流れる流体と接触する位置に、前記第2壁部と間隔を開けて配置された可動部材とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の送流装置は、前記第1の送流装置において、前記ダイアフラムが振動する周波数と前記可動部材の固有振動数とが略等しいことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の送流装置は、前記第1の送流装置において、前記第2流路を通過した流体が、前記第1方向と反対側から前記第1流路に供給されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第1の冷却装置は、前記第1の送流装置と、前記貫通穴よりも前記第1方向側において該第1方向側へ向かって流れる流体と接触するように配置された、冷却対象物と
を少なくとも有する冷却装置であって、前記可動部材が前記冷却対象物と間隔を開けて配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第2の冷却装置は、前記第1の冷却装置において、前記第2流路の少なくとも一部が前記冷却対象物によって形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
なお、第1方向側へ向かって流れるとは、第1方向の成分を含む方向へ流れることを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の送流装置によれば、流体の流れを効率良く作り出すことが可能な送流装置を得ることができる。
【0013】
本発明の冷却装置によれば、冷却対象物に近接して配置したときの冷却効果の低下が低減された冷却装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の送流装置の蓋部材および可動部材を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示す送流装置の蓋部材および可動部材を備えた状態のA−A’線断面図である。
【図3】図1に示す送流装置の蓋部材および可動部材を備えた状態のB−B’線断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の第2の例の送流装置の蓋部材および可動部材を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。
【図5】図4に示す送流装置の蓋部材および可動部材を備えた状態のD−D’線断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の第3の例の送流装置の蓋部材および可動部材を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。
【図7】図6に示す送流装置の蓋部材および可動部材を備えた状態のE−E’線断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の第4の例の冷却装置を模式的に示す平面図である。
【図9】図8に示す冷却装置のF−F’線断面図である。
【図10】本発明の実施の形態の第5の例の冷却装置を模式的に示す平面図である。
【図11】図10に示す冷却装置のG−G’線断面図である。
【図12】本発明の実施の形態の第6の例の冷却装置を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の送流装置を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施の形態の第1の例)
図1は、本発明の実施の形態の第1の例の送流装置の蓋部材27および可動部材28を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。図2は、図1に示す送流装置の蓋部材27および可動部材28を備えた状態のA−A’線断面図である。図3は、図1に示す送流装置の蓋部材27および可動部材28を備えた状態のB−B’線断面図である。
【0016】
本例の送流装置は、図1〜図3に示すように、筐体10と、保護部材17と、振動部材16と、仕切り部材21〜25と、蓋部材27と、可動部材28と、第1流路31と、第2流路32と、支持部材40,41とを備えている。
【0017】
筐体10は、ダイアフラムで構成された壁部11と、壁部11と対向する壁部12と、
壁部11,12の間に配置された枠状の壁部13とで構成されている。そして、筐体10は、壁部11〜13で構成された壁で囲まれた空間14を有している。
【0018】
また、壁部12は、ダイアフラム(壁部11)と対向する位置、さらに詳細には、ダイアフラムの中央と対向する位置に、壁部12を貫通するように形成された貫通穴15を備えている。また、貫通穴15は、壁部12の外側(空間14と反対側)の壁面に垂直に空間14から外側へ向かう第2方向(図の+z方向)から、壁部12の外側(空間14と反対側)の壁面に平行な第1方向(図の+y方向)へ向かって傾斜した、第3方向(図の+c方向)に壁部12を貫通するように形成されている。そして、この貫通穴15によって、空間14と外部とを接続する第1流路31が構成されている。
【0019】
このように、第1流路31は、第1方向(図の+y方向)の成分を有する第3方向(図の+c方向)へ向けて形成されている。これにより、第1流路31を通過して空間14から流出する流体は、第3方向(図の+c方向)へ向けて流出する。すなわち、第1流路31を通過して空間14から流出する流体は、第1方向(図の+y方向)と反対側ではなく、第1方向(図の+y方向)側へ向かって流れる。
【0020】
ダイアフラム(壁部11)には、振動部材16が取り付けられており、振動部材16に電気信号を加えることによって振動部材16が振動し、それによってダイアフラムが上下方向(図のz軸方向)に振動するようになっている。なお、振動部材16は、両主面に電極が配置された板状の圧電体によって構成されている。また、筐体10の下面の壁部11の周囲には枠状の保護部材17が配置されており、保護部材17によって、ダイアフラム(壁部11)および振動部材16の振動空間を確保しつつ、ダイアフラム(壁部11)および振動部材16を保護している。
【0021】
壁部12に対して空間14と反対側(図の+z側)の、第1流路31(貫通穴15)に対して第1方向(図の+y方向)と反対側には、仕切り部材21〜25が配置されている。そして、仕切り部材21〜25の上には、薄い平板状の蓋部材27が配置されており、仕切り部材21〜25および蓋部材27によって、内部を流体が流れる路である第2流路32が形成されている。第2流路32の一方端部は、貫通穴15の空間14と反対側の開口部とつながっており、第2流路32の一方端部の近傍で4本の流路が1つに合流する形状とされている。また、第2流路32の他方端部は、4本に枝分かれしており、それぞれ外部とつながっている。このようにして、第2流路32は、他方端部から流入して内部を通過した流体が、第1流路31の貫通穴15に対して空間14と反対側に供給されるように形成されている。また、第2流路32は、貫通穴15の空間14と反対側の開口部において、第1方向(図の+y方向)と反対側につながっている。これにより、第2流路32を通過した流体が、第1方向(図の+y方向)と反対側から第1流路31に供給される。
【0022】
また、蓋部材27は、貫通穴15に対して第1方向(図の+y方向)と反対側のみに配置されているのではなく、第1方向(図の+y方向)側へ延長されて、第1方向(図の+y方向)側にも存在するように形成されている。すなわち、蓋部材27は、筐体10の壁部12の全体と対向するように、壁部12と間隔を開けて配置されている。そして、蓋部材27は、貫通穴15に対して第1方向(図の+y方向)と反対側において仕切り部材21〜25に固定されているとともに、第1方向(図の+y方向)側の端部における、図のx方向の両端において、支持部材40,41に固定されて支持されている。
【0023】
また、蓋部材27は、薄い平板状であり、仕切り部材21〜25および支持部材40,41に固定されていない部分が振動可能に形成されている。この蓋部材27の振動可能な部分によって可動部材28が構成されている。可動部材28は、貫通穴15に対して第1方向(図の+y方向)側の壁部12の全体と間隔を開けて対向するように配置されており
、貫通穴15よりも第1方向(図の+y方向)において第1方向へ向かって流れる流体と接触する位置に配置されている。また、本例では、可動部材28と壁部12との間には、支持部材40,41以外は何も配置されておらず、可動部材28と壁部12との間を流体が第1方向(図の+y方向)へ向けて移動可能になっている。
【0024】
このような構成を備える本例の送流装置においては、振動部材16に電気信号を加えて振動させると、それによってダイアフラム(壁部11)が上下(図のz軸方向)に振動する。ダイアフラム(壁部11)が上側(図の+z方向)に撓むと、空間14の体積が減少し、空間14内に入っていた流体が第1流路31(貫通穴15)を通じて第3方向(図の+c方向)へ噴き出される。このとき、流体が噴き出る方向である第3方向(図の+c方向)は第1方向(図の+y方向)の成分を有しているため、第2流路32の貫通穴15近傍の流体も第1方向側に引き出されて、貫通穴15の開口部側へ向かう流体の流れが第2流路32内に生じる。
【0025】
ダイアフラム(壁部11)が下側(図の−z方向)に撓むと、空間14の体積が増加し、外部の流体が第1流路31(貫通穴15)を通じて空間14内へ流入する。このとき、貫通穴15の空間14と反対側の開口部付近には、壁部12に沿って第1方向(図の+y方向)へ向かう流体の流れが生じているため、主に第2流路32から供給された流体が空間14の中に流入することになり、第2流路32中に貫通穴15の開口部へ向かう流体の流れがさらに生じる。
【0026】
また、貫通穴15よりも第1方向(図の+y方向)側において第1方向側へ向かって流れる流体と接触する位置に、壁部12と間隔を開けて配置された可動部材28が配置されている。ここで、貫通穴15よりも第1方向(図の+y方向)側において第1方向側へ向かって流れる流体の流れは、貫通穴15を介して空間14から流出する流体の流れによって創り出されている。よって、貫通穴15よりも第1方向(図の+y方向)側において第1方向側へ向かって流れる流体の流れは、貫通穴15を介して空間14から流出する流体と同じ周期、すなわち、ダイアフラム(壁部11)が振動する周期と同じ周期で振動する。これにより、貫通穴15よりも第1方向(図の+y方向)側において第1方向側へ向かって流れる流体と接触する位置に配置された可動部材28も、同じ周期で振動する。可動部材28は、壁部12と間隔を開けて対向するように配置されており、可動部材28と壁部12との間が流体の通り路になっていることから、可動部材28が周期的に振動することによって、流体の通り路の断面積が周期的に変化する。そして、これによって、可動部材28と壁部12との間を第1方向(図の+y方向)側へ向けて流れる流体の流れを非常に強めることができる。
【0027】
こうして、貫通穴15の開口部側へ向けた連続した流体の流れが第2流路32内に生じるとともに、貫通穴15に対して第1方向(図の+y方向)側に、第1方向側へ向かう強い流体の流れを形成できる。このようにして、本例の送流装置は、流体の連続した流れを発生させる送流装置として機能する。
【0028】
本例の送流装置によれば、第1流路31を通過して空間14から流出する流体が、壁部12の外側の壁面に平行な第1方向(図の+y方向)側へ向かって流れるように形成された第1流路31と、内部を通過した流体が、第1流路31の貫通穴15に対して空間14と反対側に供給される第2流路32とを備えていることから、第1方向へ向かう流体の流れを発生させる送流装置として機能する。
【0029】
また、本例の送流装置の第2流路32は、貫通穴15の空間14と反対側の開口部とつながっている一方端部の近傍で4本の流路が1つに合流する形状とされている。これにより、第2流路32内を流れる流体の流量を大きく確保しつつ、一方端側へ向かう連続した
流体の流れを生じさせることが可能となる。
【0030】
また、本例の送流装置によれば、第2流路32を通過した流体が、第1方向と反対側から第1流路31に供給されることから、効率よく流体の流れを発生させることが可能な送流装置を得ることができる。
【0031】
さらに、本例の送流装置によれば、貫通穴15よりも第1方向(図の+y方向)側において第1方向側へ向かって流れる流体と接触する位置に、壁部12と間隔を開けて配置された可動部材28を備えることから、第1方向側へ向かう強い流体の流れを創り出すことが可能な送流装置を得ることができる。
【0032】
本例の送流装置において、筐体10,保護部材17,振動部材16,仕切り部材21〜25,蓋部材27,可動部材28および支持部材40,41の材質としては、例えば、ステンレス,アルミニウム,ニッケル,真鍮,洋銀等の金属や、ポリアミド,ポリブチレンテレフタレート,ポリアセタール等の合成樹脂等を用いることができる。特に、可動部材28としては、弾性が大きい材料を用いることが望ましく、例えば、りん青銅や真鍮等を好適に用いることができる。また、ダイアフラムとしては、上記の金属や樹脂に加えて、両主面に電極が形成された圧電体を用いることも可能であり、その場合には、振動部材16を省略することができる。そして、ダイアフラムの厚みは、例えば、0.01〜0.2mm程度に設定され、ダイアフラムの直径は、例えば、10〜30mm程度に設定される。振動部材16やダイアフラムを構成する圧電体としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電材料を用いることができる。振動部材16の厚みは、例えば、0.01〜0.2mm程度に設定される。ダイアフラムとして金属を用いた場合には、振動部材16のダイアフラム側の電極を省略することができる。仕切り部材21〜25および支持部材40,41の高さは、例えば、0.1〜1.0mm程度に設定される。貫通穴15の直径は、例えば、0.1〜1.0mm程度に設定される。また、第2方向(図の+z方向)と第3方向(図の+c方向)との間の角度は、例えば、15〜75°程度に設定される。
【0033】
(実施の形態の第2の例)
図4は、本発明の実施の形態の第2の例の送流装置の蓋部材および可動部材を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。図5は、図4に示す送流装置の蓋部材および可動部材を備えた状態のD−D’線断面図である。なお、本例においては、上述した実施の形態の第1の例と異なる部分について説明し、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
本例の送流装置は、図1〜3に示す第1の例の送流装置における仕切り部材21〜25に代えて、壁部12と蓋部材27とを接続する3つの仕切り部材35〜37を有している。また、壁部12の空間14と反対側の面の四隅に、壁部12と蓋部材27とを接続して蓋部材27を支持する支持部材38〜41を有している。そして、壁部12,蓋部材27,および仕切り部材35〜37によって囲まれた空間によって2つの第2流路32が形成されている。また、貫通穴15は、壁部12を第2方向(図の+z方向)に貫通するように形成されている。そして、仕切り部材35には、貫通穴15の空間14と反対側の開口部を、第1方向(図の+y方向)側を除いて囲むように凹部54が形成されている。この凹部54内の空間、すなわち、壁部12と仕切り部材35の凹部54とに囲まれた空間と、貫通穴15とによって、第1流路31が構成されている。そして、第1流路31における、空間14と反対側の端部付近における第2方向(図の+z方向)側の内壁面、すなわち、仕切り部材35に形成された凹部54の第2方向側の壁面は、貫通穴15から第2方向へ遠ざかるにつれて第1方向(図の+y方向)へ突き出た形状になっている。これにより、貫通穴15を通過して空間14から流出する流体が、第1方向(図の+y方向)側へ流れるようになっている。
【0035】
また、本例の送流装置においては、第2流路32を通過した流体が、第1方向に垂直な図の+x方向および−x方向から、貫通穴15よりも第1方向(図の+y方向)側の第1流路31の端部に供給される。そして、空間14から第1流路31を通って流出する流体とともに、仕切り部材36,37の間隙を通って第1方向(図の+y方向)へ流れていく。
【0036】
このような構成を備える本例の送流装置によれば、前述した実施の形態の第1の例の送流装置と同様に、第1方向へ向かう強い流体の流れを効率よく発生させることができる。
【0037】
(実施の形態の第3の例)
図6は、本発明の実施の形態の第3の例の送流装置の蓋部材および可動部材を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。図7は、図6に示す送流装置の蓋部材および可動部材を備えた状態のE−E’線断面図である。なお、本例においては、上述した実施の形態の第2の例と異なる部分について説明し、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
本例の送流装置は、厚み方向に積層された3層の板状部材によって仕切り部材35が構成されている。そして、板状部材の第1方向(図の+y方向)側の端部の位置が、貫通穴15から第2方向へ遠ざかるにつれて第1方向(図の+y方向)へ突き出た形状になっている。これにより、貫通穴15を通過して空間14から流出する流体が、第1方向(図の+y方向)側へ流れるようになっている。また、第1流路31の空間14と反対側の端部における幅が、空間14から第1流路31を通って流出する流体が通過する仕切り部材36,37の間隙の間隔よりも小さくされている。さらに、ダイアフラムが振動する周波数と可動部材28の固有振動数とが略等しくなるように設定されている。
【0039】
本例の送流装置は、第1流路31の空間14と反対側の端部における、図のx軸方向の幅が、空間14から第1流路31を通って流出する流体が通過する仕切り部材36,37の間隙の間隔よりも小さい。これにより、第1流路31から流出する流体が仕切り部材36,37の間隙を通過しやすいので、第1方向(図の+y方向)側への流体の流れを効率的に発生させることができる。
【0040】
また、本例の送流装置は、ダイアフラムが振動する周波数と可動部材28の固有振動数とが略等しくなるように設定されている。これにより、可動部材28の振動が大きくなるので、第1方向(図の+y方向)側への流体の流れを、より強く発生させることができる。
【0041】
(実施の形態の第4の例)
図8は、本発明の実施の形態の第4の例の冷却装置の冷却対象物を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。図9は、図8に示す冷却装置の冷却対象物を備えた状態のF−F’線断面図である。なお、本例においては、上述した実施の形態の第1の例と異なる部分について説明し、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0042】
本例の冷却装置は図8に示すように、実施の形態の第1の例の送流装置と、貫通穴15よりも第1方向(図の+y方向)側において第1方向側へ向かって流れる流体と接触するように配置された、冷却対象である冷却対象物33とを有している。なお、実施の形態の第1の例の送流装置の蓋部材27および可動部材28が取り除かれて、その代わりに冷却対象物33が貼り付けられている。また、冷却対象物33は、送流装置の上面の全体を覆うよう配置されており、仕切り部材21〜25および支持部材40,41の上面に貼り付けられている。そして、壁部12と、仕切り部材21〜25と、冷却対象物33とによっ
て第2流路32が形成されている。すなわち、本例の冷却装置は、冷却対象物33によって第2流路32の一部が形成されている。
【0043】
また、本例の冷却装置では、貫通穴15よりも第1方向(図の+y方向)側に、壁部12および壁部12の両方と間隔を開けて対向するように、矩形の薄板状の可動部材46が配置されている。なお、可動部材46は、壁部12の上面に配置されたスペーサ部材43〜45の上面に周縁の一部を固定されており、外力によって振動することができるように取り付けられている。また、可動部材46の貫通穴15側の周縁の全体に渡って壁部12との間にスペーサ部材43が配置されており、貫通穴15側から流れてきた流体が、冷却対象物33と可動部材46との間を、冷却対象物33および可動部材46に接触しながら、冷却対象物33および可動部材46に沿って流れるようにされている。また、可動部材46と貫通穴15との間の壁部12の上面に、貫通穴15側から第1方向(図の+y方向)側へ向かって流れる流体が冷却対象物33と可動部材46との間にスムーズに流れ込むように流体を誘導する誘導部材52が配置されている。
【0044】
特許文献1にて提案された従来の送流装置は、送流装置の表面(第3の壁)に垂直に流体が放出されることから、冷却対象物と送流装置との間隔が小さくなると、冷却対象物に沿って流れる流体の量が減少して、冷却効果が著しく低下してしまうという問題があった。また、冷却効果を確保しようとすると、冷却対象物と送流装置との間隔を広げなければならず、冷却対象物と送流装置を含むシステムが大型化してしまうという問題があった。
【0045】
本例の冷却装置は、送流装置と、少なくとも貫通穴15よりも第1方向側において第1方向側へ向かって流れる流体と接触するように配置された冷却対象物33とを有している。よって、本例の冷却装置においては、冷却装置の壁部12と冷却対象物33との間を冷却対象物33に沿って流体が流れることから、冷却対象物33に近接して配置しても冷却対象物33に沿って流れる流体の量の減少が少ないので、冷却対象物33に近接して配置したときの冷却効果の低下が低減された冷却装置とすることができる。
【0046】
また、本例の冷却装置は、貫通穴15よりも第1方向側において第1方向側へ向かって流れる流体と接触する位置に、壁部12および冷却対象物33と間隔を開けて配置された可動部材46を有する。これにより、空間14から周期的に流出する流体に起因して可動部材46が振動し、可動部材46と冷却対象物33との間を第1方向(図の+y方向)へ流れる流体の流れが強まるので、さらに冷却効果の高い冷却装置を得ることができる。
【0047】
さらに、本例の冷却装置は、可動部材46と貫通穴15との間の壁部12の上面に、貫通穴15側から第1方向(図の+y方向)側へ向かって流れる流体が冷却対象物33と可動部材46との間にスムーズに流れ込むように流体を誘導する誘導部材52が配置されている。これにより、第1方向(図の+y方向)側へ向かって流れる流体が冷却対象物33と可動部材46との間にスムーズに流れ込むので、さらに冷却効果の高い冷却装置を得ることができる。
【0048】
またさらに、本例の冷却装置は、第2流路32の一部が冷却対象物33によって形成されていることから、第2流路32を流れる流体によっても冷却対象物33が冷却されることから、さらに冷却効果の高い冷却装置を得ることができる。
【0049】
(実施の形態の第5の例)
図10は、本発明の実施の形態の第5の例の冷却装置の冷却対象物を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。図11は、図10に示す冷却装置の冷却対象物を備えた状態のG−G’線断面図である。なお、本例においては、上述した実施の形態の第4の例と異なる部分について説明し、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略す
る。
【0050】
本例の冷却装置は、図10に示すように、実施の形態の第4の例の冷却装置における送流装置に対して、実施の形態の第1の例の送流装置から実施の形態の第3の例の送流装置への変更を加えるとともに、誘導部材52を取り除いたものである。このような構成を備える本例の冷却装置も、実施の形態の第4の例の冷却装置と同様に、冷却効果の高い冷却装置として機能する。
【0051】
(実施の形態の第6の例)
図12は、本発明の実施の形態の第6の例の冷却装置の冷却対象物を取り除いた状態を模式的に示す平面図である。なお、本例においては、上述した実施の形態の第5の例と異なる部分について説明し、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0052】
本例の冷却装置は、図12に示すように、2本の第2流路32における第1流路31と反対側の端部に流入する流体が通過する位置に、それぞれ可動部材47,48が配置されている。なお、可動部材47,48のそれぞれは、矩形の薄板状であり、壁部12および冷却対象物33の両方と間隔を開けて配置されている。また、可動部材47は、周縁部の一辺が支持部材49によって壁部12に固定されており、可動部材48は、周縁部の一辺が支持部材50によって壁部12に固定されている。このようにして、可動部材47,48は、外力によって振動することが可能なように壁部12に取り付けられている。
【0053】
本例の冷却装置は、2本の第2流路32に流入する流体が通過する位置に、冷却対象物33および壁部12と間隔を開けて振動可能に配置された可動部材47,48を有する。これにより、可動部材47,48に接触する流体の流れに起因して可動部材47,48が振動し、第2流路32へむかう流体の流れを強めるので、さらに冷却効果の高い冷却装置を得ることができる。
【0054】
(変形例)
本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0055】
前述した実施の形態の第1,第4の例においては、4本の流路が貫通穴15の近傍で1つに合流するような形状の第2流路32を有する例を示し、実施の形態の第2〜3および第5の例においては、2本の第2流路32を有する例を示したが、第2流路32の形状はこれに限定されるものではない。流路の本数や断面積は適宜設定することができる。
【0056】
また、前述した実施の形態の例においては、壁部12,仕切り部材21〜25および35〜37ならびに蓋部材27によって、横断面の周囲が完全に覆われた第2流路32が形成された例を示したが、これに限定されるものではない。場合によっては、横断面の周囲が完全に覆われていない第2流路32としても構わない。
【0057】
さらに、前述した実施の形態の第1,第4の例においては、直線状の貫通穴15が壁部12を第3方向(図の+c方向)に貫通する例を示し、実施の形態の第2〜3および第5の例においては、直線状の貫通穴15が壁部12を第2方向(図の+z方向)に貫通する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、空間14側から途中まで第2方向(図の+z方向)に向かった後に、第3方向(図の+c方向)に曲がるような形状の貫通穴15でも構わない。
【符号の説明】
【0058】
10:筐体
11,12,13:壁部
14:空間
15:貫通穴
28,46,47,48:可動部材
31:第1流路
32:第2流路
33:冷却対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムによって少なくとも一部が構成された第1壁部および該第1壁部と対向する第2壁部を含む壁で囲まれた第1空間を有する筐体と、
前記ダイアフラムと対向する位置に前記第2壁部を貫通するように形成された貫通穴を少なくとも含んで構成され、該貫通穴を通過して前記第1空間から流出する流体が、前記第2壁部の外側の壁面に平行な第1方向側へ向かって流れるように形成された第1流路と、内部を通過する流体を、前記第1流路の前記貫通穴に対して前記第1空間と反対側に導く少なくとも一本の第2流路と、
前記貫通穴よりも前記第1方向側において該第1方向側へ向かって流れる流体と接触する位置に、前記第2壁部と間隔を開けて配置された可動部材と
を備えることを特徴とする送流装置。
【請求項2】
前記ダイアフラムが振動する周波数と前記可動部材の固有振動数とが略等しいことを特徴とする請求項1に記載の送流装置。
【請求項3】
前記第2流路を通過した流体が、前記第1方向と反対側から前記第1流路に供給されることを特徴とする請求項1に記載の送流装置。
【請求項4】
請求項1に記載の送流装置と、前記貫通穴よりも前記第1方向側において該第1方向側へ向かって流れる流体と接触するように配置された、冷却対象物とを少なくとも有する冷却装置であって、前記可動部材が前記冷却対象物と間隔を開けて配置されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
前記第2流路の少なくとも一部が前記冷却対象物によって形成されていることを特徴とする請求項4に記載の冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−237303(P2012−237303A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130342(P2011−130342)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】