説明

送液システム及び燃料電池システム

【課題】脱硫器下流のポンプの安定制御を可能とし、効率よく液体燃料を送液することのできる送液システム及びそれを備える燃料電池システムを提供する。
【解決手段】ポンプ105の上流側において、気液分離部103に液体燃料を通過させることにより、冷却機構101で冷却され、減圧機構102で減圧されることで溶解度が低下した液体燃料中の気泡を取り除き、液体燃料から気体を分離する。更に、気液分離部103を通過した液体燃料を気液分離槽104に貯留することによって、液体燃料中に含まれていた気体を液体中で上昇させて気液分離槽104の上部側に溜め、液体を底部側に溜める。このように、液体燃料を気液分離することで、気体が十分に除去された液体燃料をポンプ105に供給することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を送液する送液システム、及びその送液システムを備える燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムに用いられる送液システムとして、例えば、特開2008−36523号公報に記載されたものが知られている。この送液システムでは、脱硫後の液体燃料を通過させる配管に気体を滞留させる滞留部を設けることによって、液体燃料と気体を溶解させて送給量を安定させている。また、特開2008−106172号公報に記載されたものが知られている。この送液システムでは、脱硫された液体燃料をバッファタンクに貯留し、このバッファタンク内の液体燃料の貯留量に応じて駆動ポンプを制御することによって、脱硫器内で液体燃料が滞留することを防止し、安定した脱硫処理を行うことを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−36523号公報
【特許文献2】特開2008−106172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、燃料電池システムにおいては、脱硫器で高温(100℃以上)や高圧(20kPa以上)で液体燃料を脱硫すると、脱硫の際に水素やメタンなどの気体が生成される。これらの気体を脱気するシステムを搭載したとしても、液体燃料を冷却(60℃以下)、減圧すると気体の溶解度が低下することによって、液体燃料に可溶化された気体成分の一部が気泡となる。また、溶存ガスの一部はポンプ内部で一時的に加圧減圧されることによって気泡となる。従って、上述の送液システムでは、液体燃料の内部に発生した気泡が脱硫器の下流に配置されたポンプのキャビテーション、圧力変動、流量変動等の原因となり、ポンプの安定制御が行えなくなる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、脱硫器下流のポンプの安定制御を可能とし、効率よく液体燃料を送液することのできる送液システム及びそれを備える燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る送液システムは、高温及び/又は高圧で脱硫された液体燃料を冷却及び/又は減圧する冷却/減圧手段と、冷却及び/又は減圧された液体燃料を送液するポンプと、ポンプの上流側に配置され、冷却及び/又は減圧された液体燃料を通過させることによって、当該液体燃料から気体を分離する気液分離手段と、ポンプの上流側に配置され、気液分離手段を通過した液体燃料を貯留して気液分離する気液分離槽と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この送液システムでは、ポンプの上流側において、気液分離手段に液体燃料を通過させるとともに気液分離槽に貯留することによって、液体燃料中の溶存ガス及び気泡を十分に分離することができる。このように、液体燃料中の溶存ガス及び気泡が十分に分離されることによりポンプの安定制御が可能となり、効率よく液体燃料を送液することができる。
【0008】
また、本発明に係る燃料電池システムは、上述の送液システムを備えることが好ましい。
【0009】
この燃料電池システムによれば、効率よく液体燃料を送液することのできる送液システムを備えているため、安定して電力を発生させることができ、システム全体の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脱硫器下流のポンプの安定制御を可能とし、効率よく液体燃料を送液することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システム及び送液システムの構成を示す図である。
【図2】気液分離部の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る燃料電池システム及び送液システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明の実施形態の燃料電池システム及び送液システムの構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1及び送液システム100の構成を示す図である。図1に示されるように、燃料電池システム1は、供給された原燃料を燃料電池システムへ供給する加圧ポンプ2と、原燃料から硫黄分を除去する脱硫装置3と、脱硫装置3によって硫黄分が除去された液体燃料を改質して改質ガスを生成する改質装置4と、脱硫装置3から改質装置4へ液体燃料を送液する送液システム100と、改質装置4によって生成された改質ガスを用いて発電を行う燃料電池スタック5と、を備えている。燃料電池システム1は、例えば、家庭用の電力供給源として利用されるものであり、容易に入手することができ且つ独立して貯蔵することができるという観点から、原燃料として灯油や軽油やナフサが用いられている。
【0014】
脱硫装置3は、加圧ポンプ2から供給された原燃料から硫黄分を除去する脱硫器11と、脱硫器11を加熱する昇温機構12とを備えて構成されている。原燃料は、約80ppm以下の硫黄や硫黄化合物等の硫黄分を含んでいる。脱硫器13は、原燃料から硫黄分を除去して、硫黄濃度を約50ppb以下とした液体燃料を生成する。脱硫器13内は高温・高圧状態に保たれ、高温・高圧状態で脱硫反応が進む。高温とは具体的には100℃以上、高圧とは具体的には20kPa以上である。これによって、脱硫後の液体燃料は高温・高圧の状態で送液システム100へ供給される。
【0015】
改質装置4は、液体燃料を水蒸気改質して水素リッチな改質ガスを生成する改質器16と、改質器16内に収容された改質触媒を加熱するバーナ17とから構成されてる。バーナ17は、水蒸気改質反応を促進する改質触媒を加熱することで、触媒反応を効果的に発揮させるために必要な熱を改質触媒に供給する。バーナ17の燃料は、主に、原燃料と酸素である。改質器16では、脱硫装置3によって脱硫された液体燃料が気化して原料ガスとなり、改質触媒によって、原料ガスと水蒸気(水)との水蒸気改質反応が促進されて、水素リッチな改質ガスが生成される。
【0016】
燃料電池スタック5は、複数の電池セルが積み重ねられて構成された固体高分子形燃料電池スタックであり、改質装置4で得られた改質ガスを用いて発電を行う。各電池セルは、アノードと、カソードと、このアノードとカソードとの間に配置された電解質である高分子のイオン交換膜と、を有している。各電池セルにおいては、アノードに改質ガスが導入されると共にカソードに空気が導入されて、電気化学的な発電反応が行われる。
【0017】
送液システム100は、高温・高圧で脱硫された液体燃料を冷却する冷却機構(冷却/減圧手段)101と、高温・高圧で脱硫された液体燃料を減圧する減圧機構(冷却/減圧手段)102と、液体燃料を気液分離する気液分離部(気液分離手段)103と、気液分離部103を通過した液体燃料を貯留して気液分離する気液分離槽104と、気液分離槽104に貯留された液体燃料を改質装置4へ送液するポンプ105とを備えて構成されている。
【0018】
送液システム100の冷却機構101は、熱交換器から構成されており、例えば、高温・高圧の液体燃料を脱硫装置3の上流側の配管付近に設けられた熱交換器を通過させることによって、脱硫装置3に供給される原燃料との間で熱交換を行うことができる。これによって、脱硫後の液体燃料を冷却(60℃以下)することができると共に、その熱で原燃料を加熱して有効利用することができる。減圧機構102としては、具体的には、細いコイル状の管から構成されるキャピラリーが採用される。この減圧機構102によって、大気圧まで減圧することができる。
【0019】
気液分離部103は、冷却機構101・減圧機構102で冷却・減圧された液体燃料を通過させることによって、液体燃料から水素やメタンなどの気体を分離する機能を有している。気液分離部103は、例えば、フィルタ、メッシュあるいはオリフィスから構成されている。気液分離部103の具体的構成の一例を図2を参照して説明する。図2(a)は気液分離部103の具体例を示す図であり、図2(b)は(a)においてBで示す部分の断面斜視図である。図2(a)に示すように、気液分離部103は、当該気液分離部103の前後の配管111,112よりも径の細い細管部113を局所的に形成することによって構成される。更に、図2(b)に示すように、細管部113の内部に多孔状の貫通孔114を形成することによって構成される。このような気液分離機103においては、細管を通すことによって液体の流速を上げると圧力が低下するため、溶存するガスが気体として分離し、気泡として成長させることができる。このような気液分離部103として、例えば、外径10〜15mm、内部細孔径2〜60μm(2μmが最適である)の焼結金属フィルタメッシュを用いることができる。
【0020】
気液分離槽104は、気液分離部103を通過した液体燃料を貯留することによって、更に気液分離する機能を有している。この気液分離槽104に貯留された液体燃料は、気液分離槽104の底面側に溜められると共に、液体燃料内に含まれる気体は、当該液体燃料内を上昇して気液分離槽104の上面側に溜まる。このように、液体燃料は気液分離槽104内で気液分離され、分離された気体は配管106を介して改質装置4の燃料としてバーナ17へ供給され、気体が十分に除去された液体燃料はポンプ105を介して改質装置4の改質器16へ供給される。
【0021】
ここで、従来の送液システムでは、本実施形態に係る送液システム100のように気液分離部103や気液分離槽104を備えておらず、冷却・減圧された液体燃料がそのままポンプ105に流入する構成とされている。脱硫装置3で高温(100℃以上)や高圧(20kPa以上)で液体燃料を脱硫すると、脱硫の際に水素やメタンなどの気体が生成され、これらの気体を脱気するシステムを搭載したとしても、液体燃料を冷却(60℃以下)、減圧すると気体の溶解度が低下することによって、液体燃料に可溶化された気体成分の一部が気泡となる。また、溶存ガスの一部はポンプ105内部で一時的に加圧減圧されることによって気泡となる。従って、従来の送液システムでは、液体燃料の内部に発生した気泡が脱硫装置3の下流に配置されたポンプ105のキャビテーション、圧力変動、流量変動等の原因となり、ポンプ105の安定制御が行えなくなる場合があった。
【0022】
しかしながら、上述のように構成された本実施形態に係る送液システム100によれば、ポンプ105の上流側において、気液分離部103に液体燃料を通過させるとともに気液分離槽104に貯留することによって、液体燃料中の溶存ガス及び気泡を十分に分離することができる。このように、液体燃料中の溶存ガス及び気泡が十分に分離されることによりポンプ105の安定制御が可能となり、効率よく液体燃料を送液することができる。
【0023】
また、本実施形態に係る燃料電池システム1によれば、効率よく液体燃料を送液することのできる送液システム100を備えているため、安定して電力を発生させることができ、システム全体の効率を向上させることができる。
【0024】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0025】
例えば、上述の実施形態においては、脱硫装置3は原燃料を高温及び高圧状態で脱硫し、それに伴い送液システム100は冷却及び減圧を行ったのち気液分離したが、これに代えて、脱硫装置3は原燃料を高温状態あるいは高圧状態の一方のみの状態で脱硫を行い、それに伴い送液システムは冷却あるいは減圧の一方のみを行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…燃料電池システム、100…送液システム、101…冷却機構(冷却/減圧手段)、102…減圧手段(冷却/減圧手段)、103…気液分離部(気液分離手段)、104…気液分離槽、105…ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温及び/又は高圧で脱硫された液体燃料を冷却及び/又は減圧する冷却/減圧手段と、
冷却及び/又は減圧された前記液体燃料を送液するポンプと、
前記ポンプの上流側に配置され、前記冷却及び/又は減圧された前記液体燃料を通過させることによって、当該液体燃料から気体を分離する気液分離手段と、
前記ポンプの上流側に配置され、前記気液分離手段を通過した前記液体燃料を貯留して気液分離する気液分離槽と、を備えることを特徴とする送液システム。
【請求項2】
請求項1に記載の送液システムを備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−227912(P2010−227912A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81435(P2009−81435)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】