説明

逆傾斜フルライニング構造

【課題】本発明は、内張りれんがを逆傾斜フルライニング構造とすることにより、れんがの割れ及び脱落を防止し、安定操業とすることを目的とする。
【解決手段】本発明による逆傾斜フルライニング構造は、炉(20)の底部から順に炉底(4)、下部コーナー部(5)、炉底・下部コーナー境界部(30)、直胴部(6)、絞り部(7)及び炉口(8)を有する炉(20)に形成されてなる炉の逆傾斜ライニング構造において、前記下部コーナー部(5)、直胴部(6)及び絞り部(7)の各内張りれんが(5a,6a,7a)をフル逆傾斜とすることにより、れんがの割れ及び脱落を防止する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉、AOD炉、溶銑予備処理炉等の炉に傾斜ライニング構造を適用することにより、れんがの割れおよび脱落防止、安定操業を達成するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の転炉内張りれんがのライニング構造は、下部コーナー部では、水平積み、ラウンドコーナー積み、傾斜積み等が採用され、直胴部では水平積み等、絞り部では、水平積み、傾斜積み、逆傾斜積み等が適用されている。
これらのライニング構造は、れんがの積みやすさ、迫り割れ等によるれんがの損傷、その他操業上の問題等により、それぞれの部位において種々選択されている。
その内、割れによるれんがの損傷を防止する観点から提案されているライニング構造は、一例として、絞り部にあっては傾斜積みないし逆傾斜積みが、下部コーナー部にあってはラウンドコーナー積みがある。
絞り部の構造に関連して、以下の特許が開示されている。
まず、特許文献1、特許文献2には、傾斜積み構造と水平積み構造が例示されている。
また、特許文献3には、絞り部鉄皮面に対して垂直にれんがを積み上げた傾斜型のライニング構造が例示されている。
【0003】
また、特許文献4には、水平積みのライニング構造が例示されている。
また、特許文献5には、水平積みライニング構造が例示され、炉の軸線と絞り部鉄皮とのなす角度よりも、軸線と内張りれんが表面がなす角度が小さくなるように積み上げることを特徴とする特許が開示されている。
さらに、逆傾斜積みライニング構造として、特許文献6の特許が例示されている。
下部コーナー部に関する開示された特許は以下である。
特許文献7は、下部コーナー部を水平積みに構造にした例である。
特許文献8は、同じくラウンドコーナー積みである。
さらに、特許文献9は、傾斜積みになっている。
また、これらに共通して直胴部は水平積みライニングになっている。
【0004】
【特許文献1】実開昭61−159357号公報、
【特許文献2】特開2003−231910号公報
【特許文献3】実開平3−67050号公報
【特許文献4】特開平5−279719号公報
【特許文献5】特開平7−3321号公報
【特許文献6】特開2006−200824号公報
【特許文献7】特開平9−263819号公報
【特許文献8】実開平5−51941号公報
【特許文献9】特開2001−279319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の特許文献1〜9は、絞り部、下部コーナー部等の個々の部分では、ある場合は、れんが損傷を抑制する効果を示すが、他の部位への影響を考慮したライニング構造には必ずしもなっていない。そのため、ある箇所で優れた効果を示しても、別の箇所で悪い影響を与えている可能性があり、場合によっては、悪い箇所が全体を律速してしまうこともある。したがって、全体として最適なライニング構造を検討することは非常に重要である。
例えば、絞り部では、水平積みよりも傾斜積みの方が応力軽減が図られ、効果を示しているが、築炉時にれんががずれ落ちたり、使用中にれんがが抜けることがある。また、うまく築炉できたとしても、炉の稼動中の多くの時間は、絞り部の傾斜積みれんがに重力による下方に落ちる力が常に掛かるので、特に、れんがが損耗し厚みが薄くなる稼働末期では、れんがが抜け落ちることがある。さらには、本発明者らの研究により、そもそも絞り部の傾斜積みでは、れんがの亀裂に結びつく応力は軽減されるが、絞り部の水平積みに比べて絞り部のれんが間に隙間が生じやすい。一方、このような絞り部れんがの短命は、水平積みライニングの直胴部れんがにも影響を与え、直胴部れんがの脱落、早期損傷にも繋がっている。
【0006】
また、本出願人の出願による特許文献6は、かなりの効果を示し、絞り部れんがの脱落は見られなくなったが、その良い効果が直胴部れんがに及ぶものではないので、依然として従来と同様に、直胴部が損傷されていくことがある。また、今まで絞り部に律速され停炉していたものが、寿命が延びたとは言え、今度は直胴部の寿命に律速されることになる。
さらに、下部コーナー部においては、ラウンドコーナー積みが最も優れたライニング構造であることは実炉での結果、あるいは、本出願人の発明者らの解析によって明らかにされている。しかし、このラウンドコーナー積みが他に与える影響は検討されたことがない。そこで本発明者らは鋭意検討し、確かにラウンドコーナー積みは下部コーナー部に生じる応力を緩和し、れんがの割れ損傷を抑制できるライニング構造が、一方で、直胴部に大きな応力を集中せしめ、直胴部の早期損傷の要因になることが判明した。
また、直胴部のライニング構造は、主として水平積み構造が採用されているが、果たしてこれが最適の構造かどうかも、特に、他の箇所のライニング構造との関係で検討されたことがない。
本発明は上記事情を鑑みて行なわれたものである。すなわち、全ライニングれんがの割れ損傷を抑制できる、全体として最適なライニング構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による逆傾斜フルライニング構造は、炉の底部から順に炉底、下部コーナー部、炉底・下部コーナー境界部、直胴部、絞り部及び炉口を有する炉に形成されてなる炉の逆傾斜ライニング構造において、前記直胴部の鉄皮面上にあって前記炉底から炉口に向かい前記鉄皮面に沿って前記炉口方向である高さ方向に向かう第3高さ方向軸と前記直胴部の前記鉄皮面に対して垂直で炉内に向かう垂直方向軸とを設定したときに、前記下部コーナー部の内側に施工する第2内張りれんがの第2厚み方向中心軸が前記第3高さ方向軸より下方の第2高さ方向軸と前記垂直方向軸との間に位置するように前記下部コーナー部に位置する第2内張りれんがの一部または全部を積み上げ、前記炉底・下部コーナー境界部の内側に施工する第1内張りれんがが2個以上であり、前記第1内張りれんがの第1厚み方向中心軸が、前記炉底・下部コーナー境界部に接する炉底内張りれんがの第5厚み方向中心軸と交わるときの小さい方の角度が5度以上であるように、前記第1内張りれんがの一部または全部を積み上げ、及び/または、前記炉底・下部コーナー境界部の内側に施工する前記第1内張りれんがが2個以上であり、前記第1内張りれんがの第1厚み方向中心軸が、前記炉底・下部コーナー境界部に接する前記第2内張りれんがの第2厚み方向中心軸と交わるときの小さい方の角度が5度以上であるように、前記第1内張りれんがの一部または全部を積み上げ、前記直胴部の内側に施工する第3内張りれんがの第3厚み方向中心軸が、前記第3高さ方向軸と前記垂直方向軸との間に位置するように前記第3内張りれんがの一部または全部を積み上げ、前記絞り部の内側に施工する第4内張りれんがの第4厚み方向中心軸が、前記第3高さ方向軸より上方の第4高さ方向軸と前記垂直方向軸との間に位置するように前記第4内張りれんがの一部または全部を積み上げた構成であり、また、前記直胴部の内側に施工する第3内張りれんがの第3厚み方向中心軸が、前記第3高さ方向軸に垂直な断面において前記垂直方向軸に沿って炉内に向かう構成であり、また、前記第2〜4厚み方向中心軸が前記垂直方向軸とのなす角度が5〜45度の逆傾斜角度をなす構成であり、また、前記第1、第3、第4内張りれんがの第1、第3、第4炉内面に段差がない構成であり、また、前記炉が、転炉、AOD炉、溶銑予備処理炉の何れかとした構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、転炉、AOD炉、溶銑予備処理炉等の炉の内張りれんが積み構造を逆傾斜積みフルライニング構造にすることにより、築炉中にれんががずれたり抜け落ちることなく、容易に築炉できるので、施工時間を大幅に短縮する効果を得ることができ、また、ライニング全体において、使用中にれんがの膨張による応力集中が生じることなくれんがの割れ防止が図られ、さらに、れんが間に隙間が生じることなく、また、れんがの損耗が進み残厚が薄くなっても一気に脱落することがないので、炉寿命の延長と安定操業が可能になり、また、れんが損傷または抜け落ちに対して従来実施されていた補修作業、それに伴う補修材が必要ないので、炉寿命の延長効果と相まって炉の操業コストを大幅に削減できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、炉の内張りれんが積み構造を逆傾斜積みとすることにより、築炉中のれんががずれたり抜け落ちることなく、容易に築炉できるライニングであること、使用時にれんがの膨張による応力集中が全ライニングれんがに生じることなく、れんがの割れ防止が図られるライニングであること、さらに、使用中にれんが間に隙間が生じることがなく、れんがの損耗が進み残厚が薄くなっても一気に脱落することがない構造を有する炉の逆傾斜フルライニング構造を得ることを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明による逆傾斜ライニング構造の好適な実施の形態について説明する。
通常、炉20のれんが積施工は、炉20の底部20aから上方に向かって行われる。すなわち、炉底内張りれんが4aからなる炉底4、第1内張りれんが30aからなる炉底・下部コーナー境界部30、第2内張りれんが5aからなる下部コーナー部5、第1切替れんが9aと第3内張りれんが6aからなる直胴部6、第4内張りれんが7aからなる絞り部7、戻しれんが10からなる炉口8で施工される。一例として、図1を使用して説明する。図1は、鉄皮1の内側に、パーマライニング2、ウェアーライニング3が施工されている。このパーマライニング2は、定形耐火物であるれんがでも、不定形耐火物であるキャスタブル、スタンプ材、充填材等でも、いずれでも良い。一方、前記ウェアーライニング3は所定の形状を持ったれんがである。これらのパーマライニング2、ウェアーライニング3は、炉20を図1のように立てた状態で、炉底4から施工され、炉底4、炉底・下部コーナー境界部30と順番に下から上に施工される。この炉底・下部コーナー境界部30は、炉底で生じたれんがの熱膨張による突っ張りを下部コーナー部5、さらにその上の直胴部6より上方に伝わることを抑制するライニング構造が最適であることが本発明者らの検討で明らかになった。このために炉底・下部コーナー境界部30のライニング構造は、当該部位に積まれる前記第1内張りれんが30aが2個以上であり、前記第1内張りれんが30aの第1厚み方向中心軸14aが、図1に示すごとく、炉底・下部コーナー境界部30に接する炉底内張りれんが4aの前記第5厚み方向中心軸14eと交わるときの小さい方の角度が5度以上であるようにライニングされるか、及び/または、炉底・下部コーナー境界部30の内側に施工する第1内張りれんが30aが2個以上であり、第1内張りれんが30aの第1厚み方向中心軸14aが、炉底・下部コーナー境界部30に接する第2内張りれんが5aの第2厚み方向中心軸14bと交わるときの小さい方の角度が5度以上であるようにライニングされることにより、炉底れんがの膨張による突っ張りが下部コーナー部の鉄皮側及び/または炉底の鉄皮側方向に働き、上方への働きを抑制できる。前記角度が5度以下だと、膨張による突っ張りが上方に向かうことになり好適ではない。
【0011】
続いて、下部コーナー部5の内側に施工する前記第2内張りれんが5aの第2厚み方向中心軸14bが第2高さ方向軸12bと垂直方向軸11との間に位置するように前記第2内張りれんが5aの一部または全部を積み上げ、このとき、前記第2厚み方向中心軸14bが前記垂直方向軸11とのなす角度が5〜45度の逆傾斜角度16であるように積み上げる。このように積み上げることにより、下部コーナー部5で発生する膨張による突っ張りは、上方にスムーズに逃がすことができ、全体としての内張りれんがの損傷抑制に有効であることが本発明者らにより得られている。もし、スムーズに逃がすことができないと、その逆転した突っ張りが炉底に向かうことになり、また、上方に対しては、ライニングれんがの局部に応力が集中したり、あるいは、れんが間に隙間等を生じることになり、損傷を助長してしまうことになる。ここで、前記逆傾斜角度16が5度より小さいと、従来の水平積みと同様であり、下部コーナー部の損傷が大きくなり、逆傾斜角度16が45度より大きいと、操業中に炉を反転したときに、れんがが抜け落ちやすくなり好適ではない。
【0012】
次に、下部コーナー部5まで施工したところで、直胴部6の施工になる。ここで、直胴部6または直胴部6及び絞り部7のウェアーライニング3の第3内張りれんが6aないし第4内張りれんが7aは、本発明の逆傾斜積みで施工される。さらに、その上が炉口8になる。このように積み上げることにより、直胴部6及び絞り部7で発生する膨張による突っ張りは、上方にスムーズに逃がすことができ、全体としての内張りれんがの損傷抑制に有効であることが本発明者らにより得られている。もし、スムーズに逃がすことができないと、その逆転した突っ張りが下部コーナー部5、炉底4等に向かうことになり、また、上方に対しては、ライニングれんがの局部に応力が集中したり、あるいは、れんが間に隙間等を生じることになり、損傷を助長してしまうことになる。
【0013】
前記下部コーナー部5のウェアーライニング3と直胴部6のウェアーライニング3との角度は異なってもよく、その場合は、下部コーナー部5のすぐ上に、直胴部6の逆傾斜積れんがを施工することができない。また、同様のことは直胴部6と絞り部7との間にも言える。そこで、下部コーナー部5と直胴部6との間に第1切替れんが9aを、直胴部6と絞り部7との間に第2切替れんが9bを用いることになる。この各切替れんが9a、9bは、1個または複数個を用いて、2つの部位間の角度の違いを調整している。また、絞り部7の上部まで積み上げ、炉口8で、再度水平に戻し、炉口8の鉄皮1に接するようにするれんがは戻しれんが10である。図1は最後の1個で上部戻しれんが10としている例であるが、複数個を用いても良い。
前記直胴部6ないし絞り部7の逆傾斜積になっているウェアーライニング3の各内張りれんが5a〜7aは、第2炉内面5aA、第4炉内面7aA、第2〜第4背面5aB〜7aBともに滑らかに積み上げても良く、あるいは、段差を付けて積み上げても良い。しかし、段の飛び出た箇所が使用中に割れやすいので、望ましくは、前記下部コーナー部5、直胴部6、絞り部7に施工した各内張りれんが5a〜7aの炉内面5aA〜7aAに段差がない施工がより良好である。
【0014】
前記下部コーナー部5、直胴部6、絞り部7に形成した各内張りれんが5a〜7aによる逆傾斜ライニングにおける逆傾斜角度は次のようにして決める。
前記直胴部6の鉄皮1に対して垂直に各炉内面5aA〜7aAに向かう垂直方向軸11と下部コーナー部5、直胴部6、絞り部7の鉄皮1に沿って高さ方向に向かう高さ方向軸12とがなす間の角13を、下部コーナー部5、直胴部6、絞り部7に配設する各内張りれんが5a〜7aの各厚み方向中心軸14b、14c、14dが通る配設の仕方が逆傾斜積みである。
【0015】
なお、高さ方向軸12の逆方向と垂直方向軸11との間を各内張りれんが5a〜7aの各厚み方向中心軸14b、14c、14dが通る施工は傾斜積になる。また、各内張りれんが5a〜7aの各厚み方向中心軸14b、14c、14dと垂直方向軸11とのなす角度である逆傾斜角度16については、逆傾斜なら任意の角度で効果を発揮するが、望ましくは5〜45度のときが最適である。また、5度よりも小さいと、本発明の目的である各内張りれんが5a〜7aの割れ、各内張りれんが5a〜7a間の隙間生成を抑制する効果が減じられ、各内張りれんが5a〜7aの抜け落ちが生じやすくなる。しかし、45度を超えても、稼働時に各内張りれんが5a〜7aが抜けないように、例えば、各内張りれんが5a〜7aの上下面の両面または片面にダボ(図示せず)を設け、抜け落ち防止を図っても良い。さらに、直胴部6の内張りれんがの第3厚み方向中心軸14cが垂直方向軸11と同じ方向、すなわち、水平積みであっても効果を発揮するが、もっとも有効なものは、前述したように下部コーナー部5、直胴部6、絞り部7が全て逆傾斜積みの場合である。
なお、本発明の施工方法は、転炉、AOD炉、溶銑予備処理炉等に用いることで効果を発揮する。
【0016】
次に、本発明による炉の逆傾斜フルライニング構造を適用した複数種の炉を用いて実験した結果を表1の第1表に示している。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
第1表中の施工時間割合は、本発明と同じ炉で比較例として水平積みないし傾斜積施工を実施したときの直胴部ないし絞り部における準備を含めた施工時間で、本発明の同部位における準備を含めた施工時間を除したときの割合である。割合が100のとき、比較例と同等、数値の小さいものほど施工時間が短く良好であることを示す。
第1表中の下部コーナー部、直胴部、絞り部れんが割れ損傷度合は、本発明と同じ炉で比較例として水平積みないし傾斜積施工を実施したときの直胴部ないし絞り部れんがの割れ損傷に起因した損傷速度(mm/ch)で、本発明の下部コーナー部、直胴部、絞り部れんがの割れ損傷速度を除したときの度合表示である。度合が100のとき、比較例と同等、数値の小さいものほど割れ損傷速度が小さく良好であることを示している。
また、直胴部、絞り部れんが抜け落ち度合は、同様に本発明と同じ炉で比較例として水平積みないし傾斜積施工を実施したときの1炉代に渡る、それぞれ直胴部、絞り部れんがの抜け落ち本数で、本発明の絞り部れんがの抜け落ち本数を除したときの度合表示である。度合が100のとき、比較例と同等、数値の小さいものほど抜け落ち損傷速度が小さく良好であることを示している。
従って、第1表から分るように、本発明の実施例は、いずれも比較例よりも優れている。
【0020】
従って、前述の通り、本発明による逆傾斜フルライニング構造の要旨をまとめると、次の通りである。
すなわち、炉20の底部から順に炉底4、下部コーナー部5、炉底・下部コーナー境界部30、直胴部6、絞り部7及び炉口8を有する炉20に形成されてなる炉の逆傾斜ライニング構造において、前記直胴部6の鉄皮面1a上にあって前記炉底4から炉口8に向かい前記鉄皮面1aに沿って前記炉口方向である高さ方向に向かう第3高さ方向軸12cと前記直胴部6の前記鉄皮面1aに対して垂直で炉内に向かう垂直方向軸11とを設定したときに、前記下部コーナー部5の内側に施工する第2内張りれんが5aの第2厚み方向中心軸14bが前記第3高さ方向軸12cより下方の第2高さ方向軸12bと前記垂直方向軸11との間に位置するように前記下部コーナー部5に位置する第2内張りれんが5aの一部または全部を積み上げ、前記炉底・下部コーナー境界部30の内側に施工する第1内張りれんが30aが2個以上であり、前記第1内張りれんが30aの第1厚み方向中心軸14aが、前記炉底・下部コーナー境界部30に接する炉底内張りれんが4aの第5厚み方向中心軸14eと交わるときの小さい方の角度が5度以上であるように、前記第1内張りれんが30aの一部または全部を積み上げ、及び/または、前記炉底・下部コーナー境界部30の内側に施工する前記第1内張りれんが30aが2個以上であり、前記第1内張りれんが30aの第1厚み方向中心軸14aが、前記炉底・下部コーナー境界部30に接する前記第2内張りれんが5aの第2厚み方向中心軸14bと交わるときの小さい方の角度が5度以上であるように、前記第1内張りれんが30aの一部または全部を積み上げ、前記直胴部6の内側に施工する第3内張りれんが6aの第3厚み方向中心軸14cが、前記第3高さ方向軸12cと前記垂直方向軸11との間に位置するように前記第3内張りれんが6aの一部または全部を積み上げ、前記絞り部7の内側に施工する第4内張りれんが7aの第4厚み方向中心軸14dが、前記第3高さ方向軸12cより上方の第4高さ方向軸12dと前記垂直方向軸11との間に位置するように前記第4内張りれんが7aの一部または全部を積み上げた構成よりなると共に、前記直胴部6の内側に施工する第3内張りれんが6aの第3厚み方向中心軸14cが、前記第3高さ方向軸12cに垂直な断面において前記垂直方向軸11に沿って炉内に向かい、前記第2〜4厚み方向中心軸14b、14c、14dが前記垂直方向軸11とのなす角度が5〜45度の逆傾斜角度16をなし、前記第1、第3、第4内張りれんが5a、6a、7aの第1、第3、第4炉内面5aA、6aA、7aAに段差がないようにした構成である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による直胴部ないし絞り部構造を有する炉の逆傾斜フルライニング構造を示す要部の断面図である。
【図2】図1の要部の逆傾斜積の逆傾斜角度の決め方を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 鉄皮
1a 鉄皮面
2 パーマライニング
3 ウェアーライニング
4 炉底
4a 炉底内張りれんが
5 下部コーナー部
5a 第2内張りれんが
5aA 第1炉内面
5aB 第2背面
6 直胴部
6a 第3内張りれんが
6aA 第2炉内面
6aB 第3背面
7 絞り部
7a 第4内張りれんが
7aA 第3炉内面
7aB 第4背面
8 炉口
9 切替れんが
10 戻しれんが
11 垂直方向軸
12 高さ方向軸
12c 第3高さ方向軸
12d 第4高さ方向軸
13 垂直方向軸11と高さ方向軸12との間の角
14 厚み方向中心軸
14a 第1厚み方向中心軸
14c 第3厚み方向中心軸
14d 第4厚み方向中心軸
14e 第5厚み方向中心軸
15 垂直方向軸11と高さ方向軸12の逆方向との間の角
16 逆傾斜角度
20 炉
30 炉底・下部コーナー境界部
30a 第1内張りれんが

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉(20)の底部から順に炉底(4)、下部コーナー部(5)、炉底・下部コーナー境界部(30)、直胴部(6)、絞り部(7)及び炉口(8)を有する炉(20)に形成されてなる炉の逆傾斜ライニング構造において、前記直胴部(6)の鉄皮面(1a)上にあって前記炉底(4)から炉口(8)に向かい前記鉄皮面(1a)に沿って前記炉口(8)方向である高さ方向に向かう第3高さ方向軸(12c)と前記直胴部(6)の前記鉄皮面(1a)に対して垂直で炉内に向かう垂直方向軸(11)とを設定したときに、
前記下部コーナー部(5)の内側に施工する第2内張りれんが(5a)の第2厚み方向中心軸(14b)が前記第3高さ方向軸(12c)より下方の第2高さ方向軸(12b)と前記垂直方向軸(11)との間に位置するように前記下部コーナー部(5)に位置する第2内張りれんが(5a)の一部または全部を積み上げ、
前記炉底・下部コーナー境界部(30)の内側に施工する第1内張りれんが(30a)が2個以上であり、前記第1内張りれんが(30a)の第1厚み方向中心軸(14a)が、前記炉底・下部コーナー境界部(30)に接する炉底内張りれんが(4a)の第5厚み方向中心軸(14e)と交わるときの小さい方の角度が5度以上であるように、前記第1内張りれんが(30a)の一部または全部を積み上げ、
及び/または、前記炉底・下部コーナー境界部(30)の内側に施工する前記第1内張りれんが(30a)が2個以上であり、前記第1内張りれんが(30a)の第1厚み方向中心軸(14a)が、前記炉底・下部コーナー境界部(30)に接する前記第2内張りれんが(5a)の第2厚み方向中心軸(14b)と交わるときの小さい方の角度が5度以上であるように、前記第1内張りれんが(30a)の一部または全部を積み上げ、
前記直胴部(6)の内側に施工する第3内張りれんが(6a)の第3厚み方向中心軸(14c)が、前記第3高さ方向軸(12c)と前記垂直方向軸(11)との間に位置するように前記第3内張りれんが(6a)の一部または全部を積み上げ、
前記絞り部(7)の内側に施工する第4内張りれんが(7a)の第4厚み方向中心軸(14d)が、前記第3高さ方向軸(12c)より上方の第4高さ方向軸(12d)と前記垂直方向軸(11)との間に位置するように前記第4内張りれんが(7a)の一部または全部を積み上げた構成よりなることを特徴とする逆傾斜フルライニング構造。
【請求項2】
前記直胴部(6)の内側に施工する第3内張りれんが(6a)の第3厚み方向中心軸(14c)が、前記第3高さ方向軸(12c)に垂直な断面において前記垂直方向軸(11)に沿って炉内に向かうことを特徴とする請求項1記載の逆傾斜フルライニング構造。
【請求項3】
前記第2〜4厚み方向中心軸(14b,14c,14d)が前記垂直方向軸(11)とのなす角度が5〜45度の逆傾斜角度(16)をなすことを特徴とする請求項1又は2記載の逆傾斜フルライニング構造。
【請求項4】
前記第1、第3、第4内張りれんが(5a,6a,7a)の第1、第3、第4炉内面(5aA,6aA,7aA)に段差がないことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の逆傾斜フルライニング構造。
【請求項5】
前記炉(20)が、転炉、AOD炉、溶銑予備処理炉の何れかであることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の逆傾斜フルライニング構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−162801(P2011−162801A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132236(P2008−132236)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】