説明

逆入力遮断機構

【課題】コイルスプリングの耐久性を向上させた逆入力遮断機構を提供する。
【解決手段】固定側部材2と、固定側部材に対して回転可能な入力側回転部材4と、入力側回転部材及び固定側部材に対して回転可能な出力側回転部材と、入力側回転部材と出力側回転部材の各周面と対面して配置されたコイルスプリング8と、コイルスプリングの入力側回転部材の回転と連動する回転に対して制動力を付与する制動力付与手段とを備え、制動力付与手段を、コイルスプリングと係合するように係合するように固定側部材材の周面34に制動力付与部材をスライド可能に配置し、該制動力付与部材の固定側部材の周面に対する回転に対して制動力が付与される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車や自動二輪車やエンジンのスタータ、巻き取り昇降装置等に利用されるもので、入力側からの回転トルクのみを出力側へ伝達する一方、出力側からの回転トルクを遮断して入力側へ伝達しない機能を有する逆入力遮断機構に関する。
【背景技術】
【0002】
構造が簡単で安価に製造でき、小型化が可能な逆入力遮断機構が従来知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−12751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、逆入力遮断機構に用いられる固定側部材とスプリングとの摺動トルクのバラツキの低減するとともに、コイルスプリングの加工を容易にし、且つコイルスプリングの耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、周面(34)(48a)(82a)を有する固定側部材(2)(48)(82)と、
コイルスプリングを受ける周面(32)(40a)(84a)を有し、前記固定側部材(2)(48)(82)に対して回転可能な入力側回転部材(4)(40)(84)と、
コイルスプリングを受ける周面(36)(44a)(88a)を有し、前記入力側回転部材(4)(40)(84)及び固定側部材(2)(48)(82)に対して回転可能な出力側回転部材(6)(44)(88)と、
前記入力側回転部材(4)(40)(84)と出力側回転部材(6)(44)(88)の各周面と対面して配置されたコイルスプリング(8)(38)(92)と、
前記コイルスプリング(8)(38)(92)の前記入力側回転部材(4)(40)(84)の回転と連動する回転に対して制動力を付与する制動力付与手段と
から成り、前記制動力付与手段を、前記固定側部材(2)(48)(82)の周面に制動力付与部材をスライド可能に配置し、該制動力付与部材の前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)に対する回転に対して制動力が付与される構成としたことを特徴とする。
また本発明は、前記制動力付与部材の前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)に対する回転に対して該制動力付与部材に付与される制動力が前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)と該制動力付与部材との間の摩擦力であることを特徴とする。
また本発明は、前記制動力付与部材の前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)に対する回転に対して該制動力付与部材に付与される制動力が磁気力であることを特徴とする。
また本発明は、前記制動力付与手段を、前記コイルスプリング(8)(38)(92)の他方部分に突出部(8b)(38d)(92a)を設け、該突出部(8b)(38d)(92a)と係合するように前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)にプリング(10)(46)(98)をスライド可能に配置し、該スプリング(10)(46)(98)の前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)に対する回転に対して制動力が付与される構成としたことを特徴とする。
また本発明は、前記スプリング(10)(46)(98)をリングスプリングとしたことを特徴とする。
また本発明は、前記制動力付与部材を磁性体としたことを特徴とする。
また本発明は、前記制動力付与手段を、前記コイルスプリング(8)の他方部分(8e)に該他方部分(8e)の回転と連動するように磁性体(M1)を取り付け、前記固定側部材(2)の前記コイルスプリング(8)の他方部分(8e)と対向する部分に磁性体(M2)を配設し、前記磁性体(M1)(M2)の中の少なくとも一方を永久磁石で構成し、両磁性体(M1)(M2)間に、該両磁性体(M1)(M2)の中の一方の磁性体の他方の磁性体に対する相対回転に対して、制動力として働く磁気力が作用するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、コイルスプリングとは別体の制動力付与部材を設けたので固定側部材とスプリングとの摺動トルクのバラツキを低減することができる。またコイルスプリングの加工が容易となる。また、コイルスプリングの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】逆入力遮断機構のA−A線断面図である。
【図2】逆入力遮断機構のB−B線断面図である。
【図3】逆入力遮断機構の左側面図である。
【図4】逆入力遮断機構の右側面図である。
【図5】コイルスプリングの正面図である。
【図6】逆入力遮断機構の他の実施形態を示す断面図である。
【図7】逆入力遮断機構のC−C線断面図である。
【図8】逆入力遮断機構の右側面図である。
【図9】逆入力遮断機構の他の実施形態の断面図である。
【図10】逆入力遮断機構のD−D線断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図12】図11のE−E線断面図である。
【図13】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る逆入力遮断機構の実施形態の断面図を示し、円筒型部材からなる固定側部材(2)と、該固定側部材(2)の内径部に回転可能に嵌合配置された前記逆入力遮断機構の軸方向の全長に延びる入力側回転部材(4)と、該入力側回転部材(4)の内径部に回転可能に嵌合配置された出力側回転部材(6)と、コイルスプリング(8)と、C型リングスプリング(10)とを主たる構成要素としている。
【0009】
入力側回転部材(4)は、フランジ部(4a)と、外側円筒部(4b)と、キャップ(4c)と、内側円筒部(4d)とから構成されている。外側円筒部(4b)の内側には、径方向に所定の間隔を存して、内側円筒部(4d)が同心状に形成されている。外側円筒部(4b)の一端部には、外側円筒部(4b)の外側と内側に垂直に突出する盤状のフランジ部(4a)が形成され、該フランジ部(4a)の内径部に前記内側円筒部(4d)が、内方向に突出して一体的に形成されている。前記入力側回転部材(4)の軸方向の一方側には、入力側外部機器との結合に用いられる一方側取付部(12)が設けられている。
【0010】
前記入力側回転部材(4)の軸方向の他方側にはキャップ(4c)が嵌合し、該他方側に、これに対して回転しないように結合している。前記入力側回転部材(4)のフランジ部(4a)の外周部と前記キャップ(4c)の外周部は、前記固定部材(2)の両端内径部に軸方向の移動が規制されて回転可能に嵌合している。前記キャップ(4c)の中央には穴が形成され、該穴はキャップ(4c)の裏面に当接する出力側回転部材(6)の中空部に連通している。前記キャップ(4c)の表面には、前記一方側取付部(12)と同一形状の他方側取付部(14)が設けら、一方側取付部(12)と他方側取付部(14)は左右対称となっている。
【0011】
キャップ(4c)には、複数箇所に溝(16)が穿設され、これらに外側円筒部(4b)の端部に形成された凸部(18)が嵌合し、キャップ(4c)の外側円筒部(4b)に対する回転を阻止している。前記内側円筒部(4d)は、その軸方向の長さが外側円筒部(4b)より短く設定され、本実施形態では略半分に設定されている。内側円筒部(4d)の軸方向に対して垂直な一端垂直面(4e)が、出力側回転部(6)の大径筒部(6a)と小径筒部(6b)との境い目に形成された軸方向に対して垂直な垂直面(6c)に当接している。
【0012】
該垂直面(6c)と前記内側円筒部(4d)の一端垂直面(4e)は、入力側回転部材(4)と出力側回転部材(6)が回転自在に当接する突き合わせ部(20)を構成している。前記内側円筒部(4d)の外径と前記大径筒部(6a)の外径は同一又は略同一に形成され、これらは、同心的に配置されている。前記出力側回転部材(6)の大径筒部(6a)には、コイルスプリング係止用のリング状の凸部(22)が形成され、小径筒部(6b)の中空部には、外部機器との取り付けように使用される角穴(24)が形成されている。
【0013】
入力側及び出力側回転部材(4),(6)は、軸方向の両端が外部に対して開放され、両端の中のいずれの側からも、取付部(12)又は取付部(14)を介して、外部機器に取り付けることができるようになっている。入力側回転部材(4)のフランジ部(4a)には、コイルスプリング(8)の突出部(8a)を脱着可能に係止する引掛け凹部から成る係止部(27)を円周方向に複数箇所有する係合穴部(26)が穿設されている。外側円筒部(4b)の筒壁には、コイルスプリング(8)の端部から径方向外方に突出するスプリング線からなる突出部(8b)の、入力側回転部材(4)に対する周方向の移動を可能とする空間部(28)が形成されている。
【0014】
前記固定側部材(2)の他端近傍の内周面には、溝(30)が形成され、該溝(30)にC型リングスプリング(10)が、弾発配置されている。前記リングスプリング(10)は、その外周面が、図2に示すように、溝(30)の底面即ち固定側部材(2)の周面(34)に圧接し、両側部が、固定側部材(2)に対して、軸方向にずれないように、溝(30)の一方の垂直壁面と、キャップ(4c)の筒部の端面に係止されている。前記C型リングスプリング(10)の断面形状は図1に示すように、周面(34)に対して面接触可能な矩形を形成し、該リングスプリング(10)は、帯板状のばね材により構成されている。
【0015】
前記入力側回転部材(4)の外側円筒部(4b)の内周面と、前記内側円筒部(4d)の外周面及びこれの延長周面上に配置された出力側回転部材(6)の大径筒部(6a)の外周面との間には、隙間(G)が形成され、この隙間(G)に、前記内側円筒部(4d)の外周面と大径筒部(6a)にまたがってこれらに嵌挿されたコイルスプリング(8)が配置されている。コイルスプリング(8)は、図5に示すように一端部に、軸方向に沿って外方にコイル部から直線状に突出する第1突出部(8a)が設けられ、他端部に径方向に沿ってコイル部から外方に直線状に突出する第2突出部(8b) が設けられている。
【0016】
コイルスプリング(8)の一方側の内径部(8d)は、内側円筒部(4d)の外周面(32)に圧着嵌合し、他方側(8e)の内径部は、大径筒部(6a)の外周面(36)に僅かな圧力で接触又は僅かな隙間を有してゆるく嵌合している。コイルスプリング(8)の第1突出部(8a)は、係合穴部(26)の1つの係止部(27)に脱着可能に嵌入し、これに回転方向の移動が係止されている。コイルスプリング(8)の粗巻き部(8c)は、内側円筒部(4d)と大径筒部(6a)との突き合わせ部(20)上に、これに対してスプリングの線が斜めになるように配置されている。
【0017】
この粗巻き部(8c)は、コイルスプリング(8)が巻き締められたとき、コイルスプリング(8)の線が突き合わせ部(20)の隙間にくい込むのを防止するためのものである。コイルスプリング(8)の第2突出部(8b) は、空間部(28)に挿入配置され、その先端が固定側部材(2)の内周面に近接している。この第2突出部(8b)の周方向の移動経路上に前記リングスプリング(10)の両端が対向配置されている。リングスプリング(10)の両端には、第2突出部(8b)と係合が確実に行われるように屈折部(10a),(10b)が形成されている。
【0018】
コイルスプリング(8)の一方部分(8d)を、入力側回転部材(4)の内側円筒部(4d)の周面(32)に対して圧着方向に回転させるのに必要なトルクを第1ロックトルク、リングスプリング(10)を固定側部材(2)の周面(34)に対して相対的にスリップ回転させるのに必要なトルクを第3スリップトルク、出力側回転部材(6)の周面(36)に対して圧着する方向に径変化させたコイルスプリング(8)の他方部分(8e)を周面(36)に対して圧着方向に回転させるのに必要なトルクを第2ロックトルク、固定側部材(2)の周面(34)を支点として、コイルスプリング(8)の他方部分(8e)を周面(36)に圧着する方向に径変化させるのに必要なトルクを第2径変化トルクとすると、第1ロックトルクは、第3スリップトルクより大、第2ロックトルクは、第3スリップトルクより大、第2径変化トルクは、第3スリップトルクより小、の関係が成り立つように構成されている。
なお、コイルスプリング(8)のコイル状の一方部分(8d)がなくても、コイルスプリング(8)の一方部分が入力側回転部材(4)に対して回転方向に連動するように一体的に固定されていれば、コイル状の一方部分(8d)と同様な動作が可能である。
【0019】
上記した構成において、入力側回転部材(4)の回転が出力側回転部材(6)に伝達される原理を説明する。
まず、固定側部材(2)を固定し、入力側回転部材(4)の一方側取付部(12)に、外部機器の駆動部(図示省略)を連結し、出力側回転部材(6)に外部機器の被動部(図示省略)を連結する。外部機器から入力側回転部材(4)に、一方向(コイルスプリング(8)を巻き締める方向)の回転トルクが入力されると、入力側回転部材(4)が一方向に回転する。
【0020】
コイルスプリング(8)は、一方部分(8d)において、入力側回転部材(4)の内側円筒部(4d)に圧入されているので、上記入力側回転部材(4)の回転はコイルスプリング(8) の上記圧入部分においてコイルスプリング(8)に伝達され、コイルスプリング(8)の一方部分(8d)が内側円筒部(4d)の外周面(32)と連動して回転する。一方、上記入力側回転部材(4)の回転初期の段階においては、コイルスプリング(8)は、第2突出部(8b)が入力側回転部材(4)の一方向の回転と連動して一方向に回動した後、リングスプリング(10)の屈折部(10a)に係止され、リングスプリング(10)の、固定側部材(2)に対する摩擦力により、その入力側回転部材(4)と連動する一方向の回転は規制される。
【0021】
その結果、コイルスプリング(8)はその第2突出部(8b)が若干空間部(28)の他方の端部(28b)の方向に移動し、他方部分(8e)において巻き締められ、他方部分(8e)において縮径する。従って、他方部分(8e)において、コイルスプリング(8)は出力側回転部材(6)の外周面(36) を締め付け、これと一体になる。この状態でさらに入力側回転部材(4)に一方向の回転トルクが加えられると、リングスプリング(10)と固定側部材(2)の内周面(34)との間で、その摩擦力に抗して滑りが生じ、出力側回転部材(6)が入力側回転部材(4)の回転と連動して回転し、出力側回転部材(6)が回転する。このとき、リングスプリング(10)も入力側回転部材(4)と連動して固定側部材(2)の内周面(34)に沿ってスリップ回転する。
【0022】
即ち、入力側回転部材(4)の一方向の回転が出力側回転部材(6)に伝達されることになる。一方、入力側回転部材(4)に他方向の回転トルクが入力された場合には、第2突出部(8b)は、リングスプリング(10)の他方の屈折部(10b)に当接し、コイルスプリング(8)の第2突出部(8b)の回転方向への移動は止められる。この状態でなお入力側回転部材(4)が回転を続けると、第2突出部(8b)は入力側回転部材(4)の空間部(28)の一方の端部(28a)に当接し、第2突出部(8b)は入力側回転部材(4)の空間部(28)の一方の端部(28a)に押されてリングスプリング(10)を押圧し、この押圧力によってリングスプリング(10)は固定側部材(2)の内周面との摩擦力に抗して回転方向に移動することになる。
【0023】
以上の通り、コイルスプリング(8)には、固定側部材(2)の内周面(34)を支点として、スプリング径が広がる方向に圧力が作用し、コイルスプリング(8)の他方部分(8e)に縮径動作が生ぜず、入力側回転部材(4)の他方向の回転は、出力側回転部材(6)に伝達されない。
上記入力側回転部材(4)が他方向に回転する場合において、第2突出部(8b)が空間部(28)の一方の端部(28a)に当接し、この端部(28a)に押されて、第2突出部(8b)が入力側回転部材(4)の他方向の回転と連動する動作は、入力側回転部材(4)を他方向に回転させたとき、コイルスプリング(8)を、その第2突出部(8b)が端部(28a)に当たる前に、拡径させる拡径トルクをA、リングスプリング(10)を固定側部材(2)に対してスリップさせるための回転トルクをBとすると、A<Bの関係となるように設定することで可能となる。このような構成とすることで、入力側回転部材(4)の他方向の回転力で確実にリングスプリング(10)を固定側部材(2)に対してスリップさせることができ、リングスプリング(10)の固定側部材(2)に対する摩擦力を大きくとることができる等設計上の自由度が大きくなる。なお、A>Bの場合は、入力側回転部材(4)を他方向に回転させたとき、リングスプリング(10)は、コイルスプリング(8)の第2突出部(8b)が端部(28a)に当たる前に、第2突出部(8b)に押されてスリップ回転することになる。
【0024】
出力側回転部材(6)に正又は逆方向の回転トルクが入力された場合には、出力側回転部材(6)が回転しても、コイルスプリング(8)は、出力側回転部材(6)の外周面(36)に僅かな圧力で接触又は僅かな隙間を有して嵌合する関係にあるから、出力側回転部材(6)は、コイルスプリング(8)に対して空回りし、出力側回転部材(6)の回転トルクは、コイルスプリング(8)に伝達されず、出力側回転部材(6)のみ正又は逆方向に回転し、入力側回転部材(4)は回転しない。
【0025】
上記実施形態は、入力側回転部材(4)の一方向の回転を出力側回転部材(6)に伝達する場合であるが、その逆の、入力側回転部材(4)の他方向の回転を出力側回転部材(6)に伝達する逆入力遮断機構が必要な場合には、図1に示す逆入力遮断機構の右側の他方側取付部(14)を、外部機器の駆動部に連結し、出力側回転部材(6)の内径部に外部機器の被動部を連結する。入力側回転部材(4)の回転方向は、一方側取付部(12)と対面する側から見たときと、他方側取付部(14)と対面する側から見たときとでは、逆向きの関係になる。そのため、外部機器の駆動部に、逆向きに、逆入力遮断機構の入力側回転部材(4)を連結することで、逆入力遮断機構のトルク伝達方向を変換させることができる。
【0026】
図6乃至図8は、コイルスプリング(38)の一方部分(38a)を入力側回転部材(40)の内周面(40a)に圧入し、第1突出部(38b)を係合穴部(42)に係止し、他方部分(38c)を出力側回転部材(44)の内周面(44a)に僅かな圧力で接触又は僅かな隙間を有して嵌合し、コイルスプリング(38)の第2突出部(38d)と係合するためのC型リングスプリング(46)を固定側部材(48)の外周面(48a)に圧入した実施形態を示している。
【0027】
図6において、入力側回転部材(40)の軸方向の一方側と他方側にそれぞれ、外部機器の駆動部を連結することができる外部に対して開放された取付部(50),(52)が設けられている。管状の固定側部材(48)の外径部に入力側回転部材(40)の、逆入力遮断機構の軸方向の略全長に延びた内側円筒部(54)の内径部が回転可能に嵌合している。固定側部材(48)の内径部には、軸方向の両端のいずれかの方向からも、外部部材に固定することができるように固定用の角穴(56)が設けられている。固定側部材(48)には、凹溝(58)が穿設され、該凹溝(58)にC型リングスプリング(46)が配置されている。
【0028】
リングスプリング(46)は、固定側部材(48)の凹溝(58)が形成された部分の外周面(48a)に圧着し、その両端の屈折部(46a),(46b)の中間には、コイルスプリング(38)の第2突出部(38d)が配置されている。入力側回転部材(40)には、内側円筒部(54)と外側円筒部(60)が同心状に一体的に形成され、この外側円筒部(60)の外周面と、内側円筒部(54)に固定されたキャップ(62)の外周面に出力側回転部材(44)の内径部が回転可能に嵌合している。
【0029】
外側円筒部(60)の軸方向の垂直端面(60a)は、出力側回転部材(44)の垂直段面(45)に当接し、この当接部が突き合わせ部(64)を構成している。外側円筒部(60)の内周面と出力側回転部材(44)の内周面は略同一延長周面上に形成され、該同一周面と内側円筒部(54)の外周面との間に隙間(66)が形成されている。前記隙間(66)には、コイルスプリング(38)が配置され、該コイルスプリング(38)の一端の第1突出部(38b)は、入力側回転部材(40)のフランジ部(68)側の係合穴部(42)の複数の係止部(図3に示す第1実施形態の符号27に相当する)の中の1つに係止されている。
【0030】
コイルスプリング(38)の第2突出部(38d)は、内側円筒部(54)に形成された空間部(70)から、前記凹溝(58)内に配置され、リングスプリング(46)の両屈折部(46a),(46b)と対向している。コイルスプリング(38)の一方部分(38a)は、外側円筒部(60)の内周面(40a)にきつく圧入され、粗巻き部(38e)は、前記突き合わせ部(64)に配置され、コイルスプリング(38)の他方部分(38c)は、出力側回転部材(44)の内周面(44a)にゆるく嵌合し、または、僅かな隙間を存して対向している。コイルスプリング(38)と、入力側回転部材(40)と、出力側回転部材(44)と、固定側部材(48)との間のトルクの関係は、第1の実施形態と同一である。
【0031】
上記した構成において、入力側回転部材(40)の回転が出力側回転部材(44)に伝達される原理を説明する。
まず、固定側部材(48)を固定し、入力側回転部材(40)の一方側取付部(50)に、外部機器(図示省略)の駆動部を連結し、出力側回転部材(44)に外部機器(図示省略)の被動部を連結する。外部機器から入力側回転部材(40)に一方向即ちコイルスプリング(38)を内周面(40a)に圧着する方向の回転トルクが入力されると、入力側回転部材(40)が一方向に回転する。
【0032】
コイルスプリング(38)は、一方部分(38a)において、入力側回転部材(40)の外側円筒部(60)の内周面(40a)に圧入されているので、上記入力側回転部材(40)の回転はコイルスプリング(38)の上記圧入部分においてコイルスプリング(38)に伝達され、コイルスプリング(38)の上記一方部分(38a)が外側円筒部(60)の内周面(40a)と連動して回転する。一方、上記入力側回転部材(40)の回転初期の段階においてはコイルスプリング(38)は第2突出部(38d)が入力側回転部材(40)の一方向の回転と連動して回動した後、リングスプリング(46)の屈折部(46b)に係止され、リングスプリング(46)の固定側部材(48)に対する摩擦力によりその回転は規制される。
【0033】
その結果、コイルスプリング(38)はその第2突出部(38d)が若干空間部(70)の一方の端部(70a)の方向に移動し、他方部分(38c)において、膨らみ、他方部分(38c)において拡径する。従って、他方部分(38c)において、コイルスプリング(38)は出力側回転部材(44)の内周面(44a)を締め付け、これと一体的になる。この状態でさらに入力側回転部材(40)に一方向の回転トルクが加えられるとリングスプリング(46)と固定側部材(48)の外周面との間で、その摩擦力に抗して滑りが生じ、出力側回転部材(44)が入力側回転部材(40)の回転と連動して回転し、出力側回転部材(44)が回転する。
このとき、リングスプリング(46)も入力側回転部材(40)と連動して固定側部材(48)の外周面に沿ってスリップ回転する。
【0034】
即ち、入力側回転部材(40)の一方向の回転が出力側回転部材(44)に伝達されることになる。一方、入力側回転部材(40)の一方側取付部(50)側に他方向の回転トルクが入力された場合には、第2突出部(38d)は、リングスプリング(46)の他方の屈折部(46a)に当接し、コイルスプリング(38)の第2突出部(38d)の回転方向への移動は止められる。この状態でなお入力側回転部材(40)が回転を続けると、第2突出部(38d)は入力側回転部材(40)の空間部(70)の他方の端部(70b)に当接し、第2突出部(38d)は入力側回転部材(40)の空間部(70)の他方の端部(70b)に押されてリングスプリング(46)を押圧し、この押圧力によってリングスプリング(46)は固定側部材(48)の外周面(48a)との摩擦力に抗して回転方向に移動することになる。
【0035】
以上の通り、コイルスプリング(38)には、固定側部材(48)の外周面(48a)を支点として、スプリング径が縮径する方向に圧力が作用し、コイルスプリング(38)の他方部分(38c)に拡径動作が生せず、入力側回転部材(40)の一方側取付部(50)からの他方向の回転は、出力側回転部材(44)に伝達されない。
上記入力側回転部材(40)が他方向に回転する場合において、第2突出部(38d)が空間部(70)の他方の端部(70b)に当接し、この端部(70b)に押されて、第2突出部(38d)が入力側回転部材(40)の他方向の回転と連動する動作は、入力側回転部材(40)を他方向に回転させたとき、コイルスプリング(38)を、その第2突出部(38d)が端部(70b)に当たる前に、縮径させる縮径トルクをA、リングスプリング(46)を固定側部材(48)に対してスリップさせるための回転トルクをBとすると、A<Bの関係となるように設定することで可能となる。このような構成とすることで、入力側回転部材(40)の他方向の回転力で確実にリングスプリング(46)を固定側部材(48)に対してスリップさせることができ、リングスプリング(46)の固定側部材(48)に対する摩擦力を大きくとることができる等設計上の自由度が大きくなる。なお、A>Bの場合は、入力側回転部材(40)を他方向に回転させたとき、リングスプリング(46)は、コイルスプリング(38)の第2突出部(38d)が端部(70b)に当たる前に、第2突出部(38d)に押されてスリップ回転することになる。
【0036】
出力側回転部材(44)に正又は逆方向の回転トルクが入力された場合には、出力側回転部材(44)が回転しても、コイルスプリング(38)は、入力側回転部材(40)の内周面(40a)に圧入されるとともに、出力側回転部材(44)の内周面(44a)に僅かな圧力で接触又は僅かな隙間を有して嵌合する関係にあるから、出力側回転部材(44)は、コイルスプリング(38)に対して空回りし、出力側回転部材(44)の回転トルクはコイルスプリング(38)に伝達されず、出力側回転部材(44)のみ正又は逆方向に回転し、入力側回転部材(40)は回転しない。
【0037】
入力側回転部材(40)の一方側取付部(50)と、他方側取付部(52)の回転は、これらを対面する側から見たとき互いに逆向きの関係にある。従って、入力部として、他方側取付部(52)を使用すれば、図6に示す外部入力遮断機構を、他方向の回転トルク伝達用として使用することができる。
本実施形態においても、リングスプリング(46)の替りに、第2突出部(38d)を固定側部材(48)の外周面(48a)に圧接する摩擦力付与手段を採用することができることは、第1の実施形態の場合と同じである。
【0038】
また、上記第1、第2の実施形態において、第2突出部(8b),(38d)は、直線状のスプリング線に限定されるものではなく、コイル状とし、該コイルを固定側部材(2),(48)の周面(34),(48a)に圧着して、コイルスプリング(8),(38)の、入力側回転部材(4),(40)の回転と連動する回転に対して摩擦力を付与する摩擦力付与手段としても良い。
尚、図2,3,4中、符号70は、固定部材(2)の外部取付機構に対する取付部、図7,8中、符号72は出力側回転部材(44)の外部取付機構に対する取付部である。
上記実施形態における上記制動力付与手段として、リングスプリング(10),(46)を用いた目的と効果は次の通りである。
【0039】
目的は、固定側部材とスプリングとの摺動トルクのバラツキを低減することと、コイルスプリングの加工を容易にすることと、コイルスプリングの耐久性の向上である。
効果としては、
(1)コイルスプリングから独立した部品でトルクを設定することにより、部品寸法公差を厳しく設定することが可能となる。1個のスプリングで、3箇所の公差を厳しくするのは困難である。
【0040】
(2)固定側部材にコイルスプリングを直接摺動させる場合、スプリングの端面を固定側部材に接触させると、端部のエッジで固定部材が摩耗してしまうため、コイルスプリングの固定側部材との接触部は、曲げた状態又は、コイル状等に加工する必要があり、その場合加工の難易度が高くなる。
(3)コイルスプリングを直接接触させるよりも接触面積を大きく取れることから耐久性の向上が見込める。
尚、上記リングスプリングを用いた摩擦力付与手段の構成は、特開2011−12751号公報に示される逆入力遮断機構やその他種々の逆入力遮断機構に用いることが可能である。
【0041】
図9及び10は、リングスプリングを用いた制動力付与手段を備えた逆入力遮断機構の他の実施形態を示している。
逆入力遮断機構は、円筒型部材からなる固定側部材(2)(48)(82)と、入力側回転部材(4)(40)(84)が一体的に形成された入力軸(86)と、出力側回転部材(6)(44)(88)が一体的に形成された出力軸(90)と、コイルスプリング(8)(38)(92)と、固定側部材(2)(48)(82)の内周面(34)(48a)(82a)に回転方向にスライド可能に圧着配置されたリングスプリング(10)(46)(98)とを主たる構成要素としている。
【0042】
入力軸(86)は、固定側部材(2)(48)(82)の内部から外方に突出して配置され、この入力軸(86)には、これより大径な円柱状の入力側回転部材(4)(40)(84)が一体的に形成されている。出力軸(90)も同様に固定側部材(2)(48)(82)の内部から反対方向に外方に突出して配置され、該出力軸(90)にこれよりも大径な円柱状の出力側回転部材(6)(44)(88)が一体的に形成されている。入力軸(86)と出力軸(90)は、同軸上に配置され、ブッシュ(94),(96)を介して、固定側部材(2)(48)(82)の軸方向の両端部の内径部に回転自在に嵌合している。
【0043】
前記入力側回転部材(4)(40)(84)と出力側回転部材(6)(44)(88)の各先端部の、軸方向に対して垂直な端面は、前記固定側部材(2)(48)(82)の内径部内で、互いに回転自在に当接対向し、他端部の軸方向に対して垂直な端面は、前記ブッシュ(94),(96)の端面に回転自在に当接し、該ブッシュ(94),(96)によって、入力軸(86)と出力軸(90)は、固定側部材(2)(48)(82)に対して、軸方向の移動が規制されている。本実施形態では、入力側回転部材(4)(40)(84)と出力側回転部材(86)は同径に設定され、これらの外周面(32)(40a)(84a),(88a)と、固定側部材(2)(48)(82)の内径部の内周面(34)(48a)(82a)とは、管状の隙間を介して対向している。
【0044】
この隙間には、前記入力側回転部材(4)(40)(84)と出力側回転部材(6)(44)(88)に嵌挿されたコイルスプリング(8)(38)(92)が配置されている。前記コイルスプリング(8)(38)(92)は、入力側回転部材(4)(40)(84)の外周面(32)(40a)(84a)に圧入される部分と、出力側回転部材(6)(44)(88)の外周面(36)(44a)(88a)に僅かな圧力で接触又は僅かな隙間を有して嵌合する部分と、径の外方に突出する突出部(8b)(38d)(92a)とから構成されている。突出部(8b)(38d)(92a)は、リングスプリング(10)(46)(98)の両端の屈折部(98a)と(98b)の間に配置されている。
【0045】
図9中、符号(99)は、入力側回転部材(4)(40)(84)と出力側回転部材(6)(44)(88)とを同軸線上で、互いに相対回転自在に連結するガイド軸であり、入出力軸(86),(90)の中心軸線上にこれに沿って形成された軸穴に嵌挿配置されている。
上記した構成において、入力側回転部材(4)(40)(84)の回転が出力側回転部材(86)に伝達される原理を説明する。
まず、固定側部材(2)(48)(82)を固定し、入力軸(86)の取付部に、外部機器の駆動部(図示省略)を連結し、出力軸(90)に外部機器の被動部(図示省略)を連結する。外部機器から入力側回転部材(4)(40)(84)に、一方向(コイルスプリング(8)(38)(92)を巻き締める方向)の回転トルクが入力されると、入力側回転部材(4)(40)(84)が一方向に回転する。
【0046】
コイルスプリング(8)(38)(92)は、入力側回転部材(4)(40)(84)の外周面(32)(40a)(84a)に圧入されているので、上記入力側回転部材(4)(40)(84)の回転はコイルスプリング(8)(38)(92) の上記圧入部分においてコイルスプリング(8)(38)(92)に伝達され、コイルスプリング(8)(38)(92)が入力側回転部材(4)(40)(84)の外周面(32)(40a)(84a)と連動して回転する。一方、上記入力側回転部材(4)(40)(84)の回転初期の段階においては、コイルスプリング(8)(38)(92)は、突出部(8b)(38d)(92a)が入力側回転部材(4)(40)(84)の一方向の回転と連動して一方向に回動した後、リングスプリング(10)(46)(98)の屈折部(98a)に係止され、リングスプリング(10)(46)(98)の、固定側部材(2)(48)(82)に対する摩擦力により、その入力側回転部材(4)(40)(84)と連動する一方向の回転は規制される。
【0047】
その結果、コイルスプリング(8)(38)(92)はその突出部(8b)(38d)(92a)が若干コイル巻き締め方向に移動し、コイルスプリング(8)(38)(92)は出力側回転部材(6)(44)(88)の外周面(36)(44a)(88a) を締め付け、これと一体になる。この状態でさらに入力側回転部材(4)(40)(84)に一方向の回転トルクが加えられると、リングスプリング(10)(46)(98)と固定側部材(2)(48)(82)の内周面(34)(48a)(82a)との間で、その摩擦力に抗して滑りが生じ、出力側回転部材(6)(44)(88)が入力側回転部材(4)(40)(84)の回転と連動して回転し、出力側回転部材(6)(44)(88)が回転する。このとき、リングスプリング(10)(46)(98)も入力側回転部材(4)(40)(84)と連動して固定側部材(2)(48)(82)の内周面(34)(48a)(82a)に沿ってスリップ回転する。
【0048】
即ち、入力軸(86)の一方向の回転が出力軸(90)に伝達されることになる。一方、入力軸(86)に他方向の回転トルクが入力され他方向に回転した場合には、この回転と連動してコイルスプリング(8)(38)(92)はその突出部(8b)(38d)(92a)が若干リングスプリング(10)(46)(98)の他方の屈折部(98b)の方向に回転移動し、突出部(8b)(38d)(92a)は、リングスプリング(10)(46)(98)の他方の屈折部(98b)に当接する。これによりコイルスプリング(8)(38)(92)の突出部(8b)(38d)(92a)の回転方向への移動は止められ、コイルスプリング(8)(38)(92)にはスプリング径が広がる方向に圧力が作用し、入力側回転部材(4)(40)(84)の他方向の回転は出力側回転部材(6)(44)(88)に伝達されない。
【0049】
この状態でなお入力側回転部材(4)(40)(84)が回転を続けると、突出部(8b)(38d)(92a)はリングスプリング(10)(46)(98)を押圧するとともに、入力側回転部材(4)(40)(84)はコイルスプリング(8)(38)(92)の一方部分(84a)に対して空回り、出力側回転部材(6)(44)(88)に回転トルクが伝達されない。
以上の通り、コイルスプリング(8)(38)(92)には、固定側部材(2)(48)(82)の内周面(34)(48a)(82a)を支点として、スプリング径が広がる方向に圧力が作用し、コイルスプリング(8)(38)(92)の出力側回転部材(6)(44)(88)に嵌挿されている部分及び入力側回転部材(4)(40)(84)に嵌挿されている一方部分に縮径動作が生ぜず、入力軸(86)の他方向の回転は、出力軸90に伝達されない。
【0050】
出力軸(90)に正又は逆方向の回転トルクが入力された場合には、出力側回転部材(6)(44)(88)が回転しても、コイルスプリング(8)(38)(92)は、出力側回転部材(6)(44)(88)の外周面(36)(44a)(88a)に僅かな圧力で接触又は僅かな隙間を有して嵌合する関係にあるから、出力側回転部材(6)(44)(88)は、コイルスプリング(8)(38)(92)に対して空回りし、出力側回転部材(6)(44)(88)の回転トルクは、コイルスプリング(8)(38)(92)に伝達されず、出力軸(90)のみ正又は逆方向に回転し、入力軸(86)は回転しない。
【0051】
図11及び12は、コイルスプリング(8)の他方部分(8e)の入力側回転部材(4)の回転と連動する回転に対して制動力を付与する制動力付与手段の他の実施形態を示している。図中、(M1)はリング状の磁性体であり、永久磁石により構成されている。磁性体(M1)は出力側回転部材(6)の外周面とプラスチックなどの非磁石性体から成る入力側回転部材(4)の内周面との間に回転自在に配置されている。前記磁石(M1)は、コイルスプリング(8)の他方部分(8e)の端部に固定されている。前記固定側部材(2)の内周面には、前記磁石(M1)に対向してリング状の磁性体(M2)が固定されている。磁性体(M2)は半硬質磁性体により構成されている。
【0052】
磁性体(M2)の内径部と入力側回転部材(4)の外周面との間には隙間が形成されている。磁性体(M1)と磁性体(M2)との間には磁性体(M1)を固定側部材(2)側に固定保持するヒステリシストルクが作用し、この磁気力によって磁性体(M1)の磁性体(M2)に対する相対回転に対して制動力が付与されるように構成されている。磁性体(M1)と磁性体(M2)は、互いの間に相対回転方向に制動力が付与されるものであれば、いずれか一方が永久磁石で他方が半硬質磁性体などの磁性体であれば良く、又両方永久磁石であっても良い。また、固定側部材(2)を鉄などの磁性体で構成し、磁性体(M2)を固定側部材(2)に一体的に形成しても良い。本実施形態では、入力側回転部材(4)に、コイルスプリングの突出部が入力側回転部材に対して回転方向に相対移動できる空間部を設ける必要がない。他の構成は、図1に示す実施形態と同一であり、同一の部分は同一の符号を付して対応関係を明らかにしている。
上記した構成において、入力側回転部材(4)が正逆方向に回転すると、これと連動してコイルスプリング(8)が回転する。
【0053】
コイルスプリング(8)の回転に伴い、磁石(M1) が回転し、磁石(M1)は、磁性体(M2)との間の磁気力により、その回転に対して制動力が付与され、この制動力により、コイルスプリング(8)の他方部分(8e)は、入力側回転部材(4)の回転方向に応じて、巻き締められ、あるいは拡径する。これにより、入力側回転部材(4)の一方向の回転トルクが出力側回転部材(6)に伝達される。また、入力側回転部材(4)の他方向の回転トルクは出力側回転部材(6)に伝達されない。また、出力側回転部材(6)からの逆入力回転は遮断され、入力側回転部材(4)に伝達されない。この動作の原理は、図1に示す実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0054】
また、本発明は、コイルスプリング(8)の一方部分(8d)を突出部(8a)を介して、入力側回転部材(4)の係合穴部(26)に固定する構成に限定されるものでなく、図13に示すように、コイルスプリング(8)の一方部分(8d)に突出部(8a)を設けないで、該一方部分(8d)を、入力側回転部材(4)の内側円筒部(4d)の外周面に密着させ、この密着力により、コイルスプリング(8)の一方部分(8d)が入力側回転部材(4)の回転と連動して回転するようにしても良い。図13に示す実施形態の他の構成は、図1の実施形態に示す構成と同一であり、対応する部分は同一の符号を付して対応関係を明らかにしている。
上記した構成において、入力側回転部材(4)が、コイルスプリング(8)を巻き締める一方向に回転すると、コイルスプリング(8)の一方部分(8d)は、固定側部材(2)の内周面(34)を支点として巻き締められ、入力側回転部材(4)に固着されるとともに、コイルスプリング(8)の他方部分(8e)も出力側回転部材(6)に巻き締められ、入力側回転部材(4)の一方向の回転トルクが出力側回転部材(6)に伝達される。
【0055】
一方、入力側回転部材(4)が他方向に回転した場合には、コイルスプリング(8)の一方部分は、入力側回転部材(4)の他方向の回転と若干連動した後、固定側部材(2)の内周面を支点として、拡径し、入力側回転部材(4)に対する密着力が解除され、入力側回転部材(4)は、コイルスプリング(8)に対して空回りする。また、出力側回転部材(6)は、コイルスプリング(8)に対してフリー回転状態にあり、これにより、入力側回転部材(4)の他方向の回転トルクは出力側回転部材(6)に伝達されない。出力側回転部材(6)の回転トルクが入力側回転部材(4)に伝達されない逆入力遮断動作の原理は、図1に示す実施形態と同一である。
なお、上記図9乃至図11に示す実施形態はいずれも、コイルスプリングを入力側回転部材と出力側回転部材の外周面に配置した構成であるが、図6の実施形態に示すように、コイルスプリングの一方部分を入力側回転部材の内周面に圧入し、他方部分を出力側回転部材の内周面に僅かな圧力で接触又は僅かな隙間を有して嵌合する構成としても良い。
また、上記実施形態において使用されたリングスプリングの断面形状は図示する矩形に特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
2 固定側部材
4 入力側回転部材
4a フランジ部
4b 外側円筒部
4c キャップ
4d 内側円筒部
4e 垂直面
6 出力側回転部材
6a 大径筒部
6b 小径筒部
6c 垂直面
8 コイルスプリング
8a 突出部
8b 突出部
8c 粗巻き部
8d 一方部分
8e 他方部分
10 C型リングスプリング
10a 屈折部
10b 屈折部
12 一方側取付部
14 他方側取付部
16 溝
18 凸部
20 突き合わせ部
22 凸部
24 角穴
26 係合穴部
28 空間部
30 溝
32 周面
34 周面
36 周面
38 コイルスプリング
38a 一方部分
38b 第1突出部
38c 他方部分
38d 第2突出部
38e 粗巻き部
40 入力側回転部材
40a 内周面
42 係合穴部
44 出力側回転部材
44a 内周面
46 C型リングスプリング
46a 屈折部
46b 屈折部
48 固定側部材
48a 外周面
50 取付部
52 取付部
54 内側円筒部
56 角穴
58 凹溝
60 外側円筒部
62 キャップ
64 突き合わせ部
66 隙間
68 フランジ部
69 空間部
70 取付部
72 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面(34)(48a)(82a)を有する固定側部材(2)(48)(82)と、
コイルスプリングを受ける周面(32)(40a)(84a)を有し、前記固定側部材(2)(48)(82)に対して回転可能な入力側回転部材(4)(40)(84)と、
コイルスプリングを受ける周面(36)(44a)(88a)を有し、前記入力側回転部材(4)(40)(84)及び固定側部材(2)(48)(82)に対して回転可能な出力側回転部材(6)(44)(88)と、
前記入力側回転部材(4)(40)(84)と出力側回転部材(6)(44)(88)の各周面と対面して配置されたコイルスプリング(8)(38)(92)と、
前記コイルスプリング(8)(38)(92)の前記入力側回転部材(4)(40)(84)の回転と連動する回転に対して制動力を付与する制動力付与手段と
から成り、前記制動力付与手段を、前記固定側部材(2)(48)(82)の周面に制動力付与部材をスライド可能に配置し、該制動力付与部材の前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)に対する回転に対して制動力が付与される構成としたことを特徴とする逆入力遮断機構。
【請求項2】
前記制動力付与部材の前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)に対する回転に対して該制動力付与部材に付与される制動力が前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)と該制動力付与部材との間の摩擦力であることを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断機構。
【請求項3】
前記制動力付与部材の前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)に対する回転に対して該制動力付与部材に付与される制動力が磁気力であることを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断機構。
【請求項4】
前記制動力付与手段を、前記コイルスプリング(8)(38)(92)の他方部分に突出部(8b)(38d)(92a)を設け、該突出部(8b)(38d)(92a)と係合するように前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)にプリング(10)(46)(98)をスライド可能に配置し、該スプリング(10)(46)(98)の前記固定側部材(2)(48)(82)の周面(34)(48a)(82a)に対する回転に対して制動力が付与される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断機構。
【請求項5】
前記スプリング(10)(46)(98)をリングスプリングとしたことを特徴とする請求項4に記載の逆入力遮断機構。
【請求項6】
前記制動力付与部材を磁性体としたことを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断機構。
【請求項7】
前記制動力付与手段を、前記コイルスプリング(8)の他方部分(8e)に該他方部分(8e)の回転と連動するように磁性体(M1)を取り付け、前記固定側部材(2)の前記コイルスプリング(8)の他方部分(8e)と対向する部分に磁性体(M2)を配設し、前記磁性体(M1)(M2)の中の少なくとも一方を永久磁石で構成し、両磁性体(M1)(M2)間に、該両磁性体(M1)(M2)の中の一方の磁性体の他方の磁性体に対する相対回転に対して、制動力として働く磁気力が作用するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−229810(P2012−229810A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143607(P2012−143607)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2011−98215(P2011−98215)の分割
【原出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000110206)トックベアリング株式会社 (83)
【Fターム(参考)】