説明

透明導電フィルム、その製造方法、電子デバイス、及び、有機薄膜太陽電池

【課題】電極としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いることなく、透明性と導電性とを両立する透明導電フィルム、その製造方法及びそれを用いた有機薄膜太陽電池を提供する。
【解決手段】支持体12上に、同一組成の導電メッシュ14とバスライン16と、該導電メッシュ14とバスライン16とで区画される開口部22に少なくとも配置される導電性ポリマー層18を含んで構成される透明導電フィルム10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明導電フィルム及びその簡易な製造方法、該透明導電フィルムを用いた電子デバイス及び有機薄膜太陽電池に関し、詳しくは透明性と高導電性を両立した透明導電フィルム、その製造方法、及びこれを用いた有機電子デバイス並びに有機薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ソフトマターとしてのフレキシブル電子デバイスが注目されている。なかでも軽量、低コスト化が期待できるフレキシブル有機電子デバイス、特に有機薄膜太陽電池、有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)への期待が高まっている。
フレキシブル有機電子デバイスの構成としては、少なくとも一方が透明な2つの異種電極間に、電子伝導性および/またはホール伝導性の有機薄膜を配置してなるものが一般的であり、このような有機電子デバイスは、シリコン等を用いてなる無機デバイスに比べて製造が容易であり、低コストに製造しうるという利点があり、実用化が望まれている。
【0003】
フレキシブル有機電子デバイスを実現するには、透明性と高導電性を両立した透明導電フィルムが求められる。この目的には、通常、インジウム錫酸化物(ITO)が主に使用されている。しかしながら、ITO膜は気相法で形成されるため、コストが高いという問題がある。
【0004】
ITOを用いずに必要性能を満たした透明導電フィルムを得るという目的のために、導電性の金属メッシュと導電性ポリマーとを組み合わせた透明導電フィルムが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、これらのフィルムを大面積の有機電子デバイスに適用した場合、導電性が不十分であり所望の性能が得られないこと問題である。すなわち、金属メッシュと導電性ポリマーを併用する透明導電フィルムは、大面積の有機電子デバイスへの応用のためには、さらなる導電性の改良が必要である。
例えば、10cm角よりも大きな面積を有する電子デバイスにおいて、デバイス全面にわたって導通を取る場合、十分な電流の移動を確保するために通常の導電メッシュに比較して断面積の大きなバスラインと称する導電層(もしくは導電部位)が必要となる。バスラインは、導電メッシュとそれに接触して設けられる導電性ポリマー層とからなる電極の形成後に、パターン状に設けられるが、バスラインと導電メッシュとの間に十分な導線性を確保するため工程が煩雑で、設計通りのバスラインを任意に形成することは困難であった。さらに、バスラインと導電メッシュは同じ機能を有する部材であるにもかかわらず、従来は、バスラインと導電メッシュとをそれぞれ異なる材料で、別の工程により作製することが一般的であったが、コスト設計上の妥当性を欠いているため改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−76668公報
【特許文献2】特開2009−231194公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電極としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いることなく、導電性及び透明性が良好であり、大面積の有機電子デバイスに適した透明導電フィルム及びその簡易な製造方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる課題は、前記透明導電フィルムを用いた有機電子デバイス及び発電効率が良好な有機薄膜太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、導電メッシュとバスラインとを同一組成物により構成し、これらの少なくとも開口部内に、該導電メッシュと接触するように導電性ポリマー層を形成することによって、本発明の課題が達成されることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明の構成は以下に示すとおりである。
<1> 支持体上に、平面視による線幅が1μm以上100μm以下の導電メッシュ、平面視による線幅が1mm以上5mm以下のバスライン、及び、該導電メッシュと接触して設けられた導電性ポリマー層を有する透明導電フィルムであって、該導電メッシュと該バスラインとが同一組成物からなる透明導電フィルム。
<2> 前記導電メッシュおよび前記バスラインが、銀を含む前記<1>に記載の透明導電フィルム。
<3> 前記導電メッシュおよび前記バスラインが、銀および親水性ポリマーを含む前記<1>又は<2>に記載の透明導電フィルム。
【0008】
<4> 前記導電メッシュおよび前記バスラインが、ハロゲン化銀および親水性ポリマーを含む組成物を前記支持体上に塗布し、パターン露光及び現像を行うことで得られるパターン状の導電層である前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の透明導電フィルム。
<5> 前記導電メッシュの平面視による線幅が1μm以上20μm以下であることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の透明導電フィルム。
<6> 前記導電メッシュにおいて、該導電メッシュを構成するパターン状の導電層の平面視によるピッチが50μm以上500μm以下である前記<1>〜<5>のいずれか1つ記載の透明導電フィルム。
<7> 前記導電メッシュにおいて、該導電メッシュにより形成される開口部の面積が1×10-8以上1×10−7以下である前記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の透明導電フィルム。
【0009】
<8> 前記バスラインの平面視による線幅が1mm以上3mm以下である前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の透明導電フィルム。
<9> 前記バスラインを2本以上有し、該バスラインの平面視によるピッチが10mm以上100mm以下である前記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の透明導電フィルム。
<10> 前記導電性ポリマー層が、体積抵抗率が1×10−2Ωcm以下のポリチオフェン誘導体を含有する前記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の透明導電フィルム。
<11> 前記ポリチオフェン誘導体が、ポリエチレンジオキシチオフェンである前記<10>に記載の透明導電フィルム。
【0010】
<12> <1>〜<11>のいずれか1つに記載の透明導電フィルムを第一電極とし、該第1電極上に、少なくとも機能性層と、対向電極とを順次有する電子デバイス。
<13> <1>〜<11>のいずれか1つに記載の透明導電フィルムを第一電極とし、該第1電極上に、少なくとも光電変換層と、対向電極とを順次有する有機薄膜太陽電池。
<14> 前記第一電極と光電変換層との間に電子ブロック層を備える前記<13>に記載の有機薄膜太陽電池。
<15> 前記光電変換層と前記対向電極との間に透明無機酸化物層を備える前記<13>又は<14>に記載の有機薄膜太陽電池。
<16> 前記透明無機酸化物層が、酸化チタン及び酸化亜鉛を含有する前記<15>に記載の有機薄膜太陽電池。
【0011】
<17> 支持体上に導電メッシュとバスラインとを同時に設ける工程と、少なくとも該導電メッシュ及び該バスラインから選択される少なくとも一方により形成された開口部に、該導電メッシュと接触して導電性ポリマー層を形成する工程と、を順次有する透明導電フィルムの製造方法。
<18> 前記支持体上に同一組成物からなる導電メッシュとバスラインとを同時に設ける工程が、支持体上にハロゲン化銀を含む組成物を塗布してハロゲン化銀含有層を形成する工程と、該ハロゲン化銀含有層をパターン露光する工程と、パターン露光したハロゲン化銀含有層を現像する工程と、現像後のハロゲン化銀含有層を定着して銀を含むパターン状の導電層を形成する工程と、を順次有する前記<17>に記載の透明導電フィルムの製造方法。
<19> 前記支持体上に同一組成物からなる導電メッシュとバスラインとを同時に設ける工程が、支持体上に導電性物質を含む組成物を印刷法により適用して、パターン状の導電層を設ける工程である前記<17>に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【0012】
本発明の透明導電フィルムは上記構成としたために、ITOを用いなくとも、透明性及び導電性が良好であり、有機電子デバイスの電極として用いるとリーク電流が少ない良好なデバイスを与える。
このため、本発明の透明導電フィルムは電気特性が良好な電子デバイス、特に、軽量フレキシブルな有機薄膜太陽電池や有機電界発光素子の製造に有用である。本発明の透明導電フィルムを用いた有機薄膜太陽電は、発電効率に優れる。
ここで、支持体として光透過性でフレキシブルな樹脂フィルムを用いることで、フレキシブルな透明導電フィルムが得られ、このようなフレキシブルな透明導電フィルムにより、軽量、且つ、フレキシブルな電子デバイスを簡易に製造しうる。
さらに、本発明の透明導電フィルムの製造方法によれば、均一な組成を有する導電メッシュとバスラインとを同時に形成しうるために、透明性と導電性に優れた透明導電フィルムを簡易に製造しうる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ITOを用いなくとも、透明性及び導電性が良好であり、有機電子デバイスの電極として用いるとリーク電流が少ない良好なデバイスを与える透明導電フィルム及びその簡易な製造方法が提供される。
このため、本発明の透明導電フィルムを用いることで、電気特性が良好な電子デバイス、及び発行効率が良好な有機薄膜太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の透明導電フィルムの第1の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す透明導電フィルムの概略平面図である。
【図3】本発明の透明導電フィルムの第2の実施形態を示す概略平面図である。
【図4】実施例2の有機薄膜太陽電池の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0016】
<透明導電フィルム>
まず、本発明の透明導電フィルムについて説明する。
図1は、本発明の透明導電フィルムの一態様を示す概略断面図であり、図2はその概略平面図である。
本発明の透明導電フィルム10は、プラスチックフィルム基板(支持体)12上に、少なくとも、導電メッシュ14、バスライン16及び導電性ポリマー層18を備える。
なお、図1は、導電メッシュ14、バスライン16及び導電性ポリマー18との位置関係を示す概略断面図であり、導電メッシュ14とバスライン16の線幅の関連は実施形態を必ずしも反映していない。
本実施形態(以下、第1の実施形態と称する)の透明導電フィルム10では、バスライン16は図2に示すように、格子状に設けられており、バスライン16の一部は他の導電層或いは他の部材との導通をとる目的で、透明導電フィルム10の面積より延長されて設けてもよい。
第1の実施形態では、バスライン16の平面視による線幅は2mmであり、ピッチは18mmである。また、図2における部分拡大図に示すように、メッシュ14は、平面視による線幅が5μmであり、ピッチが300μmであり、複数のメッシュ14で区画された空隙22には、導電性ポリマー18が導電メッシュ14と接触して設けられる。
【0017】
また、図3は、本発明の透明導電フィルムの別の実施形態(以下、第2の実施形態と称する)を示す概略平面図であり、第2の実施形態では、バスライン16は、一方向に平行してストライプ状に設けられる。
なお、上記構成を有し、本発明の効果を損なわない限り、所望により、易接着層、保護層などの公知の層をさらに設けてもよい。
【0018】
本発明の透明導電フィルムは、有機薄膜太陽電池の部材として好適に使用され、その場合、有機薄膜太陽電池は、少なくとも、前記本発明の透明導電フィルムと、光電変換層と、対向電極とを備える。このとき、本発明の透明導電フィルムは正極(カソード)としても、負極(アノード)としても用いることができるが、正極として用いることが好ましい。なお、当該分野の文献、特許においては有機薄膜太陽電池の電極に関して、ストックホルム規約とは反対の命名法が通用しているので注意を要する。本発明においてはストックホルム規約に従い、電池の正極をカソード、電池の負極をアノードと呼ぶ。
本発明の透明導電フィルムは、有機EL素子の部材として好適に使用され、その場合、有機電界発光素子は、少なくとも、前記本発明の透明導電フィルムと、発光層と、対向電極とを備える。このとき、本発明の透明導電フィルムは陽極(アノード)としても、陰極(カソード)としても用いることができるが、陽極として用いることが好ましい。
【0019】
以下、本発明の透明導電フィルムについて詳しく述べる。
〔支持体〕
本発明の透明導電フィルム10に用いる支持体は、導電メッシュ、バスラインや導電性ポリマー層等を保持できる表面平滑な基板或いはフィルムであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択しうる。本発明における支持体は、透明導電フィルム10における基板としてそのまま使用するために、透明性(使用する光の透過性)を有することが好ましく、プラスチックフィルムやガラスの薄層板などから選択される。
通常は、支持体を含む透明導電フィルム10をそのまま有機薄膜太陽電池などに用いることから、本発明においては透明性を有する支持体が選択される。また、可撓性の素材からなる支持体を選択することで、フレキシブルな透明導電フィルム10が得られる。
以下、透明支持体の代表的な例としてプラスチックフィルム基材について説明する。
【0020】
(プラスチックフィルム基板)
本発明の透明導電フィルム10の支持体としては、透明性、強度、ハンドリング性が良好で比較的安価なプラスチックフィルム基板を用いることが好ましい。
プラスチックフィルムは、後述する導電メッシュ、バスライン及び導電性ポリマー層等を保持できるものであれば、材質、厚み等に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、透明導電フィルム10に好適な支持体としては、400nm〜800nmの波長範囲の光に対し透過性である支持体が挙げられる。
透明導電フィルム10の支持体として用いられるプラスチックフィルム基板は、後述する導電メッシュや導電性ポリマー層等を保持できるものであれば、材質、厚み等に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
基板に用いうるプラスチックフィルムの素材としては、具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0022】
プラスチックフィルム基板は、耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、及び、線熱膨張係数が40ppm/℃以下の少なくともいずれかの物性を満たす耐熱性を有し、さらに、前記したように露光波長に対し高い透明性を有する素材により成形されることが好ましい。
なお、プラスチックフィルムのTg及び線膨張係数は、JIS K 7121に記載のプラスチックの転移温度測定方法、及び、JIS K 7197に記載のプラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法により測定され、本発明においては、この方法により測定した値を用いている。
プラスチックフィルムのTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような耐熱性に優れる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)、ポリイミド等が挙げられ(括弧内はTgを示す)、これらは本発明における基材として好適である。なかでも、特に透明性が求められる用途には、脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0023】
本発明においてプラスチックフィルムは、光に対して透明であることが求められる。より具体的には、400nm〜1000nmの波長範囲の光に対する光透過率は、通常80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
なお、光透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光透過率測定装置を用いて全光透過率及び散乱光量を測定し、全光透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。本明細書においては、この方法を用いた値を採用している。
プラスチックフィルムの厚みに関して特に制限はないが、典型的には1μm〜800μmであり、好ましくは10μm〜300μmである。
プラスチックフィルムの裏面(導電メッシュを設置しない側の面)には、公知の機能性層を設けてもよい。機能層の例としては、ガスバリア層、マット剤層、反射防止層、ハードコート層、防曇層、防汚層等が挙げられる。このほか、機能性層に関しては特開2006−289627号公報の段落番号〔0036〕〜〔0038〕に詳しく記載されている。
【0024】
(易接着層/下塗り層)
プラスチックフィルム基板は、その表面に設けられる親水性ポリマー層との密着性向上の観点から、易接着層もしくは下塗り層を有していてもよい。
易接着層もしくは下塗り層は、以下に詳述する親水性ポリマー層との親和性を高める目的で設置される。
易接着層もしくは下塗り層の構成としては、単層であってもよく、多層構造であってもよい。
易接着層はバインダーポリマーを含有することが必須であるが、必要に応じてマット剤、界面活性剤、帯電防止剤、屈折率制御のための微粒子などを含有してもよい。
易接着層に用いうるバインダーポリマーには特に制限はなく、以下に記載の親水性ポリマーや、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、ゴム系樹脂などから適宜選択して用いることができる。
易接着層もしくは下塗り層を単層構成とする場合には、層の形成に各種の親水性ポリマーが用いられる。また、重層構成とする場合には、導電メッシュとバスラインとを形成する最表面層に親水性ポリマーを用いればよい。
本発明において、易接着層もしくは下塗り層に使用される親水性ポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエステル、塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、ブタジエン含有共重合体などのラテックスポリマー、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体、等が例示される。
【0025】
易接着層もしくは下塗り層に用いる親水性ポリマーについてさらに詳細に説明する。
前記アクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を成分とするポリマーである。具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレートなどを主成分としてこれらと共重合可能なモノマー(例えば、スチレン、ジビニルベンゼンなど)を共重合したポリマーである。
ポリウレタン樹脂とは主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI(Tolylene Diisocyanate)、MDI(Methyl Diphenyl Isocyanate)、HDI(Hexylene diisocyanate)、IPDI(Isophoron diisocyanate)などがあり、ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどがある。さらに、本発明のイソシアネートとしてはポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用できる。
【0026】
ポリエステル樹脂とは主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリカルボン酸とポリオールの反応で得られる。ポリカルボン酸としては、例えば、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などがあり、ポリオールとしては例えば前述のものがある。
本発明のゴム系樹脂とは合成ゴムのうちジエン系合成ゴムをいう。具体例としてはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−ジビニルベンゼン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレンなどがある。
【0027】
易接着層もしくは下塗り層の乾燥後の塗布膜厚は、50nm〜2μmの範囲であることが好ましい。膜厚は、重層構成の場合、複数層の膜厚の合計が上記範囲にあることが好ましい。
なお、支持体を仮支持体として用いる場合には、支持体表面に易剥離性処理を施すことも可能である。
【0028】
〔導電メッシュ〕
本発明において導電メッシュ14は、金属材料によって形成される平面視による線幅が1μm以上100μm未満の、複数の細線状の導電層が互いに交差して形成されたメッシュである。導電メッシュを構成する金属材料の例としては、金、白金、鉄、銅、銀、アルミニウム、クロム、コバルト、ステンレス等が挙げられる。金属材料の好ましい例としては、銅、銀、アルミニウム、金等の低抵抗金属が挙げられ、なかでも、導電性に優れる銀もしくは銅が特に好ましく用いられる。
導電メッシュを構成する材料としては、導電性を確保するために十分な金属材料を含有する他には特に制限はなく、例えば、金属材料のみからなるものであってもよく、銀と親水性ポリマーとを含む材料、粒子状或いは微細な繊維状の金属材料とバインダーとを含む材料、等を用いてもよい。
【0029】
メッシュのパターンには特に制限がない。ストライプ、正方形、長方形、菱形、ハニカム、あるいは曲線を用いてもよい。図2は、正方形のメッシュ網目パターンの一例を示す概略平面図である。
これらのメッシュデザインは開口率(光透過率)と表面抵抗(導電性)が所望の値となるように調整される。図2では、該導電メッシュ14に区画された領域22が開口部を表し、該開口率は70%以上であり、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。光透過率と導電性はトレードオフの関係にあるため、開口率は大きいほど好ましいが、現実的には95%以下となる。
導電メッシュ14の厚みは特に制限は無いが、通常は0.02μm以上、20μm以下である。好ましい線幅は、3μm以上50μm以下であり、5μm以上25μm以下がより好ましい。
【0030】
バスライン16を設置していない状態での導電メッシュ14の導電性は、表面抵抗値として20Ω/sq以下であることが好ましく、10Ω/sq以下であることがさらに好ましい。
導電メッシュ14のピッチは細かい方がデバイス特性上有利である。しかしながらピッチが細かいと光の透過率が低下するので、妥協点が選ばれる。ピッチは金属細線の線幅に応じて変化するが、50μm以上2000μm以下であることが好ましく、100μm以上1000μm以下がより好ましい。別の定義を用いれば、導電メッシュの繰り返し単位となる開口部の面積が1×10−5以下であることが好ましく、1×10−6以下であることがより好ましく、1×10−7以下であることがさらに好ましい。
【0031】
〔バスライン〕
本発明では、支持体上に、導電メッシュ14と同一の組成物からなる、大面積集電のためのバスライン(太線導電層)16を有する。
バスライン16は、必要な導電性を確保するといった観点からは、線幅1mm以上5mm以下の金属材料を含んで形成される配線である。
バスラインの好ましい線幅は、1mm以上3mm以下である。バスライン16の線幅は、必ずしも均一である必要はなく、一定の線幅を有するストライブ状であってもよく、線の向きによって線幅が異なっていてもよい。また、後述するように曲線状のものでもよいが、バスラインとしての必要な導電性を確保するという観点からは、平面視による平均線幅が1mm以上5mm以下であること要する。
また、バスラインの厚みは特に制限は無いが、同様の観点から、通常は0.02μm以上20μm以下であり、後述するように、導電メッシュとバスラインとを同時に形成する手段をとる場合には、導電メッシュとバスラインの厚みは同一となる。
【0032】
バスラインのデザインは、本発明の透明導電フィルム10を使用するデバイスの種類や大きさに応じて、ストライプ、メッシュ、フィッシュボーン、ハニカムなど、自由に選択できる。曲線を用いたデザインでもよい。
バスラインのピッチは、導電メッシュと同様に、大面積の導電性と光透過率の妥協点としての最適条件が選ばれ、通常、5mm以上200mm以下であり、10mm以上100mm以下がより好ましい。
バスラインを形成する金属材料の例としては、導電メッシュを構成する金属材料と同様に、金、白金、鉄、銅、銀、アルミニウム、クロム、コバルト、ステンレス等が挙げられる。金属材料の好ましい例としては、銅、銀、アルミニウム、金等の低抵抗金属が挙げられ、なかでも、導電性に優れる銀もしくは銅が特に好ましく用いられる。
なお、導電メッシュとバスラインを設置した状態での導電性を表面抵抗値として評価することは難しい。これは、表面抵抗の測定端子がバスラインと直接接触するかどうかで、値が大きく変わるためである。
【0033】
〔導電メッシュとバスラインの形成〕
本発明においては、前記導電メッシュ14とバスライン16とは同一の組成物からなる同一組成のパターン状の導電層であることを特徴とするものであり、そのような観点からは、導電メッシュ14とバスライン16とを同一の組成の材料を用いて同時に形成することが、透明導電膜の製造方法の簡易性の観点から好ましく、工程数を減らすことができ、且つ、コスト的にも有利となる。
【0034】
本発明における導電メッシュおよびバスラインの形成方法としては特に制限はなく、公知の形成方法を適宜使用しうる。
導電メッシュおよびバスラインを同一組成にて同時に形成する方法としては、例えば、グラビア印刷(凹版オフセット印刷)、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの各種印刷法によりパターン状に導電材料を適用する方法、マスク蒸着法等を用いて導電メッシュとバスラインとを基材表面にパターン状に直接形成する方法、特開2006−352073、特開2009−231194等に記載のハロゲン化銀感光材料を用いる方法(以下、銀塩法と呼ぶことがある)等が挙げられる。
本発明の導電メッシュおよびバスラインは、印刷法、もしくは銀塩法で形成することが好ましい。
【0035】
印刷法としては、導電性物質を含む組成物、例えば、導電性インクなどを、支持体上に、印刷により適用して、パターン状の導電メッシュとバスラインとを同時に設ける工程であり、印刷としては、十分な導電性材料を含む組成物を任意の形状に適用しうるという観点からは、グラビア印刷及びスクリーン印刷を適用することが好ましい。印刷は同様の組成物を用いる限りにおいて、導電メッシュとバスラインとを逐次印刷してもかまわない。
導電メッシュとバスラインとを構成する導電性物質を含む組成物としては、必要な導電性を確保しうる導電性材料を含有するものであれば特に制限はないが、微粒子状或いは微細な繊維状などの形状を有する固体金属材料を主成分とし、これを保持するためのバインダーをさらに含むことが好ましい。導電性物質を含む材料は、溶剤を含有してもよい。
なお、グラビア印刷法、およびスクリーン印刷法により、導電メッシュを作製する方法の詳細については、特開2001−102792公報、および、特開平11−170420号公報に詳しく記載されている。本発明において導電メッシュとバスラインとを印刷法で形成する場合、この方法を適用して、好ましくは、導電メッシュのパターン及びバスラインのパターンを同時に、或いは、逐次で、印刷して形成すればよい。
【0036】
銀塩法により導電メッシュとバスラインとを同時に形成する方法としては、前記支持体上にハロゲン化銀と親水性ポリマーとを含有する組成物を塗布してハロゲン化銀含有層を形成する工程、該ハロゲン化銀含有層を、導電メッシュとバスラインとに適合するパターンに応じてパターン露光する工程、パターン露光後のハロゲン化銀含有層を現像して銀を含むパターン状の導電層を形成する工程、及び、現像されたパターン状の導電層を定着し、未反応のハロゲン化銀を除去する工程を、含む方法が挙げられる。パターン露光は、所望により、導電メッシュのパターンとバスラインのパターンを同時に露光してもよく、別々に順次露光してもよい。パターン形成に際しては、マスクを介するパターン露光の他、レーザー等を用いる走査(スキャニング)露光を適用してもよい。
銀塩法で作製される導電メッシュとバスラインとは、銀と親水性ポリマーとを含んで形成される層であり、導電性を確保するのに十分な量の銀を含有する。
銀塩法に用いられる親水性ポリマーの例としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマー;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエステル等が例示される。
ハロゲン化銀含有層には、銀や親水性ポリマーのほかにも塗布、現像、定着工程に由来する物質が含まれてもよい。
銀塩法で銀を含む導電メッシュ及びバスラインを形成した後、銅めっきを施して、さらに抵抗の低い導電メッシュとバスラインとを得る方法も好ましく用いられる。
【0037】
〔導電性ポリマー層〕
本発明における導電性ポリマー層18は、本発明の透明導電フィルム10を適用しようとする太陽電池の作用スペクトル範囲において透明であることを要し、通常、可視光から近赤外光の光透過性に優れることを要する。具体的には、膜厚0.2μmのときの波長400nm〜800nm領域における平均光透過率が75%以上であることが好ましく85%以上であることがより好ましい。
導電性ポリマー層18は、少なくとも導電メッシュ14及びバスライン16の少なくともいずれかにより区画される開口部22内に該導電メッシュと接触して配置される。導電性ポリマー層18の厚みは任意であり、例えば、導電メッシュ14及びバスライン16の高さより薄くても、略同一であってもよく、また、導電メッシュ14及びバスライン16の高さより厚く形成され、導電メッシュ14及びバスライン16の表面を覆うように形成されてもよい。
導電性ポリマー層18を形成する場合、通常、少なくとも、導電メッシュ14及びバスライン16の少なくともいずれかにより区画される開口部22に導電性ポリマーを充填して形成するが、メニスカス効果により、開口部22の中央に位置する導電性ポリマー層18の厚みは導電メッシュ14と接触している部分の厚みより小さくなる傾向があるが、特に支障はない。
いずれの態様においても導電性ポリマー層18は、導通のため導電性メッシュ14及びバスライン16の少なくともいずれかに接触して設けられる。
後述するように、導電メッシュ14と、バスライン16と導電性ポリマー層18とにより本発明の有機薄膜太陽電池の第1の電極20を構成する。
【0038】
導電性ポリマー層18を形成する材料としては、導電性を有するポリマー材料であれば特に制限はない。輸送する電荷に関しては、ホール伝導性、電子伝導性のいずれでもよい。具体的な導電性ポリマーの例としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジアゾール等や、これら導電骨格を複数有するポリマー等が挙げられる。
これらのなかではポリチオフェンが好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンが特に好ましい。これらのポリチオフェンは導電性を得るために、通常、部分酸化されている。導電性ポリマーの導電性は部分酸化の程度(ドープ量)で調節することができ、ドープ量が多いほど導電性が高くなる。部分酸化によりポリチオフェンはカチオン性となるので、電荷を中和するための対アニオンを有する。そのようなポリチオフェンの例としては、ポリスチレンスルホン酸を対イオンとするポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)が挙げられる。
【0039】
導電性ポリマー層18には、所望の導電性を損なわない範囲であれば、他のポリマーが添加されてもよい。他のポリマーは塗布性を向上させる目的や膜強度を高める目的で添加される。他のポリマーの例としては、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂や、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール等の親水性ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは膜強度を高めるために架橋してもよい。
【0040】
本発明において導電性ポリマー層18には、単独での体積抵抗率が1×10−1Ωcm以下の導電性ポリマーを含むことが好ましく、1×10−2Ωcm以下の導電性ポリマーを含むことがより好ましい。このような導電性ポリマーを含むことで、導電性ポリマー層の体積抵抗率として5×10−1Ωcm以下となることが好ましく、5×10−2Ωcm以下となることがより好ましい。
導電性ポリマー層の膜厚としては、50nm〜5μmの範囲内であることが好ましく、100nm〜2μmであることがより好ましい。
【0041】
導電性ポリマーは多くの場合、水溶液もしくは水分散物であるため、導電性ポリマー層の形成には、通常の水系塗布法が用いられる。導電メッシュを銀塩法で作製した場合は、導電メッシュの周りに親水性ポリマーが存在するため、水分散物を塗布するのに都合がよい。導電性ポリマー塗布液には、塗布助剤として、各種の溶剤、界面活性剤、増粘剤等を添加してもよい。
本発明において導電メッシュ14と導電性ポリマー層18とを含む第1の電極20はバルクヘテロ型有機太陽電池の正極(カソード)として機能する。
【0042】
(機能性層)
本発明の透明導電フィルムは、上記の構成要素に加え、さらに、目的に応じて機能性層を有してもよい。
表面側(導電性ポリマー層形成面側)に用いる機能性層としては、後述の電子ブロック層や、剥離性の一時保護層が挙げられる。裏面側(プラスチックフィルム基材の導電パターンを形成しない面側)に用いる機能層の例としては、ガスバリア層、マット剤層、反射防止層、ハードコート層、防曇層、防汚層、易接着層等が挙げられる。複数の機能性層が積層していてもよい。このほか、機能性層に関しては特開2006−289627号公報の段落番号〔0036〕〜〔0038〕に詳しく記載されており、ここに記載の機能性層を目的に応じて本発明の透明導電フィルムに設けてもよい。
このようにして作製された本発明の透明導電性フィルムは、フレキシブル電子デバイス、特にフレキシブル有機電子デバイスに好適である。
有機電子デバイスの例としては、例えば有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機薄膜太陽電池などが挙げられる。有機薄膜太陽電池は、透明導電フィルムの導電性が発電効率に直結するため、本発明の効果が顕著に表れる。そこで、以下本発明の透明導電フィルムを用いた有機薄膜太陽電池(以下、本発明の有機薄膜太陽電池と呼ぶ事がある)について詳しく説明する。
【0043】
<有機薄膜太陽電池>
本発明の有機薄膜太陽電池30は、前記本発明の透明導電フィルム10を一方の電極とし、その上に少なくとも光電変換層24、対向電極(第2の電極)26を積層して構成される。
本発明の有機薄膜太陽電池30において、透明導電フィルム10は正極、負極のいずれの場合もありうる。対向電極26は透明導電フィルム10と反対の極性である。ただし、透明導電フィルムの導電性ポリマーとしてポリチオフェンを使用する場合、透明導電フィルムは通常、正極である。
【0044】
本発明の有機薄膜太陽電池の好ましい層構成としては、本発明の透明導電フィルム10を正極として、この上に、電子ブロック層28、光電変換層24、電子捕集層、対向電極26を積層した構成が例示される。
<電子ブロック層>
本発明では、導電性ポリマー層(正極)10とバルクヘテロ層24の間に電子ブロック層28を有することが好ましい。電子ブロック層28はバルクヘテロ層24から正極22へ電子が移動するのをブロックする機能を担う。このような機能を有する材料は、p型半導体と呼ばれる無機半導体や、正孔輸送材料と呼ばれる有機化合物によって構成される。より具体的には、価電子帯準位が5.5eV以下で、かつ、伝導体準位が3.3eV以下である金属酸化物、またはHOMO準位が5.5eV以下で、かつ、LUMO準位が3.3eV以下である有機化合物が例示される。
【0045】
(電子ブロック層に用いる金属酸化物)
電子ブロック層に用いることができる金属酸化物の具体例としては、酸化モリブデン、酸化バナジウム等が挙げられる。
金属酸化物により電子ブロック層18を形成する場合には、一般的には、蒸着法などの気相法が適用される。
【0046】
(電子ブロック層に用いる有機化合物)
電子ブロック層に用いることができる有機化合物の具体例としては、芳香族アミン誘導体、チオフェン誘導体、縮合芳香環化合物、カルバゾール誘導体、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等が挙げられる。このほか、Chem.Rev.2007年,第107巻,953−1010頁にHole Transport materialとして記載されている化合物群も適用可能である。
なかでもポリチオフェンが好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンがより好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンは体積抵抗率が10Ωcmを下回らない程度にドープ(部分酸化)されていてもよい。このとき、電荷中和のために過塩素酸、ポリスチレンスルホン酸などに由来する対アニオンを有してもよい。
【0047】
電子ブロック層に用いる材料としては、酸化モリブデンもしくはポリチオフェンが好ましく、酸化モリブデンもしくはポリエチレンジオキシチオフェンがより好ましい。
電子ブロック層18の膜厚は、バルクヘテロ型光電変換層中に存在する電子輸送材料から、第1の電極を構成する導電性ポリマー層18への電子の漏出を抑制するに十分な厚みを選択する必要があり、そのような観点からは厚みは0.1nm以上であることが好ましく、厚みの上限には特に制限はないが、製造効率の観点からは50nm以下であることが好ましい。より好ましい厚みは1nm〜20nmの範囲である。
【0048】
<光電変換層>
光電変換層24はホール輸送層(正孔輸送層)と電子輸送層からなる平面ヘテロ構造でもよいし、ホール輸送材料と電子輸送材料を混合したバルクヘテロ構造でもよい。平面ヘテロ構造をとる場合、正極側がホール輸送層、負極側が電子輸送層である。また、平面ヘテロ構造の中間層としてバルクヘテロ層を有するハイブリッド構造であってもよい。
【0049】
正孔輸送層は正孔輸送材料からなる。
正孔輸送材料は、HOMO準位が4.5eV〜6.0eVのπ電子共役化合物であり、具体的には、各種のアレーン(例えば、チオフェン、カルバゾール、フルオレン、シラフルオレン、チエノピラジン、チエノベンゾチオフェン、ジチエノシロール、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェンなど)をカップリングさせた共役ポリマー、フェニレンビニレン系ポリマー、ポルフィリン類、フタロシアニン類等が例示される。このほか、Chem.Rev.2007,107,953−1010にHole Transport materialとして記載されている化合物群やジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第131巻、16048頁(2009年)に記載のポルフィリン誘導体も適用可能である。
これらの中では、チオフェン、カルバゾール、フルオレン、シラフルオレン、チエノピラジン、チエノベンゾチオフェン、ジチエノシロール、キノキサリン、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェンからなる群より選ばれた構成単位をカップリングさせた共役ポリマーが特に好ましい。具体例としてはポリ3−ヘキシルチオフェン、ポリ3−オクチルチオフェン、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第130巻、3020頁(2008年)に記載の各種ポリチオフェン誘導体、アドバンスト マテリアルズ第19巻、2295頁(2007年)に記載のPCDTBT、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第130巻、732頁(2008年)に記載のPCDTQx、PCDTPP、PCDTPT、PCDTBX、PCDTPX、ネイチャー フォトニクス第3巻、649頁(2009年)に記載のPBDTTT−E、PBDTTT−C、PBDTTT−CF、アドバンスト マテリアルズ第22巻1−4頁(2010年)に記載のPTB7等が挙げられる。
正孔輸送層の膜厚は5〜500nmが好ましく、10〜200nmが特に好ましい。
【0050】
電子輸送層は電子輸送材料からなる。電子輸送材料は、LUMO準位が3.5eV〜4.5eVであるようなπ電子共役化合物であり、具体的にはフラーレンおよびその誘導体、フェニレンビニレン系ポリマー、ナフタレンテトラカルボン酸イミド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸イミド誘導体等が挙げられる。これらの中では、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体の具体例としてはC60、フェニル−C61−酪酸メチル(文献等でPCBM、[60]PCBM、あるいはPC61BMと称されるフラーレン誘導体)、C70、フェニル−C71−酪酸メチル(多くの文献等でPCBM、[70]PCBM、あるいはPC71BMと称されるフラーレン誘導体)、およびアドバンスト ファンクショナル マテリアルズ第19巻、779−788頁(2009年)に記載のフラーレン誘導体、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー第131巻、16048頁(2009年)に記載のフラーレン誘導体SIMEF等が挙げられる。
電子輸送層の膜厚は5〜500nmが好ましく、10〜200nmが特に好ましい。
【0051】
バルクヘテロ型の光電変換層(以下、適宜、バルクヘテロ層と称する)18は正孔輸送材料と電子輸送材料が混合された有機の光電変換層である。正孔輸送材料と電子輸送材料の混合比は変換効率が最も高くなるように調整されるが、通常は、質量比で、10:90〜90:10の範囲から選ばれる。このような混合有機層の形成方法は、例えば、真空蒸着による共蒸着法が用いられる。あるいは、両方の有機材料が溶解する溶媒を用いて溶剤塗布することによって作製することも可能である。溶剤塗布法の具体例については後述する。
バルクヘテロ層18の膜厚は10nm〜500nmが好ましく、20nm〜300nmが特に好ましい。
バルクヘテロ層における正孔輸送材料と電子輸送材料は完全に均一に混合していてもよいし、1nm乃至1μmのドメインサイズとなるように相分離していてもよい。層分離構造は、不規則構造でも規則構造でもよい。規則構造を形成する場合、トップダウンによる規則構造でもよいし、自己組織化等のボトムアップによるものでもよい。ここで用いられる正孔輸送材料と電子輸送材料とは、既述の正孔輸送層、電子輸送層において説明したものが同様に挙げられる。
【0052】
<電子捕集層>
本発明では、必要に応じて、電子輸送材料からなる電子捕集層を設置してもよい。電子捕集層に用いることのできる電子輸送材料としては、前記の材料および、Chem.Rev.2007,107,953−1010にElectron Transport Materialsとして記載されているものや、電子輸送性を有するn型無機酸化物半導体(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン等)が挙げられる。これらの中では、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。
電子捕集層の膜厚は1nm〜30nmであり、好ましくは2nm〜15nmである。電子輸送層は、各種の湿式製膜法、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法など、いずれによっても好適に形成することができる。とりわけ、ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー C 第114巻、6849〜6853頁(2010年)に記載の酸化亜鉛層の形成方法や、シン ソリッド フィルム 第517巻、3766〜3769頁(2007)、アドバンスト マテリアルズ第19巻、2445〜2449頁(2007年)に記載の酸化チタン層の形成方法が特に好適である。
【0053】
<負極(第2の電極)>
負極26は、通常、電子輸送層から電子を受け取る機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、太陽電池素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。負極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、不純物でドープされた無機酸化物、無機窒化物、その他電気伝導性化合物(グラファイト、カーボンナノチューブ等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
負極に用いられる金属の具体例としては金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウムなどが挙げられる。
【0054】
不純物でドープされた無機酸化物の例としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが例示される。不純物ドープは、酸化物内のキャリア密度を高めることで導電性を向上させる目的で行なわれる。ドープする元素は、その無機酸化物の金属元素に対して周期表上一つ右の族の金属元素、またはハロゲン元素である。例えば、酸化チタンに対しては、5族元素であるニオブ、タンタルをドープするかハロゲン(フッ素、塩素など)をドープする。酸化亜鉛には、13族元素であるホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムをドープするか、ハロゲンをドープする。酸化スズの場合は、通常フッ素をドープする。不純物でドープされた無機酸化物は結晶であってもアモルファス状であってもよい。
負極の膜厚は10nm〜500nmであり、好ましくは50nm〜300nmである。酸化物半導体層は、各種の湿式製膜法、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法など、いずれによっても形成することができる。これらの中で、蒸着法もしくはスパッタ法が好ましい。
【0055】
負極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等を行ってもよい。
本発明において、負極形成位置は特に制限はなく、有機層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。また、負極が透明材料のとき、負極に接して上下に、負極バスラインが設置されていてもよい。
【0056】
<負極バスライン>
負極バスラインは太陽電池全面にわたって負極の導電性を高めるように設計される。負極バスラインの定義、具体例、製造方法等は、本発明の透明導電膜の項ですでに述べた導電メッシュと同一の組成を有する第1の電極における前記バスラインと同様である。
【0057】
<その他有機層>
本発明では、必要に応じて、ホールブロック層、励起子拡散防止層等の補助層を有していてもよい。なお、本発明においてバルクヘテロ層、正孔輸送層、電子輸送層、電子ブロック層、ホールブロック層、励起子拡散防止層など、有機化合物を用いる層の総称として、「有機層」の言葉を用いる。
【0058】
<アニール>
本発明の有機薄膜太陽電池は、有機層の結晶化やバルクヘテロ層の相分離促進を目的として、種々の方法でアニールしてもよい。アニールの方法としては、蒸着中の基板温度を50℃〜150℃に加熱する方法や、塗布後の乾燥温度を50℃〜150℃とする方法などがある。また、第二電極の形成が終了したのちに50℃〜150℃に加熱してアニールしてもよい。
【0059】
<保護層>
本発明の有機薄膜太陽電池は、保護層によって保護されていてもよい。特に、負極および所望によりバスラインを配した負極上に保護層を形成することは、負極の腐食防止の観点で好ましい。保護層に含まれる材料としては、MgO、SiO、SiO、Al、Y、TiO等の金属酸化物、SiN等の金属窒化物、SiN等の金属窒化酸化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリパラキシリレン等のポリマー等が挙げられる。これらのうち、金属の酸化物、窒化物、窒化酸化物が好ましく、珪素、アルミニウムの酸化物、窒化物、窒化酸化物が特に好ましい。保護層は単層でも多層構成であってもよい。
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、真空紫外CVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0060】
<ガスバリア層>
本発明の有機薄膜太陽電池はガスバリア層を有してもよい。ガスバリア層は、ガスバリア性を有する層であれば、特に制限はない。通常、ガスバリア層は無機物の層である。無機物としては、典型的には、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、亜鉛、スズの酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、水素化物等が挙げられる。これらは純物質でもよいし、複数組成からなる混合物や傾斜材料層でもよい。これらのうち、アルミニウムの酸化物、窒化物若しくは酸窒化物、又は珪素の酸化物、窒化物若しくは酸窒化物が好ましい。
無機層は単層でも、複数層の積層でもよい。有機層と無機層の積層でも良く、複数の無機層と複数の有機層の交互積層でもよい。有機層は平滑性の層であれば特に制限はないが、(メタ)アクリレートの重合物からなる層などが好ましく例示される
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmである。無機層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機ポリマー層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0061】
本発明の有機薄層太陽電池の厚さは、50μm〜1mmであることが好ましく、100μm〜500μmであることがより好ましい。
【0062】
本発明の有機薄層太陽電池を用いて太陽電池モジュールを作製する場合、濱川圭弘著、太陽光発電、最新の技術とシステム(出版:株式会社 シーエムシー)等の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0064】
〔実施例1〕
厚み125μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン株式会社からテオネックスQ−65FAの名で市販されているフィルム)の上に、導電メッシュとバスラインを同時に設置し、その上に導電性ポリマー層を積層することにより、本発明の透明導電フィルムを作製した。
〔導電メッシュおよびバスラインの同時形成〕
[ハロゲン化銀乳剤の調製]
反応容器内で下記溶液Aを34℃に保ち、特開昭62−160128号公報記載の混合撹拌装置を用いて高速に撹拌しながら、硝酸(濃度6%)を用いてpHを2.95に調整した。引き続き、ダブルジェット法を用いて下記溶液Bと下記溶液Cを一定の流量で8分6秒間かけて添加した。添加終了後に、炭酸ナトリウム(濃度5%)を用いてpHを5.90に調整し、続いて下記溶液Dと溶液Eを添加した。
【0065】
(溶液A)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 18.7g
塩化ナトリウム 0.31g
溶液I(下記) 1.59mL
純水 1,246mL

(溶液B)
硝酸銀 169.9g
硝酸(濃度6%) 5.89mL
純水にて全量を317.1mLとした。
【0066】
(溶液C)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 5.66g
塩化ナトリウム 58.8g
臭化カリウム 13.3g
溶液I(下記) 0.85mL
溶液II(下記) 2.72mL
純水にて全量を317.1mLとした。

(溶液D)
2−メチル−4ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラアザインデン 0.56g
純水 112.1mL
【0067】
(溶液E)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 3.96g
溶液I(下記) 0.40mL
純水 128.5mL

〈溶液I〉
界面活性剤:ポリイソプロピレンポリエチレンオキシジコハク酸エステルナトリウム塩の10質量%メタノール溶液

〈溶液II〉
六塩化ロジウム錯体の10質量%水溶液
【0068】
上記操作終了後に、常法に従い40℃にてフロキュレーション法を用いて脱塩及び水洗処理を施し、下記処方の溶液Fと防バイ剤を加えて60℃でよく分散し、40℃にてpHを5.90に調整して、最終的に臭化銀を10モル%含む平均粒子径0.09μm、変動係数10%の塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。

(溶液F)
アルカリ処理不活性ゼラチン(平均分子量10万) 16.5g
純水 139.8mL
【0069】
上記塩臭化銀立方体粒子乳剤に対し、チオ硫酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり20mg用い、40℃にて80分間化学増感を行い、化学増感終了後に4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン(TAI)をハロゲン化銀1モル当たり500mg、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールをハロゲン化銀1モル当たり150mg添加して、ハロゲン化銀乳剤を得た。このハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子とゼラチンの体積比(ハロゲン化銀粒子/ゼラチン)は0.625であった。
【0070】
[塗布]
さらに硬膜剤(H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン)をゼラチン1g当たり200mgの比率となるようにして添加し、また塗布助剤として、界面活性剤(SU−2:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム)を添加し、表面張力を調整した。
【0071】
こうして得られた塗布液を、銀換算の目付け量が0.625g/mとなるように、下塗り層を施した厚さ100μm、透過率92%(裏面に反射防止加工)のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム基材上に塗布した後、50℃、24時間のキュア処理を実施して感光材料を得た。
【0072】
[露光]
得られた感光材料を、図2に示す導電メッシュ14とバスライン16のパターンが得られるようにUVレーザーを用いてそれぞれ走査露光によりパターン露光した。即ち、平面視により線幅が15μm、ピッチが300μmの導電メッシュ14と、線幅2mm、ピッチ20mmの格子状のバスライン16とが形成されるように、パターン露光した。
透明導電フィルム10において導電メッシュ14の形成領域から延長されるバスライン16は集電リードである。以下に示す実施例、比較例における全ての透明導電フィルムには、特に断らない限り、同様に、導電メッシュ14に接して、線幅2mmの集電リードが存在する。
【0073】
[化学現像]
露光した感光材料を、下記現像液(DEV−1)を用いて25℃で60秒間の現像処理を行った後、下記定着液(FIX−1)を用いて25℃で120秒間の定着処理を行った。
【0074】
(DEV−1)
純水 500mL
メトール 2g
無水亜硫酸ナトリウム 80g
ハイドロキノン 4g
ホウ砂 4g
チオ硫酸ナトリウム 10g
臭化カリウム 0.5g
水を加えて全量を1リットルとした。
【0075】
(FIX−1)
純水 750mL
チオ硫酸ナトリウム 250g
無水亜硫酸ナトリウム 15g
氷酢酸 15mL
カリミョウバン 15g
水を加えて全量を1リットルとした。
【0076】
[物理現像]
次に、下記物理現像液(PDEV−1)を用いて30℃で10分間物理現像を行った後、水道水で10分間洗い流して水洗処理を行った。
【0077】
(PDEV−1)
純水 900mL
クエン酸 10g
クエン酸三ナトリウム 1g
アンモニア水(28%) 1.5g
ハイドロキノン 2.3g
硝酸銀 0.23g
水を加えて全量を1000mLとした。
【0078】
[電解めっき]
物理現像処理の後に、下記電解めっき液を用いて25℃で電解銅めっき処理を施した後、水洗、乾燥処理を行った。なお電解銅めっきにおける電流制御は3Aで1分間、次いで1Aで5分間、計6分間かけて実施した。めっき処理終了後に、水道水で10分間洗い流して水洗処理を行い、乾燥風(50℃)を用いてドライ状態になるまで乾燥した。
【0079】
(電解めっき液)
硫酸銅(五水和物) 200g
硫酸 50g
塩化ナトリウム 0.1g
水を加えて全量を1000mLとした。
【0080】
めっき処理後のフィルムを電子顕微鏡にて観察したところ、フィルム基材上に線幅19μm、ピッチ300μmの金属メッシュパターンが形成されていることが確認された。また、線幅2mm、ピッチ20mmのバスラインが形成されていることも確認できた。
【0081】
〔導電性ポリマー層の形成〕
上記で作製したフィルムの表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT−PSS)の水分散物(H.C.シュタルク社製、クレビオスPH−500に5質量%のエチレングリコールを添加した溶液、塗布乾燥時の体積抵抗率1〜5×10−3Ωcm)を塗布した。次に、このフィルムを120℃で20分間加熱乾燥して、導電性ポリマー層を形成した。このとき、導電性ポリマー層の膜厚は300nmであった。このようにして実施例1の透明導電フィルム(F−1)を得た。
【0082】
〔実施例2〕
バスライン16を図3に示すように、ストライプ状に設けるべく、パターン露光した以外は、実施例1と同様にして実施例2の透明導電フィルム(F−2)を得た。
【0083】
[表面抵抗の測定]
実施例1及び実施例2で得た透明導電フィルム(F−1、F−2)の表面抵抗を、三菱化学(株)抵抗率計ロレスターGP/ASPプローブを用いて、JIS7194に従い測定したところ、表面抵抗値はいずれも1Ω/sq以下であり、十分な導電性を示すことが確認された。
【0084】
〔実施例3〕
UV露光の際にバスライン16を線幅1mmのストライブ状に形成されるように露光条件を変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の透明導電フィルム(F−3)を作製した。
[表面抵抗の測定]
実施例3の透明導電フィルムの表面抵抗を、前記同様、JIS7194に従い測定したところ、表面抵抗値は1Ω/sq以下であった。
〔比較例1〕
UV露光の際にバスライン16を線幅0.5mmのストライブ状に形成されるように露光条件を変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の透明導電フィルム(CF−1)を作製した。
[表面抵抗の測定]
比較例1の透明導電フィルムの表面抵抗を、同様に測定したところ、表面抵抗値は1Ω/sq以下であった。
【0085】
[実施例4〜6]
次に、本発明の透明導電フィルム10を有機薄膜太陽電池30に適用した実施例4〜6について説明する。有機薄膜太陽電池30の層構成は図4の概略断面図に示すとおりである。
[有機薄膜太陽電池の作製]
〔電子ブロック層の設置〕
実施例1〜実施例3で得た透明導電フィルム10〔(F−1)〜(F−3)〕それぞれの表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT−PSS)の水分散物(H.C.シュタルク社製、クレビオスP AI4083、塗布乾燥時の体積抵抗率500〜5000Ωcm)を膜厚25nmとなるように塗布し、120℃で20分間加熱乾燥し、電子ブロック層28を形成した。
〔バルクヘテロ層の塗布〕
P3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン、Lisicon SP−001(商品名)、メルク社製)20mg、及び、PCBM([6,6]−phenyl C61−butyric acid methyl ester、ナノムスペクトラE−100H(商品名)、フロンティアカーボン社製)14mgをクロロベンゼン1mlに溶解させ、バルクヘテロ層塗布液とした。これを電子ブロック層上にスピンコートし、バルクヘテロ層24を形成した。スピンコーターの回転速度は2500rpm、乾燥膜厚は80nmであった。
【0086】
〔電子捕集層の塗布〕
オルトチタン酸テトライソプロピル10ml、2−メトキシエタノール50ml、エタノールアミン5mlを混合し、80℃で2時間加熱撹拌したのち、120℃で1時間加熱撹拌した。さらに、80℃で2時間、120℃で1時間加熱撹拌した。この液体をイソプロピルアルコールで20倍に希釈し、塗布液とした。
バルクヘテロ層上に、上記塗布液をスピンコート塗布した。スピンコーターの回転速度は3000rpmであった。この膜を150℃で25分加熱することにより、膜厚15nmのアモルファス酸化チタンからなる電子捕集層25が得られた。
【0087】
〔負極の蒸着〕
電子捕集層25の上にアルミニウムを100nmの厚さとなるように蒸着し、負極26を形成した。このとき、光電変換の有効面積が16cmとなるようにマスク蒸着した。
〔アニール〕
試料をホットプレートを用いて130℃で15分間加熱して、実施例3〜実施例6の有機薄膜太陽電池〔(P−1)〜(P−3)〕30を完成させた。
【0088】
〔比較例2〕
実施例1で得られた本発明の透明導電フィルム(F−1)に代えて、比較例1で得られた透明導電フィルム(CF−1)を正極として用いる以外は実施例4と同様にして、比較用有機薄膜太陽電池(CP−1)を作製した。
【0089】
〔比較例3〕
実施例1で得られた本発明の透明導電フィルム(F−1)に代えて、表面抵抗値13Ω/sqのITO付きPENフィルム(ペクセルテクノロジーズ社からPECF−IPの製品名で販売されているフィルム)を正極として用いる以外は実施例4と同様の方法で比較用の有機薄膜太陽電池(CP−2)を作製した。
【0090】
〔発電効率の測定〕
実施例2及び比較例2、3にて得られた有機薄膜太陽電池を、ペクセルテクノロジーズ社L12型ソーラシミュレーターを用いて、AM1.5G、100mW/cmの模擬太陽光を照射しながら、ソースメジャーユニット(SMU2400型、KEITHLEY社製)を用いて電圧範囲−0.1Vから1.0Vにて、電流値を測定した。得られた電流電圧特性をペクセルテクノロジーズ社I−Vカーブアナライザーを用いて評価し、特性パラメーターを算出した。測定結果を下記表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1の結果より、本発明の透明導電フィルム(F−1)〜(F−3)を正極として用いた実施例3〜6の有機薄膜太陽電池は、バスラインを有していても、バスラインの線幅が本発明の範囲外である透明導電フィルム(CP−1)を用いた比較例2やITOを正極としてなる比較例3の有機薄膜太陽電池に比べて、高い変換効率(発電効率)を発現することがわかる。
即ち、比較例3では導電層がITOであって、表面抵抗値が高いために形状因子が著しく低くなり、本発明に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、平面視による線幅が1μm以上100μm以下の導電メッシュ、平面視による線幅が1mm以上5mm以下のバスライン、及び、該導電メッシュと接触して設けられた導電性ポリマー層を有する透明導電フィルムであって、
該導電メッシュと該バスラインとが同一組成物からなる透明導電フィルム。
【請求項2】
前記導電メッシュおよび前記バスラインが、銀を含む請求項1に記載の透明導電フィルム。
【請求項3】
前記導電メッシュおよび前記バスラインが、銀および親水性ポリマーを含む請求項1又は請求項2に記載の透明導電フィルム。
【請求項4】
前記導電メッシュおよび前記バスラインが、ハロゲン化銀および親水性ポリマーを含む組成物を前記支持体上に塗布し、パターン露光及び現像を行うことで得られるパターン状の導電層である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
【請求項5】
前記導電メッシュの平面視による線幅が1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
【請求項6】
前記導電メッシュにおいて、該導電メッシュを構成する導電層の平面視によるピッチが50μm以上500μm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
【請求項7】
前記導電メッシュにおいて、該導電メッシュにより形成される開口部の面積が1×10-8以上1×10−7以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
【請求項8】
前記バスラインの平面視による線幅が1mm以上3mm以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
【請求項9】
前記バスラインを2本以上有し、該バスラインの平面視によるピッチが10mm以上100mm以下である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
【請求項10】
前記導電性ポリマー層が、体積抵抗率が1×10−2Ωcm以下のポリチオフェン誘導体を含有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の透明導電フィルム。
【請求項11】
前記ポリチオフェン誘導体が、ポリエチレンジオキシチオフェンである請求項10に記載の透明導電フィルム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の透明導電フィルムを第一電極とし、該第1電極上に、少なくとも機能性層と、対向電極とを順次有する電子デバイス。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の透明導電フィルムを第一電極とし、該第1電極上に、少なくとも光電変換層と、対向電極とを順次有する有機薄膜太陽電池。
【請求項14】
前記第一電極と光電変換層との間に電子ブロック層を備える請求項13に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項15】
前記光電変換層と前記対向電極との間に透明無機酸化物層を備える請求項13又は請求項14に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項16】
前記透明無機酸化物層が、酸化チタン及び酸化亜鉛を含有する請求項15に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項17】
支持体上に同一組成物からなる導電メッシュとバスラインとを同時に設ける工程と、少なくとも該導電メッシュ及び該バスラインから選択される少なくとも一方により形成された開口部に、該導電メッシュと接触して導電性ポリマー層を形成する工程と、を順次有する透明導電フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記支持体上に同一組成物からなる導電メッシュとバスラインとを同時に設ける工程が、支持体上にハロゲン化銀を含む組成物を塗布してハロゲン化銀含有層を形成する工程と、該ハロゲン化銀含有層をパターン露光する工程と、パターン露光したハロゲン化銀含有層を現像する工程と、現像後のハロゲン化銀含有層を定着して銀を含むパターン状の導電層を形成する工程と、を順次有する請求項17に記載の透明導電フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記支持体上に同一組成物からなる導電メッシュとバスラインとを同時に設ける工程が、支持体上に導電性物質を含む組成物を印刷法により適用して、パターン状の導電層を設ける工程である請求項17に記載の透明導電フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−59417(P2012−59417A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199298(P2010−199298)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】