説明

透明導電性フィルム

【課題】全光線透過率の低下を最小限に抑え、且つ上下面の相対的位置精度、及び可撓性に優れた透明導電性フィルムを提供する。
【解決手段】透明支持体上にハロゲン化銀乳剤を含有する感光層を塗布した銀塩感光材料を露光、現像することにより、透明支持体の両面に異なる銀パターンを形成してなることを特徴とする透明導電性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光線領域において透明性を有し、かつ透明支持体上の両面に異なるパターンの導電体層が設けられた透明導電性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、ノートPC、OA機器、医療機器、あるいはカーナビゲーションシステム等の電子機器においては、これらのディスプレイに入力手段としてタッチパネルが広く用いられている。
【0003】
タッチパネルには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性フィルムと透明導電体層付ガラスとがスペーサーを介して対向配置されており、透明導電性フィルムに電流を流し透明導電膜付き基板に於ける電圧を計測するような構造となっている。一方、静電容量方式のタッチパネルは、基材上に透明導電体層を有するものを基本的構成とし、可動部分がないことが特徴であり、高耐久性、高透過率を有するため、例えば車載用途等において適用されている。
【0004】
タッチパネル用途の透明電極(透明導電性フィルム)としては、一般にITOからなる透明導電膜がフィルム上に形成されたものが使用されてきた。しかしながらITO導電膜は、屈折率が大きく、光の表面反射が大きいため、全光線透過率が低下する問題や、可撓性が低いため屈曲した際にITO導電膜に亀裂が生じて電気抵抗値が高くなる問題があった。
【0005】
ITOに代わる透明導電材料として、基板上に薄い触媒層を形成し、その上にレジストパターンを形成した後、めっき法によりレジスト開口部に金属層を積層し、最後にレジスト層及びレジスト層で保護された下地金属を除去することにより、導電性パターンを形成するセミアディティブ方法が、例えば特開2007−287994号公報(特許文献1)、特開2007−287953号公報(特許文献2)などに開示されている。
【0006】
また近年、銀塩拡散転写法を用いた銀塩写真感光材料を導電性材料前駆体として用いる方法も提案されている。例えば特開2003−77350号公報(特許文献3)、特開2005−250169号公報(特許文献4)や特開2007−188655号公報(特許文献5)等では、支持体上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する導電性材料前駆体に、可溶性銀塩形成剤及び還元剤をアルカリ液中で作用させて、金属銀パターンを形成させる技術が開示されている。この方式によるパターニングは均一な線幅を再現することができることに加え、銀は金属の中で最も導電性が高いため、他方式に比べ、より細い線幅で高い導電性を得ることができる。さらにこの方法で得られた銀パターン膜はITO導電膜よりも可撓性が高く折り曲げに強いという利点がある。
【0007】
前述した静電容量方式を用いたタッチパネルは、通常2枚の透明導電膜を貼り合わせタッチセンサーを製造している。よって、検出分解能を高めるためには透明導電膜の細線化・高密度化が要望され、また検出位置誤差を抑えるため上下面の相対的位置精度が重要になる。加えて、2枚の基板を貼り合わせるため全光線透過率が減少してしまうという問題点があった。このような問題に対しては、複数の帯状透明導電膜が間隔をあけて平行に配置される透明プラスチック基板を、対向するよう折り曲げ、それぞれを上部基板と下部基板としたタッチパネルが特開2007−272644号公報(特許文献6)に提案されている。しかし、この方法を用いても上下2枚の透明導電膜を貼り合わせることが必要であるため、上下面の相対的位置精度が十分ではなく、加えて全光線透過率も低下してしまい十分満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−287994号公報
【特許文献2】特開2007−287953号公報
【特許文献3】特開2003−77350号公報
【特許文献4】特開2005−250169号公報
【特許文献5】特開2007−188655号公報
【特許文献6】特開2007−272644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、静電容量方式を用いたタッチパネルの透明電極として好適であり、全光線透過率の低下を最小限に抑え、且つ上下面の相対的位置精度、及び可撓性に優れた透明導電性フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の発明によって達成される。
(1)透明支持体上にハロゲン化銀乳剤を含有する感光層を塗布した銀塩感光材料を露光、現像することにより、透明支持体の両面に異なる銀パターンを形成してなることを特徴とする透明導電性フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、静電容量方式を用いたタッチパネルの透明電極として好適であり、全光線透過率の低下を最小限に抑え、且つ上下面の相対的位置精度、及び可撓性に優れた透明導電性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の透明導電性フィルムの一例を示す概略断面図
【図2】上下面が有する銀パターンの一例
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は本発明の透明導電性フィルムの一例を示す概略断面図である。図1の透明導電性フィルムは、透明支持体1の両面に、銀パターン層2を有している。透明支持体1の上下面がそれぞれ有する銀パターン層2は、上下でそれぞれパターンが異なるパターン部aを有しており、このパターンとしては各種用途に適したパターンを適宜用いることができる。図2は上下面が有する銀パターンの一例であり、パターン部aは例えば格子メッシュから構成される。
【0014】
パターン部aのメッシュの形状に関しては、様々なものが開示されている。特開平10−41682号公報では、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形、円、楕円、星形などを組み合わせた模様でありこれらの単位の単独の繰り返しあるいは2種類以上の組み合わせパターンが開示されている。国際公開第2006/040989号パンフレットでは不規則な網目構造の導電部が存在するパターンが開示されている。特開2002−223095号公報では、ストライプ状、煉瓦積み模様状のパターンが開示されている。これらのパターンの中でも、正方形、菱形及び正六角形のパターンが多用されている。本発明ではこれらいずれの形状も用いることができる。
【0015】
本発明の透明導電性フィルムは、透明支持体上にハロゲン化銀乳剤を含有する感光層(以降、ハロゲン化銀乳剤層と称す。)を塗布した銀塩感光材料を露光、現像することにより、透明支持体1の両面にそれぞれパターンが異なるパターン部aを有する。ハロゲン化銀乳剤層を塗布した銀塩感光材料を露光、現像する、いわゆる銀塩写真法を用いて透明支持体上の両面に異なる銀パターンを形成させる具体的な手順としては、以下のような方法が用いられる。
【0016】
(1)透明支持体の片面にハロゲン化銀乳剤層を塗設する。
(2)上記(1)で得られたハロゲン化銀乳剤層を露光、現像することにより銀パターンを得る。
(3)透明支持体の片面に形成された銀パターンとは反対面の透明支持体上にハロゲン化銀乳剤層を塗設する。
(4)上記(3)で得られた反対面のハロゲン化銀乳剤層を、上記(2)とは異なるパターンで露光、現像することにより、透明支持体の反対面側に銀パターンを得る。
(5)必要に応じ、上記(1)、(4)で得られた銀パターン上に金属めっき層を付加する。
【0017】
次に上記した(1)、(2)及び(3)、(4)の手順で得られる銀パターンの形成法について詳細に説明する。かかる方法としては、下記(a)、(b)または(c)に示す写真製法が挙げられる。
(a)透明支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩感光材料を露光し、現像処理を施した後、定着処理して銀パターンを形成する方法。
(b)透明支持体上に少なくとも物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩感光材料を露光し、銀塩拡散転写法に従う現像処理を施した後、不要となったハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去して銀パターンを形成する方法。
(c)透明支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩感光材料を露光し、硬化現像法に従う現像処理を施した後、不要となった未硬化部のハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去して銀パターンを形成する方法。
【0018】
上記(a)の方法は例えば特開2004−221564号公報に記載される方法であり、(b)の方法は例えば特公昭42−23745号公報に記載の方法であり、(c)の方法は例えばJ.Photo.Sci.誌11号 p 1、A.G.Tull著(1963)あるいは「The Theory of the photographic Process(4th edition,p326−327)」、T.H.James著等に記載されているように、硬化現像法に従い、基材上にレリーフ画像を形成させる方法である。なお硬化現像法とは、基材上に作製した実質的に硬膜剤を含まない未硬膜のハロゲン化銀乳剤層を、ポリヒドロキシベンゼン系等の現像主薬を含む現像液で処理することによって、現像主薬が露光されたハロゲン化銀を還元した際に、現像主薬自身から生成された酸化化合物により、ゼラチンを始めとする水溶性高分子化合物を架橋し画像状に硬膜させる方法である。
【0019】
次に上記(a)〜(c)に示した写真製法について詳細に説明する。写真製法(a)を用いた銀パターンの作製方法をタイプA、写真製法(b)を用いた銀パターンの作製方法をタイプB、写真製法(c)を用いた銀パターンの作製方法をタイプCと略して、順に説明する。なお本発明において透明支持体の片面に形成された銀パターンの作製方法と、該銀パターンとは反対面の透明支持体上に形成された銀パターンの作製方法は同じであっても異なっていても良い。
【0020】
<タイプA>
本発明のタイプAの銀パターンの作製方法は、透明支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩感光材料を露光し、現像処理を施した後、定着処理することによって銀パターンを得ることができる。透明支持体としては、プラスチック、ガラス、ゴム、セラミックス等が好ましく用いられる。これら透明支持体は全光線透過率が60%であるものが好ましい。プラスチックの中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムは、取扱い性が優れている点で、好適に用いられる。透明支持体として使用される樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの樹脂フィルムが挙げられる。
【0021】
本発明のタイプAに用いるハロゲン化銀乳剤層は、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においてもそのまま用いることもできる。
【0022】
ハロゲン化銀に含有されるハロゲン化物としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物及びフッ化物のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。ハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、当業界では周知の方法が用いられる。中でも同時混合法の一種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径の揃ったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。
【0023】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角平板状、三角形平板状、四角形平板状など)、八面体状、十四面体状など様々な形状であることができる。
【0024】
ハロゲン化銀乳剤の製造において、必要に応じて、ハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩もしくはその錯塩を共存させてもよい。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。
【0025】
ハロゲン化銀乳剤は、必要に応じて、分光増感することもできる。また、ハロゲン化銀乳剤は必ずしもネガ感光性でなくてもよく、必要に応じて、ポジ感光性を持つ直接反転乳剤としてもよい。これにより、ネガ型をポジ型に、ポジ型をネガ型に変換することができる。直接反転乳剤に関しては、特開平8−17120号公報、同平8−202041号公報に記載されている方法によって作製することができる。
【0026】
本発明のタイプAで用いるハロゲン化銀乳剤層の塗布銀量としては、銀パターンを形成させるために、少なくとも0.01g(硝酸銀換算)/m以上とすることが望ましい。特に得られる銀パターンの導電性の観点から2.0〜4.0g(硝酸銀換算)/mが好ましい。塗布銀量があまり多すぎると、長い現像時間を必要としたり、透明支持体に近い側のハロゲン化銀乳剤粒子の感光性が低下したりするなどの問題があるため、5.0g(硝酸銀換算)/m程度を上限とすべきである。
【0027】
本発明のタイプAで用いるハロゲン化銀乳剤層はバインダーを含有する。含有するバインダーは、天然ポリマー、水溶性ポリマー、非水溶性の合成ポリマーなどがある。
【0028】
本発明における好ましい天然ポリマーとしてはゼラチン、カゼイン、アルブミンなどの蛋白質。澱粉、デキストリン等の多糖類、セルロース及びその誘導体(例えばカルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、メチルセルロースなど)、アルギン酸、カラギーナン、フコイダン、キトサン、ヒアルロン酸などを用いることができ、その中でも最も好ましい天然バインダーはゼラチンである。またコハク化ゼラチンなど公知の方法で修飾した天然ポリマーを用いることもできる。
【0029】
本発明において用いる水溶性の合成ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、ポリリジン、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらのグラフト重合ポリマーなども用いることができる。
【0030】
本発明において用いる非水溶性の合成ポリマーとしては、単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスの水系分散物を用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン、スチレン・ブタジエン、スチレン・p−メトオキシスチレン、スチレン・酢酸ビニル、酢酸ビニル・塩化ビニル、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル、メチルメタクリレート・アクリロニトリル、メチルメタクリレート・ブタジエン、メチルメタクリレート・スチレン、メチルメタクリレート・酢酸ビニル、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン、メチルアクリレート・アクリロニトリル、メチルアクリレート・ブタジエン、メチルアクリレート・スチレン、メチルアクリレート・酢酸ビニル、アクリル酸・ブチルアクリレート、メチルアクリレート・塩化ビニル、ブチルアクリレート・スチレン等がある。本発明で用いる高分子ラテックスの平均粒径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.8μmである。
【0031】
ハロゲン化銀乳剤層は架橋剤で架橋されていることが好ましい。かかる架橋剤としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲン化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることができる。架橋剤量としては、ハロゲン化銀乳剤層に含まれる天然ポリマーや水溶性の合成ポリマー等の水溶性高分子化合物に対して0.1〜30質量%をハロゲン化銀乳剤層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。
【0032】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0033】
ハロゲン化銀乳剤層が塗設される側の面には、必要に応じて保護層、接着層等の非感光性層を設けることができる。保護層は、ハロゲン化銀乳剤層の上に設け、傷を防止する目的で設けられる。接着層は透明支持体と銀パターンとの間の接着性を向上する目的等で設けられる。従って、接着層は透明支持体とハロゲン化銀乳剤層との間に設けることが好ましい。
【0034】
これらの非感光性層は、水溶性高分子化合物を主たるバインダーとする層である。ここで主たるとは、非感光性層の全固形分塗布量の50質量%以上が水溶性高分子化合物であることを意味する。また、ここでいう水溶性高分子化合物とは、現像液で容易に膨潤し、現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール、等を用いることができる。特に好ましい水溶性高分子化合物は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等の蛋白質である。非感光性層のバインダー量としては、各々の用途によって異なるが、0.001〜10g/mの範囲が好ましい。ただし保護層を設ける場合は、銀パターンが表面に露出しにくくなるので、できるだけ薄い方が好ましく、好ましい使用量は0.1g/m以下、さらに好ましくは0.05g/m以下である。
【0035】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができ、前述の水溶性高分子化合物の架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0036】
また上記した各層の塗布は、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができ、その塗布方式に合わせて、界面活性剤及び増粘剤等の各種塗布助剤を用いることができる。
【0037】
上記した各構成層中には、ハロゲン化銀乳剤の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることが好ましい。ハレーション防止剤としては、例えば接着層等のハロゲン化銀乳剤層と透明支持体の間に設けられる層に用いることが好ましく、イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に用いることが好ましい。これら非増感性染料または顔料の添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、0.01〜1g/mの範囲が好ましい。
【0038】
また上記した各構成層中には現像主薬を含有させてもよい。現像主薬としては具体的にヒドロキノン、アスコルビン酸、p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン、フェニドン等が挙げられる。
【0039】
次に、銀パターンを形成するための方法について説明する。銀パターンを形成するには、前記ハロゲン化銀乳剤層を露光し、現像処理する。露光方法としては、透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いて走査露光する方法等がある。
【0040】
露光後の現像処理には、ハロゲン化銀乳剤層がネガ型である場合、露光により、光を照射した部分のハロゲン化銀を還元する現像処理工程と、光を照射していない部分のハロゲン化銀を溶解除去するための定着処理工程がある。一方、ハロゲン化銀乳剤層がポジ型である場合、露光により、光を照射していない部分のハロゲン化銀を還元する現像処理工程と、光を照射した部分のハロゲン化銀を溶解除去するための定着処理工程がある。また、ネガ型及びポジ型のいずれのハロゲン化銀乳剤を用いた場合においても、現像処理工程と定着処理工程との間に、例えば、酢酸、クエン酸等を含有する酸性水溶液を用いて現像停止処理、現像処理または定着処理で生成した不要な塩を除去するための水洗処理を行ってもよい。
【0041】
現像処理で用いる現像液は、基本組成として現像主薬、保恒剤、アルカリ剤、カブリ防止剤等からなる。現像主薬としては具体的にヒドロキノン、アスコルビン酸、p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン、フェニドン等が挙げられる。これらの一部は上記した各構成層中に含有させてもよい。保恒剤としては、亜硫酸イオンなどがある。アルカリ剤は、現像主薬の還元性を発揮するために必要であり、現像液のpHを9以上、好ましくは10以上になるように添加される。また安定に塩基性を保つための、炭酸塩やリン酸塩のような緩衝剤も用いられる。さらに現像核を持たないハロゲン化銀粒子が還元されないように加えられるカブリ防止剤としては、臭化物イオン、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなどが挙げられる。
【0042】
さらに、上記した現像液には可溶性銀錯塩形成剤を含有させることが好ましい。可溶性銀錯塩形成剤としては、具体的にはチオ硫酸アンモニウムやチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、1,10−ジチア−18−クラウン−6、2,2′−チオジエタノールなどのチオエーテル類、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0043】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中で特にアルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0044】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。また可溶性銀錯塩形成剤量としては0.1〜40g/L、好ましくは1〜20g/Lである。現像処理温度は通常15℃から45℃の間で選ばれるが、より好ましくは25℃〜40℃である。現像時間としては、生産効率を考慮して、120秒以下が好ましい。
【0045】
現像を行うための現像液の供給方式は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯流された現像液中に、前記露光済みの銀塩感光材料を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上に現像液を1m当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0046】
定着処理は未現像部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる。定着処理には公知の銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができ、「写真の化学」(笹井著、写真工業出版社(株))p321記載の定着液などが挙げられる。
【0047】
その中でも、チオ硫酸塩以外の脱銀剤が含まれる定着液が好ましい。その場合の脱銀剤としてはチオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、1,10−ジチア−18−クラウン−6、2,2′−チオジエタノールなどのチオエーテル類、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0048】
これらの脱銀剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンとしては、前記現像液で述べた可溶性銀錯塩形成剤として用いるものと同じ化合物を用いることができる。また、チオシアン酸塩については脱銀能力が高いが、人体に対する安全性の観点から使用することは好ましくない。
【0049】
これらの脱銀剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。また、脱銀剤量としては脱銀剤の合計で、1〜500g/Lが好ましく、より好ましくは10〜300g/Lの範囲である。
【0050】
定着液は脱銀剤の他にも保恒剤として亜硫酸塩、重亜硫酸塩、pH緩衝剤として酢酸、ホウ酸アミン、リン酸塩などを含むことができる。また、硬膜剤として水溶性アルミニウム(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、カリ明ばん等)、アルミニウムの沈澱防止剤として二塩基酸(例えば、酒石酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム等)または三塩基酸(クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸カリウム等)も含有させることができる。定着液の好ましいpHは脱銀剤の種類により異なり、特にアミンを使用する場合は8以上,好ましくは9以上である。定着処理温度は通常10℃から45℃の間で選ばれるが、より好ましくは18℃〜30℃である。
【0051】
また本発明における、透明支持体上の両面に異なる銀パターンを形成させる前記(1)〜(5)で示した具体的な手順において、(2)及び(4)の露光を行う際には、上下面の相対的位置精度を上げるため、ピンバー等を用いて原稿と、透明支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩感光材料を固定し、露光することが好ましい。
【0052】
<タイプB>
本発明のタイプBの銀パターンの作製方法は、透明支持体上に少なくとも物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する銀塩感光材料を露光し、銀塩拡散転写法に従う現像処理を施した後、不要となったハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去することによって銀パターンを得ることができる。かかる透明支持体としては前述のタイプAの透明支持体と同義である。
【0053】
本発明のタイプBで用いる物理現像核層は、少なくとも物理現像核を含有する。物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属流化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、コーティング法または浸漬処理法によって、透明支持体上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で0.1〜10mg/m程度が適当である。
【0054】
また上記物理現像核層は、水溶性高分子化合物を含有することもできる。水溶性高分子化合物の添加量は、物理現像核に対して10〜500質量%程度が好ましい。水溶性高分子化合物としては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。
【0055】
上記親水性ポリマーの中でもアミノ基を有する水溶性高分子が好ましい。1級アミノ基もしくは2級アミノ基を有する水溶性高分子としては下記のような水溶性高分子が挙げられる。ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリリジン等の蛋白質、ヒアルロン酸などムコ多糖類、「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)2.6.4章記載のアミノ化セルロース、ポリエチレンイミン、アミノ基及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを単独で重合して成るホモポリマー、アミノ基及びエチレン性不飽和二重結合を有する複数種のモノマーを共重合して成るコポリマー、例えば酢酸ビニル、ビニルピロリドンなどの1級もしくは2級アミノ基を有さない他のモノマーと、アミノ基及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合して成るコポリマー等が挙げられる。ホモポリマーとしては例えばポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミンなど、アミノ基とエチレン性不飽和の二重結合とを有する複数種のモノマーを共重合してなるコポリマーとしては例えばアリルアミンとジアリルアミンの共重合体など、アミノ基及びエチレン性不飽和二重結合を有さないモノマーと、アミノ基及びエチレン性不飽和の二重結合を有するモノマーとを共重合して成るコポリマーとしては例えばジアリルアミンと無水マレイン酸との共重合体、ジアリルアミンと二酸化硫黄との共重合体などが挙げられる。この中でも最も好ましいのがポリエチレンイミンである。
【0056】
上記親水性ポリマーの好ましい添加量は10〜100mg/mであり、より好ましくは30〜70mg/mである。
【0057】
本発明に用いる物理現像核層には架橋剤を含有させることができる。該架橋剤としてはホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることができる。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グリオキザール、グルタルアルデヒドである。架橋剤は1〜20mg/m含有させるのが好ましく、特に3〜10mg/mが好ましい。さらにはエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物を併用することが好ましい。エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物の好ましい添加量は3〜80mg/mである。
【0058】
さらに物理現像核層にはリサーチ・ディスクロージャー#17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。
【0059】
物理現像核層の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。
【0060】
本発明のタイプBに用いるハロゲン化銀乳剤としては、前述のタイプAと同様のハロゲン化銀乳剤が用いられるが、本発明のタイプBに用いるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80mol%以上含有するのが好ましく、特に90mol%以上が塩化物であることが特に好ましい。また、ハロゲン化銀乳剤は、前述のタイプAと同様、必要に応じて分光増感することもできる。また、ハロゲン化銀乳剤は必ずしもネガ感光性でなくてもよく、必要に応じて、ポジ感光性を持つ直接反転乳剤としてもよい。ハロゲン化銀乳剤層の塗布銀量としては、前述のタイプAと同様、銀パターンを形成させるために、少なくとも0.01g(硝酸銀換算)/mであることが望ましく、得られる銀パターンの導電性の観点から2.0〜4.0g(硝酸銀換算)/mが好ましい。
【0061】
ハロゲン化銀乳剤層は、前述のタイプAと同様、水溶性高分子化合物をバインダーとして含む。好ましいバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。また、タイプAに用いるハロゲン化銀乳剤層と同様、必要に応じて水溶性高分子化合物の架橋剤を利用してもよいが、本発明のタイプBでは現像処理において、現像後に不要となったハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去するため、水溶性高分子化合物の架橋剤を用いる場合は、上記水洗除去を妨げない範囲で用いることが可能である。写真用添加剤についても、前述のタイプAのハロゲン化銀乳剤層と同様、種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。さらに、本発明のタイプBに用いるハロゲン化銀乳剤層には、前述のタイプAと同様、塗布方式に合わせて、界面活性剤及び増粘剤等の各種塗布助剤を用いることができ、塗布方式についても同じ方法を用いることができる。
【0062】
ハロゲン化銀乳剤層が塗設される側の面には、前述のタイプAと同様、必要に応じて保護層、接着層等の非感光性層を設けることができるが、接着層は透明支持体と銀パターンとの間の接着性を向上する目的で設けられるので、透明支持体と物理現像核層との間に設けることが好ましい。保護層は、現像処理で銀塩感光材料中の銀が系外に拡散するのを抑制し、物理現像核上への銀の析出効率を高める効果がある。従って保護層はハロゲン化銀乳剤層の上に設けることが好ましい。これらの非感光性層は、水溶性高分子化合物を主たるバインダーとする層であり、前述のタイプAと同様の水溶性高分子化合物を用いることができる。非感光性層の水溶性高分子化合物量としては、各々の用途によって異なるが、0.001〜10g/mの範囲が好ましい。また、これら非感光性層には水溶性高分子化合物の架橋剤を用いることができるが、前述の通りタイプBの現像処理において、現像後に不要なハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去するため、非感光性層に水溶性高分子化合物の架橋剤を用いる場合は、上記現像後のハロゲン化銀乳剤層の水洗除去を妨げない範囲で用いることが可能である。
【0063】
またタイプBにおいては、さらに非感光性層として水洗除去促進層を設けることが好ましい。この場合、水洗除去促進層は、不要なハロゲン化銀乳剤層を除去しやすくする目的で設けられるので、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間に設けることが好ましい。水洗除去促進層は、水溶性高分子化合物をバインダーとして用い、好ましいバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。また、水洗除去促進層は、水溶性高分子化合物の架橋剤を用いることは好ましくない。水溶性高分子化合物の塗布量としては、1.0g/m以下が好ましい。水溶性高分子化合物の塗布量があまり多すぎると、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との距離が長くなるので、銀パターンが析出する際に、銀の析出量が減少したり、画質が低下したりする等の問題があるため、0.3g/m程度が好ましい。
【0064】
タイプBにおいても、前述のタイプAと同様、各構成層中にハロゲン化銀乳剤の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることが好ましい。ハレーション防止剤としては、上記接着層、物理現像核層、水洗除去促進層等のハロゲン化銀乳剤層と透明支持体の間に設けられる層に用いることが好ましく、これら2つ以上の層に分けて用いてもよい。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に用いることが好ましい。これら非増感性染料または顔料の添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、約0.01〜約1g/mの範囲が好ましい。また、本発明のタイプBにおいては、前述のタイプAと同様、必要に応じて公知の写真用添加剤、界面活性剤、マット剤、滑剤などを含有することができる。
【0065】
またタイプBにおいても、前述のタイプAと同様、各構成層中に現像主薬を含有させてもよい。現像主薬としては、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−p−クロロフェニル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられ、これらを2種類以上併用して用いることができる。
【0066】
次に、本発明のタイプBにおける銀パターンを形成するための方法について説明する。本発明のタイプBの銀パターンを形成するには、ハロゲン化銀乳剤層を露光し、現像処理する必要がある。露光方法としては、前述のタイプAと同様の方法を用いることができる。またタイプAと同様、上下面の相対的位置精度を上げるため、ピンバー等を用いて原稿と、透明支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩感光材料を固定し、露光することが好ましい。
【0067】
タイプBの現像処理には、画像を形成する部分のハロゲン化銀を溶解し、拡散させて、物理現像核上で還元し、析出させる現像処理工程と、不要となったハロゲン化銀層を水洗除去するための水洗除去工程がある。この場合、ネガ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合、露光により光を照射していない部分が銀パターンを形成する部分となり、ポジ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合は、露光により光を照射した部分が銀パターンを形成する部分となる。また、ネガ型及びポジ型のいずれのハロゲン化銀乳剤を用いた場合においても、現像処理工程と水洗除去工程との間に、例えば、酢酸、クエン酸等を含有する酸性水溶液を用いて現像停止処理を行ってもよい。
【0068】
本発明のタイプBの現像処理で用いる現像液は、可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための現像主薬である。
【0069】
現像主薬としては、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−p−クロロフェニル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられ、これらを2種類以上併用して用いることができる。
【0070】
本発明のタイプBの現像液においても、前述のタイプAと同様、上記した現像主薬は各構成層中に含有させてもよいし、現像液中に含有させてもよく、さらに両方に含有してもよいが、現像液中に含有させるのが好ましい。現像液中への現像主薬の含有量は、1〜100g/Lの範囲で用いるのが適当である。各構成層に含有させる場合、現像主薬はいずれの層に含有されても良く、特にハロゲン化銀乳剤層に含有されていることが好ましい。この場合の好ましい量は、水溶性高分子化合物1g当たり、0.005〜0.5gの範囲である。これら現像薬は塗液に溶解させても各層に含有させても良いし、オイル分散液に溶解させて各層中に含有させることも可能である。
【0071】
タイプBに用いる現像液が含有するアルカリ剤もまた、前述のタイプAと同様のものを用いることができる。現像液のpHは、pH10以上が好ましく、さらに11〜14の範囲が好ましい。また、タイプBに用いる現像液にも、前述のタイプAと同様、現像速度をコントロールするための現像抑制剤、現像主薬の保恒剤等、写真現像の分野で公知の化合物を含有させることができる。
【0072】
タイプBに用いる現像液は可溶性銀錯塩形成剤を含有する。可溶性銀錯塩形成剤としては、前述のタイプAの現像液に利用する可溶性銀錯塩形成剤と同義である。可溶性銀錯塩形成剤の使用量としては、0.1〜40g/L、好ましくは1〜20g/Lである。
【0073】
本発明のタイプBの現像処理の温度としては、現像処理温度は、15℃〜30℃が好ましく、ハロゲン化銀乳剤層が現像液中に溶出するのを防止するために18℃〜23℃の範囲が好ましい。現像時間としては、生産効率を考慮して、120秒以下が好ましい。タイプBの現像を行うための現像液の供給方式は、前述のタイプAと同様、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。
【0074】
次に、本発明のタイプBの現像処理における水洗除去工程について説明する。本発明のタイプBの現像処理における水洗除去は、現像処理後に不要となったハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層を除去する。従って、水洗除去の処理液としては、水を主成分とする。また、この処理液には緩衝成分を含有してもよく、除去したゼラチンの腐敗を防止する目的で、防腐剤を含有させてもよい。
【0075】
水洗除去方法としては、スクラビングローラ等を用いて処理液をシャワー方式、スリット方式等を単独、あるいは組み合わせて使用できる。また、シャワーやスリットを複数個設けて、除去の効率を高めることもできる。また、水洗除去の代わりに、剥離紙等に転写剥離する方法を用いてもよい。剥離紙等で転写剥離する方法としては、ハロゲン化銀乳剤層上の余分な現像液を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0076】
<タイプC>
本発明のタイプCにおける銀パターンの形成材料は、透明支持体上に設けられたハロゲン化銀乳剤層を露光し、硬化現像処理法に従う現像処理を施した後、不要な部分のハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去することによって、銀パターンを得ることができる。この方法においては感光性のハロゲン化銀粒子を像様に露光し潜像を形成し、これを触媒としてハロゲン化銀を還元する時に、ハイドロキノン等の現像試薬の酸化体がゼラチンの硬化作用を有しい、金属銀を形成すると同時に金属銀周囲のゼラチンを硬化させ、画像を形成させた後、水洗除去して不要な部分である非硬化部を洗い流す。その結果、銀粒子はバインダーに保持されており銀パターンが形成するが、非画像部には透明支持体表面が露出する。透明支持体としては、前述のタイプA及びタイプBで用いられる素材、性能のものを用いることができる。
【0077】
本発明のタイプCに用いるハロゲン化銀乳剤としては、前述のタイプAと同様のハロゲン化銀乳剤が用いられる。また、ハロゲン化銀乳剤は、前述のタイプA及びタイプBと同様、必要に応じて分光増感することもできる。ハロゲン化銀乳剤は必ずしもネガ感光性でなくてもよく、必要に応じて、ポジ感光性を持つ直接反転乳剤としてもよい。ハロゲン化銀乳剤層の塗布銀量としては、前述のタイプA及びタイプBと同様、銀パターンを形成させるために、少なくとも0.01g(硝酸銀換算)/mとすることが望ましく、得られる銀パターンの導電性の観点から、2.0〜4.0g(硝酸銀換算)/mが好ましい。
【0078】
ハロゲン化銀乳剤層は、前述のタイプA及びタイプBのハロゲン化銀乳剤層と同様、水溶性高分子化合物をバインダーとして含む。好ましいバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。また同様に必要に応じて水溶性高分子化合物の架橋剤を利用してもよい。しかしタイプCでは現像処理において、現像後に不要な部分のハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去するため、前述のタイプBと同様、水溶性高分子化合物の架橋剤を用いる場合は、上記水洗除去を妨げない範囲で用いることが可能である。写真用添加剤についても、前述のタイプA及びタイプBのハロゲン化銀乳剤層と同様、種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。さらに前述のタイプA及びタイプBと同様、塗布方式に合わせて、界面活性剤及び増粘剤等の各種塗布助剤を用いることができ、塗布方式についても同様の方法を用いることができる。
【0079】
ハロゲン化銀乳剤層が塗設される側の面には、前述のタイプA及びBと同様、必要に応じて、保護層、接着層等の非感光性層を設けることができるが、接着層は、透明支持体と銀パターンとの間の接着性を向上する目的で設けられるので、前述のタイプAと同様、透明支持体とハロゲン化銀乳剤層との間に設ける。また、保護層は、傷を防止する目的で設けられるので、ハロゲン化銀乳剤層の上に設けられる。これらの非感光性層は、前述のタイプAと同様、水溶性高分子化合物を主たるバインダーとする層であり、前述のタイプA及びタイプBと同様の非感光性層に用いられる水溶性高分子化合物を用いることができる。非感光性層の水溶性高分子化合物量としては、各々の用途によって異なるが、0.001〜10g/mの範囲が好ましい。またこれら非感光性層には水溶性高分子化合物の架橋剤を用いることができるが、現像後に不要な部分のハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去するため、非感光性層に水溶性高分子化合物の架橋剤を用いる場合は、上記現像後のハロゲン化銀乳剤層の水洗除去を妨げない範囲で用いることが可能である。
【0080】
また、本発明のタイプCのハロゲン化銀乳剤層は、膨潤抑制剤を含有することが好ましい。本発明における膨潤抑制剤とは、現像処理する際に水溶性高分子化合物が膨潤するのを抑制し、銀パターン部における銀の拡散を抑制することで銀の密度を高める作用がある。銀の密度が高くなると、導電性が向上したり、あるいはめっき処理における金属の析出性が向上する。膨潤抑制剤として作用するかどうかはpH3.5の5質量%ゼラチン水溶液に膨潤抑制剤0.35mol/Lになるよう加えてゼラチンの沈澱が発生するかどうかで調べられ、この試験でゼラチンの沈澱が発生するような薬品は全て膨潤抑制剤として作用する。膨潤抑制剤の具体例としては、例えば硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化マンガン、リン酸マグネシウム等の無機塩類、あるいは例えばベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−トルエンスルホン酸、フェノールジスルホン酸、α−ナフタレンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、ジナフチルメタンスルホン酸などのスルホン酸類、例えばポリビニルベンゼンスルホン酸、無水マレイン酸とビニルスルホン酸の共重合物、ポリビニルアクリルアミドなどの高分子沈澱剤として用いられる化合物などが挙げられる。これら膨潤抑制剤は単独でも組み合わせて用いても良いが、無機塩類、特に硫酸塩類を使用することが好ましい。これら膨潤抑制剤の好ましい含有量は0.01〜10g/m、さらに好ましくは0.1〜2g/mである。
【0081】
タイプCの銀パターン形成方法では、前述のタイプBと同様、非感光性層として水洗除去促進層を設けてもよい。この場合、透明支持体とハロゲン化銀乳剤層との間に設けることが好ましい。水洗除去促進層は、前述のタイプBと同様の水溶性高分子化合物をバインダーとして用いることができる。
【0082】
本発明のタイプCにおいても、前述のタイプA及びタイプBと同様、各構成層中にハロゲン化銀乳剤の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることが好ましい。また同様に、必要に応じて公知の写真用添加剤、界面活性剤、マット剤、滑剤などを含有することができる。
【0083】
また、本発明のタイプCにおいては、各構成層中に硬化現像主薬を含有させることが好ましい。硬化現像主薬としては、ポリヒドロキシベンゼン、例えばハイドロキノン、カテコール、クロロハイドロキノン、ピロガロール、ブロモハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、トルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,3−ジクロロハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,3−ジブロモハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシ−2−アセトフェノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、4−フェニルカテコール、4−t−ブチルカテコール、4−s−ブチルピロガロール、4,5−ジブロモカテコール、2,5−ジエチルハイドロキノン、2,5−ジベンゾイルアミノハイドロキノン、等がある。また、アミノフェノール化合物、例えばN−メチル−p−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、p−ベンジルアミノフェノール、2−メチル−p−アミノフェノール、2−ヒドロキシメチル−p−アミノフェノールなど、また、その他にも例えば特開2001−215711号公報、特開2001−215732号公報、特開2001−312031号公報、特開2002−62664号公報記載の公知の硬化現像主薬を用いることができるが、特にベンゼン核の少なくとも1,2位または1,4位にヒドロキシル基が置換したベンゼンが好ましい。また、これらの硬化現像主薬を併用して用いることも可能である。さらに、3−ピラゾリドン類、例えば1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、及び1−p−クロロフェニル−3−ピラゾリドンなどの公知の写真現像液に用いる還元剤を上記硬化現像主薬に併せて用いることも可能である。
【0084】
これら硬化現像薬は各構成層のどの層に含有されても良いが、ハロゲン化銀乳剤層もしくは下引き層に含有されることが好ましく、特にハロゲン化銀乳剤層に含有されていることが好ましい。含有する好ましい量はハロゲン化銀乳剤層の水溶性バインダーを耐水化できるだけの量であるため、使用する水溶性バインダーの量に応じて変化する。好ましい硬化現像薬の量は、水溶性高分子化合物1g当たり、0.005〜0.5g、さらに好ましくは0.01〜0.4gである。これら硬化現像薬は塗液に溶解させても各層に含有させても良いし、オイル分散液に溶解させて各層中に含有させることも可能である。
【0085】
次に、本発明のタイプCにおける銀パターンを形成するための方法について説明する。銀パターンを形成するには、ハロゲン化銀乳剤層を露光し、現像処理する必要がある。露光方法としては、前述のタイプA及びタイプBと同様の方法を用いることができる。またタイプAと同様、上下面の相対的位置精度を上げるため、ピンバー等を用いて原稿と、透明支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩感光材料を固定し、露光することが好ましい。
【0086】
本発明のタイプCの現像処理には、画像を形成する部分のハロゲン化銀を還元すると同時に水溶性高分子化合物を硬化させる現像処理工程と、不要な部分である非硬化部を洗い流す水洗除去工程がある。ネガ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合、露光により光を照射した部分が、画像を形成する部分となり、ポジ型のハロゲン化銀乳剤を用いた場合は、露光により、光を照射していない部分が画像を形成する部分となる。また、ネガ型及びポジ型のいずれのハロゲン化銀乳剤を用いた場合においても、現像処理工程と水洗除去工程との間に、例えば、酢酸、クエン酸等を含有する酸性水溶液を用いて現像停止処理を行ってもよい。
【0087】
本発明のタイプCの現像処理で用いる現像液には、アルカリ性物質として、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3リン酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、粘稠剤として、例えばカルボキシメチルセスロース、現像助薬として、例えば3−ピラゾリジノン類、カブリ防止剤として、例えば臭化カリウム、現像変性剤として、例えばポリオキシアルキレン化合物、ハロゲン化銀溶剤として、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、チオサリチル酸、メソイオン性化合物等の添加剤等を含ませることができる。現像液のpHは通常10〜14である。前述のタイプBの現像液に用いるような保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウムなどは硬化現像による硬化反応を停める作用があるので、本発明における硬化現像液では保恒剤は少なくとも20g/L以下の使用量、好ましくは10g/L以下の使用量が好ましい。
【0088】
タイプCの現像液には、銀塩感光材料に硬化現像薬を含有させない場合は硬化現像薬を含有する。硬化現像薬としては、前記ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのと同様の硬化現像薬を用いることができる。好ましい硬化現像薬の含有量は1〜50g/Lである。硬化現像薬を現像液中に含有させる場合、保恒性が悪く、直ぐに空気酸化してしまうので、使用の直前にアルカリ性水溶液に溶解することが好ましい。
【0089】
また、本発明のタイプCの現像液には膨潤抑制剤を含有することが好ましい。膨潤抑制剤としては、前述の膨潤抑制剤を用いることができる。好ましい膨潤抑制剤の含有量は50〜300g/L、好ましくは100〜250g/Lである。
【0090】
本発明のタイプCの現像温度としては、2℃〜30℃であり、10℃〜25℃がより好ましい。現像時間は5秒〜30秒であり、好ましくは5秒〜10秒である。現像時間としては、生産効率を考慮して、120秒以下が好ましい。タイプCの現像を行うための現像液の供給方式は、前述のタイプA及びタイプBと同様、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。特に硬化現像薬含有硬化現像液を用いる場合には塗布方式にし、硬化現像液を繰り返し用いないようにする方が好ましい。
【0091】
次にタイプCの現像処理における水洗除去工程について説明する。タイプCの現像処理における水洗除去は、現像処理後に不要な部分のハロゲン化銀乳剤層等の透明支持体の上に設けられた層を除去する。従って、前述のタイプBと同様の水洗除去処理液及び方法を利用できる。
【0092】
本発明のタイプCにおいては、前記現像液で一旦現像した後、さらにハロゲン化銀溶剤を含む第2の現像液を用いて現像処理する方法を用いることができる。この方法により、第1の現像処理で硬化されたレリーフ像中にある銀を、第2の現像処理で増大させることもできる。上記第2の現像工程はハロゲン化銀乳剤層の水洗除去工程の前であっても、後であっても良いが、非画像部のハロゲン化銀も銀の供給源として使用できることから水洗除去前に行うことが好ましい。また、第2の現像液に銀塩を加えるなど、さらなる銀イオンの供給を行い、第2の現像工程でより銀を大きくすることもできる。
【0093】
上記したタイプA及びタイプCの方法で得られた銀パターンにはハロゲン化銀乳剤層が含有するバインダーが存在するが、一方、タイプBの銀塩拡散転写法による方法で得られた銀パターン中に存在するバインダーは極微量である。これは銀塩拡散転写法が、画像を形成する部分のハロゲン化銀を溶解し拡散させて、物理現像核上で銀が析出することによる。従って本発明において最も好ましい銀パターンの形成法はタイプBの方法である。
【0094】
上記したタイプA〜Cの写真製法で作製した銀パターンを形成した透明導電性材料において、さらに高い導電性を得るため、あるいは銀パターンの色調を変えるためなどの種々の目的で、めっき処理を行うことが可能である。可能なめっき処理としては、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、または無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。
【0095】
本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術、例えば無電解ニッケルめっき、無電解コバルトめっき、無電解金めっき、銀めっきなどを用いることができるが、上記の必要な導電性と透明性を得るためには無電解銅めっきを行うことが好ましい。
【0096】
無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅など銅の供給源、ホルマリンやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボランなど還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソ−エリトリトール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール,グリコールエーテルジアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのpH調整剤などが含有される。さらにその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル、o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物などを含有させることもできる。めっき液は安定性を増すためエアレーションを行うことが好ましい。
【0097】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミンなど銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難いなどということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸などが挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基板の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105などに詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことで本発明の目的を達することができる。
【0098】
本発明において銅以外の無電解めっき処理を行う場合は例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p406〜432記載の方法などを用いることができる。
【0099】
本発明においては電解めっきを施すこともできる。電解めっき法としては銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっき、スズめっき等の公知のめっき方法を用いることができ、その方法として例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)記載の方法を用いることができる。どのめっき法を用いるかは製造する導電性材料の用途によって異なるが、導電性をさらに高めるためにめっきする場合、銅めっきやニッケルめっきが好ましい。銅めっきのめっき法として好ましい方法としては硫酸銅浴めっき法やピロリン酸銅浴めっき法、ニッケルめっき法としてはワット浴めっき法、黒色めっき法などが好ましい。
【0100】
本発明においてはめっき処理の後、酸化処理を行うことも可能である。酸化処理としては、種々の酸化剤を用いた公知の方法を用いることができる。酸化処理液には酸化剤としてEDTA鉄塩、DTPA鉄塩、1,3−PDTA鉄塩、β−ADA鉄塩、BAIDA鉄塩などの各種アミノポリカルボン酸鉄塩、重クロム酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、赤血塩などを用いることができるが、環境負荷が少なく、安全なアミノポリカルボン酸鉄を用いることが好ましい。酸化剤の使用量は0.01〜1mol/L、好ましくは0.1〜0.3mol/Lである。その他に促進剤として臭化物、ヨウ化物、グアニジン類、キノン類、ヴァイツラジカル、アミノエタンチオール類、チアゾール類、ジスルフィド類、ヘテロ環メルカプト類など公知のものを用いることもできる。
【実施例】
【0101】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
<実施例1>
透明支持体上に少なくとも物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層を有する銀塩感光材料を露光し、銀塩拡散転写法に従う現像処理を施した後、不要となったハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去するタイプBの方法に従い、本発明の透明導電性フィルムを下記のようにして作製した。
【0103】
タイプBに用いる銀塩感光材料を作製するために、透明支持体として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。なおこの透明支持体の全光線透過率は91%である。
【0104】
次に下記処方に従い、物理現像核層塗液を作製し、透明支持体上に塗布、乾燥して物理現像核層を設けた。
【0105】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0106】
<物理現像核層塗液の調製>各1m当たり
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキザール水溶液 0.2ml
界面活性剤(S−1) 4mg
デナコールEX−830 50mg
(ナガセケムテックス(株)製ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)
10質量%SP−200水溶液 0.5mg
(日本触媒(株)製ポリエチレンイミン;平均分子量10,000)
【0107】
続いて、透明支持体に近い方から順に下記組成の中間層、ハロゲン化銀乳剤層、及び保護層を上記物理現像核液層の上に塗布、乾燥して、銀塩感光材料1を得た。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い、金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0108】
<中間層組成/1mあたり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
染料1
【0109】
【化1】

【0110】
【化2】

【0111】
<ハロゲン化銀乳剤層1組成/1mあたり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0112】
<保護層1組成/1mあたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0113】
このようにして得た銀塩感光材料と、図2のパターン1を有する透過原稿(線幅20μm、ピッチ1mmの格子メッシュからなる、一辺が4mmのパターン部aを有する透過原稿)とをピンバーにて固定、密着し、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介して露光した。
【0114】
その後、下記拡散転写現像液中に20℃で60秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層、中間層、及び保護層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。こうして透明支持体上に厚み0.1μmの銀パターンを得た。
【0115】
<拡散転写現像液組成>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000ml
pH=12.2に調整する。
【0116】
上記のようにして得られた銀パターンとは反対側の面に、同様の方法にて物理現像核層を設け、さらに中間層、ハロゲン化銀乳剤層、保護層をこの順に塗布した。このようにして作製した銀塩感光材料2と、図2のパターン2を有する透過原稿(線幅20μm、ピッチ1mmの格子メッシュからなる、一辺が4mmのパターン部aを有する透過原稿)とをピンバーにて固定、密着し、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介して露光した。
【0117】
その後、上記拡散転写現像液中に20℃で60秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層、中間層、及び保護層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。こうして先に設けた銀パターンとは異なるパターン(厚み0.1μm)を、透明支持体の反対面側に有する透明導電性フィルムを得た。
【0118】
<比較例1>
実施例1において作製した銀塩感光材料1と、図2のパターン1を有する透過原稿(線幅20μm、ピッチ1mmの格子メッシュからなる、一辺が4mmのパターン部aを有する透過原稿)とをピンバーにて固定、密着し、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介して露光し、その後、実施例1と同様の方法で現像処理して、透明支持体上に厚み0.1μmの銀パターンを得た。
【0119】
次に、実施例1において作製した銀塩感光材料1と、図2のパターン2を有する透過原稿(線幅20μm、ピッチ1mmの格子メッシュからなる、一辺が4mmのパターン部aを有する透過原稿)とをピンバーにて固定、密着し、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介して露光し、その後、実施例1と同様の方法で現像処理して、透明支持体上に厚み0.1μmの銀パターンを得た。
【0120】
このようにして得られた、透明支持体上に図2のパターン1の銀パターンを有する透明導電性フィルムと、図2のパターン2の銀パターンを有する透明導電性フィルムの裏面どうしを、EVA接着剤で貼合し、両面に異なる銀パターンを有する透明導電性フィルムを得た。
【0121】
<比較例2>
実施例1で用いた透明支持体上に、インジウム−スズ複合酸化物をターゲットに用いて、高周波マグネトロンスパッタリング法で、0.1μm厚、酸化スズ含有率8質量%のITO透明導電膜を製膜した。その後、静電容量方式タッチパネル電極パターンを形成するため、シプレイ社製S1400を用いて膜厚1.5μmのレジスト層を形成、露光し、不必要な部分をエッチングにより除去してパターニングを行い、図2のパターン1とパターン2のITO層を持つ透明導電性フィルムをそれぞれ作製した。こうして得られた透明導電フィルムの裏面どうしを、EVA接着剤にて貼合し、両面に異なるITOパターンを持つ透明導電性フィルムを得た。
【0122】
<全光線透過率>
スガ試験機(株)製ヘーズコンピューターHZ−2によってJISK−7361−1に従い測定した。全光線透過率が75%未満の場合を×、75%以上の場合を○とした。
【0123】
<可撓性>
10cm×10cmに切り出した試料を直径3cmの円筒状に丸め、指で断面が∞のような形状になるように10回押し込みを繰り返して、ひび割れが発生するかを確認した。ひび割れが発生した場合を×、発生しない場合を○とした。
【0124】
<位置精度>
両面透明導電フィルムの裏表の静電容量方式タッチパネル電極パターンのズレを、ソキア社製測長機を用いて測定した。パターンのずれが20μm以上の場合を×、20μm未満の場合を○とした。
【0125】
得られた結果を表1に示す。
【0126】
【表1】

【0127】
表1の結果から、本発明により全光線透過率の低下を最小限に抑え、且つ上下面の相対的位置精度、及び可撓性に優れた透明導電性フィルムが得られることが判る。
【符号の説明】
【0128】
1 透明支持体
2 銀パターン層
a パターン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上にハロゲン化銀乳剤を含有する感光層を塗布した銀塩感光材料を露光、現像することにより、透明支持体の両面に異なる銀パターンを形成してなることを特徴とする透明導電性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−210579(P2011−210579A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77784(P2010−77784)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】