説明

透明性樹脂組成物、接着性シート、ディスプレイパネル用光学フィルター及びプラズマディスプレイ

【課題】金属黒化処理液により黒化処理が施された金属パターン層の黒化処理面と接した場合であっても、変色や変質が生じ難い樹脂層の形成が可能な透明性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】透明性樹脂組成物は、金属黒化処理液により表面が黒化処理された金属パターン層と、光学フィルムとを積層一体化する際に用いられ、樹脂と、一般式(I)で表される化合物と、を含有する。


(式中、Xは酸素原子又は置換基を有する窒素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒化処理された金属パターン層と、光学フィルムとを積層一体化する際に用いられる透明性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイの表示面からの出射光や外部からの入射光の反射を防止して表示画面の視認性を向上させるために、電磁波遮蔽シートの金属パターン層の表面に黒化処理を施すことが行われている。
【0003】
一般に、黒化処理には、硫酸や金属硫化物を含有する金属黒化処理液が多用されている(特許文献1,2)。かかる金属黒化処理液によれば、電磁波遮蔽シートの金属パターン層の表面に硫化物を含む黒化層が形成されるので、金属光沢による視認性の低下を防止することができる。また、近年では、より穏やかな条件での黒化処理を実現するために、テルルを含有する塩酸溶液を金属黒化処理液として用いる手法も用いられている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−241761号公報
【特許文献2】特許第4429901号公報
【特許文献3】特開2008−144225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1〜3に開示されているような硫黄やテルルを含有する溶液を用いて、電磁波遮蔽シートの金属パターン層の表面に黒化処理を施すと、金属パターン層の黒化処理面と接した樹脂層が変色し、光学フィルターの光学特性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、金属黒化処理液により黒化処理が施された金属パターン層の黒化処理面と接した場合であっても、変色や変質が生じ難い樹脂層の形成が可能な透明性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、金属パターン層の黒化処理面と接する樹脂層を形成するための材料中に、ある特定の構造を有する化合物を含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 金属黒化処理液により表面が黒化処理された金属パターン層と、光学フィルムとを積層一体化する際に用いられ、樹脂と、一般式(I)で表される化合物と、を含有することを特徴とする透明性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Xは酸素原子又は置換基を有する窒素原子を表す。)
【0010】
(2) 上記金属黒化処理液は、テルル及び/又は硫黄を含む(1)に記載の透明性樹脂組成物。
【0011】
(3) 上記樹脂は、アクリル系樹脂である(1)又は(2)に記載の透明性樹脂組成物。
【0012】
(4) 接着性を有する(1)から(3)いずれかに記載の透明性樹脂組成物。
【0013】
(5) (4)に記載の透明性樹脂組成物からなる接着層を有する接着性シート。
【0014】
(6) (5)に記載の接着性シートの接着層面と、上記金属パターン層の黒化処理面と、が貼り合わされているディスプレイパネル用光学フィルター。
【0015】
(7) (6)に記載の光学フィルターが、プラズマディスプレイパネルの画像表示ガラス板前面に配置されているプラズマディスプレイ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の透明性樹脂組成物によれば、上記一般式(I)で表される化合物を含有することにより、金属黒化処理液に起因する樹脂の劣化が抑制されるため、電磁波遮蔽シート等の金属パターン層の黒化処理面と接しても変色や変質が生じ難い樹脂層を形成することができる。したがって、本発明の透明性樹脂組成物によれば、従来よりも安定した光学特性を保つディスプレイパネル用光学フィルターを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る接着性シートの接着層面と、金属パターン層の黒化処理面とが貼合されたディスプレイパネル用光学フィルターを模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
<透明性樹脂組成物>
本発明の透明性樹脂組成物は、金属黒化処理液により表面が黒化処理された金属パターン層と、光学フィルムとを積層一体化する際に用いられるものであり、樹脂と、一般式(I)で表される化合物と、を含有することを特徴とする。
【化2】

【0020】
ここで、Xは酸素原子又は置換基を有する窒素原子を表す。
【0021】
ディスプレイの表示面からの出射光や外部からの入射光の反射を防止して表示画面の視認性を向上させるために、電磁波遮蔽シート等の金属パターン層の表面には、黒化処理が施される。一般に、黒化処理には、硫酸や金属硫化物を含有する金属黒化処理液が用いられ、近年では、テルルを含有するものも多用されている。かかる金属黒化処理液を用いると、金属パターン層の表面には硫化物を含む黒化層が形成される。この黒化層の面、すなわち、金属パターン層の黒化処理面と接した樹脂層は、黒化処理面の洗浄後に残存する金属黒化処理液に含まれる硫黄やテルルによって変色し、光学フィルターの光学特性が低下する。また、樹脂層は、硫化物を含む黒化処理面と接触することによっても変色する場合がある。本発明の透明性樹脂組成物では、金属黒化処理液に起因する樹脂の劣化を抑制するために、上記一般式(I)で表される化合物を含有している。
【0022】
本発明の透明性樹脂組成物において、主剤となる樹脂は透明性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂、セルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。なお、これらの樹脂は、単独又は2種以上の混合樹脂として用いることができる。本発明の透明性樹脂組成物を部材同士の接合用途、すなわち接着剤や粘着剤の材料として用いる場合には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂がより好ましい。これらの樹脂は、透明性、耐久性、接着性(粘着性)、コストパフォーマンスに優れるからである。また、本発明の透明性樹脂組成物をプライマーの材料として用いる場合には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂がより好ましい。これらの樹脂は、透明性、耐久性、及びコストパフォーマンスが優れるからである。
【0023】
本発明の透明性樹脂組成物において、アクリル系樹脂は特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記アクリル酸エステルの中でも、特に、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。透明性、耐久性、塗工適性、コストパフォーマンス等がより優れるからである。
【0024】
他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシルエチル、メタクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−tert−ブチルアミノエチル、メタクリル酸−n−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記他の単量体の中でも、メタクリル酸−n−エチルヘキシルが好ましい。
【0025】
アクリル酸エステルと他の単量体との共重合比(質量比)は、特に限定されるものではないが、本発明の透明性樹脂組成物を部材同士の接合用途に用いる場合には、接着性の観点から、95/5〜5/95の範囲内であることが好ましい。なお、上記共重合比は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定することができる。
【0026】
アクリル系ポリマーがアクリル酸エステル共重合体の場合、該アクリル酸エステル共重合体の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、本発明の透明性樹脂組成物を材料として形成した層に対して耐久性を求める場合には、10万〜150万の範囲内であることが好ましく、20万〜130万の範囲内であることがより好ましい。また、本発明の透明性樹脂組成物を材料として形成した層に対して接着性を求める場合には、1万〜50万の範囲内であることが好ましく、5万〜40万の範囲内であることがより好ましい。なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
【0027】
本発明の透明性樹脂組成物では、上記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする。ここで、Xは酸素原子又は置換基を有する窒素原子を表す。上記一般式(I)で表される化合物を上記樹脂とともに含有させることで、テルルや硫黄を含む黒化処理液に起因する樹脂の劣化による変色を抑制することができる。上記一般式(I)で表される化合物としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、N−シクロヘキシルチオフタルイミド、N−アセチルフタルイミド、N−アリルオキシフタルイミド、N−アミノフタルイミド、N−ベンジルフタルイミド、N−クロロフタルイミド、N−ブロモフタルイミド、N−ブロモメチルフタルイミド、N−ブチルフタルイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシメチルフタルイミド等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、無水フタル酸、及びN−シクロヘキシルチオフタルイミドが好ましい。樹脂との相溶性やコストパフォーマンスが優れるからである。
【0028】
上記一般式(I)で表される化合物は、上記樹脂や後述する架橋剤との相溶性が低く、直接、添加しても沈殿等を生じ、良好に溶解・分散しない場合がある。例えば、無水フタル酸、及びN−シクロヘキシルチオフタルイミドは、このような化合物に該当する。そのため、上記一般式(I)で表される化合物として、無水フタル酸やN−シクロヘキシルチオフタルイミドを選択した場合には、層形成用塗工液を調製する際には、あらかじめ無水フタル酸やN−シクロヘキシルチオフタルイミドを、良溶媒に溶解・分散した後、上記樹脂や後述する架橋剤等のその他の成分と混合する必要がある。なお、無水フタル酸やN−シクロヘキシルチオフタルイミドの場合、良溶媒として、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエンとメチルエチルケトンとテトラヒドロフランとの混合溶媒等を好適に用いることができる。
【0029】
上記一般式(I)で表される化合物の配合量は、透明性樹脂組成物中において、上記樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましい。2種以上を含有する場合には、その合計配合量が、透明性樹脂組成物中において、上記樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、テルルや硫黄を含む黒化処理液に起因する上記樹脂の劣化による層の変色をより効果的に抑制することができる。
【0030】
本発明の透明性樹脂組成物では、その他、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、架橋剤、シランカップリング剤、防錆剤、酸化防止剤、粘着付与剤、金属キレート剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、着色剤、耐電防止剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性調整剤等の各種添加剤を配合してもよい。本発明の透明性樹脂組成物を部材同士の接合用途に用いる場合には、接着強度を高めるために、ロジンエステル系や水素化石油樹脂系のタッキファイヤーを配合してもよい。
【0031】
架橋剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、該ウレタンプレポリマーの3量体等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
また、エポキシ系架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ系化合物が挙げられる。
【0033】
上記架橋剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、上記樹脂の種類等に応じて、適宜選択するとよい。なお、イソシアネート系架橋剤を用いる場合には、形成された層を黄変させない種類のものを選択することが好ましい。
【0034】
架橋剤の配合量は、透明性樹脂組成物中において、上記樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、好適な架橋密度が得られ、例えば、適度な弾性と接着強度とを有する接着層の形成が可能となる。また、過剰な架橋剤が生じないので、架橋剤同士の結合に由来する可撓性の低下を引き起こすおそれがない。
【0035】
シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1つ以上有する有機ケイ素化合物であって、上記樹脂との相溶性が良好なものが好適である。例えば、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン、クロロシラン、ジクロロシラン等が挙げられ、樹脂の種類等を勘案し、適宜選択するとよい。なお、これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤の配合量は、透明性樹脂組成物中において、上記樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、例えば、金属パターン層と光学フィルムとを貼り合わせて積層一体化するために好適な接着性、密着性、耐久性、作業性を有する接着層を形成することができる。
【0036】
なお、本発明の透明性樹脂組成物では、上記の添加剤の中でも、光学特性の低下を防止するという観点において、防製剤及び/又は酸化防止剤を含有することが好ましい。
【0037】
金属パターン層に長時間接触した樹脂層では、金属に起因する変色が生じる場合がある。本発明の透明性樹脂組成物では、かかる現象を防止するために防錆剤を含有することが好ましい。防錆剤は、金属黒化処理液に起因する樹脂層の変色をより効果的に抑制することができる点においても含有することが好ましい。防製剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、1H−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、トリルトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。なお、これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。防製剤の配合量は、透明性樹脂組成物中において、上記樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、金属に起因する樹脂層の変色、及び金属黒化処理液に起因する樹脂層の変色を効果的に抑制することができ、光学特性の低下が生じ難いので、光学フィルターの材料として好適なものとなる。
【0038】
酸化防止剤は、上記樹脂の光や熱に起因する劣化を防止するものであるが、本発明の透明性樹脂組成物では、酸化防止剤を含有させることで、金属黒化処理液に起因する層の変色をより効果的に抑制することができる。酸化防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノ−ル系、アミン系、リン酸系等のものを用いることができる。
【0039】
上記成分を含有する樹脂組成物は、透明性を有することを特徴とする。ここで、透明とは、必ずしも無色透明である必要はなく、着色された透明であってもよいが、上記成分を含有する樹脂組成物を材料として厚さ25μmの層を形成した場合に、該層の可視領域(380〜780nm)における光透過率が80%以上であることを意味する。光透過性は高いほどよく、可視域における光透過率が85%以上であることが好ましい。なお、光透過率は、市販の分光光度計、例えば、島津製作所社製のUV−3100PCを用いて測定(JIS−Z8701準拠)することができる。
【0040】
このように、本発明の透明性樹脂組成物は、透明性が高く、また、電磁波遮蔽シート等の金属パターン層の黒化処理面と接しても変色や変質が生じ難いので、表面が黒化処理された金属パターン層と、光学フィルムとを積層一体化する際に用いられるプライマー層や接着層の形成材料として好適に用いることができる。接着層の形成材料として用いる場合には、例えば、上記樹脂の種類、層の厚みや表面粗さ等をコントロールするとよい。
【0041】
<接着性シート>
本発明の接着性シートは、上記透明性樹脂組成物からなる接着層を有することを特徴とする。本発明の接着性シートでは、例えば、支持基材/接着層/剥離フィルムのように基材上に粘着剤層が形成されている構成であってもよいし、剥離フィルム/接着性/剥離フィルムのように基材レス型の両面接着性シートの構成であってもよい。
【0042】
[接着層]
本発明の接着性シートでは、接着層は、上記透明性樹脂組成物を形成用材料として用いる。接着層の厚みは特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。好ましくは5〜250μm、より好ましくは10〜200μmである。上記範囲であれば、粘着物性が安定し、また、表面に黒化処理面を有する金属パターン層の凹凸に十分に追従する。なお、厚みが5μmに満たないと、十分な接着強度が得られない場合があり、250μmを超えると、光線透過率等の光学特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0043】
[支持基材]
本発明の接着性シートでは、支持基材は必須ではないが、構成として備える場合には透明であることを必要とする。ここで、透明とは、必ずしも無色透明である必要はなく、着色された透明であってもよいが、可視領域(380〜780nm)における光透過率が80%以上でなければならない。支持基材の光透過性は高いほどよく、可視域における光透過率が85%以上であることが好ましい。なお、光透過率は、市販の分光光度計、例えば、島津製作所社製のUV−3100PCを用いて測定(JIS−Z8701準拠)することができる。
【0044】
支持基材の材料は、高い光透過性、必要な強度、柔軟性等を有していれば、特に限定されるものではなく、適宜選択することができ、一般的には、合成樹脂フィルムが用いられる。合成樹脂フィルムの材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、単層であってもよいし、2層以上の積層体であってもよい。機械的強度の観点から、1軸延伸や2軸延伸した延伸フィルムが好ましい。また、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、充填剤、可塑剤、染料、顔料、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤をこれら樹脂中に加えることで、支持基材に機能性等を付加してもよい。
【0045】
なお、本発明の接着性シートでは、上記合成樹脂の中でも、透明性、耐久性、寸法安定性、剛性、柔軟性、積層適性、価格等の観点から、ポリエステル系樹脂を用いることが特に好ましい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等が挙げられるが、これらの中でも、取り扱い易く、低価格であるという観点から、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0046】
また、本発明の接着性シートでは、支持基材としてガラス板を用いてもよい。ガラス板のガラスの種類としては、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス等が挙げられ、熱膨張率が小さく、寸法安定性、作業性に優れるものが好ましい。
【0047】
支持基材の厚みは、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択することができる。支持基材の材料が上記樹脂の場合には、通常、12〜250μm程度であるが、好ましくは25〜200μmである。一方、支持基材がガラス板の場合には、通常、10〜1000mm程度であるが、好ましくは20〜500mmである。いずれの支持基材の場合も、上記範囲であれば、十分な機械的強度が得られ、反り、弛み、破断等が生じ難く、且つ作業性が良好である。また、連続帯状で供給して加工することも可能である。なお、上記の厚さを超えると、過剰性能でコスト高になる場合があり、また、薄型化が困難となる。
【0048】
支持基材の材料が上記樹脂の場合、その形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等の従来公知の製膜方法を用いることができる。また、上記方法によりあらかじめフィルム状に製膜された市販の基材を用いてもよい。
【0049】
また、支持基材には、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理等の公知の易接着処理を施してもよい。
【0050】
なお、本発明の接着性シートを、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等のディスプレイパネル用光学フィルターの形成部材として用いる場合には、薄さ、軽さ、取り扱い易さ等の観点から、支持基材はガラス板よりも樹脂フィルムであることが好ましい。
【0051】
[剥離フィルム]
本発明の接着性シートでは、上記接着層の一方又は両方の面に剥離フィルムを備えていてもよい。本発明の接着性シートでは、剥離フィルムは剥離性を有する剥離部材からなり、接着層の表面を保護する機能を有し、使用に際して剥離除去されるものである。剥離部材は、必要な強度や柔軟性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルム又はそれらの発泡フィルムに、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを挙げることができる。剥離フィルムの厚みは、特に限定されないが、好ましくは25〜188μmである。
【0052】
[接着性シート]
本発明の接着性シートは、金属黒化処理液により表面が黒化処理された金属パターン層と、光学フィルムとを積層一体化する際に、接着性シートの接着層面と、上記金属パターン層の黒化処理面とを貼り合わせるように用いられる。金属パターン層の金属は、特に限定されるものではなく、例えば、銅、銀、金、インジウム、スズ、鉄、ニッケル、コバルト、アルミニウム、チタン等の金属単体、これら2種以上からなる合金等が挙げられる。金属パターン層としては、例えば、金属箔から形成された導電性メッシュ層、メッキ法により形成された導電性メッシュ層、導電性ペーストをスクリーン印刷等によりメッシュ状に印刷した導電パターン層等が挙げられる。具体的には、プラズマディスプレイから放射される電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽シート等が挙げられる。
【0053】
本発明の接着性シートにおける接着層は、上記透明性樹脂組成物を材料に用いて形成されているので、金属黒化処理液により表面が黒化処理された金属パターン層の黒化処理面と接しても、変色や変質が生じ難い。接着層の変色や変質は、光透過率の低下を招き、好ましくない。特に、接着層が黄変すると、短波長側の可視領域における光透過率が低下する。そうすると、ディスプレイに映し出される画像の黄色味が強くなり、結果として画像の色調バランスが損なわれてしまう。本発明の接着性シートによれば、接着層面と金属パターン層の黒化処理面とが接するように貼り合わされていても、金属黒化処理液に起因する接着層の変色や変質が生じ難いので、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等のディスプレイパネル用光学フィルターの形成部材として好適である。なお、変色は、市販の分光色彩計、例えば、日本電色工業社製のSD 5000を用いて色度(x、y)を測定(JIS−Z8722準拠)することで確認できる。
【0054】
[接着性シートの製造方法]
本発明の接着性シートの製造方法は、接着層形成用塗工液の調製以外の点においては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。ここでは、支持基材上に、接着層が形成されている構成の接着性シートの場合について説明する。一般に、接着層形成用塗工液の調製では、材料は、全てを一度に混合し、必要に応じて溶媒で希釈し、分散させる。しかしながら、上述のように、上記一般式(I)で表される化合物は、上記樹脂や架橋剤との相溶性が低く、直接、添加しても沈殿等を生じ、良好に溶解・分散しない場合がある。そこで、まず、上記一般式(I)で表される化合物を、該化合物に対する良溶媒、例えば、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒(質量比1:1)に、十分に溶解・分散させ、上記一般式(I)で表される化合物の溶液を調製する。添加剤として、防錆剤や酸化防止剤を加える場合には、上記一般式(I)で表される化合物とともに、良溶媒に溶解・分散させる。次に、上記樹脂に上記架橋剤を配合し、トルエン等の溶媒で希釈し、十分に分散させた後、上記一般式(I)で表される化合物の溶液を添加し、更に分散させることにより、塗工液を得る。そして、支持基材上に、上記塗工液をアプリケータ等により全面塗工し、接着層を形成する。その後、乾燥させ、剥離フィルムをラミネートすることにより、本発明の接着性シートを形成することができる。
【0055】
本発明の接着性シートの厚みは、特に限定されないが、29〜750μmであることが好ましく、60〜600μmであることがより好ましい。上記範囲であれば、適度な柔軟性を有するので、取り扱いが容易となる。
【0056】
本発明の接着性シートは、接着層面を、例えば、電磁波遮蔽シートやタッチパネル内部の透明導電膜の金属パターン層の黒化処理面と貼り合わせることにより、ディスプレイパネル用光学フィルターとして好適に用いることができる。図1は、本発明の一実施形態に係る接着性シートの接着層面と、金属パターン層の黒化処理面とが貼合されたディスプレイパネル用光学フィルターを模式的に示した断面図である。図1において、接着性シート10は、支持基材11上に接着層12が形成されている。また、電磁波遮蔽シート20は、透明基材21上に、接着剤層22と、金属パターン層23と、黒化層24とが順に形成されている。なお、図1では、便宜上、金属パターン層23の黒化処理された部分を黒化層24として示している。図1(A)に示すように、接着性シート10を、接着層12面と黒化層24面とが対向するように、電磁波遮蔽シート20に貼り合わせることで、図1(B)に示すディスプレイパネル用光学フィルター1が形成される。
【0057】
大型テレビ等の種々の電子機器の表示パネルとして、プラズマディスプレイパネルが用いられているが、該プラズマディスプレイパネルでは、電磁波の漏洩を防止するために、電磁波遮蔽シートが用いられている。本発明の接着性シートと、上記電磁波遮蔽シートとを組み合わせたディスプレイパネル用光学フィルターが、プラズマディスプレイパネルの画像表示ガラス板前面に配置されているプラズマディスプレイによれば、ディスプレイから発せられる色調の変化が生じ難い。なお、本発明のディスプレイパネル用光学フィルターをプラズマディスプレイパネルの画像表示ガラス板前面に配置する方法としては、特に限定されるものではないが、通常、圧着方式が用いられる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0059】
<製造例1>
厚さ100μmの無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材の一方の面に、ノンソル型のUV硬化型樹脂をコーティングした。次いで、平均粒径約1μmの銀粒子92質量部と、ポリエステル系樹脂8質量部と、をエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに分散させたインキ(導電性ペースト)を調製し、上記基材のUV硬化型樹脂コーティング面上にスクリーン印刷した後、150℃で熱風乾燥させて溶剤を揮散させ、線幅13μm、ピッチ250μm、厚み10μmのメッシュ状の導電性を有する金属パターン層(開口率87%)を有するシートを形成した。このシートをロールプレスにて線圧600kg/cm、室温(23℃)にてプレスし、厚み8.6μmのシートを得た。
【0060】
そして、この電磁波遮蔽シートを金属黒化処理液(商品名:メタブラック,荏原ユージライト社製)に浸漬させた後、水洗し、表面が黒化処理された金属パターン層を有する電磁波遮蔽シートを得た。なお、上記金属黒化処理液の組成分析の結果、テルル、硫化銅(II)、塩酸、硫酸が含まれていることを確認した。
【0061】
<実施例1>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン1811L、主モノマー:アクリル酸ブチル、質量平均分子量(Mw):約65万、分散度(Mw/Mn):6.3、固形分:23%、綜研化学社製)30質量部に、架橋剤(商品名:TD75、イソシアネート系架橋剤、固形分:75%、綜研化学社製)0.12質量部と、シランカップリング剤(商品名:A50、固形分:50%、綜研化学社製)0.027質量部と、を配合した。これを、10質量部のトルエンで希釈し、該トルエン中に十分に分散させた。これに、防錆剤(1H−ベンゾトリアゾール、商品名:1,2,3−BTA、固形分:100%、城北化学工業社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が10%となるように調整したもの0.35質量部と、酸化防止剤(2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、商品名:IRGANOX MD1024、固形分:100%、BASF社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が2%になるように調整したもの1.73質量部と、無水フタル酸(商品名:リターダーB−C、固形分:100%、三新化学工業社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が2%になるように調整したもの1.73質量部と、を添加し、更に分散させて、接着層形成用塗工液を調製した。
【0062】
そして、基材(PETフィルム,商品名:コスモシャインA4100,膜厚:100μm,全光線透過率:92%,東洋紡社製)の易接着面側上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるように、上記接着層形成用塗工液をアプリケータにより全面塗工し、接着層を形成した。その後、乾燥させ、剥離フィルム(PETセパレーター,商品名:セラピールMFA,膜厚:38μm,東レフィルム加工社製)をラミネートし、実施例1の接着性シートを得た。
【0063】
<実施例2>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン1811L、主モノマー:アクリル酸ブチル、質量平均分子量(Mw):約65万、分散度(Mw/Mn):6.3、固形分:23%、綜研化学社製)30質量部に、架橋剤(商品名:TD75、イソシアネート系架橋剤、固形分:75%、綜研化学社製)0.12質量部と、シランカップリング剤(商品名:A50、固形分:50%、綜研化学社製)0.027質量部と、を配合した。これを、10質量部のトルエンで希釈し、該トルエン中に十分に分散させた。これに、防錆剤(1H−ベンゾトリアゾール、商品名:1,2,3−BTA、固形分:100%、城北化学工業社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が10%となるように調整したもの0.35質量部と、酸化防止剤(2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、商品名:IRGANOX MD1024、固形分:100%、BASF社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が2%となるように調整したもの1.73質量部と、N−シクロヘキシルチオフタルイミド(商品名:リターダーCTP、固形分:100%、大内新興化学工業社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が2%となるように調整したもの1.73質量部と、を添加し、更に分散させて、接着層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例2の接着性シートを得た。
【0064】
<比較例1>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン1811L、主モノマー:アクリル酸ブチル、質量平均分子量(Mw):約65万、分散度(Mw/Mn):6.3、固形分:23%、綜研化学社製)30質量部に、架橋剤(商品名:TD75、イソシアネート系架橋剤、固形分:75%、綜研化学社製)0.12質量部と、シランカップリング剤(商品名:A50、固形分:50%、綜研化学社製)0.027質量部と、を配合した。これを、10質量部のトルエンで希釈し、該トルエン中に十分に分散させた。これに、防錆剤(1H−ベンゾトリアゾール、商品名:1,2,3−BTA、固形分:100%、城北化学工業社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が10%となるように調整したもの0.35質量部と、酸化防止剤(2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、商品名:IRGANOX MD1024、固形分:100%、BASF社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が2%となるように調整したもの1.73質量部と、を添加し、更に分散させて、接着層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例1の接着性シートを得た。
【0065】
<比較例2>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン1811L、主モノマー:アクリル酸ブチル、質量平均分子量(Mw):約65万、分散度(Mw/Mn):6.3、固形分:23%、綜研化学社製)30質量部に、架橋剤(商品名:TD75、イソシアネート系架橋剤、固形分:75%、綜研化学社製)0.12質量部と、シランカップリング剤(商品名:A50、固形分:50%、綜研化学社製)0.027質量部と、を配合した。これを、10質量部のトルエンで希釈し、該トルエン中に十分に分散させた。これに、防錆剤(1H−ベンゾトリアゾール、商品名:1,2,3−BTA、固形分:100%、城北化学工業社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が10%となるように調整したもの0.35質量部と、酸化防止剤(2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、商品名:IRGANOX MD1024、固形分:100%、BASF社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が2%となるように調整したもの1.73質量部と、光安定剤(商品名:TINUVIN 123、HALS、固形分:100%、BASF社製)0.035質量部と、を添加し、更に分散させて、接着層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例2の接着性シートを得た。
【0066】
<比較例3>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン1811L、主モノマー:アクリル酸ブチル、質量平均分子量(Mw):約65万、分散度(Mw/Mn):6.3、固形分:23%、綜研化学社製)30質量部に、架橋剤(商品名:TD75、イソシアネート系架橋剤、固形分:75%、綜研化学社製)0.12質量部と、シランカップリング剤(商品名:A50、固形分:50%、綜研化学社製)0.027質量部と、を配合した。これを、10質量部のトルエンで希釈し、該トルエン中に十分に分散させた。これに、防錆剤(1H−ベンゾトリアゾール、商品名:1,2,3−BTA、固形分:100%、城北化学工業社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が10%となるように調整したもの0.35質量部と、酸化防止剤(2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、商品名:IRGANOX MD1024、固形分:100%、BASF社製)をトルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1/1)に溶解・分散させて固形分が2%となるように調整したもの1.73質量部と、光安定剤(商品名:TINUVIN 144、HALS、固形分:100%、BASF社製)0.035質量部と、を添加し、更に分散させて、接着層形成用塗工液を調製した以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例3の接着性シートを得た。
【0067】
[耐久性試験]
上記実施例1,2,比較例1〜3の接着性シートを100mm×50mmに切断した試験片の剥離フィルムを剥がし、電磁波遮蔽シートの金属パターン層の黒化処理面に、それぞれ2kgのローラーを用いて貼り合わせた後、オートクレーブ装置を用いて貼合加工(加工条件:0.6MPa、80℃、0.5時間)した。そして、これを耐久性試験に供した。なお、試験装置には、スガ試験機社製の7.5kWスーパーキセノンウェザーメーターSX−75を用い、放射照度:60W/m(300〜400nm)、照射時間:120時間、ブラックパネル温度:63度、湿度:50%RHの条件にて試験を行った。光は、上記試験片の基材側から照射した。
【0068】
[評価]
上記耐久性試験に供したシートの、試験前及び試験後における色度(x,y)及び明度(Y)を分光色彩計(製品名:SD 5000,日本電色工業社製)にて測定(光源:C光源,光の進入角:2°,照明・受光条件:透過,測定面積:28mmφ,JIS−Z8722準拠)した。そして、試験前後の色度(x,y)及び明度(Y)の測定値から、色度変化(Δx,Δy)及び明度変化(ΔY)を求めた。なお、色度変化(Δx,Δy)の評価基準は以下の通りとした。○:色度変化(Δx)が0.003未満、×:色度変化(Δx)が0.003以上。○:色度変化(Δy)が0.008未満、×:色度変化(Δy)が0.008以上。試験前後の色度変化(Δx,Δy)及び明度変化(ΔY)を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1に示すように、アクリル系樹脂を主剤とし、無水フタル酸を含有する接着性組成物からなる接着層が形成されている粘着シート(実施例1)及びN−シクロヘキシルチオフタルイミドを含有する接着性組成物からなる接着層が形成されている粘着シート(実施例2)では、耐久性試験前後における色度変化が小さかった。これに対して、無水フタル酸やN−シクロヘキシルチオフタルイミドの代わりに、光安定剤(HALS)を含有させた粘着シート(比較例2,3)では、無水フタル酸やN−シクロヘキシルチオフタルイミドを含有する粘着シート(実施例1,2)に比して、耐久性試験前後の色度変化が大きく、また、無水フタル酸、N−シクロヘキシルチオフタルイミド、光安定剤(HALS)のいずれも含有しない粘着シート(比較例1)では、色度変化が更に大きく、目視でも接着層の変色が確認された。
【0071】
以上の結果より、アクリル系樹脂を主剤とする接着層形成用材料中に、無水フタル酸やN−シクロヘキシルチオフタルイミドを配合することで、金属黒化処理液に起因する上記接着層形成用材料の劣化が顕著に抑制され、耐久性の高い接着性シートが得られることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0072】
1 ディスプレイパネル用光学フィルター
10 接着性シート
11 支持基材
12 接着層
20 電磁波遮蔽シート
21 透明基材
22 接着剤層
23 金属パターン層
24 黒化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属黒化処理液により表面が黒化処理された金属パターン層と、光学フィルムとを積層一体化する際に用いられ、
樹脂と、一般式(I)で表される化合物と、を含有することを特徴とする透明性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Xは酸素原子又は置換基を有する窒素原子を表す。)
【請求項2】
前記金属黒化処理液は、テルル及び/又は硫黄を含む請求項1に記載の透明性樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂は、アクリル系樹脂である請求項1又は2に記載の透明性樹脂組成物。
【請求項4】
接着性を有する請求項1から3いずれかに記載の透明性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の透明性樹脂組成物からなる接着層を有する接着性シート。
【請求項6】
請求項5に記載の接着性シートの接着層面と、前記金属パターン層の黒化処理面と、が貼り合わされているディスプレイパネル用光学フィルター。
【請求項7】
請求項6に記載の光学フィルターが、プラズマディスプレイパネルの画像表示ガラス板前面に配置されているプラズマディスプレイ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144665(P2012−144665A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5324(P2011−5324)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】