説明

透明板中の異物検査方法

【課題】透明板内部の異物の簡便な検査方法を提供する。
【解決手段】
透明板表面に対して平行な光を透明板の少なくとも1側端面から、該側端面を長辺方向に10等分した時の各1個分の面積の総光量が100×(10個の中の最小総光量)/(10個の中の最大総光量)≧60%となるように入射させ、前記透明板内部の異物により散乱し前記透明板表面から輝点として出射させ、前記透明板表面を前記透明板表面の垂直上方向から撮像し、画像処理装置により前記透明板表面の各位置における光量を示す画像データとし、別途、目視によって識別した前記透明板内部の異物による輝点の光量と、前記透明板表面の異物や傷による輝点の光量とから決定した閾値を用いて、前記画像データにおける各輝点の光量を閾値で二分して閾値以上の光量の輝点のみを検出し、該輝点を透明板内部の異物による輝点とする透明板内部の異物検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明板中に存在する異物の検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置を備えた携帯電話、ノート型パソコン、液晶TV,ビデオ一体型液晶TV、カーナビゲーションシステム等においては、高輝度で均一なバックライトが必要とされている。このような面光源の構造としては、蛍光ランプ等の光源を液晶パネルの下方に配置する直下方式のものと、光源を側面に配置して導光体を用いるエッジライト方式に大別される。このうち、エッジライト方式では、面光源をコンパクト化できるという特徴を有するが、導光体中に繊維や金属などの異物が混入すると、その異物の大きさが通常の製品では問題とならない100μm未満の微小なものであっても、異物によって発生する散乱光により他の場所に比べて輝度が高くなるという問題があり、特に金属などの反射率の高い異物の場合には、20μm程度の極めて小さな異物であっても問題となってきている。これは一般的に輝点異物と称されるが、通常の異物検査法である透明板の平面に対して垂直方向からの透過光を用いた目視検査では、透明板中の20〜100μm程度の微小な輝点異物を検出することは困難であった。
【0003】
輝点異物を検査する方法としては、従来より透明板の側面から冷陰極管等を用いて端面から光を入射させ、輝点となる大きさの異物を検査しているが、肉眼では内部異物と表面異物の見分けが非常に困難であり、誤検知や見逃しが多く発生していた。
【0004】
そこで、これまで専用の測定機を用いて透明板に光を入射し、内部欠陥を測定するための方法が開示されている。例えば、透明体の表面、裏面および端面に対して、透明体の表面に平行な光線をそれぞれ各別に投射し、透明体の表面、裏面に付着した異物および表面の傷をそれぞれ区別して検出するようにした技術が公開されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、板ガラスの側端面からガラス内部に照明を当て、当該板ガラスの表面側から当該板ガラスを撮像光学系により撮像して一定面積あたりの画像の明るさを検出して欠点を判定することを特徴とする板ガラスの欠点検査方法が公開されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、透明体の主面に対して平行でない非並行光を主に含んだ光を透明体の主面に対してほぼ直角に形成される少なくとも1つの側面より入射させて前記透明体の欠陥を検出することを特徴とする透明体の欠陥検出方法が公開されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭58−158920号公報
【特許文献2】特開平6−294749号公報
【特許文献3】特開平11−337496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の検査法では、透明板表面に付着した異物と傷のみを検査するものであり、透明板内部の異物による輝点を検査する構成になっていないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の検査法では、光源としてハロゲンランプ等を用いており、非並行光を主に含んだ光を入射しているため、透明板内部の異物や表面に形成された凹凸や付着した異物の見分けができず、さらに透明板の側端面が加熱され、耐熱性に劣る透明板では変形や溶融が発生するという問題があった。
【0009】
さらに、特許文献3に記載の検査法では、透明板の主面に対して平行ではない非並行光を主に含んだ光を入射しているため、上記公報と同様に樹脂内部の異物と表面に形成された凹凸や付着した異物の見分けができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等はこのような状況に鑑み、透明板中の異物による輝点検出について鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。すなわち本発明は、透明板表面に対して平行光を透明板の少なくとも1側端面から、該側端面を該側端面の長辺方向に10等分した時の各1個分の面積の総光量が
100×(10個の中の最小総光量)/(10個の中の最大総光量)≧60 (%)
となるように入射させ、前記透明板内部の異物により散乱し前記透明板表面から輝点として出射させ、該輝点が存在する前記透明板表面を前記透明板表面の垂直上方向から撮像機を用いて撮像し、画像処理装置により前記透明板表面の各位置における光量を示す画像データとし、別途、目視によって識別した前記透明板内部の異物による輝点の光量と、前記透明板表面の異物や傷による輝点の光量とから決定した閾値を用いて、前記画像データにおける各輝点の光量を閾値以上か閾値未満かに二分して閾値以上の光量の輝点のみを検出し、検出した該輝点を、透明板内部の異物による輝点とする透明板内部の異物検査方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、容易に透明板内部に存在する微小異物を検出することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の原理は、透明板中の異物によって乱反射される光線の光量は、透明板に付着した異物や透明板表面の傷等によって乱反射される光線の光量と比較して高いことを利用した異物検査方法である。本発明では、上記検査方法において透明板表面に対して平行な光を透明板の少なくとも1側端面から入射させる必要があるが、異物の種類や形状によっては特定の方向からの光に対してのみ光りやすいものがあるため、透明板の4側端面全てから光を入射させることが好ましい。
【0014】
異物検査装置の構成を図1に示す。透明板表面に対して平行である光とするためには、光源から例えば光ファイバーを用いて導光する方法や、レンズを用いて集光して導光する方法等が挙げられる。取り扱いの簡便性から、光ファイバーを用いて導光する方法が好ましい。光源から透明板まで光ファイバーで光を伝達させることにより、透明板の耐熱性が低い場合でも透明板の側端面に対する熱影響を最小限に抑えることが容易となる。この場合、透明板の側端面に対して垂直方向に光ファイバーを並べ、該光ファイバーの光の出射側端面を前記透明板の側端面に向かい合わせる。ここで、透明板の側端面に光を入射させる際、前記透明板の少なくとも1側端面から、該側端面を該側端面の長辺方向に10等分した時の各1個分の面積の総光量が
100×(10個の中の最小総光量)/(10個の中の最大総光量)≧60 (%)
となるように入射させる。前記透明板の少なくとも1側端面から、該側端面を該側端面の長辺方向に10等分した時の各1個分の面積の総光量が
100×(10個の中の最小総光量)/(10個の中の最大総光量)<60 (%)
となる場合では、後記の画像データを閾値以上と閾値未満とに二分(二値化)するときに、透明板内部の異物による輝点と透明板表面に付着した異物や傷による輝点との識別が正確に行われないという問題がある。
【0015】
後記の実施例では光源としてハロゲンランプを用いることを例示しているが、発光ダイオード、レーザー、冷陰極管、蛍光灯などの光源を用いることも可能である。
【0016】
透明板としてはガラスや透明樹脂などで形成された平板が挙げられる。また該平板表面は、マット状となっていても、あるいはプリズムなどが形成されても良い。軽量化が要求される分野に透明板を使用する場合には、樹脂を用いた透明板が好ましく、樹脂の中で最も全光線透過率の高いことから、メタクリル樹脂を使用した透明板がより好ましい。
【0017】
前記メタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル70質量%以上99.8質量%以下と、メタクリル酸メチルと共重合可能なモノマー0.2質量%以上30質量%以下とからなる原料を共重合した樹脂が好ましい。メタクリル酸メチルと共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等のメチルメタクリレート以外の(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等を例示することができる。
【0018】
また、メタクリル樹脂透明板の耐衝撃性の向上を目的として、アクリル酸エステルを主成分とするゴム状共重合体にメタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物をグラフト重合して得られた共重合体を含む樹脂も使用できる。ここで、「(メタ)アクリ」とは、「メタクリ」あるいは「アクリ」を表す。
【0019】
側端面から入射した光は、透明板内部に異物がない場合には光は透明板を通過するのみで散乱されない。これに対して、例えば金属や繊維などが異物として透明板中に存在する場合、前記異物に光が当たると、前記異物によって光が散乱され、輝点として出射される。該輝点が存在する前記透明板表面を前記透明板表面の垂直上方向から撮像機を用いて撮像し、画像処理装置により前記透明板表面の各位置における光量を示す画像データとする。撮像機としては、解像度の観点から、CCDカメラが好ましい。
【0020】
透明板内部の異物からの乱反射光は一定の光量以上となる。これに対して、透明板表面に付着した異物や透明板表面の傷による散乱光は一定の光量以下になる。このような一定光量が存在することから、別途、目視によって識別した前記透明板内部の異物による輝点の光量と、前記透明板表面の異物や傷による輝点の光量とから決定した閾値を用いて、前記画像データにおける各輝点の光量を閾値以上か閾値未満かに二分(二値化)して閾値以上の光量の輝点のみを検出し、検出した該輝点を、透明板内部の異物による輝点と見なすことができる。
【0021】
前記閾値の求め方としては、例えば以下のような手順で行える。撮像機の受光素子からの出力が飽和する光量を最大光量として、それを例えば256分割(等分)した値で光量を表示し、前記光量の閾値を20,30,40などと変えて透明板の異物検査を行い、当該閾値以上となった箇所にレーザーマーカーを用いてマーキングして、該マーキング部分を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察し、透明板の中に異物が有るのか、成形板の表面に付着しているかを判別して、透明板内部の異物のみを検出し、表面の異物や傷を検出しない最小の光量を閾値とすることができる。こうして求めた閾値を予め設定して用いることにより異物検査を行うことができる。
【0022】
さらに、前記異物検査の際、例えば繊維や炭化異物、金属などといった異物の種類によってその形状や見え方に特徴があるので、異物形状の特徴を予め操作用コンピューターに記憶させておくことで、画像処理装置に入力された異物の形状と照合することにより、観察された異物の種類を特定することも可能である。
【0023】
本発明は、従来の目視検査で観察が困難であった20〜100μm程度の微小異物の検査方法として有用であり、特に微小異物に対する要求の最も高い用途の一つであるエッジライトによる導光板の異物検査に用いることが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0025】
(異物検査装置)
異物検査には、以下の構成の装置を用いた。光源としてハロゲンランプ(15V、150W)2個から光ファイバーを用いて光を導くことにより、異物検査対象の透明板の4側端面に平行光として入射させた。この時、前記側端面の全面を光ファイバーの光の出射側の端面で覆うように光ファイバーを配設した。側端面に入射する光量については、側端面を該側端面の長辺方向に10等分し、各1個分の面積にある光ファイバー端面から出射される光の総光量を比較したところ、10個のいずれの総光量も
100×(10個の中の最小総光量)/(10個の中の最大総光量)≧90%であった。透明板内の異物および透明板表面の異物や傷により散乱し、輝点として出射した透明板表面を、撮像機としてペンタックス株式会社製(YK5028)レンズを使用した三菱レイヨン株式会社製CCDカメラ(MKS−5000−40−ME07)を用いて撮像した。その際、操作用コンピューターからの信号によって、前記透明板をCCDカメラの受光素子配列方向に対して垂直であり、前記透明板の表面に対して平行に移動させて前記透明板表面全体を撮像し、その電気信号を画像処理装置に取り込む構造とした。
【0026】
異物検査前に別途、前記方法で閾値を求めておき、輝点の光量を二値化した。すなわち、制御用コンピューターで操作されるCOレーザーマーカー(株式会社キーエンス製 ML−G9311)をCCDカメラの横に設置し、該COレーザーマーカーの下の位置まで異物検査対象の透明板を搬送して輝点をマーキングし、そのマーキングした個々の輝点について光学顕微鏡観察(倍率100倍)を実施して、透明板内部の異物は存在するが、透明板の表面に付着した異物や傷などが含まれない輝点の光量の最小の閾値を設定した。本構成では、CCDカメラの受光素子が飽和する光量を256分割した値で表した時、閾値を30と設定した。この方法によって、閾値以上の輝点のみを透明板内部の異物として検出した。
【0027】
(異物検査)
透明板として、メタクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製アクリペットTF8 000)を用いて射出成形した樹脂板(110×110×4mm)を上記異物検査装置にセットし、前記樹脂板から約30cm上方に配置したCCDカメラを作動させながら樹脂板自体を前記の通り移動させ、樹脂板の全面にわたって異物の大きさや数量の測定を実施した。上記測定を10枚の樹脂板について実施し、全ての異物による輝点をカウントすると同時に、COレーザーマーカーで異物の存在する位置をマーキングした。これらと同様の測定を10回にわたって実施した。
【0028】
上記成形板にマーキングされた箇所を光学顕微鏡観察(倍率100倍)すると共に、その他の箇所についても同様の顕微鏡観察を実施し、実際に内部異物が何個存在するかをまとめたものが表1である。これらの実験結果では、前記顕微鏡観察により発見された異物は、全て前記方法によってマーキングされた位置に存在していた。これらの実験結果から、本発明による異物検査では、誤検出や見逃しが無いことが確認された。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の異物検査方法により容易に透明板内部の微小異物を検出できるため、各種透明板の異物検査として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例の異物検査装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 透明板
2 光ファイバー
3 CCDカメラ
4 ハロゲンランプ
5 画像処理装置
6 操作用コンピューター
7 COレーザーマーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板表面に対して平行な光を透明板の少なくとも1側端面から、該側端面を該側端面の長辺方向に10等分した時の各1個分の面積の総光量が
100×(10個の中の最小総光量)/(10個の中の最大総光量)≧60 (%)
となるように入射させ、前記透明板内部の異物により散乱し前記透明板表面から輝点として出射させ、該輝点が存在する前記透明板表面を前記透明板表面の垂直上方向から撮像機を用いて撮像し、画像処理装置により前記透明板表面の各位置における光量を示す画像データとし、別途、目視によって識別した前記透明板内部の異物による輝点の光量と、前記透明板表面の異物や傷による輝点の光量とから決定した閾値を用いて、前記画像データにおける各輝点の光量を閾値以上か閾値未満かに二分して閾値以上の光量の輝点のみを検出し、検出した該輝点を、透明板内部の異物による輝点とする透明板内部の異物検査方法。
【請求項2】
透明板の4側端面全てから光を入射する請求項1に記載の異物検査方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−53146(P2009−53146A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222341(P2007−222341)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】