説明

透明板状体の印刷欠陥および/または印刷汚れの検査方法

【課題】印刷により透明板状体の周辺部の表面に塗膜が形成される印刷部と、塗膜が形成されていない非印刷部とを、検査の対象にして、印刷部のピンホールやかすれなどの印刷欠陥と、非印刷部分の印刷汚れを検出する方法を提供する
【解決手段】散乱光を用いて印刷物を照明し、印刷物の複数の画像を散乱光が透過する側からCCDカメラで撮像し、該画像を合成して検査用画像とし、該検査用画像を暗部と明部とに2値化処理し、明部を面積の大きい順に順序づけし、面積の大きさが(m+1)番目以下(mは非印刷部の個数)となる明部を印刷欠陥とする。また、暗部を面積の大きい順に順序づけし、面積の大きさが(n+1)番目以下(nは印刷部の個数)となる暗部を印刷汚れとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な板ガラスあるいはプラスチックシートの表面に印刷された着色膜の、印刷欠陥と印刷汚れとを検査するための検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用のカバーガラスや自動車の窓ガラスには、ガラスの周辺部を目隠しのために、黒枠と呼称される着色膜が形成されている。この着色膜はカラーペーストやインキをガラスに印刷して形成される。色は大体が黒色であるが、黒色以外の色の着色膜を形成されることもある。
【0003】
黒枠と称せられる着色膜は、透明板状体の表面の周辺部に印刷によって形成される。着色膜においては、塗膜中にはピンホールと呼ばれる印刷欠陥を生じることがあり、さらに、透明版状態の印刷をしない部分(以後非印刷部と称す)には、インキあるいはペーストが付着して印刷汚れが生じることがある。印刷欠陥や印刷汚れが生じたものは不良品となる。
【0004】
着色膜のピンホールを検査する装置として、特許文献1に、スポット光を塗膜に照射し、その反射光あるいは透過光の強弱を検出する、ピンホールの欠陥検査装置が開示されている。この装置では、着色膜が透明板状体の面の一部に形成されるような場合、CADデータなどの着色膜を形成する部分を前もってデータとして与え、着色膜と非印刷部を区別させる必要がある。しかしながら、異なるサイズの透明板状体に印刷したものや多様な着色膜分を有するものを、同じ製造ラインで生産する場合には、透明板状体のサイズや、着色膜の形状が変化する毎に、サイズや着色膜の形状データを変える必要が有り、検査装置として用いることが困難である。
【0005】
特許文献2には、ラインCCDカメラで画像を読みとり、読みとった画像をランレングス符号化処理と連結性処理を行って、検査領域と非検査領域とに判別して検査する方法が開示されている。
【0006】
建築用あるいは自動車用の窓に用いられるガラスは面積が大きく、これらに印刷された画像をラインレングス符号化処理および連結性処理をするには、一枚の着色膜が部分的に形成された透明板状体の検査に長時間を要し、実用するには困難である。
【特許文献1】特開平1−197639号公報
【特許文献2】特開平5−45301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、透明板状体の周辺部あるいは表面の一部に印刷により着色膜が形成される印刷物において、着色膜に生じるピンホールやかすれなどの印刷欠陥と、非印刷部分の印刷汚れを検出する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の印刷欠陥の検査方法は、着色膜が部分的に形成された透明板状体の検査方法において、散乱光を用いて着色膜が部分的に形成された透明板状体を照明し、該透明板状体の複数の画像を散乱光が透過する側からCCDカメラで撮像し、該画像を合成して検査用画像とし、該検査用画像を暗部と明部とに2値化処理し、明部を面積の大きい順に順序づけし、該順序づけされた明部に対して面積の大きさが(m+1)番目(mは非印刷部の個数)以下となる明部を印刷欠陥とすることを特徴とする透明板状体の印刷欠陥の検査方法である。
【0009】
また、本発明の印刷欠陥の検査方法は、前記の印刷欠陥検査方法において、非印刷部の面積あるいは/および位置を画像処理装置に登録し、該非印刷部が印刷欠陥として検出されないようにすることを特徴とする透明板状体の印刷欠陥検査方法である。
【0010】
また、本発明の印刷汚れの検査方法は、着色膜が部分的に形成された透明板状体の検査方法において、散乱光を用いて着色膜が部分的に形成された透明板状体を照明し、該透明板状体の複数の画像を散乱光が透過する側からCCDカメラで撮像し、該画像を合成して検査用画像とし、該検査用画像を暗部と明部とに2値化処理し暗明部を面積の大きい順に順序づけし、該順序づけした暗部に対して面積の大きさが(n+1)番目(nは着色膜の個数)の以下となる暗部を印刷汚れとすることを特徴とする透明板状体の印刷汚れの検査方法である。
【0011】
また、本発明の印刷汚れの検査方法は、着色膜の面積あるいは/および位置を登録し、該着色膜が印刷汚れとして検出されないようにすることを特徴とする透明板状体の印刷汚れの検査方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の透明板状体の印刷欠陥および/あるいは印刷汚れの検査方法は、ガラスなどの透明板状体や透明なプラスチックフィルムに、印刷によって形成される着色膜のピンホールやかすれなどの印刷欠陥と、非印刷部の印刷汚れとを検出する検査手段を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の検査方法は、透明板状体にスクリーン印刷あるいはオフセット印刷などの印刷方法によって、インキあるいはペーストを、透明板状体の表面の一部分に印刷した、着色膜が部分的に形成された透明板状体を対象にする。
【0014】
そのような例として、フラットパネルディスプレーなどの大画面表示器の前面に用いられるカバーガラスや、自動車の窓に用いられるガラスがある。これらのガラスは、その周辺を接着材で固定されるため、ガラスの周辺部に着色膜を形成して、裏面側の状態が透過して見えないようにしているものである。
【0015】
図2は、大画面表示器のカバーガラス10であり、周辺に着色膜12が形成され、中央は非印刷部11である。図3は自動車の窓ガラス20であり、周辺に着色膜21が形成され、中央部は非印刷部22である。
【0016】
本発明の検査方法は、図2、図3に示すような、着色膜をガラス板の周辺部に形成したものを検査の対象にして、着色膜が形成されている部分に生じるピンホールやかすれの印刷不良や、非印刷部すなわち着色膜が形成されていない表面部分に付着したインキやペーストなどによる汚れを同時に検出することが可能である。
【0017】
なお、本発明の方法は、印刷の特性により、印刷欠陥のみあるいは印刷汚れのみを検査の対象としてもよい。
【0018】
本発明の検査方法は、着色膜がガラス板以外の透明な樹脂でなる板状体や透明なフィルムに形成された場合や、着色膜が透明板状体の中央部のみあるいは中央部と周辺部との一部分に着色膜を形成する場合、さらには着色膜の中に非印刷部が存在するような着色膜でも有効な検査方法である。
【0019】
図1は、本発明の検査方法を実施する装置の例を模式的に示すものである。ガラス板1は、その表面の一部に印刷により、着色膜が形成されたものである。ガラス板1を、搬送ベルト3で搬送させ、搬送中に、ガラス板1の下方から、照明装置7によりガラス板1を照明する。
【0020】
照明装置7は、光源2とそのカバー4で構成されているものが好適に用いられ、照明光8は、散乱光とすることが望ましい。散乱光とするには、光源2に細長の蛍光灯を好適に用いることができるが、高圧水銀灯、白熱灯などの点光源に近いものも使用可能である。光源2の発光が散乱光でない場合は、図示しない散乱板を用いて散乱光とする。
【0021】
ガラス板1に対して、照明装置7の反対側に、ガラス板1を撮像するカメラ6が配設される。カメラ6は、フォトダイオードなどを直線状に並設したラインカメラ、通常のCCDカメラなどを好適に使用することができ、透明板状体の搬送方向の全幅にわたり撮像できるように、必要に応じ複数台設ける。
【0022】
さらに、照明装置7、ガラス板1およびカメラ6の周囲には、検査に不要となる光が入光しないように、適当な範囲で図示しない覆いを設けることが望ましい。
【0023】
カメラ6で撮像される画像は、カメラ6に繋がれている画像処理器5で画像処理され、さらに、印刷欠陥と印刷汚れを検出する。
印刷欠陥は、着色膜に生じる印刷がされていないピンホールや十分な厚さで印刷されていないかすれであり、印刷汚れは、非印刷部にインキあるいはペーストが付着して生じる汚れである。図4は、着色膜が部分的に形成された透明板状体50の着色膜52に生じるピンホール53の欠陥と、非印刷部52に生じる印刷汚れ54を模式的に示すものである。
【0024】
図1の画像処理器5には、CRTやLCD等の表示器でなる表示装置、ハードディスクやICメモリーでなる記憶装置や演算装置、キーボドなどの入力装置で構成されているもので、例えばパーソナルコンピュタなどが使用できる。
【0025】
画像処理器5は、図6に示すフローチャートに従って画像処理および印刷欠陥と印刷汚れを検出する。
ステップ101は、カメラで撮像した画像を取り込むステップである。ステップ201で、カメラ5から取り込んだ画像を、ガラス板1の画像として合成し、検査用画像を作成する。
【0026】
ステップ301で、検査用画像を、画素を明と暗とに2値化処理する。ステップ401で、隣り合って明とされる画素を合成して明部とし、あるいは隣り合っている暗とされる画素を合成して暗部とし、明部および暗部のそれぞれの面積計算を行う。面積計算は、例えば、画素数と画素の面積との積によって求めることができる。
【0027】
次いで、2値化処理した画像の、明部の面積と暗部の面積とをステップ401で計算する。
【0028】
図2や図3のような着色膜が部分的に形成された透明板状体では、画像処理によって、着色膜で囲まれている中央部分と、中央部を囲んでいる着色膜の部分、更に着色膜の外側の画像部分が、それぞれ明部、暗部、明部としてその面積が計算される。さらに、図4に示すような着色膜中のピンホール53、非印刷部の中の印刷汚れ54が、それぞれ明部、暗部としてその面積が計算される。
【0029】
ステップ501で明部の面積を大きい順に並べる。次いで、ステップ502で、面積の大きい順に並べられた明部に対し、(m+1)番目以降の明部をピンホールなどの印刷欠陥として検出し、該明部の位置と面積などを出力する。mは、検査用画像における非印刷部の個数である。
【0030】
出力は、画像処理装置の表示装置での表示や、画像処理装置にプリンターを設け、該プリンターで印刷するなどの適当な手段を用いて行えばよい。
【0031】
ステップ601は、暗部を面積の大きい順に並べる。次いで、ステップ602で、面積の大きい順に並べられた暗部に対し、(n+1)番目以降の明部を印刷汚れとして検出し、該明部の位置と面積などを出力する。nは、着色膜の個数である。出力は、明部の場合と同様に、画像処理装置の表示装置での表示や、画像処理装置にプリンターを設け、該プリンターで印刷するなどの適当な手段を用いて行えばよい。
【0032】
なお、図6のステップ501、ステップ502、ステップ601、ステップ602は、ステップ601、ステップ602、ステップ501、ステップ502の順に行ってもよい。
【0033】
図2や図3の着色膜は1個なので、n=1であり、また着色膜に囲まれて非印刷部と着色膜の外側の命部があるので、m=2となり、m+1=3となって、面積が大きい順に並べられた明部の3番目から、印刷欠陥として検出される。すなわち、3番目の面積以下の明部が印刷欠陥とされて、検出される。
【0034】
また、n+1=2なので、面積の大きい順に並べられた暗部の2番目以降の暗部が印刷汚れとして検出される。
【0035】
図5は、面積の小さい非印刷部32と着色膜34を有する例である。着色膜34は、バックミラーをフロントガラスに接着するための台座部分を形成する着色膜であり、非印刷部32は、ワイパーセットマーク用の非印刷部である。
【0036】
図5のような着色膜が部分的に形成された透明板状体では、m=3、n=2であり、m+1=4で、4番目の面積以下の面積である明部が、印刷欠陥として検出される。また、n+1=3であり、面積の大きさが3番目以下となる暗部が、印刷汚れとして検出される。mやnは、画像処理装置にデータとして与えておくことが好ましい。
【0037】
着色膜34や非印刷部32の面積は、通常検査の対象となる印刷欠陥や印刷汚れの面積に比較して、大きい場合が多く、ほとんど問題にならないが、検査で検出される印刷欠陥や印刷汚れの面積と同等の面積の非印刷部や着色膜が存在する場合は、それらの位置と面積を図6のステップ501の前までに、画像処理装置に登録しておき、非印刷部の場合はステップ501で、また、着色膜の場合はステップ601で登録された面積および/あるいは位置とで同定して、ステップ502あるいはステップ602で、印刷欠陥あるいは印刷汚れとして検出しないようにすることが望ましい。
【0038】
検査用画像から暗部あるいは明部の面積は、検査用画像の1画素あたりの面積と画素数との乗算で求めることができるが、面積の代わりに画素数を代用して用いてもよい。
【0039】
検査用画像を形成する画素が対応する面積は、CCDカメラで撮像するときに倍率によって決定される。従って、検出しようとするピンホールや印刷汚れの最小面積から、CCDカメラで撮像するときの画像の倍率を決定することが好ましい。
【0040】
検査中の印刷されている透明板状体の速度は、1m/sec以下とすることが好ましく、望ましくは0.5m/sec〜1m/secとする。
【0041】
印刷されている透明板状体が静止している場合は、カメラと照明器を連動して移動させることにより、本発明の検査方法を実行することができる。
【実施例1】
【0042】
実施例1
スクリーン印刷機で着色膜が部分的に形成されたガラス板を、搬送装置を用いて乾燥炉まで搬送する生産ラインにおいて、スクリーン印刷機の後に搬送装置があり、スクリーン印刷機の直後の搬送装置に、本発明による検査装置を図1に示すように設置した。搬送装置として、搬送ベルトを用いた。該搬送装置の搬送速度は、1m/secとした。
【0043】
スクリーン印刷機で、ガラス板の周辺に黒色インキを印刷し、黒枠と称する目隠しのための着色膜を形成した。
【0044】
ガラス板には、厚み3mm、サイズ1200mm×600mmの板ガラスを用いた。また、黒枠の幅は、50mm〜95mmの範囲で、印刷位置で幅の異なる黒枠とした。印刷面積は、約265×102mm2である。
【0045】
さらに、本実施例では、検出が可能なピンホール欠陥と印刷汚れの大きさを調べるために、0.1mmφ〜1.0mmφの範囲で、0.1mmずつ大きさの異なるピンホールを着色膜に形成し、非印刷部には、0.1mmφ〜1.0mmφの範囲で、0.1mmずつ大きさの異なる円形のドットを印刷汚れとして形成した。
【0046】
印刷後の搬送中のガラス板の下方から、蛍光灯でガラス板を照明し、ガラス板の上方からCCDラインカメラで画像を取り込んだ。
【0047】
CCDラインカメラで撮像した画像は、画像処理器を用いて、1枚のガラス板の画像として合成し、検査用画像とした。
【0048】
撮像するときの画像の倍率を調整して検査用画像を作成したところ、0.2mmφ以上の大きさのピンホールと、0.2mmφ以上の大きさの印刷汚れとを検出できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の検査方法を実施する装置の概略側面図である。
【図2】周辺に着色膜が形成されている表示器用前面ガラスの平面図。
【図3】周辺に着色膜が形成されている自動車用窓ガラスの平面図。
【図4】図2に示す着色膜が部分的に形成された透明板状体に生じるピンホールと印刷汚れを模式的に示す平面図。
【図5】微少面積の非印刷部を有する自動車用窓ガラスの平面図。
【図6】画像処理のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 着色膜が形成された透明板状体
2 光源
3 搬送ベルト
5 画像処理器
6 カメラ
7 照明装置
8 照明光
12、21、31 着色膜
32、33 非印刷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色膜が部分的に形成された透明板状体の検査方法において、散乱光を用いて印刷物を照明し、印刷物の複数の画像を散乱光が透過する側からCCDカメラで撮像し、該画像を合成して検査用画像とし、該検査用画像を暗部と明部とに2値化処理し、明部を面積の大きい順に順序づけし、該順序づけされた明部に対して面積の大きさが(m+1)番目(mは検査用画像における非印刷部の個数)以下となる明部を印刷欠陥とすることを特徴とする透明板状体の印刷欠陥の検査方法。
【請求項2】
非印刷部の面積あるいは/および位置を画像処理装置に登録し、該非印刷部が印刷欠陥として検出されないようにすることを特徴とする請求項1に記載の透明板状体の印刷欠陥検査方法。
【請求項3】
着色膜が部分的に形成された透明板状体の検査方法において、散乱光を用いて印刷物を照明し、印刷物の複数の画像を散乱光が透過する側からCCDカメラで撮像し、該画像を合成して検査用画像とし、該検査用画像を暗部と明部とに2値化処理し、暗部を面積の大きい順に順序づけし、該順序づけした暗部に対して面積の大きさが(n+1)番目(nは印刷部の個数)の以下となる暗部を印刷汚れとすることを特徴とする透明板状体の印刷汚れの検査方法。
【請求項4】
印刷部の面積あるいは/および位置を画像処理装置に登録し、該印刷部が印刷汚れとして検出されないようにすることを特徴とする請求項3に記載の透明板状体の印刷汚れ検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−105807(P2006−105807A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293603(P2004−293603)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】