説明

透明皮膚洗浄料

【課題】本発明は、脂肪酸塩を主洗浄料とし、透明性に優れたペースト状或いはゲル状の外観を有し、さらには皮膚洗浄助剤としてスクラブ剤または該スクラブ剤を安定に配合することが可能な透明皮膚洗浄料を提供することを目的とした。
【解決手段】主洗浄料として脂肪酸塩および増粘剤としてアクリル酸アルキルコポリマーを含有することを特徴とする透明皮膚洗浄料。
アクリル酸アルキルコポリマーを増粘剤として用いることで、主洗浄料として脂肪酸石鹸を配合しても、透明なペースト状或いはゲル状を呈する皮膚洗浄料を得るに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄料において脂肪酸塩を主洗浄料とした、温度依存性に優れた透明なペースト状或いはゲル状の外観を呈する皮膚洗浄料に関するものである。さらには洗浄助剤としてスクラブ剤または該スクラブ剤を沈降や浮上なく安定に配合できる特徴を併せもつものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚洗浄成分として汎用されている脂肪酸塩はアルカリ性が強く、各種増粘剤を利用した透明性に優れたペースト状或いはゲル状の皮膚洗浄料の製剤化が困難であった。そのため、脂肪酸塩そのものの構造粘性で増粘させることで、透明なペースト状或いはゲル状組成物の製剤化が試みられてきた。
【0003】
しかしながら、脂肪酸塩そのものの構造粘性による製剤化では、脂肪酸石鹸を高配合する必要があった。そのため、十分な洗浄力はあるものの、脱脂力が強すぎたり、水との馴染みが悪いことから簡便に泡立てることができず、また、製剤の安定性を脂肪酸石鹸の構造に依存するために粘度の温度依存性が高くなるという問題点があった。
【0004】
さらには、皮膚上の汚れを除去する効果や適度に皮膚を刺激するマッサージ効果を高める目的で、スクラブ剤または該スクラブ剤を皮膚洗浄助剤として配合を試みるものの、製剤の粘度の温度依存性が高いことによりスクラブ剤が沈降または浮上するなど欠点もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、脂肪酸石鹸を主洗浄料として配合しても、透明性に優れ、ペースト状或いはゲル状の外観を呈し、温度安定性が良好で、洗浄力の調整が可能な透明皮膚洗浄料を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、アクリル酸アルキルコポリマーを増粘剤として用いることで、主洗浄料として脂肪酸石鹸を配合しても、透明なペースト状或いはゲル状を呈する皮膚洗浄料を得るに至った。以下に、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の透明皮膚洗浄料は、脂肪酸石鹸を主洗浄料とした透明性に優れたペースト状或いはゲル状の外観を呈し、温度依存性に優れる。また、洗浄助剤としてスクラブ剤または該スクラブ剤を配合しても沈降や浮上などの状態変化がなく、その機能を十分に果たす皮膚用の洗浄料として優れた品質を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられるアクリル酸アルキルコポリマーの配合量は1.0〜10.0重量%が好ましく、さらに2.5〜8.5重量%が特に好ましい。配合量が1.0重量%以下の場合はペースト状を有さず、10.0重量%以上では粘度が高すぎるために使用性に支障をきたす。また、アクリル酸アルキルコポリマーの使用方法については適当な塩基によって中和された組成物を配合する。その中和後のpH域はpH7.5〜11.5が好ましく、更に好ましくはpH8.5〜10.5である。このpH域以外では高い透明性を維持することが困難である。中和に用いる塩基としては特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類、L-アルギニン等の塩基性アミノ酸類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の脂肪族アミン類が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0009】
さらに本発明に用いられる脂肪酸石鹸成分としては、石鹸素地を用いても、製造時ケン化反応により調製して用いても良い。また、脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸の起源は天然、合成であることを問わない。これらの脂肪酸は、炭素数10〜22の直鎖飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及び分岐鎖脂肪酸から選ばれた1種または2種以上が好ましく用いられる。直鎖飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が特に好ましい。不飽和脂肪酸としては、直鎖モノ、ジ、トリおよびテトラエン酸が使用でき、分岐脂肪酸としては、イソステアリン酸等が使用できる。
【0010】
また未中和の脂肪酸量が増えると、脂肪酸の結晶が析出し、均一性を損なうことがあるので、中和率は90%以上が好ましく、更に好ましくは95%以上である。また、pHが高すぎると水ですすいだ後もアルカリが残存して刺激を発現することがあるので、この点から中和率は110%以下が好ましく、更に好ましくは105%以下である。ケン化に用いる塩基としては特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類、L-アルギニン等の塩基性アミノ酸類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の脂肪族アミン類が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
さらに、脂肪酸石鹸の透明皮膚洗浄料への配合総量は、5〜30重量%以下が好ましく、さらには10〜20重量%が好ましい。
【0012】
また、配合するスクラブ剤または該スクラブ剤としては、ポリエチレン末、アンズ核、結晶性セルロース、寒天、ポリアクリル酸塩、アルギン酸塩、植物粉砕物等が使用できる。本発明に用いられるスクラブ剤または該スクラブ剤は、0.05〜10.0重量%が好ましく、さらに0.30〜5.0重量%が特に好ましい。
【0013】
本発明の透明皮膚洗浄料は、さらに必要により、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば界面活性剤、油分、保湿剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防御剤、アルコール類、粉末成分、色剤、香料、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0014】
さらに、金属イオン封鎖剤、防腐抗菌剤、細胞賦活剤、皮脂分泌調整剤、消炎剤、収斂剤、美白剤、活性酸素抑制剤、抗アレルギー剤、老化防止剤等、さらに生理活性作用を有する植物抽出物及びこれらの抽出分画、精製物等も適宜配合することができる。
【0015】
本発明にかかる透明皮膚洗浄料は使用後洗い流すタイプであれば応用分野は問わず、身体用、頭髪用、家庭用等の洗浄料、マッサージ化粧料、パック化粧料等に使用できる。
【実施例】
【0016】
次に実施例をあげて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例において重量%は、単に%とする。実施例2および比較例2で配合したスクラブ剤は、ポリエチレン末として、平均粒子径が0.5mmの一丸ファルコス社製の商品名MPG顆粒〈カミツレ〉Vit.Aを使用した。
【0017】
(実施例1)
(1)精製水 残余
(2)アクリル酸アルキルコポリマー 2.25%
(3)精製水 5.00%
(4)水酸化ナトリウム 0.58%
(5)ペンテト酸5Na 0.08%
(6)イソステアリン酸 11.10%
(7)ミリスチン酸 1.80%
(8)ラウリン酸 1.80%
(9)精製水 40.00%
(10)水酸化カリウム 3.49%
(11)グリセリン 3.00%
(12)1,3−ブチレングリコール 3.00%
(13)コカミドDEA 2.00%
(14)コカミドプロピルベタイン 1.50%
(15)防腐剤 適量
(16)香料 適量
【0018】
(比較例1)
(1)精製水 残余
(2)カルボマー 0.60%
(3)精製水 5.00%
(4)水酸化カリウム 0.30%
(5)ペンテト酸5Na 0.08%
(6)イソステアリン酸 11.10%
(7)ミリスチン酸 1.80%
(8)ラウリン酸 1.80%
(9)精製水 40.00%
(10)水酸化カリウム 3.49%
(11)グリセリン 3.00%
(12)1,3−ブチレングリコール 3.00%
(13)コカミドDEA 2.00%
(14)コカミドプロピルベタイン 1.50%
(15)防腐剤 適量
(16)香料 適量
【0019】
(実施例2)
(1)精製水 残余
(2)アクリル酸アルキルコポリマー 2.25%
(3)精製水 5.00%
(4)水酸化ナトリウム 0.58%
(5)ペンテト酸5Na 0.08%
(6)イソステアリン酸 11.10%
(7)ミリスチン酸 1.80%
(8)ラウリン酸 1.80%
(9)精製水 40.00%
(10)水酸化カリウム 3.49%
(11)グリセリン 3.00%
(12)1,3−ブチレングリコール 3.00%
(13)コカミドDEA 2.00%
(14)コカミドプロピルベタイン 1.50%
(15)防腐剤 適量
(16)香料 適量
(17)MPG顆粒〈カミツレ〉Vit.A 適量
【0020】
(比較例2)
(1)ミリスチン酸 7.80%
(2)ラウリン酸 4.60%
(3)ステアリン酸 3.20%
(4)(ラウラミド/ミリスタミド)DEA 5.20%
(5)ラウリルベタイン 5.20%
(6)ポリソルベート60 5.20%
(7)ソルビトール 5.20%
(8)精製水 残余
(9)1,3−ブチレングリコール 2.00%
(10)ラウロイルメチルタウリンNa 5.20%
(11)AMPD 6.70%
(12)防腐剤 適量
(13)香料 適量
(14)MPG顆粒〈カミツレ〉Vit.A 適量
【0021】
(製法)(実施例1,2、比較例1)
A.成分(1)〜(2)、(3)〜(5)、(6)〜(8)、(9)〜(12)、(13)、(14)を70〜75℃で加熱溶解する。
B.成分(3)〜(5)を(1)〜(2)に添加し70〜75℃で加熱混合する。
C.成分(9)〜(12)を(6)〜(8)に添加し70〜75℃で加熱混合する。
D.成分(6)〜(12)を(1)〜(5)に添加し70〜75℃で加熱混合する。
E.成分(13)、(14)を順次(1)〜(12)に添加し70〜75℃で加熱混合する。
F.攪拌冷却する。
G.成分(15)〜(16)を順次(1)〜(14)に添加し混合する。
H.必要があれば成分(17)を(1)〜(16)に添加し混合する。
I.透明皮膚洗浄料を得る。
【0022】
(製法)(比較例2)
A.成分(1)〜(7)、(8)〜(11)を70〜75℃で加熱溶解する。
B.成分(8)〜(11)を(1)〜(7)に添加し70〜75℃で加熱混合する。
C.攪拌冷却する。
D.成分(12)〜(13)を順次(1)〜(11)に添加し混合する。
E.成分(14)を(1)〜(13)に添加し混合する。
F.透明皮膚洗浄料を得る。
【0023】
(試験例:温度依存性の評価)
調製した各試料を50mlサンプル管に封入し、25℃、45℃及び5℃の各恒温槽に2週間、4週間、8週間、16週間保管後、状態を目視により評価した。結果を表1〜2に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
表1から、本発明の透明皮膚洗浄料は、45℃及び5℃の環境下でも、製品として問題ない範囲内で、その透明度と形状を維持することから、温度依存性に優れることが分かる。
【0027】
表2から、スクラブ剤または該スクラブ剤を配合しても、45℃及び5℃の環境下でも、製品として問題ない範囲内で、スクラブ剤の沈降や浮上が確認されないことから、安定にスクラブ剤を配合できることが分かる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚洗浄剤として脂肪酸塩を総量で5〜30重量%、増粘剤としてアクリル酸アルキルコポリマー1.0〜10.0重量%を配合することを特徴とする皮膚洗浄料。
【請求項2】
性状が透明のペースト状或いはゲル状の外観を呈することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚洗浄料。
【請求項3】
更に皮膚洗浄助剤としてスクラブ剤または該スクラブ剤を0.05〜10.0重量%含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の皮膚洗浄料。

【公開番号】特開2007−126396(P2007−126396A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320354(P2005−320354)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(399091120)株式会社ピカソ美化学研究所 (29)
【Fターム(参考)】