説明

透明系ガラス板への加飾加工法

【課題】ガラス板面に特殊な前処理を施すことにより、容易にかつ安価にガラス板に加飾加工を施すことを可能にした加工法を提供する。
【解決手段】ガラス板面1の前処理加工として、ガラスとの接着性の優れた透明系有機塗料2を一端表面に塗布後、焼付け乾燥させ、その後、加飾デザイン模様を印刷された水圧転写フィルム5を用い、透明系有機塗料塗布面2に水圧転写フィルム5の加飾デザイン模様を容易に転写することにより、ガラス面への加飾加工法を容易にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温風暖房機等の外観構成部品のひとつであるマエイタ部分にガラス板が用いられる場合の加飾加工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来例の図8で示す、この種の温風暖房装置本体9の外観構成部品のマエイタとして加飾加工された透明系ガラス板1が用いられる場合の加工法としては、図9で示す如くマエイタ部に相当する透明系ガラス板1の片面に、一般的には単色のシルク印刷面10が加工された後、離型用セパレーター樹脂フィルム12でその接着材塗布面11が保護された飛散防止用フィルム8が、離型用セパレーター樹脂フィルム12部分を剥がされた後、接着材塗布面11を介して貼付けられて加工されていた。
【0003】
上記従来例とは異なるが温風暖房装置本体の外観構成部品のマエイタとしてガラス板を使用したものは特許文献1に示すようなものがあった。
【特許文献1】特開2004−198083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の透明系ガラス板面への加飾加工法では、シルク印刷の範囲が限定され、印刷の模様や着色にデザイン性の限界があり、せっかく透明ガラスのクリスタル性を用いたにもかかわらず、高級デザイン感を向上させることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の透明系ガラス板への加飾加工法は、温風暖房装置等の外装部を構成するマエイタ部の加飾ガラス板において、その加飾加工法として、透明系ガラス板の片面に無機質のガラスとよく接着する透明系有機塗料を塗布、焼付け乾燥後、加飾された水圧転写フィルムを透明有機塗料塗布面に転写塗装する工程としたものである。
【0006】
上記発明によれば、ガラス板そのものは、材質が無機質であるため、従来の水圧転写フィルムでの加飾塗装接着が不可能なため、一度ガラス板の片面に透明系有機塗料を塗布、焼付け乾燥させた後、その透明系有機塗料焼付け面に、水圧転写フィルムで加飾塗装接着可能にならしめることにより、様々な模様や多様な色彩を加工転写可能にしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の透明系ガラス板への加飾加工法は、無機質なガラス板に様々な模様や多様な色彩を加工転写可能にしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、温風暖房装置等の外装部を構成するマエイタ部の加飾ガラス板において、その加飾加工法として、透明系ガラス板の片面に無機質のガラスとよく接着する透明系有機塗料を塗布、焼付け乾燥後、加飾された水圧転写フィルムを透明有機塗料塗布面に転写塗装する工程としたものである。
【0009】
そして、透明系ガラス板へ、加飾印刷された水圧転写フィルムを加飾塗装接着させるため、接着不可能な無機質のガラス面を一端、透明系有機塗料を塗布した後、焼付け乾燥させることにより、従来の水圧転写フィルムが樹脂部品の表面に容易に転写接着できると同様に、ガラス面にも容易に転写接着可能にすることにより、様々な模様の水圧転写フィルムを自在に透明系ガラス板に転写接着応用可能にした効果と、ガラス板面が、転写接着した薄いフィルムへの傷防止用の保護の役割をするという効果もある。
【0010】
第2の発明は、透明系ガラス板の片面に接着塗布する透明系有機塗料に適当な顔料を混合することにより、淡い着色を施した後、加飾用水圧転写フィルムを転写塗装する工程としたものである。
【0011】
そして、加飾された水圧転写フィルムを、容易に透明系ガラス板に転写接着可能にするため、前処理として、あらかじめ透明系ガラス板に塗布する透明有機塗料に着色を施すことにより、同じ水圧転写フィルムを用いても、その着色度合いにより、加飾模様の色調を容易に変えることができるという効果がある。
【0012】
第3の発明は、透明系ガラス板の片面に無機質のガラスとよく接着する透明系有機塗料を塗布する際、透明系ガラス板端面には、透明系有機塗料が付着しない様、マスキング等保護したのち塗布、焼付け乾燥後、加飾転写フィルムを転写塗装することにより、ガラス板端面部への転写塗装が付着しない様にしたものである。
【0013】
そして、加飾された水圧転写フィルムは、無機質のガラス面には、接着しない特性を生かし、透明系ガラス板への透明有機塗料の塗布面をガラス板面の片面のみに限定することにより、水圧転写フィルム転写加工時のフィルム接着面を限定させ、ガラス端面へのフィルムの付着を防止することにより、端面のクリスタル感を十分確保することができるという効果がある。
【0014】
第4の発明は、透明系ガラス板の片面に無機質のガラスとよく接着する透明系有機塗料を塗布、焼付け乾燥後、加飾用水圧転写フィルムを転写塗装し、その後、そのうえに保護用着色塗装を塗布する工程としたものである。
【0015】
そして、加飾模様の色調を変える第二の手段として、第2の発明とは別に透明系ガラス板に透明有機塗料を塗布、焼付け乾燥後、従来と同様に水圧転写フィルムを転写接着処理後、フィルム面の保護と、加飾模様の色調の自由度をますため、その上から、保護用着色塗料を塗布、焼付け乾燥することにより、加飾フイルムをガラス面と保護用着色塗料で両面から傷防止保護すると同時に、加飾模様の色調を変えるあらたな手段としての効果がある。
【0016】
第5の発明は、透明系ガラス板の片面に塗布する透明有機塗料を塗布する際、型紙等を用いガラス面の塗布面に透明系有機塗料が付着する面と付着しない面を成形した後、焼付け乾燥後、加飾された水圧転写フィルムを転写塗装する工程としたものである。
【0017】
そして、透明系ガラス板の加飾加工の前処理として加工塗布する透明有機塗料をガラス面に塗布する際、型紙等を用いることにより、ガラス面に透明有機塗料が付着焼付けられる部分と、型紙等により、塗布されないままガラス面そのままで、無機質の表面状態のまま残る所とが混在可能にすることにより、水圧転写フィルム転写加工時、加飾フィルムが、転写接着する部分と、接着せずガラス面そのものが残るデザイン処理が可能なにり、より独創性あふれるデザイン感覚を生み出す効果がある。
【0018】
第6の発明は、ガラス板破損時の飛散防止フィルムを、加飾加工面に貼付ける工程を有したものである。
【0019】
そして、第1〜5の発明で加飾加工されたガラス板が万一破損した場合の安全性を確保するため、水圧転写フィルムを転写接着貼り付け面側に、飛散防止用のフィルムを貼付けることにより、万一の場合の安全性を高める効果がある。
【0020】
第7の発明は、第6の発明における飛散防止用フィルムを着色することにより、保護用着色塗料の塗布と同一の加飾模様の色調の自由度拡大を図れると同時に、ガラス破損時の飛散防止をも兼用できるという、2重の効果が得られる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1(a)(b)(c)(d)(e)は、本発明の実施の形態1における透明系ガラス板への加飾加工法の加工工程を示す、部品断面図である。図1(a)で示す板状の透明ガラス板1の片面に図1(b)で示す如く、ガラスに塗布接着可能な透明有機塗料2を塗布後、焼付け乾燥させる。その後、図1(c)で示す如く、水槽3に注げられた水溶液4の水面に浮かべられた加飾模様を印刷した水圧転写フィルム5の上へ、透明ガラス板1の面に焼付け塗布した透明系有機塗料2を下にして図1(d)の様に、全体を水没させる。
【0023】
その際、水圧転写フィルム5は、透明ガラス板1面の透明有機塗料2を塗布された面のみに付着する。その再、水圧転写フィルム5の余分な面積部分は、水溶液4部に残ったり、一部は透明系有機塗料2を塗布されていない透明ガラス板1の面に付着するが、水圧転写フィルム5は、無機質のガラス面には、密着できないので、水溶液4から取り出した後、ある一定の水圧で洗浄することで、透明有機塗料2塗布面以外には、水圧転写フィルム5は完全に残らない。従って図1(e)で示す如く、透明ガラス板1には、透明有機塗料2焼付け面を介し、加飾模様を印刷した水圧転写フィルム5か転写印刷される。その後この状態で、ある一定の温度で焼付け乾燥させることで、透明ガラス板に模様を加工することが可能となる。
【0024】
(実施の形態2)
図2(a)(b)は、本発明の第2の実施の形態におけるガラス板への加飾加工工程を示す部品断面図である。図2(a)は、図1(b)で示した透明ガラス板1の片面に前処理として塗布する透明有機塗料2に適当な着色顔料を混合させた透明系着色有機塗料2aとして塗布、焼付け乾燥した状態を示すものであり、図2(b)は、その後は実施の形態1と同様に加飾模様を印刷された水圧転写フィルム5を用い、図1(e)と同様に焼付け乾燥した状態を確保した状態を示すものである。この場合、図1(e)の場合と異なり、水圧転写フィルム5で転写された模様は、透明系着色有機塗料2aを介して、ガラス面から模様が見えるため、着色されない時と比較し、加飾の色調範囲を拡大可能にすることが可能となる。
【0025】
(実施の形態3)
図3は、本発明の第3の実施の形態を示す部品斜視図である。透明ガラス板1の前処理加工として透明有機塗料2を透明ガラス板1面に塗布する場合、透明ガラス板1の全面のみでなく、全周端面、1a,1b,1c,1d部分もマスキング処理等により、透明有機塗料2が付着しない様にし、ガラス素材そのものの無機質の表面状態を確保したのち、裏面のみに透明有機塗料を塗布後、焼付け乾燥させ、水圧転写フィルム5にて加飾加工すると、加工完成品として、ガラス端面1a,1b,1c,1dはガラスそのものが持っている透明なクリスタル高級感を容易に維持することが可能となる。
【0026】
(実施の形態4)
図4は、本発明の第4の実施の形態を示す部品断面図である。図4で示す如く、第1の実施の形態の図1(e)完成後、さらに追加工程として、水圧転写フィルム5面のうえに、保護用着色塗料6を塗布加工追加するものである。この場合も、水圧転写フィルム5で加飾された模様の色調を自由に拡大可能にすることができると同時に、加飾面の傷等の防止保護の役割も果たすことができる。
【0027】
(実施の形態5)
図5(a)(b)(c)(d)(e)(f)は、本発明の第5の実施の形態における加工法の加工工程例を示す部品断面図である。図5(a)型紙7の一例を示す部品図であり、型抜き模様7a,7b,7c,7d,7e,7fが設けられている。この型紙7を透明ガラス板1の片面にセットした状態を示したものが図5(b)であり、この状態の上から、透明系有機塗料2を塗布すると、透明ガラス板1面には、図5(c)で示す如く、その表面には型紙7の型抜き模様7a,7b,7c,7d,7e,7f部分のみに透明系有機塗料2が塗布される。従ってこの状態で焼付け乾燥後、実施の形態1の図1(c),図1(d)の如く、水圧転写フィルム5にて、水圧転写印刷処理することにより、図5(d)で示す如く、型抜き処理で透明系有機塗料2が塗布させた部分のみ加飾され、それ以外の面は透明ガラス板面そのものの状態をしめすこととなる。その断面参考図を示すものが図5(e)である。この場合、ガラス面と、有機塗料付着部との段差部分ができるため、せっかく加飾した部分が剥離しやすくなるため、できれば図5(f)の断面参考図の如く、裏面より、実施例4で示す如く、保護用着色塗料6を塗布することによりその欠点をカバーするとともに、より一層、加飾部分とのコントラストが明確になり、デザインの幅を広げることが可能となる。
【0028】
(実施の形態6)
図6は、本発明の第6の実施の形態を示す部品断面図であり、この場合は、透明ガラス板1に上記第1〜5の実施の形態で実施された透明系有機塗料2と水圧転写フィルム5にて加飾されたガラス本体の破損時の安全性を向上させるため、万一ガラスが割れても周囲にできるだけ飛散しない様、加飾加工面に飛散防止用フィルム8を貼付けることにより、安全性を高めたものである。
【0029】
(実施の形態7)
図7は、本発明の第7の実施の形態を示す部品断面図であり、この場合は、第6の実施の形態と異なり、飛散防止用フィルム8を着色し、着色飛散防止フィルム8aとすることにより、第4の実施の形態における図4や第5の実施の形態における図5(f)で示す保護用着色塗料6を廃止することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の透明系ガラス板への加飾加工法は、無機質なガラス板に様々な模様や多様な色彩を加工転写可能であるため、外装部品を構成するマエイタ等に利用する以外に調理器のガラス天板等、視覚効果を目的として使用する部材への利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)(b)(c)(d)(e)本発明の実施の形態1における加飾加工程の一例を示す部品断面図
【図2】(a)(b)同実施の形態2における加飾加工法の一例を示す部品断面図
【図3】同実施の形態3における加飾加工法の一例を示す部品斜視図
【図4】同実施の形態4おける加飾加工法の一例を示す部品断面図
【図5】(a)(b)(c)(d)(e)(f)同実施の形態5における加飾加工工程の一例を示す部品断面図
【図6】同実施の形態6における加飾加工法の一例を示す部品断面図
【図7】同実施の形態7における加飾加工法の一例を示す部品断面図
【図8】従来の温風暖房装置の外観図
【図9】従来の加飾加工法の一例を示す部品断面図
【符号の説明】
【0032】
1 透明系ガラス板
2 透明系有機塗料
2a 透明系着色有機塗料
5 水圧転写フィルム
9 温風暖房装置本体
10 印刷面
11 接着材塗布面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温風暖房装置等の外装部を構成するマエイタ部の加飾ガラス板において、その加飾加工法として、透明系ガラス板の片面に無機質のガラスとよく接着する透明系有機塗料を塗布、焼付け乾燥後、加飾された水圧転写フィルムを透明有機塗料塗布面に転写塗装する工程とした透明系ガラス板への加飾加工法。
【請求項2】
透明系ガラス板の片面に接着塗布する透明系有機塗料に適当な顔料を混合することにより、淡い着色を施した後、加飾用水圧転写フィルムを転写塗装する工程とした請求項1記載の透明系ガラス板への加飾加工法。
【請求項3】
透明系ガラス板の片面に無機質のガラスとよく接着する透明系有機塗料を塗布する際、透明系ガラス板端面には、透明系有機塗料が付着しない様、マスキング等保護したのち塗布、焼付け乾燥後、加飾転写フィルムを転写塗装することにより、ガラス板端面部への転写塗装が付着しない様にした請求項1または2記載の透明系ガラス板への加飾加工法。
【請求項4】
透明系ガラス板の片面に無機質のガラスとよく接着する透明系有機塗料を塗布、焼付け乾燥後、加飾用水圧転写フィルムを転写塗装し、その後、そのうえに保護用着色塗装を塗布する工程とした請求項1記載の透明系ガラスへの加飾加工法。
【請求項5】
透明系ガラス板の片面に塗布する透明有機塗料を塗布する際、型紙等を用いガラス面の塗布面に透明系有機塗料が付着する面と付着しない面を成形した後、焼付け乾燥後、加飾された水圧転写フィルムを転写塗装する工程とした請求項1記載の透明系ガラス板への加飾加工法。
【請求項6】
ガラス板破損時の飛散防止フィルムを、加飾加工面に貼付ける工程を有した請求項1〜5のいずれか1項記載の透明系ガラス板への加飾加工法。
【請求項7】
着色加工を施した飛散防止フィルムを用いた請求項6記載の透明系ガラス板への加飾加工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−327891(P2006−327891A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155265(P2005−155265)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】