説明

透明酸化チタンオルガノゾルおよびそれを配合したコーティング組成物,光学基材

【課題】光触媒が抑制され、安定で、透明性が高い酸化チタンオルガノゾルを提供する。
【解決手段】少なくともケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタンゾル粒子が分散相であり、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノ−またはジ−低級アルキルエーテルが分散媒である酸化チタンオルガノゾルであって、分散剤としてアミノ基を有し分子量5,000〜50,000の高分子系分散剤を含んでいることを特徴とする透明酸化チタンオルガノゾル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタンゾル粒子が有機溶媒中に分散している透明酸化チタンオルガノゾルに関する。この透明酸化チタンオルガノゾルは、バインダーと混合して基材、例えばレンズの表面に高い透明度と屈折率を有するコーティング層を形成するコーティング組成物として有用である。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン系ゾルは、例えば合成樹脂製レンズやフィルムの表面に高透明かつ高屈折率なハードコートあるいは反射防止膜等を形成するための被覆組成物の成分として使用されている。
【0003】
本発明者は、特許文献1において酸化チタンゾル粒子を核とし、そのまわりをケイ素の水和酸化物で被覆し、必要であればその上にさらに他の金属水和酸化物を被覆した被覆酸化チタンヒドロゾルおよびその製造方法を開示した。また、この被覆酸化チタンヒドロゾルを有機溶媒例えばメタノールで溶媒置換した被覆酸化チタンオルガノゾルも開示している。しかし、この被覆酸化チタンオルガノゾルの溶媒はメタノールで沸点が低いため、夏場等の高温での経時安定性がよくない。
【0004】
酸化チタンゾル粒子をケイ素の水和酸化物等で被覆する目的は、一つにはその光触媒活性を抑制することであり、他は中性領域において安定なゾルを得るためである。本発明者が特許文献1に開示した被覆酸化チタンゾルは、中性領域で安定であり、オルガノゾルの形でバインダーと混合して高い透明度と屈折率を有するハードコート、反射防止膜等を形成するコーティング組成物に用いることができる。この用途に用いる場合、通常メタノールやエタノールを被覆チタニアゾルの媒体として使用するが、これらは沸点が低いため溶媒の蒸発が速すぎ塗膜の白化あるいはクラックが発生する。またメタノールやエタノールのような低級アルコールは極性が高いためバインダーとの混合安定性が良くないものがある。
特許文献2は高沸点溶剤であるエチレングリコール、プロピレングリコールのようなアルキレングリコールに分散した酸化チタンゾルが開示されているがアルキレングリコールの沸点は180℃と高く、耐熱性の低いフィルム等に塗布することはできない。
【0005】
【特許文献1】特開2007−246351公報
【特許文献2】特開2007−145614公報
【発明の開示】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、分散相が少なくともケイ素の水和酸化物で被覆され、耐光性,酸化チタンゾルの安定性を向上させるためにケイ素の水和酸化物に加え、スズ、アルミニウム、ジルコニウムおよびアンチモンより選ばれた少なくとも1種の他金属水和酸化物の被覆層を持つ酸化チタンゾル粒子であり、分散媒はエチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノ−またはジ−低級アルキルエーテルであり、分散剤はアミノ基を有し分子量5,000〜50,000の高分子系分散剤であることを特徴とする透明酸化チタンオルガノゾルを提供する。さらに該透明酸化チタンオルガノゾルとバインダーを混合して形成されるコーティング組成物、そのコーティング組成物が塗布された光学基材を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の透明酸化チタンオルガノゾルは、被覆した酸化チタンゾル粒子と、分散媒である有機溶媒と、および分散剤の少なくとも3成分を含んでいる。
A.被覆した酸化チタンゾル粒子
ケイ素の水和酸化物単独、またはケイ素の水和酸化物に加え、スズ、アルミニウムおよびジルコニウムから選ばれた水和酸化物で被覆した酸化チタンゾルおよびその製造方法は、本出願人の特開2007−246351公報に開示されている。他の水和金属酸化物がアンチモンの水和酸化物である被覆酸化チタンゾルは本出願人の特願2007−107683に開示されている。概略すると、含水酸化チタンを解膠して得られる酸化チタンは解膠に使用した塩酸を含んでいるため強酸性である。このためゾルへ3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのような水溶性シランカップリング剤を加えるか、または過酸化水素のような金属イオン錯化剤を加えてゾルをpH変化に対して安定化させた後、ゾルをあらかじめアルカリを添加したケイ酸ナトリウムの水溶液へ添加する。さらにスズ、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモン等の他の金属水和酸化物を被覆する場合は溶液をアルカリ性に保ってこれら金属の水溶性塩を添加し、添加終了後酸性ないし中性域において溶液を熟成させ、限外ろ過等によって脱塩して酸化チタンのヒドロゾルを製造する。
核となる酸化チタンの結晶形は特に限定しないが高耐光性、高屈折率を発現させるためにはルチルが好ましい。
被覆した酸化チタンの平均粒子径は100nm以下である。100nm以上であれば高透明な酸化チタンオルガノゾルは得られない。
酸化チタンに対する金属水和酸化物の被覆量は、ケイ素の水和酸化物がSiOとして5〜50重量%、他の金属水和酸化物がSnO,ZrO,AlまたはSbとして合計0〜100重量%、全体で5〜150重量%であるのが好ましい。被覆量が5%以下の場合、屈折率は高くなるが酸化チタンゾルの酸性ないしは中性領域下での安定性が損なわれ、高透明な酸化チタンゾルを得ることができない。さらに被覆量が少なすぎ耐光性も低下する。
ケイ素の水和酸化物の被覆量が50%以上ないしはトータルの被覆量が150%以上の場合は十分被覆されているため耐光性は良好であるが被覆物は酸化チタンより屈折率が低いため塗膜の屈折率を低下させる。
本技術は酸化チタン以外の無機酸化物ゾル、例えば酸化ジルコニウムゾル、酸化スズゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化セリウムゾル、酸化アンチモンゾルにも応用可能である。
【0008】
B.分散媒
バインダーと混合してコーティング組成物とするためには、被覆酸化チタンヒドロゾルを有機溶媒で溶媒置換して得られるオルガノゾルが使用される。これまでヒドロゾルの溶媒置換に使用された有機溶媒は、メタノール、エタノールなどの低級アルカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等がある。
メタノール、エタノールなどの低級アルカノールは沸点が低いため溶媒の蒸発が速すぎ塗膜の白化あるいはクラックの発生が起こる。また低級アルコールは極性が高いためバインダーとの混合安定性が良くないものがある。
エチレングリコール、プロピレングリコールのようなアルキレングリコールは沸点が180℃以上と非常に高く耐熱性の低いフィルム等への塗布は困難である。
本発明では100℃以上150℃以下の適度の沸点を有し、かつ適度の蒸発速度を有するエチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノ−またはジ−低級アルキルエーテルを選択する。具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(BP120℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(BP124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(BP135℃)、エチレングリコールジエチルエーテル(BP121℃)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(BP141℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(BP132℃)などがある。特に好ましいのは沸点約120℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0009】
C.分散剤
本発明の場合、透明酸化チタンオルガノゾルの希釈安定性ならびに透明酸化チタンオルガノゾルとバインダーとを含むコーティング組成物が使用前の貯蔵時安定であるばかりでなく、コーティング液を基材に塗布し、加熱によって溶媒を除去する過程で透明性の低下、白化などが発生してはならない。そのため分散剤は多種類のバインダー樹脂と相溶性があり、高い分散能を必要とする。分散剤としては高分子系として変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、変性ポリエステル、ポリカルボン酸系、リン酸エステル系、アルキレンオキシド系、シリコーン系等、更にはアニオン系、カチオン系、ノニオン系の分散剤がある。この中でリン酸エステル系分散剤はヒドロゾルからエチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノ−またはジ−低級アルキルエーテルに溶媒置換可能で固形分も10%以上に濃縮できる。しかし、これはバインダーとの混合安定性、希釈安定性が劣っていた。バインダーとの混合安定性、希釈安定性の両方が優れている分散剤はアミノ基を有し分子量5,000〜50,000の高分子系分散剤である。好ましくはアルキルアミンのアルキレンオキシド変性物で分子量5,000〜50,000の高分子系分散剤である。市販品としてはソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、TAMNO−15(日光ケミカル(株)製)、BYK−160(ビッグケミー・ジャパン(株))
BYK−161(ビッグケミー・ジャパン(株))等がある。
この分散剤の使用量は、酸化チタンオルガノゾル中の酸化チタン粒子に対して3〜30重量%が適当である。使用量が3%以下の場合、分散剤量が少なすぎオルガノゾルの安定性が損なわれる。30%以上の場合、固形分中の分散剤配合量が増大し塗膜の屈折率および耐擦傷性を低下させる。
【0010】
本発明の透明酸化チタンオルガノゾルは、高透明なコーティング組成物を得るために透明酸化チタンオルガノゾルの透明性を高くする必要がある。透明酸化チタンオルガノゾルの透明性は固形分濃度10重量%において光路長10mmの石英セルで測定する時ヘーズ値が50%以下、好ましくは30%以下である。ヘーズ値が50%以上の場合、混合したコーティング液の透明性も低下し、コーティング組成物の透明性も低下する。
【0011】
溶媒置換は、前記分散剤を前記有機溶媒、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解し、この溶液を被覆した酸化チタンヒドロゾルへ加えて混合する。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で共沸により水が除去する。必要に応じて有機溶媒を添加しながら濃縮する。水分量が10%以下になるまで溶媒置換し、所定の濃度になるまで濃縮する。水分量が10%以上の場合、バインダーあるいは樹脂との混合安定性ならびに希釈安定性が低下する。
また、酸化チタンヒドロゾルを一度メタノールに溶媒置換した後、分散剤と有機溶媒を加え、同様な方法で有機溶媒に置換することも可能である。
透明酸化チタンオルガノゾルには透明性を損なわなければ粘度調整剤、有機ケイ素化合物等の添加剤を加えてもかまわない。
【0012】
本発明は基材、特にレンズのような光学基材の表面に、高透明度および高屈折率を有する膜を形成するためのコーティング組成物を提供する。この組成物は、上に述べた本発明の透明酸化チタンオルガノゾルと、バインダーあるいは樹脂とを含む。前述したように、透明酸化チタンオルガノゾルが高い分散能を有する分散剤を含んでいるので、多種類のバインダーあるいは樹脂と組合せることができる。酸化チタンゾルを含んでいるコーティング組成物のバインダーあるいは樹脂は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂のような熱硬化系樹脂や非水系のUV硬化型樹脂、下式で表される有機ケイ素化合物またはその部分加水分解物である。
(R)−Si−X4−n
式中、Rは互いに同一または異なる有機官能基(好ましくは炭化水素基)、Xは加水分解基であり、nは0〜3、好ましくは1または2である。
高透明酸化チタンオルガノゾルを配合したコーティング組成物で、膜厚1〜3μm、屈折率が1.6〜2.7の塗膜を作成したとき、塗膜のヘーズが0.1〜2%である。また、必要に応じて本コーティング組成物にレオロジーコントロール剤、有機ケイ素化合物等の添加剤を加えてもかまわない。本コーティング組成物を高屈折率光学基材と同じ屈折率に調整し、塗布した高屈折率光学基材は干渉縞がなく透明性の高い光学基材が得られる。
以下の実施例は限定を意図しない。これらにおいて%は特記しない限り重量基準による。
【0013】
透明酸化チタンオルガノゾル
実施例1
第1部 ルチル形酸化チタンヒドロゾル(A液)
1Lのガラスビーカーに、TiO濃度25%のオキシ塩化チタン水溶液240g(TiOとして60g)と、ZrO濃度35%のオキシ塩化ジルコニウム粉末5g(ZrOとして1.8g)を入れ、水で全量を1Lとし、溶解を確認した。
攪拌手段および還流冷却器を備えた2Lフラスコに、水1kgと、SnO濃度30%の塩化第二スズ水溶液20g(SnOとして6g)と、36%塩酸16gを仕込み、攪拌しながら60℃へ加熱した。この温度を維持しながら上のオキシ塩化チタン・オキシ塩化ジルコニウム水溶液1Lを15分間要して滴下し、滴下終了後沸騰温度まで加熱し、3時間沸騰状態で加熱還流した。加熱停止後40℃まで冷却し、限外濾過モジュール(旭化成ケミカルズ(株)製マイクローザSLP−1053)にろ液量と同量のイオン交換水を補給しながら通液し、TiO濃度10%で電気伝導度が10,000μS/cmになるまで電解質成分を除去し、TiO濃度20%まで濃縮し、pH1.3の酸化チタンゾル(A液)300gを得た。
A液を100℃で乾燥した粉末のX線回折は結晶形がルチル形であることを示した。
【0014】
第2部 シランカップリング剤処理酸化チタンヒドロゾル(B液)
2LガラスビーカーにTiO濃度20%のルチル形酸化チタンゾル(A液)200g(TiOとして40g)を取り、イオン交換水でTiO濃度4%に希釈し、攪拌しながら3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−403)5.2gを10分間要して滴下し、シランカップリング剤処理酸化チタンヒドロゾル(B液)を得た。
【0015】
第3部 酸化チタンヒドロゾルの被覆処理
5Lガラスビーカーに、SiO濃度10%のケイ酸ナトリウム水溶液60g(SiOとして6g)と、48%水酸化ナトリウム水溶液2gを入れ、イオン交換水を加えて全量を1200gとした。この液に攪拌しながらB液全量(TiOとして40g)を15分間要して添加した。添加終了時のpHは10であった。
次にこの反応液を80℃へ加熱した後、1%塩酸を120分間間要して添加し、pH8に調節した。この液を20℃に冷却し、10%クエン酸水溶液でpH3に調節した。この液を限外濾過モジュール(旭化成ケミカルズ(株)製マイクローザSLP−1053)に、ろ液量と同量のイオン交換水を補水しながら通液し、TiO濃度10%で、電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで電解質成分を低減させた。
【0016】
第4部 溶媒置換
2Lのガラスビーカーに第3部で作成したゾル400g(TiOとして40g)に分散剤(日本ルーブリゾール(株)製 ソルスパース20000) 8gを配合したプロピレングリコールモノメチルエーテル800gを加え、室温で熟成した。熟成後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で200gまで濃縮した。
【0017】
実施例2
実施例1の第3部で10%のケイ酸ナトリウム水溶液を32g(SiOとして3.2g)に変更したことを除き、実施例1の操作を繰り返して固形分20%のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンゾルを作成した。
【0018】
実施例3
実施例1の第3部でB液添加後、SnO濃度30%の塩化第二スズ水溶液20g(SnOとして6g)を10%水酸化ナトリウム水溶液と同時にpH10を保持しながら、30分間を要して添加したことを除き、実施例1の操作を繰り返して固形分20%のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンゾルを作成した。
【0019】
実施例4
実施例1の第3部でB液添加後、Al濃度10%のアルミン酸ナトリウム水溶液20g(Alとして2g)を10%塩酸と同時にpH10を保持しながら、30分間を要して添加したことを除き、実施例1の操作を繰り返して固形分20%のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンゾルを作成した。
【0020】
実施例5
実施例1の第3部でB液添加後、ZrO濃度10%のオキシ塩化ジルコニウム水溶液20g(ZrOとして2g)を10%水酸化ナトリウム水溶液と同時にpH10を保持しながら、30分間を要して添加したことを除き、実施例1の操作を繰り返して固形分20%のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンゾルを作成した。
【0021】
実施例6
2Lガラスビーカーに、三酸化アンチモン(日本精鉱(株)PATAX−CF)200gと、30%過酸化水素水146.67g(Hとして44g)を仕込み、水を加えて2000gとした。この懸濁液を還流冷却器つきフラスコに入れ、1時間沸騰温度で還流下反応させた。40℃以下に冷却後、反応液を希釈、ジイソプロピルアミンでpH7.5に調節し、Sb10%の五酸化アンチモンゾルを得た。実施例1の第3部でB液添加後、五酸化アンチモンゾル20g(Sbとして2g)を添加したことを除き、実施例1の操作を繰り返して固形分20%のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンゾルを作成した。
【0022】
実施例7
実施例1の第3部で作成したゾルを2%に希釈し、200℃−10時間の条件で水熱処理を行った。処理後、室温に冷却し、TiO濃度10%まで限外ろ過にて濃縮した。その濃縮液667g(TiOとして40g)に分散剤(日本ルーブリゾール(株)製 ソルスパース20000) 8g(TiOに対して20%)を配合したプロピレングリコールモノメチルエーテル800gを加え、室温で熟成した。熟成後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下で200gまで濃縮した。さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル800gを加え、固形分が20%になるまでロータリーエバポレーターを用いて減圧下で濃縮した。
【0023】
実施例8
実施例7で分散剤を2g(TiOに対して5%)に変更したことを除き、実施例7の操作を繰り返して固形分20%のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンゾルを作成した。
【0024】
実施例9
実施例1 第4部の溶媒をエチレングリコールジエチルエーテルに変更したことを除き、実施例1の操作を繰り返して固形分20%のエチレングリコールジエチルエーテル分散チタニアゾルを作成した。
【0025】
比較例1
実施例1 第4部において分散剤を添加せず、実施例1の操作を行ったが、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンゾルは増粘し溶媒置換できなかった。
【0026】
比較例2
実施例1で分散剤を40g(TiOに対して100%)に変更したことを除き、実施例1の操作を繰り返して固形分20%のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散酸化チタンゾルを作成した。
比較例3
実施例1 第3部の酸化チタンヒドロゾルをジイソプロピルアミンで液のpHを6に調節し、メタノールでTiO濃度5%に希釈し、限外濾過モジュール(旭化成ケミカルズ(株)製マイクローザSLP−1053)に、濾液量と同量のメタノールを補給しながら通液し、メタノールに溶媒置換した。
【0027】
コーティング剤の実施例
コーティング剤(その1)
実施例10〜18、比較例4,5
ポリエステル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製 ベッコライトM6401−50) 32.6gとメラミン樹脂(大日本インキ化学工業(株)製 スーパーベッカミンJ820−50) 4.8gを混合し、バインダーを作成した。次に実施例1〜9および比較例2,3で製造した固形分20%の酸化チタンゾル 100.0g、溶媒 50.0g、バインダー 33.3gを混合し、熱硬化性樹脂を用いたコーティング剤を作成した。
【0028】
コーティング剤(その2)
実施例19〜27、比較例6,7
UV硬化樹脂(日本合成化学工業(株)製紫光UV−7605B)16.7gを酸化チタンゾルの溶媒9.0gに溶解する。開始剤2種類(チバスペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184及び819) 各0.3gを酸化チタンゾルの溶媒7.0gに溶解する。酸化チタンゾルの溶媒に溶解したUV硬化樹脂 25.7gと酸化チタンゾルの溶媒に溶解した開始剤7.6gを混合し、バインダーを作成した。次に実施例1〜9および比較例2,3で製造した固形分20%の酸化チタンゾル 100.0g、溶媒 50.0g、バインダー 33.3gを混合し、UV硬化性樹脂を用いたコーティング剤を作成した。
【0029】
コーティング剤(その3)
実施例28〜36、比較例8,9
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)KBM−403)27.0gに、0.01N塩酸7.0gを加えて24時間攪拌し、バインダーを作成した。実施例1〜9および比較例2,3で製造した固形分20%の酸化チタンゾル100.0g、酸化チタンゾルの溶媒 67g、バインダー 27.0g 硬化剤(アルミニウムアセチルアセトナート)少量、レベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製L−7001)少量を加え、攪拌してハードコート用のコーティング剤を作成した。
【0030】
光学部材(その1)
実施例37〜45および比較例10,11
実施例10〜18および比較例4,5のコーティング剤を温度30℃、湿度70%の環境下で500rpm、3秒で松浪ガラス工業(株)製ミクロスライドガラスプレート(70×55×1.3mm)にスピンコートし、25℃で15分、110℃で60分乾燥して膜厚2μmの塗膜を形成した。
【0031】
光学部材(その2)
実施例46〜54および比較例12,13
実施例19〜27および比較例6,7のコーティング剤を温度30℃、湿度70%の環境下で500rpm、3秒で松浪ガラス工業(株)製ミクロスライドガラスプレート(70×55×1.3mm)にスピンコートし、80℃で30分乾燥後、 580mJ/cmの紫外線を照射して膜厚2μmの塗膜を作成した。
【0032】
光学部材(その3)
実施例55〜63および比較例14,15
屈折率1.67のチオウレタン系の樹脂レンズを濃度13%のNaOH水溶液中に5分間浸漬した後、充分に水洗し、乾燥した。実施例28〜36、比較例8,9のコーティング剤を温度30℃、湿度70%の環境下でディッピング法(引き上げ速度16.5mm/秒 マイクロディップコーターND0408 (株)SDI製)にて塗布し、25℃−15分、80℃−30分、120℃−60分乾燥して膜厚2μmの塗膜を作成した。
【0033】
酸化チタンゾルの評価
透明性(ヘーズ)
酸化チタンゾルを分散溶媒にて固形分10%に希釈し、光路長10mmの石英セルに入れ、ヘーズメーター(日本電色工業(株)ヘーズメーターNHD−2000)でヘーズ値を測定した。ヘーズ値が小さいほど透明性は高い。
【0034】
経時安定性
酸化チタンゾルを1ヶ月間 40℃の恒温室に保管したときの状態を目視観察した。
○・・・変化なし
△・・・増粘
×・・・ゲル化あるいは凝集
結果を表1に示す。
【0035】
コーティング剤および塗膜の評価
コーティング剤の安定性
コーティング剤作成直後および1週間室温で静置したときの状態を目視評価した。実施例10ないし36のコーティング剤は作成直後および室温で1週間放置後凝集、増粘などの安定性を示す状態の変化がなかったが、比較例5のコーティング剤はコーティング剤作成直後、凝集した。
塗膜の評価は光学部材に形成した塗膜について行った。
【0036】
塗膜の透明性
塗膜をヘーズメーター(日本電色工業(株)ヘーズメーターNHD−2000)でヘーズ値を測定した。ヘーズ値が小さいほど透明性は高い。
【0037】
塗膜の屈折率
塗膜をエリプソメーター((株)溝尻光学研究所DVA−FL3G)で633nmの波長における屈折率を測定した。
【0038】
塗膜の耐擦傷性
実施例55〜63および比較例14の光学部材を日本スチールウール(株)製スチールウール 番手0000で塗膜表面を荷重300gで10回擦り、傷の付き方を目視評価した。
○ : 傷僅少
× : 全面傷あり
結果を表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタンゾル粒子が分散相であり、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノ−またはジ−低級アルキルエーテルが分散媒である酸化チタンオルガノゾルであって、さらに分散剤としてアミノ基を有し分子量5,000〜50,000の高分子系分散剤を含んでいることを特徴とする透明酸化チタンオルガノゾル。
【請求項2】
分散剤がアルキルアミンのアルキレンオキシド変性物であり、かつ、分子量5,000〜50,000の高分子系分散剤である請求項1の透明酸化チタンオルガノゾル。
【請求項3】
酸化チタンゾル粒子は、ケイ素の水和酸化物に加え、スズ、アルミニウム、ジルコニウムおよびアンチモンより選ばれた少なくとも1種の他の金属水和酸化物でさらに被覆されている請求項1あるいは2の透明酸化チタンオルガノゾル。
【請求項4】
前記分散媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルである請求項1ないし3のいずれかの透明酸化チタンオルガノゾル。
【請求項5】
酸化チタン粒子の結晶形はルチルである請求項1ないし4のいずれかの透明酸化チタンオルガノゾル。
【請求項6】
ケイ素の水和酸化物の被覆量は、TiOに換算した酸化チタンゾル粒子の5〜50重量%である請求項1ないし5のいずれかの透明酸化チタンオルガノゾル。
【請求項7】
他の金属水和酸化物の被覆量は、ケイ素の水和酸化物の被覆量と合計して、TiOに換算した酸化チタンゾル粒子の5〜150重量%である請求項2ないし6のいずれかの透明酸化チタンオルガノゾル。
【請求項8】
前記分散剤は、酸化チタンオルガノゾル中の酸化チタン粒子の3〜30重量%である請求項1ないし7のいずれかの透明酸化チタンオルガノゾル。
【請求項9】
固形分濃度10重量%において、光路長10mmの石英セル中で測定した時、50%以下のヘーズ値を有する請求項1ないし8のいずれかの透明酸化チタンオルガノゾル。
【請求項10】
請求項1ないしは9のいずれかの透明酸化チタンオルガノゾルと、バインダーを含んでいる、基材の表面に高い透明度および高い屈折率を有する膜を形成するためのコーティング組成物。
【請求項11】
膜厚1〜3μm、屈折率が1.6〜2.7の塗膜を作成したとき、塗膜のヘーズが0.1〜2%である請求項10のコーティング組成物。
【請求項12】
バインダーが熱硬化性樹脂である請求項10のコーティング組成物。
【請求項13】
バインダーが下記一般式で表される有機ケイ素化合物あるいはその部分加水分解物である請求項10のコーティング組成物:
(R)−Si−X4−nまたは
式中、Rは互いに同一または異なる有機官能基、Xは加水分解基であり、nは0〜3である。
【請求項14】
バインダーがUV硬化性樹脂である請求項10のコーティング組成物。
【請求項15】
請求項10ないし14のコーティング組成物が塗布された光学基材。


【公開番号】特開2009−227500(P2009−227500A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72700(P2008−72700)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】