説明

透水敷設体

【課題】ある程度の透水性を確保しつつ、底面側の地質に依存することなく、地表の温度の上昇を抑制することのできる透水敷設体を提供することを目的とする。
【解決手段】砂利や砕石などの粗骨材およびセメントを体積比率で35%〜55%含ませてなるセメント混合物に、保水材を体積比率で40%〜60%を含み、水と混合させて締固させる。この保水材としては、産業廃棄物である瓦の粉砕粒2を用い、更には、高水分吸収樹脂5、ゼオライト6などを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道や車道、庭などに敷設される透水性敷設体に関するものであり、特に、透水性と保水性を兼ね備えた材料からなる透水敷設体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歩道や車道などには、地中内に水分を浸透させるようにした構造を有する透水敷設体が敷設されている。このような透水敷設体は、一般には、砂利や石などの粗骨材にセメントを混合させ、セメント内部にランダムな大きさや形状の空隙部を形成させるようにしたものである(特許文献1など)。このように敷設体に透水構造を持たせれば、降水時における雨水を地中内に浸透させることができるため、特に、夏の暑い季節などに地中内に蓄えられた水分を蒸発させることによって、地表温度の上昇を抑制することができるようになる。
【特許文献1】特開平10−218680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年、ヒートアイランド現象によって都市部における集中豪雨が激化する傾向にあり、集中豪雨が起こった場合に、すべての雨水を透水敷設体を通して地中に浸透させてしまったのでは、河川の増水や氾濫を招きかねない。
【0004】
一方、透水敷設体は、歩道や車道に敷設される場合だけでなく、一般家庭における玄関口やガレージ、庭のコンクリート上に敷設される場合もある。しかしながら、このようなコンクリート上に透水敷設体を敷設したのでは、そのコンクリートに水分を浸透させることができないため、雨水をすべてコンクリート上で流してしまい、地表温度の上昇を抑制することができない。
【0005】
そこで、本発明の第一の目的は、このような透水敷設体において、ある程度の透水性を確保しつつ、敷設される下方の地質に依存することなく、地表温度の上昇を抑制することのできる透水敷設体を提供することを目的とするものである。
【0006】
また、このような透水敷設体を製造する場合、産業廃棄物のリサイクル化の観点から、可能な限り産業廃棄物を有効利用することが望まれている。このため、透水敷設体に保水性を持たせる場合、産業廃棄物のうち、保水機能を有する廃材などを有効活用できるようにすることが望ましい。
【0007】
そこで、本発明の第二の目的は、透水性と保水性を兼ね備えた透水敷設体において、可能な限り産業廃棄物を有効利用することのできるような透水敷設体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の透水敷設体は、上記課題を解決するために、砂利や砕石などの粗骨材とセメントを体積比率で35%〜55%含むセメント混合物に対して、保水材を体積比率で40%〜60%を含み、水と混合させた後に締固させるようにしたものである。
【0009】
このように保水材を成分に含ませるようにすれば、降水時における雨水を透水敷設体内に蓄積させておくことができるため、集中豪雨時における水の流出を抑制して、河川の増水や氾濫を抑制することができる。また、このような透水敷設体をコンクリートなどのような保水性の乏しい地面上に敷設した場合であっても、その保水材によって雨水を保水することができ、かつ、その水分を気化させることによって地表温度の上昇を抑制することができる。
【0010】
また、別の発明では、第二の課題を解決するために、保水材である瓦の粉砕粒を体積比率で40%〜60%含ませるようにする。
【0011】
一般的に、瓦は産業廃棄物として処理されるものであるが、このような瓦を粉砕して透水敷設体の材料とすれば、産業廃棄物のリサイクル化を図ることができるようになる。しかも、瓦は多孔質であるため保水効果を有し、これを材料として用いれば、保水効果の向上を図ることができる。
【0012】
さらに、保水材として高水分吸収樹脂を全体の体積比率で1%〜2%含ませるようにする。
【0013】
このように透水敷設体内に高水分吸収樹脂を含ませるようにすれば、飛躍的に保水効果を高めることができる。
【0014】
さらに、このような透水敷設体に、ゼオライトを全体の体積比率で1%〜2%含有させるようにする。
【0015】
このようにゼオライトを含有させるようにすれば、ゼオライトが本来有する吸着機能やイオン交換機能、触媒活性機能によって有害物質の除去や水質の改善、窒素酸化物の除去などを図ることができるようになる。
【0016】
加えて、このような透水敷設体をブロック形状とし、そのブロックの底面側の中心部分にテーパー状に突出する尖状部を設けるようにする。
【0017】
一般に、矩形状のブロックに上から荷重がかかった場合、中央部分に荷重が集中するため、その中央部分にひび割れなどを生ずが、このように中央部分を厚くすれば、荷重が生じた際のひび割れなどを防止することができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、砂利や砕石などの粗骨材とセメントを体積比率で35%〜55%含むセメント混合物に、保水材を体積比率で40%〜60%を含み、これに水を混合させて締固させるようにしたので、降水時における雨水を透水敷設体内に蓄積させておくことができる。これにより、集中豪雨時における水の流出を抑制し、河川の増水や氾濫を抑制することができるようにとともに、コンクリート上に敷設した場合であっても、保水材に蓄積されている水分を気化させて地表温度の上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態における透水ブロック1の平面図、底面図、側面図であり、図2はその断面概略図である。また、図3は、透水ブロック1の表面に存在する瓦の粉砕粒2が摩耗して粗骨材3が露出したときの状態を示す図である。
【0020】
この実施の形態における透水ブロック1は、歩道や車道、庭、玄関口などに並べて敷設されるもので、例えば、作業者が素手で運べる程度の大きさである縦横寸法30cm〜35cm、厚み寸法6cm〜10cm程度の大きさに構成される。この正方形状をなす透水ブロック1の底面側には、中央部分を周囲に比べて1cm〜2cm程度突出させたテーパー状の尖状部10が設けられており、この尖状部10における肉厚を周囲よりも厚くすることによって、中央部分に曲げモーメントが生じた場合であっても中央部分からのひび割れを防止できるようにしている。
【0021】
このような透水ブロック1は、その成分として、瓦の粉砕粒2、砂利や砕石などの粗骨材3、セメント4、水、高水分吸収樹脂5、ゼオライト6などを含んでいる。
【0022】
瓦の粉砕粒2は、解体された家屋の瓦や不要になった瓦を粉砕して粒状にしたもので、3mm〜15mm程度の大きさを有するものである。通常、瓦は、700〜1000度以下の低い温度で焼成され、その際に多孔が形成されて吸水効果を有するようになる。このため、このような吸水効果を有する瓦を成分として含ませるようにすれば、透水ブロック1に保水効果を持たせることができる。しかし、一方では、瓦には堅くて脆いという性質がある。このため、この瓦の粉砕粒2を透水ブロック1の成分として含ませると、人間や自動車の踏圧によって表面から摩耗していき、透水ブロック1の表面にくぼみを生じてしまうという可能性がある。このため、比較的硬い砂利や砕石などの粗骨材3を体積比率で25%〜55%含ませるようにする。
【0023】
この砂利や砕石などの粗骨材3は、同様に、直径3mm〜15mm程度の大きさに粉砕されてなるもので、透水ブロック1全体に強度を持たせるとともに、瓦の粉砕粒2の摩耗によって透水ブロック1の表面を削れないようにするものである。瓦の粉砕粒2が表面側に露出した状態であると、人間の歩行や自動車の通行などによってその瓦の粉砕粒2が徐々に削られていくことになるが、ある程度削られた段階で、図3に示すように、砂利や砕石などの粗骨材3が表面の露出し、その状態で、摩耗に強い粗骨材3によって表面の摩耗が防止される。この粗骨材3は、セメント4と混合させて透水ブロック1全体の体積比率に対して35%〜55%程度含ませる。このような割合で混合させることにより、粗骨材3における表面の摩耗の防止と保水材による保水の効果のバランスを持たせることができるようになる。
【0024】
また、この透水ブロック1には高水分吸収樹脂5が含まれる。この高水分吸収樹脂5は、保水力が高く、しかも、速乾性が低く、踏圧によって水分が放出されず、かつ、膨張率の低い樹脂が好適に用いられる。例えば、この高水分吸収樹脂5としては、紙おむつや生理用品などとして使用されているポリアクリル酸塩を成分とする樹脂が用いられる。この樹脂は、自重の200〜1000倍の水分を吸収する能力を有しており、また、一度吸水した水分は外圧がかかってもほとんど放出しない。このため、地面に敷設される透水ブロック1に好適に使用される。なお、このようなポリアクリル塩酸などに限らず、他の樹脂を使用することもできる。
【0025】
さらに、この実施の形態では、透水ブロック1の成分として、ゼオライト6が体積比率で1%〜2%含ませる。このゼオライト6は、吸着機能やイオン交換機能、触媒活性機能などを有するもので、吸着機能によって有害物質の吸着、脱臭、水質・排気の浄化、保水などの効果を持たせることができる。また、イオン交換機能によって、酸性を中和し、また、土壌改良やアンモニウムイオンの除去を行わせることができ、さらには、触媒活性機能によって空気中の窒素酸化物の除去などを行うことができる。
【0026】
このような瓦の粉砕粒2、粗骨材3、高水分吸収樹脂5、ゼオライト6などは、セメント4と混ぜ合わされたセメント混合材として形成され、そして、水と練り合わされた後、正方形状の型に流し込まれる。そして、上下方向からプレス機で加圧され、締め固めれられる。
【0027】
このように締め固められた透水ブロック1は、瓦の粉砕粒2と粗骨材3などによって部分的に空隙が形成される。この空隙によって雨水などを下方へ浸透させることができ、底面側へ水を透過させる。また、この空隙には、保水材を含むコンクリートが充填されているため、その保水材によって透過する際の水分を貯留することができる。この貯留された水分は、地表の温度上昇に伴って徐々に気化され、その気化熱によって地表温度の上昇を抑制することができる。
【0028】
以上のように、この実施の形態では、保水材として、瓦の粉砕粒2を用いるようにしているので、産業廃棄物のリサイクル化を図ることができ、環境に優しい透水ブロック1とすることができる。
【0029】
さらには、保水材として、高水分吸収樹脂5を含ませるようにもしたので、1〜10gの粉末に対して500ccの割合で水分を貯留することができ、地表温度の上昇を抑制することができる。また、集中豪雨時における貯水槽としての役割を果たし、河川の増水や氾濫などを防止することができるようになる。
【0030】
さらに、このような透水ブロック1には、ゼオライト6を体積比で1%〜2%含ませるようにしたので、このゼオライト6によっても保水することができるばかりでなく、脱臭、水質の浄化、窒素酸化物の除去などを行うことができるようになる。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0032】
例えば、上記実施の形態では、透水敷設体として正方形状の透水ブロック1を用いて説明しているが、このような正方形状に限定されることなく、三角形状などであってもよく、また、道路に連続的に設けられるような敷設体に適用することもできる。
【0033】
また、上記実施の形態では、保水材として瓦の粉砕粒2や高水分吸収樹脂5、ゼオライト6などを用い、特に、高水分吸収樹脂5によって多くの水分を貯留させるようにしているが、これ以外の材料を用いて保水効果を高めるようにしてもよい。
【0034】
さらには、上記実施の形態では、底面側に突出した尖状部10を設けるようにしているが、このような形状に限定されることなく、底面側を平面状としてもよい。平面状とした場合は、コンクリート上に敷設する際に、コンクリートとのがたつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態における透水ブロックの平面図、底面図、側面図
【図2】同形態における断面概略図
【図3】同形態における瓦の粉砕粒が摩耗したときの状態を示す図
【符号の説明】
【0036】
1・・・透水ブロック
2・・・瓦の粉砕粒
3・・・粗骨材
4・・・セメント
5・・・高水分吸収樹脂
6・・・ゼオライト
10・・・尖状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂利や砕石などの粗骨材とセメントを体積比率で35%〜55%含ませてなるセメント混合物に、保水材を体積比率で40%〜60%を含み、水と混合させて締固させてなることを特徴とする透水敷設体。
【請求項2】
砂利や砕石などの粗骨材とセメントを体積比率で35%〜55%含ませてなるセメント混合物に、瓦の粉砕粒を体積比率で40%〜60%を含み、水と混合させて締固させてなることを特徴とする透水敷設体。
【請求項3】
前記保水材として、高水分吸収樹脂を体積比率で1%〜2%含ませてなる請求項1又は2に記載の透水敷設体。
【請求項4】
さらに、ゼオライトを体積比率で1%〜2%含ませてなる請求項1又は2に記載の透水敷設体。
【請求項5】
前記透水敷設体が、ブロック体をなすものであり、当該ブロック体の底面中心部にテーパー状に突出させた尖状部を設けてなる請求項1から4いずれか1項の透水敷設体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−327282(P2007−327282A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160348(P2006−160348)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(505409694)株式会社東建ハウジング (7)
【Fターム(参考)】