説明

透視検査装置

【課題】冷却フィンなどの異物による影響を受けずに、実装状態(はんだ付けの状態)を確実に検査することができる透視検査装置を提供する。
【解決手段】放射線Xを被検体101に向けて放出する放射線源1と、検体を透過した放射線Xを検出する放射線検出器4と、被検体101への放射線Xの入射角度を変化させる入射角度変更手段9と、放射線検出器4により検出された放射線量の二次元分布を画像化する信号処理手段6と、入射角度変更手段9及び信号処理手段6を制御する制御手段10とを備え、制御手段10は、被検体101に放射線Xが第1の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像と、被検体101に放射線Xが第2の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像とを合成して、被検体101に重なっている異物102によるノイズ画像を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体である半導体素子等を透過した放射線(X線、γ線、中性子線等)を検出し、半導体素子の実装状態の良否を判定する透視検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や電子部品が実装された電子基板等の被検体に放射線(X線、ガンマ線などを含む)を透過させ、被検体を透過した放射線を検出することにより、被検体における放射線透過画像により異常箇所を検出する透視検査装置が提案されている。このような透視検査装置は、例えば、半導体素子の実装(半田付け)状態の良否、例えば、ボンディングワイヤの切断の有無や、多層配線基板等の内部の層のパターンの非破壊検査を行うために使用されている。特に、BGA(ボールグリッドアレイ)素子では、基板とBGAとの実装部(半田付け部)が外部からは見えないため、透視検査装置による非破壊検査が有用である。
【0003】
この透視検査装置は、基本的には医療用として普及している透視装置と同じであるが、医療用透視装置がX線用フィルムを用いて透過像を得るのに対して、透視検査装置では、センサ出力をディジタル画像化し、画像処理で透過像を作成する点が異なっている。
【0004】
従来、特許文献1に記載されているように、放射状に拡散する放射線(X線)を被検体に透過させ、線状に配列された複数の感知部を有する放射線検出器によって、被検体を透過した放射線を検出するようにした透視検査装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−13091公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電力を変換して各部品へ供給する役割を果たすパワー・エレクトロニクス技術は、これまでは縁の下の力持ち的な存在だったが、近年は存在感を増している。機器の省エネルギーや制御性を高めるカギを握るからである。最終的に電力を消費する部品が機器の機能を決める主役なのに対し、パワー・エレクトロニクス技術は、機器の省エネルギーや制御性を高める有効な手段として、その存在感を急速に増している。パワー・エレクトロニクス技術の中核に位置するパワー半導体は、増産が求められている。パワー半導体は、ハイブリッド自動車のモーター制御や、高速新幹線N700系のモーター制御などに使用されている。
【0007】
コンバータやインバータなどの電力変換器は、過去30年、緩やかながらもたゆまぬ進化を遂げてきた。その出力パワー密度は、大まかな傾向として10年間で約5.5倍に向上してきている。性能の向上を主に支えてきたのは、損失低減といった半導体素子の特性改善である。ただし、Si(シリコン)材料を用いるパワー半導体は、昨今その特性向上が伸び悩んでいる。今後は、従来と同様の特性向上は期待できないとする見方が有力である。SiC(シリコンカーバイト)などの新たな材料の実用化を検討する動きもあるが、実用化にはまだ時間はかかる。
【0008】
そこで、出力パワー密度向上のペースを維持するには、実装や制御に関する技術を結集させる必要がある。パワー半導体素子はSiからなり、高速にスイッチング制御を行う。このときに大電流が流れるため、パワー素子は発熱するので、より冷却効率が求められるようになった。
【0009】
パワー半導体素子においては、基材の材料を熱伝導率のよいアルミや銅とし、基材の厚さを3mmから4mmへ、さらに6mmへと厚くする場合もある。パワー素子をはんだ付け実装した際には、気泡が含まれてしまう多い。はんだ部分に気泡が残ると、気泡内に熱が溜まり、放熱が妨げられる。すると、熱による誤動作や、熱によるパワー素子の破壊などが考えられる。
【0010】
そこで、前述したような透視検査装置を用いて、パワー素子の「はんだ付け」部分を検査することが行われている。透視検査装置は、その「はんだ付け」が正確に行われているかを確認するための装置である。透視検査装置においては、X線が物質を透過する性質を用いて、パワー素子、基材を透過したX線を検出することにより、「はんだ付け」の状態を検査する。透視検査装置においては、検出されたX線の二次元分布を画像化し、この画像を画像処理して、気泡率を測定する。
【0011】
しかしながら、パワー半導体素子において、基材として厚さ6mmの無垢の銅板を用いることは、コストも高く、重量も重く扱いにくいので、冷却フィンを付け表面積を増やすことで、冷却効率を上げることが行われている。冷却フィンは、パワー素子の放熱板に実装(はんだ付け)される。
【0012】
冷却フィンが実装された放熱板付きパワー半導体素子を透視検査装置により検査すると、冷却フィンが異物として、画像ノイズが発生する。すなわち、気泡と冷却フィンの画像が重なってしまい、気泡率の測定ができなくなってしまう。
【0013】
また、実装基板などで半導体素子が実装された基板の裏面に他の電子部品が取付けられている場合には、他の電子部品が異物として、画像ノイズが発生する。すなわち、検査対象部と裏面の他の電子部品の画像が重なってしまい、正しい測定ができなくなってしまう。
【0014】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、冷却フィンや基板の裏面に取付けられた電子部品などの異物による影響を受けずに、実装状態(はんだ付けの状態)を確実に検査することができる透視検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る透視検査装置は、前記課題を解決するため、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0016】
〔構成1〕
放射線を発生し被検体に向けて放出する放射線源と、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、被検体への放射線の入射角度を変化させる入射角度変更手段と、放射線検出器により検出された放射線量の二次元分布を画像化する信号処理手段と、入射角度変更手段及び信号処理手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、被検体に放射線が第1の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像と、被検体に放射線が第2の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像とを合成することにより、被検体に重なっている異物によるノイズ画像を除去することを特徴とするものである。
【0017】
〔構成2〕
構成1を有する透視検査装置において、放射線源が発生する放射線は、放射状に放射され、入射角度変更手段は、披検体を放射線の放射範囲内において移動させることにより、または、放射線源を移動させることにより、被検体への放射線の入射角度を変化させることを特徴とするものである。
【0018】
〔構成3〕
構成1を有する透視検査装置において、放射線源が発生する放射線は、放射状に放射され、入射角度変更手段は、披検体を放射線の放射範囲内において回転させることにより、被検体への放射線の入射角度を変化させることを特徴とするものである。
【0019】
〔構成4〕
構成1、または、構成2を有する透視検査装置において、被検体に重なっている異物は、被検体に取付けられた冷却フィンであり、入射角度変更手段は、披検体と放射線源との相対位置を、冷却フィンの方向に垂直な方向に移動させることを特徴とするものである。
【0020】
〔構成5〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する透視検査装置において、被検体に重なっている異物は、被検体が実装された基板の裏面に取付けられた電子部品であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る透視検査装置においては、制御手段は、被検体に放射線が第1の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像と、被検体に放射線が第2の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像とを合成することにより、被検体に重なっている異物によるノイズ画像を除去するので、冷却フィンなどの異物による影響を受けずに、実装状態(はんだ付けの状態)を確実に検査することができる。
【0022】
すなわち、本発明は、冷却フィンや基板の裏面に取付けられた電子部品などの異物による影響を受けずに、実装状態(はんだ付けの状態)を確実に検査することができる透視検査装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る透視検査装置の構成を示す側面図である。
【図2】本発明に係る透視検査装置の原理を示す側面図である。
【図3】発明に係る透視検査装置の原理の他の例を示す側面図である。
【図4】本発明に係る透視検査装置において得られる画像を示す平面図である。
【図5】本発明に係る透視検査装置において修正した画像を示す平面図である。
【図6】本発明に係る透視検査装置における披件体の他の例(両面基板)を示す側面図である。
【図7】本発明に係る透視検査装置により両面基板を観察している状態を示す側面図である。
【図8】本発明に係る透視検査装置において得られる画像(ノイズ除去前)を示す平面図である。
【図9】本発明に係る透視検査装置において得られる画像(ノイズ除去後)を示す平面図である。
【図10】本発明に係る透視検査装置の原理(1)を示す側面図である。
【図11】本発明に係る透視検査装置の原理(2)を示す側面図である。
【図12】図10に示した状態の透視検査装置において得られる第1の画像を示す平面図である。
【図13】図11に示した状態の透視検査装置において得られる第2の画像を示す平面図である。
【図14】図12に示した第1の画像と図13に示した第2の画像とを合成した画像を示す平面図である。
【図15】第1の画像と第2の画像との合成方法を示す平面図である。
【図16】第1の画像と第2の画像との合成方法における課題を示す平面図である。
【図17】本発明に係る透視検査装置の原理(3)を示す側面図である。
【図18】図17に示した第1の画像と第2の画像との合成方法を示す平面図である。
【図19】本発明に係る透視検査装置の原理(4)を示す側面図である。
【図20】本発明に係る透視検査装置の原理(5)を示す側面図である。
【図21】図20に示した第1の画像と第2の画像との合成方法を示す平面図である。
【図22】本発明に係る透視検査装置の原理(6)を示す側面図である。
【図23】本発明に係る透視検査装置の原理(7)を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明に係る透視検査装置の構成を示す側面図である。
【0026】
この透視検査装置は、図1に示すように、放射線、例えば、X線ビームXを被検体である半導体素子101が実装された電子基板に向けて放射する放射線源となるX線管1を有している。このX線管1は、X線制御装置2によって制御されている。X線制御装置2は、制御手段となる制御装置10により制御される。
【0027】
半導体素子101が実装された電子基板は、入射角度変更手段となる移動操作機構(X−Yステージ)3上に設置される。この移動操作機構3は、半導体素子101をX線ビームXの放射範囲内においてX線ビームXを横切る方向に移動させることによって、半導体素子101へのX線ビームXの入射角度を変化させることができる。
【0028】
また、制御装置10は、入射角度変更手段となる移動操作機構11により、X線管1を移動操作することができる。
【0029】
ここで、半導体素子101は、パワー半導体素子であり、透視検査において異物となる冷却フィン102が放熱板に実装(はんだ付け)されている。
【0030】
半導体素子101は、移動操作機構3により、図1中矢印Aで示す2軸方向に移動操作、または、矢印Bで示すように回転操作される。X線管1より発せられ、半導体素子101を透過したX線ビームXは、放射線検出器であるX線検出器4により検出される。このX線検出器4は、半導体素子101を透過した放射線量(X線量)の二次元分布を検出する。このX線検出器4としては、通常使用されている撮像管タイプのものを使用することができる。このタイプのX線検出器4は、感知部においてX線量に比例して帯電した電荷を電子ビームで走査して読み出すという原理で検出するものである。
【0031】
X線ビームXは、X線管1より発せられて放射状に拡散するビームであるので、半導体素子101を透過した後も拡散してX線検出器4により検出される。したがって、X線検出器4においては、半導体素子101の拡大透過像が検出される。このときの拡大率は、X線管1から半導体素子101までの距離と、X線管1からX線検出器4までの距離との比率によって決まり、例えば、8乃至10倍程度となされる。
【0032】
X線検出器4は、検出器コントローラ5に接続され、この検出器コントローラ5によって制御されるとともに、検出した放射線強度情報を増幅されるようになっている。検出器コントローラ5で増幅された放射線強度情報は、信号処理手段となる画像化回路6に供給される。画像化回路6は、X線検出器4の検出出力(放射線量の二次元分布)を画像信号に変換して表示装置7に送る。表示装置7は、画像化回路6から送られた信号に応じた画像を表示する。
【0033】
このようにして、この透視検査装置においては、電子基板をX線により走査し、この電子基板上に実装された各半導体素子101が順次透視検査される。
【0034】
この透視検査装置においては、移動操作機構3、移動操作機構11及び画像化回路6を制御する制御装置10は、半導体素子101にX線ビームXが第1の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像と、半導体素子101にX線ビームXが第2の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像とを合成することにより、半導体素子101に重なっている冷却フィン102によるノイズ画像を除去する。
【0035】
図2は、発明に係る透視検査装置の原理を示す側面図である。
【0036】
すなわち、図2に示すように、半導体素子101が第1の位置(図2中の左側)にあるときには、半導体素子101にX線ビームXが第1の角度θ1で入射したときの透過放射線量に基づく画像が得られる。そして、移動操作機構3により、半導体素子101が第2の位置(図2中の右側)に移動されると、半導体素子101にX線ビームXが第2の角度θ2で入射したときの透過放射線量に基づく画像が得られる。
【0037】
図3は、発明に係る透視検査装置の原理の他の例を示す側面図である。
【0038】
または、図3に示すように、X線管1が第1の位置(図3中の左側)にあるときには、半導体素子101にX線ビームXが第1の角度θ1で入射したときの透過放射線量に基づく画像が得られる。そして、移動操作機構11により、X線管1が第2の位置(図3中の右側)に移動されると、半導体素子101にX線ビームXが第2の角度θ2で入射したときの透過放射線量に基づく画像が得られる。
【0039】
いずれの場合においても、移動操作機構3、または、移動操作機構11は、半導体素子101とX線管1との相対位置を、冷却フィン102の方向に垂直な方向に移動させる。すなわち、移動操作機構3は、冷却フィン102の方向が検査画面の上下方向となっている場合には、半導体素子101を横方向に移動させる。また、移動操作機構3は、冷却フィン102の方向が検査画面の横方向になっている場合には、半導体素子101を上下方向に移動させる。
図4は、本発明に係る透視検査装置において得られる画像を示す平面図である。
【0040】
これら画像においては、図4に示すように、半導体素子101の透過画像とともに、冷却フィン102によるノイズ画像が重なって表示される。しかし、これら各画像においては、半導体素子101に対するX線ビームXの入射角度が異なっているために、半導体素子101の透過画像と冷却フィン102によるノイズ画像との相対位置が異なっている。
【0041】
図5は、本発明に係る透視検査装置において修正した画像を示す平面図である。
【0042】
そこで、図5に示すように、半導体素子101にX線ビームXが第1の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像と、半導体素子101にX線ビームXが第2の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像とを、半導体素子101の透過画像を基準として合成することにより、冷却フィン102によるノイズ画像は、相殺されて除去される。
【0043】
このように冷却フィン102によるノイズ画像が除去された状態において、半導体素子101の冷却フィン102に対する半田付けの状態、すなわち、半導体素子101と冷却フィン102との間に生じている気泡の有無、気泡率の測定ができる。気泡率は、半田付けの全面積に対する気泡部分の面積の比率であり、例えば、3%以上であれば、半田付け不良と判定することができる。
【0044】
〔第2の実施の形態〕
図6は、本発明に係る透視検査装置における披件体の他の例を示す側面図である。
【0045】
この透視検査装置においては、図6に示すように、半導体素子(被検体)101に重なっている異物は、半導体素子101が実装された基板(両面基板)105の裏面に取付けられた電子部品(チップ)106であってもよい。
【0046】
この場合にも、半導体素子101にX線ビームXが第1の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像と、半導体素子101にX線ビームXが第2の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像とを、半導体素子101の透過画像を基準として合成することにより、前述した第1の実施の形態における冷却フィン102の画像と同様に、裏面に取付けられた電子部品106の画像を除去することができ、半導体素子101の基板105に対する半田付けの状態、すなわち、半導体素子101と基板105との間に生じている気泡の有無、気泡率の測定ができる。
【0047】
図7は、本発明に係る透視検査装置により両面基板を観察している状態を示す側面図である。
【0048】
図8は、本発明に係る透視検査装置において得られる画像(ノイズ除去前)を示す平面図である。
【0049】
図7に示すように、両面に半導体素子101及び他の電子部品106が実装された両面基板105を透視検査装置によって観察すると、図8に示すように、半導体素子101及び他の電子部品106が重なった状態で撮影される。被検体は半導体素子101なので、他の電子部品106の像はノイズ画像となる。このように撮影された画像においては、半導体素子101を両面基板105上の導体パターンに接続している電極ボール間のショート(短絡)と、他の電子部品106とを区別することができない。
【0050】
図9は、本発明に係る透視検査装置において得られる画像(ノイズ除去後)を示す平面図である。
【0051】
本発明に係る透視検査装置において、他の電子部品106の像(ノイズ画像)を除去することにより、図9に示すように、電極ボール間のショート(短絡)101aの有無を正しく判断することができる。
【0052】
図10は、本発明に係る透視検査装置の原理(1)を示す側面図である。
【0053】
図11は、本発明に係る透視検査装置の原理(2)を示す側面図である。
【0054】
他の電子部品106の像(ノイズ画像)を除去するには、まず、図10に示すように、両面基板105を第1の位置(図10中の右側)として、半導体素子101にX線ビームXが第1の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像を得る。次に、図11に示すように、移動操作機構3により、両面基板105を第2の位置(図11中の左側)に移動させ、半導体素子101にX線ビームXが第2の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像を得る。このとき、X線検出器4は、両面基板105の移動に応じて、両面基板105の像が撮影できる位置に移動させる。
【0055】
図12は、図10に示した状態の透視検査装置において得られる第1の画像を示す平面図である。
【0056】
両面基板105が第1の位置にあるときには、図12に示すように、半導体素子101の像及び他の電子部品106の像が重なった状態で撮影される。
【0057】
図13は、図11に示した状態の透視検査装置において得られる第2の画像を示す平面図である。
【0058】
両面基板105が第2の位置にあるときには、図13に示すように、半導体素子101の像及び他の電子部品106の像が重なった状態で撮影される。このとき、他の電子部品106の像の半導体素子101の像に対する相対位置は、両面基板105が第1の位置にあるときに撮影された像とは異なるものとなっている。
【0059】
図14は、図12に示した第1の画像と図13に示した第2の画像とを合成した画像を示す平面図である。
【0060】
そして、図12に示した第1の画像と図13に示した第2の画像とを合成すると、図14に示すように、他の電子部品106の像は除去され、電極ボール間のショート(短絡)101aの有無を正しく判断することができる。
【0061】
図15は、第1の画像と第2の画像との合成方法を示す平面図である。
【0062】
画像の合成は、図15に示すように、第1の画像と第2の画像とを画素ごとに重ね合わせ、明るいほうの画素を採用することにより、各画像において異なる位置に現れているノイズ画像が除去される。
【0063】
図16は、第1の画像と第2の画像との合成方法における課題を示す平面図である。
【0064】
図15に示したように第1の画像と第2の画像とを合成した場合において、図16に示すように、他の電子部品106の大きさが、両面基板105の移動方向について、画像のずれ以上に大きい場合には、ノイズ画像の一部が除去されないということが起こる。
【0065】
このような場合を想定すると、両面基板105の移動は、一方向のみでなく、他の方向にも移動させることが望ましい。
【0066】
図17は、本発明に係る透視検査装置の原理(3)を示す側面図である。
【0067】
すなわち、図17に示すように、両面基板105を、図10及び図11に示した方向(X方向)とは異なる方向(Y方向)に移動させて、第1の画像及び第2の画像を取得する。
【0068】
図18は、図17に示した第1の画像と第2の画像との合成方法を示す平面図である。
【0069】
この場合には、図18に示すように、第1の画像と第2の画像とを画素ごとに重ね合わせ、明るいほうの画素を採用することにより、各画像において異なる位置に現れているノイズ画像が除去される。
【0070】
図19は、本発明に係る透視検査装置の原理(4)を示す側面図である。
【0071】
両面基板105の移動方向は、図19に示すように、X方向及びY方向とを適宜組み合わせてもよい。このようにして第1の画像及び第2の画像を取得し、画素ごとに重ね合わせ、明るいほうの画素を採用することにより、各画像において異なる位置に現れているノイズ画像が除去される。
【0072】
図20は、本発明に係る透視検査装置の原理(5)を示す側面図である。
【0073】
さらに、両面基板105の移動方向は、図20に示すように、X方向及びY方向に加えて、回転移動を組み合わせてもよい。このようにして第1の画像及び第2の画像を取得し、画素ごとに重ね合わせ、明るいほうの画素を採用することにより、各画像において異なる位置に現れているノイズ画像が除去される。
【0074】
図21は、図20に示した第1の画像と第2の画像との合成方法を示す平面図である。
【0075】
この場合にも、図21に示すように、第1の画像と第2の画像とを画素ごとに重ね合わせ、明るいほうの画素を採用することにより、各画像において異なる位置に現れているノイズ画像が除去される。
【0076】
図22は、本発明に係る透視検査装置の原理(6)を示す側面図である。
【0077】
なお、本発明に係る透視検査装置においては、図22に示すように、X線検出器4を固定し、両面基板105及びX線管1を移動させるようにしてもよい。この場合にも、第1の画像及び第2の画像を取得することができ、これら第1の画像と第2の画像とを画素ごとに重ね合わせ、明るいほうの画素を採用することにより、各画像において異なる位置に現れているノイズ画像が除去される。
【0078】
図23は、本発明に係る透視検査装置の原理(7)を示す側面図である。
【0079】
また、本発明に係る透視検査装置においては、図23に示すように、両面基板105を固定し、X線管1及びX線検出器4を移動させるようにしてもよい。この場合にも、第1の画像及び第2の画像を取得することができ、これら第1の画像と第2の画像とを画素ごとに重ね合わせ、明るいほうの画素を採用することにより、各画像において異なる位置に現れているノイズ画像が除去される。
【実施例】
【0080】
本発明に係る透視検査装置において、第1の位置と第2の位置との間の距離(シフト移動量)を8mmとし、第1の角度θ1と第2の角度θ2との差(シフト角度)を、±12.5deg、±30deg、±45degとして、ノイズ画像の除去を行った。
【0081】
その結果、第1の角度θ1と第2の角度θ2との差が±30deg以上であれば、冷却フィン102の画像も、裏面に取付けられた電子部品106の画像も除去できることが確認された。
【0082】
ノイズ画像の消去演算は、「和画像」加算画像で行い、2画面の最大値(明るい方を選択)する演算を行った。演算時間は、約1.1msecであった。演算に使用したCPUは、クロック周波数2.8GHz、1000x1000(8bit)のものであり、使用言語は、C言語処理コード(和画像+最大値フィルタ処理)である。なお、消去法には、MAXフィルタ(黒消し)、MNIフィルタ(白消し)、平均フィルタがあり、消去対象により選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、被検体である半導体素子等を透過した放射線(X線、γ線、中性子線等)を検出し、半導体素子の実装状態の良否を判定する透視検査装置に適用される。
【符号の説明】
【0084】
1 X線源(放射線源)
4 X線検出器(放射線検出器)
6 画像化回路(信号処理手段)
3,11 移動操作機構(入射角度変更手段)
10 制御装置(制御手段)
101 半導体素子(被検体)
102 冷却フィン(異物)
X X線ビーム(放射線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発生し、被検体に向けて放出する放射線源と、
前記被検体を透過した放射線を検出する放射線検出器と、
前記被検体への前記放射線の入射角度を変化させる入射角度変更手段と、
前記放射線検出器により検出された放射線量の二次元分布を画像化する信号処理手段と、
前記入射角度変更手段及び前記信号処理手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記被検体に前記放射線が第1の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像と、前記被検体に前記放射線が第2の角度で入射したときの透過放射線量に基づく画像とを合成することにより、前記被検体に重なっている異物によるノイズ画像を除去する
ことを特徴とする透視検査装置。
【請求項2】
前記放射線源が発生する放射線は、放射状に放射され、
前記入射角度変更手段は、前記披検体を、前記放射線の放射範囲内において移動させることにより、または、前記放射線源を移動させることにより、被検体への放射線の入射角度を変化させる
ことを特徴とする請求項1記載の透視検査装置。
【請求項3】
前記放射線源が発生する放射線は、放射状に放射され、
前記入射角度変更手段は、前記披検体を、前記放射線の放射範囲内において回転させることにより、被検体への放射線の入射角度を変化させる
ことを特徴とする請求項1記載の透視検査装置。
【請求項4】
前記被検体に重なっている異物は、前記被検体に取付けられた冷却フィンであり、
前記入射角度変更手段は、前記披検体と前記放射線源との相対位置を、前記冷却フィンの方向に垂直な方向に移動させる
ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の透視検査装置。
【請求項5】
前記被検体に重なっている異物は、前記被検体が実装された基板の裏面に取付けられた電子部品である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の透視検査装置。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−196983(P2011−196983A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127301(P2010−127301)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(503335272)株式会社アイビット (5)
【Fターム(参考)】