説明

通信システム、管理装置、制御方法およびプログラム

【課題】バックホールの状態の悪いリンクに多くのトラフィックが流れることを抑止できる通信システムの提供。
【解決手段】通信システムは、通信端末からアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置と、前記アクセス装置を介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置と、前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出する手段と、前記算出したリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる手段と、を備える管理装置と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、管理装置、制御方法およびプログラムに関し、特に、負荷分散機能を備えた通信システム、管理装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通信システムの一例が、非特許文献1に記載されている。図10に示すように、この従来の通信システム1は、バックホール2と、eNodeB用のEquipment Management Server(以下、「EMS(eNodeB)」)110と、E−UTRAN NodeB(以下、「eNodeB」)111〜113と、Mobility Management Entity(以下、「MME」)130と、Serving Gateway(以下、「Serving GW」)140と、Packet Data Network Gateway(以下、「PDN GW」)150とから構成されている。さらに、バックホール2は、ルータ121〜126と、これらルータを管理するEMS(以下、「EMS(BH)」)120とを含んで構成されている。図10において、ルータに付属している小文字の英字はインターフェースを識別するための識別子である。図10において、ノード間の線が実線で書かれている場合、そのノード間は有線でつながっているものとし、破線で書かれている場合、そのノード間は無線でつながっているものとする。
【0003】
EMS(eNodeB)110は、eNodeB111〜113を管理するための装置で、eNodeBの新規設置時などにeNodeBの設定を行う機能や、eNodeBに接続している通信端末の数やeNodeBを通過するトラフィック量を監視する機能などを具備する。
【0004】
eNodeB111〜113は、Long Term Evolution(LTE)という無線アクセス方式を用いて、通信端末に通信システム1へのコネクティビティを提供する無線アクセス装置である。
【0005】
EMS(BH)120は、ルータ121〜126を管理するための装置で、新規設置されたルータの設定やトラフィック量やリンク状態を監視する機能、トラフィックの変化や障害に合わせて経路を変更する機能などを具備する。
【0006】
ルータ121〜126は、受信したIPパケットの宛先IPアドレスに従ってパケットを転送するパケット転送装置である。なお、ルータ121〜ルータ124間、ルータ122〜ルータ125間、ルータ123〜ルータ126間は無線でリンクを構築しているものとする。
【0007】
MME130は、認証やeNodeB間ハンドオーバなど、通信端末がeNodeBを介してモバイルサービスを享受するための制御を行う制御装置である。
【0008】
Serving GW140は、通信端末がデータ通信を行うための通信路であるベアラを提供するアクセスGW装置で、前記ベアラを提供するため、eNodeBおよびPDN GWとパケット転送用のトンネルを構築する。
【0009】
PDN GW150は、通信端末がパケット通信を行うための通信路であるベアラを終端するモバイルアンカー装置で、前記ベアラを提供するため、Serving GWとパケット転送用のトンネルを構築する。
【0010】
図10記載の通信システム1において、ルータ122〜ルータ126間の無線リンクが雨や雪などの天候の影響で、伝送可能なスループットが低下するなどのリンク状態の劣化が起こった後、通信端末61〜63が通信システム1に接続してデータ通信を行うまでの手順を図11に示す。通信端末61〜63は、初期状態として、Idle状態に遷移しているものとする。
【0011】
図11を参照すると、ルータ125はインターフェース(I/F)#aのリンク状態劣化を検知すると(S101)、その旨をEMS(BH)120に通知する(S102)。ここで、EMS(BH)120に通知される情報には、ルータ122〜ルータ125のスループットが推定できる情報が含まれているものとする。このような情報としては、例えば、Binary Phase Shift Keying(BPSK)やQuadrature Phase Shift Keying(QPSK)などの対象リンクに適用している変調方式の種類などが挙げられる。
【0012】
その後、通信端末61〜63はデータ通信を行うため、それぞれeNodeBからブロードキャストされるシステム情報を受信し(S103)、各eNodeBからのメッセージの受信強度や受信したシステム情報に基づいて、どのeNodeBに接続するかを選択する(S104)。ここでは、通信端末61〜63はすべてeNodeB112を選択したものとする。
【0013】
通信端末61〜63はeNodeB選択が終わると、Service Request手順を行って、通信端末〜Serving GW140間のベアラを再構築する(S105)。Service Request手順の詳細は非特許文献1に記載されているので割愛する。ここで形成されたベアラはルータ122〜ルータ125〜ルータ126を経由している。
【0014】
ベアラが再構築されると、通信端末61〜63は各自データ通信を開始する(S106)。しかしながら、ルータ122〜ルータ125間のリンクは劣化しているため、通信端末61〜63がやり取りするデータパケットのすべてを転送することができずに、その一部が破棄される。
【0015】
また、特許文献1には、第1の基地局装置と、該第1の基地局装置の周辺に配置された第2の基地局装置と、集線装置(バックホールに相当)と、前記第1および第2の基地局装置と前記集線装置とをそれぞれ接続する第1および第2の中継回線と、を含む無線通信システムであって、前記第2の基地局装置は、前記第2の中継回線の状態を監視する手段と、前記第2の中継回線の状態を示す回線情報を定期的に無線送信する手段と、を含み、前記第1の基地局装置は、前記第1の中継回線の状態を監視する手段と、前記第2の基地局装置から無線送信される回線情報に基づいて、前記第2の中継回線の状態を取得する手段と、前記第1の中継回線の状態と前記第2の中継回線の状態とに基づき、前記第1の中継回線を介して前記集線装置に通じる直通経路および前記第2の基地局装置を介して前記集線装置に通じる迂回経路のいずれか一方を、前記第1の基地局装置と無線通信を行う無線端末装置または前記第1の基地局装置の周辺に配置された他の基地局装置から受信される通信データの送信経路として選択する送信経路選択手段と、を含む、ことを特徴とする無線通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−154150号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】3GPP TS 23.401 V10.3.0“General Packet Radio Service (GPRS) enhancements for Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E−UTRAN) access”、[平成23年4月14日検索]、インターネット〈http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html−info/23401.htm〉
【非特許文献2】“OpenFlow Switch Specification” Version 1.0.0. (Wire Protocol 0x01) [平成23年4月14日検索]、インターネット〈URL:http://www.openflowswitch.org/documents/openflow−spec−v1.0.0.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以下の分析は、本発明によって与えられたものである。上記した背景技術の第1の問題点は、通信端末がやり取りするデータパケットがバックホールで破棄されるということである。その理由は、状態の悪いバックホールのリンクに多くのトラフィックが流れてしまうことを抑止できないためである。
【0019】
また、特許文献1の技術も、ある基地局から集線装置間の中継回線(バックホール)のうち、状態の良い方を選択するものであり、当該基地局に通信端末からのアクセスが集中してしまう事態を回避するものとはなっていない。
【0020】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、バックホールの状態の悪いリンクに多くのトラフィックが流れることを抑止できる通信システム、管理装置、制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の視点によれば、通信端末からアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置と、前記アクセス装置を介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置と、前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出する手段と、前記算出したリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる手段と、を備える管理装置と、を含む通信システムが提供される。上記構成により、バックホールにおけるボトルネックとなるリンク(リンクコストの高いリンク)を使用するアクセス装置へ、通信端末がなるべくアクセスしないように制御が行われる。
【0022】
本発明の第2の視点によれば、通信端末からアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置と、前記アクセス装置を介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置と、を含む通信システムに配置され、前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出する手段と、前記算出したリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる手段と、を備える管理装置が提供される。
【0023】
本発明の第3の視点によれば、通信端末からのアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置と、前記アクセス装置を介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置と、を含む通信システムにおける前記アクセス装置の制御方法であって、前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出するステップと、前記算出したリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させるステップと、を含むアクセス装置の制御方法が提供される。本方法は、通信システム内のアクセス装置とパケット転送装置を制御する管理装置という、特定の機械に結びつけられている。
【0024】
本発明の第4の視点によれば、通信端末からのアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置と、前記アクセス装置を介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置と、を含む通信システムにおける前記各装置を管理するコンピュータに、前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出する処理と、前記算出したリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる処理と、を実行させるプログラムが提供される。なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。即ち、本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、バックホールの状態の悪いリンクに多くのトラフィックが流れることを抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の概要を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のアクセス装置管理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のパケット転送装置管理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図9】本発明の第4の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図10】背景技術欄記載の通信システムの構成を示すブロック図である。
【図11】背景技術欄記載の通信システム動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
はじめに、本発明の概要について、図面を参照して説明する。以下、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。本発明は、図1に示すように、通信端末61からのアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置11aと、前記アクセス装置11aを介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置21aと、アクセス装置制御手段10aおよびリンクコスト算出手段20aを備えた管理装置80と、を含む構成にて実現できる。
【0028】
具体的には、リンクコスト算出手段20aは、アクセス装置11aについて、前記パケット転送装置21aとのリンクコストを算出する。
【0029】
アクセス装置制御手段10aは、前記リンクコスト算出手段20aによって算出されたリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、通信端末61にアクセス装置に接続するか否かを決定させる。
【0030】
例えば、あるアクセス装置11aのリンクコストが高い状態にある場合、アクセス装置制御手段10aは、当該アクセス装置11aに、当該アクセス装置11aへの接続優先順位が低くなるようなアクセスポリシーのブロードキャスト、当該アクセス装置11aの送信電力の変更、他のアクセス装置へのハンドオーバの促進制御等を行わせる。
【0031】
以上のようにすることで、アクセス装置11aが収容する通信端末61の数および流れるトラヒック量を調節することが可能となる。なお、図1の例では、アクセス装置制御手段10aおよびリンクコスト算出手段20aが単一の管理装置80に備えられているが、それぞれ別の装置に具備させることも可能である。
【0032】
[第1の実施形態]
続いて、本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。図2を参照すると、通信端末61〜63にサービスを提供する通信システム1の構成が示されている。
【0033】
通信システム1は、バックホール2と、アクセス装置管理装置10と、アクセス装置11〜13と、アクセスゲートウェイ(C−plane)(以下、「アクセスGW(C−plane)」)30と、アクセスゲートウェイ(U−plane)(以下、「アクセスGW(U−plane)」)40と、モバイルアンカー装置50とから構成されている。
【0034】
さらに、バックホール2は、パケット転送装置管理装置20と、パケット転送装置21〜26とから構成されている。パケット転送装置に付属している小文字の英字はインターフェースを識別するための識別子である。また、図2において、ノード間の線が実線で書かれている場合、そのノード間は有線で接続されているものとし、破線で書かれている場合、そのノード間は無線で接続されているものとする。
【0035】
アクセス装置11〜13は、無線アクセス方式を用いて、通信端末61〜63に通信システム1へのコネクティビティを提供する装置である。また、アクセス装置11〜13は、通信端末61〜63に対し、システム情報の一部としてアクセスポリシーをブロードキャストする手段を具備する。なお、上記したアクセス装置11〜13は、非特許文献1のeNodeBと同等の構成にて実現することも可能である。
【0036】
パケット転送装置21〜26は、パケットを受信すると、パケット転送ルールを格納するパケット転送ルールテーブルから、受信したパケットに適合するマッチングキーを持つパケット転送ルールを探し出し、そのパケット転送ルールに紐づいているアクション通りの処理(例えば、特定のポートへの転送、フラッディング、廃棄など)を実施する。なお、上記したパケット転送装置21〜26は、非特許文献2のオープンフロースイッチと同等の構成にて実現することも可能である。
【0037】
アクセスGW(C−plane)30は、認証やアクセス装置間ハンドオーバなど、通信端末61〜63がアクセス装置11〜13を介してモバイルサービスを享受するための制御を行う制御装置である。なお、上記したアクセスGW(C−plane)30は、非特許文献1のMMEと同等の構成にて実現することも可能である。
【0038】
アクセスGW(U−plane)40は、通信端末がデータ通信を行うための通信路であるベアラを提供する装置であり、前記ベアラを提供するため、アクセス装置11〜13およびモバイルアンカー装置50とパケット転送用のトンネルを構築する。なお、上記したアクセスGW(U−plane)40は、非特許文献1のServing GWと同等の構成にて実現することも可能である。
【0039】
モバイルアンカー装置50は、通信端末がパケット通信を行うための通信路であるベアラを終端するモバイルアンカーであり、前記ベアラを提供するため、アクセスGW(U−plane)40とパケット転送用のトンネルを構築する。なお、上記したモバイルアンカー装置50は、非特許文献1のPDN GWと同等の構成にて実現することも可能である。
【0040】
アクセス装置管理装置10は、アクセス装置11〜13を管理するための装置であり、上記したアクセス装置制御手段10aに相当する機能を有する。
【0041】
図3は、アクセス装置管理装置10の詳細構成を表した図である。図3を参照すると、アクセス装置管理装置10は、アクセス装置設定部10Aと、アクセス装置監視部10Bと、アクセスポリシー管理部10Cと、アクセス装置管理データベース(以下、データベースを「DB」と記す。)10Dと、監視情報DB10Eと、アクセスポリシーDB10Fと、アクセス装置11〜13との通信を行うノード通信部10Gとで構成される。
【0042】
アクセス装置設定部10Aは、アクセス装置の新規設置時やアクセス装置のアクセスポリシー変更時などにアクセス装置の設定を行う処理ブロックである。また、アクセス装置設定部10Aは、アクセス装置管理DB10Dに、アクセス装置に設定した内容を登録する。
【0043】
アクセス装置監視部10Bは、アクセス装置11〜13に接続している通信端末の数やアクセス装置11〜13を通過するトラヒック量などを監視する処理ブロックである。また、アクセス装置監視部10Bは、監視情報DB10Eに、前記取得したアクセス装置11〜13の監視情報を登録する。
【0044】
アクセスポリシー管理部10Cは、アクセス装置の追加/削除や周囲環境の変化、アクセス装置11〜13のパケット転送装置とのリンクコストの変化に応じて、アクセスポリシーDB10Fに記憶されているプロファイル群の中から、適したアクセスポリシーを選択する処理ブロックである。本実施形態において、「アクセスポリシー」とは、Idle状態またはデタッチ状態にある通信端末のアクセス装置への選択ポリシーである。アクセス機能の選択ポリシーとしては、例えば、アクセス装置11〜13がサポートする周波数毎の優先度や、アクセス装置11〜13がサポートする通信方式毎の優先度などが挙げられるが、アクセス装置11〜13の選択ポリシーの種類はこの例に挙げたものに限定されるものではない。また、また、「リンクコスト」としては、各アクセス装置11〜13に割り当てられた通信帯域等が挙げられる。以下の説明では、「リンクコスト」として各アクセス装置11〜13に割り当てられた通信帯域を用いるものとする。
【0045】
アクセス装置管理DB10Dは、アクセス装置の設定情報や位置情報を管理するDBである。
【0046】
監視情報DB10Eは、アクセス装置11〜13から取得した監視情報を管理するDBである。
【0047】
アクセスポリシーDB10Fは、アクセスポリシーに関する情報を管理するDBで、アクセスポリシーのプロファイル群を記憶している。
【0048】
上記のようなアクセス装置管理装置10は、eNodeBのようなアクセス装置向けのEquipment Management Server(EMS)やSelf Organizing Network(SON)サーバをベースに、アクセスポリシー管理部10Cと、アクセスポリシーDB10Fとを追加した構成にて実現することも可能である。
【0049】
パケット転送装置管理装置20は、パケット転送装置21〜26を管理するための装置であり、本実施形態では、上記したリンクコスト算出手段20aとしても機能する。
【0050】
図4は、パケット転送装置管理装置20の詳細構成を表した図である。図4を参照すると、パケット転送装置管理装置20は、パケット転送装置21〜26との通信を行うノード通信部20Aと、制御メッセージ処理部20Bと、経路・アクション・コスト計算部20C、パケット転送装置管理部20Dと、トポロジ管理部20Eと、通信ノード位置管理部20Fと、パケット転送ルール管理部20Gと、パケット転送装置監視部20Hと、を備えて構成される。これらはそれぞれ次のように動作する。
【0051】
制御メッセージ処理部20Bは、パケット転送装置21〜26から受信した制御メッセージを解析して、パケット転送装置管理装置20内の該当する処理手段に制御メッセージ情報を引き渡す。
【0052】
経路・アクション・コスト計算部20Cは、通信ノード位置管理部20Fにて管理されている通信ノードの位置情報とトポロジ管理部20Eにて管理されているトポロジ情報とに基づいてパケットの転送経路を計算する手段と、パケット転送装置21〜26に実行させるアクションを求める手段として機能する。さらに、経路・アクション・コスト計算部20Cは、パケット転送装置監視部20Hからパケット転送装置が具備するインターフェース毎のリンク帯域の変化を通知されると、トポロジ管理部20Eと連携して、アクセス機能毎のパケット転送装置とのリンクコストを再計算し、計算結果をアクセス装置管理装置10に通知する。なお、本実施形態では、アクセス装置管理装置10に上記計算結果を通知する際のアクセス装置を特定するための識別子として、アクセス装置のMACアドレスを使用するが、IPアドレスや製造番号など、特にそのフォーマットには制限はない。
【0053】
パケット転送装置管理部20Dは、パケット転送装置管理装置20によって制御されているパケット転送装置21〜26の能力(例えば、ポートの数や種類、サポートするアクションの種類など)を管理する。
【0054】
トポロジ管理部20Eは、ノード通信部20Aを介して収集されたパケット転送装置21〜26の接続関係に基づいてネットワークトポロジ情報を構築する。また、トポロジ管理部20Eは、トポロジ情報に変化が見られたら、経路・アクション・コスト計算部20Cにその旨を通知する。
【0055】
通信ノード位置管理部20Fは、通信システムに接続している通信ノードの位置を特定するための情報を管理する。本実施形態では、通信ノードを識別する情報としてMACアドレスを、通信ノードの位置を特定するための情報として、通信ノードが接続しているパケット転送装置を識別する情報とそのポートの情報を使用することを想定しているが、他の情報を用いても良い。なお、本実施形態における「通信ノード」には、アクセス装置管理装置10と、アクセス装置11〜13と、アクセスGW機能(C−plane)30と、アクセスGW機能(U−plane)40とが該当する。
【0056】
パケット転送ルール管理部20Gは、どのパケット転送装置にどのようなパケット転送ルールが設定されているかを管理する。具体的には、経路・アクション・コスト計算部20Cにて計算された結果をパケット転送ルールとして記憶するとともに、パケット転送装置21〜26からのパケット転送ルール削除通知などにより、パケット転送装置にて設定されたパケット転送ルールに変更が生じた場合にも対応してパケット転送ルールの記憶情報を更新する。
【0057】
パケット転送装置監視部20Hは、パケット転送装置が具備するインターフェース毎のリンク帯域や通過するトラヒック量などを監視する。また、パケット転送装置監視部20Hは、パケット転送装置が具備するインターフェース毎のリンク帯域が変化すると、経路・アクション・コスト計算部20Cにその旨を通知する。
【0058】
上記のようなパケット転送装置管理装置20は、非特許文献2のオープンフローコントローラをベースに、経路・アクション・コスト計算部20Cのアクセス装置毎のトランスポート装置とのリンクコストを再計算し、その計算結果をアクセス装置管理装置10に通知する機能と、パケット転送装置監視部20Hとを追加するようにした構成にて実現することも可能である。
【0059】
また、図3、図4に示したアクセス装置管理装置10およびパケット転送装置管理装置20の各処理ブロックは、これらの装置を構成するコンピュータに、そのハードウェアを用いて、上記した各処理を実行させるコンピュータプログラムにより実現することもできる。
【0060】
続いて、本実施形態の全体の動作について図面を参照して詳細に説明する。図5は、本発明の第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。具体的には、図5は、雨や雪などの天候の影響で、図2のパケット転送装置22とパケット転送装置25間のリンク状態が劣化したことをトリガにして、アクセス装置が保持するアクセスポリシーの更新が行われるまでのシーケンスを示している。
【0061】
以下の説明において、通信端末61〜63は、初期状態として、Idle状態に遷移しているものとする。そして、通信端末61〜63がアクセス装置11〜13から受信するシステム情報のうち、アクセス装置12から送信されるシステム情報の受信強度が一番高いものとする。また、初期状態として、各アクセス装置のパケット転送装置とのリンクコストとして、すべてアクセス装置に100Mbpsが割り当てられているものとする。さらに、初期状態として、各アクセス装置11〜13がブロードキャストしているアクセスポリシーは、全アクセス装置に対して同じ優先度でアクセスさせるポリシー(つまり、通信端末は単純に受信強度が強いアクセス装置を選択する。)であるものとする。
【0062】
図5を参照すると、パケット転送装置25はインターフェース(I/F)#aのリンク状態劣化を検知すると(図5のS201)、パケット転送装置管理装置20にその旨を通知する(図5のS202)。ここで、パケット転送装置管理装置20に通知される情報には、パケット転送装置22〜パケット転送装置25間のスループットを推定できる情報が含まれているものとする。例えば、このような情報としては、Binary Phase Shift Keying(BPSK)やQuadrature Phase Shift Keying(QPSK)などの対象リンクに適用している変調方式の種類などが挙げられる。
【0063】
ここで、パケット転送装置はイベントが発生した際に、パケット転送装置管理装置20に管理情報を通知しているが、図5のS203に示すように、それ以外にも、パケット転送装置が定期的にパケット転送装置管理装置20に管理情報を通知しても良いし、パケット転送装置管理装置20が必要に応じて、パケット転送装置に管理情報の送信を要求しても良い。
【0064】
パケット転送装置管理装置20は、パケット転送装置25が具備するインターフェース毎のリンク帯域の変化を検知すると、アクセス装置毎のパケット転送装置とのリンクコストを再計算し(図5のS204)、アクセス装置管理装置10に計算結果を通知する(図5のS205)。このとき、アクセス装置毎に割り当てられたリンクコストは、アクセス装置11およびアクセス装置13が100Mbpsで、アクセス装置12が50Mbpsと計算されたものとする。
【0065】
アクセス装置管理装置10は、アクセス装置毎のパケット転送装置とのリンクコストを受信すると、アクセスポリシーDB10Fから、前記リンクコストに見合ったアクセスポリシーを選択する(図5のS206;アクセスポリシー作成)。例えば、上記したリンクコストに応じて、例えば、アクセス装置11および13へのアクセス優先度を1だけ高く、アクセス装置12へのアクセス優先度を1だけ低くしたアクセスポリシーが選択される。
【0066】
アクセス装置管理装置10は、新たなアクセスポリシーを選択すると、それをアクセス装置11〜13に通知する(図5のS207)。
【0067】
アクセス装置11〜13は、所定のタイミングで、受信した新たなアクセスポリシーを含んだシステム情報をブロードキャストする(図5のS208)。
【0068】
その後、通信端末61〜63は、データ通信を行う際に、各アクセス装置11〜13からブロードキャストされるシステム情報の受信強度やシステム情報に含まれるアクセスポリシーに基づいて、どのアクセス装置に接続するかを選択する(図5のS209)。
【0069】
例えば、前述の例では、すべての通信端末61〜63において、アクセス装置12から送信されるシステム情報の受信強度が一番高い。しかしながら、前述のとおりアクセスポリシーが更新されているため、周囲のアクセス装置から受信するシステム情報との受信強度の差や、システム情報に含まれるアクセスポリシーの優先度の差によって、通信端末61〜63において、アクセス装置12以外のアクセス装置11、13を含めたアクセス装置の選択が行われる。図5の例では、通信端末61はアクセス装置11を、通信端末62はアクセス装置12を、通信端末63はアクセス装置13を選択している。
【0070】
通信端末61〜63はアクセス選択が終わると、ベアラ再構築手順を行って(図5のS210)、通信端末〜Serving GW140間のベアラを再構築する。ベアラ再構築の手順としては、背景技術に記載した手順等を用いることができる。
【0071】
ベアラが再構築されると、通信端末61〜63は各自データ通信を開始する(図5のS211)。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、バックホール2のリンク状態の変化と連携して、通信端末のアクセス装置へのアクセスポリシーの変更を行うように構成しているため、バックホールにおけるボトルネックとなるリンクを使用するアクセス装置へ、通信端末がなるべくアクセスしないように制御し、通信システム全体の利用効率を向上させることができる。
【0073】
なお、上記した実施形態では、システム情報の一部としてアクセスポリシーをブロードキャストしたが、通信端末61〜63に対し個別にアクセスポリシーを通知してもよい。例えば、通信端末61〜63がベアラを解放する際に(LTEで言えば、RRCConnectionReleaseメッセージを介して、)通知しても良い。
【0074】
[第2の実施形態]
続いて、アクセス装置管理装置によるアクセス装置の制御方法に変更を加えた本発明の第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の第2の実施形態のシステムは、図2に示した第1の実施形態と同様の構成で実現可能であるので、以下、その相違点を中心に説明する。
【0075】
上記した第1の実施形態では、アクセス装置11〜13に、アクセス装置の選択ポリシーにより、通信端末61〜63によるアクセス装置への接続を制御していたが、本実施形態では、アクセス装置に送信電力量を指示することにより、通信端末61〜63によるアクセス装置への接続を制御している。本実施形態において、「アクセスポリシー」とは、アクセス装置の送信電力量の変更によって実現されるアクセス装置の選択ポリシーである。
【0076】
図6は、本実施形態の動作を表したシーケンス図であり、図5と同じく、雨や雪などの天候の影響で、図2のパケット転送装置22とパケット転送装置25間のリンク状態が劣化したことをトリガにして、アクセス装置が保持するアクセスポリシーの更新が行われるまでのシーケンスを示している。
【0077】
以下の説明においても、通信端末61〜63は、初期状態として、Idle状態に遷移しているものとする。また、アクセス装置11〜13のシステム情報の送信電力は同じであるが、通信端末61〜63におけるシステム情報の受信強度は、アクセス装置12からの受信強度が一番高いものとする。
【0078】
図6を参照すると、パケット転送装置25はインターフェース(I/F)#aのリンク状態劣化を検知すると(図6のS301)、パケット転送装置管理装置20にその旨を通知する(図6のS302)。
【0079】
本実施形態においても、図6のS303に示すように、パケット転送装置25を含むパケット転送装置が定期的にパケット転送装置管理装置20に管理情報を通知しても良いし、パケット転送装置管理装置20が必要に応じて、パケット転送装置に管理情報の送信を要求しても良い。
【0080】
パケット転送装置管理装置20は、パケット転送装置25が具備するインターフェース毎のリンク帯域の変化を検知すると、アクセス装置11〜13毎のパケット転送装置とのリンクコストを再計算し(図6のS304)、アクセス装置管理装置10に計算結果を通知する(図6のS305)。このとき、アクセス装置毎に割り当てられたリンクコストは、アクセス装置11およびアクセス装置13が100Mbpsで、アクセス装置12が50Mbpsと計算されたものとする。
【0081】
アクセス装置管理装置10は、アクセス装置毎のパケット転送装置とのリンクコストを受信すると、アクセスポリシーDB10Fから、前記リンクコストに見合ったアクセスポリシーを選択する(図6のS306;アクセスポリシー作成)。例えば、上記したリンクコストに応じて、例えば、アクセス装置11およびアクセス装置13の送信電力を3dB高く、アクセス装置12の送信電力を3dBだけ低くしたアクセスポリシーが選択される。
【0082】
アクセス装置管理装置10は、新たなアクセスポリシーを選択すると、それをアクセス装置11〜13に通知する(図6のS307)。
【0083】
アクセス装置11〜13は、受信した新たなアクセスポリシーに従い、送信電力を変更する(図6のS308)。この結果、初期状態とは異なり、通信端末61〜63におけるシステム情報の受信強度に変化が生じる。
【0084】
アクセス装置11〜13は、所定のタイミングで、システム情報をブロードキャストする(図6のS309)。
【0085】
その後、通信端末61〜63は、データ通信を行う際に、各アクセス装置11〜13からブロードキャストされるシステム情報の受信強度やシステム情報に含まれるアクセスポリシーに基づいて、どのアクセス装置に接続するかを選択する(図6のS310)。
【0086】
前述のように、初期状態では、すべての通信端末61〜63において、アクセス装置12から送信されるシステム情報の受信強度が一番高い。しかしながら、前述のとおりシステム情報の送信強度が変更されているため、周囲のアクセス装置から受信するシステム情報との受信強度の差や、システム情報に含まれるアクセスポリシーによって、通信端末61〜63において、アクセス装置12以外のアクセス装置11、13を含めたアクセス装置の選択が行われる。図6の例では、システム情報の受信強度が変更されたことに従い、通信端末61はアクセス装置11を、通信端末62はアクセス装置12を、通信端末63はアクセス装置13を選択している。
【0087】
通信端末61〜63はアクセス選択が終わると、ベアラ再構築手順を行って(図6のS311)、通信端末〜Serving GW140間のベアラを再構築する。
【0088】
ベアラが再構築されると、通信端末61〜63は各自データ通信を開始する(図6のS312)。
【0089】
以上のように、本実施形態によっても、バックホールにおけるボトルネックとなるリンクを使用するアクセス装置へ、通信端末がなるべくアクセスしないように制御し、通信システム全体の利用効率を向上させることができる。
【0090】
また、通信システム1が、通信端末がベアラを解放する際に、アクセス装置の選択ポリシーを通知する方式を取っていた場合、ブロードキャストされるアクセス装置の選択ポリシーよりも、ベアラ解放時に通知されるアクセス装置の選択ポリシーの方が優先される。このため、第1の実施形態では、アクセスポリシーの変更が反映されるタイミングは、次々回のアクセス装置選択時となる。これに対し、第2の実施形態では、送信電力の変更が行われるため、アクセスポリシー変更が反映されるタイミングを、次回のアクセス装置選択時に、早めることができる。
【0091】
[第3の実施形態]
続いて、アクセス装置管理装置によるアクセス装置の制御方法に変更を加えた本発明の第3の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図7は、本発明の第3の実施形態の構成を示すブロック図である。図2に示した第1の実施形態の構成との相違点は、通信端末の初期状態が異なる点であり、その他構成は同一である。第1の実施形態では、通信端末61〜63は、初期状態として、Idle状態であるものとして説明したが、本実施形態では、通信端末61〜63は、初期状態として、アクセス装置12に接続してデータ通信を行っているものとする。
【0092】
また、上記した第1の実施形態では、アクセス装置11〜13に、アクセス装置の選択ポリシーにより、通信端末61〜63によるアクセス装置への接続を制御していたが、本実施形態では、アクセスポリシーとして、ハンドオーバ制御ポリシーを用い、通信端末61〜63によるアクセス装置への接続を制御している。本実施形態では、ハンドオーバ制御ポリシーとして、隣接セルとの受信強度の差を比較する際に使用するオフセット値を想定しているが、これに限らない。
【0093】
図8は、本実施形態の動作を表したシーケンス図であり、図5と同じく、雨や雪などの天候の影響で、図7のパケット転送装置22とパケット転送装置25間のリンク状態が劣化したことをトリガにして、アクセス装置が保持するアクセスポリシーの更新が行われるまでのシーケンスを示している。
【0094】
以下の説明においても、アクセス装置11〜13のシステム情報の送信電力は同じであるものとする。また、また、隣接セルとの受信強度の差を比較する際に使用するオフセット値は、共通に5dBを使用しているものとする。
【0095】
図8を参照すると、通信端末61〜63は、初期状態として、アクセス装置12に接続してデータ通信を行っているものとする(図8のS401)。通信端末61はオフセット値を加味した隣接セルとの受信強度の差では、アクセス装置11へハンドオーバするには1dB足りないものとする。通信端末62はオフセット値を加味した隣接セルとの受信強度の差では、他のアクセス装置からの受信強度に比べ、アクセス装置12からの受信強度がオフセット値よりも十分大きいものとする。通信端末63はオフセット値を加味した隣接セルとの受信強度の差では、アクセス装置13へハンドオーバするには1dB足りないものとする。
【0096】
次に、パケット転送装置25はインターフェース(I/F)#aのリンク状態劣化を検知すると(図8のS402)、パケット転送装置管理装置20にその旨を通知する(図8のS403)。
【0097】
本実施形態においても、図8のS404に示すように、パケット転送装置25を含むパケット転送装置が定期的にパケット転送装置管理装置20に管理情報を通知しても良いし、パケット転送装置管理装置20が必要に応じて、パケット転送装置に管理情報の送信を要求しても良い。
【0098】
パケット転送装置管理装置20は、パケット転送装置25が具備するインターフェース毎のリンク帯域の変化を検知すると、アクセス装置11〜13毎のパケット転送装置とのリンクコストを再計算し(図8のS405)、アクセス装置管理装置10に計算結果を通知する(図8のS406)。このとき、アクセス装置毎に割り当てられたリンクコストは、アクセス装置11およびアクセス装置13が100Mbpsで、アクセス装置12が50Mbpsと計算されたものとする。
【0099】
アクセス装置管理装置10は、アクセス装置毎のパケット転送装置とのリンクコストを受信すると、アクセスポリシーDB10Fから、前記リンクコストに見合ったアクセスポリシーを選択する(図8のS407;アクセスポリシー作成)。例えば、上記したリンクコストに応じて、例えば、アクセス装置11およびアクセス装置13には従前と同じハンドオーバ制御ポリシーが選択され、アクセス装置12には、隣接セルとの受信強度の差を比較する際に使用するオフセット値を5dBから3dBに変更したハンドオーバ制御ポリシーが選択されたものとする。
【0100】
アクセス装置管理装置10は、新たなアクセスポリシー(ハンドオーバ制御ポリシー)を選択すると、それをアクセス装置11〜13に通知する(図8のS408)。
【0101】
例えば、アクセス装置11〜13のうちの、アクセス装置12は、自身に接続された通信端末に、前記受信した新たなアクセスポリシー(ハンドオーバ制御ポリシー)を通知する(図8のS409)。
【0102】
そして、通信端末61〜63は、近隣のアクセス装置をスキャンする(図8のS410)。この結果、通信端末61はオフセット値を加味した隣接セルとの受信強度の差からアクセス装置11へハンドオーバが必要な差が、通信端末63はオフセット値を加味した隣接セルとの受信強度の差からアクセス装置13へハンドオーバが必要な差が生じたものとする。
【0103】
この場合、通信端末61および通信端末63は、自身のスキャン結果をアクセス装置12に通知する(図8のS411)。
【0104】
アクセス装置12は通信端末61および通信端末63の受信電力のスキャン結果から、通信端末61のアクセス装置11へのハンドオーバと通信端末63のアクセス装置13へのハンドオーバの実行を決断し、実行する。
【0105】
以上のように、本発明は、通信中の通信端末のアクセス装置へのアクセス制御にも適用することが可能である。
【0106】
なお、上記した実施形態では、アクセス装置12が通信端末にアクセスポリシー(ハンドオーバ制御ポリシー)を通知し、通信端末61〜63からハンドオーバのトリガをかけさせたが、アクセス装置11〜13がそれぞれ自身に接続するすべての通信端末にスキャン結果を送付させ、その結果と新しいアクセスポリシー(ハンドオーバ制御ポリシー)をもって、アクセス装置11〜13がハンドオーバ実行の是非を判断しても良い。
【0107】
また、上記した実施形態では、ハンドオーバ制御ポリシーとして、隣接セルとの受信強度の差を比較する際に使用するオフセット値を用いるものとして説明したが、このオフセット値の設定粒度は特に制限しない。そのため、このオフセット値をアクセス装置のサポートする周波数毎に決めても良いし、アクセス装置毎に決めても良い。また、接続中のアクセス装置と隣接するアクセス装置で異なるオフセット値を使用しても良い。
【0108】
また、上記した実施形態では、ハンドオーバ制御ポリシーとして、隣接セルとの受信強度の差を比較する際に使用するオフセット値を用いるものとして説明したが、ハンドオーバ制御ポリシーの種類はこれに限らない。その他の手法としては、例えば、通信端末のハンドオーバ先となるアクセス装置の決定ポリシーが存在する。この場合、アクセス装置は、通信端末から通知されるスキャン結果に載っている複数のアクセス装置から、なるべくリンクコストの低いアクセス装置をハンドオーバ先となるように制御する。
【0109】
[第4の実施形態]
続いて、パケット転送装置のインターフェースに複数のアクセス装置が接続されており、リンクコストの計算に変更を加えた本発明の第4の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図9は、本発明の第4の実施形態の構成を示すブロック図である。図2に示した第1の実施形態の構成との相違点は、パケット転送装置23の配下にハブ装置70を介して複数のアクセス装置が接続されている点である。
【0110】
具体的には、パケット転送装置23の具備するインターフェースあたりにつながるアクセス装置の数が増大している。第1の実施形態では、パケット転送装置21〜26の具備するインターフェースあたりにつながるアクセス装置の数は常に1つだったのに対し、本実施形態では、複数台のアクセス装置が接続されている。
【0111】
そのため、本実施形態では、パケット転送装置管理装置20の具備する経路・アクション・コスト計算部20Cは、パケット転送装置の具備するインターフェースあたりにつながるアクセス装置の数を考慮して、アクセス装置毎のパケット転送装置とのリンクコストの計算を行う。
【0112】
例えば、パケット転送装置管理装置20が、パケット転送装置22〜パケット転送装置25間のリンク状態が劣化したことを検知すると、まずアクセス装置につながっているパケット転送装置の具備するインターフェースあたりのリンクコストを計算する。図9では、アクセス装置11〜14につながっているパケット転送装置の具備するインターフェースには、パケット転送装置21のI/F#aと、パケット転送装置22のI/F#aと、パケット転送装置23のI/F#aとが該当する。次に、パケット転送装置管理装置20は前記リンクコストをパケット転送装置が具備するインターフェースあたりにつながるアクセス装置の数で割ることで、アクセス装置毎のリンクコストを算出する。なお、パケット転送装置の具備するインターフェースあたりにつながるアクセス装置の数は通信ノード位置管理部20Fで管理されている。
【0113】
この結果、上述の例でいえば、アクセス装置11が100Mbpsで、アクセス装置12〜14が50Mbpsなどと計算される。
【0114】
以上のように、本実施形態によれば、パケット転送装置の具備するインターフェースあたりにつながるアクセス装置の数が複数であることを加味して、通信端末のアクセスポリシーを制御することができる。
【0115】
その他、アクセス装置毎のパケット転送装置とのリンクコストの計算に、アクセス装置の性能を加味しても良い。ここで言うアクセス装置の性能とは、スループットやカバーエリアの大きさ、通信端末の収容可能数などが考えられる。例えば、スループットに関して述べると、アクセス装置がサポートする無線方式や帯域幅などでスループットが変化する。また、1台のアクセス装置で複数のアンテナを具備するかもしれない。
【0116】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術的思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、上記した第1〜第4の実施形態で挙げてきたアクセスポリシーの変更方法やアクセス装置毎のパケット転送装置とのリンクコストの計算方法は組み合わせて使用することができる。
【0117】
また、上記した各実施形態では、リンク状態の変化が発生してから、アクセスポリシーを変更したが、リンク状態の変化が予測できる場合には、事前にアクセスポリシーを変更しても良い。リンク状態の変化予測手法は、例えば、パケット転送装置管理装置20が、天候とリンク状態の関係を保持しており、天気予報と連携して予測する等の手法が挙げられる。
【0118】
また、上記した各実施形態では、リンク状態の変化の発生に対して、1回のアクセスポリシーの変更しか行わなかったが、リンクコストに対応したアクセス状態を維持するため、再帰的にアクセスポリシーの変更を行っても良い。
【0119】
また、上記した各実施形態では、リンクコストとして、各アクセス装置に割り当てられた通信帯域を想定していたが、その形式には特に制限はない。その他の形式としては、例えばアクセス装置間のトラヒック比率などが考えられる。
【0120】
また、上記した各実施形態では、既知のアクセス装置の範囲で各アクセス装置への優先度の変更等を行うものとして説明したが、新たなアクセス装置へのアクセスを可能にしたり、特定のアクセス装置へアクセスできないようにしても良い。
【0121】
また、上記した各実施形態では、アクセス装置管理装置10はアクセスポリシーDB10Fに記憶されたプロファイルの中から適するアクセスポリシーを選択していたが、既存のプロファイルの中から選択せずに、動的に計算して導出しても良い。
【0122】
また、上記した各実施形態では、アクセス装置が提供するアクセス方式は無線のアクセス方式と述べたが、LTEやWiMAXなど特定の無線方式に限定されない。
【0123】
最後に、本発明の好ましい形態を要約する。
[第1の形態]
(上記第1の視点による通信システム参照)
[第2の形態]
第1の形態において、
前記管理装置は、
前記パケット転送装置からリンク品質情報を受信する手段を備え、
前記リンク品質情報に基づいて、前記リンクコストを計算する通信システム。
[第3の形態]
第1または第2の形態において、
前記管理装置は、
前記アクセス装置に、前記通信端末に前記アクセス装置に接続するか否かを決定させる選択ポリシーを送信させることにより、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる通信システム。
[第4の形態]
第1から第3いずれか一の形態において、
前記管理装置は、前記アクセス装置に、前記通信端末が複数のアクセス装置から接続するアクセス装置を選択する際に参照する選択ポリシーを送信させることにより、前記通信端末に前記アクセス装置に接続するか否かを決定させる通信システム。
[第5の形態]
第1から第4いずれか一の形態において、
前記管理装置は、前記アクセス装置に送信電力量を指示することにより、前記通信端末に前記アクセス装置に接続するか否かを決定させる通信システム。
[第6の形態]
第1から第5いずれか一の形態において、
前記管理装置は、前記アクセス装置に、通信端末がハンドオーバを行うか否かを決定するハンドオーバ制御ポリシーを送信させる通信システム。
[第7の形態]
第1から第6いずれか一の形態において、
前記管理装置は、前記アクセス装置に、前記アクセス装置が具備する、通信端末のハンドオーバ先のアクセス装置を決定するハンドオーバ制御ポリシーを変更させることにより、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる通信システム。
[第8の形態]
第1から第7いずれか一の形態において、
前記管理装置は、前記パケット転送装置のインターフェースに接続しているアクセス装置の数により、前記リンクコストの補正を行う通信システム。
[第9の形態]
第1から第8いずれか一の形態において、
前記管理装置は、前記アクセス装置の性能により、前記リンクコストの補正を行う通信システム。
[第10の形態]
第1から第9いずれか一の形態において、
前記リンクコストが通信帯域である通信システム。
[第11の形態]
第1から第10いずれか一の形態において、
前記リンクコストがアクセス装置間のトラフィック比率である通信システム。
[第12の形態]
(上記第2の視点による管理装置参照)
[第13の形態]
第12の形態において、
前記パケット転送装置からリンク品質情報を受信する手段を備え、
前記リンク品質情報に基づいて、前記リンクコストを計算する管理装置。
[第14の形態]
第12または第13の形態において、
前記アクセス装置に、前記通信端末に前記アクセス装置に接続するか否かを決定させる選択ポリシーを送信させることにより、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる管理装置。
[第15の形態]
第12から第14いずれか一の形態において、
前記アクセス装置に、前記通信端末が複数のアクセス装置から接続するアクセス装置を選択する際に参照する選択ポリシーを送信させることにより、前記通信端末に前記アクセス装置に接続するか否かを決定させる管理装置。
[第16の形態]
第12から第15いずれか一の形態において、
前記アクセス装置に送信電力量を指示することにより、前記通信端末に前記アクセス装置に接続するか否かを決定させる管理装置。
[第17の形態]
第12から第16いずれか一の形態において、
前記アクセス装置に、通信端末がハンドオーバを行うか否かを決定するハンドオーバ制御ポリシーを送信させる管理装置。
[第18の形態]
第12から第17いずれか一の形態において、
前記アクセス装置に、前記アクセス装置が具備する、通信端末のハンドオーバ先のアクセス装置を決定するハンドオーバ制御ポリシーを変更させることにより、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる管理装置。
[第19の形態]
第12から第18いずれか一の形態において、
前記パケット転送装置のインターフェースに接続しているアクセス装置の数により、前記リンクコストの補正を行う管理装置。
[第20の形態]
第12から第19いずれか一の形態において、
前記アクセス装置の性能により、前記リンクコストの補正を行う管理装置。
[第21の形態]
第12から第20いずれか一の形態の管理装置の、前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出する手段として動作する第2の管理装置。
[第22の形態]
第21の形態において、
前記パケット転送装置からリンク品質情報を受信する手段を備え、
前記リンク品質情報に基づいて、前記リンクコストを計算する第2の管理装置。
[第23の形態]
第21または第22の形態において、
前記パケット転送装置のインターフェースに接続しているアクセス装置の数により、前記リンクコストの補正を行う第2の管理装置。
[第24の形態]
第21から第23いずれか一の形態において、
前記アクセス装置の性能により、前記リンクコストの補正を行う第2の管理装置。
[第25の形態]
(上記第3の視点による制御方法参照)
[第26の形態]
(上記第4の視点によるプログラム参照)
【0124】
上記の特許文献および非特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得る各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0125】
1 通信システム
2 バックホール
10 アクセス装置管理装置
10a アクセス装置制御手段
10A アクセス装置設定部
10B アクセス装置監視部
10C アクセスポリシー管理部
10D アクセス装置管理データベース(DB)
10E 監視情報データベース(DB)
10F アクセスポリシーデータベース(DB)
10G ノード通信部
11〜14、11a アクセス装置
20 パケット転送装置管理装置
20a リンクコスト算出手段
20A ノード通信部
20B 制御メッセージ処理部
20C 経路・アクション・コスト計算部
20D パケット転送装置管理部
20E トポロジ管理部
20F 通信ノード位置管理部
20G パケット転送ルール管理部
20H パケット転送装置監視部
21〜26、21a パケット転送装置
30 アクセスGW(C−plane)
40 アクセスGW(U−plane)
50 モバイルアンカー装置
61〜66 通信端末
70 ハブ
80 管理装置
110 Equipment Management Server (eNodeB)(EMS(eNodeB))
111〜113 E−UTRAN NodeB(eNodeB)
120 Equipment Management Server (Backhaul)(EMS(BH))
121〜126 ルータ
130 Mobility Management Entity(MME)
140 Serving GW
150 Packet Data Network Gateway(PDN GW)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末からアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置と、
前記アクセス装置を介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置と、
前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出する手段と、前記算出したリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる手段と、を備える管理装置と、
を含む通信システム。
【請求項2】
前記管理装置は、
前記アクセス装置に、前記通信端末に前記アクセス装置に接続するか否かを決定させる選択ポリシーを送信させることにより、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる請求項1の通信システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記アクセス装置に、前記通信端末が複数のアクセス装置から接続するアクセス装置を選択する際に参照する選択ポリシーを送信させることにより、前記通信端末に前記アクセス装置に接続するか否かを決定させる請求項1または2の通信システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記アクセス装置に送信電力量を指示することにより、前記通信端末に前記アクセス装置に接続するか否かを決定させる請求項1から3いずれか一の通信システム。
【請求項5】
前記管理装置は、前記アクセス装置に、通信端末がハンドオーバを行うか否かを決定するハンドオーバ制御ポリシーを送信させる請求項1から4いずれか一の通信システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記アクセス装置に、前記アクセス装置が具備する、通信端末のハンドオーバ先のアクセス装置を決定するハンドオーバ制御ポリシーを変更させることにより、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる請求項1から5いずれか一の通信システム。
【請求項7】
通信端末からアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置と、前記アクセス装置を介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置と、を含む通信システムに配置され、
前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出する手段と、前記算出したリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる手段と、を備える管理装置。
【請求項8】
請求項7の管理装置の、前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出する手段として動作する第2の管理装置。
【請求項9】
通信端末からのアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置と、
前記アクセス装置を介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置と、を含む通信システムにおける前記アクセス装置の制御方法であって、
前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出するステップと、
前記算出したリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させるステップと、を含むアクセス装置の制御方法。
【請求項10】
通信端末からのアクセスを受け付ける1つ以上のアクセス装置と、前記アクセス装置を介してパケットを転送する1つ以上のパケット転送装置と、を含む通信システムにおける前記各装置を管理するコンピュータに、
前記アクセス装置について前記パケット転送装置とのリンクコストを算出する処理と、
前記算出したリンクコストに基づいて前記アクセス装置を制御し、前記通信端末の前記アクセス装置への接続ポリシーを変更させる処理と、
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−238996(P2012−238996A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106014(P2011−106014)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】