説明

通信システム、通信方法およびアプリケーションサーバ

【課題】移動公衆電話サービスをIP網にて実現する。
【解決手段】通信システム1は、移動公衆電話機54からの基地局2を経由した発呼を、IP網3を介して接続先ユーザを収容した加入者サーバ6aを宛先として送出するAS7と、加入者電話機11からの信号をIP網3上の信号に変換するIP変換装置9aと、移動公衆電話機54から着信する呼を制御する信号を変換してSIP信号を送出するIP-ICT装置10と、移動公衆電話機54からのアナログ音声信号をIPパケットに変換するIP変換装置9bとを備え、AS7は、移動公衆電話機54からの発呼であることを示す移動公衆用パラメータと、当該発呼を経由した基地局2の料金区域情報とを、SIP信号のヘッダまたはパラメータとして追加し、通話確立後、IP-ICT装置10に課金パルス指示を送出することで、基地局2に課金パルスを送出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物からの公衆電話サービスを提供するための通信システム、通信方法およびアプリケーションサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電話交換網(PSTN:Public Switched Telephone Network)で提供されている列車や船舶等の移動する乗り物からの公衆電話サービスでは、乗り物に搭載されている公衆電話(以下、移動公衆電話または移動公衆電話機という)からの発信は、無線等を経由して基地局から、これを収容する加入者交換機(以下、GC)を通り、中継交換機(以下、IC)を経由して、接続先の加入者端末を収容しているGCへ接続している。また、列車や船舶内の移動公衆電話機と無線等で通信を行う基地局と、キャリア(通信事業者)側に配備されたGCとが、アナログ個別線で接続されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−252833号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“NTT技術資料館HP”、[online]、[平成22年7月16日検索]、インターネット<URL:http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/exhibit/technologies/pdf/3_I_5_1-1.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の移動公衆電話サービスは、PSTN網を対象としたサービスであって、IP(インターネットプロトコル)網における移動公衆電話サービスを提供するために構築されたものではない。
【0006】
ここで、移動公衆電話サービスをIP網で提供するための課題を浮き彫りにするために、従来提供されている移動公衆電話サービスのPSTN網内における接続の動作について、図10を参照して説明する。図10は、従来のPSTN網における移動公衆電話サービスの流れを模式的に示す構成図である。図10に示すように、列車51が走行する線路52に沿ってアンテナ53が敷設されている。また、列車51内には移動公衆電話機54が搭載され、例えば列車監視センタ等に配設された基地局55と移動公衆電話機54とがアンテナ53を介して接続される。
【0007】
従来のPSTN網50における通信システムでは、まず、ステップS51において、列車51内の移動公衆電話機54より、着信電話番号(例えば0A〜J)をダイヤルして発信する。次に、ステップS52において、基地局55は、移動公衆電話機54からの信号を対向のGC56に接続する。つまり、基地局55は、移動公衆電話機54からの信号(移動公衆電話対向回線発信)を、アナログ回線57を介して、呼接続処理58によりGC56へ接続する。次に、ステップS53において、GC56は、移動公衆電話呼(移動公衆電話対向回線発信)を認識する。つまり、GC56は、基地局55からの入回線を認識する。そして、GC56は、着信電話番号(受信数字A〜J)から、接続先が接続可能な網かどうかの判定を行う。接続先が接続可能な網であると判定された場合、ステップS54において、GC56は、基地局55からの入回線に対応したエリア情報(CA情報)を取得し、接続指示信号(IAM:Initial Address Message)にCA情報を設定する。ここで、GC56は、接続されている基地局55の回線(アナログ回線57)毎に、その基地局55を収容しているエリア情報(CA情報)を保持している。このエリア情報は、通話料金を算出するための区域に関する情報(料金区域情報)を示す。
【0008】
続いて、ステップS55において、GC56は、以下の処理により、課金に必要な情報(課金レート)を抽出する。前提として、GC56は、課金レートを抽出するための情報テーブルとして、「移動公衆電話用距離−MBI変換データテーブル」と、「移動公衆電話用課金秒数データテーブル」とを保持している。ここで、MBI値は課金条件を示す値であり、値毎に「x秒毎の通話で料金がy円」といった条件が決められている。
【0009】
課金レートを抽出するために、まず、GC56は、エリア情報(CA情報)から、課金の発信基点の情報(発KAN)を取得する。ここで、発KANとは、8桁の2進数の情報で、発側GCの課金上の規定点(座標x、y)を示す。また、GC56は、接続先電話番号(着信電話番号)から、課金の着信基点の情報(着KAN)を取得する。そして、GC56は、発KANと着KANの情報から2点間の距離(移動公衆電話用距離)を抽出する。そして、GC56は、距離情報をキーに、「移動公衆電話用距離−MBI変換データテーブル」を検索し、MBI値を抽出し、さらに、抽出したMBI値をキーに、「移動公衆電話用課金秒数データテーブル」を検索し、課金を行うための「単位秒数」を、課金レートとして抽出する。
【0010】
続いて、ステップS56において、GC56は、一般呼と同様に着信接続を行う際に、発信元が「移動公衆電話である」ことが分かるように、接続指示信号(IAM)において、「発ユーザ種別のパラメータ」には“公衆(街頭)”を設定すると共に、「固定付加ユーザ種別1」のパラメータには“移動公衆”を設定する。この2つのパラメータは、「公衆電話」であることを示すパラメータである。
【0011】
続いて、GC56は、接続先電話番号(着信電話番号)から、移動公衆電話呼の接続先が自GC配下に接続されているか否かを判別する。例えば、接続先電話番号から、「接続先が自GC配下に接続されている」と判断した場合、GC56は、ステップS57において、加入者電話機(着信端末)59に対して呼接続処理60を行うことで着信処理を行う(第1のケース)。
【0012】
一方、接続先電話番号から、「接続先が自GC配下に接続されていない」と判断した場合は、GC56は、移動公衆電話呼をIC62,63へ転送する。IC62,63は、接続先電話番号から、「接続先が接続されているGC64」へ転送する。そして、接続先の接続されたGC64が、ステップS57Aにおいて、加入者電話機(着信端末)65に対して着信処理を行う(第2のケース)。つまり、第2のケースでは、GC56、IC62,63、およびGC64が呼接続処理60を行う。以下、第1のケースの処理を続けて説明する。
【0013】
ステップS57に続いて、着信端末応答後、ステップS58において、GC56は、基地局55に対して、課金指示および課金タイミングを示すMF信号(課金パルス信号:以下、単に課金パルスという)を送出すると共に、課金計算(課金パルス計数)を行う。なお、MF(Multi Frequency)信号は、2周波を組み合わせた信号である。ここで、基地局によっては自律課金を行うものがあり、その場合、GC56は、課金パルス計数のみを行い、基地局55に対して課金パルスを送出しない。なお、課金処理の詳細については後記するが、GC56は、課金処理のための度数メータを、移動公衆電話対向回線毎に保持している。そして、通話の切断時には、ステップS59において、GC56は、対象の移動公衆電話対向回線の度数メータに、通話度数を加算する。後記するように、度数メータの値は、応答に対する計数値と、通話に対する課金パルス計数値との和となる。
【0014】
移動公衆電話機54からの発信で課金を行う際に、GC56から、基地局55に対して課金指示の信号(課金パルス)を送出するが、基地局によっては自律課金を行うことのできるものがあり送出が不要な場合もある。基地局の種類に合わせて、網側から(GC56から)課金パルスを送出するか否かを制御することで、移動公衆電話機54では、両パターンに対応できるようになっている。
【0015】
従来の課金動作について図11を参照して説明する。移動公衆電話機54の通話代金には、硬貨やプリペイドカード等を利用することができる。まず、課金パルス送出要の場合の課金動作について、図11(a)を参照して説明する。GC56は、着信端末からの応答(ステップS61)に応じて、応答信号を基地局55に送出し(ステップS62)、予め定められた期間(ノーコインタイミング:例えば2.5秒)の経過後に、着信端末からの応答(ステップS61)に対して計数する(ステップS66)。このことを図11(a)において、黒丸で示す。また、GC56は、所定時間が経過して、図11(a)において二重丸で示すように、課金パルス送出契機になった場合(ステップS67)、課金パルスを基地局55に送出し(ステップS68)、ノーコインタイミングの経過後に、ステップS67の課金パルス送出契機のパルスに対してカウント(送出課金パルス計数)を行う(ステップS72)。なお、S66,S72ではGC56は、カウントを行うが、度数メータ自体の更新は行わない。
【0016】
図11(a)に示すように、基地局55は、GC56からの応答信号(ステップS62)を契機に、ノーコインチェック(応答収納信号)を移動公衆電話機54に送出し(ステップS63)、GC56からの課金パルス(ステップS68)を契機に、課金のためのノーコインチェック(硬貨収納信号)を移動公衆電話機54に送出する(ステップS69)。なお、応答収納信号や硬貨収納信号等を特に区別しない場合、単にノーコインチェックという。また、移動公衆電話機54において硬貨を収納するための信号(硬貨収納信号)とは、例えばプリペイドカード等の電子マネーを収納する信号も意味する。
【0017】
図11(a)に示すように、移動公衆電話機54は、周期が来ると料金分の硬貨を収納し、基地局55からのノーコインチェックに対して、応答(ノーコインチェック結果)を返す(ステップS64,S70)。基地局55は、移動公衆電話機54からの応答(ノーコインチェック結果)を受ける度に、基地局55内部で保持する度数メータの値を更新して管理する(ステップS65,S71:度数メータ登算)。
【0018】
ここで、図11(b)に示すように、基地局55が、GC56からの課金パルス(ステップS68)を契機としたノーコインチェックを送出し(ステップS69)、その後、僅かな時間以内(例えば2秒以内)に、ノーコインチェック結果を受信した場合を想定する。この場合、基地局55は、通話が切断したと認識し、切断信号をGC56に送出する(ステップS81)。なお、図11(b)において、図11(a)と同じ処理ステップには、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。続いて、切断信号を受信したGC56は、着信端末を切断する処理を行う(ステップS82)。このような通話切断の場合、GC56は、課金パルス送出契機(ステップS67)からノーコインタイミングが経過する前に、切断信号を受信するので、直前に送出した前記ステップS67の課金パルスを計数しない(ステップS83)。このことを図11(b)において、白丸で示す。
【0019】
図11(b)では図示を省略するが、切断処理の後(ステップS83の後)、GC56は、移動公衆電話対向回線毎に管理している度数メータに、通話度数(応答のための1回+送出パルス計数の値)を加算する。このように基地局55の度数メータ登算のタイミングと、GC56の度数メータの計数のタイミングとは異なるので、度数が不一致となる場合がある。そこで、基地局55で保持している度数メータと、GC56の通話度数とを用いて、GC56を管理する通信事業者と、基地局55を管理する基地局事業者との間で精算を行う。なお、GC56内にて、移動公衆電話対向回線毎(基地局毎)に保存される度数メータの値は、GC56に対する保守コマンドにより取得可能である。
【0020】
次に、基地局が自律課金を行うことができて、課金パルス送出不要の場合について、図11(c)を参照して説明する。なお、図11(c)において、図11(a)と同じ処理ステップには、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。自律課金を行うことのできる基地局55は、GC56で行う課金レート抽出処理(図10のステップS55参照)を実行できる機能や前記の各種データテーブルを備えている。そして、基地局55は、移動公衆電話機54に対して、通話確立前に(ステップS61の前に)、課金レートを通知する。
【0021】
GC56は、図11(c)に二重丸で示すように、課金パルス送出契機(ステップS67)に、課金パルスを送出しない。そして、課金パルス送出契機(ステップS67)から、ノーコインタイミングの時間だけ経過した後に、ステップS67の課金パルス送出契機のパルス(未送出)に対してカウント(課金パルス計数)を行う(ステップS72)。
【0022】
基地局55は、GC56からの応答信号(ステップS62)を契機として、課金レートの周期に基づき、課金のためのノーコインチェック(これを周期収納信号と呼ぶ)を移動公衆電話機54に送出する動作(自律課金動作)を行う(ステップS91)。なお、課金パルス送出不要の場合についての通話切断以降の動作は、課金パルス送出要の場合と同じなので説明を省略する。
【0023】
図10および図11を参照して説明した呼接続処理や課金処理をIP網で実現する方法は従来知られていない。IP網では、交換機の呼制御機能をセッション制御サーバと、アプリケーションサーバ(AS)とが分担しており、現在使用されているSIPプロトコル(Session Initiation Protocol)では、移動公衆電話であることを区別する方法がなく、IP網では、移動公衆電話サービスが実現できていないという問題がある。
さらに、通信ネットワークが完全にIP化されるまでは、当面、IP網とPSTN網とが並存するため、移動公衆電話サービスをIP網で提供できるようになった場合、PSTN網の加入者へ着信させる必要も生じるが、このための方法も提供されていない。
【0024】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、移動公衆電話サービスをIP網にて実現することのできる通信システム、通信方法およびアプリケーションサーバを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記課題を解決するため、本発明に係る通信システムは、IP網上でIP電話を利用するサービスに加入している加入者の情報を蓄積し、前記加入者が利用する加入者電話機に接続する加入者サーバと、移動体に搭載されている公衆電話機を示す移動公衆電話機からの基地局を経由した発呼を接続先電話番号に基づいて前記IP網を介して当該移動公衆電話機の接続先である前記加入者電話機を収容する前記加入者サーバを宛先として送出するアプリケーションサーバと、前記加入者電話機からのPSTNで使用されている呼制御信号および音声信号を、前記IP網上で使用される信号に変換するIP変換装置と、を備えた通信システムであって、前記IP網上に、前記移動公衆電話機側から着信する呼を制御するための信号として前記IP網上で使用される制御信号を送出する着信専用機能と、前記移動公衆電話機側からのアナログ音声信号をIPパケットに変換する発信側のIP変換機能と、前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信し、前記移動公衆電話機からの発呼であることを示す移動公衆用パラメータを、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する第1サーバ機能と、前記基地局の料金区域情報を蓄積し、前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信し、前記発呼を経由した前記基地局の料金区域情報を、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する第2サーバ機能と、を備えることを特徴とする。
【0026】
かかる構成の通信システムは、PSTNで使用されている信号と、IP網上で使用される信号とを変換するための機能として、移動公衆電話機からの着呼を制御するためにIP網上で使用される制御信号を送出する着信専用機能と、アナログ音声信号をIPパケットに変換する発信側のIP変換機能と、加入者電話機からのPSTNで使用されている信号を、IP網上で使用される信号に変換するIP変換装置と、を備える。また、移動公衆電話機から発信された信号はIP網上で使用される信号に変換された上で、移動公衆用パラメータが追加されるので、IP網内にて、移動公衆電話の呼と、それ以外の通常の呼とを区別することが可能となる。また、移動公衆用パラメータ以外に、経由した基地局の料金区域情報も追加されるので、IP網の移動公衆電話サービスにおいても距離に応じた課金処理を容易に行うことができる。また、これら追加される移動公衆用パラメータや経由した基地局の料金区域情報は、これまでのPSTN網における呼制御信号に容易に対応付けることのできるマッピングデータとなるので、移動公衆電話機からIP網経由でPTSN網の加入者端末へも容易に着信させることができる。
【0027】
また、本発明に係る通信システムは、前記アプリケーションサーバが、前記第1サーバ機能と、前記第2サーバ機能と、前記接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する課金情報生成機能と、前記生成された課金情報に基づいて通話度数を更新する通話度数管理機能と、前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積し、送出要の場合のみ通話確立後に課金パルス指示を示す制御信号を送出する課金パルス送出機能と、を有し、前記着信専用機能が、前記基地局の対向となる前記加入者サーバと、前記基地局との間に設けられ、前記基地局の対向となる前記加入者サーバを介して前記アプリケーションサーバと通信可能に接続されており、前記アプリケーションサーバからの前記加入者サーバを経由した前記課金パルス指示を示す制御信号に基づいて、前記基地局に対して課金のためのアナログ制御信号を送出し、前記基地局が、課金のための硬貨収納信号を前記移動公衆電話機に送出する動作を行うことが好ましい。
【0028】
かかる構成の通信システムは、呼制御処理や課金処理等を行うアプリケーションサーバが、基地局の対向となる加入者サーバと通信可能に接続されているので、移動公衆電話機の接続先が、基地局の対向となる加入者サーバが収容する加入者電話機である場合に、中継することなく着信することができる。
【0029】
また、本発明に係る通信システムは、前記アプリケーションサーバが、前記第1サーバ機能と、前記第2サーバ機能と、前記接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する課金情報生成機能と、前記生成された課金情報に基づいて通話度数を更新する通話度数管理機能と、前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積し、送出要の場合のみ課金パルス指示を示す制御信号を送出する課金パルス送出機能と、を有し、前記着信専用機能が、前記基地局の対向となる前記アプリケーションサーバと、前記基地局との間に設けられ、前記基地局の対向となる前記アプリケーションサーバと通信可能に接続されており、当該アプリケーションサーバからの前記課金パルス指示を示す制御信号に基づいて、前記基地局に対して課金のためのアナログ制御信号を送出し、前記基地局が、課金のための硬貨収納信号を前記移動公衆電話機に送出する動作を行うことが好ましい。
【0030】
かかる構成の通信システムは、呼制御処理や課金処理等を行うアプリケーションサーバが、基地局の対向となるので、アプリケーションサーバは、課金パルスの送出指示を着信専用機能に対して直接送出することができ、加入者サーバ等を間に介在させた場合に比べて、装置間の信号のやりとりを低減することができる。
【0031】
また、本発明に係る通信システムは、前記着信専用機能が、前記IP変換機能に内蔵または外付けされて構成されていることが好ましい。
【0032】
かかる構成の通信システムは、着信専用機能と、IP変換機能とを単体のユニット装置として異なる場所に配設する場合に比べてコンパクトに収納できるので、配置スペースや配置コスト等を低減し、また、容易に管理することができるようになる。
【0033】
また、本発明に係る通信システムは、前記アプリケーションサーバが、前記第1サーバ機能と、前記第2サーバ機能と、前記接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する課金情報生成機能と、前記生成された課金情報に基づいて通話度数を更新する通話度数管理機能と、を有し、前記基地局が、前記IP網上に設けられ、前記着信専用機能と、前記発信側のIP変換機能と、前記課金情報生成機能と、を有し、当該基地局の対向となる前記加入者サーバを介して、前記アプリケーションサーバと通信可能に接続されており、前記アプリケーションサーバから当該基地局の対向となる前記加入者サーバを経由した、前記加入者電話機のオフフックの応答信号を受信し、前記オフフックの応答信号を契機に、課金のために周期的に送出する周期収納信号を前記移動公衆電話機に送出する動作を行うことが好ましい。
【0034】
かかる構成の通信システムは、基地局がIP化されるので、基地局と加入者サーバとの間の個別アナログ線が不要になる。また、基地局が自律課金することができるので、アプリケーションサーバ等の他の装置が、課金パルスの送出の要/不要を判断する等の複雑な処理を行う必要がなくなる。
【0035】
また、前記課題を解決するため、本発明に係る通信方法は、IP網上でIP電話を利用するサービスに加入している加入者の情報を蓄積し、前記加入者が利用する加入者電話機に接続する加入者サーバと、基地局の料金区域情報を蓄積し、移動体に搭載されている公衆電話機を示す移動公衆電話機からの前記基地局を経由した発呼を接続先電話番号に基づいて前記IP網を介して当該移動公衆電話機の接続先である前記加入者電話機を収容する前記加入者サーバを宛先として送出するアプリケーションサーバと、前記加入者電話機からのPSTNで使用されている呼制御信号および音声信号を、前記IP網上で使用される信号に変換するIP変換装置と、前記移動公衆電話機側から着信する呼を制御するための信号として前記IP網上で使用される制御信号を送出する着信専用機能と、前記移動公衆電話機側からのアナログ音声信号をIPパケットに変換する発信側のIP変換機能と、を備えた通信システムにおける通信方法であって、前記アプリケーションサーバが、前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信する制御信号受信ステップと、前記移動公衆電話機からの発呼であることを示す移動公衆用パラメータと、前記発呼を経由した前記基地局の料金区域情報とを、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する情報追加ステップと、を含んで実行することを特徴とする。
【0036】
かかる手順の通信方法では、通信システムの着信専用機能が、移動公衆電話機側から着信する呼を制御するための信号としてIP網上で使用される制御信号を送出し、この制御信号を直接または間接的に受信するアプリケーションサーバが、移動公衆用パラメータを追加するので、IP網内にて、移動公衆電話の呼と、それ以外の通常の呼とを区別することが可能となる。また、アプリケーションサーバは、受信した制御信号に対して、経由した基地局の料金区域情報も追加するので、IP網の移動公衆電話サービスにおいても距離に応じた課金処理を容易に行うことができる。
【0037】
また、本発明に係る通信方法は、前記基地局の対向となる前記加入者サーバが、前記着信専用機能が送出する前記制御信号を受信するステップと、前記着信専用機能からの前記制御信号を受信することで、当該呼が前記移動公衆電話機からの発信であると判定し、受信した前記制御信号を前記アプリケーションサーバに転送するステップとを実行し、前記アプリケーションサーバが、前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積しており、前記着信専用機能が送出して前記基地局の対向となる前記加入者サーバを経由した前記制御信号を受信し、受信した前記制御信号で示される前記移動公衆電話機からの発呼が課金パルス送出要の場合のみ、通話確立後に、課金パルス指示を示す制御信号を送出するステップを実行し、前記着信専用機能が、前記アプリケーションサーバから前記課金パルス指示を示す制御信号を直接または間接的に受信した場合に、前記基地局に対して課金のためのアナログ制御信号を示す課金パルスを送出するステップを実行し、前記基地局が、前記課金パルスを受信した場合に、課金のための硬貨収納信号を前記移動公衆電話機に送出するステップを実行することが好ましい。
【0038】
かかる手順の通信方法では、通信システムにおいて基地局の対向となる加入者サーバが、着信専用機能から送出された制御信号を受信することで、当該呼が移動公衆電話機からの発信であると判定することができる。そして、加入者サーバは、移動公衆電話サービスに対応したアプリケーションサーバに制御信号を転送することができる。そして、アプリケーションサーバは、受信した制御信号に基づいて、移動公衆電話機からの呼が経由した基地局が課金パルス送出要である場合のみ、通話確立後に、課金パルス指示を送出する。そして、着信専用機能は、課金パルス指示を受信した場合に、課金パルスを基地局に送出し、これを受けて、基地局が、硬貨収納信号を移動公衆電話機に送出する。したがって、IP網の移動公衆電話サービスにおいても、アナログ回線を利用した課金パルスを基地局に送出することで課金処理を実行することができる。
【0039】
また、本発明に係る通信方法は、前記アプリケーションサーバが、前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積しており、前記着信専用機能からの前記制御信号を直接受信することで、当該呼が前記移動公衆電話機からの発信であると判定し、受信した前記制御信号に基づいて、前記移動公衆電話機からの発呼が課金パルス送出要の場合のみ、通話確立後に、課金パルス指示を示す制御信号を送出するステップを実行し、前記着信専用機能が、前記アプリケーションサーバから前記課金パルス指示を示す制御信号を受信するステップと、前記課金パルス指示を示す制御信号を受信したことを契機に、前記基地局に対して課金のためのアナログ制御信号を示す課金パルスを送出するステップと、を実行し、前記基地局が、前記課金パルスを受信するステップと、課金のための硬貨収納信号を前記移動公衆電話機に送出するステップと、を実行することが好ましい。
【0040】
かかる手順の通信方法では、通信システムにおいて基地局の対向となるアプリケーションサーバが、着信専用機能から送出された制御信号を直接受信することで、当該呼が移動公衆電話機からの発信であると判定することができる。そして、アプリケーションサーバは、受信した制御信号に基づいて、移動公衆電話機からの呼が経由した基地局が課金パルス送出要である場合のみ、通話確立後に、課金パルス指示を送出する。したがって、IP網の移動公衆電話サービスにおいても、アナログ回線を利用した課金パルスを基地局に送出することで課金処理を実行することができると共に、加入者サーバ等を間に介在させた場合に比べて、装置間の信号のやりとりを低減することができる。
【0041】
また、本発明に係る通信方法は、前記基地局が、前記IP網上に設けられて前記着信専用機能を有し、前記基地局の対向となる前記加入者サーバが、前記基地局が送出する、前記移動公衆電話機側から着信する呼を制御するための信号として前記IP網上で使用される制御信号を受信するステップと、前記基地局からの前記制御信号を受信することで、当該呼が前記移動公衆電話機からの発信であると判定し、受信した前記制御信号を前記アプリケーションサーバに転送するステップとを実行し、前記アプリケーションサーバが、前記基地局が送出して当該基地局の対向となる前記加入者サーバを経由した前記制御信号を受信し、前記基地局が、前記アプリケーションサーバから、当該基地局の対向となる前記加入者サーバを経由した、前記加入者電話機のオフフックの応答信号を受信するステップと、受信した前記応答信号を契機に、課金のために周期的に送出する周期収納信号を前記移動公衆電話機に送出するステップと、を実行することが好ましい。
【0042】
かかる手順の通信方法では、通信システムにおいて基地局の対向となる加入者サーバが、着信専用機能を備えてIP化された基地局から送出された制御信号を直接受信することで、当該呼が移動公衆電話機からの発信であると判定することができる。そして、この加入者サーバは、移動公衆電話サービスに対応したアプリケーションサーバに制御信号を転送することができる。そして、アプリケーションサーバは、IP網を介して当該移動公衆電話機の接続先である加入者電話機を収容する加入者サーバを宛先として制御信号を送出する。そして、通話確立後に、基地局は、加入者電話機からのオフフックの応答信号を契機に周期収納信号を移動公衆電話機に送出する。したがって、すべての基地局が自律課金することで、基地局と加入者サーバとの間の個別アナログ線が不要になると共に、アプリケーションサーバ等の他の装置が、課金パルスの送出の要/不要を判断する等の複雑な処理を行う必要がなくなる。
【0043】
また、前記課題を解決するため、本発明に係るアプリケーションサーバは、IP網上でIP電話を利用するサービスに加入している加入者の情報を蓄積し、前記加入者が利用する加入者電話機に接続する加入者サーバと、移動体に搭載されている公衆電話機を示す移動公衆電話機からの基地局を経由した発呼を接続先電話番号に基づいて前記IP網を介して当該移動公衆電話機の接続先である前記加入者電話機を収容する前記加入者サーバを宛先として送出するアプリケーションサーバと、前記加入者電話機からのPSTNで使用されている呼制御信号および音声信号を、前記IP網上で使用される信号に変換するIP変換装置と、前記移動公衆電話機側から着信する呼を制御するための信号として前記IP網上で使用される制御信号を、前記アプリケーションサーバを宛先として送出する着信専用機能と、前記移動公衆電話機側からのアナログ音声信号をIPパケットに変換する発信側のIP変換機能と、を備えた通信システムにおける前記アプリケーションサーバであって、前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信し、前記移動公衆電話機からの発呼であることを示す移動公衆用パラメータを、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する第1サーバ機能と、前記基地局の料金区域情報を蓄積し、前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信し、前記発呼を経由した前記基地局の料金区域情報を、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する第2サーバ機能と、前記接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する課金情報生成機能と、前記生成された課金情報に基づいて通話度数を更新する通話度数管理機能と、前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積し、送出要の場合のみ通話確立後に課金パルス指示を示す制御信号を送出する課金パルス送出機能と、を有することを特徴とする。
【0044】
かかる構成のアプリケーションサーバは、移動公衆電話機から発信された信号が着信専用機能によってIP網上で使用される信号に変換された制御信号に対して、移動公衆用パラメータを追加するので、IP網内にて、移動公衆電話の呼と、それ以外の通常の呼とを区別することが可能となる。また、アプリケーションサーバは、この移動公衆電話の呼を制御する制御信号に対して、当該呼が経由した基地局の料金区域情報も追加するので、IP網の移動公衆電話サービスにおいても距離に応じた課金処理を容易に行うことができる。
また、アプリケーションサーバは、移動公衆電話の呼に対して生成した課金情報に基づいて通話度数を更新すると共に、当該呼が経由した基地局が送出要の場合のみ、通話確立後に課金パルス指示を送出する。したがって、IP網の移動公衆電話サービスにおいても、アナログ回線を利用した課金パルスを基地局に送出することで課金処理を実行することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の通信システムは、これまでのPSTN網における移動公衆サービスを実現するための手段と同様な機能を、IP網側に備えるので、移動公衆電話サービスをIP網にて実現することができる。また、この新サービスを提供するに際して、既存のPSTN側の装置を改造する必要はなく、また、IP網に収容された加入者にも新サービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を模式的に示す構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る通信システムを模式的に示す構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る通信システムの処理の流れを模式的に示すシーケンス図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る通信システムを模式的に示す構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る通信システムの処理の流れを模式的に示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る通信システムを模式的に示す構成図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る通信システムの処理の流れを模式的に示すシーケンス図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る通信システムを模式的に示す構成図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る通信システムの処理の流れを模式的に示すシーケンス図である。
【図10】従来のPSTN網における移動公衆電話サービスの流れを模式的に示す構成図である。
【図11】従来の移動公衆電話サービスにおける課金の処理の流れを示すシーケンス図であって、(a)は課金パルス送出要の場合の処理、(b)は切断処理における課金パルスの計数処理、(c)は課金パルス送出不要の場合の処理をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について詳細に説明する。
【0048】
[通信システムの概要]
図1に示す通信システム1は、移動公衆電話サービスを実現するものである。
図1に示すように、列車51が走行する線路52に沿ってアンテナ53が敷設されている。また、列車51内には移動公衆電話機54が搭載され、例えば列車監視センタ等に配設された基地局2とアンテナ53を介して接続される。移動公衆電話機54は、移動体に搭載されている公衆電話機を示す。この例では、移動体(移動局)を例えば列車51であるものとするが、移動体は、船舶等でもよい。
【0049】
通信システム1は、IP網3に複数のサーバ等の装置を備えている。また、この例では、通信システム1は、PSTN網4に複数の装置を備えており、さらに、IP網3とPSTN網4との中間に、IP網3の信号とISUP(ISDN user part)信号との変換を行うPSTN-GW5を備えている。なお、図1においてPSTN網4内に符号14で示す「IGS/IC/GC」は、IGS(関門交換機)、IC(中継交換機)、GC(加入者交換機)等であって、PSTN網4内の加入者電話機13までに経由、接続する装置の総称を示している。
【0050】
以下、IP網のプロトコルにSIPを適用する場合を説明する。
ここでは、通信システム1は、IP網3上に、加入者サーバ6(6a,6b)と、AS(アプリケーションサーバ)7と、中継サーバ8と、IP変換装置9(9a,9b)と、IP-ICT装置10とを備えることとした。なお、図1では、各装置の台数や配線接続は一例であってこの限りではない。例えば、中継サーバ8等を増加させてもよいし、加入者サーバ6b−中継サーバ8間を配線接続してもよい。
【0051】
加入者サーバ6は、IP網3上でIP電話を利用するサービスに加入している顧客(加入者)の情報を蓄積し、加入者が利用する加入者電話機11に接続するものである。この加入者サーバ6は、加入者電話機11への接続のための制御を行っているサーバであり、PSTN網4でのGCに相当する。
【0052】
加入者サーバ6aは、IP変換装置9aを介して加入者電話機11に接続するものである。加入者サーバ6bは、基地局2の対向となる加入者サーバであり、IP変換装置9bおよびIP-ICT装置10を介して基地局2に接続するものである。なお、特に区別しない場合、加入者サーバ6と表記する。
【0053】
AS(アプリケーションサーバ)7は、移動公衆電話機54からの基地局2を経由した発呼を接続先電話番号に基づいてIP網3を介して当該移動公衆電話機54の接続先である加入者電話機11を収容する加入者サーバ6bを宛先として送出するものである。AS7は、例えば、B2BUA(Back-to-Back User Agent)として構成される。このAS7は、サービス毎のロジックに対応した接続指示(番号変換等)を行うサーバである。AS7は、移動公衆電話機54からの呼(移動公衆電話呼)を、IP網3を介して、加入者電話機11に接続する。AS7は、例えば、接続規制時には、音声ガイダンスのデータ等を蓄積するMS12(Media Server)にガイダンス指示を送出する。なお、AS7の機能の詳細は後記する。
【0054】
中継サーバ8は、加入者サーバ6間の転送等を行うサーバである。この中継サーバ8は、PSTN網4でのICに相当する。
【0055】
IP変換装置9aは、PSTN上で使用されている加入者電話機11からの回線を収容し、加入者電話機11からのPSTNで使用されている呼制御信号および音声信号を、IP網3上で使用される信号に変換するための装置である。
IP変換装置9b(発信側のIP変換機能)は、移動公衆電話機54側からのアナログ音声信号をIPパケットに変換するものである。なお、特に区別しない場合、IP変換装置9と表記する。
【0056】
IP-ICT(Information and Communication Technology)装置10は、移動公衆電話機54側から着信する呼を制御するための信号としてIP網3上で使用される制御信号を送出するものである。IP-ICT装置10は、特許請求の範囲に記載の着信専用機能に相当する。IP-ICT装置10は、アナログ個別線で基地局2と通信可能に接続されている。IP-ICT装置10は、IP⇔アナログ個別線で信号を変換する。IP-ICT装置10は、例えば、基地局2と、その対向となる加入者サーバ6bやAS7との間に配設されている。これは、従来、基地局とPSTN網のGCとはアナログ個別線接続であるため、従来の設備に対応するように配置したものである。ここで、基地局2からのアナログ音声信号は、IP-ICT装置10では処理されずに単に通過し、IP変換装置9bにてIPパケットへ変換される。また、基地局2からのアナログの呼制御信号は、IP-ICT装置10にてSIP信号へ変換され、IP変換装置9bでは処理されずに通過する。
【0057】
[通信システムに配備された機能]
通信システム1には、移動公衆電話サービスを実現するために、主として、下記の(1)〜(8)の機能が配備されている。
【0058】
(1)基地局対向:
IP⇔アナログ個別線の信号を変換する装置が用意されている。この機能は、例えば、IP-ICT装置10が、アナログ個別線からの発呼要求を検出し、アナログ個別線の信号をIPの信号に変換し、例えば、SIP-INVITE信号(以下、単にINVITEという)を送出する機能である。なお、後記する第4実施形態のように基地局をIP化して、基地局がIP-ICT装置10(着信専用機能)の役割を果たすことでも対応可能である。この場合、(1)基地局対向機能とは、基地局と対向するIP網上のサーバでIP接続を収容する構成により実現される機能を指す。
【0059】
(2)ダイヤル分析:
この機能は、IP網3上のサーバで、受信ダイヤル番号を分析し接続許容判定を実施する機能である。例えば、AS7が、受信ダイヤル番号を分析し接続許容判定を実施する。具体的には、移動公衆電話機54でダイヤルされた電話番号が、通信接続できる網を示すものであれば、接続を許容するとの判定を行い、一方、通信接続できない網を示すものであれば、接続を許容しない(接続規制をする)との判定を行う。この機能は、PSTN網4でのGCの機能に相当する。
【0060】
(3)ガイダンス接続:
この機能は、IP網3上のサーバで、接続規制時にガイダンス指示の「INFO」を送出する機能である。例えば、AS7が、接続規制時にガイダンス指示の「INFO」を送出する。通常のSIPではこのような用途のパラメータが無いためSIP拡張が必要なので、拡張パラメータをSIP信号のヘッダまたはパラメータとして追加する。接続規制時のガイダンスとは、例えば「おかけになった電話番号にはおつなぎすることができません」といった音声ガイダンスを示し、IP網3上のサーバは、MS12にガイダンス指示の命令を示す制御信号「INFO」を送出する。
【0061】
(4)ISUPマッピング:
この機能は、IP網3上のサーバで、移動公衆と判別するためのパラメータをSIPの信号に付加する機能である。通常のSIPではこのような用途のパラメータが無いためSIP拡張が必要なので、拡張パラメータをSIP信号のヘッダまたはパラメータとして追加する。例えば、AS7が、列車公衆呼を示すパラメータをINVITEに設定する。この機能は、特許請求の範囲に記載の第1サーバ機能に相当する。例えば、AS7は、IP-ICT装置10(着信専用機能)が送出する制御信号を直接または間接的に受信し、移動公衆電話機54からの発呼であることを示す移動公衆用パラメータを、受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する。なお、詳細は後記する。
また、IP網3からPSTN網4への接続時には、中間に位置するサーバ、例えば、PSTN-GW5は、ISUP(IAM)に、発ユーザ種別:公衆(街頭)、固定付加ユーザ種別1:移動公衆、を設定する。
【0062】
(5)料金区域情報設定:
この機能は、IP網3上のサーバで、発呼要求があったIP-ICT装置10が属するエリア情報(CA情報)を抽出し、SIPの信号に付加する機能である。通常のSIPではこのような用途のパラメータが無いためSIP拡張が必要なので、拡張パラメータをSIP信号のヘッダまたはパラメータとして追加する。例えば、AS7が、発呼要求があったIP-ICT装置10が属するCA情報を抽出し、INVITEに設定する。この機能は、特許請求の範囲に記載の第2サーバ機能に相当する。例えば、AS7は、基地局2の料金区域情報を蓄積し、IP-ICT装置10(着信専用機能)が送出する制御信号を直接または間接的に受信し、発呼を経由した基地局2の料金区域情報を、受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する。なお、詳細は後記する。
【0063】
(6)課金指数抽出:
この機能は、IP網3上のサーバで、PSTN料金改定データ相当を保持し、基地局接続点および着番号(接続先番号)から、課金通話秒数を決定する機能である。例えば、AS7が、PSTN料金改定データ相当を保持し、基地局接続点および着番号から、課金通話秒数を決定する。この機能は、特許請求の範囲に記載の課金情報生成機能に相当する。例えば、AS7は、接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する。
【0064】
(7)通話度数管理(課金度数管理):
この機能は、IP網3上のサーバで、基地局業者との精算のため、通話度数を管理、その値をファイル等に出力する機能である。例えば、AS7が、基地局業者との精算のため、通話度数を管理し、その値をファイル等に出力する。この機能は、特許請求の範囲に記載の通話度数管理機能に相当する。例えば、AS7は、前記生成された課金情報に基づいて通話度数を更新する。
【0065】
(8)課金パルス送出:
この機能は、IP網3上のサーバで、基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否をデータ管理し、送出要の場合のみ課金パルスの送出を行う機能である。例えば、AS7が、基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否をデータ管理し、送出要の場合のみ課金パルスの送出を行う。この機能は、特許請求の範囲に記載の課金パルス送出機能に相当する。例えば、AS7は、課金パルス送出要否データを蓄積し、送出要の場合のみ通話確立後に課金パルス指示を示す制御信号を、IP-ICT装置10(着信専用機能)に送出する。なお、後記する第4実施形態のように基地局をIP化して、すべての基地局が自律課金できる場合には、この機能は不要である。
【0066】
図1に示す例では、AS7に、(2)から(8)の機能を配備しているが、IP網3内の他のサーバ(加入者サーバ6や中継サーバ8)に配備することも可能である。
【0067】
[通信システムのIP化方式]
以下、通信システム1のIP化方式として、IP-ICT装置の配備方法により、第1ないし第4実施形態について説明する。
【0068】
(第1実施形態)
第1実施形態では、図2に示すように、基地局2側のIP-ICT装置10Aを、IP変換装置9A内に配備することとした。
図2において、符号21で示す太い実線の矢印は、呼接続処理の流れを示す。この呼接続処理21は、「移動公衆電話機54→基地局2→IP-ICT装置10A→加入者サーバ6b→AS7→加入者サーバ6b→中継サーバ8→加入者サーバ6a→IP変換装置9a→加入者電話機11」の順に接続される。なお、呼接続処理の制御信号は、IP-ICT装置10Aを通過する際に、IP変換装置9Aの部分に関しては通過するだけである。
【0069】
図2において、符号22で示す太い破線の矢印は、音声の流れを示す。この音声(音声信号)22は、「移動公衆電話機54→基地局2→IP変換装置9A→IP変換装置9a→加入者電話機11」の順に接続される。なお、アナログ音声信号は、IP変換装置9Aを通過する際に、IP-ICT装置10Aの部分に関しては通過するだけである。また、IP変換装置9A−IP変換装置9a間は、図示を省略するが例えば光ファイバ等で接続されている。
【0070】
また、第1実施形態では、AS7が基地局2の自律課金の有無に合わせて課金パルス送出を判断することとした。AS7は、課金周期作成のための処理、課金パルスの送出ための処理、通話の度数メータ登算のための処理等を行う。
【0071】
図2において、符号23で示す太い矢印は、課金パルス指示(SIPの制御信号)を示す。この課金パルス指示23は、「AS7→加入者サーバ6b→IP-ICT装置10A」の順に接続される。また、図2において、符号24で示す白抜きの矢印は、課金パルス(アナログ回線のMF信号)を示す。この課金パルス24は、IP-ICT装置10Aから基地局2に送出される。
【0072】
次に、IP網において移動公衆電話サービスを提供するためのIP発−IP着のシーケンス(以下、基本シーケンスという)について図3を参照して説明する。
まず、移動公衆電話機54より発信する(ステップS1)。すなわち、移動公衆電話機54は、基地局2に発信信号を送出する。すると、基地局2から、ダイヤルトーン(DT)が移動公衆電話機54に送出される。DTを受けた移動公衆電話機54において、移動局(列車51)内のユーザにより、接続先(相手先)の電話番号(例えば0A〜J)が入力される。
【0073】
そして、基地局2は、着信電話番号(0A〜J)の数字を受信し、IP-ICT装置10Aを経由して、対向となる加入者サーバ6bに接続する(ステップS2)。このとき、基地局2は、IP-ICT装置10Aに対して起動信号を送出する。そして、IP-ICT装置10Aは、アナログ個別線からの発呼要求を検出し、着信電話番号の数字をアナログ個別線の信号(MF信号)として受信し、SIPの接続指示信号であるINVITE(A〜J)を加入者サーバ6bに送出する。
【0074】
加入者サーバ6bは、IP-ICT装置10Aからの接続であることから、「移動公衆発信」であると判定し、AS7への接続を行い、AS7はINVITE(A〜J)を受信する(ステップS3:制御信号受信ステップ)。
【0075】
AS(B2BUA)7は、移動公衆電話であることを示すSIPの拡張パラメータをINVITEに付加し、加入者サーバ6bに送出して、接続先(加入者電話機11)への接続を指示する(ステップS4:情報追加ステップ)。具体的には、INVITEに付加する拡張パラメータにおいて、Fromヘッダのcpcパラメータにpayphone’を設定する。同様に、従来のISUP付加ユーザ種別の「移動公衆」に相当する情報を、INVITEに対して、新規ヘッダや新規パラメータとして追加する。さらに、従来のISUP事業者情報転送パラメータ-料金区域情報に相当する「基地局のCA情報」を、INVITEに対して、新規ヘッダや新規パラメータとして追加する。
【0076】
加入者サーバ6bは、接続先の加入者(加入者電話機11)へ接続処理を行い、接続先の加入者電話機11の収容されている加入者サーバ6aに接続を行う(ステップS5)。この際に、中継サーバ8を経由することもある。加入者サーバ6aは、加入者電話機11に対して呼び出し(IR)を行うと、接続時の経路を逆にたどって移動公衆電話機54に呼び出し命令(RBT:リングバックトーン)を送出する(ステップS6)。具体的には、加入者電話機11側のIP変換装置9aは、呼び出し(IR)を行っていることを示す180(180Ringing)をIP-ICT装置10Aへ返信し、IP-ICT装置10Aは、呼び出し命令(RBT)に変換して移動公衆電話機54に送出する。
【0077】
接続先(相手先)の加入者が加入者電話機11のフックを上げて応答すると(オフフック)、加入者電話機11側のIP変換装置9aは、その旨を示す200(SDP)を、接続時の経路を逆にたどって、IP-ICT装置10Aに送出する(ステップS7)。このとき、IP-ICT装置10Aは、200(SDP)をアナログ個別線のMF信号である応答信号に変換して基地局2に送出する。そして、基地局2は、応答収納信号(ノーコインチェック)を移動公衆電話機54に送出し(ステップS8)、移動公衆電話機54は、応答(ノーコインチェック結果)を返す(ステップS9)。これにより、加入者電話機11と移動公衆電話機54との通話が開始される。なお、200(SDP)は200OKに、SDP(Session Description Protocol)のパラメータ値を設定したものを意味する。
【0078】
AS(B2BUA)7は、基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否をデータ管理しており、通話が開始されると、送出要の場合には、課金パルス送出を指示する命令を示すINFO信号(課金パルス指示23:図2参照)を、加入者サーバ6bを経由してIP-ICT装置10Aに送出する(ステップS10)。
【0079】
そして、IP-ICT装置10Aは、INFO信号(課金パルス指示23:図2参照)を、MF信号である課金パルス24に変換して基地局2に送出する(ステップS11)。そして、基地局2は、IP-ICT装置10Aからの課金パルス(ステップS11)を契機に、課金のためのノーコインチェック(硬貨収納信号)を移動公衆電話機54に送出する(ステップS12)。
【0080】
なお、図3のS12において、ノーコインチェックの一例として硬貨収納信号の代わりに周期収納信号を図示した。これは、前記ステップS10において、送出不要の場合、つまり、基地局2が自律課金できる場合に対応している。この場合、AS7は、INFO信号(課金パルス指示23)を送出しないので、結果として、自律課金ができる基地局に対しては課金パルスが送出されないことになる。そして、自律課金ができる基地局2は、IP-ICT装置10Aからの応答信号(ステップS7)を契機として、課金レートの周期に基づき、課金のためのノーコインチェック(周期収納信号)を移動公衆電話機54に送出する動作(自律課金動作)を行う。
【0081】
移動公衆電話機54は、周期が来ると料金分の硬貨を収納し、基地局2からのノーコインチェック(硬貨収納信号または周期収納信号)に対して、応答(ノーコインチェック結果)を返す(ステップS13)。
【0082】
通話が終了されると、移動公衆電話機54は、基地局2を介して、IP-ICT装置10Aに切断信号を送出する(ステップS14)。具体的には、基地局2は、僅かな時間以内(例えば2秒以内)に、ノーコインチェック結果を受信した場合、通話が切断したと認識し、切断信号をIP-ICT装置10Aに送出する。そして、IP-ICT装置10Aは、MF信号である切断信号を、SIPのBYE(SIPの通話終了指示信号)に変換し、相手側のIP変換装置9aに送信する(ステップS15)と共に、MF信号である復旧完了信号を基地局2に送出する(ステップS16)。なお、このときの通話度数は、AS(B2BUA)7にて管理されており、通話度数の値をファイル等へ出力することで、基地局事業者との精算を行うことができる。
【0083】
IP端末からPSTN端末への通信の場合、基本シーケンスの前記ステップS5にて、AS7または中継サーバ8は、INVITEをPSTN-GW5(図1参照)に転送する。そして、PSTN-GW5は、前記(4)ISUPマッピング機能で説明したSIP拡張で付加された情報を、PSTNの信号(IAM)にマッピングする。つまり、PSTN-GW5は、ISUP(IAM)に、発ユーザ種別:公衆(街頭)、固定付加ユーザ種別1:移動公衆、を設定し、「IGS/IC/GC」14へ接続する。これにより、加入者電話機13に着信することができる。
【0084】
第1実施形態では、IP-ICT装置10Aは必ずしもIP変換装置9Aに内蔵される必要は無く、IP変換装置9Aに外付けで配備するようにしてもよい。呼接続処理においては、配備の仕方による違いは無いため、ここでは、内蔵も外付けも同じものとして扱う。
【0085】
(第2実施形態)
第2実施形態では、図4に示すように、基地局2側のIP-ICT装置10と、IP変換装置9とを別装置として配備することとした。図4において、図2に示した構成と同様の構成や同様の処理には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0086】
第2実施形態では、IP-ICT装置10に対する呼接続処理を、AS7Bから直接制御する。つまり、図4において、呼接続処理21は、「移動公衆電話機54→基地局2→IP-ICT装置10→AS7B→中継サーバ8→加入者サーバ6a→IP変換装置9a→加入者電話機11」の順に接続される。
【0087】
また、図4において、音声(音声信号)22は、「移動公衆電話機54→基地局2→IP-ICT装置10(通過)→IP変換装置9b→IP変換装置9a→加入者電話機11」の順に接続される。なお、IP変換装置9b−IP変換装置9a間は、図示を省略するが例えば光ファイバ等で接続されている。
【0088】
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、AS7Bが基地局2の自律課金の有無に合わせて課金パルス送出を判断することとした。
図4において、課金パルス指示23は、「AS7B→IP-ICT装置10A」の順に接続される。なお、課金パルス24は、IP-ICT装置10から基地局2に送出される。
【0089】
次に、第2実施形態において移動公衆電話サービスを提供するためのIP発−IP着のシーケンスについて図5を参照して説明する。なお、図5において、図3に示した基本シーケンスと同様の処理には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0090】
ステップS1は、図3の基本シーケンスの処理と同様である。続いて、基地局2は、着信電話番号(0A〜J)の数字を受信し、IP-ICT装置10を経由して、対向となるAS7Bに接続する(ステップS2)。このとき、基地局2は、IP-ICT装置10に対して起動信号を送出する。そして、IP-ICT装置10は、アナログ個別線からの発呼要求を検出し、着信電話番号の数字をアナログ個別線の信号(MF信号)として受信し、SIPの接続指示信号であるINVITE(A〜J)をAS7Bに送出する。AS7BはINVITE(A〜J)を受信する(ステップS2:制御信号受信ステップ)。これにより、AS7Bは、IP-ICT装置10からの接続であることから、「移動公衆発信」であると判定する。図5のステップS2は、図3のステップS2,S3の処理を合わせたものとなっている。
【0091】
図5のステップS4は、図3のステップS4,S5の処理を合わせたものとなっている。この例では、AS7Bは、移動公衆電話であることを示すSIPの拡張パラメータをINVITE(SIPの接続指示信号)に付加し、中継サーバ8に対して、接続先(加入者電話機11)への接続を指示する。そして、中継サーバ8は、加入者電話機11へ接続処理を行う。つまり、中継サーバ8は、加入者電話機11の収容されている加入者サーバ6aに接続を行う。なお、ステップS6〜S16は、加入者サーバ6bの処理が省略されている点を除いて、前記した図3の基本シーケンスの処理と同様である。また、IP端末とPSTN端末間の接続の場合の処理は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0092】
(第3実施形態)
第3実施形態では、図6に示すように、基地局2側のIP-ICT装置10と、IP変換装置9とを別装置として配備、かつ、IP-ICT装置10に対する呼接続処理を、AS7から加入者サーバ6b経由で制御し、さらに、AS7が基地局2の自律課金の有無に合わせて課金パルス送出を判断することとした。図6において、IP-ICT装置10と、IP変換装置9とを別装置とした点を除いて、図2に示した構成と同様なので詳細な説明を省略する。
【0093】
図6において、呼接続処理21は、図2に示した順序と実質的に同じ順に接続される。図6において、音声(音声信号)22は、「移動公衆電話機54→基地局2→IP-ICT装置10(通過)→IP変換装置9b→IP変換装置9a→加入者電話機11」の順に接続される。なお、IP変換装置9b−IP変換装置9a間は、図示を省略するが例えば光ファイバ等で接続されている。
【0094】
次に、第3実施形態において移動公衆電話サービスを提供するためのIP発−IP着のシーケンスを図7に示す。図7において、IP-ICT装置10と、IP変換装置9とを別装置とした点を除いて、図3に示した基本シーケンスの処理と同様なので説明を省略する。また、IP端末とPSTN端末間の接続の場合の処理は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0095】
(第4実施形態)
第4実施形態では、図8に示すように、単体のIP-ICT装置10を置かずに、基地局自体をIP化し、IP化した基地局2Cと加入者サーバ6bとを光ファイバ等で直接IP接続することとした。IPでは、これまでPSTN網で利用しているアナログの課金パルス信号を送れなくなるため、基地局2Cは全て自律課金することを前提とする。図8において、図2に示した構成と同様の構成や同様の処理には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0096】
図8において、呼接続処理21は、「移動公衆電話機54→基地局2C→加入者サーバ6b→AS7C→中継サーバ8→加入者サーバ6a→IP変換装置9a→加入者電話機11」の順に接続される。
また、図8において、音声(音声信号)22は、「移動公衆電話機54→基地局2C→→IP変換装置9a→加入者電話機11」の順に接続される。なお、基地局2C−IP変換装置9a間は、図示を省略するが例えば光ファイバ等で接続されている。
【0097】
次に、第4実施形態において移動公衆電話サービスを提供するためのIP発−IP着のシーケンスについて図9を参照して説明する。なお、図9において、図3に示した基本シーケンスと同様の処理には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0098】
ステップS1は、図3の基本シーケンスの処理と同様である。続いて、基地局2Cは、着信電話番号(0A〜J)の数字を受信し、対向となる加入者サーバ6bに接続する(ステップS2)。このとき、基地局2Cは、着信電話番号の数字を基に、SIPの接続指示信号であるINVITE(A〜J)を加入者サーバ6bに送出する。
【0099】
加入者サーバ6bは、基地局2Cからの接続であることから、「移動公衆発信」であると判定し、AS7Cへの接続を行い、AS7CはINVITE(A〜J)を受信する(ステップS3:制御信号受信ステップ)。なお、図9のステップS4〜S9は、IP-ICT装置10Aの処理が省略されている点を除いて、前記した処理と同様である。
【0100】
通話が開始されると、AS7Cでは課金パルス送出を行わず、基地局2Cが自律課金を行う(ステップS21)。つまり、AS7Cから課金パルスが送出されないので、前記した図3の基本シーケンスのステップS10〜S11の処理は実行されず、代わりに、基地局2Cが移動公衆電話機54に対して、自律で信号(周期収納信号)を送信する(ステップS12)。なお、図9のステップS13〜S15は、IP-ICT装置10Aの処理が省略されている点を除いて、前記した図3の基本シーケンスの処理と同様である。また、基地局2CはIP化されているので、加入者サーバ6bは、復旧完了信号を送信する必要がない。また、IP端末とPSTN端末間の接続の場合の処理は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0101】
第4実施形態によれば、基地局をIP化するため、IP-ICT装置10が不要となるというメリットと、アナログ個別線を無くすことができるというメリットがある。
【0102】
以上説明したように、本発明の第1ないし第3実施形態に係る通信システム1によれば、前記(1)〜(8)の機能が配備されているので、IP網で移動公衆サービスを実現することができる。この際に、既存のPSTN側の装置の改造を伴うことなく、IP網に収容された加入者にも、この移動公衆サービスを提供することができる。
【0103】
仮に、IP網3側にAS7が存在しないものとすると、IP網3側の移動公衆電話機54からの発信を一度PSTN網4に流通させ、PSTN網4側にて接続処理を行う必要がある。しかしながら、本発明により、IP網3内にAS7を置き、AS7を通じて課金処理を行うことで、移動公衆サービスの接続先がIP網3であってもPSTN網4であっても、PSTN側に何の改造を伴わずに、移動公衆サービスを提供することができる。
【0104】
また、IP網3内のサーバに、前記(2)ダイヤル分析機能を設けたので、IP網3内で、他の通信事業者宛の接続であるか否かの判定を行うこともできる。
また、IP網3内のサーバに、前記課金パルス送出機能を設けたので、課金パルス送出有り無しの両方の運用に対応を持たせることで、これまでのPSTNと同様のサービス内容を提供できる。
【0105】
また、本発明の第4実施形態に係る通信システム1によれば、同様に、前記(1)〜(7)の機能が配備されているので、IP網で移動公衆サービスを実現することができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。例えば、AS7に配備した機能は、必ずしもAS7に配備する必要は無く、IP網3内の別サーバ(加入者サーバ6や中継サーバ8)に配備させることも可能である。
【0107】
また、各実施形態では、IP網にて使用される信号としてSIP信号の場合について説明したが、SIPに関わらず、その信号において伝達する必要がある情報を含めることのできるIP上の信号すべてを適用可能である。つまり、SIPにおける他の信号や、SIP以外のプロトコルでも適応可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 通信システム
2,2C 基地局
3 IP網
4 PSTN網
5 PSTN-GW
6(6a,6b) 加入者サーバ
7 AS(アプリケーションサーバ)
7B AS(アプリケーションサーバ)
7C AS(アプリケーションサーバ)
8 中継サーバ
9a(9) 加入者側のIP変換装置
9b(9,9A) 基地局側のIP変換装置
10,10A IP-ICT装置
11,13 加入者電話機
12 MS
14 IGS/IC/GC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網上でIP電話を利用するサービスに加入している加入者の情報を蓄積し、前記加入者が利用する加入者電話機に接続する加入者サーバと、
移動体に搭載されている公衆電話機を示す移動公衆電話機からの基地局を経由した発呼を接続先電話番号に基づいて前記IP網を介して当該移動公衆電話機の接続先である前記加入者電話機を収容する前記加入者サーバを宛先として送出するアプリケーションサーバと、
前記加入者電話機からのPSTNで使用されている呼制御信号および音声信号を、前記IP網上で使用される信号に変換するIP変換装置と、を備えた通信システムであって、
前記IP網上に、
前記移動公衆電話機側から着信する呼を制御するための信号として前記IP網上で使用される制御信号を送出する着信専用機能と、
前記移動公衆電話機側からのアナログ音声信号をIPパケットに変換する発信側のIP変換機能と、
前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信し、前記移動公衆電話機からの発呼であることを示す移動公衆用パラメータを、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する第1サーバ機能と、
前記基地局の料金区域情報を蓄積し、前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信し、前記発呼を経由した前記基地局の料金区域情報を、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する第2サーバ機能と、を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記アプリケーションサーバは、
前記第1サーバ機能と、
前記第2サーバ機能と、
前記接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する課金情報生成機能と、
前記生成された課金情報に基づいて通話度数を更新する通話度数管理機能と、
前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積し、送出要の場合のみ通話確立後に課金パルス指示を示す制御信号を送出する課金パルス送出機能と、を有し、
前記着信専用機能は、
前記基地局の対向となる前記加入者サーバと、前記基地局との間に設けられ、前記基地局の対向となる前記加入者サーバを介して前記アプリケーションサーバと通信可能に接続されており、前記アプリケーションサーバからの前記加入者サーバを経由した前記課金パルス指示を示す制御信号に基づいて、前記基地局に対して課金のためのアナログ制御信号を送出し、
前記基地局は、課金のための硬貨収納信号を前記移動公衆電話機に送出する動作を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記アプリケーションサーバは、
前記第1サーバ機能と、
前記第2サーバ機能と、
前記接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する課金情報生成機能と、
前記生成された課金情報に基づいて通話度数を更新する通話度数管理機能と、
前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積し、送出要の場合のみ課金パルス指示を示す制御信号を送出する課金パルス送出機能と、を有し、
前記着信専用機能は、
前記基地局の対向となる前記アプリケーションサーバと、前記基地局との間に設けられ、前記基地局の対向となる前記アプリケーションサーバと通信可能に接続されており、当該アプリケーションサーバからの前記課金パルス指示を示す制御信号に基づいて、前記基地局に対して課金のためのアナログ制御信号を送出し、
前記基地局は、課金のための硬貨収納信号を前記移動公衆電話機に送出する動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記着信専用機能は、前記IP変換機能に内蔵または外付けされて構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記アプリケーションサーバは、
前記第1サーバ機能と、
前記第2サーバ機能と、
前記接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する課金情報生成機能と、
前記生成された課金情報に基づいて通話度数を更新する通話度数管理機能と、を有し、
前記基地局は、
前記IP網上に設けられ、
前記着信専用機能と、
前記発信側のIP変換機能と、
前記接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する課金情報生成機能と、を有し、
当該基地局の対向となる前記加入者サーバを介して、前記アプリケーションサーバと通信可能に接続されており、
前記アプリケーションサーバから当該基地局の対向となる前記加入者サーバを経由した、前記加入者電話機のオフフックの応答信号を受信し、前記オフフックの応答信号を契機に、課金のために周期的に送出する周期収納信号を前記移動公衆電話機に送出する動作を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
IP網上でIP電話を利用するサービスに加入している加入者の情報を蓄積し、前記加入者が利用する加入者電話機に接続する加入者サーバと、
基地局の料金区域情報を蓄積し、移動体に搭載されている公衆電話機を示す移動公衆電話機からの前記基地局を経由した発呼を接続先電話番号に基づいて前記IP網を介して当該移動公衆電話機の接続先である前記加入者電話機を収容する前記加入者サーバを宛先として送出するアプリケーションサーバと、
前記加入者電話機からのPSTNで使用されている呼制御信号および音声信号を、前記IP網上で使用される信号に変換するIP変換装置と、
前記移動公衆電話機側から着信する呼を制御するための信号として前記IP網上で使用される制御信号を送出する着信専用機能と、
前記移動公衆電話機側からのアナログ音声信号をIPパケットに変換する発信側のIP変換機能と、を備えた通信システムにおける通信方法であって、
前記アプリケーションサーバは、
前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信する制御信号受信ステップと、
前記移動公衆電話機からの発呼であることを示す移動公衆用パラメータと、前記発呼を経由した前記基地局の料金区域情報とを、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する情報追加ステップと、
を含んで実行することを特徴とする通信方法。
【請求項7】
前記基地局の対向となる前記加入者サーバは、
前記着信専用機能が送出する前記制御信号を受信するステップと、
前記着信専用機能からの前記制御信号を受信することで、当該呼が前記移動公衆電話機からの発信であると判定し、受信した前記制御信号を前記アプリケーションサーバに転送するステップとを実行し、
前記アプリケーションサーバは、前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積しており、
前記着信専用機能が送出して前記基地局の対向となる前記加入者サーバを経由した前記制御信号を受信し、
受信した前記制御信号で示される前記移動公衆電話機からの発呼が課金パルス送出要の場合のみ、通話確立後に、課金パルス指示を示す制御信号を送出するステップを実行し、
前記着信専用機能は、
前記アプリケーションサーバから前記課金パルス指示を示す制御信号を直接または間接的に受信した場合に、前記基地局に対して課金のためのアナログ制御信号を示す課金パルスを送出するステップを実行し、
前記基地局は、
前記課金パルスを受信した場合に、課金のための硬貨収納信号を前記移動公衆電話機に送出するステップを実行する、
ことを特徴とする請求項6に記載の通信方法。
【請求項8】
前記アプリケーションサーバは、
前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積しており、前記着信専用機能からの前記制御信号を直接受信することで、当該呼が前記移動公衆電話機からの発信であると判定し、受信した前記制御信号に基づいて、前記移動公衆電話機からの発呼が課金パルス送出要の場合のみ、通話確立後に、課金パルス指示を示す制御信号を送出するステップを実行し、
前記着信専用機能は、
前記アプリケーションサーバから前記課金パルス指示を示す制御信号を受信するステップと、
前記課金パルス指示を示す制御信号を受信したことを契機に、前記基地局に対して課金のためのアナログ制御信号を示す課金パルスを送出するステップと、を実行し、
前記基地局は、
前記課金パルスを受信するステップと、
課金のための硬貨収納信号を前記移動公衆電話機に送出するステップと、を実行する、
ことを特徴とする請求項6に記載の通信方法。
【請求項9】
前記基地局は、
前記IP網上に設けられて前記着信専用機能を有し、
前記基地局の対向となる前記加入者サーバは、
前記基地局が送出する、前記移動公衆電話機側から着信する呼を制御するための信号として前記IP網上で使用される制御信号を受信するステップと、
前記基地局からの前記制御信号を受信することで、当該呼が前記移動公衆電話機からの発信であると判定し、受信した前記制御信号を前記アプリケーションサーバに転送するステップとを実行し、
前記アプリケーションサーバは、
前記基地局が送出して当該基地局の対向となる前記加入者サーバを経由した前記制御信号を受信し、
前記基地局は、
前記アプリケーションサーバから、当該基地局の対向となる前記加入者サーバを経由した、前記加入者電話機のオフフックの応答信号を受信するステップと、
受信した前記応答信号を契機に、課金のために周期的に送出する周期収納信号を前記移動公衆電話機に送出するステップと、を実行する、
ことを特徴とする請求項6に記載の通信方法。
【請求項10】
IP網上でIP電話を利用するサービスに加入している加入者の情報を蓄積し、前記加入者が利用する加入者電話機に接続する加入者サーバと、
移動体に搭載されている公衆電話機を示す移動公衆電話機からの基地局を経由した発呼を接続先電話番号に基づいて前記IP網を介して当該移動公衆電話機の接続先である前記加入者電話機を収容する前記加入者サーバを宛先として送出するアプリケーションサーバと、
前記加入者電話機からのPSTNで使用されている呼制御信号および音声信号を、前記IP網上で使用される信号に変換するIP変換装置と、
前記移動公衆電話機側から着信する呼を制御するための信号として前記IP網上で使用される制御信号を、前記アプリケーションサーバを宛先として送出する着信専用機能と、
前記移動公衆電話機側からのアナログ音声信号をIPパケットに変換する発信側のIP変換機能と、を備えた通信システムにおける前記アプリケーションサーバであって、
前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信し、前記移動公衆電話機からの発呼であることを示す移動公衆用パラメータを、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する第1サーバ機能と、
前記基地局の料金区域情報を蓄積し、前記着信専用機能が送出する前記制御信号を直接または間接的に受信し、前記発呼を経由した前記基地局の料金区域情報を、前記受信信号に対してヘッダまたはパラメータとして追加する第2サーバ機能と、
前記接続先電話番号と予め作成されたテーブルデータとに基づいて課金情報を生成する課金情報生成機能と、
前記生成された課金情報に基づいて通話度数を更新する通話度数管理機能と、
前記基地局毎または基地局事業者毎の課金パルス送出要否データを蓄積し、送出要の場合のみ通話確立後に課金パルス指示を示す制御信号を送出する課金パルス送出機能と、を有することを特徴とするアプリケーションサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−44503(P2012−44503A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184747(P2010−184747)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】