説明

通信機器収納エンクロージャ

【課題】 電源装置と通信機器の組を2組効率良く収納し、エンクロージャの大型化を最小限に抑えた通信機器収納エンクロージャを提供する。
【解決手段】 電源装置2を入力側電源ユニット2aと出力側電源ユニット2bとに2分割して奥行きを短くして上下に配置し、その中間位置に通信ユニット4を配置し、更に電源装置2と通信ユニット4の組を左右に2組配置した。電源装置2は、エンクロージャ内前方に配置して後方に空間を設ける一方、中央に配置した通信ユニット4は、エンクロージャ内後部に配置して前方に空間を設け、通信ユニット4をエンクロージャ1背部から前方へ突設されたレール装置5に組み付けて引出可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気所等に設置してLAN等に接続して情報を外部に送信する通信機器とその電源を収容する通信機器収納エンクロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気所等に設置して電圧情報や波形情報等の変電情報を、LAN等を使用して遠方の管理センター等に送信する通信機器及びその電源装置を収納した通信機器収納エンクロージャは、例えば特許文献1に開示されたエンクロージャに収納されていた。
この特許文献1のエンクロージャは、開放可能な前面を有し、内部に通信機器とこの通信機器に電力を供給する電源装置とが独立したユニットに収納されて配置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1244192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のエンクロージャは、エンクロージャに通信機器とその電源装置が独立したユニットに収納されて配置されているため、外来ノイズに対する対策がし易い利点があった。
しかしながら、電源装置と通信機器は同じ台座に取り付けられたため、通信機器のみメンテナンスする場合でも電源装置を合わせて取り出さなければならなかった。また、一組しか収納されていないため、故障した場合は情報の送出がストップするし、メンテナンスする場合も電源をオフして通信機器の動作を停止させる必要があり、この場合も情報がストップしていた。
【0005】
この情報がストップする問題は、通信機器と電源装置の組を2組設ければ解決することができる。しかし、その場合は単純に2組収納するスペースを備えれば良い訳ではなく、個々の機器から発せられる熱から機器を保護するための放熱空間も確保しなければならない。そのため、エンクロージャが従来のものに比べて極端に大きくなってしまい、従来の通信機器収納エンクロージャの設置空間を利用して設置するのが難しくなり、設置場所が限定されてしまう。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、電源装置と通信機器の組を2組効率良く収納し、エンクロージャの大型化を最小限に抑えた通信機器収納エンクロージャを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、電気所等の各種システムを遠隔監視するためにシステムに設けた各種センサからの情報を通信ネットワーク上に送出する通信機器と、当該通信機器の電源装置とを収納した通信機器収納エンクロージャであって、前記電源装置を、電圧変換手段及びノイズ除去手段を備えた入力側電源ユニットと、電力の出力端子及び電源スイッチを備えた出力側電源ユニットとに2分割して上下に配置すると共に、その中間に前記通信機器を配置し、更に前記電源装置と前記通信機器の組を左右に2組設置し、一方の組が故障しても通信を継続可能としたことを特徴とする。
この構成によれば、電源を入力系と出力系とで分割して上下に配置することで、双方のの奥行きを小さくできる。その結果、エンクロージャ内の電源装置後方或いは前方に空間を確保することができ、放熱空間を予め寸法に加えてエンクロージャを作製しなくても放熱空間の確保が可能となり、エンクロージャの小型化に貢献できる。そして、電源及び通信系統を2系統設けることで、一方が故障或いは停止しても通信を継続させることができるし、メンテナンスの際にも通信を停止させないで済む。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、上下に分割配置した前記電源装置は、エンクロージャ内前方に配置して後方に空間を設ける一方、中央に配置した前記通信機器は、エンクロージャ内後方に配置して前方及び上下方向に空間を設けて成り、前記通信機器は、エンクロージャ背部から前方へ突設されたレール装置に前後動可能に装着され、引出可能であることを特徴とする。
この構成によれば、通信機器上下には放熱空間が形成されるため、電源装置と通信機器との上下方向の距離を充分設けなくても、各機器を熱から保護することができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、出力側電源装置の下部に配線を保持する配線保持手段を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、電源装置から通信機器に接続される電力線を効果的に保持させることができ、通信機器を引き出す際に電力線が邪魔にならない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源を入力系と出力系とで分割して上下に配置することで、電源装置の奥行きを小さくできる。その結果、エンクロージャ内の電源装置後方或いは前方に空間を確保することができ、放熱空間を予め寸法に加えてエンクロージャを作製しなくても放熱空間の確保が可能となり、エンクロージャの小型化に貢献できる。そして、電源及び通信系統を2系統設けることで、一方が故障或いは停止しても通信を継続させることができるし、メンテナンスの際にも通信を停止させないで済む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る通信機器収納エンクロージャの一例を示す正面説明図である。
【図2】図1のA−B線断面説明図、及びC−D線断面説明図である。
【図3】図1のE−F線断面説明図である。
【図4】レール装置を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図5】通信機器を引き出した状態のレール装置を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図6】通信機器を引き出して回動した状態を示すレール装置の側面説明図である。
【図7】エンクロージャ内の電源線、信号線の配線状態を示し、(a)は正面説明図、(b)は側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る通信機器収納エンクロージャの正面説明図であり、1はエンクロージャ、2aは入力側電源ユニット、2bは出力側電源ユニット、4は通信機器としての通信ユニット、5は通信ユニット4を保持すると共にその引き出しを案内するレール装置である。何れのユニットも金属製の箱体内に回路や機器が収納されて構成されている。
そして、入力側電源ユニット2aと出力側電源ユニット2bとで通信ユニット4へ電源を供給する1つの電源装置2を構成し、図1に示すようにエンクロージャ1内の左右に電源装置2と通信ユニット4の組が一対(2系統)組み込まれている。尚、Mは中心線を示している。
【0013】
エンクロージャ1は四角形の箱体であり、前面には図示しない扉が設けられて開放可能に構成されている。上下左右の面及び背面は閉塞され、左右側面及び扉には放熱の為の複数のスリット状開口部が形成され、左右側面又は背板には電源線及び信号線入出のための開口部が設けられている(図示せず)。
また、エンクロージャ1は、入力側電源ユニット2a、出力側電源ユニット2b、通信ユニット4の個々の高さの合計より僅かに大きな高さを有し、電源装置2あるいは通信ユニット4を左右に並べて配置できる幅を備えて形成されている。
【0014】
図2、図3は通信機器収納エンクロージャの断面説明図であり、図2は中心線Mより左が図1に示すA−B線断面、右がC−D線断面を示し、図3はE−F線断面を示している。この図2、図3に示すように、入力側電源ユニット2a、出力側電源ユニット2b、及び通信ユニット4は、何れもエンクロージャ1の奥行きに対して充分短い奥行きで形成され、入力側電源ユニット2a及び出力側電源ユニット2bは、背部に空間を有するよう前方に配置され、通信ユニット4は前方に空間を有するよう後方に配置されている。
また、入力側電源ユニット2aは、エンクロージャ1内の最下部に設置される一方、出力側電源ユニット2bは最上部に設置され、通信ユニット4はその中間に配置されている。
【0015】
以下、各ユニットを具体的に説明する。入力側電源ユニット2aは、DC/DCコンバータやノイズフィルタが組み込まれ、エンクロージャ1の底板上に取り付けられた略コ字状の下側保持枠12に収容するように配置されている。このユニットは、前面左右端部に設けられたローレットビス13で下側保持枠12の所定部位にねじ止めして固定される。
【0016】
出力側電源ユニット2bは、出力端子10や電源スイッチ11が前面に組み込まれ、エンクロージャ1の天板に取り付けられた略コ字状の上側保持枠7に収容するように配置されている。このユニットの固定は、前面左右端部に設けられたローレットビス8で上側保持枠7の所定部位にねじ止めして固定される。また、出力側電源ユニット2bの下面には電源線を保持するためのリング状の電線保持片14が複数取り付けられている。
こうして、電源装置2を2分割して配置することで、双方のユニットの奥行きを短くできるため、その背部である通信ユニット4の上下に図3に示すように空間S1及び空間S2を設けることができる。この空間は、通信ユニット4の上下方向に必要な放熱空間として活用できる。
【0017】
通信ユニット4は、スイッチングハブ等が組み込まれ、外部のLANに接続するためのコネクタ16、電源線を接続する電源端子17が前面に設けられている。また、通信ユニット4の周囲には、レール装置5の一部を成すスライド枠体22が装着されている。
【0018】
以下、この通信ユニット4を引き出すためのレール装置5を説明する。図4及び図5はレール装置5を示し、図4は通信ユニットを収納した状態、図5は通信ユニットを引き出した状態を示している。尚、(a)は側面図、(b)は平面図である。
レール装置5は、エンクロージャ1の背板にねじ止め等で固着されたレール体21と、通信ユニット4に装着され、レール体21に係合して前後に摺動するスライド枠体22とを有している。
【0019】
レール体21は、帯状金属片を折り曲げて形成され、全体がコ字状に形成されている。折り曲げた左右は、前方に向けて平行に延設されたレール片21aを形成し、中央部はエンクロージャ1の背板に連結して固定するための固定片21bを形成している。このレール片21aは、通信ユニット4の幅より僅かに広い間隔で配置され、その略中央にはスライド枠体22を案内するための案内溝23が前後に亘り穿設されている。
【0020】
レール片21aの先端には、収納したスライド枠体22の先端部と連結するための連結片24が設けられ、ローレットビス25を螺入するねじ孔が形成されている。
案内溝23は直線で形成され、その先端下部にはスライド枠体22を前傾させるための半円状切り欠き26が形成されている。図6の側面図は、こうして通信ユニット4を傾倒させた状態を示している。
【0021】
スライド枠体22は、レール体21と同様に帯状金属片を折り曲げて形成され、全体がコ字状に形成されている。折り曲げた左右は、前方に向けて平行に延設されたスライド片22aを形成し、中央部は通信ユニット4に連結して固定する固定片22bを形成している。このスライド枠体22は、左右のスライド片22aの間隔がレール片21aの間隔より僅かに狭く形成されており、レール体21の内側にスライド枠体22が重なるように配置される。
このスライド枠体22及びレール体21は、例えば汎用のDINシャーシを使用して作製することができる。
【0022】
また、スライド片22aの基部には、案内溝23に係合する突起体30が左右に突設され、スライド枠体22の案内溝23に沿った摺動を可能としているし、スライド片22aの先端には、左右の外側方向に折り曲げ形成された操作片28を備え、レール体21に連結するためのローレットビス25が装着されている。
【0023】
更に、スライド片22aの基部下辺、及び先端部上辺には、レール片21aに係合してスライド枠体22の上下方向の傾倒を防止するための舌片29a,29bが突設され、後方に設けられた舌片29aがレール片21aに係合することで、上記図6に示す通信ユニット4を前傾させた状態が保持される。
そして、一方のスライド片22aの先端には、信号線を保持するための透孔30aが形成され、引き出す際の摘みとして使用される把持片30が設けられている。
【0024】
図7は、このように構成された通信機器エンクロージャ内の前面側の配線状態を示している。(a)は正面説明図、(b)は側面説明図であり、この図7に示すように、電源装置2と通信ユニット4との接続は、出力側電源ユニット2aの前面に設けられている出力端子10と、通信ユニット4の前面側に設けられている電源端子17とを電源線L1で接続して実施される。この電源線L1は、途中電線保持片14に挿通し保持される。
また、通信ユニット4から出力される信号を外部のLAN等に送出する信号線としてのケーブルL2は、通信ユニット4前面に設けられたコネクタ16から把持片30の透孔30aに挿通して保持された後、エンクロージャ1の側板等に設けられた配線挿通孔から外部に送出される。
【0025】
こうして収容された入力側電源ユニット2a、出力側電源ユニット2b、及び通信ユニット4は、収納状態でローレットビス8,13,25によりエンクロージャ1内に固定される。
逆に、ローレットビス8,13を外せば、入力側電源ユニット2a、出力側電源ユニット2bを取り出すことができる。また、ローレットビス25によるレール体21とスライド枠体22の連結を外せば、通信ユニット4を引き出すことができる。スライド枠体22を引き出せば、図3或いは図7に示すように、レール装置5を利用して通信ユニット4を奥部の収容位置から想像線で示す前方の位置まで引き出すことができる。
そして、引き出した状態で図6に示すように、前傾姿勢させて保持することができるので、結線作業等がし易い。更にこの状態から引き出せば、スライド枠体22を通信ユニット4と共にレール体21から完全に分離しエンクロージャ1から取り出すことができる。
【0026】
このように、奥行きを小さくした電源装置2(入力側電源ユニット2a及び出力側電源ユニット2b)を前方に配置すれば電源装置2後方に空間を確保することができ、放熱空間を予め寸法に加えてエンクロージャを作製しなくても通信ユニット4周囲の放熱空間の確保が可能となり、エンクロージャの小型化に貢献できる。そして、電源及び通信系統を2系統設けることで、一方が故障或いは停止しても通信を継続させることができるし、メンテナンスの際にも通信を停止させないで済む。
また、出力側電源ユニット2bの前面側下面に電線を保持するリング状の電線保持片を設けることで、電源装置2から通信ユニット4に接続される電源線L1を効果的に保持させることができ、通信ユニット4を引き出す際に電力線が邪魔にならないし、電源装置2と通信ユニット4とを独立して取り出すことができるので、メンテナンスし易い。
【0027】
尚、上記実施形態では、入力側電源ユニット2aを下に配置し、出力側電源ユニット2bを上に配置しているが逆でも良い。また、入力側電源ユニット2a及び出力側電源ユニット2bを前方に配置し、通信ユニット4を後方に配置しているが、これも逆にしても良く、通信ユニット4に取り付けたレール装置5を電源装置2に取り付ければ、後方に配置しても引き続き容易に取り外すことができる。
【符号の説明】
【0028】
1・・エンクロージャ、2・・電源装置、2a・・入力側電源ユニット、2b・・出力側電源ユニット、4・・通信ユニット(通信機器)、5・・レール装置、14・・電線保持片(配線保持手段)、21・・レール体、21a・・レール片、21b・・固定片、22・・スライド枠体、22a・・スライド片、22b・・固定片、23・・案内溝、28・・操作片、30・・把持片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気所等の各種システムを遠隔監視するためにシステムに設けた各種センサからの情報を通信ネットワーク上に送出する通信機器と、当該通信機器の電源装置とを収納した通信機器収納エンクロージャであって、
前記電源装置を、電圧変換手段及びノイズ除去手段を備えた入力側電源ユニットと、電力の出力端子及び電源スイッチを備えた出力側電源ユニットとに2分割して上下に配置すると共に、その中間に前記通信機器を配置し、
更に前記電源装置と前記通信機器の組を左右に2組設置し、一方の組が故障しても通信を継続可能としたことを特徴とする通信機器収納エンクロージャ。
【請求項2】
上下に分割配置した前記電源装置は、エンクロージャ内前方に配置して後方に空間を設ける一方、中央に配置した前記通信機器は、エンクロージャ内後方に配置して前方及び上下方向に空間を設けて成り、
前記通信機器は、エンクロージャ背部から前方へ突設されたレール装置に前後動可能に装着され、引出可能であることを特徴とする請求項1記載の通信機器収納エンクロージャ。
【請求項3】
出力側電源ユニットの下部に配線を保持する配線保持手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の通信機器収納エンクロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−217271(P2011−217271A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85359(P2010−85359)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】