説明

通信環境を模擬する模擬装置

【課題】動作に、ビーコンやLANによる設定、GPS情報、無線放送からの情報等を必要とする無線機の動作試験を行なえる電波伝搬環境を再現する模擬装置が無い。
【解決手段】複数台の無線機を接続可能とし、無線機間の電波伝搬環境を模擬する模擬装置において、模擬装置に、複数台の無線機間の伝搬特性を再現する仮想伝搬路と、接続される無線機の模擬動作に使用される仮想的に作成された情報を含む動作用信号を生成する信号生成回路とを設け、動作用信号を用いて接続した無線機の動作試験を行なえるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機の動作試験を行なう装置に関する。詳しくは、仮想的に伝搬路を形成し、形成した伝搬路の伝搬特性を変更可能とした伝搬路を模擬する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、無線機の開発を取巻く環境が一段と厳しくなっている。一例としては、無線機の開発段階でも出力電力や使用周波数に制限が加わっている。また、別の一例では、電波を送出し通信試験を行なうこと自体が困難に成っている。
【0003】
このような課題を解決する為、様々な試みが成されており、また技術開発も進んでいる。
関連する技術の一例としては、情報処理装置と減衰器を使用し、無線機間の電波伝搬路を仮想的に再現する技術が特許文献1に記載してある。特許文献1には、電波伝搬路を仮想的に再現する以外にも、ドップラー周波数を発生させる回路を設け、フェージング等の電波伝搬路の時間変化を再現可能とする技術が記載されている。
また、特許文献2には、複数台の無線機間の通信を再現する為、伝送路をマトリックス形状に構成し、仮想伝搬路を再現する技術が記載されている。更に、情報処理装置によってシナリオを作成し、作成したシナリオに関する情報を、無線機の操作者に提示可能とできる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−162813号公報
【特許文献2】特開2003-60591号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1並びに特許文献2記載の模擬装置は、実際に使用されている一部の無線機の動作を模擬することについて全く考慮されていない。
【0006】
前述の一部の無線機としては、動作に何らかのビーコンを要求する無線機や、設定にLAN接続を用いて情報入力を求める無線機、動作にGPSや他の無線放送から信号を受信することを要する無線機等が挙げられるが、これらの無線機の動作を模擬することについて、特許文献1ないし2は全く考慮していない。このため、特許文献1ないし2に記載された模擬装置では、一部の無線機の動作試験が行なえない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、多くの無線機の動作試験を行なえる模擬装置を提供することにある
本発明の別の目的は、無線機に仮想的な動作に必要である動作用信号を提供可能とする模擬装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の模擬装置は、複数台の無線機を接続し、無線機間の電波伝搬環境を模擬する模擬装置において、複数台の無線機間の伝搬特性を再現する仮想伝搬路と、接続される無線機の動作に使用し仮想的に作成した情報を含む動作用信号を生成する信号生成回路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、動作用信号を要する無線機の動作試験を行なえる模擬装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の一形態の模擬装置を概略的に示す構成図である。
【図2】仮想伝搬路の内部構造を例示する概略図である。
【図3】模擬装置を機能的に示す機能ブロック図である。
【図4】実施の一形態の模擬装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】第1の適応例を機能的に示す機能ブロック図である。
【図6】第2の適応例を機能的に示す機能ブロック図である。
【図7】第3の適応例を機能的に示す機能ブロック図である。
【図8】第4の適応例を機能的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の一形態を図1ないし図8に基づいて説明する。本実施の一形態の説明に用いる無線機900は、無線機単体(アンテナや電源を含む)のみで通信が行なえず、何らかの外部からの情報を必要とするか、無線機の付加機能の動作に何らかの外部からの情報を必要とする無線機である。
【0012】
図1は、実施の一形態の模擬装置1を概略的に示す構成図である。本実施の一形態の模擬装置1は、各種情報処理を行う情報処理装置10と、無線機間の伝搬環境を再現する仮想伝搬路20と信号生成回路30とから構成されている。
【0013】
情報処理装置10は、一般的なコンピュータであって、内部に演算処理を行う制御部を始め、ROM、RAM、記憶装置、入力部、出力部、ネットワークインタフェース等を有し、また表示装置や入力デバイス等が接続されている。尚、情報処理装置10は、汎用の情報処理装置を用いても良いし、専用の情報処理装置を用いても良い。後述する機能を備えることが可能であれば、特に限定は無い。
【0014】
仮想伝搬路20は、情報処理装置10からの指示により、無線機900間の伝搬環境(伝搬特性等)を模擬する。仮想伝搬路20には、複数の無線機900が接続され、一台の無線機900から送信される信号を、別の無線機900に伝達(伝搬)する。詳しくは、接続する無線機900と別の接続する無線機900との両方のアンテナをRF端子から外す。両方の無線機900のRF端子と仮想伝搬路20とをそれぞれ同軸ケーブルを用いて接続する。この様に接続することで、無線機900と別の無線機900との間を仮想的な伝搬環境で接続したこととする。また、仮想伝搬路20は、情報処理装置10からの指示により、仮想伝搬路の伝搬特性を変更可能とする。詳しくは、図2を用いて後述する。
【0015】
信号生成回路30は、情報処理装置10からの指示により、無線機の動作に必要である信号を生成し、無線機900に送信する。また、無線機900から送信される信号を受信し、情報処理装置10に送信する。
【0016】
図2は、仮想伝搬路20の内部構造を例示する概略図である。図2は、7台の無線機を接続可能とする仮想伝搬路20である。尚、仮想伝搬路20は、特に7台に限定することは無い。
【0017】
仮想伝搬路20は、端部に配置される無線機900と接続する複数のコネクタ201と、コネクタ201から送受信する無線機900からの電気信号を他のコネクタ201に向けて分配する複数の分配器202と、分配器202と別の分配器202との間に設けられ減衰器制御信号によって減衰量を加減できる複数の減衰器(アッティネータ)203とから構成されている。分配器202は、減衰器203を介して全ての分配器202と接続しており、マトリックス形状を成している。減衰器制御信号は、情報処理装置10が送信する情報を用いて、減衰器203の減衰量を調節する。
【0018】
図3は、模擬装置1を機能的に示す機能ブロック図である。
情報処理装置10は、プログラムにより実現される複数の機能を有しており、少なくとも伝搬減衰算出機能110と信号指示機能120とを有する。
【0019】
伝搬減衰算出機能110は、情報処理装置10の入力部から入力されるデータや他のプログラムで算出されるデータ、記憶装置に記録されているデータ等から、仮想伝搬路の減衰情報を算出する。
【0020】
仮想伝搬路の減衰情報は、仮想伝搬路20に送信され、無線機900間の仮想伝搬路の形成に使用される。
【0021】
信号指示機能120は、無線機の動作を制御する信号又は無線機の付加機能の動作を制御する信号を生成する信号生成回路に前記信号の生成を指示する指示情報を作成し送信する機能である。指示情報とは、例えば、GPS電波、GPS信号、位置情報、同期信号、時刻情報等である。
【0022】
情報処理装置10には、伝搬減衰算出機能110と信号指示機能120以外にも必要に応じて様々な機能や手段が設けられ、仮想伝搬路の形成や無線機の動作に要する信号などの生成に利用される。
【0023】
仮想伝搬路20には、少なくとも伝搬減衰模擬機能210、減衰器制御機能220が設けられている。伝搬減衰模擬機能210は、情報処理装置10から送信される仮想伝搬路の減衰情報やフェージングの情報を受信し、使用周波数帯域や電波伝搬路を形成するコネクタ201、分配器202の減衰等に基づき、減衰器203の減衰量を模擬的に演算する。減衰器制御機能220は、演算結果に基づいて、減衰器制御信号を使用し、減衰器203の減衰特性を調整する。即ち、伝搬減衰模擬機能210は、減衰器制御機能220を用いて減衰器203を調整し、仮想伝搬路の減衰量を調整する。
【0024】
信号生成回路30には、少なくとも信号送信機能310が設けられている。
【0025】
信号送信機能310は、情報処理装置10から送信される各種指示情報を受け、指示情報を無線機900が読取れる形式に変換する役割を受け持つ。即ち、情報処理装置10から指示された信号を無線機900に送信する。
【0026】
このような構成において、実施の一形態の模擬装置1は、仮想伝搬路を構築するとともに、無線機の動作に必要である信号を供給可能とできる。
【0027】
次に、本発明の実施の一形態の模擬装置1の動作について説明する。
図4は、実施の一形態の模擬装置1の動作を示すフローチャートである。模擬装置1の動作説明は、図4を用いて行なう。また接続される無線機900の台数は3台とし、各無線機は900A〜900Cで表すこととする。
無線機の試験は、無線機間が数キロメートルごとに分散して配置されたこととして行なう。
【0028】
使用される無線機900A〜900Cは、通信相手の無線機との距離によって送信電波強度を変更する機能を有しており、更に、通信相手の無線機との距離は、無線機900A〜900Cが有する情報入力端子から入力可能であるものとする。尚、情報入力端子は、無線機ごとに備わっているものとして説明するが、実際には、RF端子を利用したり、無線機の基盤のテスト端子を利用したりしても良い。
【0029】
無線機の試験を行なう者は、情報処理装置10の入力デバイスを用いて、情報処理装置10に無線機900A〜900Cの位置情報を入力する(ステップS401)。尚、位置情報は、3次元的に、即ち、X.Y.Z軸で表しても良いし、緯度、経度、高度で表してもよい。
【0030】
情報処理装置10の制御部は、プログラムに従い、入力された無線機900A〜900Cの位置情報を用いて、無線機間の距離を算出する(ステップS402)。
情報処理装置10の制御部は、伝搬減衰算出機能110を用いて、算出した距離の情報から伝搬減衰量を算出する(ステップS403)。
情報処理装置10の制御部は、算出した伝搬減衰量を含む情報を減衰情報として仮想伝搬路20に送信する(ステップS404)。
情報処理装置10の制御部は、信号指示機能120を用いて、無線機900Aないし900Cに提供する各々の仮想的な位置の情報である位置情報を作成する(ステップS405)。
情報処理装置10の制御部は、作成した位置情報を指示情報として、信号生成回路30に送信する(ステップS406)。
【0031】
仮想伝送路20は、情報処理装置10から送信された減衰情報を受信し、伝搬減衰模擬機能210と減衰器制御機能220を用いて、無線機900Aないし無線機900C間の減衰器203の減衰特性を個別に変化させる(ステップS407)。
尚、個別に減衰器203の減衰特性を変化させることで、無線機900Aないし無線機900C間の仮想伝搬路の減衰特性が変化する。即ち、情報処理装置10に入力された無線機900A〜900Cの位置関係から、900Aないし900C間の仮想伝搬路が形成されたことになる。
【0032】
信号生成回路30は、情報処理装置10から送信された指示情報を受信し、信号送信機能310を用いて、無線機が判別できる形式に信号を生成し、無線機900A〜無線機900Cに生成した動作用信号を送信する(ステップS408)。
【0033】
上記の動作により、無線機900A〜900Cは、情報入力端子から信号生成回路が送信した信号を受信し、信号から送信相手の位置情報又は距離情報を取得しすることで、通信相手との距離に基づき送信電波強度を変更可能となる。
【0034】
上記一連の動作により、実施の一形態の模擬装置1は、無線機900Aないし900C間の仮想伝搬路を形成できる。同時に、無線機900A〜900Cに対して位置情報(距離情報)を提供(送信)できる。
即ち、無線機の動作に必要である信号(位置情報、距離情報)を供給可能とする模擬装置を提供できる。
【0035】
次に、実施の一形態の模擬装置1の動作を明瞭にする為、複数の適応例を挙げ、その動作を説明する。
【0036】
図5は、第1の適応例を機能的に示す機能ブロック図である。
第1の適応例は、GPS電波を受信し、自らの位置を特定し、通信相手に対し、自らの位置情報を通知する機能を有する無線機の動作試験を行なう場合の模擬装置1を示し説明する。
【0037】
第1の適応例の模擬装置1は、少なくとも、情報処理装置10には、伝搬減衰算出機能110と信号指示機能120とを有し、仮想伝搬路20には、伝搬減衰模擬機能210、減衰器制御機能220を有し、信号生成回路30には、信号送信機能310とGPS電波受信機能320とを有する。
【0038】
GPS電波受信機能320は、GPS用アンテナとGPS電波処理装置(GPSモジュール)を備え、GPS衛星からのGPS電波を受信し、時刻情報、位置情報等をGPS情報として取得する。ここで、GPS情報とは、GPS電波処理装置がGPS電波を処理することによって得られる情報を指す。
尚、複数の衛星からのGPS電波を受信し、位置情報等を取得することは説明するまでも無いため、省略する。
【0039】
信号送信機能310は、情報処理装置10から送信される指示情報(仮想空間上の無線機の位置の情報)を受信し、GPS電波受信機能320から取得したGPS情報、即ち、現実の位置情報を上書きして模擬GPS情報とし、無線機900に読取れる形式に変換し、模擬GPS情報を無線機900に送信する。
【0040】
このような構成において、第1の適応例の模擬装置1は、以下の様に動作する。
試験環境は、無線機間が数キロメートルごとに分散して配置されており、使用する無線機900A〜900Cには、各無線機が備えたGPS電波処理装置の出力側(2次側)から、GPS情報に変えて模擬GPS情報が入力され、当該模擬GPS情報に基づいて、各無線機が位置情報等を認識するものとする。
【0041】
無線機の試験を行なう者は、情報処理装置10の入力デバイスを用いて、情報処理装置10に無線機900A〜900Cの位置情報を入力する(ステップS401)。
【0042】
情報処理装置10の制御部は、入力された無線機900A〜900Cの位置情報を用いて、無線機間の距離を算出する(ステップS402)。
情報処理装置10の制御部は、算出した距離の情報から伝搬減衰量を算出する(ステップS403)。
情報処理装置10の制御部は、減衰情報を仮想伝搬路20に送信する(ステップS404)。
情報処理装置10の制御部は、無線機900Aないし900Cに提供する各々の位置情報を作成する(ステップS405)。
情報処理装置10の制御部は、作成した位置情報を指示情報として、信号生成回路30に送信する(ステップS406)。
仮想伝送路20は、減衰情報を受信し、無線機900Aないし無線機900C間の減衰器203の減衰特性を個別に変化させ、仮想伝搬路を形成する(ステップS407)。
【0043】
信号生成回路30は、情報処理装置10から送信された指示情報を受信し、GPS電波受信機能320と信号送信機能310を用いて、現実の位置情報を含むGPS情報を、指示情報に含まれる位置情報を含む模擬GPS情報に上書きし、生成し、無線機900A〜無線機900Cに生成した模擬GPS情報を送信する(ステップS408)。
【0044】
上記の動作により、無線機900A〜900Cは、模擬GPS情報を受信し、模擬GPS情報から位置情報を取得し、通信相手に対して自らの位置情報を通知可能となる。
【0045】
上記の一連の動作により、実施の一形態の模擬装置1は、無線機900Aないし900C間の仮想伝搬路を形成できる。同時に、無線機900A〜900Cに対して仮想上の位置の情報を含む模擬GPS情報を送信できる。
即ち、無線機の動作に必要である情報(模擬GPS情報)を供給可能とする模擬装置を提供できる。
【0046】
次に、第2の適応例を示す。第2の適応例は、GPS電波を受信し、同期情報(時刻情報)を抽出し、通信に利用する機能を有する無線機の動作試験を行なう場合の模擬装置1を示し説明する。
【0047】
図6は、第2の適応例を機能的に示す機能ブロック図である。
第2の適応例の模擬装置1は、少なくとも、情報処理装置10には、伝搬減衰算出機能110と信号指示機能120とを有し、仮想伝搬路20には、伝搬減衰模擬機能210、減衰器制御機能220を有し、信号生成回路30には、信号送信機能310とGPS電波受信機能320とを有する。
信号送信機能310は、情報処理装置10から送信される指示情報(同期用の情報、時刻の情報)を受信し、GPS電波受信機能320から取得した現実の時刻情報及び同期情報を上書きし、無線機900に読取れる形式に変換し、同期情報及び時刻情報を無線機900に送信する。
【0048】
このような構成において、第2の適応例の模擬装置1は、以下の様に動作する。
尚、試験環境は、無線機間がTDMA(Time Division Multiple Access)方式を使用して通信を行ない、複数の無線機が、マスターの無線機とスレーブの無線機とで無線ネットワークを構築し、GPS衛星を主局とする従属同期方式を用いて無線機間の同期を取り通信を行ない、更に、無線機間が数キロメートルごとに分散して配置されたものとする。
【0049】
無線機の試験を行なう者は、情報処理装置10の入力デバイスを用いて、情報処理装置10に無線機900A〜900Cの位置情報と同期情報及び時刻情報を入力する(ステップS401)。
【0050】
情報処理装置10の制御部は、入力された位置情報を用いて、無線機間の距離を算出する(ステップS402)。情報処理装置10の制御部は、算出した距離の情報から伝搬減衰量を算出する(ステップS403)。情報処理装置10の制御部は、減衰情報を仮想伝搬路20に送信する(ステップS404)。情報処理装置10の制御部は、無線機900Aないし900Cに提供する同期情報及び時刻情報を作成する(ステップS405)。情報処理装置10の制御部は、作成した同期情報及び時刻情報を指示情報として、信号生成回路30に送信する(ステップS406)。
【0051】
仮想伝送路20は、減衰情報を受信し、無線機900Aないし無線機900C間の減衰器203の減衰特性を個別に変化させ、仮想伝搬路を形成する(ステップS407)。
【0052】
信号生成回路30は、指示情報を受信し、GPS電波受信機能320と信号送信機能310を用いて、指示情報に含まれる同期情報及び時刻情報を模擬GPS情報として生成し、無線機900A〜無線機900Cに生成した模擬GPS情報を送信する(ステップS408)。
【0053】
上記の動作により、無線機900A〜900Cは、模擬GPS情報を受信し、模擬GPS情報から同期情報及び時刻情報を取得し、通信相手と同期できる。
【0054】
上記の一連の動作により、実施の一形態の模擬装置1は、無線機900Aないし900C間の仮想伝搬路を形成できる。同時に、無線機900A〜900Cに対して仮想上の同期情報及び時刻情報を含む模擬GPS情報を送信できる。
【0055】
即ち、無線機の動作に必要である情報(模擬GPS情報)を供給可能とする模擬装置を提供できる。
【0056】
次に、第3の適応例を示す。第3の適応例は、GPS電波を受信し、位置情報及び同期情報を抽出し、通信に利用する機能を有する無線機の動作試験を行なう場合の模擬装置1を示し説明する。
【0057】
図7は、第3の適応例を機能的に示す機能ブロック図である。
第3の適応例の模擬装置1は、少なくとも、情報処理装置10には、伝搬減衰算出機能110と信号指示機能120とを有し、仮想伝搬路20には、伝搬減衰模擬機能210、減衰器制御機能220を有し、信号生成回路30には、信号送信機能310とGPS電波信号作成機能330とを有する。
GPS電波信号作成機能330は、GPS衛星から送信されるGPS電波を仮想的に作成する機能である。
信号送信機能310は、情報処理装置10から送信される指示情報(無線機の位置の情報、同期情報に利用する時刻の情報)を受信し、GPS電波信号作成機能330が作成する仮想的なGPS電波であるGPS模擬情報を生成し、無線機900に送信する。
【0058】
このような構成において、第3の適応例の模擬装置1は、以下の様に動作する。
尚、試験環境は、無線機間がTDMA(Time Division Multiple Access)方式を使用して通信を行ない、更に、無線機間が数キロメートルごとに分散して配置されたものとする。
【0059】
無線機の試験を行なう者は、情報処理装置10の入力デバイスを用いて、情報処理装置10に無線機900A〜900Cの位置情報と時刻情報(同期情報)を入力する(ステップS401)。
【0060】
情報処理装置10の制御部は、入力された位置情報を用いて、無線機間の距離を算出する(ステップS402)。情報処理装置10の制御部は、算出した距離の情報から伝搬減衰量を算出する(ステップS403)。情報処理装置10の制御部は、減衰情報を仮想伝搬路20に送信する(ステップS404)。情報処理装置10の制御部は、無線機900Aないし900Cに提供する時刻情報を作成する(ステップS405)。情報処理装置10の制御部は、作成した時刻情報を指示情報として、信号生成回路30に送信する(ステップS406)。
【0061】
仮想伝送路20は、減衰情報を受信し、無線機900Aないし無線機900C間の減衰器203の減衰特性を個別に変化させ、仮想伝搬路を形成する(ステップS407)。
【0062】
信号生成回路30は、指示情報を受信し、GPS電波信号作成機能330と信号送信機能310を用いて、指示情報に含まれる時刻情報等とをGPS模擬情報として生成し、無線機900A〜無線機900Cに生成したGPS模擬情報を送信する(ステップS408)。
【0063】
上記の動作により、無線機900A〜900Cは、GPS電波を受信した場合と同様に動作でき、GPS模擬情報から時刻情報等を取得し、通信を可能とする。
【0064】
上記の一連の動作により、実施の一形態の模擬装置1は、無線機900Aないし900C間の仮想伝搬路を形成できる。同時に、無線機900A〜900Cに対して仮想上の位置情報及び同期情報を含むGPS模擬情報を送信できる。
【0065】
即ち、無線機の動作に必要であるGPS模擬情報(GPS電波の情報)を供給可能とする模擬装置を提供できる。
尚、GPS電波に変え、GPS情報を提供しても良い。このときは、GPS電波信号作成機能330がGPS情報を作成し、作成したGPS情報を各無線機のGPS電波処理装置の出力側から入力すれば良い。
【0066】
次に、第4の適応例を示す。第4の適応例は、GPS電波を受信し、位置情報、同期情報、時刻情報を抽出し、通信に利用する機能を有する無線機の動作試験を行なうと共に、仮想的な時間軸上で無線機の時間を変化させる場合の模擬装置1を示し説明する。
【0067】
図8は、第4の適応例を機能的に示す機能ブロック図である。
第4の適応例の模擬装置1は、少なくとも、情報処理装置10には、伝搬減衰算出機能110と信号指示機能120とシナリオ作成機能130を有し、仮想伝搬路20には、伝搬減衰模擬機能210、減衰器制御機能220を有し、信号生成回路30には、信号送信機能310とGPS電波信号作成機能330とを有する。
シナリオ作成機能130は、シナリオを作成し、伝搬減衰算出機能110や信号指示機能120等に各種情報を伝達する。即ち、移動する無線機や特定の気象条件やフェージングによる伝搬環境の変化などを再現できる。更に、時間軸を短縮もできる。
【0068】
このような構成において、第4の適応例の模擬装置1は、以下の様に動作する。
尚、試験環境は、無線機間がTDMA方式を使用して通信を行ない、更に、無線機はシナリオで設定された位置に配置され、時間変化と共に移動するものとする。
【0069】
無線機の試験を行なう者は、情報処理装置10の入力デバイスを用いて、情報処理装置10にシナリオを入力する(ステップS401)。
【0070】
情報処理装置10の制御部は、入力されたシナリオから各々の無線機の位置情報と同期情報と時刻情報を取得し、無線機間の距離を算出する(ステップS402)。情報処理装置10の制御部は、算出した距離の情報から伝搬減衰量を算出する(ステップS403)。情報処理装置10の制御部は、減衰情報を仮想伝搬路20に送信する(ステップS404)。情報処理装置10の制御部は、無線機900Aないし900Cに提供する位置情報と同期情報、時刻情報を作成する(ステップS405)。情報処理装置10の制御部は、作成した情報を指示情報として、信号生成回路30に送信する(ステップS406)。
【0071】
仮想伝送路20は、減衰情報を受信し、無線機900Aないし無線機900C間の減衰器203の減衰特性を個別に変化させ、仮想伝搬路を形成する(ステップS407)。
【0072】
信号生成回路30は、指示情報を受信し、GPS電波信号作成機能330と信号送信機能310を用いて、指示情報に含まれる位置情報と同期情報と時刻情報とをGPS模擬情報として作成し、無線機900A〜無線機900Cに作成したGPS模擬情報を送信する(ステップS408)。
【0073】
上記の動作により、無線機900A〜900Cは、GPS模擬情報を受信し、位置情報、同期情報、時刻情報を取得し、通信を可能とする。
【0074】
上記の一連の動作により、実施の一形態の模擬装置1は、無線機900Aないし900C間の仮想伝搬路を形成できる。同時に、無線機900A〜900Cに対して仮想上の位置情報、同期情報、時刻情報を含む、GPS模擬情報を送信できる。
また、シナリオに沿った試験を行なえるので、様々な試験環境を仮想的に実現できる。例えな、無線機が地上、海上、及び空中を時間変化と共に移動することで、高速移動試験及び無線ハンドオーバー試験を行なえる。更に、同期情報の間隔を短縮し、加速試験を行なえる。またトンネルなどの出入りによるGPS電波状態の変化を再現し、試験を行なえる。
即ち、無線機の動作及び試験に有益な情報を供給可能とする模擬装置を提供できる。
【0075】
また、上記適応例以外にも、信号生成回路30に、GPS電波を受信しGPSモジュールから送信されるGPS情報を模擬した情報を生成する回路や、放送電波の特定情報(時報情報や同期情報、搬送波など)を模擬して生成する回路、無線機にIPアドレスを割振るDHCP機能を備えた機器などを設けることにより、様々な無線機に対応可能となる。
【0076】
即ち、上記の適応例で説明したとおり、実施の一形態の模擬装置1は、無線機の動作(模擬動作)に必要である情報(信号)を供給可能とする模擬装置を提供できる。
更に、時刻情報等のGPS情報、放送電波等のビーコンを仮想的に供給できる模擬装置を提供できる。
更に、LAN等で接続し、様々な情報を供給できる模擬装置を提供できる。
【0077】
更に、電波暗室や地下室など、特殊な環境でも試験が行なえる模擬装置を提供できる。
【0078】
尚、実施の一形態及び適応例の説明では、信号生成回路30は有線で無線機900と接続することとしたが、有線に限ることは無い。赤外線通信や無線LAN、放送電波等の通信波を生成し、無線で無線機に送信しても良い。
【0079】
また、無線機900に提供する動作用情報は、複数の端子や方式を用いて提供しても良い。例えば、位置情報をRF端子から入力し、同期情報や時刻情報をGPS電波処理装置に入力しても良い。
【0080】
また、無線機900への片方向通信でなくとも、双方向通信でも良い。この場合は、無線機の設定等をフィールドバックすれば、試験を効率良く行なえる。
【0081】
また、GPSを例に説明したが、特にGPSにとらわれる必要も無い。先に述べたIPアドレスを割振る為にIEEE802.3で信号生成回路と無線機とを接続することも可能であし、放送電波を模擬して送信することも可能である。即ち、GPS信号やIPアドレス等の有益な情報(所望の情報)を無線機に提供できることに意義がある。
【符号の説明】
【0082】
1 模擬装置
10 情報処理装置
20 仮想伝搬路
30 信号生成回路
110 伝搬減衰算出機能
120 信号指示機能
130 シナリオ作成機能
210 伝搬減衰模擬機能
220 減衰器制御機能
310 信号送信機能
320 GPS電波受信機能
330 GPS電波信号作成機能
900 無線機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の無線機を接続し、無線機間の電波伝搬環境を模擬する模擬装置において、
複数台の無線機間の伝搬特性を再現する仮想伝搬路と、
接続される無線機の動作に使用し仮想的に作成した情報を含む動作用信号を生成する信号生成回路と、
を有することを特徴とする模擬装置。
【請求項2】
請求項1記載の模擬装置であって、
更に、仮想空間における無線機と無線環境との時間経過を模擬するシナリオを作成するシナリオ作成手段を備え、
前記信号生成回路は、
前記シナリオで定められた前記仮想空間における無線機の位置情報を前記動作用信号の一つとして生成する手段と、
前記無線機に前記動作用信号を送信する手段とを有する
ことを特徴とする模擬装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の模擬装置であって、
更にGPS衛星から送出されるGPS電波を受信するGPS電波受信手段を備え、
前記信号生成回路は、
前記GPS電波受信手段で受信したGPS電波を利用し、前記仮想空間における無線機の位置情報を前記動作用信号の一つとして生成する手段を有する
ことを特徴とする模擬装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の模擬装置であって、
GPS衛星から送出されるGPS電波を模擬するGPS模擬情報を生成し送出するGPS電波生成手段を備え、
前記信号生成回路は、
前記GPS電波生成手段が生成した前記GPS模擬情報を、仮想空間における無線機の位置情報を用いて調整し、調整した前記GPS模擬情報を前記動作用信号の一つとして送信する手段を有する
ことを特徴とする模擬装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の模擬装置であって、
GPS電波に含まれるGPS情報を仮想的に生成する手段を備え、
前記信号生成回路は、
前記GPS情報を仮想的に生成する手段を利用し、無線機に送信する仮想空間における当該無線機の位置情報を含む模擬GPS情報を、前記動作用信号の一つとして生成する手段を有する
ことを特徴とする模擬装置。
【請求項6】
請求項1ないし5記載のいずれか一記載の模擬装置であって、
更に、前記動作用信号の一つとしてGPS同期情報を仮想的に生成する手段を備えることを特徴とする模擬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−29877(P2011−29877A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172818(P2009−172818)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】