説明

通信用車載器

【課題】他の通信用車載器と相互に接続する通信経路を備えることなく、他の通信用車載器との電波の干渉を防止しつつ、自身の通信動作を実行できる通信用車載器を提供する。
【解決手段】DSRC車載器21は、所定の条件が成立したとき(S120で否定判定されたとき、あるいは、S240で否定判定されたとき)に、DSRC通信方式により通信電波の送受信を行うように構成されていることから、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じるのを防止できる。また、DSRC車載器21は、他用途通信用車載器(本実施形態では、ETC車載器13)の動作状態を制御する(換言すれば、動作を停止させる)必要がないことから、複数の通信用車載器を相互に接続する通信経路を備えることなく、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DSRC路側機との間でDSRC通信方式により通信電波の送受信を行う通信用車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されて、外部機器(路側機)との間で通信電波の送受信を行う通信用車載器が知られている。
そして、通信用車載器としては、例えば、駐車場料金の支払いなどに用いられる狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)に用いる車載器としてのDSRC車載器や、通行料金の支払いに用いられるETCシステム(Electronic Toll Collection System)に用いる車載器としてのETC車載器などがある。
【0003】
同一車両に複数の通信用車載器が搭載される場合であって、これらの通信用車載器における通信電波の周波数帯域が同じ帯域(例えば、5.8GHz帯)である場合には、路側機に対してそれぞれが通信電波を返信することがある。つまり、路側機では単一の通信処理を実行しているにもかかわらず、その通信処理に対する返信電波として、複数の通信用車載器から異なる内容の通信電波が返信されることがある。
【0004】
このような状況が発生すると、路側機が受信する通信電波として、複数の通信用車載器から送信された複数の通信電波が互いに干渉してしまい、路側機と通信用車載器との間での適正な通信状態が確立できなくなる。
【0005】
そこで、このような問題に対して、1つの通信用車載器が擬似的な路側機としての機能を備えることで他の通信用車載器の有無を判定し、同一車両内に他の通信用車載器が存在する場合には、複数の通信用車載器のうち特定の通信用車載器を停止させて、通信電波の干渉を防止する技術が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−269517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術においては、複数の通信用車載器のうち特定の通信用車載器を停止させるために、複数の通信用車載器を相互に接続する通信経路(例えば、車内LAN)を備える必要がある。このため、上記従来の技術においては、通信用車載器を設置する作業に加えて、複数の通信用車載器を相互に接続する通信経路の敷設作業が必要となり、車両への設置作業が煩雑となる問題がある。
【0007】
また、複数の通信用車載器を相互に接続する通信経路(例えば、車内LAN)を備える場合には、通信経路のための部品コストが生じるため、装置全体として製造コストが増大するという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、他の通信用車載器と相互に接続する通信経路を備えることなく、他の通信用車載器との電波の干渉を防止しつつ、自身の通信動作を実行できる通信用車載器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、DSRC路側機との間でDSRC通信方式により通信電波の送受信を行う通信用車載器であって、他用途通信電波判定手段と、DSRC通信手段と、を備えている。
【0010】
そして、他用途通信電波判定手段は、DSRC通信方式で使用する周波数帯域と同一周波数帯域の通信電波であって、当該通信用車載器とは異なる用途の他用途通信用車載器が送受信する他用途通信電波の有無を判定している。また、DSRC通信手段は、他用途通信電波判定手段にて他用途通信電波が検出されない場合に、DSRC通信方式による通信電波の送信を実行する。
【0011】
つまり、この通信用車載器は、他用途通信用車載器による電波の送受信が行われていない時に、DSRC通信方式により通信電波の送受信を行うことから、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が生じるのを防止できる。
【0012】
また、この通信用車載器は、他用途通信用車載器の動作状態を制御する(換言すれば、動作を停止させる)必要がないことから、複数の通信用車載器を相互に接続する通信経路を備えることなく、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が生じるのを防止できるという特徴がある。
【0013】
さらに、他用途通信電波が、他用途路側機から他用途通信用車載器に対して送信される他用途路側機電波、または、通信待機状態の他用途通信用車載器から漏洩する他用途車載器漏洩電波であることから、他の通信用車載器との電波の干渉を確実に防止することができる。
【0014】
つまり、他用途通信電波判定手段が他用途通信電波として他用途路側機電波の有無を判定する場合、この通信用車載器は、他用途路側機電波が存在しないエリアにおいて、DSRC通信方式による通信電波の送受信を行う。これにより、この通信用車載器は、他用途路側機が存在するエリアにおいて、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が発生するのを確実に防止できる。
【0015】
また、他用途通信電波判定手段が他用途通信電波として他用途車載器漏洩電波の有無を判定する場合、この通信用車載器は、他用途通信用車載器が他用途路側機との間で通信状態を確立する前段階(換言すれば、他用途路側機からの通信電波を待ち受ける通信待機状態)において、他用途通信用車載器が同一車両内に存在するか否かを判定できる。そして、この通信用車載器は、他用途通信用車載器が同一車両内に存在しない場合に、DSRC通信方式による通信電波の送受信を行う。これにより、この通信用車載器は、他用途通信用車載器が同一車両内に存在する場合においても、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が発生するのを確実に防止できる。
【0016】
したがって、本発明の通信用車載器は、他用途信用車載器と相互に接続する通信経路を備えることなく、他用途通信用車載器との間で通信電波が干渉するのを防止しつつ、自身の通信動作(DSRC通信方式による通信電波の送受信)を実行できる。
【0017】
次に、上述の通信用車載器においては、請求項2に記載のように、他用途通信用車載器としてのETC車載器との間で通信電波の干渉が発生しない構成を採ることができる。
つまり、ETC車載器が他の通信用車載器との間で通信電波の干渉が発生すると、ETC車載器とETC路側機との間で適切な通信電波の送受信が行われず、ETCゲートが開かないために車両が料金所を通過できなくなる危険性がある。
【0018】
これに対して、本発明の通信用車載器を用いることで、当該通信用車載器とETC車載器との間で通信電波の干渉が生じるのを防止でき、料金所の通過に支障が生じるのを防止できる。
【0019】
また、上述の通信用車載器においては、請求項3に記載のように、他用途通信電波判定手段が当該通信用車載器の起動時に他用途通信電波の有無を判定する構成を採ることができる。
【0020】
このように、起動時に他用途通信電波の有無を判定することで、この通信用車載器は、自身がDSRC通信方式による通信電波の送受信を行う前に、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が生じる可能性があるか否かを判断できる。
【0021】
そして、起動時において他用途通信電波が検出されない場合には、同一車両において他用途通信用車載器が搭載されていないと判断できるため、他用途通信用車載器との間での通信電波の干渉について考慮することなく、DSRC通信方式による通信電波の送受信を行うことが可能となる。
【0022】
よって、本発明によれば、より確実に他用途通信用車載器との間で通信電波が干渉するのを防止しつつ、自身の通信動作(DSRC通信方式による通信電波の送受信)を実行できる。
【0023】
ところで、DSRC通信を行う通信用車載器は、一般に、DSRC路側機から送信されるDSRC路側機電波を受信した後、DSRC路側機に対して通信電波を送信するよう構成されている。
【0024】
そこで、上述の通信用車載器においては、請求項4に記載のように、DSRC路側機から送信されるDSRC路側機電波の有無を判定するDSRC路側機電波判定手段を備え、DSRC路側機電波判定手段にてDSRC路側機電波が有ると判定された場合に、他用途通信電波判定手段が他用途通信電波の有無を判定してもよい。
【0025】
このような構成を採ることで、DSRC路側機に対して通信電波を送信する前に他用途通信電波の有無を判定することができ、他用途通信電波が検出されない場合にDSRC路側機に対して通信電波を送信することで、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が生じるのを確実に防止できる。
【0026】
次に、上述の通信用車載器においては、請求項5に記載のように、他用途車載器漏洩電波が有ると判定された後、予め定められた待機状態継続時間が経過する前に他用途車載器漏洩電波が無いと判定される場合には、DSRC通信手段がDSRC通信方式による通信電波の送信を実行するように構成しても良い。
【0027】
つまり、他用途車載器漏洩電波が有ると判定された場合であっても、待機状態継続時間にわたり他用途車載器漏洩電波が検出されない場合には、同一車両に他用途通信用車載器が存在するものの、他用途通信用車載器と他用途通信用路側機との間で通信状態が確立されていない状態と判定できる。このような場合には、当該通信用車載器がDSRC通信方式による通信電波の送受信を行っても、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が生じることがない。
【0028】
このため、この通信用車載器は、他用途車載器漏洩電波が無いと判定される場合のみならず、所定の条件を満たした場合(他用途車載器漏洩電波が有ると判定された場合であって、待機状態継続時間が経過する前に他用途車載器漏洩電波が無いと判定される場合)においても、DSRC路側機に対して通信電波を送信することができる。
【0029】
よって、本発明によれば、DSRC路側機との間で通信電波を送受信する機会を多く確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明が適用された実施形態を図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0031】
実施形態として、駐車場料金の支払いなどに用いられる狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)に用いる通信用車載器について説明する。
本実施形態の通信用車載器(以下、DSRC車載器21ともいう)について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、DSRC車載器21の概略構成を示す説明図であり、図2は、受信回路の概略構成を示す説明図である。
【0032】
DSRC車載器21は、各種制御処理を行う車載器本体部23と、外部機器(DSRC路側機)との間で通信電波の送受信を行うアンテナ部35と、を備えている。
車載器本体部23は、制御回路25と、受信回路27と、送信回路29と、局部発振回路31と、アンテナスイッチ回路33と、を備えている。
【0033】
制御回路25は、DSRC通信方式によりDSRC路側機との間でデータ送受信するための各種制御処理を実行するものであり、図示しない周知のCPU,ROM,RAM,入出力回路であるI/O、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。
【0034】
なお、CPUは、ROMおよびRAMに記憶された制御プログラムおよびデータにより制御を行なう。ROMは、プログラム格納領域とデータ記憶領域とを有している。プログラム格納領域には制御プログラムが格納され、データ記憶領域には制御プログラムの動作に必要なデータが格納されている。また、制御プログラムは、RAM上にてワークメモリを作業領域とする形で動作する。
【0035】
また、制御回路25は、アンテナ部35にて受信した通信電波(受信信号)を信号処理によって受信データに変換する処理や、送信データを信号処理によって送信信号へ変換し、送信回路29を介してアンテナ部35からDSRC路側機に送信する処理や、送受信データや記憶部から読み出したデータ等を基にした演算処理などを実行する。
【0036】
受信回路27は、図1に示すとおり、アンテナスイッチ回路33が受信状態(アンテナ部35と受信回路27とを接続する状態)になると、アンテナ部35で受信したDSRC路側機電波(受信周波数fRX)が、アンテナスイッチ回路33を介して入力される構成である。
【0037】
なお、アンテナスイッチ回路33は、制御回路25からの指令に基づいて、受信状態(アンテナ部35と受信回路27とを接続する状態)または、送信状態(アンテナ部35と送信回路29とを接続する状態)に設定される。
【0038】
アンテナスイッチ回路33が受信状態になる場合には、受信回路27では、図2に示すとおり、ローノイズアンプ回路41(LNA回路)を介して入力されるDSRC路側機電波(受信周波数fRX)と、局部発振回路31が出力する局部発振信号(局部発振周波数fLO)とが、MIX回路43において混合される。このとき、MIX回路43から出力される混合信号には、fRX,fLO,fRX+fLO、fLO−fRX(または、fRX−fLO)の各周波数成分が含まれる。
【0039】
そして、受信回路27では、MIX回路43から出力される混合信号の内、中間周波数(fIF=40[MHz])に変換された成分がIFAMP回路45で所定の振幅まで増幅され、復調(デモジュレータ)回路47(DEM回路)を介して、制御回路25に出力される。なお、受信回路27のIFAMP回路45は、増幅対象となる信号成分の周波数(fIF=40[MHz])が「fLO−fRX」の周波数に等しくなるよう構成されている。
【0040】
つまり、受信回路27は、入力されたDSRC路側機電波(受信周波数fRX)の周波数を中間周波数(fIF=40[MHz])に変換し、さらにベースバンド信号に復調して、制御回路25に出力するよう構成されている。
【0041】
また、送信回路29は、アンテナスイッチ回路33が制御回路25からの指令に基づき送信状態(アンテナ部35と送信回路29とを接続する状態)になると、制御回路25から入力される信号を送信電波(送信周波数fTX)としてアンテナ部35からDSRC路側機に対して出力する構成である。
【0042】
なお、ARIB規格により、「送信周波数fTX=受信周波数fRX+40[MHz]」と定められていることから、本実施形態では、IFAMP回路45での増幅対象周波数(換言すれば、受信回路27での変換後周波数fIFを40[MHz]とすると共に、「局部発振周波数fLO=送信周波数fTX」となるように構成されている。
【0043】
そして、このように構成されたDSRC車載器21は、アンテナスイッチ回路33が受信状態であるときには、局部発振回路31から出力される局部発振周波数fLOの電波が、受信回路27およびアンテナスイッチ回路33を介して、僅かながらアンテナ部35から漏洩電波として外部に放出されている。なお、上述したように、DSRC車載器21は、「局部発振周波数fLO=送信周波数fTX」となるように構成されていることから、漏洩電波の周波数は、送信周波数fTXに等しくなる。
【0044】
つまり、DSRC路側機から送信されるDSRC路側機電波の待ち受け状態にあるDSRC車載器21は、送信電波(送信周波数fTX)と同一周波数の微弱な漏洩電波を外部に対して送信している。
【0045】
そして、DSRC車載器21は、駐車場等に設けられたDSRC路側機との間でDSRC通信方式による無線通信を実行する。
なお、DSRC路側機は、DSRC車載器との間で通信を行うことで、例えば、キャッシュレス決済、入場管理、情報配信、インターネット接続などの各種サービスを実現するために、料金所や駐車場出入口などに設置されている。キャッシュレス決済は、DSRC車載器に挿入したクレジットカードやプリペイドカード等を利用してガソリン代や駐車料金などを車内で決済するサービスであり、入場管理は、駐車場等の敷地の出入口に設置された開閉バー等と連動し、予め登録された車両のみ通過を許可するサービスであり、情報配信は、文字、音声、画像、またはこれらを組み合わせたコンテンツを、車載器やカーナビのディスプレイ等を通じて、車内の利用者に配信するサービスであり、インターネット接続は、車載器とインターネットを接続し、車載器やカーナビのディスプレイ等を利用して車内の利用者がwebサイト閲覧、電子メール利用などを行うサービスである。
【0046】
ここで、車両に搭載される通信用車載器としては、DSRC車載器の他にETC車載器を挙げることができる。そして、DSRC車載器およびETC車載器は、使用電波の周波数帯域が同一周波数帯(5.8GHz帯)である。
【0047】
図3に、DSRC車載器21およびETC車載器13を搭載した車両10が、ETC路側機1の通信エリアを通過する状態を表した説明図を示す。
なお、ETC車載器13は、図示しない制御回路、無線部、ETCカードインタフェース部、セキュリティモジュール部、表示部、ブザーおよびメモリを備えて構成されている。制御回路は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、マイクロコンピュータが制御プログラムを実行することにより、ETC車載器13の動作全般を制御する。無線部は、ETC路側機1との間でDSRCに準じたETC通信を行う。
【0048】
ETCカードインタフェース部は、ETCカード14がカードスロット(図示せず)に正常に装着されている状態で当該ETCカード14との間でデータを転送する。セキュリティモジュール部は、ETCカード14に記録されている各種のデータが直接読み取られないように暗号化処理を行なう。表示部は、例えば簡易な液晶ディスプレイから構成されており、各種の表示情報を表示し、また、ブザーは、鳴動動作を行う。
【0049】
ETC車載器13に備えられるメモリは、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)から構成されており、車両10の形状を表す車両形状情報を記憶している。ここで、車両形状情報とは、大型車,普通車,軽自動車などの車種情報の他に、全長、全幅、全高或いは車軸数などをも含むものであっても良い。また、車両形状情報は、例えばETC車載器13を車両10に取付ける際に作業者により登録される。
【0050】
そして、このように構成されたETC車載器13は、ユーザがETCカード14をETC車載器13に対して着脱するという事情から、本体が車室内のダッシュボード付近に設置されている。無線部のアンテナは、本体から引出されているタイプの場合は、例えばフロントウィンドウ付近に設置され、また、本体と一体のタイプの場合、本体と共に車室内のダッシュボード付近に設置されている。
【0051】
また、ETC車載器13の無線部は、DSRC車載器21における受信回路27,送信回路29、局部発振回路31、アンテナスイッチ回路33と同様の回路を備えて構成されている。
【0052】
そして、ETC車載器13の無線部は、アンテナスイッチ回路が受信状態になることで、ETC路側機から送信されるETC路側機電波(周波数:5795[MHz]または5805[MHz])を受信可能に構成されると共に、アンテナスイッチ回路が送信状態になることで、ETC送信電波(周波数:5835[MHz]または5845[MHz])を外部に送信可能に構成されている。
【0053】
なお、ETC車載器13は、ETC路側機の通信エリアに入ったか否かを判定するために、一定周期毎(例えば、10[ms]毎)に、局部発振周波数fLOを5835[MHz]と5845[MHz]とに切り替えて、ETC路側機電波が存在するか否かを判定している。
【0054】
そして、ETC車載器13は、DSRC車載器21と同様に、ARIB規格により、「送信周波数fTX=受信周波数fRX+40[MHz]」と定められていることから、受信回路27での変換後周波数fIFを40[MHz]とすると共に、「局部発振周波数fLO=送信周波数fTX」となるように構成されている。
【0055】
また、ETC車載器13は、DSRC車載器21と同様に、アンテナスイッチ回路が受信状態であるときには、局部発振回路から出力される局部発振周波数の電波が、受信回路およびアンテナスイッチ回路を介して、僅かながらアンテナから漏洩電波として外部に放出されている。なお、上述したように、ETC車載器13は、「局部発振周波数fLO=送信周波数fTX」となるように構成されていることから、ETC車載器13における漏洩電波の周波数は、ETC送信電波の送信周波数fTX(周波数:5835[MHz]または5845[MHz])に等しくなる。
【0056】
つまり、ETC路側機電波の待ち受け状態にあるETC車載器13は、ETC送信電波(送信周波数fTX)と同一周波数の微弱な漏洩電波を外部に対して送信している。
次に、ETC路側機1は、例えば、高速道路のインタチェンジなどに設置されており、路上アンテナ2、第1の車両検知器3、第2の車両検知器4、第3の車両検知器5、発進制御機6、路側表示器7および車両監視カメラ8などを備えて構成されている。
【0057】
路上アンテナ2は、車線(レーン)を跨ぐように設置されているガントリ9の上部に設置されており、車両10が走行する路上に向けて電波を放射することにより、路側に所定範囲(図中、Pにて示す範囲)の通信エリアを形成している。
【0058】
第1の車両検知器3は、例えば、一対の投光器と受光器とからなる光電センサにより構成されており、路上アンテナ2により形成される通信エリアにあって車両10が進入する側(図中、左側)の端部に車両10の進行方向に対して略垂直となる検出エリアを形成するように設置されている。この場合、第1の車両検知器3は、車両10が通信エリアに進入しようとするのに伴って、光軸が車両10の前端部により遮られると、進入検知信号を車線制御装置(図示省略)に出力する。
【0059】
なお、車線制御装置は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、マイクロコンピュータが制御プログラムを実行することにより、ETC路側機1の動作全般を制御する。なお、車線制御装置は、複数の車線が敷設されている場合には、車線毎に設置されている。
【0060】
第2の車両検知器4は、上記した第1の車両検知器3と同様にして、例えば、一対の投光器と受光器とからなる光電センサにより構成されており、路上アンテナ2により形成される通信エリアにあって車両10が退出する側(図中、右側)の端部に車両10の進行方向に対して略垂直となる検出エリアを形成するように設置されている。この場合、第2の車両検知器4は、車両10が通信エリアから進出しようとするのに伴って、光軸が車両10の前端部により遮られると、進出検知信号を車線制御装置(図示省略)に出力する。
【0061】
第3の車両検知器5は、上記した第1の車両検知器3や第2の車両検知器4と同様にして、例えば、一対の投光器と受光器とからなる光電センサにより構成されており、発進制御機6の進行方向側に車両10の進行方向に対して略垂直となる検出エリアを形成するように設置されている。この場合、第3の車両検知器5は、車両10が発進制御機6を通過したのに伴って、検出エリアが車両10の前端部により遮られると、通過検知信号を車線制御装置(図示省略)に出力する。
【0062】
発進制御機6は、ゲート12を開閉可能に構成されており、ゲート12を開放することにより、車両10の通過を許可すると共に、ゲート12を閉鎖することにより、車両10の通過を禁止する。路側表示器7は、車線制御装置から表示信号を入力すると、車両10の乗員に知らせるための各種の表示情報を表示する。車両監視カメラ8は、車両10を撮影し、画像信号を車線制御装置(図示省略)に出力する。
【0063】
ETC路側機1は、車両10が通信エリアに位置した状態で、車両10にETC車載器13が搭載されている場合に、ETC車載器13との間でDSRC(Dedicated Short Range Communication)に準じたETC通信を行う。
【0064】
なお、車線制御装置は、図示しない料金所コンピュータに接続されており、料金所コンピュータは、車線制御装置から例えばETCカード識別情報や料金情報などの各種の情報を入力すると、入力された各種の情報を編集して精算処理センタに送信する。また、料金所コンピュータは、1箇所の料金所で1台設置されており、料金所に複数の車線が敷設されている場合には、複数の車線毎に設置されている複数の車線制御装置を統括管理する。
【0065】
次に、料金所におけるETC通信の仕組みを説明する。
図4は、2つのETC路側機1(自レーン、隣接レーン)とETC車載器13との間におけるETC通信の通信シーケンスを示す説明図である。
【0066】
自レーンのETC路側機1は、チャンネルAの「FCMC(Frame Control Message channel)」をETC車載器13に対して一定周期毎に送信しており、隣接レーンのETC路側機1は、チャンネルBの「FCMC(Frame Control Message channel)」をETC車載器13に対して一定周期毎に送信する。
【0067】
ETC車載器13は、車両10が通信エリアの外部である段階では、チャンネルAのFCMCおよびチャンネルBのFCMCのいずれも受信できないか、あるいは両者の信号強度(電波強度)が小さい状態であるため、ETC車載器13との間で通信リンクを確立することはない。
【0068】
しかし、車両10が通信エリアに入ると、自レーンのETC路側機1から送信されるチャンネルAのFCMCの信号強度(電波強度)が、隣接レーンのETC路側機1から送信されるチャンネルBのFCMCの信号強度(電波強度)よりも大きくなる。これにより、ETC車載器13は、チャンネルAのFCMCを送信するETC路側機1を自レーンのETC路側機1と決定する。
【0069】
そして、ETC車載器13は、自レーンのETC路側機1を決定した後に、チャンネルAのFCMCを受信すると、自レーンのETC路側機1(換言すれば、チャンネルAのFCMCを送信するETC路側機1)に対して、通信を開始するためにACTC(Activation Channel)を送信する。
【0070】
なお、DSRCプロトコルでは、通信エリア内にいる全てのETC車載器13は、ETC路側機1から送られるFCMCに対し、ETC路側機1が持つアプリケーションと、ETC車載器13が対応可能なアプリケーションが一致した場合に、通信を開始するためにACTC(Activation Channel)を送信するように、定められている。そして、ETC路側機1がETC車載器13から「ACTC」を受信することにより、ETC車載器13との間で通信リンクを確立する。
【0071】
次いで、ACTCを受信したETC路側機1(換言すれば、自レーンのETC路側機1)は、「BST(Beacon Service Table)」をETC車載器13に送信し、ETC車載器13から「VST(Vehicle Service Table)」を受信することにより、DSRCの通信開始処理(リンク確立処理)が完了する。
【0072】
リンク確立処理でETC車載器13が送信するVST情報の中には、ETC決済に必要な情報も含まれているため、ETC路側機1はVST情報の内容に応じて、ETCアプリケーション処理として、ETC決済に必要な情報のやり取りを行う。つまり、ETC路側機1とETC車載器13との間でデータを交換するETC処理により所定のETCデータ(例えばETCカード識別情報や料金情報など)を交換する。そして、ETC路側機1は、所定のETCデータの交換を正常に完了すると、「Event Report.req」をETC車載器13に送信することにより、DSRC通信を終了する。
【0073】
次に、DSRC車載器21の通信動作について説明する。
本実施形態のDSRC車載器21は、同一車両に搭載された他の通信用車載器(本実施形態では、ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じないように、通信動作を実行する。
【0074】
図5に、DSRC車載器21で実行される起動後通信制御処理の処理内容を表すフローチャートを示す。なお、起動後通信制御処理は、車両のイグニッションキーがONまたはACC状態になり、DSRC車載器21に電源が供給されてDSRC車載器21が起動すると、制御回路25での内部処理として実行される。
【0075】
起動後通信制御処理が開始されると、まず、S110(Sはステップを表す)では、ETC車載器13の漏洩電波を受信する処理を実行する。
ETC車載器13における漏洩電波の周波数は、上述したとおり、ETC送信電波の送信周波数fTX(周波数:5835[MHz]または5845[MHz])に等しい。このことから、DSRC車載器21は、ETC送信電波の送信周波数fTX(周波数:5835[MHz]または5845[MHz])に等しい通信電波を受信することで、ETC車載器13の漏洩電波を受信する処理を実行する。
【0076】
このとき、ETC車載器13が同一車両内に存在し、かつ、ETC車載器13が受信状態である場合には、DSRC車載器21はETC車載器13の漏洩電波を検出できる。また、ETC車載器13が同一車両内に存在しない場合、あるいは、ETC車載器13が受信状態でない場合には、DSRC車載器21はETC車載器13の漏洩電波を検出できない。
【0077】
なお、ここでの「ETC車載器13の受信状態」とは、ETC路側機1との間で通信リンクが確立された状態のみならず、ETC路側機の通信エリアに入ったか否かを判定する状態(通信待ち受け状態)を含む概念である。
【0078】
次にS120では、S110でETC漏洩電波が検出されたか否かを判断しており、肯定判定する場合にはS140に移行し、否定判定する場合にはS130に移行する。
つまり、S110でETC車載器13の漏洩電波が検出される場合には、ETC車載器13が同一車両内に存在すると判断でき、DSRC車載器21とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性があると判定できる。このため、S120で肯定判定した場合には、S140に移行して、DSRC通信方式による通信電波の送信を行う前にETC路側機1の通信エリアであるか否かを判定するモード(ETC路側機電波モニターモード)を実行する。
【0079】
また、S110でETC車載器13の漏洩電波が検出されない場合には、ETC車載器13が同一車両内に存在しないと判断でき、DSRC車載器21とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性が無いと判定できる。このため、S120で否定判定した場合には、S130に移行して、ETC路側機1の通信エリアであるか否かの判定を行うことなくDSRC通信方式による通信電波の送受信を実行するモード(通常DSRC通信モード)を実行する。
【0080】
次に、ETC路側機電波モニターモードでの処理内容について説明する。図6に、ETC路側機電波モニターモードでの処理内容を表すフローチャートを示す。
起動後通信制御処理でS140に移行して、ETC路側機電波モニターモードが開始されると、S210では、DSRC路側機から送信されるDSRC路側機電波(受信周波数fRX)を受信する処理を行う。
【0081】
つまり、制御回路25がアンテナスイッチ回路33を受信状態(アンテナ部35と受信回路27とを接続する状態)に制御すると共に、局部発振回路31の局部発振周波数を制御することで、DSRC車載器21は、DSRC路側機電波(受信周波数fRX)を受信可能な状態となる。
【0082】
このとき、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入っている場合には、DSRC車載器21は、DSRC路側機電波(受信周波数fRX)を検出でき、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入っていない場合には、DSRC車載器21は、DSRC路側機電波(受信周波数fRX)を検出できない。
【0083】
次にS220では、S210でDSRC路側機電波(受信周波数fRX)が検出されたか否かを判断しており、肯定判定する場合にはS230に移行し、否定判定する場合には再びS210に移行する。
【0084】
つまり、S210でDSRC路側機電波(受信周波数fRX)が検出される場合には、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入っていると判断できることから、DSRC路側機との通信を行うステップ(S250)に向けて処理を移行させる。なお、本実施形態では、DSRC路側機との通信確立の前に、DSRC車載器21とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性があるか否かを判定するステップ(S230,S240)に移行する。
【0085】
また、S210でDSRC路側機電波(受信周波数fRX)が検出されない場合には、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入っていないと判断できることから、再びS210に移行して、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入るまでは、S210およびS220での処理を繰り返し実行することで待機する。
【0086】
S220で肯定判定されてS230に移行すると、S230では、ETC路側機1から送信されるETC路側機電波(周波数:5795[MHz]または5805[MHz])を受信する処理を行う。
【0087】
つまり、制御回路25がアンテナスイッチ回路33を受信状態(アンテナ部35と受信回路27とを接続する状態)に制御すると共に、局部発振回路31の局部発振周波数を制御することで、DSRC車載器21は、ETC路側機電波を受信可能な状態となる。
【0088】
このとき、車両10がETC路側機の通信エリアに入っている場合には、DSRC車載器21は、ETC路側機電波を検出でき、車両10がETC路側機の通信エリアに入っていない場合には、DSRC車載器21は、ETC路側機電波を検出できない。
【0089】
次に、S240では、S230でETC路側機電波が検出されたか否かを判断しており、肯定判定する場合には再びS210に移行し、否定判定する場合にはS250に移行する。
【0090】
つまり、S230でETC路側機電波が検出される場合には、車両10がETC路側機の通信エリアに入っていると判断できることから、このときにDSRC車載器21が通信電波を送信すると、その通信電波がETC路側機で受信されてしまい、DSRC車載器21とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性がある。
【0091】
そのため、S240で肯定判定する場合には、DSRC通信(S250)を実行することなく、再びS210に移行することで、DSRC車載器21とETC車載器13との間で通信電波が干渉するのを防止するのである。
【0092】
また、S230でETC路側機電波が検出されない場合には、車両10がETC路側機の通信エリアに入っていないと判断できることから、このときにDSRC車載器21が通信電波を送信しても、その通信電波がETC路側機で受信されることはなく、DSRC車載器21とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性はない。
【0093】
そのため、S240で否定判定する場合には、S250に移行して、DSRC通信を実行するのである。
S250では、DSRC路側機に対してDSRC方式による通信電波の送受信を行う処理を実行する。
【0094】
なお、DSRC車載器21がDSRC路側機に対して送信電波(送信周波数fTX)を送信する場合には、制御回路25が、アンテナスイッチ回路33を送信状態(アンテナ部35と送信回路29とを接続する状態)に制御すると共に、局部発振回路31の局部発振周波数を送信周波数fTXに応じた周波数に制御する。これにより、DSRC車載器21は、DSRC路側機に対して送信電波(送信周波数fTX)を送信することができる。
【0095】
また、DSRC車載器21がDSRC路側機電波(受信周波数fRX)を受信する場合には、制御回路25が、アンテナスイッチ回路33を受信状態(アンテナ部35と受信回路27とを接続する状態)に制御すると共に、局部発振回路31の局部発振周波数を受信周波数fRXに応じた周波数に制御する。これにより、DSRC車載器21は、DSRC路側機から送信されるDSRC路側機電波(受信周波数fRX)を受信することができる。
【0096】
そして、DSRC路側機との間での一連の通信処理が完了すると、S250での処理が終了する。
S250での処理が終了すると、再びS210に移行し、S210からS250までの処理を繰り返し実行する。
【0097】
以上説明したように、本実施形態のDSRC車載器21は、所定の条件が成立したとき(S120で否定判定されたとき、あるいは、S240で否定判定されたとき)に、DSRC通信方式により通信電波の送受信を行うように構成されていることから、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じるのを防止できる。
【0098】
つまり、S120で否定判定されるのは、他用途通信用車載器(ETC車載器)が同一車両内に存在しないと判断できる場合であり、S120で否定判定される時にDSRC通信方式により通信電波の送受信を行うことは、換言すれば、他用途通信用車載器による電波の送受信が行われていない時にDSRC通信電波の送受信を行うことである。
【0099】
また、S240で否定判定されるのは、車両10がETC路側機の通信エリアに入っていないと判断できる場合であり、S240で否定判定される時にDSRC通信方式により通信電波の送受信を行うことは、換言すれば、他用途通信用車載器と他用途路側機との間で通信電波の送受信が行われていない時にDSRC通信電波の送受信を行うことである。
【0100】
このように、本実施形態のDSRC車載器21は、他用途通信用車載器による電波の送受信が行われていない時に、DSRC通信方式により通信電波の送受信を行うことから、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が生じるのを防止できる。
【0101】
また、DSRC車載器21は、他用途通信用車載器(本実施形態では、ETC車載器13)の動作状態を制御する(換言すれば、動作を停止させる)必要がないことから、複数の通信用車載器を相互に接続する通信経路を備えることなく、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じるのを防止できる。
【0102】
したがって、本実施形態のDSRC車載器21は、他用途信用車載器(ETC車載器13)と相互に接続する通信経路を備えることなく、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波が干渉するのを防止しつつ、自身の通信動作(DSRC通信方式による通信電波の送受信)を実行できる。
【0103】
また、本実施形態のDSRC車載器21は、ETC車載器13との間で通信電波の干渉が発生しない構成であることから、自身とETC車載器13との間で通信電波の干渉が発生するのを防止できる。これにより、DSRC車載器21は、ETC車載器13とETC路側機1との間における通信電波の送受信を妨害することがなくなり、料金所の通過に支障が生じるのを防止できる。
【0104】
さらに、本実施形態のDSRC車載器21は、自身の起動直後にETC漏洩電波を検出する処理を行い(S110)、ETC漏洩電波が検出されるか否かを判断している(S120)。このように、起動時に他用途通信電波(ETC漏洩電波)の有無を判定することで、DSRC車載器21は、自身がDSRC通信方式による通信電波の送受信を行う前に、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じる可能性があるか否かを判断できる。
【0105】
そして、S120で否定判定された場合には、同一車両に他用途通信用車載器が搭載されていないと判断できるため、他用途通信用車載器との間での通信電波の干渉について考慮することなく、S130においてDSRC通信方式による通信電波の送受信を行うことができる。
【0106】
また、本実施形態のDSRC車載器21は、S210およびS220での処理により、DSRC路側機から送信されるDSRC路側機電波の有無を判定しており、DSRC路側機電波が有ると判定された場合(S220で肯定判定の場合)に、S230およびS240での処理により、ETC路側機1から送信されるETC路側機電波の有無を判定している。
【0107】
つまり、DSRC車載器21は、DSRC路側機電波が有ると判定した後であって、DSRC路側機に対して通信電波を送信するステップ(S250)よりも前に、他用途通信電波(ETC路側機電波)の有無を判定する(S240)構成である。そして、DSRC車載器21は、他用途通信電波(ETC路側機電波)が検出されない場合(S240で否定判定)に、DSRC路側機に対して通信電波を送信する処理を行う(S250)。
【0108】
よって、DSRC車載器21は、他用途通信電波(ETC路側機電波)が検出されない場合に、DSRC路側機に対して通信電波を送信することから、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じるのを確実に防止できる。
【0109】
また、本実施形態のDSRC車載器21は、自身の起動時において、ETC漏洩電波が検出されるか否かを判断し(S120)、また、DSRC路側機電波が有ると判定された場合(S220で肯定判定の場合)においても、ETC路側機1から送信されるETC路側機電波の有無を判定している。
【0110】
このように、複数回にわたり判定を行う構成のDSRC車載器21は、同一車両内に他用途通信用車載器(ETC車載器13)が存在する場合においても、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が生じるのを確実に防止できると共に、DSRC路側機に対して通信電波を送信する場合においても、他用途路側機(ETC路側機1)に対して誤って通信電波を送信するのを防止できる。
【0111】
なお、本実施形態においては、DSRC車載器21が特許請求の範囲に記載の通信用車載器に相当し、S120およびS240を実行する制御回路25が他用途通信電波判定手段に相当し、S130およびS250を実行する制御回路25がDSRC通信手段に相当し、S220を実行する制御回路25がDSRC路側機電波判定手段に相当し、ETC車載器13が他用途通信車載器に相当する。
【0112】
なお、上記実施形態(以下、第1実施形態ともいう)では、起動直後にETC車載器の漏洩電波が検出されない場合(S120で否定判定される場合)に、直ちに通常のDSRC通信処理(通常DSRC通信モード)を実行する構成のDSRC車載器について説明したが、直ちに通常のDSRC通信処理を実行するのではなく、再度、ETC車載器の漏洩電波を検出する構成を採ることが可能である。
【0113】
そこで、第2実施形態として、起動直後にETC車載器の漏洩電波が検出されない場合においても、再度、ETC車載器の漏洩電波を検出するための処理(ETC車載器漏洩電波モニターモード)を実行する第2DSRC車載器について説明する。
【0114】
なお、第2DSRC車載器は、第1実施形態のDSRC車載器21と比べて、起動後通信制御処理の処理内容が異なるものの、その他の構成(受信回路27,送信回路29,局部発振回路31、アンテナスイッチ回路33など)は同様であることから、起動後通信制御処理の処理内容を中心に説明する。
【0115】
図7に、第2DSRC車載器で実行される第2起動後通信制御処理の処理内容を表すフローチャートを示す。なお、第2起動後通信制御処理は、車両のイグニッションキーがONまたはACC状態になり、第2DSRC車載器に電源が供給されて第2DSRC車載器が起動すると、制御回路25での内部処理として実行される。
【0116】
第2起動後通信制御処理が開始されると、まず、S410(Sはステップを表す)では、ETC車載器13の漏洩電波を受信する処理を実行する。なお、S410の処理内容は、第1実施形態におけるS110の処理内容と同様である。
【0117】
次にS420では、S410でETC漏洩電波が検出されたか否かを判断しており、肯定判定する場合にはS440に移行し、否定判定する場合にはS430に移行する。
つまり、S410でETC車載器13の漏洩電波が検出される場合には、ETC車載器13が同一車両内に存在すると判断でき、第2DSRC車載器とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性があると判定できる。このため、S420で肯定判定した場合には、S440に移行して、DSRC通信方式による通信電波の送信を行う前にETC路側機1の通信エリアであるか否かを判定するモード(ETC路側機電波モニターモード)を実行する。
【0118】
なお、ETC路側機電波モニターモードにおける処理内容は、第1実施形態と同様であることから、説明は省略する。
また、S410でETC車載器13の漏洩電波が検出されない場合には、基本的には、ETC車載器13が同一車両内に存在しないと判断でき、第2DSRC車載器とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性が無いと判定できる。しかし、ETC車載器13が同一車両内に存在するにも拘わらず、何らかの要因(ノイズなど)で、漏洩電波が検出されない場合も発生しうる。
【0119】
このため、S420で否定判定した場合には、S430に移行して、DSRC通信方式による通信電波の送信を行う前に、再度、ETC車載器の漏洩電波が検出されるか否か判定するモード(ETC車載器漏洩電波モニターモード)を実行する。
【0120】
ここで、図8に、ETC車載器漏洩電波モニターモードでの処理内容を表すフローチャートを示す。
第2起動後通信制御処理でS430に移行して、ETC車載器漏洩電波モニターモードが開始されると、S510では、DSRC路側機から送信されるDSRC路側機電波(受信周波数fRX)を受信する処理を行う。
【0121】
つまり、制御回路25がアンテナスイッチ回路33を受信状態(アンテナ部35と受信回路27とを接続する状態)に制御すると共に、局部発振回路31の局部発振周波数を制御することで、DSRC車載器21は、DSRC路側機電波(受信周波数fRX)を受信可能な状態となる。
【0122】
このとき、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入っている場合には、DSRC車載器21は、DSRC路側機電波(受信周波数fRX)を検出でき、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入っていない場合には、DSRC車載器21は、DSRC路側機電波(受信周波数fRX)を検出できない。
【0123】
次にS520では、S510でDSRC路側機電波(受信周波数fRX)が検出されたか否かを判断しており、肯定判定する場合にはS530に移行し、否定判定する場合には再びS510に移行する。
【0124】
つまり、S510でDSRC路側機電波(受信周波数fRX)が検出される場合には、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入っていると判断できることから、DSRC路側機との通信を行うステップ(S560)に向けて処理を移行させる。なお、本実施形態では、DSRC路側機との通信確立の前に、DSRC車載器21とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性があるか否かを判定するステップ(S530,S540,S550)に移行する。
【0125】
また、S510でDSRC路側機電波(受信周波数fRX)が検出されない場合には、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入っていないと判断できることから、再びS510に移行して、車両10がDSRC路側機の通信エリアに入るまでは、S510およびS520での処理を繰り返し実行することで待機する。
【0126】
S520で肯定判定されてS530に移行すると、S530では、ETC車載器13の漏洩電波を受信する処理を実行する。なお、S530での処理内容は、S410での処理内容と同様である。
【0127】
次にS540では、S530でETC漏洩電波が検出されたか否かを判断しており、肯定判定する場合にはS550に移行し、否定判定する場合にはS560に移行する。
つまり、S530でETC車載器13の漏洩電波が検出されない場合には、同一車両内のETC車載器13が通信を行っていない状態(ETC路側機との間で通信電波の送受信を行っていない状態)であると判断でき、DSRC車載器21とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性がないと判定できる。
【0128】
そのため、S540で否定判定する場合にはS560に移行し、S560では、DSRC路側機との間でDSRC通信方式による通信電波の送受信を実行する。
また、S530でETC車載器13の漏洩電波が検出される場合には、同一車両内のETC車載器13が通信待機状態(ETC路側機からの通信電波を待ち受けている状態)であると判断でき、DSRC車載器21とETC車載器13との間で通信電波が干渉する可能性があると判定できる。そのため、S540で肯定判定する場合には、直ちにDSRC路側機との間で通信電波の送受信を実行するのではなく、S550に移行して、ETC車載器13の漏洩電波が継続して検出されるか否かを判断する。
【0129】
つまり、S540で肯定判定してS550に移行すると、S550では、ETC車載器13の漏洩電波の受信を継続し、ETC車載器13の漏洩電波の受信時間が、予め定められた待機状態継続時間(例えば、20[ms]以上)を経過するか否かを判定し、肯定判定する場合には再びS510に移行し、否定判定する場合にはS560に移行する。
【0130】
すなわち、S540にてETC車載器13の漏洩電波が有ると判定された後、待機状態継続時間が経過する前にETC車載器13の漏洩電波が無いと判定される場合には、同一車両に搭載されたETC車載器13とETC路側機1との間で通信状態が確立されていない状態と判定できる。
【0131】
このため、S550で否定判定する場合には、DSRC車載器21がDSRC通信方式による通信電波の送受信を行っても、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じることがないため、S560に移行して、DSRC路側機との間でDSRC通信方式による通信電波の送受信を実行する。
【0132】
このように、S540で肯定判定する場合であっても、所定の条件(S550での否定判定)を満たす場合には、DSRC路側機との間で通信電波の送受信(S560)を実行することで、DSRC路側機に対して通信電波の送受信を行う機会を多く確保することができる。
【0133】
そして、S520で否定判定されるか、S550で肯定判定されるか、S560での処理が終了すると、再びS510に処理が移行し、S510からS560までの処理を繰り返し実行する。
【0134】
以上説明したように、第2実施形態の第2DSRC車載器は、起動直後に、他用途通信用車載器(ETC車載器13)の漏洩電波が無いと判定される場合であっても(S420で否定判定)、DSRC通信(S560)を行う前に、再度、他用途通信用車載器(ETC車載器13)の漏洩電波の有無を判定する構成である。
【0135】
このように、複数回にわたり、他用途通信用車載器(ETC車載器13)の漏洩電波の有無を判定することで、初回の判定時には、何らかの原因で他用途通信用車載器(ETC車載器13)の漏洩電波を正確に検出できない場合であっても、2回目以降の判定時に、他用途通信用車載器の漏洩電波を検出できれば、DSRC車載器と他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が生じるのを防止できる。
【0136】
また、本第2実施形態においては、ETC車載器13の漏洩電波が有ると判定(S540で肯定判定)された後、待機状態継続時間が経過する前にETC車載器13の漏洩電波が無いと判定(S550で否定判定)される場合には、DSRC路側機との間でDSRC通信方式による通信電波の送受信を実行する。
【0137】
つまり、S550で否定判定する場合には、DSRC車載器21がDSRC通信方式による通信電波の送受信を行っても、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じることがないため、S560に移行して、DSRC路側機との間でDSRC通信方式による通信電波の送受信を実行する。
【0138】
このように、S540で肯定判定する場合であっても、所定の条件(S550での否定判定)を満たす場合には、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じることがないため、DSRC路側機との間で通信電波の送受信を実行することができる。
【0139】
よって、第2実施形態の第2DSRC車載器は、DSRC路側機に対して通信電波の送受信を行う機会を多く確保できるという利点がある。
また、第2実施形態では、DSRC通信処理(S250またはS560)を行う前に、少なくとも2回以上にわたり他用途通信電波の有無を判定するように構成されていることから、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じるのをより確実に防止できる。
【0140】
つまり、S250でのDSRC通信処理を行う前には、S410およびS240の2回にわたり他用途通信電波(ETC車載器13の漏洩電波、ETC路側機電波)の有無を判定している。また、S560でのDSRC通信処理を行う前には、少なくともS410およびS540の2回にわたり他用途通信電波(ETC車載器13の漏洩電波)の有無を判定している。さらに、S550で否定判定されてS560でのDSRC通信処理を行う前には、S410、S540、S550の3回にわたり他用途通信電波(ETC車載器13の漏洩電波)の有無を判定している。
【0141】
よって、このようにDSRC通信処理を行う前に複数回にわたり他用途通信電波の有無を判定する構成の第2DSRC車載器によれば、他用途通信電波の有無をより精度良く判定することができ、他用途通信用車載器(ETC車載器13)との間で通信電波の干渉が生じるのをより確実に防止できる。
【0142】
なお、第2実施形態においては、第2DSRC車載器が特許請求の範囲に記載の通信用車載器に相当し、S410、S240、S540,S550を実行する制御回路25が他用途通信電波判定手段に相当し、S250およびS560を実行する制御回路25がDSRC通信手段に相当し、S220およびS520を実行する制御回路25がDSRC路側機電波判定手段に相当する。
【0143】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0144】
例えば、上記実施形態では、起動直後に実施する他用途通信電波の有無判定処理として、他用途車載器漏洩電波(ETC車載器13の漏洩電波)の有無判定処理を実行しているが、他用途路側機から前記他用途通信用車載器に対して送信される他用途路側機電波(ETC路側機1から送信されるETC路側機電波)の有無判定処理を実行しても良い。このように構成された通信用車載器は、起動直後において、他用途路側機が存在するエリアで他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が発生するのを確実に防止できる。
【0145】
また、上記実施形態では、起動直後に起動後通信制御処理(第2起動後通信制御処理)を実行した上で、ETC路側機電波モニターモードあるいはETC車載器漏洩電波モニターモードに移行する構成の通信用車載器について説明したが、起動直後に起動後通信制御処理を行うことなく、ETC路側機電波モニターモードあるいはETC車載器漏洩電波モニターモードを実行する構成を採ることもできる。
【0146】
このように構成された通信用車載器は、起動後通信制御処理を行わないことで、起動直後における制御回路での処理負荷が大きくなるのを回避できると共に、自身がDSRC通信方式による通信電波の送受信を行う前に、他用途通信用車載器との間で通信電波の干渉が生じるか否かを判断することで、通信電波が干渉するのを防止しつつ、自身の通信動作(DSRC通信方式による通信電波の送受信)を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】DSRC車載器の概略構成を示す説明図である。
【図2】受信回路の概略構成を示す説明図である。
【図3】DSRC車載器およびETC車載器を搭載した車両が、ETC路側機の通信エリアを通過する状態を表した説明図である。
【図4】2つのETC路側機(自レーン、隣接レーン)とETC車載器との間におけるETC通信の通信シーケンスを示す説明図である。
【図5】DSRC車載器で実行される起動後通信制御処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図6】ETC路側機電波モニターモードでの処理内容を表すフローチャートである。
【図7】第2DSRC車載器で実行される第2起動後通信制御処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図8】ETC車載器漏洩電波モニターモードでの処理内容を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0148】
1…ETC路側機、2…路上アンテナ、10…車両、13…ETC車載器、21…DSRC車載器、23…車載器本体部、25…制御回路、27…受信回路、29…送信回路、31…局部発振回路、33…アンテナスイッチ回路、35…アンテナ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSRC路側機との間でDSRC通信方式により通信電波の送受信を行う通信用車載器であって、
前記DSRC通信方式で使用する周波数帯域と同一周波数帯域の通信電波であって、当該通信用車載器とは異なる用途の他用途通信用車載器が送受信する他用途通信電波の有無を判定する他用途通信電波判定手段と、
前記他用途通信電波判定手段にて前記他用途通信電波が無いと判定される場合に、前記DSRC通信方式による通信電波の送信を実行するDSRC通信手段と、を備えており、
前記他用途通信電波は、他用途路側機から前記他用途通信用車載器に対して送信される他用途路側機電波、または、通信待機状態の前記他用途通信用車載器から漏洩する他用途車載器漏洩電波であること、
を特徴とする通信用車載器。
【請求項2】
前記他用途通信用車載器は、ETC車載器であること、
を特徴とする請求項1に記載の通信用車載器。
【請求項3】
前記他用途通信電波判定手段は、当該通信用車載器の起動時に前記他用途通信電波の有無を判定すること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信用車載器。
【請求項4】
前記DSRC路側機から送信されるDSRC路側機電波の有無を判定するDSRC路側機電波判定手段を備え、
前記他用途通信電波判定手段は、前記DSRC路側機電波判定手段にて前記DSRC路側機電波が有ると判定された場合に、前記他用途通信電波の有無を判定すること、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信用車載器。
【請求項5】
前記DSRC通信手段は、前記他用途通信電波判定手段にて前記他用途車載器漏洩電波が有ると判定された後、予め定められた待機状態継続時間が経過する前に前記他用途通信電波判定手段にて前記他用途車載器漏洩電波が無いと判定される場合には、前記DSRC通信方式による通信電波の送信を実行すること、
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の通信用車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−266735(P2007−266735A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86032(P2006−86032)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】