説明

通信端末装置

【課題】通信端末装置によるファクシミリ通信では、通話目的か、ファクシミリ通信目的かの識別方法として、一般的に、送信側ではCNG信号を送信し、受信側ではCNG信号を受信することで、ファクシミリ通信であることを判断していが、CNG信号の検出が速やかに行われない場合があった。
【解決手段】着信時に発呼側に送信され、擬似リングバックトーンを生成する擬似RBT生成部19と、着信時に鳴動させる擬似リングを生成する擬似リング生成部16と、擬似RBT生成部19及び擬似リング生成部16を制御する主制御部2とを備え、国毎のリングバックトーンの周期的に繰り返されるON/OFF時間情報を有し、装置本体が設置された国のリングバックトーンのOFF時間が所定のOFF時間未満である場合には、擬似リングバックトーンのOFF時間を所定のOFF時間に設定して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機接続が可能で、アナログ公衆回線、或いは構内交換機(Private Branch Exchange:以後、PBXと称す)に接続され、ファクシミリ通信と電話機による通話を自動的に切り換える通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、アナログ公衆回線、或いはPBXに接続され、ファクシミリ通信が可能な通信端末装置においては、装置本体に電話機の接続を可能とし、更に着信時に通話目的か、ファクシミリ通信目的かを自動的に識別することによって、1本の回線を電話機による通話とファクシミリ通信とで共用利用が可能なものが広く普及している。
【0003】
通話目的か、ファクシミリ通信目的かの識別方法としては、一般的に、送信側装置より送信され、1100Hzで、0.5秒ON、3秒OFFが周期的に繰り返されるCNG信号(国際電気通信連合ITU−T勧告で規定されているCalling Tone)を検出したならば、ファクシミリ通信へ移行し、検出しない場合は装置内部のリンガー或いは電話機のリンガーを鳴動させ、ユーザーに通話を促すようになっている。
【0004】
更に特許文献1では、
(a)着信時のCNG信号の監視期間に、発呼側に対して擬似的なリングバックトーンである擬似呼出信号(以後、擬似リングバックトーンと称す)を送出し、CNG信号成分を検出した場合には擬似リングバックトーンの送出を停止する、
(b)CNG信号成分を検出して擬似リングバックトーンの送出を停止した後、所定の期間内にCNG信号を検出しないときには、擬似リングバックトーンの送出を再開する、
(c)擬似リングバックトーンの停止期間を設定可能とする、
(d)CNG信号成分の検出条件を設定可能とする、
ことにより、CNG信号の誤認定防止や、電話をかけた相手側の不信感を軽減する技術が公開されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−281265号公報(段落0031〜0043、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来の通信端末装置にあっては、CNG信号成分を検出すると擬似リングバックトーンの送出を停止し、所定の期間内にCNG信号を検出しないときには、擬似リングバックトーンの送出を再開するので、擬似リングバックトーンの送出周期が一定でなくなり、電話をかけた相手側に違和感を与えることになり、不信感を払拭しきれないという問題点がある。
【0007】
また、送信側装置がCNG信号を送信開始するタイミングと着信側装置が擬似リングバックトーンを送信開始するタイミングは非同期であるので、最悪の場合には、擬似リングバックトーン送信開始からしばらくの間、CNG信号を検出できないことになる。この場合、被呼側の回線の直流ループ閉結後から、発呼側には回線使用料金が課金されるのでCNG信号を検定している期間も課金され、CNG信号検出までの時間がかかればかかるほど発呼側にとっては不経済となる。
【0008】
本願の目的は、CNG信号の検出を速やかに実行することによって、これらの問題点を解消し、使用の際の不快感を解消し、経済的にも有効な通信端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による通信端末装置は、1本の電話回線に接続され、装置本体に電話機の接続を可能として前記電話機による通話とファクシミリ通信を選択的に切り換える通信端末装置において、
着信のときに発呼側に送信され、周期的に繰り返される擬似リングバックトーンを生成する擬似リングバックトーン生成手段と、着信のときに鳴動させる擬似リングを生成する擬似リング生成手段と、ファクシミリ通信であることを示すCNG信号を検出するトーン検出手段と、少なくとも前記擬似リングバックトーン生成手段及び前記擬似リング生成手段の動作を制御する制御手段とを有し、
国毎のリングバックトーンの周期情報を有し、装置本体が設置される国の前記リングバックトーンの周期が所定の条件である場合には、前記擬似リングバックトーンの周期を所定の周期に設定して送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の通信端末装置によれば、装置本体が設置される国のリングバックトーンのON/OFFパターンによって変化する、着信からCNG信号検出までにかかる最長時間を、所定の範囲までに短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明による実施の形態1の通信端末装置の要部構成を示すブロック図である。
【0012】
同図において、通信端末装置1は、CPUをコアとし、装置全体を制御する主制御部2、主制御部2が読み出して実行する各種プログラムや、データテーブルを格納するための読み書き可能な不揮発性メモリ(以下、NVメモリと称す)3、主制御部2が取り扱う制御データを記憶する揮発性メモリ(以下、RAMと称す)4、操作者が各種指示入力を行うための操作手段及び表示手段と有する操作・表示部5、原稿の画像を読取るスキャナー部6、媒体に画像を印刷するプリンタ部7、データの変調/復調とCNG信号を含む各種トーン信号の出力を行うモデム8、画像データを記憶するための画像メモリ9、及び画像データを符号化/復号化する符号化・復号化部10を有し、これらはバスで繋がっている。
【0013】
更に、通信端末装置1は、主制御部2が行う処理の時間を計時するためのタイマー11、回線12からの呼び出し信号(リング信号)を検出するリング検出部13、接続部(図示せず)を介して接続された電話機14のオンフック/オフフックを検出するフック検出部15、擬似リング信号を生成する擬似リング生成部16、スピーカ17、CNG信号を含む各種トーンを検出するトーン検出部18、擬似リングバックトーンを生成する擬似RBT生成部19、回線12の接続を切り換える回線切換部20、及び発呼部21からなる。
【0014】
待機状態において回線12は、回線切換部20の接点20b側に接続されている。擬似リング生成部16及び擬似RBT生成部19には、それぞれ、出力する信号のON時間、OFF時間を設定するためのタイマー回路が内蔵され、起動がかかると、ON状態、OFF状態を所定の周期で交互に繰り返す擬似リングバックトーン信号及び擬似リングトーン信号を出力する。
【0015】
以上の構成の通信端末装置において、ファクシミリ送信、受信時の処理について概説する。
【0016】
まず、ファクシミリ送信時は、操作者によって、送信すべき原稿がスキャナー部6にセットされ、操作・表示部5より相手先のファクシミリ装置の電話番号が入力されると、主制御部2は、回線切換部20に指示して回線12の接続を接点20a側に切り換え、発呼部21に発呼を指示して回線12を経由して図示しない交換機に呼接続を要求し、モデム8にCNG信号の出力を指示する。
【0017】
スキャナー部6で読み取られた画像データは、画像メモリ9に一旦格納された後、符号化・復号化部10でMH(Modified−Huffman)、MR(Modified−Read)、MMR(Modified−Modified−Read)等の符号化方式で符号化されて、モデム8でITU−T勧告V.34、V.17、V.29、等に則って変調され、回線12を経由して図示しない受信側のファクシミリ装置に送信される。
【0018】
一方、ファクシミリ受信時は、交換機より到来する呼び出し信号(リング信号)が回線12を経由してリング検出部13に入力される。リング検出部13は、リング信号を検出すると主制御部2にその旨報告する。主制御部2は、リング検出に対応して回線切換部20に指示して回線12を接点20a側に切り換え、直流ループを閉結して呼接続を確立した後、擬似RBT生成部19に指示して擬似リングバックトーンを、回線12を経由して発呼側に送信すると共に、擬似リング生成部16に指示して擬似リング信号を生成させて電話機14のリンガーを鳴動させ、或いは/同時に、スピーカ17にてリング音を鳴動させる。
【0019】
所定の時間内にトーン検出部18によってCNG信号が検出されると、主制御部2は、擬似リングバックトーンの送信と擬似リング信号の生成を停止させ、モデム8に指示してファクシミリ受信を開始する。送信側のファクシミリ装置から送られてくる変調された画像信号はモデム8で復調され、画像メモリ9に一旦格納された後、符号化・復号化部10で復号化され、プリンタ部7で媒体上に印刷される。尚、擬似リングバックトーンの送信、擬似リング鳴動中に電話機14のフックが上げられたことがフック検出部15によって検出された場合には、主制御部2は、擬似リングバックトーンの送信と擬似リング信号の生成を停止させ、回線切換部20に指示して回線12を接点20b側に切り換え、電話機による通話を可能とするようになっている。
【0020】
ここで、上記した構成の通信端末装置の詳細な動作説明を記述する前に、擬似リングバックトーンとCNG信号の関係、及びCNG信号の検出における注意点について考察する。リングバックトーンは、被呼側を呼び出し中である旨を知らせるために交換機が発呼側に対して送出するトーンであり、擬似リングバックトーンは、被呼側の通信端末装置が呼に応答して回線の直流ループを閉結した後に、交換機に代わって擬似的に送信するトーンである。
【0021】
図8は、発明者等が主要な国や地域におけるリングバックトーンの周期的に繰り返されるON、OFF時間及び周期の規定について調査した結果である。グループ1の0.4秒ON→0.2秒OFF→0.4秒ON→2秒OFFと推移する信号は、ここでは1秒ON→2秒OFFと推移する周期が3秒の信号とみなすことができる。同様にグループ2の信号は、1秒ON→3秒OFFと推移する周期が4秒の信号とみなすことができるので、リングバックトーンは、何れの国や地域においても特定の周期を有する特徴があることがわかった。
【0022】
一方図9は、ON、OFF時間が異なる12種類の擬似リングバックトーン信号(1)〜(12)と、想定される7つの受信タイミング(1)〜(7)で受信されるCNG信号とが、任意に組み合わさった場合に起こりうる、CNG信号の検出タイミングを説明するためのタイミングチャートである。尚、各信号の網掛け部は、信号がON状態であることを示している
【0023】
送信側装置がCNG信号を送信開始するタイミングと着信側装置が擬似リングバックトーンを送信開始するタイミングは非同期であるので、各擬似リングバックトーンに対するCNG信号のONの発生タイミングは、例えば図9にCNG受信タイミング(1)〜(7)で示すようにずれる可能性がある。一方、着信側装置の擬似RBT生成部19(図1)から送信される擬似リングバックトーンは、同装置のトーン検出部18にも回り込むため、両信号のON発生が衝突した場合、即ち図9において両信号の網掛け部が時間的に重なっている場合にはCNG信号を検出できない。
【0024】
従って、例えば日本を含むグループ7(図8参照)の場合、擬似リングバックトーンをリングバックトーンの規定に合わせて1秒ON→2秒OFFの周期3秒(擬似リングバックトーン信号(3)に相当する)で送信すると、最悪の場合、即ちCNG受信タイミング(7)のCNG信号を受信している場合には、擬似リングバックトーン送信開始から10.5秒後まで、CNG信号を検出できないことになる。
【0025】
尚、図9の時間枠の中に記された数字は、その時間枠で検出可能なCNG信号の受信タイミング番号であり、且つ同じ受信タイミングのCNG信号で最初に検出される時のみを記している。従って、上記したグループ7(擬似リングバックトーン信号(3)に相当する)の擬似リングバックトーンで、CNG受信タイミング(7)のCNG信号を受信する場合、CNG信号の監視が開始されてから10.5秒経過した時点で初めてCNG信号が確認されるため、その時間枠に受信タイミング番号(7)が記されている。更に図9では、このケースのように、各擬似リングバックトーンにおいて、検出されるタイミングが最も遅い受信タイミングのCNG信号であった場合には、その受信タイミング番号を丸で囲っている。
【0026】
従って、グループ22(エジプト:擬似リングバックトーン信号(10)に相当する)の擬似リングバックトーンでは、最悪の場合(CNG受信タイミング(7)のCNG信号を受信している場合)CNG信号を検出するまでに17.5秒もかかることがわかる。一般に、被呼側の回線の直流ループ閉結後から、発呼側には回線使用料金が課金されるのでCNG信号を検定している期間も課金され、CNG信号検出までの時間がかかればかかるほど発呼側にとっては不経済である。
【0027】
また、被呼側では、CNG信号を検出するまでは装置内部のリンガー、或いは電話機のリンガーを鳴動させ、ユーザーに通話を促すようになっているので、ファクシミリ通信目的の着信であるにもかかわらず、CNG信号検出までの時間がかかればかかるほどユーザーが受話器を上げてしまう確率が高くなる。ユーザーは受話器よりCNG信号が聞こえることによって、ファクシミリ送信目的であることを認識して手動で受信モードに切り換えることになるので、CNG信号検出までの時間が長くなると被呼側のユーザーにとっても煩わしい結果を招くことになる。
【0028】
以後、上記問題点を踏まえた本実施の形態の動作について説明する。
【0029】
図2は、図1に示す本実施の形態1の通信端末装置による着信切り換え処理の流れを示すフローチャートであり、プログラムとしてNVメモリ3に格納され、主制御部2が読み出して実行するものである。図1を参照しながら、このフローチャートに基づいて先ず通信端末装置による着信切り換え処理動作について説明する。尚、装置の設置時に、ユーザー又は保守員によって設置国情報が操作・表示部5より設定され、NVメモリ3に保持されているものとする。
【0030】
回線12が回線切換部20の接点20b側に接続されている待機中に回線12からのリング信号を監視し(ステップS1)、リング検出部13がリング信号を検出すると(ステップS1、YES)、主制御部2は、回線切換部20を制御して回線12を接点20a側、即ちモデム8側に接続し(ステップS2)、CNG監視の継続時間T1を計時するためタイマー11を利用して計時を開始する(ステップS3)。次のステップ4では、擬似リングバックトーンのON/OFF時間を擬似リングバックトーン生成部19に設定し、起動する。このステップ4の擬似リングバックトーンのON/OFF時間設定及び起動処理について、図3のフローチャートに基づいて更に説明する。
【0031】
先ず、装置の設置国情報をNVメモリ3より読み出し(ステップS101)、設置国情報を基に設置国に対応したリングバックトーンのOFF時間情報をNVメモリ3内のリングバックトーン情報テーブルをサーチして読み出す(ステップS102)。尚、リングバックトーン情報テーブルには、図8に示す、グループ毎のリングバックトーンのON/OFF時間と、そのON/OFF時間を採用する国/地域名情報が、対応して予め装置製造時に格納されている。
【0032】
読み出したOFF時間情報が3.5秒以上であれば(ステップS103、YES)、読み出したOFF時間情報を擬似RBT生成部19にセットし(ステップS104)、3.5秒未満であれば(ステップS103、NO)、OFF時間情報として3.5秒を擬似RBT生成部19にセットする(ステップS105)。次に、設置国に対応したリングバックトーンのON時間情報をNVメモリ3内のリングバックトーン情報テーブルをサーチして読み出し(ステップS106)、読み出したON時間情報を擬似RBT生成部19にセットし(ステップS107)、擬似RBT生成部19を起動して擬似リングバックトーンの送信を開始し(ステップS108)、フローを終了する。
【0033】
図2に戻り、ステップ5では、擬似リングのON/OFF時間を擬似リング生成部16に設定し、起動する。このステップ5の擬似リングのON/OFF時間設定及び起動処理について、図4のフローチャートに基づいて更に説明する。
【0034】
先ず、装置の設置国情報をNVメモリ3より読み出し(ステップS201)、設置国情報を基に設置国に対応したリングバックトーンのOFF時間情報をNVメモリ3内のリングバックトーン情報テーブルをサーチして読み出し(ステップS202)、読み出したOFF時間情報を擬似リング生成部16にセットする(ステップS203)。次に、設置国に対応したリングバックトーンのON時間情報をNVメモリ3内のリングバックトーン情報テーブルをサーチして読み出し(ステップS204)、読み出したON時間情報を擬似リング生成部16にセットし(ステップS205)、擬似リング生成部16を起動して擬似リング信号の鳴動を開始し(ステップS206)、フローを終了する。
【0035】
再び図2に戻り、CNG信号の監視を開始する(ステップS6)。トーン検出部18によりCNG信号が検出されると(ステップS6、YES)、擬似リングバックトーン生成部19に指示して擬似リングバックトーンの送信を停止させると共に、擬似リング生成部16に指示して擬似リング信号の鳴動を停止させ(ステップS7)、その後所定の手順でファクシミリ通信処理を行って(ステップS8)、フローを終了する。
【0036】
一方、ステップS6でCNG信号が未検出と判断された場合は(ステップS6、NO)、電話機14の受話器が上げられたか否かをチェックし(ステップS9)、フックアップされたと判断されたならば(ステップS9、YES)、擬似リングバックトーン生成部19に指示して擬似リングバックトーンの送信を停止させると共に、擬似リング生成部16に指示して擬似リング信号の鳴動を停止させ(ステップS10)、その後、回線切換部20を制御して回線12を接点20b側、即ち電話機14側に接続し(ステップS11)、通話を可能とする(ステップS12)。
【0037】
通話の後、受話者による、例えば図示しない受信スタートボタン操作等によるファクシミリ通信の指示が入力されたか否かを監視し(ステップS13)、指示が入力された場合には(ステップS13、YES)、回線切換部20を制御して回線12をモデム8側(接点20a側)に接続し(ステップS14)、その後ステップS8に移行してファクシミリ通信を行う。一方通話の後、ファクシミリ通信の指示無く受話器が下ろされた(フックオン)場合には(ステップS13、NO)、そのまま処理を終了する。
【0038】
ステップS9でフックアップが検出されなかった場合には(ステップS9、NO)、タイマー11をチェックしてCNG監視の継続時間T1がタイムアップしたか否かを確認する(ステップS15)。タイムアップしていなければ(ステップS15、NO)ステップS6へ戻り、ステップS6、ステップS9、及びステップS15のループで、CNG信号の監視、フックアップの監視、及びタイムアップの監視を続行する。
【0039】
継続時間T1を経過した場合には(ステップS15、YES)、ステップS7へ移行してファクシミリ通信処理を行う。T1経過後、ファクシミリ通信処理を行うのは、何らかの原因でCNG信号が検出できなかった場合や、CNG信号を送信しないファクシミリ装置にも対応するためであるが、送信側ファクシミリ装置が、受信機側からのファクシミリ手順信号を待つ時間は、発呼後35秒間と定められているので、T1は例えば長くとも25秒程度に設定することが望ましい。
【0040】
以上の信号処理による具体的な処理結果を、図5を参照しながら説明する。上記した本実施の形態による信号処理によれば、設置された国において規定されているリングバックトーンのON時間とOFF時間を参照し、ON時間は規定値のまま擬似リングバックトーンのON時間とし、OFF時間はCNG信号の周期である3.5秒未満であれば擬似リングバックトーンのOFF時間を自動的に3.5秒にしている。
【0041】
即ち、図5を参照して説明すると、例えばグループ6(図8参照)の場合、前記した考察では、CNG信号検出までに最長の場合には10秒かかると想定されたが、擬似リングバックトーンのOFF時間が1.0秒から3.5秒に自動的に変換されるため(擬似リングバックトーン送信タイミング6に相当)、最長でも4.5秒で検出が可能となり、最大5.5秒の短縮が可能となる。同様に、グループ1、7(図8参照)では、CNG信号検出までに最長の場合には10.5秒かかると想定されたが、擬似リングバックトーンのOFF時間が2.0秒から3.5秒に自動的に変換されるため、同じく最長でも4.5秒で検出が可能となり、最大6.0秒の短縮が可能となる。同様に、グループ2、8(図8参照)では、CNG信号検出までに最長の場合には8秒かかると想定されたが、擬似リングバックトーンのOFF時間が3.0秒から3.5秒に自動的に変換されるため、同じく最長でも4.5秒で検出が可能となり、最大3.5秒の短縮が可能となる。
【0042】
同様に、グループ18(図8参照)では、CNG信号検出までに最長の場合には8.5秒かかると想定されたが、擬似リングバックトーンのOFF時間が3.0秒から3.5秒に自動的に変換されるため(擬似リングバックトーン送信タイミング9に相当)、最長でも5.0秒で検出が可能となり、最大3.5秒の短縮が可能となり、更にグループ22では、CNG信号検出までに最長の場合には17.5秒かかると想定されたが、擬似リングバックトーンのOFF時間が1.0秒から3.5秒に自動的に変換されるため(擬似リングバックトーン送信タイミング11に相当)、最長でも5.5秒で検出が可能となり、最大12.0秒の短縮が可能となる。
【0043】
以上のように、本実施の形態の通信端末装置によれば、ファクシミリ通信目的の着呼時に、不要に長時間にわたりリンガーが鳴動することなく速やかに自動的にファクシミリ通信に移行するので、ユーザーの煩雑さを軽減できる。更に、ファクシミリ通信目的の発呼側に対しては、課金される回線使用料の負担が軽減できるとともに、通話目的の発呼者に対しては、擬似リングバックトーンが周期的に聞こえるので、違和感無く電話呼び出し中である旨を伝えることができる。
【0044】
実施の形態2.
本発明による実施の形態2の通信端末装置が、前記した実施の形態1の通信端末装置と主に異なる点は、ユーザーによるFAX優先モードの設定を可能とし、FAX優先モードがONに設定されたならば、所定の時間、例えば、擬似リングバックトーンの最初の1周期の間、擬似リングの鳴動を抑制するようにしたものである。
【0045】
従って、本実施の形態の通信端末装置の要部構成は、FAX優先モードの設定を行なうための操作メニューが操作表示部5に設けられている点、各種プログラムを格納するためのNVメモリ3のプログラムの内容が一部異なる点、及び擬似リング生成部16に、起動後、所定の期間、擬似リング信号生成を抑制するための図示しない擬似リング生成遅延回路が備えられている点、以外においては図1に示す実施の形態1の通信端末装置1の要部構成と共通するため、共通する部分には同符号を付して、或いは図面を省いて説明を省略し、異なる点を重点的に説明する。尚、必要に応じて図1を参照し、操作表示部、NVメモリ、及び擬似リング生成部おいても、便宜上、同符号を付して説明する。
【0046】
図6は、本実施の形態の通信端末装置の操作・表示部5の操作メニューから、ユーザーによって実行されるFAX優先モードのON/OFF設定処理のフローチャートである。図1を参照しながら、このフローチャートに基づいてFAX優先モードのON/OFF設定処理動作について説明する。尚、FAX優先モードのON/OFF設定とは、本実施の形態の通信端末装置が接続される回線を、ファクシミリ優先で使用するか、電話機優先で使用するかをユーザーが選択するものであって、任意のタイミングで設定できるものとする。
【0047】
ユーザーが操作メニューから本設定を選択すると指示入力待ちとなり、FAX優先が選択されたならば(ステップS301、YES)、NVメモリ3中のFAX優先モードフラグをONにセットし(ステップS302)、FAX優先が選択されなかった(電話機優先)場合には(ステップS301、NO)、FAX優先モードフラグをOFFにセットし(ステップS303)、フローを終了する。尚、デフォルト(工場出荷時の初期値)は、FAX優先モードフラグはONである。
【0048】
次に、本実施の形態の通信端末装置による着信切り換え処理について説明するが、本実施の形態の通信端末装置による着信切り換え処理は、一部を除いて前記した図2のフローチャートに基づいて説明した実施の形態1の通信端末装置よる着信切り換え処理と同じである。従って、動作内容が共通するステップについては説明を省略し、異なるステップであるステップS5の動作内容を重点的に以下に説明する。
【0049】
図7は、本実施の形態の通信端末装置が、図2のフローチャートに基づいて処理を実行する際に、ステップS5において実行する擬似リングのON/OFF時間設定及び起動処理のフローチャートである。ここで、ステップS401〜S405は、前記した実施の形態1で説明した図4のフローチャートのステップS201〜S205に対応してそれぞれ同じ処理を実行し、ステップS409は、図4のフローチャートのS206に対応して同じ処理を実行する。
【0050】
従って、ステップS401〜S405において、擬似リングの所定のON、OFF時間を擬似リング生成部16にセットした後、FAX優先モードフラグを読み出す(ステップS406)。ここでフラグがON、即ちFAX優先モードである場合には(ステップS406、YES)、擬似リング生成部16内部の擬似リング生成遅延回路をONに設定し(ステップS407)、ステップS409進み、フラグがOFFでFAX優先モードでないと判断した場合には(ステップS406、NO)、擬似リング生成遅延回路をOFFに設定し(ステップS408)、ステップS409へ進む。
【0051】
擬似リング生成遅延回路には予め所定の遅延時間が設定されており、ONに設定されると、ステップS409で擬似リング生成部に起動がかかった後、所定の時間だけ擬似リングの生成を抑制する働きをする。
【0052】
以上のように、本実施の形態の通信端末装置によれば、FAX優先モードが選択可能であり、FAX優先モード時には、着信後、所定の期間擬似リングを鳴動しないようにすることができる。従ってFAX優先モード時には、この無鳴動期間中にCNG信号を検出する可能性が高いので、ユーザーが擬似リンガー音を聞くことなく自動受信することになり、ファクシミリ通信を頻繁に使用するユーザーにとって、不要な鳴動に煩わされることなく利便性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による実施の形態1の通信端末装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す本実施の形態1の通信端末装置による着信切り換え処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートのステップS4の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図2のフローチャートのステップS5の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1におけるCNG信号の検出タイミングを説明するためのタイミングチャートである。
【図6】実施の形態2の通信端末装置において、ユーザーによって実行されるFAX優先モードのON/OFF設定処理のフローチャートである。
【図7】実施の形態2の通信端末装置が、図1のフローチャートに基づいて処理を実行する際に、ステップS5において実行する処理のフローチャートである。
【図8】主要な国や地域におけるリングバックトーンのON、OFF時間及び周期の規定について調査した結果一覧を示す図である。
【図9】擬似リングバックトーンとCNG信号の関係についての考察に供するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 通信端末装置、
2 主制御部、
3 NVメモリ、
4 RAM、
5 操作・表示部、
6 スキャナー部、
7 プリンタ部、
8 モデム、
9 画像メモリ、
10 符号化・復号化部、
11 タイマー、
12 回線、
13 リング検出部、
14 電話機、
15 フック検出部、
16 擬似リング生成部、
17 スピーカ、
18 トーン検出部、
19 擬似RBT生成部、
20 回線切換部、
21 発呼部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の電話回線に接続され、装置本体に電話機の接続を可能として前記電話機による通話とファクシミリ通信を選択的に切り換える通信端末装置において、
着信のときに発呼側に送信され、周期的に繰り返される擬似リングバックトーンを生成する擬似リングバックトーン生成手段と、
着信のときに鳴動させる擬似リングを生成する擬似リング生成手段と、
ファクシミリ通信であることを示すCNG信号を検出するトーン検出手段と、
少なくとも前記擬似リングバックトーン生成手段及び前記擬似リング生成手段の動作を制御する制御手段と
を有し、
国毎のリングバックトーンの周期情報を有し、装置本体が設置される国の前記リングバックトーンの周期が所定の条件である場合には、前記擬似リングバックトーンの周期を所定の周期に設定して送信する
ことを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】
前記擬似リングバックトーンと前記リングバックトーンはONとOFFが周期的に繰り返される信号であって、前記擬似リングバックトーンの周期を設定するとき、設定後の信号のON時間が、前記設置する国の前記リングバックトーンのON時間とされることを特徴とする請求項1記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記擬似リングバックトーンの周期を設定するとき、設定後のOFF時間が3.5秒であることを特徴とする請求項2記載の通信端末装置。
【請求項4】
前記電話回線を、ファクシミリ通信優先で使用するか、電話機による通話優先で使用するかを選択設定する選択手段を有し、
前記ファクシミリ通信優先が選択設定されている場合には、所定の時間、前記擬似リングを鳴動させないことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載の通信端末装置。
【請求項5】
電話機のフックアップ検出手段を備え、
所定期間、CNG信号の検出、及び電話機のフックアップ検出が確認されない場合にはファクシミリ通信を実行することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1に記載の通信端末装置。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−93618(P2010−93618A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262728(P2008−262728)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】