説明

通信装置、その処理方法及びプログラム

【課題】
通信の停止を伴わずに、バースト通信時の信号に起因して音声信号へ可聴ノイズが混入することを抑制する技術を提供する。
【解決手段】
通信装置は、バースト通信により信号を送信する。ここで、通信装置は、音声を含む信号を処理する音声処理手段と、前記音声処理手段により処理される信号への可聴ノイズの混入を抑制する音声保護モードを設定するモード設定手段と、前記音声保護モードが設定されている場合、前記バースト通信により送信される信号のバースト長及びバースト間隔の少なくともいずれかを調整する調整手段と、前記調整手段による調整後の信号を送信する通信手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、その処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
TDMA(Time Division Multiple Access)や無線LAN(Local Area Network)などのデジタル無線通信においては、バースト的に高周波信号を放射して信号の通信を行なう(バースト通信)。このようなバースト的に放射される無線信号を起因とした可聴ノイズは、当該無線信号を放射する装置(自装置)や付近の他装置の内部に設けられる音声処理回路に混入することが知られている。
【0003】
このような現象は、例えば、撮像装置(例えば、デジタルカメラ)で撮像した動画等を、無線LANを用いて転送している間に録音や録画機能を同時に働かせた場合、当該録音等された音声信号にバースト状のノイズが重畳されることにより発生する。特に、撮像装置に内蔵されたマイクではなく、外付けのマイク(外部マイク)を使用した場合にそのような傾向が顕著に現れる。
【0004】
ここで、この現象のメカニズムについて簡単に説明する。このような現象の発生要因としては、まず、外部マイクに使用されているケーブルが無線LANの高周波信号に対してアンテナとして機能してしまう。これにより、高周波信号が撮像装置の内部に取り込まれ、当該高周波信号が音声信号の増幅器(例えば、トランジスタやダイオード等)を通過する際に、当該増幅器が高周波信号に対して疑似的に検波回路として作用してしまう。そして、高周波信号が包絡線検波される。このとき、包絡線信号が可聴域の周波数成分を持つことで可聴ノイズとして認識される。
【0005】
このような撮像装置における可聴ノイズに対する対策として、録画又は録音時に際して、無線通信で用いる搬送波の生成を停止する技術が提案されている(特許文献1)。一般に、無線通信のバースト送信が包絡線検波されると、その検波信号は矩形状の波形となる。検波信号の矩形波は、バーストの周期と同じ周期となり、パルス幅は、バースト長と同じになる。
【0006】
ここで、図8(a)に示すように(特に、点線枠内の波形の概略図)、矩形波の振幅をAとし、その周期をTとし、パルス幅(=バースト長)をτとしてフーリエ級数展開式を求めると、以下の式が得られる。

【0007】
上式の第1項は直流成分であり可聴性はない。一般に、n=1の場合の第2項が周波数成分としては最大になり、その周波数は周期Tの逆数となる。n=1の場合に周波数成分が最大になるのは、2τ=Tの関係が成り立つ場合である。つまり、周波数成分は、バースト間隔を周期Tとバースト長τとの差(T−τ)とすると、バースト長とバースト間隔とが等しくなったときに最大になる。
【0008】
一方、各周波数成分を小さくするためには、τに対してTを十分に大きくするか、τをTに近づけ、係数であるsin関数の値を0に近づければ良い。つまり、バースト長とバースト間隔との比が大きくなると、周波数成分は小さくなる。また、スペクトラムを構成する周波数は、上式より周期Tの逆数の整数倍となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−111883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、人間の可聴周波数は、20Hzから20kHz程度までとされており、その範囲外の信号は音声として認識されない。また、可聴域の周波数成分があっても、その振幅が十分に小さければ、音声として認識されない。
【0011】
ここで、例えば、IEEE802.11a/b/g(無線LANの規格)に準拠した通信を行なう装置では、一般に、TCP/IPの最大パケットサイズである1500バイトを1パケットのデータ量として通信を行なう。1500バイトを越えるデータを送信する場合、複数のパケットに分割し、当該分割したパケットを連続して送信する。IEEE802.11gにおける実効的なスループットは20数Mbpsである。
【0012】
ここで、図8(a)は、バースト長を250μs、バースト間隔を100μsと仮定した場合に包絡線検波された検波信号の波形を示している。なお、縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。また、図8(b)は、図8(a)に示す包絡線波形(包絡線検波された検波信号)をフーリエ解析した結果を示している。なお、縦軸は振幅を示し、横軸は、周波数帯域を示している。
【0013】
図8(b)に示すように、検波信号においては、350μs(バースト長250μs+バースト間隔100μs)の逆数に相当する2857Hzの成分が大きくなっている。このノイズ成分は、上述した可聴域に相当するため、音声信号に重畳された場合、人はそれを可聴ノイズとして感知してしまう。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、通信の停止を伴わずに、バースト通信時の信号に起因して音声信号へ可聴ノイズが混入することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、バースト通信により信号を送信する通信装置であって、音声を含む信号を処理する音声処理手段と、前記音声処理手段により処理される信号への可聴ノイズの混入を抑制する音声保護モードを設定するモード設定手段と、前記音声保護モードが設定されている場合、前記バースト通信により送信される信号のバースト長及びバースト間隔の少なくともいずれかを調整する調整手段と、前記調整手段による調整後の信号を送信する通信手段とを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通信の停止を伴わずに、バースト通信時の信号に起因して音声信号へ可聴ノイズが混入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる通信装置を適用した撮像装置10の構成の一例を示す図。
【図2】調整部37における無線信号の調整方法の一例を説明するための図。
【図3】調整部37における無線信号の調整方法の一例を説明するための図。
【図4】図1に示す撮像装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図5】図1に示す撮像装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図6】図1に示す撮像装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図7】図1に示す撮像装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図8】従来技術を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係わる実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施の形態に係わる通信装置を適用した撮像装置10の構成の一例を示す図である。
【0020】
撮像装置10には、アンテナ11と、無線部12と、記憶部13と、操作部14と、表示部15と、音声処理部16と、マイク切替スイッチ17と、制御部22とが設けられる。この他、撮像装置10には、外部マイクロフォン用コネクタ(以下、外部マイク用コネクタと略す)18、内部マイクロフォン(以下、内部マイクと略す)19、レンズ20、画像処理部21も設けられる。
【0021】
無線部12及びアンテナ11は、無線通信機能を実現するための構成である。撮像装置10は、無線部12及びアンテナ11を介して他装置との間で無線通信(本実施形態においては、無線LANを介した通信)を行なう。無線部12及びアンテナ11においては、バースト的に高周波信号を放射して信号を送信する(バースト通信)。
【0022】
レンズ20及び画像処理部21は、撮像機能を実現するための構成である。撮像装置10は、画像処理部21において、レンズ20を介して取得した画像情報に対して画像処理を行なう。
【0023】
内部マイク19は、音声を電気的に取得(電気信号に変換して取得)し、装置内に入力する。内部マイク19は、撮像装置10の内部に設けられる。外部マイク用コネクタ18は、外付けマイク(外部マイク)を接続するためのコネクタ(接続端子)である。すなわち、撮像装置10は、外部マイクの接続が可能に構成される。
【0024】
音声処理部16は、内部マイク19又は外部マイクのいずれか一方から入力される音声信号を処理する。マイク切替スイッチ(切替手段)17は、内部マイク19及び外部マイクのいずれかを切り替えて選択し、当該選択したマイクからの音声信号を音声処理部16に入力する。
【0025】
記憶部13は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で実現され、各種情報を記憶する。
【0026】
操作部14は、例えば、各種ボタン等で実現され、ユーザからの指示を装置内に入力する。表示部15は、例えば、液晶ディスプレイ等で実現され、ユーザに対して各種情報を表示する。なお、操作部14及び表示部15は、例えば、タッチパネルとして実現されても良い。
【0027】
制御部22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等で実現され、撮像装置10における各構成の動作を統括制御する。制御部22においては、無線通信が行なわれている間に、音声処理部16が動作し且つ外部マイクが使用されている場合、撮像装置10を音声保護モードに移行させる。音声保護モードは、音声処理部16により処理される音声信号への(無線)通信を起因とした可聴ノイズの混入を抑制するためのモードである。なお、音声保護モードは、自動的に開始されても良いし、ユーザからの操作部14等を介した指示に対応して開始されても良い。例えば、(自装置の)付近に音声処理を行なう装置があるには、ユーザからの指示に基づいて音声保護モードが開始されることになる。
【0028】
制御部22には、機能的な構成として、スループット計測部33と、スループット判定部34と、調整部37と、モード設定部38とが設けられる。
【0029】
モード設定部38は、音声保護モードを設定するか否かを判定し、その判定結果に基づいて音声保護モードを設定する。モード設定部38には、スイッチ検出部35が設けられる。スイッチ検出部35は、マイク切替スイッチ17の状態をモニタして、内部マイク19、外部マイクのいずれが使用されているかを検出する。より具体的には、モード設定部38においては、スイッチ検出部35により外部マイクが使用されていると判定された場合に、音声保護モードを設定する。
【0030】
可聴ノイズ検出部36は、音声処理部16により処理された音声信号から可聴ノイズを検出する。可聴ノイズは、例えば、フーリエ解析等を用いて検出すれば良い。
【0031】
調整部37は、無線部12により生成される無線信号の調整を行なう。調整部37には、無線部12により生成される無線信号のバースト長(パルス幅)を調整するバースト長調整部31と、無線部12により生成される無線信号のバースト間隔を調整するバースト間隔調整部32とが設けられる。すなわち、調整部37においては、バースト長及びバースト間隔の少なくともいずれかを変更することで無線信号の調整を行なう。
【0032】
スループット計測部33は、調整部37により無線信号が調整された後、当該無線信号のスループット(例えば、送信速度)を計測する。スループット判定部34は、当該計測されたスループットが所定の水準を確保できているか否かの判定を行なう。スループット判定部34により所定の水準を確保できていないと判定された場合には、例えば、調整部37において、無線信号の調整が再度行なわれる。その他、場合によっては、無線信号の送信自体を中止する場合もある。以上が、撮像装置10における構成の一例についての説明である。
【0033】
次に、調整部37における無線信号の調整方法について2通り例を挙げて説明する。ここでは、撮像装置10において、無線通信が行なわれている間に、音声処理部16が動作している場合について考えてみる。
【0034】
まず、図2(a)及び図2(b)を用いて、第1の調整方法について説明する。
【0035】
音声処理部16に処理される信号に可聴ノイズが混入する可能性がある場合、撮像装置10は、制御部22による制御に従って音声保護モードを開始(移行)し、音声保護処理を行なう。音声保護モード時には、制御部22は、バースト間隔又はバースト長を制御し、包絡線波形(のスペクトラム)に含まれる可聴ノイズの低減を図る。
【0036】
ここで、例えば、無線LANを介した通信(IEEE802.11a/b/g)においては、TCP/IPの最大パケットサイズである1500バイトを1単位として1パケットを形成する場合が多い。そのため、1500バイトを越えるデータを送信する場合、撮像装置10においては、送信データをTCP/IPのデータとして1500バイト以下のデータに分割し、当該分割データ各々を所定の時間間隔を取りながら順次送信する。これにより、このデータ送信に際しては、一定時間以上のバースト間隔を確保する。
【0037】
第1の調整方法としては、撮像装置10は、バースト間隔調整部32において、図8(a)で説明した検波信号(IEEE802.11gの信号)のバースト間隔を調整し、図2(a)に示すように、バースト周期を調整前よりも長くする。なお、この場合、調整後のバースト周期は、調整前の25倍となっている。
【0038】
このとき、データの送信処理を開始した後、全てのデータの送信が終わるまでに要する送信(全体)時間において、実際に送信が行なわれる送信(実)時間の占める割合は、約3%となる。
【0039】
ここで、図2(a)に示す包絡線波形は、図2(b)に示すスペクトラムを有する。バースト周期が25倍に調整されているため、包絡線波形のスペクトラムは、当該調整前の最大成分であった2857Hzの25分の1に相当する114Hzを基本とするスペクトラムに変化する。
【0040】
また、114Hzの振幅は、調整前の2857Hzの10分の1程度まで低減されている。114Hzの逓倍に当たる周波数帯においても、大きな振幅は現れていない。すなわち、バースト周期を調整することにより、無線信号における可聴ノイズが低減されている。この場合、スループットは、バースト周期が25倍になったことに伴って調整前の25分の1まで低下する。
【0041】
次に、図3(a)及び図3(b)を用いて、第2の調整方法について説明する。
【0042】
第2の調整方法においては、可聴ノイズの低減及びスループットの低減の最適化を図るため、制御部22の可聴ノイズ検出機能(可聴ノイズ検出部36)により可聴ノイズを検出し、その検出結果に基づいて、無線信号の調整範囲を決める。
【0043】
例えば、無線LANの規格であるIEEE802.11nに従ったデータ送信を行なう場合について考えてみる。IEEE802.11nにおいては、1パケットのデータ量は、複数のフレームを一度にまとめて送信するアグリゲーション(多重化)により、最大64kBまで許容されている。
【0044】
ここで、IEEE802.11nにおいては、最低速のデータレートは、6.5Mbpsと規定されている。このとき、データの送信に必要な時間は、約80.7msとなる。データ送信時には、データパケットと、Block ACK Requestパケットとが交互に送信される。なお、Block ACK Requestパケットは、複数のデータに対してACK(Acknowledgement)を一括して要求する役割を果たす。
【0045】
このような場合、撮像装置10は、バースト長調整部31において、バースト長を調整するため、パケット長を64kB、データレートを6.5Mbpsに設定する。また、バースト間隔調整部32において、送信データのパケットとBlock ACK Requestパケットとの間隔を0.15msとする。更に、Block ACK Requestパケットのバースト長を0.05msとし、Block ACK Requestパケットと次のデータパケットとの間隔を0.1msとする。すなわち、通常の通信時(言い換えれば、音声保護モードでない場合)よりも、バースト長を長くし、また、バースト間隔を短くする。なお、この調整は、音声処理部16に処理される信号から検出された可聴ノイズに基づいて行なわれる。
【0046】
このような処理により包絡線検波された検波信号(包絡線波形)は、図3(a)に示す波形が得られ、このときの包絡線波形は、図3(b)に示すスペクトラムが得られる。この場合、送信(全体)時間中における大部分の時間帯で送信状態となっており、約0.3%の時間帯でのみ送信停止状態になっている。図3(b)に示すように、このときの信号のノイズレベルは、実施形態1の図2(b)と比較しても大幅に減少しているのが分かる。
【0047】
つまり、バースト長を長くし、バースト間隔を短くするようにした場合にも、上記第1の調整方法と同様に、可聴ノイズの低減を図れる。通常、バースト長とバースト間隔とを入れ替えた場合の包絡線波形のスペクトラムは、直流成分(DC成分)を除いたときには等価となる。
【0048】
以上のように、第1の調整方法においては、バースト周期を調整することにより可聴ノイズの低減を図り、第2の調整方法においては、バースト長(バースト長及びバースト間隔)を調整することにより可聴ノイズの低減を図る。
【0049】
すなわち、これらの調整方法においては、バースト長とバースト間隔との(長さの)比を所定の基準よりも大きくすることにより、包絡線波形における各周波数成分を小さくする。その結果として、可聴ノイズの低減を図っている。
【0050】
次に、図1に示す撮像装置10における処理の流れの一例について説明する。ここでは、図4〜図7を用いて、種々の条件下における撮像装置10の動作について説明する。
【0051】
まず、図4を用いて、撮像装置10において、無線LANを介して(所定の通信先に)録画データをリアルタイムに送信する場合の処理の流れについて説明する。
【0052】
なお、この処理においては、撮像装置10は、内部マイク19が使用されていれば、無線LANを介した通信に制限はかけない(すなわち、音声保護モードにはならない)。外部マイク用コネクタ18を介して外部マイクが使用されている場合、撮像装置10は、音声保護モードを開始し、可聴ノイズの低減を図る。このとき、音声保護モードとしての制御は、バースト間隔(パケット間隔)を長くする方法でも、バースト長(パケット長及びデータレート)を長くする方法のいずれを採用しても良い。
【0053】
撮像装置10は、まず、アンテナ11及び無線部12を介して無線LAN通信の接続を開始するとともに、録画(動画の撮像)を開始する(S101)。このとき、撮像装置10は、スイッチ検出部35において、内部マイク19を使用しているのか外部マイクを使用しているのか判定する。この判定は、上述した通り、マイク切替スイッチ17の状態に基づいて行なわれる。
【0054】
判定の結果、内部マイク19を使用していれば(S102でNO)、可聴ノイズの影響が小さいので、撮像装置10は、音声保護モードを動作させず、そのままストリーミングの送信を許可する(S114)。その後、録画が完了すると(S115)、撮像装置10は、この処理を終了する。
【0055】
また、S102の判定の結果、外部マイクが使用されていれば(S102でYES)、撮像装置10は、音声保護モードを開始する(S103)。音声保護モードを開始すると、撮像装置10は、バースト長調整部31において、バースト長を調整するため、パケット長及びデータレートを設定する。また、バースト間隔調整部32において、バースト間隔を調整するため、パケット間隔を設定する(S104)。なお、これらの設定(パケット長、パケット間隔及びデータレートの設定)は、ユーザーが意識しなくても自動的に行なわれるようにしても良いし、また、ユーザーの好みでカスタマイズできるようにしても良い。また更に、数段階の設定を予め準備しておき、その中からユーザ又は自動的に選ぶようにしても良い。
【0056】
続いて、撮像装置10は、スループット計測部33において、設定変更後の(実効)スループットを計測する(S105)。すなわち、S104の処理での設定変更を起因として無線LANのスループットが低下する可能性があるため、このような計測を行なう。
【0057】
スループットの計測が済むと、撮像装置10は、スループット判定部34において、当該計測されたスループットが必要な水準(所定の水準)を確保できているか否かを判定する(S106)。なお、録画データのストリーミングの送信に必要なスループットは、画質やフレーム数に依存するため一概には決められない。例えば、画素数が1920x1080であれば、ストリーミングの送信には20Mbps程度必要となり、また、例えば、画素数が1440x1080であれば、ストリーミングの送信には10Mbps程度必要となる。
【0058】
S106の判定の結果、スループットが不足しており、必要なスループットが確保できない場合(S106でYES)、撮像装置10は、リアルタイムにデータを送信できないため、その旨をユーザーに通知する。そして、データ送信を中止(一旦中止)する(S107)。その後、録画が完了すれば(S108)、撮像装置10は、音声保護モードを解除するとともに(S109)、パケット長、パケット間隔及びデータレートの制限を解除(すなわち、元の設定に戻す)する(S110)。
【0059】
また、S106の判定の結果、必要な水準以上のスループットを確保できていれば(S106でNO)、音声保護モード動作中であってもリアルタイムにデータを送信できるため、撮像装置10は、ストリーミングの送信を許可する(S111)。その後、録画が完了すると(S112)、撮像装置10は、モード設定部38において、音声保護モードを解除した後(S113)、この処理を終了する。
【0060】
次に、図5を用いて、撮像装置10において、無線LANを介してTV会議を行なう場合の処理の流れについて説明する。
【0061】
撮像装置10は、まず、アンテナ11及び無線部12を介して無線LAN通信の接続を開始するとともに、TV会議を開始する(S201)。このとき、撮像装置10は、スイッチ検出部35において、内部マイク19を使用しているのか外部マイクが使用されているのか判定する。外部マイクが使用されている場合、可聴ノイズが混入したTV会議用データ(映像信号)が通信相手に送信されてしまうため、このような判定を行なう。
【0062】
判定の結果、外部マイクが使用されていなければ(S202でNO)、撮像装置10は、特に通信に制限を設けず(すなわち、音声保護モードを開始せずに)、TV会議の実行を許可する(S211)。その後、TV会議が完了すると(S212)、撮像装置10は、この処理を終了する。
【0063】
一方、外部マイクが使用されていれば(S202でYES)、撮像装置10は、音声保護モードを開始する(S203)。音声保護モードを開始すると、撮像装置10は、上述した図4の処理と同様に、パケット長、パケット間隔及びデータレートの設定を変更するとともに(S204)、スループットの計測を行なう(S205)。
【0064】
そして、必要なスループットが確保できていなければ(S206でYES)、TV会議自体が成立しないため、撮像装置10は、TV会議を実行できない旨をユーザに通知する(S207)。
【0065】
すなわち、TV会議を行なう場合、リアルタイム性が重要であるため、画像及び音声の通信を止めることはできない。そのため、スループットが確保できない場合にはTV会議自体が成立しないので、TV会議を中止させる。なお、一般に、TV会議システムでは、ISDNが2回線使用されている場合が多い。そのため、TV会議で必要なスループットは、例えば、ISDN2回線分の128kbpsあれば良い。IEEE802.11gのスループットは20Mbps以上あるため、音声保護モード時のスループットを、通常時の100分の1程度まで低下させたとしても、TV会議システムを運用することができる。
【0066】
その後、撮像装置10は、装置全体の設定をやり直すため、再度、S201の処理に戻る。すなわち、TV会議開始前の状態に戻る。
【0067】
一方、必要なスループットが確保できていれば(S206でNO)、撮像装置10は、TV会議の実行を許可する(S208)。そして、TV会議が完了すれば(S209)、撮像装置10は、音声保護モードを解除した後(S210)、この処理を終了する。
【0068】
次に、図6を用いて、撮像装置10において、録画(動画の撮像)中に、無線LANを介して撮像装置10内に格納されているデータを送信する場合の処理の流れについて説明する。
【0069】
撮像装置10は、まず、アンテナ11及び無線部12を介して無線LAN通信の接続を開始して(既存)データの送信を開始するとともに(S301)、音声を含む動画の撮像を開始する(S302)。このとき、撮像装置10は、スイッチ検出部35において、内部マイク19を使用しているのか外部マイクが使用されているのか判定する。
【0070】
外部マイクが使用されていなければ(S303でNO)、撮像装置10は、そのまま動画の撮像を継続し、動画の撮像が完了すると(S314)、この処理を終了する。
【0071】
一方、外部マイクが使用されていれば(S303でYES)、撮像装置10は、音声保護モードを開始する(S304)。音声保護モードを開始すると、撮像装置10は、上述した図4の処理と同様に、パケット長、パケット間隔及びデータレートの設定を変更するとともに(S305)、スループットの計測を行なう(S306)。
【0072】
この場合、送信データは、過去に撮像されたものであり、既に存在するデータであるので、データ送信にリアルタイム性は要求されない。そのため、計測されたスループットがある程度遅くても、データ送信自体は継続して行なう。但し、あまりにもデータ送信速度が低下する場合、ユーザに不快感を抱かせてしまう可能性がある。
【0073】
そこで、計測されたスループットが実使用上影響ないか否かの判定を行なう(S307)。この結果、所定の水準以上のスループットが確保できていれば(S307でNO)、撮像装置10は、データ送信を継続して行なう。そして、動画の撮像の完了後(S312)、音声保護モードを解除する(S313)。
【0074】
一方、S307の判定の結果、実使用上影響が出るほどデータ送信の速度が低下する場合(S307でYES)、撮像装置10は、データ送信が遅延する旨をユーザに通知する(S308)。このとき、データ送信を継続するか否かをユーザに選択させても良い。
【0075】
その後、動画の撮像が完了すると(S309)、撮像装置10は、音声保護モードを解除するとともに(S310)、データ送信の遅延が解消された旨をユーザに通知する(S311)。その後、撮像装置10は、この処理を終了する。
【0076】
次に、図7を用いて、外部装置(例えば、PC(Personal Computer))等から無線LANを介した遠隔制御で撮像装置10に録画(動画を撮像)させる場合の処理の流れについて説明する。
【0077】
撮像装置10は、まず、アンテナ11及び無線部12を介して無線LAN通信の接続を開始した後、当該無線LANを介した外部装置からの遠隔制御により動画の撮像を開始する(S401)。このとき、撮像装置10は、スイッチ検出部35において、内部マイク19を使用しているのか外部マイクが使用されているのか判定する。
【0078】
判定の結果、外部マイクが使用されていなければ(S402でNO)、撮像装置10は、外部装置の指示に従って動画を撮像した後、この処理を終了する。一方、外部マイクが使用されていれば(S402でYES)、撮像装置10は、音声保護モードを開始する(S403)。音声保護モードを開始すると、撮像装置10は、上述した図4の処理と同様に、パケット長、パケット間隔及びデータレートの設定を変更するとともに(S404)、スループットの計測を行なう(S405)。そして、計測されたスループットで遠隔制御に必要なスループットが確保できているか否かを判定する(S406)。
【0079】
判定の結果、必要なスループットが確保できている場合には(S406でNO)、撮像装置10は、そのまま撮像動作を継続する。遠隔制御(遠隔操作)においては、上述したTV会議の場合(図5参照)と同様に、リアルタイム性が重要となる。また、遠隔制御時においては、撮像装置10で撮像される画像を制御元(外部装置)へ随時送信する必要がある。このような画像の画質は、撮像装置10において撮像される画質より劣っていても、必要最低限の画質が確保できれば良いと考えられる。
【0080】
そのため、スループットが不足している場合(S406でYES)、撮像装置10は、送信画像の画質を調整し、必要とされるスループットの水準を引き下げる(S407)。すなわち、データレート等を再調整する。なお、どうしても画像の送信に必要なスループットが確保できない場合には、音声保護モード動作中は画像の送信を停止することを選択肢の一つに含めても構わない。なお、画質の調整は、自動的に行なっても良いし、ユーザが調整するようにしても良い。
【0081】
以上説明したように本実施形態によれば、無線通信中に内蔵マイク及び外部マイクのいずれが使用されているかを検出し、外部マイクが使用される場合には音声保護モードに切り替える。そのため、ユーザに特に意識させず、ノイズの少ないクリアな音声信号を無線で通信することができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、無線信号のバースト間隔及びバースト長の少なくともいずれかを変更して可聴ノイズを低減させるため、無線通信を継続したまま、可聴ノイズを低減できる。これにより、従来のように可聴ノイズを低減させるために無線通信を停止する必要がなくなる。また、このような音声保護モードで動作した場合、自装置以外の音声処理回路においても、当該自装置が放射する高周波信号に起因した可聴ノイズを低減させることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、上述した通り、バースト間隔及びバースト長の少なくともいずれかを変更することにより、可聴ノイズを低減させる。すなわち、送信パケットの間隔、パケット長、データレートの制御のみで可聴ノイズを低減できるため、既存の装置にも容易に処理を適用でき、また、追加のハードウェア構成等も不要である。
【0084】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0085】
例えば、上述した説明においては、本発明の一実施の形態に係わる通信装置を撮像装置10に適用した場合について説明したが、これに限られない。すなわち、音声を含む信号を取得(例えば、録画、録音)する機能と、通信を行なう機能とを有する装置であれば、どのような装置であっても良い。
【0086】
また、例えば、上述した説明においては、外部マイクが使用されているか又はユーザから指示があったときに、音声保護モードが開始される場合について説明したが、これに限られない。例えば、可聴ノイズ検出部36において、音声処理部16により処理される信号に所定の基準を越える可聴ノイズが混入している場合に音声保護モードが開始されても良い。
【0087】
(その他の実施形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バースト通信により信号を送信する通信装置であって、
音声を含む信号を処理する音声処理手段と、
前記音声処理手段により処理される信号への可聴ノイズの混入を抑制する音声保護モードを設定するモード設定手段と、
前記音声保護モードが設定されている場合、前記バースト通信により送信される信号のバースト長及びバースト間隔の少なくともいずれかを調整する調整手段と、
前記調整手段による調整後の信号を送信する通信手段と
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記調整手段は、
前記バースト通信により送信される信号における前記バースト長と前記バースト間隔との比を所定の基準よりも大きくする
ことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記音声処理手段により処理されている信号から可聴ノイズを検出する可聴ノイズ検出手段
を更に具備し、
前記調整手段は、
前記検出された可聴ノイズに基づいて、前記バースト通信により送信される信号のバースト長及びバースト間隔の少なくともいずれかを調整する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の通信装置。
【請求項4】
音声信号を取得する内部マイクロフォンと、
外部に設けられたマイクロフォンから入力される音声信号を装置内に入力する接続端子と、
前記内部マイクロフォン及び前記接続端子のいずれかを切り替えて選択し、いずれかからの音声信号を前記音声処理手段に入力する切替手段と
を更に具備し、
前記モード設定手段は、
前記切替手段により前記接続端子が選択されている場合、前記音声保護モードを設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記モード設定手段は、
前記音声処理手段により処理されている信号から可聴ノイズが検出された場合、前記音声保護モードを設定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信手段により送信される調整後の信号の送信速度を計測するスループット計測手段と、
前記スループット計測手段により計測された送信速度が所定の水準を満たしているか否かを判定するスループット判定手段と
を更に具備し、
前記調整手段は、
前記スループット判定手段により所定の水準を満たしていないと判定された場合、前記調整後の信号のバースト長及びバースト間隔の少なくともいずれかを再調整する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信手段により送信される調整後の信号の送信速度を計測するスループット計測手段と、
前記スループット計測手段により計測された送信速度が所定の水準を満たしているか否かを判定するスループット判定手段
を更に具備し、
前記通信手段は、
前記スループット判定手段により所定の水準を満たしていないと判定された場合、前記調整後の信号の送信を一旦中止する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
バースト通信により信号を送信する通信装置の処理方法であって、
音声処理手段が、音声を含む信号を処理する工程と、
モード設定手段が、前記音声処理手段により処理される信号への可聴ノイズの混入を抑制する音声保護モードを設定する工程と、
調整手段が、前記音声保護モードが設定されている場合、前記バースト通信により送信される信号のバースト長及びバースト間隔の少なくともいずれかを調整する工程と、
通信手段が、前記調整手段による調整後の信号を送信する工程と
を含むことを特徴とする処理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
音声を含む信号を処理する音声処理手段、
バースト通信により信号を送信する際に、前記音声処理手段により処理される信号への可聴ノイズの混入を抑制する音声保護モードを設定するモード設定手段、
前記音声保護モードが設定されている場合、前記バースト通信により送信される信号のバースト長及びバースト間隔の少なくともいずれかを調整する調整手段、
前記調整手段による調整後の信号を送信する通信手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−227788(P2012−227788A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94371(P2011−94371)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】