説明

通信装置、制御方法、及びプログラム

【課題】 中継装置を介して通信を行う際に、中継装置の動作モードを適切に選択することができなかった。
【解決手段】 中継装置と他の装置との間の通信状態の情報に基づいて、通信装置から中継装置を通信相手として送信されたデータを中継装置が受信すると共に、中継装置が受信した当該データを他の装置を通信相手として代理送信する第1のモードと、通信装置から他の装置を通信相手として送信されたデータを中継装置が転送する第2のモードと、のいずれかを選択し、選択したモードを中継装置に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置が中継装置を介して他の装置との通信を行う際の中継装置における動作を決定する通信装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機能を有するカメラなどの通信装置からWebサービスに対し、中継装置を介して画像等のデータをアップロードする技術がある。例えば、カメラで撮像した画像データを、携帯電話網に接続可能な中継装置へ無線LANを介して送信し、中継装置は受信した画像データを携帯電話網を用いてWebサービスにアップロードする技術がある。このような中継装置では、カメラとの間の通信と、携帯電話網などの公衆網への通信とを独立して管理している。
【0003】
また、特許文献1には、地上又は水上の移動体(例えば車や船)に搭載され、通信衛星、及び携帯端末との間で通信を行う中継装置が記載されている。この中継装置は、通信衛星から信号を受信して通信装置へその信号を転送し、また、通信装置から信号を受信して通信衛星へその信号を転送する。
【0004】
このような中継装置の中継処理の動作モードには、IPルータ(IP router)モードと、プロキシ(Proxy)モードとがある。IPルータモードでは、中継装置は、通信装置から他の通信装置(Web上のサーバ等)を通信相手として送信されたデータを中継伝送する。これは、中継装置が通信装置から受信したデータをそれぞれのプロトコル階層で透過的に扱うことで実現される。このようなIPルータモードでは、カメラ自身がサーバのWebサービスにログインし、カメラ自身でデータをアップロードする。
【0005】
一方、プロキシモードでは、中継装置は、通信装置から中継装置を通信相手として送信されたデータを受信し、受信したデータを他の通信装置を通信相手として代理送信する。このようなプロキシモードでは、中継装置がカメラから受信したデータを一時的に保持し、中継装置がカメラの代行でサーバのWebサービスにログインし、カメラから受信したデータをアップロードする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−057609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の中継装置のように、カメラとの間の無線通信と携帯電話網との無線通信とで異なるネットワークを用いる場合、カメラとの間の通信状態と、携帯電話網との間の通信状態とが異なるために、伝送速度に不均衡が生じる場合があった。例えば、中継装置がIPルータモードで動作していると、携帯電話網側の通信速度が遅い場合、カメラとの通信状態が良好であったとしても、全体としての伝送時間が長くなるという課題があった。この場合、特にカメラにおいては、再送処理等で必要以上にバッテリーが消費されるという不都合があった。また、中継装置を常にプロキシモードで動作させると、携帯電話網側の通信状態が良好な場合であっても、一時的に中継装置にデータが蓄積されるため、伝送速度の劣化や中継装置の処理負荷の増大が生じるという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、中継装置を介して通信を行う通信装置において、中継装置の動作モードを適切に選択する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による通信装置は、中継装置と他の装置との間の通信状態の情報に基づいて、通信装置から中継装置を通信相手として送信されたデータを中継装置が受信すると共に、中継装置が受信した当該データを他の装置を通信相手として代理送信する第1のモードと、通信装置から他の装置を通信相手として送信されたデータを中継装置が転送する第2のモードと、のいずれかを選択し、選択したモードを中継装置に通知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中継装置を介して他の装置と通信を行う際に、効率が高く、通信装置の消費電力が小さくなる中継装置の動作モードを適応的に決定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係るネットワークの構成図。
【図2】カメラの機能構成を表すブロック図。
【図3】IPルータモードが選択された場合のシーケンスチャート。
【図4】カメラの動作を示すフローチャート。
【図5】携帯端末の動作を示すフローチャート。
【図6】カメラの通信状態確認処理及び携帯端末の動作モードの決定処理の動作を示すフローチャート。
【図7】プロキシモードが選択された場合のシーケンスチャート。
【図8】実施形態2に係るネットワークの構成図。
【図9】IPルータモードの通信手順の一例を説明する図。
【図10】プロキシモードの通信手順の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
<<実施形態1>>
(システム構成)
図1は、第1の実施形態に係る無線通信システムのネットワーク構成図である。図1において、101はカメラであり、所定の通信方式によって無線通信回線を構築し、通信を行うことができる無線通信装置を備える。なお、以下では、主にこの無線通信装置の動作について説明することとなるが、簡単のため、以下の説明では、無線通信装置の機能を含めて全て「カメラ」と呼ぶ。また、以下の説明では、カメラを例にとって説明しているが、これに限られない。例えば、カメラに代えて録音装置であってもよく、他にも、通信によりデータの送受信をする装置であれば装置の主な用途が何であってもよい。
【0014】
102は中継装置としての機能を有する携帯端末であり、103はカメラ101からアップロードされた画像等のデータを蓄積するサーバである。104は基地局であり、所定の通信方式により所定のエリアの無線局と通信を行い、ネットワーク側からの信号を無線局へ送信し、無線局からの信号をネットワーク側へ送信する。ここでは、携帯端末102は、基地局104の構成する通信エリアに存在し、基地局104との間で通信回線を構築して無線通信を行う。105はISP(Internet Service Provider)等を介して、サーバ103および基地局104を接続するネットワークであり、例えばインターネットである。なお、以下の説明では、105はインターネットとして説明する。
【0015】
携帯端末102は、ある無線局から第1の通信回線を介して受信したデータを、第2の通信回線を用いて他の無線局へ中継する。同様に、携帯端末102は、第2の通信回線を介して受信した信号を第1の通信回線を用いて転送することもできる。また、第1の通信回線および第2の通信回線は、携帯端末102が対応可能な通信方式により構築され、その通信方式は、通信環境等に応じて通信の度に変更されてもよい。また、第1の通信回線および第2の通信回線は、パケット交換による回線であっても回線交換による回線であってもよく、通信が可能な回線であればどのようなものであってもよい。
【0016】
本実施形態においては、カメラ101と携帯端末102との間には、第1の通信回線が構築され、携帯端末102と基地局104との間には第2の通信回線が構築されているものとする。なお、ここでは、第1の通信回線で用いられる通信方式は無線LANであり、第2の通信回線で用いられる通信方式は例えば3GやLTE等の携帯電話の標準に準拠した通信方式であるとする。すなわち、本実施形態においては、図1において、携帯端末102は、無線LANのインフラストラクチャネットワーク、またはアドホックネットワークを用いてカメラ101との間に第1の通信回線を構築する。そして、携帯端末102は、同時に基地局104が構成する携帯電話網において第2の通信回線を構築する。なお、上の説明では、携帯端末102と基地局104との間の無線通信路を第2の通信回線としているが、携帯端末102から、基地局104を含むサーバ103までの回線を第2の通信回線としてもよい。
【0017】
また、ここで、カメラ101と携帯端末102との間で用いる通信方式は、無線LANではない他の通信方式であってもよい。また、同様に、携帯端末102と基地局104との間の通信方式も、携帯電話による方式である必要はなく、例えば公衆無線LANなどであってもよい。公衆無線LANを用いる場合、基地局104は例えばアクセスポイントである。
【0018】
なお、以下では、カメラ101と携帯端末102の無線接続のことをローカル接続と呼び、携帯端末102と基地局104との接続、すなわち基地局104が構成する網を公衆網と呼ぶ。
【0019】
(装置構成)
図2は、本実施形態に係るカメラ101のブロック図である。図7において、201はアンテナ、202はアンテナ201を介して無線信号の送受信を行う送受信部、203は不揮発メモリ部(ROM)である。また、204はカメラ101の揮発メモリ部(RAM)であり、205は制御部、206は撮像部、207は情報検出部である。カメラ101は、撮像部206で撮像し、処理されたデータをROM203に蓄積する。なお、撮像及び処理されたデータについては、サーバへ送るために一時的に記憶しておくだけであれば、RAM204へ蓄積してもよい。
【0020】
(システムの動作モード)
本実施形態では、カメラ101は、携帯端末102の中継装置としての動作モードを決定する。具体的には、第1のモードであるIPルータモードと、第2のモードであるプロキシモードの中から、通信環境に適したモードを選択する。
【0021】
ここで、IPルータモードとは、中継装置が、通信装置から他の通信装置(Web上のサーバ等)を通信相手として送信されたデータを中継伝送するモードである。これは、中継装置が通信装置から受信したデータをそれぞれのプロトコル階層で透過的に扱うことで実現される。
【0022】
また、プロキシモードとは、中継装置が、通信装置から中継装置を通信相手として送信されたデータを受信し、受信したデータを他の通信装置を通信相手として代理送信するモードである。プロキシモードでは、中継装置はカメラから受信したデータを一時的に保持している。
【0023】
以下では、これらの動作モードによる通信手順ついて、図9及び図10を参照して説明する。
【0024】
(IPルータモードによる通信手順)
図9にIPルータモードによる通信手順の一例を示す。まず、通信装置であるカメラ101とサーバ103について説明する。901および907はインターネット手順部でありIPパケットなどを取扱う。902および908はトランスポート手順部であり、TCPやUDPパケットなどを取扱う。903および909はアプリケーション手順部であり、HTTPなどを取扱う。904および910はアプリケーションインターフェース手順部であってサーバ103が提供するWebサービスにアクセスするためのAPIを表す。
【0025】
次に中継装置である携帯端末102について説明する。携帯端末102では、905および906においてIPパケットのIPアドレスフィルタリングやアドレス変換などを行い、カメラ101のインターネット手順部901をサーバ103のインターネット手順部907に合うアドレスに置き換える。それ以外のトランスポート手順部、アプリケーション手順部、アプリケーションインターフェース手順部は、データ等の変換や中身のデータの解析をすることはない。
【0026】
(プロキシモードによる通信手順)
図10にプロキシモードによる通信手順の一例を示す。なお、以下では、図9のIPルータモードとの相違点を中心に説明を行う。
【0027】
プロキシモードでは、カメラ101の携帯APIである1004と、携帯端末102の携帯APIである1008との間で相互に要求と応答が実行される。一方、サーバ103のサービスAPIである1017と携帯端末102のサービスAPIである1013との間で相互に要求と応答が実行される。この場合、携帯APIとサービスAPIは独立して動作してもよい。つまり、カメラとWebとの間の連携アプリケーション1009において、カメラからの撮像データの送信要求が発生したとしても、携帯端末102は自身がサーバ103に送信できる状態にあるときにカメラからの要求を処理すればよい。
【0028】
例えば、カメラ101と携帯端末102は無線接続状態で携帯APIによってデータ通信できるが、携帯端末102はサーバ103との間で無線通信が圏外のため通信ができない場合が考えられる。このような場合、携帯端末102は、サーバ103へのアクセスを中断し、圏内に復帰した時点でサーバ103との間でサービスAPIによってデータ通信を実行することができる。
【0029】
なお、上述の説明では、中継局におけるパケットの取り扱い動作に基づいてIPルータモードとプロキシモードとを分類したが、別の分類を用いてもよい。例えば、カメラ101がクライアントとしてWebサービスを提供するサーバ103にアクセスする場合に、クライアントがサーバ装置に直接接続するような接続形態をIPルータモードとしてもよい。同様に、クライアントに代わって、中継装置である携帯端末102がサーバ103にアクセスする場合はプロキシモードとしてもよい。すなわち、サーバ103へのアクセスの形態によって動作モードを分類してもよい。ただし、この分類を用いたとしても、以下で説明するシステム及び装置の動作に特段の違いは生じない。
【0030】
(システム及び装置の動作)
以下、システム、カメラ101及び携帯端末102の動作について、図3、図4、及び図5を用いて説明する。図3は、第1の実施形態に係る通信ネットワークを構成するカメラ101、携帯端末102、サーバ103、及び基地局104のメッセージの送受信処理をシーケンスチャートである。特に図3では、後述するが、携帯端末102がデータを透過的に扱って中継処理を行う場合、すなわち、カメラ101の処理においてIPルータモードが選択された場合を図解している。図4は、本実施形態に係るカメラ101の制御処理に関するフローチャートであり、図5は、本実施形態に係る携帯端末102の制御処理に関するフローチャートである。
【0031】
カメラ101は、ROM203に蓄積したデータの中から所望のものを選択することにより、サーバ103にデータをアップロードする処理を開始する(M301、S401でYES)。また、携帯端末102は、別途中継処理を開始しているものとする(S501でYes)。
【0032】
処理が開始されると、カメラ101と携帯端末102との間でローカル接続処理がそれぞれ実行される(M302、S402、S502)。そして、カメラ101においては、接続の確認が実行される(S403)。なお、カメラ101と携帯端末102との間のローカル接続は予め行われていてもよい。また、その場合、これらのステップは省略してもよい。一方、携帯端末102は、接続処理の実行後、カメラ101からのデータの送信要求があったかを監視するモードに移行する(S503)。
【0033】
カメラ101は、携帯端末102との間のローカル接続の成功を確認すると(S403でYes)、携帯端末102に対してデータ送信要求メッセージを送信する(M303、S404)。そして、カメラ101は応答タイマーを起動し、携帯端末102からの応答を確認する状態に遷移する(S405、S406)。なお、カメラ101の応答タイマーがタイムアウトした場合には(S405でYES)、携帯端末102との間でのローカル接続処理から処理を再度実行する(S402〜S404)。
【0034】
携帯端末102が、データ送信要求メッセージを受信すると(M303、S503でYES)、基地局104との間で接続処理を実行する(M304、S504)。そして、接続確立タイマーを起動し、基地局104との間における通信確立を確認する状態に遷移する(S505、S506)。このとき、携帯端末102の接続確立タイマーがタイムアウトした場合には(S505でYES)、カメラ101との間のローカル接続処理から処理を再度実行する(S501〜S504)。この場合、携帯端末102は、カメラ101からのデータ送信要求へ回答することができず、カメラ101において、データ送信要求への応答待ちがタイムアウトとなり、ローカル接続処理から処理が再実行されることになるからである。なお、携帯端末102と基地局104との間の公衆網における接続も予め行われていてもよい。また、その場合、上記の処理は省略してもよい。
【0035】
一方、携帯端末102は、正常に基地局104との間の接続処理(M304)が完了し、公衆網との接続が確認できた場合(S506でYES)、公衆網の通信の実効速度や輻輳状態など、公衆網側の通信状態情報を取得する。通信状態情報の取得は、例えば基地局104への問い合わせを通じて行う。基地局104は、携帯端末102からの電波の受信強度や、ネットワークの混雑度合い等の通信状態情報を携帯端末102へ送信する。なお、公衆網における通信状態の情報に限らず、携帯端末102からサーバ103までの間の通信路の状態に関する情報を取得してもよい。例えば、携帯端末102が、テストデータを基地局104を介してサーバ103等へ向けて送信し、それに対する応答が戻ってくるまでの時間を計測することなどにより、サーバ103までの通信経路における通信状態の情報を収集してもよい。
【0036】
携帯端末102は、通信状態情報を取得後、データ送信要求メッセージ(M303)に対して、データ送信応答メッセージをカメラ101へ返信する(M305、S507)。なお、携帯端末102は、データ送信応答メッセージに取得した通信状態情報を含めておく。
【0037】
カメラ101は、受信タイムアウト(S405でYES)の前にデータ送信応答メッセージを受信すると(M305、S406でYES)、公衆網側の通信状態情報を確認する(M306、S407)。ここで、カメラ101は、データ送信応答メッセージに含まれている通信状態情報を確認することで、公衆網側の通信状態を知ることができる。
【0038】
以下、カメラ101のROM203に格納されている通信状態情報の確認処理(M306)と、携帯端末102の動作モードの決定処理(M307)の詳細(S407)について説明する。カメラ101は、通信状態情報を含むデータ送信応答メッセージをアンテナ201及び送受信部202を介して受信すると、制御部205の制御に応じて当該メッセージをRAM204に保存する。次に制御部205は、ROM203に格納されているアルゴリズムに基づき、通信状態情報の確認処理及び携帯端末102の動作モードの決定処理を実行する。このアルゴリズムの一例を図6に示す。
【0039】
まず、制御部205は、RAM204に保存されているデータ送信応答メッセージ(M305)に含まれる通信状態情報を解析する(S601)。そして、この解析により、公衆網側の通信の実効速度、及び輻輳状態、ローミングやチャネル切替、ハンドオーバー(ハンドオフ)の頻度などの情報を取得する。制御部205は、通信状態情報の解析の結果、ローミングやチャネル切替、ハンドオーバー(ハンドオフ)の少なくとも1つの頻度などに基づいて、携帯端末102が高速移動中であるか否かを判定する。その結果、携帯端末102が高速移動中であると判定すると(S602でYES)、携帯端末102の中継処理としてプロキシモードを選択する(S607)。携帯端末102が高速移動中は、公衆網の通信状態が不安定になることが考えられる。このため、携帯端末102にデータを一時的に保持させるプロキシモードを用いることにより、カメラ101において必要以上に再送等をする必要がなくなり、バッテリーの消費を抑えることが可能となる。
【0040】
次に、制御部205は、携帯端末102が高速移動中ではないと判断した場合(S602でNO)、公衆網側で輻輳が発生しているか否かを判定する。輻輳が発生していると判定した場合(S603でYES)、携帯端末102の中継処理としてプロキシモードを選択する(S607)。公衆網が輻輳中の場合は、公衆網側で送信データの衝突による通信エラーが頻発することが考えられる。携帯端末102にデータを一時的に保持させるプロキシモードを用いることにより、カメラ101が携帯端末102にデータを送った後は、携帯端末102が公衆網側の通信状況に応じてデータを転送する。このため、カメラ101が信号の再送等をする必要がなくなり、必要以上にバッテリーを消費することを防ぐことが可能となる。
【0041】
次に、制御部205は、公衆網側が輻輳状態ではないと判断した場合(S603でNO)、情報検出部207を用いて、携帯端末102との間で形成している無線接続の実効速度を検出し、ローカル接続側の伝送効率を算出する(S604)。また、制御部205は、同様に、通信状態情報に含まれる公衆網側の実効速度から公衆網側の伝送効率を算出する(S604)。
【0042】
そして、制御部205は、算出したローカル接続側の伝送効率と、公衆網側の伝送効率を比較する(S605)。比較の結果、ローカル接続側の伝送効率が公衆網側の伝送効率以下であると判断した場合(S605でNO)、携帯端末102の中継処理としてデータを透過的に扱うIPルータモードを選択する(S606)。反対に、ローカル接続側の伝送効率が公衆網側の伝送効率よりも高いと判断した場合(S605でYES)、携帯端末102の中継処理としてプロキシモードを選択する(S607)。なお、ここでは、伝送効率に基づいて動作モードの選択を行うが、実効速度に基づいて動作モードの選択を行ってもよい。この場合、ローカル接続側の実効速度が公衆網側の実効速度より高速であった場合、動作モードをプロキシモードとする。そして、公衆網側の実効速度の方がローカル接続側の実効速度より高速であった場合は、IPルータモードとする。
【0043】
公衆網側の伝送効率がローカル接続側の伝送効率以上であれば、カメラ101が携帯端末102へ送信したデータの全てをそのまま携帯端末102が基地局104へ送ることができる可能性が高いと考えられる。このため、この場合には、携帯端末102がカメラ101から受信したデータをスルーして、一時的な保持をすることなく、基地局104へ転送するIPルータモードを選択する。IPルータモードを選択することで、サーバ103との間の高速な通信を行うことができる。一方、ローカル接続側の伝送効率の方が高い場合、カメラ101から携帯端末102へ送信するデータの量が携帯端末102から転送できるデータの量を超えてしまう。このため、後者の場合はプロキシモードを用いて、データを一時的に携帯端末102で保持するようにする。これにより、カメラ101において必要以上に再送等をする必要がなくなり、バッテリーの消費を抑えることが可能となる。
【0044】
以下では、カメラ101は、通信状態情報の確認処理と携帯端末102の動作モードの決定処理(S407)の結果、IPルータモードを選択した場合について説明する。この場合、カメラ101は、IPルータモードでの処理を開始し(M308)、カメラ101のユーザは、アップロード先のアカウントを選択する(M309、S408)。そして、カメラ101は、携帯端末102の動作モードとしてIPルータモードを選択したため(S409でNO)、「IPルータモード」で動作すべき旨の情報を含む動作指定メッセージを携帯端末102へ送信する(M310、S415)。
【0045】
携帯端末102は、動作指定メッセージを受信すると(M310、S508)、指定された動作モードを確認する。ここで、カメラ101は、「IPルータモード」で動作するように指定している(S509でNO)ため、携帯端末102はIPルータモード処理を開始する(M311、S515)。なお、IPルータモードでは、携帯端末102は、カメラ101から受信するアップロード処理に関するデータを透過的に扱う。
【0046】
カメラ101は、選択されているアップロード先のアカウント情報をもとに、携帯端末102、基地局104およびインターネット105を介してサーバ103との間でログイン処理を実行する(M312、S416)。カメラ101は、サーバ103との間でログイン処理(M312)が完了すると(M313、S417でYES)、データのアップロード処理を実行する(M314、S418)。
【0047】
一方、通信状態情報の確認処理と携帯端末102の動作モードの決定処理(S407)の結果、カメラ101がプロキシモードを選択した場合について、図7を参照して説明する。図7の処理においては、M301〜M307の処理は図3の場合と同様であるため、説明を省略する。この場合、プロキシモードが選択されているため、カメラ101はプロキシモードでの処理を開始し(M701)、カメラ101のユーザは、アップロード先のアカウントを選択する(M702、S408)。そして、カメラ101は、携帯端末102の動作モードとしてプロキシモードを選択したため(S409でYES)、「プロキシモード」で動作すべき旨の情報を含む動作指定メッセージを携帯端末102へ送信する(M703、S410)。
【0048】
携帯端末102は、動作指定メッセージを受信すると(M703、S508)、指定された動作モードを確認する。ここで、カメラ101は、「プロキシモード」で動作するように指定している(S509でYES)ため、携帯端末102はプロキシモード処理を開始する(M704)。なお、プロキシモードは、カメラ101から受信するアップロード処理に関するデータを一時的に保持して取り扱う。
【0049】
カメラ101は、選択されているアップロード先のアカウント情報をもとに、携帯端末102に対して、アカウント情報を含むアップロード設定要求メッセージを送信する(M705、S411)。携帯端末102は、アップロード設定要求メッセージを受信すると(M705、S510でYES)、基地局104およびインターネット105を介してサーバ103との間でログイン処理を実行する(M706、S511)。なお、このログイン処理では、カメラ101から受信したアカウント情報を用いる。すなわち、携帯端末102は、カメラ101の代行としてサーバ103へログインする。携帯端末102は、ログイン処理が完了すると(M707、S512でYES)、カメラ101に対して、アップロード設定要求メッセージを送信する(M708、S513)。
【0050】
カメラ101は、アップロード設定確認メッセージを受信すると(M708、S412でYES)、携帯端末102とサーバ103との間でログイン処理が完了(M707)したと判断する(S413でYES)。その後、カメラ101は、携帯端末102へデータのアップロード処理を実行する(M709、S414)。一方、携帯端末102は、カメラ101から受信したデータを一時的に保持し、基地局104およびインターネット105を介して、サーバ103に対してアップロードする(M710、S514)。
【0051】
本実施形態によれば、以上のように、カメラ101は、データのアップロード時に、携帯端末102から通知される公衆網側の通信状態や無線回線の使用状況に応じて、携帯端末102の最適な動作モードを選択する。これにより、効率の良いデータ伝送が実現され、カメラ101の省電力化を実現することができる。
【0052】
<<実施形態2>>
以下、実施形態2における無線通信装置の制御手順について、図8を参照して説明する。図8において、801は、基地局104Aに接続された携帯端末102Aと、携帯端末102Aと無線接続されているカメラ101Aが存在する高速移動中の乗用車内の空間を模式的に表す。すなわち、空間801は「移動中の空間」である。802は、基地局104Bに接続された携帯端末102Bと、携帯端末102Bと無線接続されているカメラ101Bが存在する高速移動中の乗用車内の空間を模式的に表す。空間802も空間801と同様に、「移動中の空間」である。
【0053】
本実施形態では、図6のS602における高速移動中か否かの判定処理の手法について実施形態1と異なる手法を用いる場合について説明する。実施形態1では、カメラ101の制御部205は、携帯端末102から通知されたローミング頻度などの通信状態情報の解析結果から、携帯端末102の高速移動を判断できると述べた。これに対し、本実施形態では、カメラ101が自律的に、移動したことに伴う状況の変化を検出し、その変化に応じて空間801から空間802へ高速移動していることを判定する。
【0054】
高速移動の判定は、例えば、カメラ101に、ジャイロセンサ、加速度センサ、地磁気センサ等の少なくとも1つを備え、これらのセンサの観測値に基づいて情報検出部207により行う。具体的には、カメラ101と携帯端末102との通信環境に大きな変化がないのにも関わらず、カメラ101が、センサで測定した値により高速移動していると判定した場合などに、カメラ101と共に携帯端末102が高速移動していると判定する。これは、通信環境に大きな変化がないことから、カメラ101と携帯端末102が一定の位置関係を維持していると考えられ、その結果、携帯端末102がカメラ101と共に高速移動していると考えられるからである。これにより、公衆網側の通信状態によらず、カメラ101が、自身の置かれている環境及び公衆網側の通信環境を自律的に把握できる。また、携帯端末102からGPS情報(位置情報)を取得して、その情報を用いて高速移動の判定を行ってもよい。具体的には、例えば、携帯端末102の位置情報に基づいて、所定時間内に所定値以上の距離の移動があった場合には、高速移動していると判定する。
【0055】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、通信環境に応じて最適な動作モードを選択することにより、効率の良いデータ伝送が実現され、カメラの省電力化が可能となる。
【0056】
<<その他の実施形態>>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継装置を介して他の装置にデータを送信する通信装置であって、
前記中継装置と前記他の装置との間の通信状態の情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した前記情報に基づいて、前記通信装置から前記中継装置を通信相手として送信されたデータを前記中継装置が受信すると共に、前記中継装置が受信した当該データを前記他の装置を通信相手として代理送信する第1のモードと、前記通信装置から前記他の装置を通信相手として送信されたデータを前記中継装置が転送する第2のモードと、のいずれかを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたモードを前記中継装置へ通知する通知手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記情報は、前記中継装置と前記他の装置との間の伝送効率の情報であり、
前記選択手段は、前記中継装置と前記他の装置との間の伝送効率が前記中継装置と前記通信装置との間の伝送効率よりも高い場合、前記第2のモードを選択することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記情報は、前記中継装置と前記他の装置との間の伝送効率の情報であり、
前記選択手段は、前記中継装置と前記他の装置との間の伝送効率が前記中継装置と前記通信装置との間の伝送効率よりも低い場合、前記第1のモードを選択することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記情報は、前記中継装置と前記他の装置との間の通信に輻輳が発生しているか否かに関する情報を含み、
前記選択手段は、前記輻輳が発生している場合は、前記第1のモードを選択することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記情報は、前記中継装置におけるローミング、チャネル切替、ハンドオーバーの頻度の情報の少なくとも1つを含み、
前記選択手段は、前記頻度が所定値を超える場合に、前記第1のモードを選択することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記取得手段は、前記中継装置から前記中継装置の位置情報に関する情報を更に取得し、
前記選択手段は、前記位置情報の変化に基づいて選択を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
ジャイロセンサ、加速度センサ、及び地磁気センサのうちの少なくとも1つのセンサと、
前記通信装置と前記中継装置との間の通信状態を監視する監視手段とを更に有し、
前記選択手段は、前記通信装置と前記中継装置との間の通信状態と、前記センサにおける観測値に基づいて、選択を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
中継装置を介して他の装置にデータを送信する通信装置の制御方法であって、
前記中継装置と前記他の装置との間の通信状態の情報を取得する取得工程と、
前記情報に基づいて、前記通信装置から前記中継装置を通信相手として送信されたデータを前記中継装置が受信すると共に、前記中継装置が受信した当該データを前記他の装置を通信相手として代理送信する第1のモードと、前記通信装置から前記他の装置を通信相手として送信されたデータを前記中継装置が転送する第2のモードと、のいずれかを選択する選択工程と、
前記選択工程において選択されたモードを前記中継装置へ通知する通知手段と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
コンピュータを請求項1乃至7のいずれか1項に記載の通信装置が備える各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−5181(P2013−5181A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133540(P2011−133540)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】