説明

通信装置、通信システム、通信方法及びプログラム

【課題】データ転送速度が極めて高い近距離一対一通信のシステムにおいて、消費電力を最小限に抑えること。
【解決手段】電界結合または磁界結合により通信相手の装置と近距離一対一通信を行う送受信カプラ102と、通信相手の装置と接続確立後に接続を解除することなく、間欠動作を行う間欠動作部302と、間欠動作を行う場合に、通信相手の装置に対してその旨を通知する間欠動作通知部304と、を備える。従って、データ転送速度が極めて高い近距離一対一通信のシステムにおいて、消費電力を最小限に抑えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信システム、通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載されているように、無線信号を各種装置に伝送して複数の機器間でローカルエリアネットワーク(LAN)を構成する場合に、スリープモードの場合においても、ネットワーク内の伝送装置の確認を行う技術が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−64501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時においては、無線通信においてもデータの転送速度が増加している。特に、実現が想定されている近距離一対一通信(大容量近接通信規格)では、大容量のデータを極めて短時間で送信することが可能である。このような状況下において、例えば映画1本分の動画のストリーミングを行う場合、データを再生する速度に比較すると、無線によるデータ転送速度の方が極めて高いため、再生時間に対して非常に短い時間で転送が完了する。
【0005】
ここで、動画などの大容量のデータを一度に全て送ることとすると、受信側の機器のメモリバッファ容量を非常に大きくする必要がある。このため、データ転送速度が非常に速い環境下では、データを分割して間欠的に送る必要が生じる。
【0006】
しかしながら、データを間欠的に送る場合、データ転送速度が速くなる程、データを送信した後のデータ転送停止期間が長くなる。このため、受信側の機器では、データ転送停止期間で受信動作を継続して行うと、消費電力が増大するという問題がある。また、送信側の機器においても、データ転送停止期間で通常動作を行うと、消費電力が増大するという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、データ転送速度が極めて高い近距離一対一通信のシステムにおいて、消費電力を最小限に抑えることが可能な、新規かつ改良された通信装置、通信システム、通信方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、電界結合または磁界結合により通信相手の装置と近距離一対一通信を行う通信部と、前記通信相手の装置と接続確立後に接続を解除することなく、間欠動作を行う間欠動作部と、間欠動作を行う場合に、前記通信相手の装置に対してその旨を通知する間欠動作通知部と、を備える、通信装置が提供される。
【0009】
また、前記通信相手の装置から間欠動作の解除を要求するデータフレームを受信した場合に、前記間欠動作を解除する間欠動作解除部を備えるものであってもよい。
【0010】
また、前記通信相手の装置へ間欠動作の解除を要求するデータフレームを送信する間欠受信動作解除要求部を備えるものであってもよい。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電界結合または磁界結合による近距離一対一通信により第2の通信装置と通信を行う第1の通信装置と、前記第1の通信装置と接続確立後に接続を解除することなく、間欠受信動作を行う間欠動作部と、間欠動作を行う場合に、前記第1の通信装置に対してその旨を通知する間欠動作通知部と、を備える第2の通信装置と、を備える、通信システムが提供される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電界結合または磁界結合により通信相手の装置と近距離一対一通信を行うステップと、前記通信相手の装置と接続確立後に接続を解除することなく、間欠動作を行うステップと、間欠動作を行う場合に、前記通信相手の装置に対してその旨を通知するステップと、を備える、通信方法が提供される。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電界結合または磁界結合により通信相手の装置と近距離一対一通信を行う手段、前記通信相手の装置と接続確立後に接続を解除することなく、間欠動作を行う手段、間欠動作を行う場合に、前記通信相手の装置に対してその旨を通知する手段、としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、データ転送速度が極めて高い近距離一対一通信のシステムにおいて、消費電力を最小限に抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.本発明の一実施形態にかかる通信システムの概要
2.通信機器の構成
3.通信機器のソフトウェアの階層構造
4.通信機器の状態遷移について
5.間欠受信動作の具体例
【0016】
[本発明の一実施形態にかかる通信システムの概要]
先ず、図1および図2を参照し、本発明の一実施形態にかかる通信システムの概要を説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる通信システムを示した説明図である。図1に示したように、本実施形態にかかる通信システムは、通信機器100および携帯機器200(ビデオカメラ)からなる一対の機器(通信装置)と、情報処理装置(ノート型パーソナルコンピュータ)300とを備える。また、通信機器100および携帯機器200は、相互に電界結合することが可能な電界カプラと呼ばれる電極板を備える。通信機器100および携帯機器200の双方の電界カプラが例えば3cm以内に近接されると、一方の電界カプラにより発生される誘導電界の変化を他方の電界カプラが感知する。これにより、通信機器100および携帯機器200の間での1対1による電界通信が実現される。
【0017】
より具体的には、上記電界通信を行う一対の機器は、一方がイニシエータ(Initiator)として機能し、他方がレスポンダ(Responder)として機能する。イニシエータは接続確立要求を行なう側であり、レスポンダはイニシエータからの接続確立要求を待ち受ける側である。
【0018】
例えば、携帯機器200がイニシエータとして機能し、通信機器100がレスポンダとして機能する場合、携帯機器200および通信機器100が近接されると、携帯機器200から送信される接続確立要求(接続要求フレーム)を通信機器100が受信する。そして、通信機器100により接続確立要求が受信されると、通信機器100は携帯機器200に対して接続応答許可(接続応答フレーム)を送信する。そして、携帯機器200が接続応答許可を受信すると、通信機器100と携帯機器200と通信の接続が確立する。接続が確立した後、または接続確立と同時に、通信機器100および携帯機器200が認証処理を行い、認証処理が正常に終了すると通信機器100および携帯機器200がデータ通信可能な状態となる。認証処理としては、例えば、ソフトウェアのバージョン、データ転送方式、各機器が有するプロトコルを示すエミュレーション方式等が通信機器100および携帯機器200で一致するか否かの確認などがあげられる。
【0019】
その後、通信機器100と携帯機器200が1対1でデータ通信を行う。より詳細には、携帯機器200が任意のデータを電界カプラにより通信機器100へ送信し、通信機器100が携帯機器200から受信したデータを情報処理装置300へ出力する。または、情報処理装置300から通信機器100へ任意のデータが入力され、通信機器100が情報処理装置300から入力されたデータを電界カプラにより携帯機器200へ送信する。任意のデータとしては、音楽、講演およびラジオ番組などの音楽データや、映画、テレビジョン番組、ビデオプログラム、写真、文書、絵画および図表などの映像データや、ゲームおよびソフトフェアなどがあげられる。
【0020】
ここで、電波通信方式のアンテナから放射される電波が距離の2乗に反比例して減衰するのに対し、このような電界カプラから発生される誘導電界の強度は距離の4乗に反比例するため、電界通信が可能な一対の機器間の距離を制限できる点で有利である。すなわち、当該電界通信によれば、周囲に存在する障害物による信号の劣化が少ない、ハッキングや秘匿性を確保するための技術を簡素化できるなどの効果が得られる。
【0021】
また、アンテナから放射される電波は、電波の進行方向と直交方向に振動する横波成分を有し、偏波がある。これに対し、電界カプラは、進行方向に振動する縦波成分を有し、偏波がなり誘導電界を発生するため、一対の電界カプラの面が対向していれば受信側で信号を受信できる点でも利便性が高い。
【0022】
なお、本明細書においては、一対の通信装置が電界カプラを利用して近距離無線通信(非接触通信、大容量近接通信)を行う例に重きをおいて説明するが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、一対の通信装置は、磁界結合により通信可能な通信部を介して近距離無線通信を行うことも可能である。電界結合や磁界結合を利用する通信方式によれば、通信相手が近接しない場合には信号が送信されないため、干渉の問題が生じ難い点で電波通信方式より有利である。
【0023】
なお、図1においては通信装置の一例として通信機器100および携帯機器200を示しているが、本発明はかかる例に限定されるものではない。例えば、通信装置は、PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)などの情報処理装置であってもよい。また、通信装置は、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、PDA(Personal Digital Assistants)、家庭用ゲーム機器、携帯用ゲーム機器、家電機器などの情報処理装置であってもよい。また、図1では、情報処理装置300に通信機器100を接続しているが、情報処理装置300と通信機器100は一体に構成されていても良い。
【0024】
[通信機器の構成]
図2は、通信機器100のデータの送受信に関係する構成を説明するための模式図である。データの送受信に関係する構成は、通信機器100と携帯機器200の双方で同様に構成されており、携帯機器200も図2に示す構成を備えている。
【0025】
図2に示すように、通信機器100は、送受信カプラ(通信部)102、セレクタ104、送信処理部106、受信処理部108、制御部110を備えている。送受信カプラ102は電界カプラから構成され、携帯機器200の電界カプラと電界結合により通信を行う。通信機器100、携帯機器200がそれぞれ持つ送受信カプラ102は、例えば3cm程度の近距離に離間して対向して配置され、静電結合が可能である。送受信カプラ102は、セレク104を介して、送信処理部106、受信処理部108の一方と選択的に接続される。
【0026】
送信処理部106は、送受信カプラ102から携帯機器200へ送信するための送信信号を生成する。送信処理部106は、送信データを符号化する符号化器、送信データを拡散する拡散器、送信データをバイナリ系列から複素数信号へ拡張するマッパ、中心周波数へのアップコンバージョンを行うRF回路等の構成要素を備えている。また、受信処理部108は、送受信カプラ102で受信した受信信号の復号を行う。受信処理部108は、受信信号が入力されるRF回路、受信信号をデジタル信号に変換するAD変換部、受信信号をデマップするデマッパ、復号器等の構成要素を備えている。送信処理部106は、上位アプリケーションから送信要求が生じると、送信データに基づいてUWB信号などの高周波送信信号を生成し、送受信カプラ102から携帯機器200へ信号が伝播する。携帯機器200側の送受信カプラ102は、受信した高周波信号を復調及び復号処理して、再現したデータを上位アプリケーションに渡す。携帯機器200側から通信機器10へデータを送る場合も同様の処理が行われる。従って、通信機器100と携帯機器200との間で双方向の通信が実現される。
【0027】
例えばUWB通信のように高周波、広帯域を使用する通信方式によれば、近距離において100Mbps程度の超高速データ伝送を実現することができる。また、電波通信ではなく静電結合によりUWB通信を行う場合、その電界強度は距離の4乗に反比例するため、無線設備から3メートルの距離での電界強度(電波の強さ)を所定レベル以下に抑制することで無線局の免許が不要となる微弱電波とすることができる。このため、安価に通信システムを構成することができる。また、静電結合方式により超近距離でデータ通信を行う場合、周辺に存在する反射物により信号の質が低下することがなく、伝送路上でのハッキングを確実に防止することができ、秘匿性を確保することが可能である。また、電界強度を所定レベル以下に抑制して、例えば3cm以内の距離のみで通信を可能とすることで、1つの機器に対して2つの機器が同時に通信できない構成とすることができる。従って、近距離での一対一通信を実現することができる。
【0028】
制御部110は、CPUなどの演算処理部から構成され、通信機器100の動作全般を制御する。例えば、制御部110は、送信処理部106による送信信号の生成を制御し、受信処理部108による受信信号の復号を制御する。また、制御部110は、携帯機器200に対して接続要求フレームC−Req等を送信する時には、セレクタ104へ切換信号を出力し、送受信カプラ102と送信処理部106を接続させる。また、制御部110は、携帯機器200からの接続要求フレームC−Reqの待ち受け時には、セレクタ104へ切換信号を出力し、送受信カプラ102と受信処理部108を接続させる。
【0029】
接続の確立は、一方の機器(イニシエータ)から他方(レスポンダー)に対して接続要求フレームC−Reqを送信し、レスポンダーから送信された接続応答フレームC−Accをイニシエータが受信することで実現される。接続要求フレームは、例えばデータファイル転送、データファイル選択などのユーザアクションが入力された側の機器が通信相手に対して送信する。
【0030】
一方、接続要求フレームは、ユーザアクションの有無に関わらず、所定のタイミングで定期的に送信することもできる。この場合、通信機器100による接続要求フレームC−Reqの送信は、通信相手が近傍に位置しているか否かに関わらず、所定の周期で定期的に行われる。これにより、イニシエータからファイル転送などのユーザアクションが行われない場合においても、レスポンダーは、定期的に送信された接続要求フレームC−Reqを受信することができる。そして、レスポンダーから接続応答フレームC−Accを返信することで接続が確立される。従って、特にユーザアクションが行われない場合においても、イニシエータとレスポンダーを近接無線通信が可能な範囲まで近づけることによって、接続を確立することができる。接続が確立されると、後述するネゴシエーションが行われ、ネゴシエーションが完了すると、イニシエータ、レスポンダーの双方が相手のハードディスク等のメモリを参照することができる。そして、ディレクトリからデータファイルを指定することで、データファイルの転送等を行うことができる。なお、データファイルの転送は、CSDUパケットにより行われる。
【0031】
[通信機器のソフトウェアの階層構造]
図3は、本実施形態に係る無線通信システムにおいて、イニシエータ、レスポンダーの各機器のソフトウェア構成を階層構造として示した模式図である。図2に示すように、本実施形態では、上層から順にユーザアプリケーション(User Application)200、PCL(Protocol Conversion Layer)202、CNL(Connection Layer)204、物理層(Physical Layer)206が構成されている。
【0032】
ユーザアプリケーション200は、物理層206を搭載する機器において、物理層206の上層のソフトウェアの提供するサービスを用いて、データ通信を行うための上位プロトコル(例えばUSB、TCP/IP、OBEXなど)が該当する。また、ユーザアプリケーション200は、機器操作を行うアプリケーション(例えばウィンドウズ(Windows(登録商標))、リナックス(Linux)などのOS)が該当する。
【0033】
PCL202(プロトコル変換部)は、ユーザアプリケーション200を、独自のプロトコルに相互変換するプロトコル変換機能をサポートする。これにより、複数の種類のプロトコルを物理層206に流すことで、様々なプロトコルをサポートすることが可能である。PCL202は、上位のユーザアプリケーション200が生成する音声、映像等のコンテンツデータ、その他のプロトコルのデータ、コマンド等を下位のCNL204が扱うことが可能なデータ形式に変換する処理を行う。また、PCL202は、接続、切断、機器認証、動作モード設定、初期化等の通信に必要な処理を行う。
【0034】
CNL204は、上位のPCL202から受け取ったデータを、所定のパケット構造(CSDUパケット)に整形し、イニシエータ、レスポンダー間の送信を行う。CNL204では、CSDUパケットの種別を理解するためのパラメータをCSDUパケットヘッダに付加する。また、受信においては、物理層206が受信したデータを解析し、CSDUパケットを抽出し、そのペイロードを上位のPCL202に引き渡す。CSDUには、物理層206による通信以外のユーザアプリケーション200で利用可能なステータス情報も含まれており、CNL204は、これらの生成処理、エラー通知等も行う。
【0035】
CNL204自身は、PCL202からの異なるprotocolから送られてくるデータを受け入れることが可能ではある。しかし、大容量近接通信では異なるプロトコルのデータの送受信は一度セッションの切断を必要とするため、複数プロトコルでのCNLサービスの利用は行わない。
【0036】
この制限により、複数のPCLエミュレーションからCNL204へデータの入力が行われたとしても、CNL204はそのデータをマルチプレクスすることはない。また、受信データに複数のプロトコルが含まれていた場合であっても、そのプロトコルの解析、それぞれのプロトコル内容に合わせたPCL202への配信、またはエラー検知によるセッションの切断等の処理は行わない。
【0037】
このため、CNL204によるサービスを利用するPCL202側では、必ず利用するプロトコルを1種類に確定した状態でCNL204によるサービスを利用する必要がある。これらのプロトコル方式を確定させるための判断と、必要な送受信を行うのは後述するPCLコモンの役割であり、プロトコルデータの生成、パースはPCLエミュレーションが行う。複数のプロトコルから同時にCNLサービスを利用できないよう排他処理もPCLコモンの役割である。
【0038】
CNL204はPCLコモンが接続を確立するのに必要なサービス、接続確立後にPCLエミュレーションがデータの送受信を行うのに必要なサービスを提供する。CNL204は、現在実行されているサービスが、全転送サイズの途中データなのか、最後のデータなのか、もしくは、データではなくパラメータなのかを示すプロファイルID(Profile ID)、データサイズ等をPCL202よりパラメータとして受け取る。そして、これらのパラメータをCSDUパケットヘッダに挿入する。CNL204は、送信パラメータを、大容量近接通信デバイスがデータを送信する際に生成するCSDUパケットの一部に埋め込むことで複数の論理チャネル(Channel)を1つの物理層(PHY Layer)206上で実現する。
【0039】
CNL204は、CSDUの単位でデータ転送を行う。CNL204はCSDU送信時に以下の3種類のプロファイルID(T_DATA, LT_DATA, CNL_DATA)をCSDUに対して付与する。さらに、CSDU受信時は、プロファイルIDの種類に応じた処理を行う。
【0040】
T_DATA, LT_DATA
CNL204は、ユーザデータを転送するCSDUに対して、T_DATAを付与する。ただし、CSDUペイロードへの分割において、最終のCSDUとなる場合にはLT_DATAを付与する。CSDUのペイロードには、ユーザデータのみが格納され、CNL204がヘッダ情報などを埋め込むことはない。
【0041】
CNL_DATA
CNL204は、大容量近接通信システム固有の制御データを転送するCSDUに対して、CNL_DATAを付与する。制御データの例としては、パラメータ情報などがある。CSDUペイロードにはヘッダ情報が埋め込まれる。CNL204はこのヘッダ情報を解釈し、適切な処理を行う。
【0042】
CNL204は、上位層の要求に応じて、物理層206のサービスを利用した通信を行う他、物理層206の接続の確立、切断、データの連続性の保障などを行う。
【0043】
大容量近接通信では、ファイル等のデータだけではなく、PCL202内での管理パラメータや、通信先の同一レイヤー間でのデータの送受信が存在する。これらのファイル、パラメータ類は、CNL204によって最終的にCSDUフォーマットに準拠した形式で伝送される。データの種別を特定するにはプロファイルIDを用いる。これにより、物理層206のレベルで、複数の伝送Channelを論理的に用いることが可能となる。従って、通信レートを大幅に向上させることができ、特に動画などの大容量のデータ通信に適している。
【0044】
物理層206は、本実施形態による近距離大容量通信が可能な無線通信システムの大容量近接通信用の物理層であり、誤り訂正機能、プリアンブルセンス(preamble sense)機能を含む。本実施形態では、通信機器の物理層として大容量近接通信用の物理層と称されるものを例示するが、物理層はこれに限定されるものではなく、通信用の汎用的な物理層に適用することができる。大容量近接通信用の物理層は、CSDUパケット、プロファイルID等を用いることで写真、動画などの大容量のデータ通信に特に適したものである。
【0045】
図4は、ソフトウェアの役割に基づいて、図3の構成をOSI参照モデルで示したものである。図4に示すように、物理層(第1層)206は、データを通信回線に送出するための電気的な変換や機械的な作業を受け持つ。ピンの形状やケーブルの特性なども第1層で定められる。
【0046】
CNL204は、データリンク層(第2層)、トランスポート層(第4層)に対応する。データリンク層は、通信相手との物理的な通信路を確保し、通信路を流れるデータのエラー検出などを行う。また、トランスポート層は、通信相手まで確実に効率良くデータを届けるためのデータ圧縮や誤り訂正、再送制御などを行う。なお、本実施形態のシステムはP2P通信であるため、OSI参照モデルにおけるネットワーク層(第3層)は設けられておらず、システムを簡略化することができる。
【0047】
PCL202は、セッション層(第5層)とプレゼンテーション層(第6層)が対応する。セッション層は、通信プログラム同士がデータの送受信を行うための仮想的な経路(コネクション)の確立や解放を行う。プレゼンテーション層は、セッション層から受け取ったデータをユーザが分かり易い形式に変換したり、アプリケーション層から送られてくるデータを通信に適した形式に変換するなどの処理を行う。
【0048】
ユーザアプリケーション200は、アプリケーション層(第7層)に対応する。アプリケーション層は、データ通信を利用した様々なサービスを人間や他のプログラムに提供する。
【0049】
[通信機器の状態遷移について]
本実施形態のシステムにおいて、イニシエータ、レスポンダーの各通信装置は、接続確立後に間欠受信動作(パワーセーブ動作)に遷移することができる。図5は、本実施形態のシステムにおいて、CNL204のレイヤにおける状態遷移を示す模式図である。図5に基づいて、パワーセーブモードを含む状態遷移について説明する。
【0050】
図5において、状態(Search)は、コネクションリクエストC−Reqを待ち受けている状態である。レスポンダーでは、状態(Search)においてC−Reqを受信すると、上位レイヤであるPCL202からの応答待ち状態(Accept Waiting)となる。この状態で、PCL202から接続許可(Accept)の応答があると、C−Accを送信し、状態(Responder Responce)となる。一方、応答待ち状態(Accept Waiting)でリリースフレームC−Risを受信すると、状態(Search)に戻る。
【0051】
状態(Responder Responce)において、ACKを受信すると、状態(Responder Connected)へ遷移する。これにより、接続が確立した状態となる。
【0052】
また、イニシエータでは、状態(Search)において、上位レイヤから接続要求があると、C−Reqを送信し、状態(Connection Request)に遷移する。状態(Connection Request)において、C−Accを受信すると、状態(Response Waiting)に遷移し、上位レイヤからの応答待ちとなる。状態(Response Waiting)において、上位レイヤから接続許可が出された場合、状態(Initiator Connrcted)へ遷移する。これにより、接続が確立した状態となる。一方、状態(Response Waiting)において、上位レイヤから接続が許可されなかった場合、状態(Search)へ戻る。
【0053】
接続確立後の状態(Initiator Connected、Responder Connected)では、接続が解除されない限り、状態(Connected)、状態(Own−Hibernate)、及び状態(Target Sleep)の間で遷移する。接続確立後は状態(Connected)となり、上位レイヤであるPCL202からパワーセーブモードに遷移する旨の指示(Upper Layer Power−save Order)が出されると、状態(Own−Hibernate)に遷移する。
【0054】
状態(Own−Hibernate)では、間欠受信動作が行われる。状態(Own−Hibernate)に遷移する場合、通信相手の装置に対してC−Sleepフレームが送信される。状態(Own−Hibernate)において、PCL202からパワーセーブモードを解除する旨の指示が出された場合、または通信相手からC−Wakeを受信した場合は、状態(Connected)に戻る。
【0055】
また、状態(Connected)において、C−Sleepを受信した場合は、状態(Target Sleep)に遷移する。この場合、通信相手の装置がパワーセーブモードに遷移可能なことを認識する。状態(Target Sleep)において、PCL202からパワーセーブモードに遷移する旨の指示(Upper Layer Power−save Order)が出されると、状態(Own−Hibernate)に遷移する。そして、自装置もスリープモードとなる。また、状態(Target Sleep)において、ACKを受信すると、状態(Connected)に戻る。
【0056】
[間欠受信動作の具体例]
以上のように、本実施形態のシステムでは、接続確立後に上位レイヤから間欠受信動作に遷移する旨の指示を受けた場合は、間欠受信動作を行う。図6は、間欠受信動作を示す模式図である。接続確立後、通常は常時受信が行われる。間欠受信動作では、所定の時間間隔で受信(Awake)期間が設定され、受信期間を過ぎると、休止(Dormant)期間となり、受信動作が停止される。休止期間では、通信機器の送信処理部106、受信処理部108などの電力が最小限に抑えられる。従って、休止期間を設定することで、消費電力を最小限に抑えることが可能である。
【0057】
図7は、装置Aと装置Bの接続が確立された場合に、接続確立後のパワーセーブ動作を示す模式図である。接続確立後に、通信相手のデバイスに対して間欠受信動作を許可する場合、C−Sleepフレームを送信することでその旨を通知する。また、自装置が間欠受信動作を開始する場合にも、C−Sleepフレームを送信することで相手デバイスに対して通知を行う。図7の例において、装置Aは、装置Bに対してC−Sleepフレームを送信し、自装置を間欠受信動作にする。これにより、装置Aにおいて、所定時間の受信期間と休止期間が交互に繰り返される。また、図7の例では、C−Sleepフレームを受信した装置Bは、間欠受信動作が許可されたため、間欠受信動作に遷移する。なお、C−Sleepフレームは間欠動作が可能であることを示すフレームであるため、C−Sleepを送信した装置Bは必ずしも間欠動作を行う必要はない。同様に、装置AがC−Sleepフレームを受信した場合に、装置Aも必ずしも間欠動作を行う必要はない。
【0058】
C−Sleepフレームには、休止期間及び受信期間に関する時間情報が記載されている。装置A,Bは、この情報に従って休止期間と受信期間を設定し、間欠的に受信を行うことでパワーセーブを行う。
【0059】
これにより、例えば動画データなどの大容量のデータ送受信する場合などにおいて、間欠的にデータフレームを送信する場合は、送信が行われない期間をパワーセーブモードに設定することで、消費電力を低減することができる。特に、大容量近接通信用の物理層による通信では、極めて高速にデータ転送をすることが可能であるため、動画データなどを送信した場合に、送信するデータ量に対して転送速度が非常に速くなる。このような場合、一度にデータを送ると、受信側の機器のバッファの容量を大きくする必要があるが、間欠的にデータ転送を行うことで、受信側の機器のバッファ量を最小限に抑えることができる。本実施形態では、転送速度を極めて速くすることのできる状況下において、間欠動作を行うことで、消費電力を大幅に低減することが可能となる。
【0060】
図8は、間欠受信動作を解除する際の動作を示す模式図である。図8では、装置Bがパワーセーブモードになっているものとする。間欠受信動作を解除する際には、装置Aが通信相手の装置Bに対してC−Wakeフレームを送信する。装置Bは、休止期間ではC−Wakeフレームを受信することはできないが、受信期間でC−Wakeフレームを受信すると、間欠受信動作を解除する。装置Aは、装置BからC−Wakeフレームに対するACKフレーム応答を受信するまでの間は、C−Wakeフレームの再送を繰り返す。また、装置Aは、一定時間C−Wakeの再送を繰り返して,ACK応答が得られない場合は、装置Bとの接続が切断されたものと判断する。
【0061】
また、間欠受信動作を行っている装置に対しては、通信相手の装置から定期的にC−Probeフレームが送信される。C−Probeフレームは、無線接続が有効かどうかを確認するために送信される。上述したC−Wakeフレームは、間欠受信動作から連続受信動作への状態遷移を伴うものであるが、C−ProbeフレームはCNL204の状態遷移を伴わないものである。具体的には、間欠動作を行っている装置は、C−Probeフレームを受信した場合は、CPUを起動することなく、ACKフレームを返す動作のみを行う。
【0062】
図9は、間欠受信動作を行っている装置Bに対して、装置AからC−Probeフレームを送信している様子を示す模式図である。装置Bは、休止期間でC−Probeフレームを受信した場合、特に動作を行わない。一方、装置Bは、受信期間でC−Probeフレームを受信した場合、装置Aに対してACKを送信する。この際、C−ProbeフレームはCNL204の状態遷移を伴わないため、送信処理部106、受信処理部108などの電力を最小限に抑えている状態が維持される。従って、引き続き消費電力を低減することが可能である。なお、C−Probeフレームは、受信期間で受信が可能なように、そのデータ長が規定されている。
【0063】
装置Aは、ACKの受信により装置Bとの接続が維持されていることを認識する。また、装置Aは、C−Probeフレームに対するACKを受信しなかった場合は、装置Bとの接続が切断されたものと判断し、装置Bとのデータの送受信に関する処理を終了するなどの必要な処理を行うことができる。このように、装置Aは、定期的にC−Probeフレームを送信し、ACKを受信したか否かによって装置Bとの接続が継続しているか否かを認識することができる。以上のように、装置A側では、C−Probeフレームを送信することで、相手デバイスが間欠受信動作を行っている場合に、相手の状態(間欠受信動作)を保持したまま、相手がまだ通信可能範囲にいることを確認することが可能となる。
【0064】
図10は、間欠動作に関係する通信機器の機能ブロック構成を示す模式図である。図10に示すように、通信機器は、間欠動作部302、間欠動作通知部304、間欠動作解除部306、間欠動作解除要求部308を備える。間欠動作部302は、上位レイヤからの指令に基づいて、間欠動作を行う。間欠動作通知部304は、通信相手の装置に対してC−Sleepを送信する。間欠動作解除部306は、上位レイヤからの指令に基づいて間欠動作を解除する。間欠動作解除要求部308は、通信相手の装置に対してC−Wakeを送信する。なお、図10に示す機能ブロックは、ハードウェア(回路)、又は演算処理部(CPU)とこれを機能させるソフトウエア(プログラム)によって構成することができる。演算処理部(CPU)とソフトウエアによって構成する場合、これらの機能ブロックは、主として上述したCNL206によって構成され、そのプログラムは、通信機器100、携帯機器200が備えるメモリ等の記録媒体に格納されることができる。
【0065】
以上説明したように本実施形態によれば、接続確立後に間欠動作を行うことにより、消費電力を低減することができる。特に、大容量近接通信用の物理層による通信では、極めて高速にデータ転送をすることが可能であるため、動画データなどを送信した場合に、送信するデータ量に対して転送速度が非常に速くなる。このような場合において、間欠的にデータ転送を行うことで、受信側の機器のバッファ量を最小限に抑えることができるとともに、消費電力を大幅に低減することが可能となる。なお、上述した例では、無線通信システムを例に挙げて説明したが、通信システムは有線のものであってもよい。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態にかかる通信システムを示した説明図である。
【図2】通信機器のデータの送受信に関係する構成を説明するための模式図である。
【図3】イニシエータ、レスポンダーの各機器のソフトウェア構成を階層構造として示した模式図である。
【図4】図3の構成をOSI参照モデルで示した模式図である。
【図5】CNLのレイヤにおける状態遷移を示す模式図である。
【図6】間欠受信動作を示す模式図である。
【図7】装置Aと装置Bの接続が確立された場合に、接続確立後のパワーセーブ動作を示す模式図である。
【図8】間欠受信動作を解除する際の動作を示す模式図である。
【図9】間欠受信動作を行っている装置Bに対して、装置AからC−Probeフレームを送信している様子を示す模式図である。
【図10】間欠動作に関係する通信機器の機能ブロック構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0068】
102 送受信カプラ
302 間欠動作部
304 間欠動作通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界結合または磁界結合により通信相手の装置と近距離一対一通信を行う通信部と;
前記通信相手の装置と接続確立後に接続を解除することなく、間欠動作を行う間欠動作部と;
間欠動作を行う場合に、前記通信相手の装置に対してその旨を通知する間欠動作通知部と;
を備える、通信装置。
【請求項2】
前記通信相手の装置から間欠動作の解除を要求するデータフレームを受信した場合に、前記間欠動作を解除する間欠動作解除部を備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信相手の装置へ間欠動作の解除を要求するデータフレームを送信する間欠受信動作解除要求部を備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
電界結合または磁界結合による近距離一対一通信により第2の通信装置と通信を行う第1の通信装置と;
前記第1の通信装置と接続確立後に接続を解除することなく、間欠受信動作を行う間欠動作部と、間欠動作を行う場合に、前記第1の通信装置に対してその旨を通知する間欠動作通知部と、を備える第2の通信装置と;
を備える、通信システム。
【請求項5】
電界結合または磁界結合により通信相手の装置と近距離一対一通信を行うステップと;
前記通信相手の装置と接続確立後に接続を解除することなく、間欠動作を行うステップと;
間欠動作を行う場合に、前記通信相手の装置に対してその旨を通知するステップと;
を備える、通信方法。
【請求項6】
電界結合または磁界結合により通信相手の装置と近距離一対一通信を行う手段;
前記通信相手の装置と接続確立後に接続を解除することなく、間欠動作を行う手段;
間欠動作を行う場合に、前記通信相手の装置に対してその旨を通知する手段;
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−50843(P2010−50843A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214536(P2008−214536)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.リナックス
2.Linux
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】