説明

通信装置呼出方法

【課題】多数の受信装置を適宜設置せずに広い範囲で通信装置を呼び出すこと。
【解決手段】電力線5からの電波によってRFタグ(通信装置)1(n)を呼び出す通信装置呼出方法であって、電力線通信可能に接続したセンタコンピュータ(送受信呼出装置)3から設定周波数の信号を送信して電力線5に伝送させることによって、RFタグ1(n)が受信可能な設定周波数成分を含む電波として信号を電力線5から発信させる手順と、信号を受信したRFタグ1(n)が、設定周波数成分の電波に自らの識別情報を乗せた応答信号を発信する手順と、センタコンピュータ3が応答信号を受信する手順と、を含むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線網を利用して通信を行う電力線通信システムを用いて、監視対象によって付帯されるRF(Radio Frequency)タグ等の通信装置を呼び出す通信装置呼出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、RFタグの受信装置を公道や各種設備に設置して、監視対象が付帯するRFタグを呼び出し、追跡するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−119955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記特許文献1に記載の技術では、受信装置を適宜設置しなければならないため、たとえ商店街やビルディング内に限ったとしても受信装置の設置に多大な労力と経済的負担が掛かってしまう。
【0004】
そこで、本発明は、多数の受信装置を設置せずとも広い範囲で通信装置を呼び出すことができる通信装置呼出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電力線からの電波によって通信装置を呼び出す通信装置呼出方法であって、電力線通信可能に接続した送受信呼出装置から設定周波数の信号を送信して前記電力線に伝送させることによって、前記通信装置が受信可能な設定周波数成分を含む電波として前記信号を前記電力線から発信させる手順と、前記信号を受信した前記通信装置が、設定周波数成分の電波に自らの識別情報を乗せた応答信号を発信する手順と、前記送受信呼出装置が前記応答信号を受信する手順とを含むことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、設定周波数の信号を電力線に伝送して、その電力線からの電波として信号を発信して、その信号で通信装置を呼び出し、その信号を受信した通信装置が応答信号を送受信呼出装置に応答するようにしたため、送受信呼出装置が通信装置の存在確認を行うことができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記送受信呼出装置が前記信号を送信した時刻と前記送受信呼出装置が呼出対象の前記通信装置の識別情報を含む前記応答信号を受信した最短の時刻とから伝送時間を求める手順と、求めた伝送時間と前記電力線に固有の伝送速度とに応じて、前記送受信呼出装置から前記通信装置までの距離を求めて、前記通信装置の位置を推定する手順と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、伝送時間と伝送速度とから送受信呼出装置から通信装置までの距離を求めることができる。特に、1本の電力線による伝送路の場合、求められた距離によって、その伝送路上の位置を推定することができる。また、複数の電力線によって複数の伝送路がある場合、求めた距離によって、送受信呼出装置からの通信装置の存在半径を示すことができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、電力線からの電波によって通信装置を呼び出す通信装置呼出方法であって、電力線通信可能に接続した送受信呼出装置から設定周波数の位相の異なる第1信号及び第2信号を、タイミングをずらして送信して前記電力線に伝送させることによって、前記通信装置が受信可能な設定周波数成分を含む電波として前記第1信号及び前記第2信号を前記電力線から発信させる手順と、前記第1信号及び前記第2信号を受信した前記通信装置が、設定周波数成分の電波に自らの識別情報を乗せた応答信号を発信する手順と、前記送受信呼出装置が前記応答信号を受信する手順と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、通信装置が第1信号及び第2信号の両方を受信した場合に応答信号を発信するようにしたため、通信装置は、例えば、最初に第1信号(又は第2信号)を受信した後に複数の第1信号(又は第2信号)を受信しても、最初に第2信号(又は第1信号)を受信するまでは応答信号を発信しない。したがって、通信装置が複数の伝送経路を伝送された複数の第1信号及び第2信号に対して1度だけ応答信号を発信し、送受信呼出装置が複数の伝送経路を伝送された複数の応答信号を受信することになる。そのため、送受信呼出装置は、応答信号を最初に受信したときに通信装置の存在を確認することができ、応答信号を受信し続けている間は次回の呼出を行わないようにすることができる。また、通信装置が1度だけ応答信号を発信するため、送受信呼出装置が受信する応答信号の数を少なくすることができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記位相の異なる前記第1信号及び前記第2信号は、互いに逆位相の信号であることを特徴とする。この構成によれば、通信装置が第1信号と第2信号とを区別しやすい。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4において、前記送受信呼出装置が前記第1信号及び前記第2信号のいずれも送信した時刻と前記送受信呼出装置が呼出対象の前記通信装置の識別情報を含む前記応答信号を受信した最短の時刻とから伝送時間を求める手順と、求めた伝送時間と、前記電力線に固有の伝送速度とに応じて、前記送受信呼出装置から前記通信装置までの距離を求めて、前記通信装置の位置を推定する手順と、を含むようにした。
【0013】
この構成によれば、第1信号及び第2信号で後に受信した信号が伝送開始位置(基準位置)から通信装置まで伝送される時間と電力線に固有の伝送速度とから、伝送開始位置から通信装置までの電力線に沿った距離を求めることができるため、求めた距離に基づいて監視区域内の通信装置の位置を推定することができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項において、前記通信装置が発信した前記応答信号を設定周波数の電波で送信する手順を含み、前記電力線が、前記通信装置から送信された電波を受信し、前記送受信呼出装置まで前記応答信号を前記信号として伝送するようにした。
【0015】
この構成によれば、通信装置からの応答信号も電力線によって、前記伝送開始位置まで伝送するため、通信設備を特別に備える必要がなく、経済的である。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項において、前記通信装置が発信した前記応答信号を設定周波数の電波で送信する手順を含み、前記通信装置の電波を受信可能な監視区域内に適宜設置された検出器側が、前記通信装置からの設定周波数の電波を受信し、前記送受信呼出装置に接続する伝送路に乗せて、前記応答信号を前記送受信呼出装置に送信するようにした。
【0017】
この構成によれば、通信装置からの応答信号を監視区域に設置された検出器を介して、前記伝送開始位置まで伝送するため、確実に応答信号を伝送することができる。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項において、前記送受信呼出装置では、移動中の前記通信装置から所定周波数の電波が発信されたときに、ドップラー効果の影響に応じた周波数のずれを検知する手順と、そのずれに応じて前記通信装置の移動状態を推定する手順とを含むようにした。
【0019】
この構成によれば、送受信呼出装置が設定周波数からのずれに応じて通信装置の移動状態を推定することができる。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項において、前記通信装置では、自らの移動中に、前記電力線から発信された設定周波数成分を含む電波を受信する際に、ドップラー効果の影響に応じた設定周波数からのずれを検知する手順と、そのずれに基づいて自らの移動状態を推定する手順と、前記送受信呼出装置に向けて送信する手順とを含むようにした。
【0021】
この構成によれば、通信装置が受信電波の設定周波数のずれを検出して、自らの移動状態を検出することができる。
【0022】
また、請求項10に記載の発明は、電力線からの電波によって通信装置を呼び出す通信装置呼出方法であって、電力線通信可能に接続した送受信呼出装置から設定周波数の信号を送信して前記電力線に伝送させる手順と、前記電力線から漏洩する漏洩電波に含まれる前記信号を受信した前記通信装置が、設定周波数成分の電波に自らの識別情報を乗せた応答信号を発信する手順と、前記送受信呼出装置が前記応答信号を受信する手順とを含むようにした。
【0023】
この構成によれば、既に配備されている公的なインフラである高圧配電線等の電力線から漏洩される不要な電波(漏洩電波)を積極的に有効利用することができるため、初期導入費用を抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
したがって、本発明によれば、多数の受信装置を適宜設置せずに広い範囲で通信装置を呼び出すことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施形態では、電力線からの電波を受信可能な通信装置として、電源を備えるアクティブタグであるRFタグを例に説明するが、本発明の通信装置としてRFタグに限定することを意図する趣旨ではない。つまり、通信装置としては、電力線からの電波を受信可能な構成を備えていれば、アクティブタグであるRFタグに限らず、電源を内蔵しないパッシブタグのRFタグ、各種規格の携帯電話、ノートパソコン、PDA等の可搬な通信機器に限らず、設置型通信機器であってもよい。
【0026】
[電力線通信ネットワーク]
まず、図1に示す概念図に従って、電力線通信ネットワーク100の構成を説明する。
この電力線通信ネットワーク100では、監視対象Xに付帯されるRFタグ1(n)(通信装置)が、電力線5からの電波に含まれる設定周波数成分を受信し、設定周波数の電波を送信して、送信した設定周波数の電波を電力線5に受信させるようになっている。電力線5は、電柱4(1)、4(2)、…、4(11)にそれぞれ掛け渡されている。なお、実施形態では、任意の電柱4(n)と表すこととする。
【0027】
また、ここでは、監視対象Xを人とするが、犬等の動物や自動車等の移動体であってもよい。また、RFタグ1(n)は、図示しない、全体の処理を司る処理部と、通信を制御する通信部と、自身を識別する固有のタグIDを記憶した記憶部と、コイン型電池等の電源と、設定周波数の信号としての電波を送受信するアンテナとを備えている。
【0028】
ところで、図1中の電力線5には、高圧配電線と低圧配電線とが含まれている。高圧配電線は変圧器6(1)や変圧器6(2)を介して低圧配電線に接続されている。なお、この実施形態では、送受信呼出装置であるセンタコンピュータ3とRFタグ1(n)との間でやりとりする信号を高圧配電線としての電力線5に乗せて伝送することとするが、低圧配電線に信号を伝送するようにしてもよい。また、高圧配電線と低圧配電線との間に、信号を連絡する機器を取り付け、高圧配電線と低圧配電線との間に信号を伝送するようにしてもよい。特に、センタコンピュータ3は、高圧配電線としての電力線5に、低圧配電線からそのような連絡する機器を介して接続するものとする。
【0029】
センタコンピュータ3は、一般的なコンピュータにより構成され、RFタグ1(n)の呼出処理や位置推定処理のアプリケーションプログラムを実行する。以下、呼出処理及び位置推定処理について、さらに詳細に説明する。
【0030】
呼出処理では、センタコンピュータ3が、そのアプリケーションプログラムの実行によって、第1信号及び逆位相の第2信号を電力線5に伝送させて、電力線5からの電波に乗せた設定周波数の第1信号及び第2信号によってRFタグ1(n)を呼び出す。また、位置推定処理では、センタコンピュータ3が、そのアプリケーションプログラムの実行によって、第1信号及び第2信号のいずれも送信した時刻と呼出対象のRFタグ1(n)のタグIDを含む応答信号を受信した最短の時刻とから伝送時間を求め、求めた伝送時間と電力線5に固有の伝送速度とに応じて、RFタグ1(n)の位置までの距離を求め、監視対象X(図1参照)の位置を推定する。
【0031】
そのため、このセンタコンピュータ3は、図示しない、全体の処理を司る処理部、通信を制御する通信部、アプリケーションプログラムの実行の際に参照する各種データや実行の際に生成された各種データ等を記憶する記憶部、キーボードやポインティングデバイス等の入力部、ディスプレイやプリンタ等の出力部、及び、電力線5に接続する伝送線路を備えている。なお、記憶部には、タグ情報、緯度・経度等の電柱4の位置情報、電柱4同士の間の距離情報、監視対象履歴情報等が記憶されているものとする。
【0032】
また、このセンタコンピュータ3は、RFタグ1(n)から送信されたタグID(識別情報)(及び時刻情報(受信時刻))を含む応答信号を受信し、図示しないディスプレイに提示する。また、このセンタコンピュータ3は、呼出情報の送信時刻とRFタグ1(n)の呼出情報の受信時刻とに基づく伝送時間と、電力線5に固有の信号の伝送速度とから伝送距離、すなわち、センタコンピュータ3からRFタグ1(n)までの距離を求めて、RFタグ1(n)の位置を推定する。
【0033】
そのため、センタコンピュータ3は、RFタグ1(n)の受信結果を提示して、RFタグ1(n)を呼び出し、オペレータにRFタグ1(n)の位置を推定させるようにするだけでなく、RFタグ1(n)の位置の推定処理を実行する。以下、この実施形態では、センタコンピュータ3が、第1信号及び第2信号を送信してRFタグ1(n)を呼び出し、その位置の推定処理を実行し、その推定処理結果をオペレータに提示する場合を説明する。
【0034】
なお、系統A、系統Bは、高圧配電線が2系統ある場合に、これらを区別する標識であり、図1を参照すると、センタコンピュータ3から変圧器6(1)に接続する側を系統A、センタコンピュータ3から変圧器6(2)に接続する側を系統Bとしている。また、送信時刻は、センタコンピュータ3が第2信号を電力線(高圧配電線)5に伝送した時刻を示している。また、受信時刻は、RFタグ1(n)が応答信号を電力線(高圧配電線)5から受信した時刻を示している。なお、受信時刻は、RFタグ1(n)が同一の呼出情報を最初に受信した時刻とする。このとき、伝送距離が最短経路となる。
【0035】
図1の場合、系統Aを利用すると、電柱4(1)、4(2)、4(3)を通る電力線5が最短経路であり、系統Bを利用すると、電柱4(5)、4(6)、4(7)、4(4)を通る電力線5が最短経路である。以下、1系統の場合を説明する場合には、系統A又は系統Bに第1信号と第2信号とを伝送するものとする。
【0036】
次に、図2に示すフローチャートに従って、RFタグ1(n)の呼出処理及びRFタグ1(n)の位置推定処理について説明する。なお、この実施形態では、RFタグ1(n)は、いずれの監視対象Xが付帯するものも同一の設定周波数(例えば950MHz帯)の電波を送受信することとする。
【0037】
まず、RFタグ1(n)は、監視対象Xが付帯する際に電源をオンされ(ステップR1)、設定周波数の電波の待ち受けを開始する(ステップR2)。そして、センタコンピュータ3は、電話や電子メールなどの通信手段によって監視対象Xの監視要求を監視依頼者から受け付けると(ステップS1)、図示しない記憶部を参照して、監視対象Xが付帯するものとしてあらかじめ登録されているタグIDを特定する(ステップS2)。続いて、センタコンピュータ3は、既に他のRFタグ1(n)を監視中か否かを判定する(ステップS3)。
【0038】
センタコンピュータ3は、他のRFタグ1(n)を監視中の場合(ステップS3のYes)には、設定時間を経過しているか否かを判定する(ステップS4)。ここで、設定時間は、後記ステップS7で計時を開始する時間であって、電力線5を伝送される第1信号及び第2信号が減衰し、これらの第1信号及び第2信号による電力線5からの電波がRFタグ1(n)によって受信できない程の低レベルになるまでの時間とする。
【0039】
つまり、先に送信した第1信号及び第2信号が減衰する前に、新たに第1信号及び第2信号を送信した場合、RFタグ1(n)が、先に伝送された第1信号及び第2信号か、後に伝送された第1信号及び第2信号かを判断することができないことを防止している。
【0040】
次に、センタコンピュータ3は、第1信号を電力線5に送信し(ステップS5)、設定周波数成分の電波を含む電波を電力線5から随時発信させる。すると、電力線5の近くに存在する待ち受け状態のRFタグ1(n)が、設定周波数の電波(第1信号)を受信する(ステップR3)。そして、その第1信号を受信したRFタグ1(n)は、図示しない記憶部に第1信号を一時記憶する(ステップR4)。このときもRFタグ1(n)は、待ち受け状態のままである。
【0041】
続いて、センタコンピュータ3は、第1信号と逆位相の波形を持つ第2信号を電力線5に送信し(ステップS6)、設定周波数成分の電波を含む電波を電力線5から随時発信させる。そして、センタコンピュータ3は、第2信号の送信時刻を図示しない記憶部に記憶し、経過時間の計測を開始する(ステップS7)。この経過時間は、前記したように、ステップS4において、設定時間に至ったか否かを判別するために用いる。なお、第1信号と第2信号との間隔は、互いが重ならず、連続しない時間であればよい。
【0042】
すると、電力線5の近くに存在する待ち受け状態のRFタグ1(n)が、設定周波数の電波(第2信号)を受信する(ステップR5)。そして、その第2信号を受信したRFタグ1(n)は、図示しない記憶部に記憶してある自身を識別するタグIDを読み出し(ステップR6)、第1信号又は第2信号をタグIDで変調して、応答信号を生成し(ステップR7)、応答信号を設定周波数の電波で送信する(ステップR8)。
【0043】
ここで、図3の波形図を参照して、第1信号及び第2信号の概念について説明する。図3(a)に第1信号の波形を示し、図3(b)に第2信号の波形を示し、図3(c)に第1信号及び第2信号の干渉波形を示している。なお、横軸に時間、縦軸に各波形の振幅を示し、ここでは、各波形を1波長分のみ示している。図3(a)(b)に示すように、第1信号と第2信号とは、互いに逆位相の関係になっている。
【0044】
そのため、RFタグ1(n)は、最初に受信した第1信号を記憶しておき、以降受信する信号と記憶してある第1信号とを干渉させれば、その信号が第1信号か第2信号かを判別することができる。つまり、干渉波形が互いに強め合った振幅になった場合には第1信号であり、図3(c)に示すように、干渉波形がほぼ0の振幅になった場合には第2信号であると判別することができる。
【0045】
次に、図2のフローチャートに戻って説明を続ける。RFタグ1(n)から送信された電波は、近くの電力線5が受信して、その電力線5上を信号(応答信号)として伝送される。このように電力線5上を伝送された応答信号は、センタコンピュータ3に受信される(ステップS8)。このとき、センタコンピュータ3は、受信した信号(応答信号)を監視対象XのタグIDで復調することで、第2信号(又は第1信号)が得られれば、監視対象XのRFタグ1(n)からの応答信号であると判別することができる。ここで、センタコンピュータ3は、監視対象XのRFタグ1(n)が複数ある場合には、対象のタグIDごとに受信した信号を復調して、監視対象のRFタグ1(n)からの応答信号であることを判別する。
【0046】
そして、センタコンピュータ3は、監視対象XのRFタグ1(n)からの応答信号であると判別した場合、その応答信号の受信時刻を図示しない記憶部に記録し(ステップS9)、RFタグ1(n)までの距離を算出し、RFタグ1(n)の位置を推定する(ステップS10)。
【0047】
ところで、センタコンピュータ3からRFタグ1(n)までの距離は、電力線5に固有の信号の伝送速度と信号の伝送時間との乗算によって、その積として算出することができる。なお、伝送時間は、ステップS7で取得した第2信号の送信時刻と応答信号の受信時刻との差の2分の1として算出される。ただし、その伝送時間には、電力線5からRFタグ1(n)までの間での電波の伝送時間、及び、RFタグ1内部のステップR5〜R8の処理時間が含まれているため、これらの時間を考慮して算出する必要がある。その電波の伝送時間は、電力線5上の伝送時間と近似して算出してもよい。また、処理時間は、RFタグ1(n)に搭載される図示しない処理部のクロック等を考慮してあらかじめ求めておけばよい。
【0048】
また、RFタグ1(n)の位置は、分岐しない1本の電力線5の場合には、伝送距離に応じた位置として推定される。また、電力線5が複数に分岐している場合には、センタコンピュータ3を中心とした伝送距離を半径とした円内の存在の可能性を推定することができる。特に、RFタグ1(n)の監視開始位置が特定されている場合には、その監視開始位置からの監視対象Xの移動をリアルタイムに追っていくことで、監視開始位置からの位置を推定することができる。
【0049】
そして、センタコンピュータ3は、対象のRFタグ1(n)ごとに、監視の終了か否かを確認し(ステップS11)、監視の終了していないタグIDが存在していれば(ステップS11のNo)ステップS4に処理を戻し、すべてが監視の終了の場合(ステップS11のYes)にはステップS1に処理を戻す。
【0050】
一方、RFタグ1(n)は、ステップR8での応答信号の送信後、設定時間が経過するか否かを判定する(ステップR9)。このとき、RFタグ1(n)は、設定時間が経過するまで繰り返して判定し(ステップR9のNo)、設定時間が経過すれば(ステップR9のYes)、ステップR4で記憶した第1信号をリセットし(ステップR10)、ステップR2に処理を戻す。
【0051】
なお、RFタグ1(n)が、時計機能を備えている場合、最初の第1信号の受信時刻、又は、最初の第1信号の受信後に最初に受信した第2信号の受信時刻を記録し、応答信号に含めてセンタコンピュータ3に応答するようにしてもよい。この場合、センタコンピュータ3では、第1信号の送信時刻、又は、第2信号の送信時刻とを記録しておき、RFタグ1(n)からの応答信号に含まれる第1信号の受信時刻又は第2信号の受信時刻とから片道の伝送時間を算出し、算出した伝送時間と電力線5の伝送速度とから片道の伝送距離を算出するようにしてもよい。なお、時計機能は、いわゆる電波時計機能、つまり、時刻提供施設が発信する日本標準時間の時刻情報を受信する機能を備えていることが望ましい。
【0052】
また、この実施形態では、RFタグ1(n)からセンタコンピュータ3への応答も、電力線5を伝送するものとして説明したが、電力線5に沿って設置されたRFタグ1(n)から電波を受信する図示しない検出器を介して転送されるようにしてもよい。この場合、検出器は、センタコンピュータ3に有線で接続していても、無線で接続してもよい。
【0053】
また、RFタグ1(n)を通信可能な携帯端末(検出器)を介して、センタコンピュータ3に接続するようにしてもよい。この場合、例えば、携帯電話が、RFタグ1(n)からの応答信号を乗せた電波を受信し、その応答信号を携帯電話回線網、アドホックセンサネットワークを介して、センタコンピュータ3に転送するようにしてもよい。
【0054】
ところで、RFタグ1(n)が、60Km/h程度の高速移動中の場合、RFタグ1(n)と電力線5の任意の箇所との間にはドップラー効果の影響が顕著に表れてくる。例えば、RFタグ1(n)と電力線5とが互いに近づいている場合、周波数が高くなる。そのため、センタコンピュータ3は、電力線5を伝送される信号をフーリエ変換し、設定周波数からのずれによって、RFタグ1(n)の移動の有無を判定することができる。
【0055】
なお、RFタグ1(n)が移動中であれば、RFタグ1(n)自体も、電力線5からの電波に含まれる設定周波数のずれを検出することができるため、自らの移動状態を検出することができる。そのため、RFタグ1(n)は、その移動状態の検出結果を応答信号に含めてセンタコンピュータ3に送信するようにしてもよい。
【0056】
以上説明したように、この実施形態によれば、センタコンピュータ3から電力線5の近くにいるRFタグ1(n)を呼び出すことができるようになり、センタコンピュータ3の設置場所である電力制御所(基準位置)からのRFタグ1(n)までの距離を推定して、推定した距離に基づいてRFタグ1(n)の位置を推定することができるようになる。また、既に配備されている公的なインフラである高圧配電線等の電力線5から漏洩される不要な電波(漏洩電波)を積極的に有効利用することができるため、初期導入費用を抑えることができる。したがって、従来のようにRFタグ1(n)からの電波を受信する多数の検出器を適宜設置せずに広い範囲でRFタグ1(n)を呼び出すことができるようになる。
【0057】
なお、この実施形態では、センタコンピュータ3が第1信号と第2信号とを送信して、RFタグ1(n)が両信号を受信したときに、応答信号を発信するようにした場合を説明したが、センタコンピュータ3が一種類の信号のみを送信して、RFタグ1(n)がその一種類の信号を受信したときに応答信号を発信するようにしてもよい。
【0058】
この場合、RFタグ1(n)は、複数の伝送経路を伝送された信号を時間差で受信するたびに、応答信号を発信してしまう。そのため、RFタグ1(n)は、最初に信号を受信して応答信号を発信した後は、設定時間経過するまでは信号を受信しても応答信号を発信しないようにすることが好ましい。
【0059】
また、この場合、センタコンピュータ3は、対象のRFタグ1(n)を呼び出す信号を送信後に、最初に応答信号を受信したことによって、RFタグ1(n)の存在を確認する。そのため、センタコンピュータ3は、最初に応答信号を受信した後に、対象のRFタグ1(n)からの応答信号を受信した場合にはその応答信号を破棄するようにすればよい。なお、再度、RFタグ1(n)を呼び出す際には、設定時間経過後に、信号を送信するようにする必要がある。
【0060】
また、この実施形態では、第1信号と第2信号とは、逆位相の場合として説明したが、両者を区別できる位相差であれば、その位相差はどの程度であってもよい。例えば、位相差が90°であってもよい。
【0061】
また、この実施形態では、第1信号と第2信号とが、位相が異なるものとして説明したが、それぞれを区別することができるのであれば、周波数や振幅や波数が異なっていてもよい。例えば、波数が異なる場合、第1信号の波数を10個とし、第2信号の波数を20個として、RFタグ1(n)が、連続信号の波数を計数して判別することができる。
【0062】
また、この実施形態では、1系統を利用してRFタグ1(n)を呼び出し、距離を推定する場合を説明したが、2系統を利用するようにしてもよい。この場合には、センタコンピュータ3は、各系統A,Bのそれぞれに第1信号と第2信号とを送信し、各系統A,Bごとに応答信号を受信することにより、2系統の距離が推定されるため、あらかじめ伝送距離を計測やシミュレーションしておけば、対応する系統を特定することが可能になる。
【0063】
また、この実施形態において、センタコンピュータ3が設置されている電力制御所は、一般に配電変電所と呼ばれているところに相当する。しかし、低圧配電線5(2)の電力線5を伝送路として用いる場合には、センタコンピュータ3が設置される場所は、オフィスビルや一般的な民家であってもよい。
【0064】
また、この実施形態では、室外に架設されている高圧配電線を電力線5として説明したが、室内に配線されている配電線を電力線5とし、室内のコンセントなどからの電波に乗せて第1信号や第2信号を送信させ、室内のRFタグ1(n)の距離を算出し、室内でのRFタグ1(n)の位置を推定するようにしてもよい。この場合も、前記実施形態と同様に、距離の算出や位置の推定を行うことができるため、詳細な説明を省略する。
【0065】
また、RFタグ1(n)が電力線5からの電波を受信可能であれば、電力線5が地中に埋設されていてもよい。この場合、RFタグ1(n)からの電波を受信するための図示しない検出器を地上等に設置したり、監視対象Xが付帯する図示しない携帯電話機を介して携帯電話網に接続して、RFタグ1(n)からの応答をセンタコンピュータ3に送信したりすることが望ましい。
【0066】
また、地中に埋設された電力線5は家、店舗、信号、街灯等の施設に引き込まれて各施設に電力を供給するようになっているため、このような地上の施設に引き込まれた電力線からの電波でRFタグ1(n)を呼び出すようにしてもよい。この場合、地中に埋設された電力線5は、センタコンピュータ3からRFタグ1(n)に向けた呼出信号を伝送する伝送路として機能する。
【0067】
また、この実施形態では、住宅などへ配電する高圧配電線を電力線5として説明したが、特定用途に用いられる電線を電力線5として用いてもよい。例えば、電気電車のパンタグラフに電力を供給するトロリ線を電力線5として用いてもよい。この場合も、前記実施形態と同様に、距離の算出や位置の推定を行うことができるため、詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態の電力線通信ネットワークを説明する概念図である。
【図2】本発明の実施形態のRFタグ及びセンタコンピュータの処理を説明するフローチャートである。
【図3】実施形態のRFタグ呼出原理を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0069】
100,200 電力線通信ネットワーク
1(n) RFタグ(通信装置)
2(n) 検出器
3 センタコンピュータ(送受信呼出装置)
4(n) 電柱
5 電力線
X 監視対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線からの電波によって通信装置を呼び出す通信装置呼出方法であって、
電力線通信可能に接続した送受信呼出装置から設定周波数の信号を送信して前記電力線に伝送させることによって、前記通信装置が受信可能な設定周波数成分を含む電波として前記信号を前記電力線から発信させる手順と、
前記信号を受信した前記通信装置が、設定周波数成分の電波に自らの識別情報を乗せた応答信号を発信する手順と、
前記送受信呼出装置が前記応答信号を受信する手順と、
を含むことを特徴とする通信装置呼出方法。
【請求項2】
前記送受信呼出装置が前記信号を送信した時刻と前記送受信呼出装置が呼出対象の前記通信装置の識別情報を含む前記応答信号を受信した最短の時刻とから伝送時間を求める手順と、求めた伝送時間と前記電力線に固有の伝送速度とに応じて、前記送受信呼出装置から前記通信装置までの距離を求めて、前記通信装置の位置を推定する手順と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の通信装置呼出方法。
【請求項3】
電力線からの電波によって通信装置を呼び出す通信装置呼出方法であって、
電力線通信可能に接続した送受信呼出装置から設定周波数の位相の異なる第1信号及び第2信号を、タイミングをずらして送信して前記電力線に伝送させることによって、前記通信装置が受信可能な設定周波数成分を含む電波として前記第1信号及び前記第2信号を前記電力線から発信させる手順と、
前記第1信号及び前記第2信号を受信した前記通信装置が、設定周波数成分の電波に自らの識別情報を乗せた応答信号を発信する手順と、
前記送受信呼出装置が前記応答信号を受信する手順と、
を含むことを特徴とする通信装置呼出方法。
【請求項4】
前記位相の異なる前記第1信号及び前記第2信号は、互いに逆位相の信号であることを特徴とする請求項3に記載の通信装置呼出方法。
【請求項5】
前記送受信呼出装置が前記第1信号及び前記第2信号のいずれも送信した時刻と前記送受信呼出装置が呼出対象の前記通信装置の識別情報を含む前記応答信号を受信した最短の時刻とから伝送時間を求める手順と、
求めた伝送時間と前記電力線に固有の伝送速度とに応じて、前記送受信呼出装置から前記通信装置までの距離を求めて、前記通信装置の位置を推定する手順と、
を含むことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の通信装置呼出方法。
【請求項6】
前記通信装置が発信した前記応答信号を設定周波数の電波で送信する手順を含み、
前記電力線が、前記通信装置から送信された電波を受信し、前記送受信呼出装置まで前記応答信号を前記信号として伝送すること、
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の通信装置呼出方法。
【請求項7】
前記通信装置が発信した前記応答信号を設定周波数の電波で送信する手順を含み、
前記通信装置の電波を受信可能な監視区域内に適宜設置された検出器側が、前記通信装置からの設定周波数の電波を受信し、前記送受信呼出装置に接続する伝送路に乗せて、前記応答信号を前記送受信呼出装置に送信すること、
を特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の通信装置呼出方法。
【請求項8】
前記送受信呼出装置では、移動中の前記通信装置から所定周波数の電波が発信されたときに、ドップラー効果の影響に応じた周波数のずれを検知する手順と、そのずれに応じて前記通信装置の移動状態を推定する手順とを含むこと、
を特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の通信装置呼出方法。
【請求項9】
前記通信装置では、自らの移動中に、前記電力線から発信された設定周波数成分を含む電波を受信する際に、ドップラー効果の影響に応じた設定周波数からのずれを検知する手順と、そのずれに基づいて自らの移動状態を推定する手順と、前記送受信呼出装置に向けて送信する手順とを含むこと、
を特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の通信装置呼出方法。
【請求項10】
電力線からの電波によって通信装置を呼び出す通信装置呼出方法であって、
電力線通信可能に接続した送受信呼出装置から設定周波数の信号を送信して前記電力線に伝送させる手順と、
前記電力線から漏洩する漏洩電波に含まれる前記信号を受信した前記通信装置が、設定周波数成分の電波に自らの識別情報を乗せた応答信号を発信する手順と、
前記送受信呼出装置が前記応答信号を受信する手順と、
を含むことを特徴とする通信装置呼出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−283419(P2008−283419A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125207(P2007−125207)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】