説明

通信装置

【課題】データファイルの送信に関して既存の操作手順と併存可能な簡略化された操作手順を提供する。
【解決手段】実施形態に係る通信装置は、対象データファイルが特定された状態で対向通信装置との間で第1の無線通信方式に基づく接続が確立すると、第1の無線通信方式と異なる第2の無線通信方式を用いて対向通信装置に接続するための対向アドレス情報を第1の無線通信方式を用いて取得する無線通信部110を含む。この通信装置は、対向アドレス情報の取得が成功すれば対象データファイルを対向アドレス情報に従って第2の無線通信方式を用いて送信し、対向アドレス情報の取得が失敗して少なくとも1つの送信先候補から送信先を選択する操作が受理されれば対象データファイルを送信先に従って第2の無線通信方式を用いて送信する無線通信部120を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、データファイルの通信に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの通信装置は、テキストファイル、静止画ファイル、音楽ファイル、動画ファイル、アドレス帳ファイルなどの様々なデータファイルを対向通信装置に送信することができる。例えば、携帯電話機は、セルラ通信に限られず、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fi、IrDA(Infrared Data Association)などの様々な通信方式をサポートすることがある。また、これら様々な通信方式間の連携(ハンドオーバなど)のための技術も提案されている。
【0003】
ところで、データファイルを対向通信装置に送信するためには、ユーザがいくつかの操作(入力)を行う必要がある。例えば、通信装置に保存された種々のデータファイルの中から対象データファイルを特定する操作が必要である。また、特定された対象データファイルを送信するための通信方式を特定する操作、送信を承認する操作、送信先(対向通信装置)を特定する操作なども必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Connection Handover 1.1(NFC ForumTM)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ユーザが行う操作手順を簡略化することは、通信装置の操作性の向上に寄与する。また、簡略化された操作手順と既存の操作手順とを併存させることは、既存の操作手順を好むユーザと簡略化された操作手順を好むユーザとの双方に有益である。更に、両者が併存する場合に、一方の操作手順に適さない状況において他方の操作手順に適応的にスイッチすれば、再操作によるユーザの負担を軽減できる。
【0006】
従って、実施形態は、データファイルの送信に関して既存の操作手順と併存可能な簡略化された操作手順を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る通信装置は、対象データファイルが特定された状態で対向通信装置との間で第1の無線通信方式に基づく接続が確立すると、第1の無線通信方式と異なる第2の無線通信方式を用いて対向通信装置に接続するための対向アドレス情報を第1の無線通信方式を用いて取得する第1の無線通信部を含む。この通信装置は、対向アドレス情報の取得が失敗すると少なくとも1つの送信先候補を提示する画面及び音声の少なくとも一方を出力する出力部と、少なくとも1つの送信先候補から送信先を選択する操作を受理する入力部とを含む。この通信装置は、対向アドレス情報の取得が成功すれば対象データファイルを対向アドレス情報に従って第2の無線通信方式を用いて送信し、送信先を選択する操作が受理されれば対象データファイルを送信先に従って第2の無線通信方式を用いて送信する第2の無線通信部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態に係る通信装置を例示するブロック図。
【図2】図1の第1の無線通信部を例示するブロック図。
【図3】図1の第2の無線通信部を例示するブロック図。
【図4】既存の操作手順に伴う画面遷移の説明図。
【図5】一実施形態に係る簡略化された操作手順に伴う画面遷移の説明図。
【図6】データファイルを送信するまでのユーザ側の動作及び対向側の動作を例示するシーケンス図。
【図7】データファイルを送信するまでのユーザ側の動作を例示するフロー図。
【図8】図7の動作に関するエラー処理を例示するフロー図。
【図9】エラー画面を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
(一実施形態)
図1に示すように、一実施形態に係る通信装置は、制御部101、入力部102、出力部103、データファイル記憶部104、第1の無線通信部110及び第2の無線通信部120を有する。
【0010】
制御部101は、図1の通信装置の各要素を制御する。具体的には、制御部101は、図示しない記憶部に保存されたプログラムを実行することにより、様々な機能を実現するプロセッサである。例えば、制御部101は、後述する第1の無線通信部110及び第2の無線通信部120の機能の一部を実現してもよい。
【0011】
入力部102は、ユーザからの操作(入力)を受理し、制御部101に渡す。典型的には、入力部102は、テンキー、キーボード、プッシュボタンなどのキーデバイス、タッチパネルなどを含むことができる。例えば、入力部102は、出力部103から出力された画面または音声に対するユーザからの応答(承認、非承認、選択など)を示す操作を受理することができる。また、入力部102は、対象データファイルを特定(選択、再生など)するための操作、対象データファイルを送信する通信方式を特定するための操作、対象データファイルを送信する対向通信装置を特定するための操作を受理することもできる。更に、ユーザからの操作は、音声、ジェスチャなどの形式で入力されてもよいので、入力部102はマイクロホン、カメラ、加速度センサなどを含むこともできる。
【0012】
出力部103は、制御部101から情報を受け取り、ユーザへ提示する。典型的には、出力部103は、LCD(Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Device)ディスプレイなどの表示デバイス、スピーカなどを含むことができる。例えば、出力部103は、対象データファイルを対向通信装置に送信することの承認または非承認をユーザに確認する画面及び音声の少なくとも一方を出力することができる。また、ユーザへの情報提示に関して補助的に振動を発生させることを想定すれば、出力部103がバイブレータを含むこともあり得る。
【0013】
データファイル記憶部104は、図1の通信装置が保持する種々のデータファイルを記憶する。データファイル記憶部104に記憶されている各データファイルは、必要に応じて制御部101を介して出力部103によってユーザに提示されたり、必要に応じて第2の無線通信部120から対向通信装置へ送信されたりする。尚、図1の通信装置は、データファイル記憶部104の他に例えば制御部101によって実行されるプログラムなどを記憶するための図示しない記憶部を備えていても勿論よい。
【0014】
第1の無線通信部110は、第1の無線通信方式をサポートする無線通信処理部である。即ち、第1の無線通信部110は、第1の無線通信方式を用いて種々のデータを送受信する機能を持つ。例えば、第1の無線通信部110は、対向通信装置との間で第1の無線通信方式に基づく接続が確立すると、第1の無線通信方式と異なる第2の無線通信方式を用いて対向通信装置に接続するための対向アドレス情報、デバイス名、セキュリティを持った接続のためのリンクキーを生成するためのハッシュ値等のデバイス情報を第1の無線通信方式を用いて取得することができる。尚、第1の無線通信部110の具体例は、後述される。
【0015】
第2の無線通信部120は、第2の無線通信方式をサポートする無線通信処理部である。即ち、第2の無線通信部120は、第2の無線通信方式を用いて種々のデータを送受信する機能を持つ。例えば、第2の無線通信部120は、第1の無線通信部110から通知された対向アドレス情報に従って、対象データファイルを第2の無線通信方式を用いて送信することができる。また、第2の無線通信部120は、入力部102によって受理された入力に応じた送信先に従って、対象データファイルを第2の無線通信方式を用いて送信することができる。尚、第2の無線通信部120の具体例は、後述される。
【0016】
尚、本実施形態において、第1の無線通信方式及び第2の無線通信方式は、夫々、NFC及びBluetooth(以降の説明では、BTと称する)であるとする。しかしながら、第1の無線通信方式はNFCとは別の無線通信方式に置き換えられてもよいし、第2の無線通信方式はBTとは別の無線通信方式に置き換えられてもよい。
【0017】
以下、第1の無線通信部110及び第2の無線通信部120の具体例を図2及び図3を用いて夫々説明する。
図2に示すように、第1の無線通信部110は、ハンドオーバデータ生成部111、ハンドオーバデータ送信部112、NFCデータ送信部113、NFC部114、NFCデータ受信部115、ハンドオーバデータ受信部116及びBTアドレス情報通知部117を含む。
【0018】
ハンドオーバデータ生成部111は、第1の無線通信方式から第2の無線通信方式へのハンドオーバを要求するハンドオーバデータを生成する。一例として、ハンドオーバデータ生成部111は、規格(例えば、“Connection Handover 1.1(NFC ForumTM)”)に従ってHandoverRequest(Select)と呼ばれるメッセージを生成することができる。
【0019】
ハンドオーバデータ送信部112は、ハンドオーバデータ生成部111からのハンドオーバデータを送信するためのデータ処理を行う。NFCデータ送信部113は、ハンドオーバデータ送信部112からの処理済みのハンドオーバデータを含む種々のNFCデータ(NFCを用いて送受信できるデータ)を送信するためのデータ処理を行う。
【0020】
NFC部114は、NFCを用いた信号送受信のための物理的な信号処理回路である。例えば、NFC部114は、NFCデータ送信部113からの送信データをデジタル−アナログ変換し、信号を調整(周波数変換、増幅、フィルタリングなど)して対向通信装置へ送信する。また、NFC部114は、対向通信装置から受信した信号を調整し、アナログ−デジタル変換してNFCデータ受信部115に供給する。
【0021】
NFCデータ受信部115は、NFC部114からの受信データに基づいて種々のNFCデータ(ハンドオーバデータを含む)を得るためのデータ処理を行う。ハンドオーバデータ受信部116は、NFCデータ受信部115からの処理済みのNFCデータに基づいてハンドオーバデータを得るためのデータ処理を行う。このハンドオーバデータは、NFCに基づく接続が確立している対向通信装置のBTアドレスを示す対向アドレス情報を含む場合がある。BTアドレス情報通知部117は、ハンドオーバデータに対向アドレス情報が含まれていれば、対向アドレス情報を第2の無線通信部120に通知する。
【0022】
図3に示すように、第2の無線通信部120は、対向BTアドレス情報取得部121、登録済BTアドレス情報取得部122、BTアドレス情報比較部123、BTデータ受信部124、BT部125、BTデータ送信部126、送信データファイル取得部127、登録済BTアドレス情報記憶部128を含む。
【0023】
送信データファイル取得部127は、必要に応じて図1のデータファイル記憶部104から対象データファイルを取得し(読み出し)、BTデータ送信部126に供給する。BTデータ送信部126は、種々のBTデータ(BTを用いて送受信できるデータ)を送信するためのデータ処理を行う。BT部125は、BTを用いた信号送受信のための物理的な信号処理回路である。例えば、BT部125は、BTデータ送信部126からの送信データをデジタル−アナログ変換し、信号を調整(周波数変換、増幅、フィルタリングなど)して対向通信装置へ送信する。また、BT部125は、対向通信装置から受信した信号を調整し、アナログ−デジタル変換してBTデータ受信部124に供給する。BTデータ受信部124は、BT部125からの受信データに基づいて種々のBTデータを得るためのデータ処理を行う。
【0024】
対向BTアドレス情報取得部121は、第1の無線通信部110(より具体的には、例えば図3のBTアドレス情報通知部117)から通知される対向アドレス情報を取得する。登録済BTアドレス情報取得部122は、登録済BTアドレス情報記憶部128に記憶されている少なくとも1つの登録済アドレス情報を取得する。登録済BTアドレス情報記憶部128には、少なくとも1つの登録済アドレス情報を記憶させることができる。登録済アドレス情報は、ユーザによって管理されてもよいし、通信履歴などに基づいて自動的に管理されてもよい。BTアドレス情報比較部123は、対向BTアドレス情報取得部121からの対向アドレス情報と、登録済BTアドレス情報取得部122からの少なくとも1つの登録済アドレス情報の各々とを比較する。後述するように、少なくとも1つの登録済アドレス情報のいずれかが対向アドレス情報に一致すれば、対象データファイルの送信を承認する操作、対象データファイルを送信するための通信方式を特定する操作、対象データファイルの送信先(対向通信装置)を特定する操作のうち一部または全部が省略される。
【0025】
以下、図4を用いて対象データファイルを対向通信装置に送信するための既存の操作手順に伴う画面遷移を説明してから、図5を用いて本実施形態に係る簡略化された操作手順に伴う画面遷移を説明する。
【0026】
既存の操作手順によれば、ユーザが対象データファイルを特定する操作を行うと、画面10が提示される。画面10では、対象データファイル(一例として静止画ファイル)が表示される。ユーザがBTを用いて対象データファイルを送信することを(サブメニューから)選択する操作(即ち、通信方式を特定する操作)を行うことにより、画面10から画面20への遷移が生じる。画面20では、対象データファイルの送信の承認/非承認を確認するウィンドウが表示される。ユーザが送信を承認する操作を行うことにより、画面20から画面30への遷移が生じる。画面30では、登録済アドレス情報または探索された周辺のBT機器(BT通信をサポートする通信装置)に基づく送信先候補リストが表示される。ユーザが送信先を選択する操作(即ち、対向通信装置を特定する操作)を行うことにより、画面30から画面40への遷移が生じる。そして、対象データファイルの送信処理が開始され、この進捗に伴って画面が遷移する。
【0027】
以上のように、既存の操作手順は、対象データファイルを特定する操作、対象データファイルを送信するための通信方式を特定する操作、送信を承認する操作、送信先(対向通信装置)を特定する操作などの数々の操作を必要とする。但し、図4の操作手順及び画面遷移は、本実施形態において想定される一例に過ぎず、必ずしも全ての既存の操作手順及び画面遷移を代表するものではない。
【0028】
本実施形態に係る簡略化された操作手順によれば、ユーザが対象データファイルを特定する操作を行うと、既存の操作手順と同様に画面10が提示される。次に、ユーザは、既存の操作手順とは異なり、対向通信装置との間で第1の無線通信方式に基づく接続を確立するための操作を行うことができる。具体的には、ユーザは自己の通信装置を対向通信装置とタッチさせることができる。タッチ操作によってユーザの通信装置と対向通信装置との間でNFCに基づく接続が確立する。NFCに基づく接続が確立すると、所定の(例えば、規格に従った)ハンドオーバ処理が発生し、ユーザの通信装置へ対向アドレス情報が通知される。この結果、対象データファイルの通信方式としてBTが特定され、送信先として対向通信装置が特定される。但し、対向アドレス情報が登録済アドレス情報に一致しない場合に、ユーザに送信先を選択する操作(或いは、対向通信装置への送信を承認/非承認する操作)などを要求する設計も可能である。対象データファイルの通信方式としてBTが特定され、送信先として対向通信装置が特定されると、例えば、画面10から画面50への遷移が発生する。画面50では、対象データファイルの対向通信装置への送信の承認/非承認を確認するウィンドウが表示される。ここでユーザが承認を示す操作を行うことにより、画面50から画面40への遷移が生じる。そして、対象データファイルの送信処理が開始され、この進捗に伴って画面が遷移する。
【0029】
尚、ユーザによるタッチ操作が送信の承認をも示唆しているという設計思想によれば、画面50への遷移を省略して画面10から画面40への遷移を発生させることも想定される。或いは、画面50への遷移の発生の有無を、ユーザの設定、データファイルのタイプなどに応じて可変としてもよい。例えば、アドレス帳ファイル、電子メールデータなどの個人的な情報については、画面50への遷移を発生させることにより意図しない流出を防ぐことができる。一方、ユーザが撮影した写真データなどを友人同士で共有する場合には、画面50への遷移を発生させないことによりスムーズに対象データファイルの受け渡しが可能となる。即ち、ユーザが対象データファイルを特定する操作と、第1の無線通信方式に基づく接続を対向通信装置との間で確立する操作(タッチ操作など)とを行うだけで、対象データファイルの送信が実現する。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る簡略化された操作手順は、対象データファイルを特定する操作と、第1の無線通信方式に基づく接続を対向通信装置との間で確立する操作(タッチ操作など)とを必要とする。即ち、この簡略化された操作手順は、対象データファイルを送信するための通信方式を特定する操作、送信を承認する操作、送信先(対向通信装置)を特定する操作のうち少なくとも一部を第1の無線通信方式に基づく接続を対向通信装置との間で確立する操作に置き換えることによって簡略化している。また、この簡略化された操作手順は、図4に例示した既存の操作手順を実質的に阻害することなく併存できる。従って、この簡略化された操作手順の導入は、既存の操作手順を好む(例えば、簡略化された操作手順を利用しない)ユーザにとっても実質的に不利益とはならない。
【0031】
以下、図6を用いて、本実施形態に係る簡略化された操作手順に従ってデータファイルを送信するまでのユーザ側の動作及び対向側の動作を例示する。
ユーザ側のユーザインタフェース/アプリケーション(UI/APL)では、ユーザからの操作に基づいて対象データファイルが特定され、画面10が提示される(ステップS201)。尚、UI/APLの各種処理は、図1の制御部101、入力部102、出力部103及び他の図示しない要素の協働によって実現される。続いて、ユーザのタッチ操作に基づいて、ユーザ側のNFC要素(第1の無線通信部110に相当する要素)と対向側のNFC要素との間でNFC通信が確立する(ステップS202)。
【0032】
NFC通信が確立すると、ユーザ側のNFC要素はNFC通信が確立したことをUI/APLに通知する(ステップS203)。通知を受けたUI/APLは、ユーザ側のBT要素(第2の無線通信部120相当する要素)にBT接続を要求する(ステップS204)。BT接続の要求を受けたBT要素は、登録済アドレス情報を取得したり、周辺のBT機器を探索したりする(ステップS205)。尚、設計次第で、ステップS205において、登録済アドレス情報の取得及び周辺のBT機器の探索の一方または両方が省略されてよい。
【0033】
一方、ステップS203からステップS205の処理と並行して、以下の処理が行われる。ステップS202に引き続き、ユーザ側のNFC要素と対向側のNFC要素との間で、BTへのハンドオーバのためのネゴシエーションが行われる(ステップS206)。それから、ユーザ側のNFC要素は、対向側のNFC要素へ対向アドレス情報を要求する(ステップS207)。対向側のNFC要素は対向アドレス情報をユーザ側のNFC要素へ応答し(ステップS208)、この対向アドレス情報はユーザ側のNFC要素からBT要素へ通知される(ステップS209)。
【0034】
ステップS205の処理及びステップS209の処理が完了すると、ユーザ側のBT要素は、ステップS209において通知された対向アドレス情報と、ステップS205において取得された少なくとも1つの登録済アドレス情報とを比較する(ステップS210)。対向アドレス情報が少なくとも1つの登録済アドレス情報のいずれかに一致していれば、ユーザ側のBT要素は生成済のリンクキーを使用して対向側のBT要素とBT接続する(ステップS211)。尚、対向アドレス情報が少なくとも1つの登録済アドレス情報のいずれにも一致していない場合には、自動的にBT認証処理(リンクキーを生成する処理)を開始する設計が可能である。また、登録済アドレス情報と、対向アドレス情報との比較処理(ステップS210)を省略する設計も想定できる。
【0035】
BT接続後、ユーザ側のBT要素は、UI/APLにBT接続を通知する(ステップS212)。BT接続の通知を受けると、UI/APLは画面50を表示する(ステップS213)。ユーザが送信を承認する操作を行うと、UI/APLは対象データファイルの送信をユーザ側のBT要素に要求する(ステップS214)。ユーザ側のBT要素は、BTを用いて対象データファイルを対向側のBT要素へ送信する(ステップS215)。対象データファイルの送信後、ユーザ側のBT要素は対象データファイルの送信完了をUI/APLに通知する(ステップS216)。
以上のように、本実施形態に係る簡略化された操作手順に従って、対象データファイルの送信が実現される。
【0036】
以下、図7を用いて、既存の操作手順及び本実施形態に係る簡略化された操作手順の両方について、データファイルを送信するまでのユーザ側の動作を説明する。
ユーザからの操作に基づいて対象データファイルが特定され、画面10が提示される(ステップS301)。ここで、ユーザが行う操作に基づいて、既存の操作手順の処理と本実施形態に係る簡略化された操作手順の処理との分岐が生じる(ステップS302)。ユーザが例えば通信方式を特定する操作(例えば、サブメニューからBTを選択する操作)を行うと、処理は既存の操作手順に沿ってステップS303に進む。一方、ユーザがNFC通信確立のために自己の通信装置を対向通信装置へタッチすると、処理は本実施形態に係る簡略化された操作手順に沿ってステップS311に進む。
【0037】
ステップS303において、画面20が提示される。前述の通り、画面20では、対象データファイルの送信の承認/非承認を確認するウィンドウが表示される。ユーザが承認(「はい」)を選択する操作を行う(ステップS304)と、処理はステップS305に進む。一方、ユーザが非承認(「いいえ」)を選択する操作を行う(ステップS304)と、処理はステップS301へ戻る(或いは、設計次第では処理が終了してもよい)。ステップS305では、第1の無線通信部110が、登録済アドレス情報を取得したり、周辺のBT機器を探索したりする。取得された登録済アドレス情報、探索された周辺のBT機器などに基づいて送信先候補リストが作成され、処理はステップS306に進む。
【0038】
ステップS306において、画面30が提示される。前述の通り、画面30では、送信先候補リストが表示される。ユーザは、送信先候補リストから送信先(デバイス)を選択する操作を行うことができる(ステップS307)。ステップS307において送信先が選択されると、選択されたデバイスのBTアドレス情報が抽出され(ステップS308)、第2の無線通信部120へ通知される。第2の無線通信部120は選択されたデバイスへ生成済のリンクキーを使用してBT接続し(ステップS309)、処理はステップS310に進む。ステップS310では、対象データファイルが送信され、処理が終了する。
【0039】
一方、ステップS311では、ユーザのタッチ操作に基づいてNFC通信が確立する(図6のステップS202に対応)。NFC通信が確立すると、第2の無線通信部120が、登録済アドレス情報を取得したり、周辺のBT機器を探索したりする(ステップS312、図6のステップS203からステップS205に対応)。ステップS312と並行して、第1の無線通信部110は、NFCを用いて対向BTアドレス情報を取得する(ステップS313、図6のステップS206からステップS209に対応)。ステップS313において対向BTアドレス情報の取得が成功すれば処理はステップS314に進み、そうでなければ処理は例えばステップS306に進む(ステップS319)。
【0040】
ステップS314において、第2の無線通信部120は、ステップS313において取得した対向アドレス情報と、ステップS312において取得した少なくとも1つの登録済アドレス情報の各々とを比較する(図6のステップS210に対応)。対向アドレス情報が少なくとも1つの登録済アドレス情報のいずれかに一致していれば、処理はステップS315に進む。対向アドレス情報が全ての登録済アドレス情報に一致しなければ、処理はステップS318に進む。ステップS318において、第2の無線通信部120は対向通信装置とBT接続するためにNFCによって交換したハッシュ値を使用してリンクキーを生成し、処理はステップS315に進む。
【0041】
ステップS315において、第2の無線通信部120は生成済のリンクキーを使用してBT接続する(図6のステップS211からステップS212に対応)。続いて、画面50が提示される(ステップS316、図6のステップS213に対応)。前述の通り、画面50では、対象データファイルの対向通信装置への送信の承認/非承認を確認するウィンドウが表示される。ユーザが承認(「はい」)を選択する操作を行う(ステップS317)と、処理はステップS310に進む。一方、ユーザが非承認(「いいえ」)を選択する操作を行う(ステップS317)と、処理は終了する(或いは、設計次第では処理がステップS301に戻ってもよい)。
【0042】
以上のように、本実施形態において、独自の簡略化された操作手順は既存の操作手順と併存しており、ユーザは両者を自由に選択できる。また、簡略化された操作手順の途中から、既存の操作手順に適応的にスイッチする設計も可能である。例えば、図7に示すステップS319からステップS306への遷移によれば、簡略化された操作手順の途中から既存の操作手順に適応的にスイッチすることができる。また、係る場合に、直ちにステップS319からステップS306への遷移を発生させずに、図8のエラー処理を実施してもよい。
【0043】
NFC通信の障害などによって、対向BTアドレス情報の取得(図7のステップS313の処理)に失敗することがある。このとき、例えば図9の画面60が、提示される(ステップS320)。画面60では、簡略化された操作手順におけるエラーの発生をユーザに通知するとともに、既存の操作手順へのスイッチの承認/非承認を確認するウィンドウが表示される。ユーザが承認(「はい」)を選択する操作を行う(ステップS321)と、処理は例えばステップS306、ステップS305などに進む。一方、ユーザが非承認(「いいえ」)を選択する操作を行う(ステップS321)と、処理は終了する(或いは、設計次第では処理がステップS301に戻ってもよい)。
【0044】
以上説明したように、一実施形態に係る通信装置は、第1の無線通信方式を利用した簡略化された操作手順によって対象データファイルの送信を実現する。この簡略化された操作手順は、既存の操作手順と併存可能である。更に、この簡略化された操作手順の途中で、状況(エラー発生など)に応じて既存の操作手順に適応的にスイッチすることも可能である。従って、本実施形態に係る通信装置によれば、既存の操作手順の利便性を実質的に損なうことなく、簡略化された操作手順による恩恵を受けることができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0046】
例えば、上記実施形態の処理を実現するプログラムを、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納して提供することも可能である。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなど、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。
【0047】
また、上記実施形態の処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10,20,30,40,50,60・・・画面
101・・・制御部
102・・・入力部
103・・・出力部
104・・・データファイル記憶部
110・・・第1の無線通信部
111・・・ハンドオーバデータ生成部
112・・・ハンドオーバデータ送信部
113・・・NFCデータ送信部
114・・・NFC部
115・・・NFCデータ受信部
116・・・ハンドオーバデータ受信部
117・・・BTアドレス情報通知部
120・・・第2の無線通信部
121・・・対向BTアドレス情報取得部
122・・・登録済BTアドレス情報取得部
123・・・BTアドレス情報比較部
124・・・BTデータ受信部
125・・・BT部
126・・・BTデータ送信部
127・・・送信データファイル取得部
128・・・登録済BTアドレス情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象データファイルが特定された状態で対向通信装置との間で第1の無線通信方式に基づく接続が確立すると、前記第1の無線通信方式と異なる第2の無線通信方式を用いて前記対向通信装置に接続するための対向アドレス情報を前記第1の無線通信方式を用いて取得する第1の無線通信部と、
前記対向アドレス情報の取得が失敗すると少なくとも1つの送信先候補を提示する画面及び音声の少なくとも一方を出力する出力部と、
前記少なくとも1つの送信先候補から送信先を選択する操作を受理する入力部と
前記対向アドレス情報の取得が成功すれば前記対象データファイルを前記対向アドレス情報に従って前記第2の無線通信方式を用いて送信し、前記送信先を選択する操作が受理されれば前記対象データファイルを前記送信先に従って前記第2の無線通信方式を用いて送信する第2の無線通信部と
を具備する、通信装置。
【請求項2】
前記対向アドレス情報の取得が成功すると前記第2の無線通信部が前記対象データファイルを送信するよりも前に少なくとも1つの登録済アドレス情報の各々と前記対向アドレス情報とを比較する比較部を更に具備し、
前記第2の無線通信部は、前記少なくとも1つの登録済アドレス情報のいずれかが前記対向アドレス情報に一致するならば、前記対象データファイルを前記対向アドレス情報に従って前記第2の無線通信方式を用いて送信する、
請求項1の通信装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記対向アドレスの取得が成功すると前記第2の無線通信部が前記対象データファイルを送信するよりも前に前記対象データファイルを前記対向通信装置に送信することの承認または非承認を確認する画面及び音声の少なくとも一方を出力し、
前記入力部は、前記承認を示す操作または前記非承認を示す操作を受理し、
前記第2の無線通信部は、前記承認を示す操作が受理されると、前記対象データファイルを前記対向アドレス情報に従って前記第2の無線通信方式を用いて送信する、
請求項1の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−39518(P2012−39518A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179629(P2010−179629)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(310022372)富士通東芝モバイルコミュニケーションズ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】