説明

通信設備用取付装置

【課題】一人でも短時間で通信設備を支持材に取り付け可能とする。
【解決手段】通信設備用取付装置は、開口部(11)を有する支持材側取付板(1)と、前記開口部に挿入可能な掛止部(21)を有する通信設備側取付板(2)と、前記開口部に挿入可能であり、通信設備本体を取り付けた前記通信設備側取付板を、支持材に取り付けられた前記支持材側取付板に、前記掛止部を前記開口部に挿入して掛止した後に、前記開口部中の前記掛止部の上方の隙間を埋めて、通信設備本体を取り付けた前記通信設備側取付板と支持材に取り付けられた前記支持材側取付板とを固定する固定部材(3)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信設備を支持材に取り付ける際に使用する、通信設備用取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、通信設備(例えば、基地局)を支持材(例えば、電柱や電柱間に張設された支持線)に取り付ける際に、専用の取付装置を用いて取り付けることが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。一般に、取付装置を用いて通信設備を支持材に取り付けるには、まず、取付装置を支持材に取り付け、次に、通信設備と取付装置とを、スパナやレンチ等の工具を用いて、複数箇所ボルトで仮止めし、最後に、仮止めされたボルトに対して増し締めし固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3039023号公報
【特許文献2】特許第3445694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の通信設備の取り付け方法では、工具を使用する必要があり、取付作業時の工具の落下などの危険性があった。また、取付作業には通信設備を保持する人とボルト締めをする人とを必要とし、一人で作業するのは困難であるという問題や、取付作業や交換作業において、ボルトの取り外しや締め付けに時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題を解決するため、一人でも短時間で、かつ安全に通信設備を支持材に取り付けることを可能とする通信設備用取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る通信設備用取付装置は、開口部を有する支持材側取付板と、前記開口部に挿入可能な掛止部を有する通信設備側取付板と、前記開口部に挿入可能であり、通信設備本体を取り付けた前記通信設備側取付板を、支持材に取り付けられた前記支持材側取付板に、前記掛止部を前記開口部に挿入して掛止した後に、前記開口部中の前記掛止部の上方の隙間を埋めて、通信設備本体を取り付けた前記通信設備側取付板と支持材に取り付けられた前記支持材側取付板とを固定する固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る通信設備用取付装置において、前記掛止部及び前記固定部材は、コ字状に形成されており、前記掛止部のコ字状を形成する溝の幅と、前記固定部材のコ字状を形成する溝の幅と、前記支持材側取付板の厚さは略同一であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る通信設備用取付装置において、前記開口部は、前記掛止部及び前記固定部材が挿入される挿入孔と、前記掛止部及び前記固定部が固定される固定孔とを有し、前記挿入孔を上部とし、前記固定孔を下部とするクランク状に形成されており、前記固定孔の横幅と、前記掛止部の横幅は略同一であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る通信設備用取付装置において、前記開口部は、前記挿入孔及び前記固定孔の間に配置されるガイド孔を更に有し、該ガイド孔の下面及び前記挿入孔の下面は連続しており、前記ガイド孔の上面及び前記固定孔の上面は連続していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る通信設備用取付装置において、前記掛止部の連結部の厚さと、前記固定部材の連結部の厚さと、前記固定孔の上面及び前記挿入孔の下面の間隔は略同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信設備の取付作業及び交換作業をする際に、工具が不要となる。また、安全性を配慮しつつ、取付作業及び交換作業を少人数で容易に行うことができ、作業時間を短縮することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による実施形態の通信設備用取付装置の構成を示す図である。
【図2】本発明による実施形態の通信設備用取付装置の要部の拡大図である。
【図3】本発明による実施形態の通信設備用取付装置を使用した通信設備の支持材への取り付けを説明する図である。
【図4】通信設備を支持材へ取り付ける前の、本発明による実施形態の通信設備用取付装置示す図である。
【図5】通信設備を支持材へ取り付た後の、本発明による実施形態の通信設備用取付装置示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による通信設備用取付装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本実施形態では、想定される基地局等の通信設備の寸法としては、容量が30〜35リットル、重量が20〜25kg程度で、コンクリート柱やアンテナ支持柱等の、柱状の支持材への取り付けを想定する。図1は、本実施形態の柱状支持材取付装置の部品構成を示す図である。図1に示すように、通信設備用取付装置は、支持材側取付板1(図1(a))と、通信設備側取付板2(図1(b))と、固定部材3(図1(c))とからなる。なお、本実施形態では、固定箇所が4箇所である場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0015】
支持材側取付板1は、固定箇所数と同数(本実施形態では4つ)のクランク状の開口部11と、複数の支持材取り付け孔12とを有している。支持材側取付板1は、支持材取り付け孔12に固定バンド等を通して支持材を緊締して取り付けられる。開口部11は、後述する掛止部21及び固定部材3が挿入可能なように形成されている。
【0016】
通信設備側取付板2は、一方の面に、固定箇所数と同数(本実施形態では4つ)の掛止部21と、複数の通信設備取り付け孔22とを有する。掛止部21は、支持材側取付板1の開口部11に挿入可能であり、コ字状に形成されている。通信設備本体は通信設備取り付け孔22に対応する位置にネジ孔を有しており、通信設備側取付板2は、通信設備取り付け孔22にネジを挿入して通信設備のネジ孔にネジ止めすることにより、通信設備本体に取り付けられる。
【0017】
固定箇所数と同数(本実施形態では4つ)の固定部材3は、支持材側取付板1の開口部11に挿入可能であり、コ字状に形成されている。固定部材3は、通信設備本体を取り付けた通信設備側取付板2を、支持材に取り付けられた支持材側取付板1に、掛止部21を開口部11に挿入して掛止させた後に、開口部11中の掛止部21の上方の隙間を埋めて、掛止部21を固定するためのものである。
【0018】
図2は、本実施形態の通信設備用取付装置の要部の拡大図である。図2(a)は開口部11の拡大図、図2(b)は掛止部21の拡大図、図2(c)は固定部材3の拡大図を示し、図2(d)は開口部11の形状を示している。図2(d)に示すように、開口部11は、掛止部21及び固定部材3が挿入される挿入孔111と、掛止部21及び固定部材3が固定される固定孔113と、挿入孔111及び固定孔113の間に配置されるガイド孔112とを有する。開口部11は、挿入孔111を上部とし、固定孔113を下部とするクランク状に形成されている。すなわち、ガイド孔112の下面及び挿入孔111の下面は連続しており、ガイド孔112の上面及び固定孔113の上面は連続している。
【0019】
図2(a)〜(c)は、各部の寸法を説明するために、略同一寸法の箇所に同一のアルファベットa〜eを付してある。つまり、掛止部21の高さと、固定部材3の高さと、挿入孔111の高さは略同一である(寸法a)。掛止部21の厚さと、固定部材3の厚さは略同一である(寸法b)。掛止部21の横幅と、固定部材3の横幅と、挿入孔111の横幅と、固定孔113の横幅は略同一である(寸法c)。掛止部21の連結部212の厚さと、固定部材3の連結部32の厚さと、ガイド孔112の高さと、固定孔113の高さ及びガイド孔112の高さの差は略同一である(寸法d)。掛止部21のコ字状を形成する溝211の幅と、固定部材3のコ字状を形成する溝31の幅と、支持材側取付板1の厚さは略同一である(寸法e)。なお、寸法a〜eは、0.1mm単位での公差を持たせることとする。
【0020】
ただし、上述の寸法は一実施形態であり、例えば、掛止部21の高さ、固定部材3の高さ、及び挿入孔111の高さを略同一(寸法a)とせずに、掛止部21の高さ及び固定部材3の高さを異なる寸法とし、挿入孔111の高さを掛止部21の高さ及び固定部材3の高さよりも高くしてもよい。また、掛止部21の横幅と、固定部材3の横幅と、挿入孔111の横幅を略同一(寸法c)とせずに、掛止部21の横幅、固定部材3の横幅、挿入孔111の横幅の順に大きくしてもよい。
【0021】
次に、図3乃至図5を参照して、本実施形態の通信設備用取付装置を用いた通信設備の支持材への取り付け方法を説明する。図3は、本実施形態の通信設備用取付装置を用いた通信設備の支持材への取り付けを説明する図であり、図4は通信設備側取付板2を支持材側取付板1に取り付ける前の通信設備用取付装置を示す図であり、図5は通信設備側取付板2を支持材側取付板1に取り付けた後の通信設備用取付装置を示す図である。なお、図5には、通信設備5に接続されるケーブル52も併せて表示している。
【0022】
まず、支持材側取付板1を固定バンドを用いて支持材4へ取り付け、通信設備側取付板2を通信設備5にネジ止めして取り付ける。次に、図3(a)に示すように、通信設備本体5を取り付けた通信設備側取付板2の掛止部21を、支持材4に取り付けられた支持材側取付板1の挿入孔111に挿入し、掛止部21の溝21と挿入孔111の下面とを勘合させることにより、通信設備側取付板2を掛止する。続いて、通信設備側取付板2を、ガイド孔112に沿って固定孔113の方向へ摺動させ、固定孔113で下降させることにより、掛止部21の溝211と固定孔113の下面とを勘合させて、通信設備側取付板2を掛止する。この時、掛止部21の横幅と固定孔113の横幅は略同一であるので(寸法c)、通信設備側取付板2を左右方向において固定することができる。また、通信設備5及び通信設備側取付板2は自重で支えられる。
【0023】
次に、図3(b)に示すように、固定部材3を挿入孔111に挿入する。続いて、固定部材3を、ガイド孔112に沿って固定孔113の方向へ、固定部材3が固定孔113に当接するまで摺動させる。図3(c)は、固定部材3を開口部11に取り付けた後の状態を示す。これにより、固定部材3の下面と掛止部21の上面とが密接するので、通信設備側取付板2は、上下左右全ての方向において固定されることとなる。他の固定箇所についても同様の方法で固定する。
【0024】
このように、本実施形態による通信設備用取付装置によれば、支持材側取付板1と支持材4との取り付け、及び通信設備側取付板2と通信設備5との取り付けを済ませた後は、通信設備5を支持材4に取り付ける際に工具が不要となり、通信設備5の取付及び交換を容易に行うことができる。また、本本実施形態による通信設備用取付装置は、1面のみで通信設備5を支持材4に固定することができるため、通信設備5のケーブルコネクタ51に接続されるケーブル52の配置場所の制約を少なくすることができる。
【0025】
また、掛止部21及び固定部材3は、コ字状に形成されており、掛止部21の溝211の幅及び固定部材3の溝31の幅は、支持材側取付板1の厚さと略同一であるので、単純な構造で通信設備の掛止及び固定が可能となる。
【0026】
また、固定孔113の高さはガイド孔112の高さよりも高く、固定孔113の横幅は掛止部21の横幅と略同一であるので、固定部材3を取り付ける前段階においても、掛止部21を固定孔113の左右方向において密接させて通信設備側取付板2を固定することができ、かつ、通信設備5及び通信設備側取付板2は自重で支えられているため、安全に作業を行うことができる。
【0027】
また、開口部11にはガイド孔112が設けられているので、掛止部21及び固定部材3の取り付けスムーズに行うことができる。
【0028】
また、掛止部21の連結部212の厚さと、固定部材3の連結部32の厚さと、固定孔113の高さ及びガイド孔112の高さの差は略同一であるので、固定部材3を取り付けることで、掛止部21を固定孔113に上下左右方向において密接させて通信設備側取付板2を固定することができる。
【0029】
上述の実施例は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、開口部11を挿入孔111と固定孔113とからなる開口とし、ガイド孔112を設けない構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 支持材側取付板
2 通信設備側取付板
3 固定部材
4 支持材
5 通信設備
11 開口部
12 支持材取り付け孔
21 掛止部
22 通信設備取り付け孔
31,211 溝
32,212 連結部
51 ケーブルコネクタ
52 ケーブル
111 挿入孔
112 ガイド孔
113 固定孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する支持材側取付板と、
前記開口部に挿入可能な掛止部を有する通信設備側取付板と、
前記開口部に挿入可能であり、通信設備本体を取り付けた前記通信設備側取付板を、支持材に取り付けられた前記支持材側取付板に、前記掛止部を前記開口部に挿入して掛止した後に、前記開口部中の前記掛止部の上方の隙間を埋めて、通信設備本体を取り付けた前記通信設備側取付板と支持材に取り付けられた前記支持材側取付板とを固定する固定部材と、
を備えることを特徴とする通信設備用取付装置。
【請求項2】
前記掛止部及び前記固定部材は、コ字状に形成されており、
前記掛止部のコ字状を形成する溝の幅と、前記固定部材のコ字状を形成する溝の幅と、前記支持材側取付板の厚さは略同一であることを特徴とする、請求項1に記載の通信設備用取付装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記掛止部及び前記固定部材が挿入される挿入孔と、前記掛止部及び前記固定部が固定される固定孔とを有し、前記挿入孔を上部とし、前記固定孔を下部とするクランク状に形成されており、
前記固定孔の横幅と、前記掛止部の横幅は略同一であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の通信設備用取付装置。
【請求項4】
前記開口部は、前記挿入孔及び前記固定孔の間に配置されるガイド孔を更に有し、該ガイド孔の下面及び前記挿入孔の下面は連続しており、前記ガイド孔の上面及び前記固定孔の上面は連続していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の通信設備用取付装置。
【請求項5】
前記掛止部の連結部の厚さと、前記固定部材の連結部の厚さと、前記固定孔の上面及び前記挿入孔の下面の間隔は略同一であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の通信設備用取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−44841(P2012−44841A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186268(P2010−186268)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】