説明

通信速度測定方法及び通信システム

【課題】 通信速度低下要因がユーザ装置側と通信サービスを提供している通信事業者の設備とのいずれにあるのかを追加設備を設けることなく容易かつ安価にユーザに提示することができる通信速度測定方法及び通信システムを提供する。
【解決手段】 ユーザ端末において速度測定プログラムを実行してユーザ端末と速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第1測定速度として速度測定サーバに通知し、ホームゲートウェイにおいて速度測定プログラムを実行してホームゲートウェイと速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第2測定速度として速度測定サーバに通知し、速度測定サーバにおいて第1測定速度と第2測定速度とを比較してその比較結果に基づいた表示データを作成してユーザ端末に送信し、これによりユーザ端末において表示データに応じた表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバとユーザ端末との間のネットワークを介した回線における通信速度を測定する通信速度測定方法及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ユーザが利用するユーザ端末における通信速度性能を計測する方法として、ユーザ端末からWebサーバ(速度測定サイト)に接続し、一定の情報量(例えば、数メガバイト)のデータをダウンロードに要した時間を計測することにより通信速度を算出する方法が知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
また、ユーザ端末を使用し速度測定を行うために速度計測を実行するプログラムは、ユーザ端末の設定環境に影響を受けにくいJava(Javaは登録商標である。)アプレットが用いられることが一般的である(特許文献1参照)。
【0004】
一般的な通信速度を計測する従来方法について図1を用いて説明する。図1において、ユーザ装置であるユーザ端末(PC)1はホームゲートウェイ4を介してアクセス網5に接続され、また、アクセス網5には速度測定サーバ6に接続されている。アクセス網5はインターネットを含むネットワークである。ユーザ端末1及びホームゲートウェイ4はユーザ端末1のユーザの宅内に備えられている。ホームゲートウェイ4、アクセス網5及び速度測定サーバ6は通信事業者(キャリア)の設備である。ユーザ端末(PC)1にはWebブラウザ2が備えられると共に速度計測用のプログラム(Javaアプレット)3を実行するためのJava動作環境3aが形成されている。速度測定サーバ6には速度測定サイト7が形成され、また、速度計測用のプログラム(Javaアプレット)8を実行するためのJava動作環境8aが形成されている。なお、ユーザ装置にはユーザ端末1本体だけでなくユーザ端末1とホームゲートウェイ4とを接続するケーブル等の接続部分が含まれる。
【0005】
このような構成の通信システムにおいてユーザ端末1のユーザが通信速度を測定する場合には従来の通信速度測定方法は次のように実行される。
【0006】
ユーザ端末1はユーザの操作に応じてユーザ端末1内のWebブラウザ2を使用して、速度測定サーバ6内の速度測定サイト(Webデータ保存部)7ヘアクセスする(ステップS1)。これにより速度測定サイト7のトップ画面のデータがユーザ端末1に送信され(ステップS2)、Webブラウザ2にそのトップ画面が表示される(ステップS3)。ユーザがユーザ端末1において測定開始操作(例えば、測定実行ボタン押下)をすると測定開始要求が速度測定サーバ6に送信され(ステップS4)、それに応答して速度測定サーバ6から速度計測用のプログラム(Javaアプレット)3がユーザ端末1に送信される(ステップS5)。
【0007】
その速度計測用のプログラム3がユーザ端末1で受信されることにより速度計測用のプログラム3と速度計測サーバ6内のサーバ側の速度計測用プログラム(サーブレット)8との間で通信が行われ、一定の情報量(例えば、数メガバイト)のデータの転送が開始される(ステップS6)。そのデータの転送に要した時間を速度計測用のプログラム3が計測することにより、通信速度を算出し、算出した通信速度が測定結果としてユーザ端末1内のWebブラウザ2にて表示される(ステップS7)。また、その通信速度の測定結果は速度測定サーバ6に送信され(ステップS8)、速度測定サーバ6ではその結果がデータベース6aに保存される(ステップS9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−294736号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】BNRスピードテスト[平成22年9月27日検索]、(http://www.musen-lan.com/speed/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した従来の速度測定方法では、ユーザ装置まで含めた範囲で通信速度の測定を行うため、測定した通信速度が所望の速度より低い場合に通信速度の低下をもたらす要因がユーザ装置にあるのか、通信サービスを提供している通信事業者の設備にあるのか区別がつかない。また、通信速度の低下要因の区別の判定方法として、そのユーザ装置と区別されるポイントに品質計測装置を配置してパケットの転送品質をモニタすることで判定する方法もあるが、各ポイントに品質計測装置を新たに配置する必要があるため、高額な設備投資が必要となる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、通信速度低下要因がユーザ装置側と通信サービスを提供している通信事業者の設備とのいずれにあるのかを追加設備を設けることなく容易かつ安価にユーザに提示することができる通信速度測定方法及び通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の通信速度測定方法は、ユーザ端末に接続されたホームゲートウェイがアクセス網を介して速度測定サーバに接続されている通信システムにおける通信速度を測定する通信速度測定方法であって、 前記ユーザ端末において速度測定プログラムを実行して前記ユーザ端末と前記速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第1測定速度として前記速度測定サーバに通知する第1測定ステップと、前記ホームゲートウェイにおいて速度測定プログラムを実行して前記ホームゲートウェイと前記速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第2測定速度として前記速度測定サーバに通知する第2測定ステップと、前記速度測定サーバにおいて前記第1測定速度と前記第2測定速度とを比較してその比較結果に基づいた表示データを作成して前記ユーザ端末に送信する判定ステップと、前記ユーザ端末において前記表示データに応じた表示を行う表示ステップと、を備えることを特徴としている。
【0013】
本発明の通信システムは、ユーザ端末に接続されたホームゲートウェイがアクセス網を介して速度測定サーバに接続されている通信システムであって、前記ユーザ端末は、速度測定プログラムを実行して前記ユーザ端末と前記速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第1測定速度として前記速度測定サーバに通知する第1測定手段と、表示データに応じた表示を行う表示手段と、を有し、前記ホームゲートウェイは速度測定プログラムを実行して前記ホームゲートウェイと前記速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第2測定速度として前記速度測定サーバに通知する第2測定手段を有し、前記速度測定サーバは前記第1測定速度と前記第2測定速度とを比較してその比較結果に基づいた前記表示データを作成し、前記表示手段に前記表示データに応じた表示を行わせるために前記ユーザ端末に前記表示データを送信する判定手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の通信速度測定方法及び通信システムによれば、ユーザ端末と前記速度測定サーバとの間の通信速度が測定されるだけでなく、ホームゲートウェイと速度測定サーバとの間の通信速度が測定されて双方の測定速度が比較され、その比較結果に基づいた表示データが作成されるので、通信速度低下要因がユーザ装置側と通信サービスを提供している通信事業者の設備とのいずれにあるのかを追加設備を設けることなく容易かつ安価にユーザに提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の通信速度測定方法が適用された通信システムを示す図である。
【図2】本発明の通信速度測定方法が適用された通信システムを示す図である。
【図3】第1測定経路及び第2測定経路を示す図である。
【図4】測定結果の表示例を示す図である。
【図5】ユーザ端末の測定開始後に他のユーザ端末からの測定開始要求があった場合の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図2は本発明の通信速度測定方法が適用された通信システムを示している。図2において、ユーザ装置であるユーザ端末(PC)1はホームゲートウェイ4を介してアクセス網5に接続され、また、アクセス網5には速度測定サーバ6に接続されている。ユーザ端末1及びホームゲートウェイ4はユーザ端末1のユーザの宅内に備えられている。ホームゲートウェイ4、アクセス網5及び速度測定サーバ6は通信事業者(キャリア)の設備である。この構成は図1の通信システムの構成と同一である。
【0018】
ユーザ端末1にはWebブラウザ2が備えられ、また、速度計測サーバ6からダウンロードして速度計測用のプログラム(Javaアプレット)3が保存され、それがJava動作環境3aで動作するようにされている。
【0019】
ホームゲートウェイ4においては速度計測用のプログラム6が予め保存されており、それがJava動作環境6aで動作するようにされている。
【0020】
速度測定サーバ6にはトップ画面等のデータが予め保存された速度測定サイト7が形成されており、また、速度計測用のプログラム(Javaアプレット)8がJava動作環境8aで動作するようにされている。また、速度測定サーバ6には各測定結果を比較分析する判定部9が備えられている。
【0021】
ここで、かかる構成の通信システムにおいてユーザ端末1と速度測定サーバ6との間でデータ転送による通信速度測定に影響を与える通信速度低下要因としては、次の3要因(a)〜(c)が考えられる。
(a)速度測定サイトの状況、すなわち速度測定サーバ6の負荷状態
(b)途中の経路の状況、すなわちアクセス回線の性能劣化又は混雑状況
(c)ユーザ端末1の状況
要因(c)のユーザ端末1の状況としては、バックエンドでアプリケーションが動いていたり、或いは、ユーザ端末1のスペック(性能)が低い場合には送られてきたデータの処理に時間がかかってしまい、この結果、通信速度が低下してしまう。
【0022】
要因(c)のユーザ端末1の状況、すなわちユーザ装置に基づいた要因を排除して速度測定結果を得ることができれば、要因(a)及び(b)は通信サービスを提供している通信事業者の設備によるものであるので、通信速度低下要因が利用ユーザ装置の環境によるものか、あるいはサービスを提供している通信事業者の設備によるものかを区別することができる。
【0023】
よって、本発明の通信速度測定方法においては、2つの測定経路で通信速度測定が実行される。図3に示すように、第1測定経路はユーザ端末1を第1計測ポイントとしてユーザ端末1と速度測定サーバ6との間であり、第2測定経路はホームゲートウェイ4を第2計測ポイントとしてホームゲートウェイ4と速度測定サーバ6との間である。第2測定経路による通信速度の測定では、ユーザ装置環境の要因を排除することができ、第1及び第2測定経路の計測結果を比較することにより、通信速度低下要因が利用ユーザ装置の環境によるものか、あるいはサービスを提供している通信事業者の設備によるものかを区別することができる。
【0024】
また、第1測定経路及び第2測定経路各々の通信速度の測定は複数回繰り返して実行しても良い。
【0025】
次に、図2の構成の通信システムにおける本発明による通信速度測定方法について説明する。
【0026】
ユーザ端末1のユーザが通信速度を計測するための操作をした場合には、次の(1)〜(10)の順番で各ステップ動作が実行される。
(1) ユーザ端末1はユーザ端末1内のWebブラウザ2を使用して、速度測定サーバ6内の速度測定サイト7ヘアクセスする(ステップS11)。これにより速度測定サイト7のトップ画面のデータがユーザ端末1に送信される(ステップS12)。
(2) Webブラウザ2にはそのトップ画面が表示される(ステップS13)。ユーザがユーザ端末1において測定開始操作(例えば、測定実行ボタン押下)をすると測定開始要求が速度測定サーバ6に送信され(ステップS14)、それに応答して速度測定サーバ6からチケットと共に速度計測用のプログラム(Javaアプレット)3がユーザ端末1に送信される(ステップS15)。チケットはユーザ端末1に速度計測用のプログラム3の実行の許可を与えるプログラム実行キー(データ)である。
(3) チケット及び速度計測用のプログラム3がユーザ端末1で受信されることにより速度計測用のプログラム3と速度計測サーバ6内のサーバ側の速度計測用プログラム(サーブレット)8との間で通信を行うことにより、ユーザ端末1と速度計測サーバ6との間の速度測定が開始される(ステップS16)。ステップS16が第1測定ステップである。この速度測定では一定データ量の転送にかかる時間が計測される。また、測定中にはユーザ端末1のWebブラウザ2には「測定中」が表示される(ステップS17)。なお、ステップS16の速度測定動作自体は上記の特許文献1に記載されており従来技術であるので、ここでの詳細な説明は省略される。
(4) 一定データ量の転送が終了すると、ユーザ端末1から測定終了通知が速度計測サーバ6に送信される(ステップS18)。測定終了通知と共にユーザ端末1と速度計測サーバ6との間(第1測定経路)の速度測定結果が速度計測サーバ6に通知される。
(5) 速度計測サーバ6は測定終了通知を受信すると、速度測定結果をデータベース6aに保存する(ステップS19)。その後、速度計測サーバ6はホームゲートウェイ4に対して例えば、telnetやsshを用いてアクセスを行う(ステップS20)。
(6) 速度計測サーバ6はホームゲートウェイ4にアクセスした後、ホームゲートウェイ4と速度計測サーバ6との間で通信が行われ、ホームゲートウェイ4が備える速度計測用のプログラム10のバージョン確認を行い(ステップS21)、最新バージョンでない場合にはホームゲートウェイ4に最新バージョンの速度計測用のプログラムを送信する(ステップS22)。ステップS22が実行された場合には図2には示されていないが、ホームゲートウェイ4は最新バージョンの速度計測用のプログラムを受信してそれを速度計測用のプログラム10として更新保存する。
(7) 速度計測用のプログラム10のバージョンが最新バージョンであれば、ホームゲートウェイ4は起動コマンド(例えば、Appletviewer)の実行により速度計測用のプログラム10を起動し、測定開始要求が速度測定サーバ6に送信さる(ステップS23)。これによりホームゲートウェイ4と速度計測サーバ6との間の速度測定が開始される(ステップS24)。ステップS24が第2測定ステップである。この速度測定では一定データ量の転送にかかる時間が計測される。
(8) 一定データ量の転送が終了すると、ホームゲートウェイ4から測定終了通知が速度計測サーバ6に送信される(ステップS25)。測定終了通知と共にホームゲートウェイ4と速度計測サーバ6との間(第2測定経路)の速度測定結果が速度計測サーバ6に通知される。
(9) 速度計測サーバ6は測定終了通知を受信すると、速度測定結果をデータベース6aに保存する(ステップS26)。その後、速度計測サーバ6の判定部9がデータベース6aに保存されたユーザ端末1と速度計測サーバ6との間の速度測定結果と、ホームゲートウェイ4と速度計測サーバ6との間の速度測定結果とを比較分析する(ステップS27)。この比較分析では双方の速度測定結果を比較するだけでなく、契約回線速度に応じて定められた閾値を用いてその閾値と速度測定結果とが比較される。閾値は例えば、契約回線速度で許容される最低通信速度である。比較分析が終了すると、その比較分析結果を示す比較結果通知をユーザ端末1に送信する(ステップS28)。ステップS27及びS28が判定ステップである。
(10) ユーザ端末1は比較結果通知を受信すると、比較結果通知に応じて測定結果の表示をWebブラウザ2を介して行う(ステップS29)。ステップS29が表示ステップである。測定結果の表示では図4に示すように、双方の速度測定結果の測定速度が上り下り各々で表示されると共に追加情報がある場合にはその追加情報が表示される。図4では、遅延要因(すなわち、通信速度低下要因)が追加情報である。ユーザ端末1は比較結果の表示を行うと、チケットを速度計測サーバ6に返却するために送信する(ステップS30)。
【0027】
比較結果には次の3つのケースR1,R2,R3が存在する。なお、ユーザ端末1と速度計測サーバ6との間の速度測定結果を測定速度Aとし、ホームゲートウェイ4と速度計測サーバ6との間の速度測定結果を測定速度Bとする。なお、各速度測定結果には上り及び下り各々の測定速度が存在するが、説明を容易にするためにそのいずれか一方としたが、上り及び下り各々について同様に比較結果が得られる。
【0028】
ケースR1は、比較分析が測定速度A=測定速度Bの場合である(|A−B|<許容範囲の場合を含む)。この場合にはステップS29では測定速度A及び測定速度Bの両方が表示される。測定速度A=測定速度B=閾値であるならば、追加情報は表示されない。閾値>測定速度A=測定速度Bであるならば、測定時間帯がトラヒック(回線利用量)が高い時間帯と低い時間帯とで異なる追加情報が比較結果として生成される。トラヒックが高い時間帯の場合には、ベストエフォートの回線であるため、回線が混雑している可能性があるので、追加情報として回線混雑時間帯の測定のため他の時間帯に再度測定を実施する旨が表示される。トラピックが低い時間帯の場合の場合には回線設備が劣化している可能性があるので、追加情報として回線設備劣化の可能性のためカスタマサポートセンタ等に問合せを行う旨を表示される。
【0029】
なお、測定時間帯のトラヒックが高い時間帯及び低い時間帯のいずれであるかはデータベース6a内の統計データ(例えば、測定結果の履歴データ)と基準値と比較して決定しても良く、また、その統計データによって予め定められていても良い。
【0030】
ケースR2は、比較分析が測定速度A<測定速度Bの場合である(ただし、B−A≧許容範囲)。この場合にはステップS29では測定速度A及び測定速度Bの両方が表示される。追加情報としては、通信事業者の設備には特に劣化要因は無いため、ユーザ端末1の性能による結果である旨を追加情報として表示することが行われる。更に、ユーザ端末1における通信速度対策方法を示すホームページ(URL等のアクセス先)が表示される。
【0031】
ケースR3は、比較分析が測定速度A>測定速度Bの場合である(ただし、A−B≧許容範囲)。この場合にはステップS29では測定速度は表示されない(測定中表示が継続される)。また、測定時差による、急激なトラピック変化の結果の可能性を確認するために再測定を実施することが行われる。
【0032】
かかる実施例においては、ユーザ装置環境の要因を排除して通信速度測定を行うので、通信事業者の設備の回線能力の測定が可能となる。また、通信速度劣化要因が、ユーザ装置によるものか、又は通信事業者の設備によるものかの判断が容易に確認でき、ユーザにとっては、通信速度計測結果に対する不満の解消、信頼感の向上が期待できる。また、通信事業者にとっては、高額な設備投資を行うことなく作業効率の向上(例えば、ユ一ザからの問合せに対する要因切分けに要する(ユーザ宅調査等)稼動工数の削減)と、上記による顧客満足度の向上とが期待できる。
【0033】
また、上記した実施例においては、ホームゲートウェイ4上にJava環境を用意するだけで、速度計測用のプログラム(Javaアプレット)10を動作させることができるため、通信速度低下要因を区分けするための特別な追加設備を必要とせず安価に実現可能となる。すなわち、通信速度低下要因が利用ユーザ装置側とサービスを提供している通信事業者の設備とのいずれにあるのかを追加設備を必要とすることなく容易かつ安価に判別することができる。
【0034】
なお、上記した実施例においてはユーザ端末1が回線の通信速度計測で利用する速度測定サイトでの利用について説明したが、通信事業者の通信アクセス回線品質監視システムとして利用可能である。速度測定サーバ6からホームゲートウェイ4に対して定期的なアクセスを行うことにより、精度の高い計測結果を広域の多数ポイントで収集でき、ユーザ端末に近いポイントからのアクセス回線品質劣化などをいち早く検知できるので回線品質の監視方法として採用することが可能である。
【0035】
また、上記した実施例においては、上記の(a)の速度測定サーバ6の負荷状況に関しては、利用端末数を限定することで影響を抑えることが可能である。図5に示すように、ステップS15でユーザ端末1にチケットと共に速度計測用のプログラム(Javaアプレット)3を送信した後に、他のユーザ端末10から通信速度測定の測定開始要求があった場合(ステップS41)には測定開始要求があった他のユーザ端末10を待ち行列11として記憶しておき(ステップS42)、他のユーザ端末10に対しては現在測定待ち状態にあることを通知することが行われる(ステップS43)。現在測定待ち状態とて例えば、待ち端末数(又は待ち人数)や待ち時間が知らせられる。ユーザ端末1がステップS30でチケットを返却した後、待ち行列11のトップの他のユーザ端末10に対してチケットと共に速度計測用のプログラム(Javaアプレット)が送信される(ステップS44)。こうすることにより、速度測定の測定開始要求があったユーザ端末を待ち行列で管理し、サーバ負荷とネットワーク帯域を使い切らないようにすることにより、速度測定サーバ6の負荷増大による通信速度測定結果への影響を排除することができる。
【0036】
また、上記した実施例においては、データの転送に関して一定の情報量(数メガバイト)を転送するために要した時間を計測する方法を用いて通信速度を測定したが、一定時間内に転送されたデータ量(契約回線の帯域に合わせ最適化されたデータサイズを転送する)を計測する方法を用いても良い。この一定時間内の転送量計測方法を用いるならば、ユーザ端末の処理時間に影響されず、計測時間が一定となり、測定待ち状態(待ち行列)の管理が容易となる。計測時間が一定となるので、測定待ちが生じた場合に上記したようにユーザ端末の利用者に対し何秒後に測定が開始されるかを通知する機能を設けることができる。
【0037】
なお、ユーザ端末1及びホームゲートウェイ4各々においては、一定の情報量を転送するために要した時間、又は一定時間内に転送されたデータ量が通信速度として測定されているが、その測定値を実際の通信速度に変換してから速度測定サーバ6に送信しても良い。また、一定の情報量を転送するために要した時間、又は一定時間内に転送されたデータ量を測定速度として速度測定サーバ6に送った場合には速度測定サーバ6で実際の通信速度に変換されるように構成すれば良い。
【0038】
また、上記した実施例においては、ユーザ端末1と速度測定サーバ6との間の通信速度の測定と、ホームゲートウェイ4と速度測定サーバ6との間の通信速度の測定とが1回だけ実行されるようになっているが、双方の測定を交互に複数回実行しても良い。複数回実行する場合には例えば、平均値を算出してそれを上記の測定結果の通信速度としても良いし、複数回実行して得られた通信速度のうち最高通信速度を上記の測定結果の通信速度としても良い。更に、上記した実施例においては、ユーザ端末1と速度測定サーバ6との間の通信速度の測定を行ってからホームゲートウェイ4と速度測定サーバ6との間の通信速度の測定が行われるが、その逆の順番で測定しても良い。
【0039】
更に、本発明の通信速度測定方法は、特許文献1の開示技術を用いてユーザ端末と速度測定サーバとの間及びホームゲートウェイと速度測定サーバとの間における経路情報を取得し、その通信経路差による応答遅延時間を考慮して通信速度低下要因を判断しても良い。
【符号の説明】
【0040】
1,10 ユーザ端末
4 ホームゲートウェイ
5 アクセス網
6 速度測定サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末に接続されたホームゲートウェイがアクセス網を介して速度測定サーバに接続されている通信システムにおける通信速度を測定する通信速度測定方法であって、
前記ユーザ端末において速度測定プログラムを実行して前記ユーザ端末と前記速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第1測定速度として前記速度測定サーバに通知する第1測定ステップと、
前記ホームゲートウェイにおいて速度測定プログラムを実行して前記ホームゲートウェイと前記速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第2測定速度として前記速度測定サーバに通知する第2測定ステップと、
前記速度測定サーバにおいて前記第1測定速度と前記第2測定速度とを比較してその比較結果に基づいた表示データを作成して前記ユーザ端末に送信する判定ステップと、
前記ユーザ端末において前記表示データに応じた表示を行う表示ステップと、を備えることを特徴とする通信速度測定方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、前記第2測定速度が前記第1測定速度以上であるとき前記第1測定速度と前記第2測定速度とを示す前記表示データを作成し、前記第2測定速度が前記第1測定速度より小であるとき前記第1測定速度と前記第2測定速度とを示す前記表示データを作成することなく前記第1測定ステップ及び前記2測定ステップを再度実行するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の通信速度測定方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、前記第1測定速度と前記第2測定速度とが等しいときに前記第1測定速度及び前記第2測定速度が閾値より小であり、かつ前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップの測定が低トラヒック時間帯に行われた場合には、前記表示データに通信事業者の設備に通信速度低下要因があることを示す情報を加え、前記第2測定速度が前記第1測定速度より大であるときには前記表示データにユーザ装置に通信速度低下要因があることを示す情報を加えるステップを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の通信速度測定方法。
【請求項4】
前記判定ステップは、前記第1測定速度と前記第2測定速度とが等しいときに前記第1測定速度及び前記第2測定速度が閾値より小であり、かつ前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップの測定が高トラヒック時間帯に行われた場合には、前記表示データに他の時間帯に再度の測定を促すことを示す情報を加えるステップを含むことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1記載の通信速度測定方法。
【請求項5】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップ各々における測定時間帯が低トラヒック時間帯と高トラヒック時間帯のいずれにあるかの判定は前記速度測定サーバの過去の前記第1測定速度及び前記第2測定速度を含む統計データに基づいてなされることを特徴とする請求項3又は4記載の通信速度測定方法。
【請求項6】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップ各々においては一定量の転送に要した時間を測定して前記第1測定速度及び前記第2測定速度を得ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1記載の通信速度測定方法。
【請求項7】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップ各々においては一定時間内の転送データ量を測定して前記第1測定速度及び前記第2測定速度を得ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1記載の通信速度測定方法。
【請求項8】
前記速度測定サーバは前記ユーザ端末についての通信速度測定中に他のユーザ端末から通信速度測定の要求があった場合には当該ユーザ端末についての通信速度測定が終了するまで前記他のユーザ端末についての通信速度測定を開始しないで順番待ちさせることを特徴とする請求項1記載の通信速度測定方法。
【請求項9】
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップ各々は複数回繰り返し実行されることを特徴とする請求項1記載の通信速度測定方法。
【請求項10】
ユーザ端末に接続されたホームゲートウェイがアクセス網を介して速度測定サーバに接続されている通信システムであって、
前記ユーザ端末は、速度測定プログラムを実行して前記ユーザ端末と前記速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第1測定速度として前記速度測定サーバに通知する第1測定手段と、
表示データに応じた表示を行う表示手段と、を有し、
前記ホームゲートウェイは速度測定プログラムを実行して前記ホームゲートウェイと前記速度測定サーバとの間の通信速度を測定してその測定速度を第2測定速度として前記速度測定サーバに通知する第2測定手段を有し、
前記速度測定サーバは前記第1測定速度と前記第2測定速度とを比較してその比較結果に基づいた前記表示データを作成し、前記表示手段に前記表示データに応じた表示を行わせるために前記ユーザ端末に前記表示データを送信する判定手段を有することを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−74997(P2012−74997A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219244(P2010−219244)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】