説明

通気パイプユニット

【課題】現場でテープ貼り等の処理をせずに壁との隙間を防止でき、パイプ内の水が有効に屋外に流れるようにできる通気パイプユニットを提供する。
【解決手段】筒部1の軸方向に対し傾斜して設けた鍔部2とでなるパイプ3と、中央部に貫通孔4を有し、貫通孔4の外周に鍔部2に対応する段差部5を有したフランジ6とを備えた通気パイプ8と、中央に孔9を設け柔軟性を有する材料でなり、パイプ3の内径より大きい外径寸法のスリーブ10と、このスリーブ10に対し鍔部2と同様に傾斜させたリング状の円環部11とが一体となったブッシュ12を備え、通気パイプ8は、フランジ6をパイプ3に通し、外壁15の内側に設けた外側ボード7に取付けた際、鍔部2が段差部5と外側ボード7とに密接され、ブッシュ12は室内18の壁面である内側ボード13から通気パイプ8内に挿入されることを特徴とした通気パイプユニット14の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁に施工される通気パイプユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の通気パイプの一例として、特許文献1、2に記載されたものが知られている。
【0003】
以下、その通気パイプについて図11を参照しながら説明する。
【0004】
図に示す通り、建物は、主に外壁101と外側ボード102と内側ボード103が配置され、外側ボード102と内側ボード103との間に断熱材104が配置されている。外壁101と外側ボード102の空間を通気層S、外側ボード102と内側ボード103との空間を断熱層Mとしている。通気層Sは屋外105と通じており水分を含む層である。その水分が断熱層M側に漏れないように、外側ボード102に防湿シート106を貼り、断熱層Mの断熱材104に水分が含まないように保護をしている。建物には、室内空気を換気するために壁体内にパイプ107を設け、屋外105と室内108を連通させて換気経路を形成させる。パイプ107を設置するには、防湿シート106を張った外側ボード102に穴を開けて、パイプ107を通し、外側ボード102に固定する。このとき、外側ボード102とパイプ107との間に隙間が発生するので、施工現場でパイプ107のフランジ部109と外側ボード102との隙間を埋めるようにテープ110を貼り付けて隙間を防止していた。従来の通気パイプは、フランジ109とパイプ107が別体とした通気パイプ(特許文献1)や、フランジ109とパイプ107が一体とした通気パイプ(特許文献2)が公知となっているが、前者は外側ボード102に張り付けた防湿シート106とフランジ109との隙間にテープ110を貼り、またフランジ109と通気パイプ107との隙間を防止するためにテープ111を貼っていた。また、後者は外側ボード102に張り付けた防湿シート106とフランジ109との隙間にテープ110を貼って、隙間を塞いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−61080号公報
【特許文献2】特開平9−177299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の通気パイプは、通常フランジ109の4隅近傍に孔を設けてありこの孔より木ねじ112で外側ボード102に固定するが、フランジ109の面は比較的大きいものであるため、フランジ109の平面度の精度が要求され、従来の樹脂成形では、必要な精度の平面度を製作することが難しい。
【0007】
さらにこの理由により木ねじ112と木ねじ112との間の部分(フランジの中央付近)では木ねじ112によるフランジ109を抑える力(面圧力)が少なく、フランジ109を木ねじ112で固定しても確実に密接しないために、現場でテープ110を貼って隙間を塞いでいた。しかしながら、テープ貼りは作業バラツキが生じる可能性がある。作業バラツキによりテープ110がしっかり密接に貼られない、またテープ作業忘れなどがあると、通気層S内の水分がフランジ109と防湿シート106との隙間から漏れて、断熱層M内の断熱材104が水分を含み、断熱材104を傷めてしまうという課題があった。
【0008】
また、パイプ107と内側ボード103の孔との間にも隙間が生じるため内側ボード103とパイプ107との隙間にコーキング材113を充填して気密防止をしていた。これは、室内の湿気がパイプ107周辺から湿度などの水分が断熱層M内の断熱材104に漏れるのを防止するためである。このように、換気経路を形成するために壁体内に通気パイプを設置する際には、施工現場でテープ貼りや、コーキング作業などの隙間防止の処理を行っており、その処理の作業ばらつきや作業忘れなどがあるのと同時に、その作業をチェックする等の施工の煩雑さが発生していた。
【0009】
また、パイプ107とフランジ109が一体で形成されている構造の従来の通気パイプは、主に樹脂材料で成形されており、この種の通気パイプは通常インジェクション成形機を使って作られるが、パイプ107に対してフランジ109が大きく、またフランジ109は、パイプ107の軸方向に対して、略垂直側に大きく張り出しているため、製品を成形するための金型が大掛かりとなり、通気パイプが高価であり、またはパイプ内の水が有効に屋外に排出できるように屋外側に大きな傾斜を有した通気パイプではなかった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、通気パイプを取付けたときに、現場でテープ貼り、コーキング等の処理をせずに、通気層内の水分や、室内の湿気が断熱層側に漏れるのを防止でき、またパイプ内の水が有効に屋外に流れるように、パイプを屋外側が下方向になるように傾斜させる状態で外側ボードに取り付けができる通気パイプユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、この目的を達成するために、本発明は、筒部の軸方向に対し傾斜して設けた鍔部とでなるパイプと、中央部に貫通孔を有し、前記貫通孔の外周に前記鍔部に対応する段差部を有したフランジとを備えた通気パイプと、中央に孔を設け柔軟性を有する材料でなり、前記パイプの内径より大きい外径寸法のスリーブとこのスリーブに対し前記鍔部と同様に傾斜させたリング状の円環部とが一体となったブッシュを備え、前記通気パイプは、前記フランジを前記パイプに通し、外壁の内側に設けた外側ボードに取付けた際、前記鍔部が前記段差部と前記外側ボードとに密接され、前記ブッシュは、室内の壁面である内側ボードから前記通気パイプ内に挿入されることを特徴とする通気パイプユニットとしたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通気パイプを取付けたときに、現場でテープ貼り、コーキング等の処理をせずに、通気層内の水分や、室内の湿気が断熱層側に漏れるのを防止でき、またパイプ内の水が有効に屋外に流れるように、パイプを屋外側に下方向になるように大きく傾斜する状態で外側ボードに取り付けができる通気パイプユニットを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1の通気パイプユニットの設置状態を示す断面図
【図2】同通気パイプユニットの部品構成を示す斜視図
【図3】同通気パイプユニットの構成を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態2の通気パイプユニットの設置状態を示す断面図
【図5】本発明の実施の形態3の通気パイプユニットの水受け溝を示す断面図
【図6】同通気パイプの通気パイプユニットの水受け溝を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態4の通気パイプユニットの設置状態を示す断面図
【図8】本発明の実施の形態5の通気パイプユニットの設置状態を示す断面図
【図9】本発明の実施の形態6の通気パイプユニットの設置状態を示す断面図
【図10】同通気パイプユニットの筒部を示す断面図
【図11】従来の通気パイプの設置状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の請求項1記載の通気パイプユニットは、筒部の軸方向に対し傾斜して設けた鍔部とでなるパイプと、中央部に貫通孔を有し、前記貫通孔の外周に前記鍔部に対応する段差部を有したフランジとを備えた通気パイプと、中央に孔を設け柔軟性を有する材料でなり、前記パイプの内径より大きい外径寸法のスリーブとこのスリーブに対し前記鍔部と同様に傾斜させたリング状の円環部とが一体となったブッシュを備え、前記通気パイプは、前記フランジを前記パイプに通し、外壁の内側に設けた外側ボードに取付けた際、前記鍔部が前記段差部と前記外側ボードとに密接され、前記ブッシュは、室内の壁面である内側ボードから前記通気パイプ内に挿入されることを特徴とする通気パイプユニットの構成としたものであり、通気パイプを取付けたときに、現場でテープ貼り、コーキング等の処理をせずに、通気層内の水分や、室内の湿気が断熱層側に漏れるのを防止でき、またパイプ内の水が有効に屋外に流れるように、パイプを屋外側に下方向になるように大きく傾斜となるように外側ボードに取り付けができるという効果を奏する。
【0015】
また、通気パイプの材質は耐熱樹脂である構成としてもよい。これにより温度の高い排気の場合でも通気パイプが熱で変形することがないため、キッチンのレンジフードの排気などでも使用できるという効果を奏する。
【0016】
また、筒部は室内側筒部と縦方向筒部と屋外側筒部でなる略Z字となる形状で、前記室内側筒部が上側に、前記屋外側筒部が下側となるように外側ボードに取り付けられる構成としてもよい。これにより、風が特に強い場合に、通気パイプに雨水が入っても雨水は縦方向筒部で水が上るのを防止できるため、室内側に水が浸入するのを防止できるという効果を奏する。
【0017】
また、パイプはブロー成形で形成される構成としてもよい。これにより、パイプが複雑な形状(パイプに鍔を設けても、パイプ形状が略Z字となるような複雑な形状)でも安価に製造することができるという効果を奏する。
【0018】
また、筒部の内壁に室内側から屋外側に上から下に向かって流れる水受け溝を設けてもよい。これにより、通気パイプの内壁で生じた結露水が水受け溝に沿って屋外側に流れるため、結露水が室内側に流れるのを防止できるという効果を奏する。
【0019】
また、水受け溝の角度は鍔部の面に対して、5°〜20°の範囲内であることを特徴として構成としてもよい。これにより、結露水が水受け溝から外れることなく筒部の下端まで流れ、下端まで流れた結露水は屋外側の方向に流れる成分を有しているので、室内側に結露水が流れるのを防止できるという効果を奏する。
【0020】
また、水受け溝の幅は筒部の上側が狭く前記筒部の下側が広いことを特徴とした構成としてもよい。これにより、結露水は水受け溝からあふれるのを防止でき、室内側に結露水が流れるのを防止できるという効果を奏する。
【0021】
また、パイプの室内側筒部の端部を閉口し、室内側筒部の上側に開口を有した構成としてもよい。これにより、屋根裏の温度を低減することができ、雨水が通気パイプ内に浸入しても、室内側の筒部の端部は閉口しているため、屋根裏内に水が垂れるのを防止することができるという効果を奏する。
【0022】
また、通気パイプの屋外側筒部の外周に雄ねじ溝を有した構成とし、前記屋外側筒部の外径より大きい開口孔を略中央に有したベースと、前記ベースを覆うフードと前記ベースを外壁に固定するために、前記通気パイプの屋外側筒部の雄ねじ溝と螺合できるように、内側に雌ねじ溝を有したベース固定用リングとでなる屋外フードが、前記通気パイプに固定できる構成としてもよい。これにより、屋外フードを取り付ける際、外壁に屋外フードを固定するための穴を開けることなく取り付けができるので、外壁が凍害などによって損傷されるのを防止できるという効果を奏する。
【0023】
また、筒部の外周に前記筒部の軸方向に対し直行する角度より傾斜した複数の溝を設けたパイプと、柔軟な材料で成形され、前記溝の径よりやや小さい内径を有した鍔と、中央部に貫通孔を有し、貫通孔の外周に段差部を有したフランジとでなり、前記鍔は前記筒部の任意の位置の前記溝にはまりこむように係合され、前記フランジを前記筒部に通し、外側ボードに取付けた際、前記鍔が前記段差部と前記外側ボードとに密接されることを特徴とする通気パイプの構成としてもよい。
【0024】
これにより、鍔は筒部の任意の位置の溝にはまりこむように係合でき、その鍔位置がフランジの固定位置となり、様々な壁厚に現場で対応することができ、施工管理が容易になる。また、鍔と筒部とが接する部分は密接されているので、通気層内の水分が断熱層に漏れるのを防止できるという効果を奏する。
【0025】
また、筒部の外周に複数のV字の切り込みを設けた構成としてもよい。
【0026】
これにより、筒部を任意の位置で容易にカットすることができ、また、見栄えよくカットできるという効果を奏する。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1〜図3に示すように、筒部1の軸方向に対し傾斜して設けた鍔部2とでなるパイプ3と、中央部に貫通孔4を有し、貫通孔4の外周に鍔部2に対応する段差部5を有したフランジ6とを備えた通気パイプ8と、中央に孔9を設けたとえばゴム系の柔軟性を有する材料でなり、パイプ3の内径より大きい外径寸法のスリーブ10と、このスリーブ10に対し鍔部2と同様に傾斜させたリング状の円環部11とが一体となったブッシュ12を備え、通気パイプ8は、フランジ6をパイプ3に通し、外壁15の内側に設けた外側ボード7に取付けた際、鍔部2が段差部5と外側ボード7とに密接され、ブッシュ12は室内18の壁面である内側ボード13から通気パイプ8内に挿入されることを特徴とした通気パイプユニット14の構成とする。なお、この円環部11の厚みは1mm程度の薄いものとしている。
【0029】
また、通気パイプ8の材質は耐熱樹脂である構成とする。
【0030】
上記構成における通気パイプユニット14は、以下のように建物に取り付けられる。
【0031】
図1は建物の壁の構造を示したものである。外壁15の室内18側には通気用の隙間Lの間隔をあけ外側ボード7(構造用合板)が配置されて建物の通気層17を形成している。外側ボード7の室内18側には断熱材19を配置しており、断熱層20を形成している。断熱材19の室内18側には内側ボード13(石膏ボード)が張られた構造となっている。
【0032】
外側ボード7の屋外16側には、防湿シート21が張られ、外壁15と外側ボード7との間の通気層17内の水分が断熱層20内の断熱材19にいかないように防止されている。建物には室内の換気のために、壁体内に通気パイプ8を屋外16と室内18とを連通させるように設置される。通気パイプ8の屋外16側は、屋外フード22が外壁15に設置され、通気パイプ8の室内18側には、換気扇23が内側ボード13に設置される。
【0033】
通気パイプ8を取り付ける施工手順としては、外壁15および、内側ボード13が設置される前の状態で、パイプ3にフランジ6を通した通気パイプ8を、防湿シート21を張りつけてある外側ボード7の孔に通す。フランジ6には外側ボード7に固定させるための固定用孔24を有しており、固定用孔24に木ねじ25を通してねじ締めしてフランジ6を外側ボード7に固定させる。
【0034】
この際、鍔部2はフランジ6が木ねじ25で外側ボード7に締め付けされているので、鍔部2とフランジ6と外側ボード7が密接されることになる。その密接度合いは、鍔部2のフランジ6側の面と、フランジ6の段差部5の面とが面同士で密接し、また鍔部2の外側ボード7側の面と、外側ボード7の穴の周囲の面とが面同士で密接しているため接触面積が大きいので隙間が生じにくく、気密性が保てる。
【0035】
このため、通気パイプ8を設置する施工において、通気パイプ8を外側ボード7に固定するだけで外側ボード7と通気パイプ8との隙間防止が図れるので、テープ貼り処理をしなくてもよい。これにより安定した品質の隙間防止ができ、かつ省施工が実現できる。
【0036】
そして、その後、孔を開けた外壁15を配置させ、屋外フード22を取り付ける。また、外側ボード7の室内18側に断熱材19を配置し、孔を開けた内側ボード13を配置させる。そして、内側ボード13の孔からブッシュ12を通気パイプ8の内側に挿入する。ブッシュ12は柔軟性のある材料であるため、ブッシュ12のスリーブ10の外周とパイプ3の内壁26とが密接されるので、スリーブ10の外周とパイプ3の内壁26との隙間は生じない。
【0037】
通常、内側ボード13の孔の径は、パイプ3の外径よりも大きく加工され、パイプ3と内側ボード13の孔とに隙間があるが、ブッシュ12がパイプ3に挿入されることで、ブッシュ12のスリーブ10と円環部11が覆われることにより、その隙間を閉鎖することができる。これにより、室内18の湿気が断熱層20に漏れるのを防止でき、断熱材19が湿気を吸って傷むのが防止できる。
【0038】
このように、内側ボード13とパイプ3との隙間をコーキング材で充填するという処理をしなくても隙間を防止できるので安定した品質の隙間防止ができ、かつ省施工が実現できる。次に、内側ボード13の室内18側に壁紙27を張る。ブッシュ12の円環部11は円形状で、厚みも薄いので、壁紙27をブッシュ12の上から張っても、壁紙27がしわにならないので、美観良く仕上げができる。そして、室内18からパイプ3に換気扇23等を設置する。屋外フード22や換気扇23をパイプ3にパイプ施工する際にはパイプ3にパイプ3の軸方向に力がかかることがあるが、通気パイプ8は、鍔部2がフランジ6と外側ボード7ではさまれて固定されているため動くということはない。
【0039】
また、パイプ3は鍔部2に対して傾斜しており、屋外16側を下方に傾斜させるように取り付けられるため、換気時にパイプ3の内壁26に結露水28が発生しても、結露水28が室内18に流れるのを防止できる。
【0040】
また、通気パイプ8は耐熱樹脂であるので、温度の高い排気の場合でも、通気パイプが熱で変形することがないため、キッチンのレンジフードの排気などでも使用できる。
【0041】
(実施の形態2)
図4に示すように筒部1Aは室内側筒部29と縦方向筒部30と屋外側筒部31でなる略Z字となる形状で、室内側筒部29が上側に、屋外側筒部31が下側となるように外側ボード7に取り付けられる構成としている。
【0042】
また、パイプ3Aはブロー成形で形成されたものとしている。
【0043】
通気パイプの施工方法は、実施の形態1と同じ要領で行われるため、施工方法についての説明は省略する。
【0044】
壁に設置された通気パイプの屋外16側には屋外フード22が設置されるが、台風のような強風雨が発生する場合では、屋外フード22から雨滴32がパイプ3A内に浸入してしまうことがある。風33が特に強い場合は、パイプ3Aが屋外16側に傾斜していても風33の勢いで屋外側筒部31から入った雨滴32が室内18側の方に流れてしまうが、雨滴32は縦方向筒部30で上方に上ってくることがないため、パイプ3A内に雨滴32が入っても、室内18側に水が浸入するのを防止できる。
【0045】
また、ブロー成形は、パイプが複雑な形状でも安価に製造できるため、パイプに鍔を設けても、パイプ形状が略Z字となるような複雑な形状でも製造することができる。
【0046】
(実施の形態3)
図5〜図6に示すように筒部1Bの内壁26に室内18側から屋外16側に上から下に向かって流れる水受け溝34を設けた構成としている。
【0047】
また、水受け溝34は鍔部2の面に対してθの角度を形成し、筒上部で室内18側に傾き、その角度θの範囲が5°〜20°であることを特徴としている。
【0048】
また、水受け溝34の幅は筒部1Bの上側が狭く筒部1Bの下側が広いことを特徴としている。
【0049】
筒部1Bは室内18と屋外16とを連通しているため、室内18の温度と屋外16の気温との温度差が大きい場合では、筒部1Bの内壁26で結露が生じる。結露によって生じた結露水28は水受け溝34に沿って屋外16側に流れるため、筒部1Bの内壁26で発生した結露水28が室内18側に流れるのを防止できる。
【0050】
また、水受け溝34の角度θは鍔部2の面に対して5°〜20°の範囲内としているので、筒部1Bの内壁26に付着した結露水28は水受け溝34に沿って屋外16側に流れる。特に水受け溝34の角度が20°以下であるため結露水28は溝から外れることなく筒部1Bの下端まで流れる。下端に流れた結露水28は、鍔部2に対し水受け溝34の溝の角度が5°以上の傾斜を有しているので、下端まで流れた結露水28は屋外16側の方向に有効に流れる成分を有していることとなるので、室内18側に向かって流れることがなく、結露水28が室内18に流れるのを防ぐことができる。
【0051】
また、水受け溝34の幅は筒部1Bの下側にいくほど広くなっているので、筒部1Bの内壁26全体に付着した結露水28は下に流れるほど、内壁26全体の結露水28を多く吸い込むので多くなるが下側にいくにつれて、水受け溝34の溝の幅が広くなっているので、結露水28は、溝からあふれるのを防止でき、室内18側に結露水28が流れるのを防止できる。
【0052】
このように、筒部1B内で発生した1滴の小さい結露水28はその表面張力によってパイプ3の内壁に付着する。そして、1滴の結露水28は水受け溝34に入る。そして、結露水28は、結露水28とパイプ3の内壁との表面張力によって溝から離れ落下することなく、水受け溝34に沿って下側に流れる。そして1滴の結露水28のそれぞれが、水受け溝34に集まると、1滴1滴が結合した結露水28は自身の重量が増えるため、結露水28は下に流れる速さを増す。とくに水の流れ角θが5°〜20°であれば、その角度による流れ速度と、結露水28とパイプ3の内壁との表面張力の相乗効果によって水は溝から離れ落下することなくパイプ3の下端に流れ、屋外16側に流れる。また、水受け溝34の幅を下側になるにつれて広くなっているので、結露水は溝から溢れ鉛直落下するのを防止している。
【0053】
(実施の形態4)
図7に示すように、筒部1Cの軸方向に対し傾斜して設けた鍔部2とでなるパイプ3Cと、中央部に貫通孔4を有し、貫通孔4の外周に鍔部2に対応する段差部5を有したフランジ6とを備えた通気パイプ8Cと、パイプ3Cの外径より小さい内径寸法のスリーブ10Aとこのスリーブ10Aに対し鍔部2と同様に傾斜させたリング状の円環部11Aとが一体となったブッシュ12Aを備え、通気パイプ8Cは、フランジ6をパイプ3Cに通し、外壁15の内側に設けた外側ボード7に取付けた際、鍔部2が段差部5と外側ボード7とに密接され、ブッシュ12Aは、屋根裏の壁面である内側ボード13から通気パイプ8Cの外周に挿入されることを特徴とする通気パイプ8Cであって、パイプ3Cの室内側筒部29Bの端部35を閉口し、室内側筒部29Bの上側に開口36を有した構成としている。
【0054】
通気パイプ8Cは屋根裏空間37と屋外16に連通するように取り付けられる。外側ボード7への施工方法は、実施の形態1と同じ要領で行う。
【0055】
ブッシュ12Aは内側ボード13側から通気パイプ8Cの筒にかぶせるように挿入し、円環部11Aが内側ボードに密接するように根元まで押し込んで施工する。屋根裏空間37は、夏場には屋根が日射を受けて屋根裏空間37内の温度が高くなるが、通気パイプ8Cが屋根裏空間37と屋外16とに連通しているので、屋根裏空間37の温度の高い空気は、屋根裏空間37の室内側筒部29Bの上側の開口36から、通気パイプ8C内を通り、屋外側筒部31Bの開口38を通り屋外フード22より屋外16に抜けていくので、屋根裏空間37の温度を低減することができる。また、台風のような強風雨が発生する場合で、屋外フード22から雨滴32が通気パイプ8C内に浸入してしまっても、室内側筒部29Bの端部35は閉口しているため、屋根裏空間37内に水がたれることがなく、また、通気パイプ8Cは屋外16側に下になるように傾斜されて取り付けられているため、雨滴32は屋外16側に排出され、通気パイプ8C内に水がたまることがない。このように、雨水の吹き込みを防止でき、かつ屋根裏空間の温度の低減ができる。
【0056】
(実施の形態5)
図8に示すように、通気パイプ8Dの屋外側筒部31Cの外周に雄ねじ溝39を有した構成とし、屋外側筒部31Cの外径より大きい開口孔を略中央に有したベース40と、ベース40を覆うフード41とベース40を外壁15に固定するために、通気パイプ8Dの屋外側筒部31Cの雄ねじ溝39と螺合できるように、内側に雌ねじ溝42を有したベース固定用リング43とでなる屋外フード22Aが、通気パイプ8Dに固定できる構成としている。
【0057】
上記構成の通気パイプ8Dの施工方法は、実施の形態1と同じ要領で、外側ボード7に通気パイプ8Dが固定される。その際、通気パイプ8Dの屋外側筒部31Cの端部44は、外壁面45より15mm〜30mm程度屋外16側に突き出して設置される。
【0058】
また、ベース固定用リング43は雌ねじ溝42の外周にリング状の円フランジ部53を有している。
【0059】
そして、ベース40の開口孔に通気パイプ8Dの屋外側筒部31Cが通るように挿入し、ベース固定用リング43を通気パイプ8Dの屋外側筒部31Cの雄ねじ溝39の部分で螺嵌させると、円フランジ部53がベース40の略中央のベース座面54に当接し、ベース40は外壁15に押止されて固定される。そして、フード41はベース40に固定ねじ46で固定される。このように、屋外フード22Aを外壁15に固定するときに、外壁に木ねじ等のねじを使わずに固定できる。従来の屋外フードを壁に固定する際には木ねじを壁にねじ込んで屋外フードを固定していた。この場合、寒冷地では外壁材の種類にもよるが螺入したネジ部から湿気が入り、その湿気が外壁材内部で凍ることにより外壁材に損傷を与えるおそれがあった(凍害)。本取り付け構造では、屋外フードを取り付ける際、外壁に穴を開けることなく取り付けができるので、外壁が凍害などによって損傷されるのを防止できる。
【0060】
(実施の形態6)
図9に示すように、筒部1Eの外周に筒部1Eの軸方向に対し直行する角度より傾斜した複数の溝47を設けたパイプ3Eと、柔軟な材料で成形され、溝47の径よりやや小さい内径を有した鍔48と、中央部に貫通孔4を有し、貫通孔4の外周に鍔48に対応する段差部5を有したフランジ6とでなり、鍔48は筒部1Eの任意の位置の溝47にはまりこむように係合され、フランジ6を筒部1Eに通し、外側ボード7に取付けた際、鍔48が段差部5と外側ボード7とに密接されることを特徴とする通気パイプ8Eの構成としている。
【0061】
また、図10に示すように、筒部1Eの外周に複数のV字の切り込み49を設けた構成としている。
【0062】
この構成によれば、フランジ6の位置を任意に調整することで通気パイプ8Eを様々な壁厚でも対応することができる。例えば、外壁15の厚みをW、外壁15と外側ボード7の隙間をLとすると、通気パイプ8Dの屋外側筒端51からフランジ6の位置ZはほぼW+L+屋外フード22のベース40の寸法Pである必要がある。
【0063】
実施の形態6の通気パイプは、鍔48をZの位置になるように筒部1Eに係合させて、フランジ6をパイプ3Eに通して外側ボード7に固定させ、屋外側筒端51が屋外フード22のベース40の適切な位置に配置できるようにできる。
【0064】
また、あらかじめパイプ3Eの長さを必要な長さに切断しておけば、通気パイプ8Eを外側ボード7に固定したときに、室内側筒端52は内側ボード13に対し適切位置となるように施工できる。さらに、筒部1Eの外周にV字の切り込み49を設けているので、切り込み49の部分は筒部1Eの肉厚が薄くなっており、切り込み49にカッターの刃を入れて1周させれば、筒部1Eは容易にカットすることができる。このようにして筒部1Eをカットすれば、屋外側筒端51はベース40に対して平行となるように、また室内側筒端52は内側ボード13に対し平行となるようにカットできるので、筒部1Eのカットの見栄えがよくなる。
【0065】
このように、壁が様々な寸法であっても、施工現場で通気パイプのフランジを任意に調整ができるので、通気パイプの製造メーカは、その壁の厚みに応じた寸法の通気パイプを用意しなくとも、1つの通気パイプだけを用意しておけばよい。また施工者も、施工現場でフランジ位置を任意に調整できるので、1種類の通気パイプだけを購入しておくだけで済むので、施工管理が容易になる。また、鍔はねじ溝の部分が柔軟な材料でできているので、鍔とパイプとが螺合または係合される部分は密接されているので、通気層の水分が断熱層に漏れるのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明にかかる通気パイプユニットは、現場でテープ貼り、コーキング等の処理をせずに、通気層内の水分や、室内の湿気が断熱層側に漏れるのを防止でき、またパイプ内の水が有効に屋外に流れるように、パイプを屋外側に下方向になるように大きく傾斜する状態で外側ボードに取り付けを可能とするものであるので、換気扇の換気孔に使用される通気パイプ等として有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 筒部
1A 筒部
1B 筒部
1C 筒部
1E 筒部
2 鍔部
3 パイプ
3A パイプ
3C パイプ
3E パイプ
4 貫通孔
5 段差部
6 フランジ
7 外側ボード
8 通気パイプ
8C 通気パイプ
8D 通気パイプ
8E 通気パイプ
9 孔
10 スリーブ
10A スリーブ
11 円環部
11A 円環部
12 ブッシュ
12A ブッシュ
13 内側ボード
14 通気パイプユニット
15 外壁
16 屋外
18 室内
22、22A 屋外フード
26 内壁
29 室内側筒部
29B 室内側筒部
30 縦方向筒部
31 屋外側筒部
31B 屋外側筒部
31C 屋外側筒部
34 水受け溝
35、44 端部
36 開口
38 開口
39 雄ねじ溝
40 ベース
41 フード
42 雌ねじ溝
43 ベース固定用リング
47 溝
48 鍔
49 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部の軸方向に対し傾斜して設けた鍔部とでなるパイプと、中央部に貫通孔を有し、前記貫通孔の外周に前記鍔部に対応する段差部を有したフランジとを備えた通気パイプと、中央に孔を設け柔軟性を有する材料でなり、前記パイプの内径より大きい外径寸法のスリーブとこのスリーブに対し前記鍔部と同様に傾斜させたリング状の円環部とが一体となったブッシュを備え、前記通気パイプは、前記フランジを前記パイプに通し、外壁の内側に設けた外側ボードに取付けた際、前記鍔部が前記段差部と前記外側ボードとに密接され、前記ブッシュは、室内の壁面である内側ボードから前記通気パイプ内に挿入されることを特徴とする通気パイプユニット。
【請求項2】
通気パイプの材質は耐熱樹脂である請求項1記載の通気パイプユニット。
【請求項3】
筒部は室内側筒部と縦方向筒部と屋外側筒部でなる略Z字となる形状で、前記室内側筒部が上側に、前記屋外側筒部が下側となるように外側ボードに取り付けられる構成とした請求項1または2記載の通気パイプユニット。
【請求項4】
パイプはブロー成形で形成された請求項1から3のいずれかに記載の通気パイプユニット。
【請求項5】
筒部の内壁に室内側から屋外側に上から下に向かって流れる水受け溝を設けた請求項1から4のいずれかに記載の通気パイプユニット。
【請求項6】
水受け溝の角度は鍔部の面に対して、5°〜20°の範囲内であることを特徴とした請求項1または5記載の通気パイプユニット。
【請求項7】
水受け溝の幅は筒部の上側が狭く前記筒部の下側が広いことを特徴とした請求項1または5または6のいずれかに記載の通気パイプユニット。
【請求項8】
パイプの室内側筒部の端部を閉口し、室内側筒部の上側に開口を有した請求項1から7のいずれかに記載の通気パイプユニット。
【請求項9】
通気パイプの屋外側筒部の外周に雄ねじ溝を有した構成とし、前記屋外側筒部の外径より大きい開口孔を略中央に有したベースと、前記ベースを覆うフードと前記ベースを外壁に固定するために、前記通気パイプの屋外側筒部の雄ねじ溝と螺合できるように、内側に雌ねじ溝を有したベース固定用リングとでなる屋外フードが、前記通気パイプに固定できる構成とした請求項1から8のいずれかに記載の通気パイプユニット。
【請求項10】
筒部の外周に前記筒部の軸方向に対し直行する角度より傾斜した複数の溝を設けたパイプと、柔軟な材料で成形され、前記溝の径よりやや小さい内径を有した鍔と、中央部に貫通孔を有し、貫通孔の外周に段差部を有したフランジとでなり、前記鍔は前記筒部の任意の位置の前記溝にはまりこむように係合され、前記フランジを前記筒部に通し、外側ボードに取付けた際、前記鍔が前記段差部と前記外側ボードとに密接されることを特徴とする通気パイプの構成としている請求項1から8のいずれかに記載の通気パイプユニット。
【請求項11】
筒部の外周に複数のV字の切り込みを設けた請求項1から10のいずれかに記載の通気パイプユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−242067(P2011−242067A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114911(P2010−114911)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】