説明

通気層形成部材

【課題】垂木間の配設ピッチに合わせて、その幅を予め所定値に保持し得、かつ自重での垂れ下がりも可及的に防止し得る、取付作業性に優れた通気層形成部材を提供する。
【解決手段】隣接する垂木材間に両側端が固定されて設置され、該垂木材間に充填される断熱材と該垂木材の上側に設けられる野地板とに挟まれて、その設置部位に垂木材の延出方向に沿った通気路103a,103bを区画形成する通気層形成部材101であり、紙あるいは樹脂を素材とした段ボールで成形され、該通気層形成部材は、該通気路を形成する通気路形成部105と、該通気路形成部の両側端に設けられて該垂木材に固定係止される係止部107とを有し、該通気路形成部に該垂木材の配設ピッチ方向に拡縮自在な通気路103a,103bと該通気路の拡縮を案内して該通気路形成部の該配設ピッチ方向の幅寸法を所定値に保持する案内板111とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂木材間に充填される断熱材とこの垂木材の上側に設けられる野地板とに挟まれて設置され、その設置部位に垂木材の延出方向に沿った通気路を区画形成する通気層形成部材の改良に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅にあっては、図6に示すように、屋根1の野地板3の下に所定の配設ピッチで並行して設けられている多数の垂木材5間に断熱材7を充填して高断熱化を図っているが、当該断熱材7を施工するに際して、断熱材7と野地板3との間に通気層9を形成することが一般化している。
【0003】
ここで、当該通気層9を形成するための技術として、例えば実用新案登録第3127043号公報に記載されている通気層確保部材が知られている。この通気層確保部材11は、段ボールを素材にして、図7に示すように、垂木材と接する2辺の各縁部11aに山形に折曲された第1の凸部13が設けられるとともに、それら第1の凸部13,13の間に、同様に山形に折曲された第2の凸部15が1つ以上設けられている。即ち、これら第1と第2の凸部13,15の各折り曲げ角度を変えることによって、当該通気層確保部材11における垂木材の配設ピッチ方向の幅を大小に拡縮調整可能にしたものであり、建築する住宅の仕様によって異なる垂木の配設ピッチに拘わらずに、その配設ピッチに柔軟に対応し得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3127043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の通気層確保部材11にあっては、垂木材5の配設ピッチに合わせてその幅を予め所定値に保持しておくことが困難であり、設置時に作業者がその幅を手で調節しながら両端を垂木材5に固定係止しなければならず、その作業が面倒であった。
【0006】
さらに、垂木材に野地板3を取り付けてしまった後から、当該通気層確保部材11を設置する場合には、下方から野地板3に押し当てながら垂木材5に両側部を固定係止する取付作業となるが、この際には、通気層確保部材11がその自重で第1及び第2の凸部13,15の折曲線に沿って垂れ下がってしまい易く、その取付作業は一層困難で面倒になるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、垂木間の配設ピッチに合わせて、その幅を予め所定値に保持しておくことができ、かつ自重で垂れ下がってしまうことも可及的に防止し得る、取付作業性に優れた通気層形成部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、隣接する垂木材間に両側端が固定されて設置され、該垂木材間に充填される断熱材と該垂木材の上側に設けられる野地板とに挟まれて、その設置部位に垂木材の延出方向に沿った通気路を区画形成する通気層形成部材であって、紙あるいは樹脂を素材とした段ボールで成形されており、該通気層形成部材は、該通気路を形成する通気路形成部と、該通気路形成部の両側端に設けられて該垂木材に固定係止される係止部とを有し、該通気路形成部には、該垂木材の配設ピッチ方向に拡縮自在な通気路と、該通気路の拡縮を案内して該通気路形成部の該配設ピッチ方向の幅寸法を所定値に保持する案内板が設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の通気層形成部材であって、前記通気路は前記段ボールが曲折されて、その通路断面形状が三角形若しくは四角形にに形成され、前記案内板は、その一端が一方の係止部側に固定されて設けられるとともに他端が他方の係止部に向けて所定長延出されて、該通気路を形成している該段ボールに開口された貫通孔に摺動自在に挿通されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に示す発明は、請求項1に記載の通気層形成部材であって、前記通気路は前記段ボールが曲折されて、その通路断面形状が上側に平坦部を有する四角形に形成され、該平坦部の上面にはスペーサーを介して短冊状の押さえ板が貼着されて貫通孔が設けられ、前記案内板は、一方の係止部側に一端を固定されて、該貫通孔に摺動自在に挿通されて他方の係止部に向けて所定長延出されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に示す発明は、隣接する垂木材間に両側端が固定されて設置され、該垂木材間に充填される断熱材と該垂木材の上側に設けられる野地板とに挟まれて、その設置部位に垂木材の延出方向に沿った通気路を区画形成する通気層形成部材であって、紙あるいは樹脂を素材とした段ボールで成形されており、該通気層形成部材は、該通気路を形成する通気路形成部と、該通気路形成部の両側端に設けられて該垂木材に固定係止される係止部とを有し、該通気路形成部は、該垂木材の配設ピッチ方向に相互に摺動自在に係合して、該垂木材の配設ピッチ方向に拡縮する可変幅通気路を区画形成する第1部材と第2部材とからなる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5に示す発明は、請求項4に記載の通気層形成部材であって、前記第1部材は矩形筒体状をなして前記配設ピッチ方向の幅が拡縮しない固定幅通気路を形成しており、前記第2部材はコ字状をなしてその上下の板部が該固定幅通気路の上壁面と下壁面との外周に摺動可能に覆い被さって、該固定幅通気路の側壁面とによって前記配設ピッチ方向の幅が拡縮可能な可変幅通気路を形成し、該第1部材には、該固定幅通気路を画成する上壁と下壁とに対をなす係合孔が該垂木材の配設ピッチ方向に沿って所定長に亘って形成され、
該第2部材には、該第1部材の対をなす上下の係合孔を貫通して、該第2部材の上下の板部を繋ぐ係合板が設けられている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6に示す発明は、請求項4に記載の通気層形成部材であって、前記第1部材と前記第2部材とは矩形筒体状をなして配設ピッチ方向の幅が拡縮しない固定幅通気路をそれぞれ有して、それぞれの一側には前記係止部が設けられ、該第1部材には、その固定幅通気路の上壁を形成する段ボールが該第1部材の係止部とは反対側に所定長延出されて該第2部材の固定幅通気路の上壁面に摺動自在に係合する摺動板が設けられるとともに、該第2部材には、その固定幅通気路の下壁を形成する段ボールが該第2部材の係止部とは反対側に所定長延出されて該第1部材の固定幅通気路の下壁面に摺動自在に係合する摺動板が設けられ、該第2部材の固定幅通気路の上壁面と該第1部材の固定幅通気路の下壁面とには、対応する摺動板を摺動自在に支持して係合する係合板がそれぞれ設けられ、該第1部材と前記第2部材との間に可変幅通気路が区画形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る通気層形成部材によれば、建築する住宅の仕様によって異なる垂木間の配設ピッチに合わせて、その幅を予め所定値に保持しておくことができ、かつ自重で垂れ下がってしまうことも可及的に防止することができて、取付作業性に優れる通気層形成部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通気層形成部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は拡幅した時の側面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る通気層形成部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は拡幅した時の側面図である。
【図3】本発明に係る通気層形成部材の第3実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、また(c)は通気層形成部材の幅を縮めた時の側面図である。
【図4】本発明に係る通気層形成部材の第4実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図であって、その幅が拡大されている状態を示している。
【図5】図4の通気層形成部材の幅を縮めた状態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】通気層形成部材の設置状態を説明するための斜視図であり、従来と本発明とに共通するものである。
【図7】従来の通気層確保部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る通気層形成部材の実施の形態について添付図面に基づき詳述する。本発明に係る通気層形成部材は、基本的に図6の従来例にて示したものと同様に、隣接する垂木材5,5間に両側端が固定されて設置されて、これらの垂木材5,5間に充填されるグラスウール等の断熱材7と当該垂木材7の上側に設けられる野地板3とに挟まれて、その設置部位に垂木材5,5の延出方向に沿った通気路を区画形成するものであり、紙あるいは樹脂を素材とした段ボールで成形される。以下に、その実施形態として4種類のものを順次に説明する。
【0017】
===第1実施形態===
図1は本発明に係る通気層形成部材の第1実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、また(c)は通気層形成部材の幅を広げた時の側面図である。
【0018】
同図に示すように、通気層形成部材101は、通気路103を形成する通気路形成部105と、この通気路形成部105の両側端に設けられて前記垂木材に固定係止される係止部107a,107bとを有している。そして、通気路形成部105には、垂木材の配設ピッチ方向に拡縮自在な通気路103a,103bと、この通気路103a,103bの拡縮を案内して通気路形成部105の前記配設ピッチ方向の幅寸法を任意の所定値に保持する案内板111とが設けられている。
【0019】
当該第1実施形態の通気路103a,103bは、素材である1枚の段ボールがV字状若しくはU字状に曲折されて、その通路断面形状が三角形若しくは四角形になるように形成されている。図示例では段ボールがU字状に曲折されて断面四角形状をなす通気路103aが両側部に沿って2つ形成され、その2本の通気路103a間には段ボールがV字状に連続曲折されて断面三角形状をなす通気路103bが5つ形成されている。そして、両側部の四角形断面をなす通気路103aには、段ボールの側端縁が互いに逆方向に平坦に延びて形成された係止部107a,107bが設けられ、当該係止部107a,107bがそれぞれ垂木材に接してステープルや釘等によって固定係止されるようになっている。
【0020】
ここで、両側部に配されて四角形断面をなす2つの通気路103aは、その底壁109a,109bが互いに同じ高さになるように設定されている。また、三角形断面をなす通気路103bは、その上側の各頂点が係止部107a,107bの高さにほぼ一致される一方、下側の各頂点が四角形断面の通気路103aの底壁109a,109bよりも下方に突出されている。
【0021】
前記案内板111は、その一端が一方の係止部107a側に固定されて設けられるとともに、他端が他方の係止部107bに向けて所定長延出され、かつ三角形断面の通気路103bを形成している部分の段ボールに開口された貫通孔113に摺動自在に挿通されている。当該図示例の案内板111では、その一端は一方の係止部107aに隣接した四角形断面の通気路103aの底壁109a内側面に貼着されて設けられており、その他端は三角形断面の通気路103bを形成している部分の段ボールに開口された貫通孔113に挿通されて他方の係止部107bに隣接した四角形断面の通気路103aの底壁109b内側面上に至り、当該底壁109b内側面上を摺動するようになっている。
【0022】
また、案内板111の延出端の先端には、切れ込みによってT字状に形成されて下方に折曲可能な係合片115が設けられている。そして、四角形断面の通気路103aの底壁109bには当該係合片115を係止する係合孔117が開口されており、係合片115は下方に押し曲げられて係合孔117に挿通係合されるようになっている。ここで、当該係合孔117はその開口位置を種々の建物仕様に準拠した垂木材の配設ピッチ寸法に合わせて複数設けられており、この様に係合孔117を複数設けておけば、建物仕様の配設ピッチ寸法に基づいて係合片115を係合させる係合孔117を適宜に選択することで、図1(b)及び(c)に示すように通気層形成部材101の幅を上記配設ピッチに適合させて予め容易に設定して保持しておくことが可能となる。また、上記案内板111は同様にして平行に一対で設けられている。
【0023】
なお、上記係合片115と係合孔117とは必ずしも設けなくても良い。これら係合片115と係合孔117とが無くても、案内板111が段ボールに開口された貫通孔113に摺動自在に挿通されているから、通気路形成部105の幅を任意の所定値に調節すればその案内板111と貫通孔113との間の摩擦で当該幅寸法は保持されることになる。
【0024】
また、通気路103a,103bはその段ボールの折曲線が平行に設けられるから、通気路形成部105は自重で各折曲線に沿って折れ曲がって垂れ下がり易くなるが、当該折曲線に直交して案内板111が設けられているので、当該案内板111に剛性を高められつつ支持されてその垂れ下がりが可及的に防止される。
【0025】
そして、当該通気層形成部材101を設置するにあたっては(図 参照)、予めその幅を垂木材5,5の配設ピッチに適合させて調節しておき、その幅方向両側の係止部107a,107bを隣接する垂木材5,5間に掛け渡して、当該係止部107a,107bを垂木材5,5にステープルや釘等によって固定係止させれば良い。爾後、垂木材5,5の上に野地板3を固定するとともに、その垂木材5,5間に下方から断熱材7を充填する。
【0026】
また、垂木材5,5上に野地板3を固定してしまった後から当該通気層形成部材101を設置する場合には、図1(b)若しくは(c)に示す状態の通気層形成部材101を、その天地を逆にするとともに両係止部107a,107bをその垂木材5,5の側面に沿わせて下方から当該垂木材5,5間に挿入して、通気層形成部材101を野地板3の下面に突き当てた状態で係止部107a,107bをステープルや釘等によって垂木材5,5の側面に固定係止させればよい。
【0027】
即ち、通気層形成部材101はその幅調節が容易で、種々の建物仕様に準じた幅寸法に簡単に対応させることができて汎用性に優れたものとなる。しかも、案内板111によってその剛性が高められて垂れ下がりが可及的に防止されるから、設置時にあっても容易にその取付作業を行うことができるようになる。
【0028】
なお、図1の図示例では、三角形断面の通気路103bの下部側の頂点は四角形断面の通気路103aの底壁109a,109bよりも下方に突出させているが、当該下部側の頂点部分は案内板111の下面に沿わせて平坦に形成する様にしてもよい。この場合、その上方に区画形成される通気路は四角形断面となる。
【0029】
===第2実施形態===
図2は本発明に係る通気層形成部材の第2実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、また(c)は通気層形成部材の幅を広げた時の側面図である。
【0030】
同図に示すように、通気層形成部材201は、通気路203a,203bを形成する通気路形成部205と、この通気路形成部205の両側端に設けられて前記垂木材に固定係止される係止部207a,207bとを有している。そして、通気路形成部205には、垂木材の配設ピッチ方向に幅を拡縮自在な通気路203a,203bと、この通気路203a,203bの拡縮を案内して通気路形成部205の前記配設ピッチ方向の幅寸法を任意の所定値に保持する案内板211とが設けられている。
【0031】
当該第2実施形態にあっては、上記通気路203a,203bは、素材である1枚の段ボールが所定高さで交互にU字状に曲折されて、その通路断面形状が上下に平坦部を有した四角形になるように形成されている。また、両側部に形成される2つの通気路203aは、それらの間に形成される5つの通気路203bよりも大きく設定されて同形・同サイズに形成されている。そして、両側部の通気路203aには、段ボールの側端縁が互いに逆方向に平坦に延びて形成された係止部207a,207bが設けられ、当該係止部207a,207bがそれぞれ垂木材に接してステープルや釘等によって固定係止されるようになっている。
【0032】
また、両側部の2つの通気路203a間に形成される5つの通気路203bも段ボールが交互にU字状に曲折されて同形・同サイズに設定される。そして、当該通気路203bの上側の平坦部を形成している上壁213には、その上面にスペーサー215を介して短冊状の押さえ板217が貼着されて、当該上壁213の上面に貫通孔219が設けられている。
【0033】
前記案内板211は、一方の係止部207a側に一端を固定されて、上記貫通孔219に摺動自在に挿通されて他方の係止部207bに向けて所定長延出されている。ここで、当該図示例にあっては、案内板211はその一端が下方に折り曲げられて一方の係止部207aに隣接する通気路203aの側壁221に貼着され、他端が他方の係止部207bに向けて所定長延出されて、上記貫通孔219に挿通されている。また、案内板211の延出端上面には貫通孔219からの抜けを防止するためのストッパー223が貼着されている。
【0034】
また、当該図示例では、上記案内板211及び貫通孔219は同様の構成で一対で設けられており、その片方の案内板211は上述のように、一方の係止部207a側にその一端が貼着されて固定係止され、もう片方の案内板211は他方の係止部207b側にその一端が貼着されて固定係止されている。
【0035】
そして、以上のように構成されるこの第2実施形態の通気層形成部材201にあっても、前述の第1実施形態の場合と同様に。上記案内板211は貫通孔219に摺動自在に挿通されているから、通気路形成部205の幅を任意の所定値に調節すればその案内板211と貫通孔219との間の摩擦で当該幅寸法は保持されることになる。
【0036】
また、通気路203a,203bはその段ボールの折曲線が平行に設けられるから、通気路形成部205は自重で各折曲線に沿って折れ曲がって垂れ下がり易くなるが、当該折曲線に直交して案内板211が設けられているので、通気層形成部材201は当該案内板211に剛性を高められつつ支持されて、その垂れ下がりが可及的に防止される。
【0037】
また、当該第2実施形態の通気層形成部材201にあっても、前述の第1実施形態の通気層形成部材と同様にして垂木材間に取付設置される。
【0038】
即ち、通気層形成部材201はその幅調節が容易で、種々の建物仕様に準じた幅寸法に簡単に対応させることができて汎用性に優れたものとなる。しかも、案内板211によってその剛性が高められて垂れ下がりが可及的に防止されるから、設置時にあっても容易にその取付作業を行うことができるようになる。
【0039】
===第3実施形態===
図3は本発明に係る通気層形成部材の第3実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、また(c)は通気層形成部材の幅を縮めた時の側面図である。
【0040】
この第3実施形態の通気層形成部材301は、通気路303a,303bを形成する通気路形成部305と、この通気路形成部305の両側端に設けられて垂木材に固定係止される係止部307a,307bとを有している。そして、通気路形成部305は、前記垂木材の配設ピッチ方向に相互に摺動自在に係合して、垂木材の配設ピッチ方向に拡縮する可変幅通気路306bを区画形成する第1部材325と第2部材327とからなっている。
【0041】
第1部材325は1枚の段ボールが矩形筒体状に折曲形成されて、前記配設ピッチ方向の幅が拡縮しない固定幅通気路303aを形成しており、その固定幅通気路303aの上壁329aを形成している段ボールの端縁が側方に所定長さ突出されて上記係止部307aを一体的に形成している。
【0042】
第2部材327は1枚の段ボールがコ字状に折曲形成されてなり、その上下の板部331a,331bが第1部材325の固定幅通気路303aにおける上壁329aの上面と下壁329bの下面との外周にそれぞれ摺動可能に覆い被さって設けられている。そして、当該第2部材327の内周面と第1部材325の固定幅通気路303aの側壁面329cとによって、前記配設ピッチ方向に幅が拡縮可能な可変幅通気路303bが区画形成されている。また、コ字状に形成された側板部331cの外面には、その側板部331cの全長に亘って板材306が貼着され、この板材306の上部側が側板部の上端で側方に折れ曲がって係止部307aを形成している。
【0043】
また、第1部材325には、固定幅通気路303aを区画形成する上壁329aと下壁329bとに、上下で対をなす矩形の係合孔333が2組設けられ、この係合孔333は垂木材の配設ピッチ方向に沿って所定長に亘って延びて長四角状に形成されている。
【0044】
また、第2部材327には、第1部材325に形成されて対をなす上下の係合孔333を貫通して、第2部材327の上下の板部331a,331bを繋ぐ係合板335が設けられている。そして、この係合板335はその幅が上記係合孔333の短辺方向の幅寸法に対応されて形成されている。当該図示例にあっては、当該係合板335は第2部材327の下側の板部331bが矩形に切り起こされて上記係合孔333に挿通され、その先端が折り曲げられて当該第2部材327の上板部331aの上面に貼着されることによって形成されている。また、上下の板部331a,331bには係合孔333に対応する溝部335aが形成されている。
【0045】
そして、以上のように構成されるこの第3実施形態の通気層形成部材301にあっても、前述の第1実施形態の通気層形成部材101と同様にして垂木材間に取付設置される。
【0046】
即ち、この通気層形成部材301にあっては、互いに摺動して相対的に近接離間移動する第1部材325と第2部材327とによって幅寸法が拡縮する可変幅通気路303bを形成して、当該可変幅通路303bの拡縮により通気層形成部材301の幅を所望する任意の設定値に調節可能となしたので、その幅調節が容易で、種々の建物仕様に準じた幅寸法に簡単に対応させることができて汎用性に優れたものとなる。
【0047】
また、取付設置に際しても、予め所望する所定値幅に調節しておけば、第1部材325と第2部材327とは、それらの間の摺動部の摩擦によってその位置関係を保持されて、簡単には相対移動を来すことはないので、当該幅寸法を容易に維持したまま取付けることができる。さらに、第1部材325は矩形筒体状をなすので形状的にその剛性が高く、また第2部材327はその第1部材325の上壁329aと下壁329bとの外周面に覆い被さって摺動自在に係合され、かつ係合板335によって上下の板部331a,331bが相互に連結されるから、当該第2部材327の剛性の高いものとなり、通気層形成部材301全体としての強度は従来のものに比して格段に優れたものとなり、垂れ下がりを生じることがない。よって設置時にあっても容易にその取付作業を行うことができるようになる。
【0048】
===第4実施形態===
図4は本発明に係る通気層形成部材の第4実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図であって、その幅が拡大されている状態を示している。また、図5は当該通気層形成部材の幅を縮めた状態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0049】
この第4実施形態の通気層形成部材401は、通気路403a,403bを形成する通気路形成部405と、この通気路形成部405の両側端に設けられて垂木材に固定係止される係止部407a,407bとを有している。
【0050】
そして、上記通気路形成部405は、前記垂木材の配設ピッチ方向に相互に摺動自在に係合する第1部材425と第2部材427とからなっている。これら第1部材425と第2部材427とは、共に同形・同サイズの矩形筒体部425a,427aを有していて、当該矩形筒体部425a,427aが垂木材の配設ピッチ方向にその幅が拡縮しない固定幅通気路403aを形成している。そして、第1部材425と第2部材427とには、それぞれの相互に離反する一側部に前記係止部407a,407bが設けられている。
【0051】
また、上記第1部材425には、図4(a),(b)に示すように、その固定幅通気路403aの上壁429aを形成する段ボールが当該第1部材425の係止部407aとは反対側に向けて所定長延出されて第1摺動板431が設けられている。そして、この第1摺動板431には、第2部材427の固定幅通気路403aを区画形成する上壁433aの上面と相互に摺動自在に係合させるための一対の並行な係合孔435が、垂木材の配設ピッチ方向に沿って所定長に亘って延びて開口形成されている。ここで、当該図示例では、その一対の係合孔435は第1摺動板431に2組設けられている。
【0052】
一方、第2部材427における固定幅通気路403aの上壁433aの上面には、上記一対2組の係合孔435に対応されて、2つの係合板437が設けられている。当該係合板437は第1摺動板431と同じ厚みのスペーサ439を介して当該第2部材427の固定幅通気路403aの上壁433aの上面に貼着固定されており、スペーサ439はそれぞれ一対の係合孔435に対応する位置に貼着されて当該係合孔435内をこれに沿って相対移動し、係合板437は第1摺動板431の上面に摺接しながら相対移動するようになっている。
【0053】
また、同様にして、上記第2部材427には、図4(b),(c)に示すように、その固定幅通気路403aの下壁433bを形成する段ボールが当該第2部材427の係止部407aとは反対側に向けて所定長延出されて第2摺動板441が設けられている。そして、この第2摺動板441には、第1部材425の固定幅通気路403aを区画形成する下壁下面と相互に摺動自在に係合させるための一対の並行な係合孔435が、垂木材の配設ピッチ方向に沿って所定長に亘って延びて開口形成されている。当該一対の係合孔435も第2摺動板441に2組設けられている。
【0054】
一方、第1部材425における固定幅通気路403aの下壁429b下面 には、同様にして、上記一対2組の係合孔435に対応されて、2つの係合板437が設けられている。当該係合板437は第2摺動板441と同じ厚みのスペーサ439を介して当該第1部材425の固定幅通気路403aの下壁429b下面に貼着固定されており、スペーサ439はそれぞれ一対の係合孔435に対応する位置に貼着されて当該係合孔435内をこれに沿って相対移動し、係合板437は第2摺動板441の下面に摺接しながら相対移動するようになっている。
【0055】
即ち、第1部材425と第2部材427との間には、両部材が摺動して近接乃至離間方向に相対移動すると、それに伴って垂木材の配設ピッチ方向に幅が縮小乃至拡大する可変幅通気路403bが区画形成されることになる。そして、図5に示すように、第1部材425と第2部材427とが最も近接されてそれらの矩形筒体部425aと427aとが当接されると可変幅通気路は形成されないことになる。
【0056】
そして、以上のように構成されるこの第4実施形態の通気層形成部材401にあっても、前述の第1実施形態の通気層形成部材101と同様にして垂木材間に取付設置される。
【0057】
即ち、この通気層形成部材401にあっても、前述の第3実施形態と同様に、互いに摺動して相対的に近接離間移動する第1部材425と第2部材427とによって幅寸法が拡縮する可変幅通気路403bを形成して、当該可変幅通路403bの拡縮により通気層形成部材401の幅を所望の設定値に調節可能となしたので、その幅調節が容易で、種々の建物仕様に準じた幅寸法に簡単に対応させることができて汎用性に優れたものとなる。
【0058】
また、取付設置に際しても、予め所望の所定値幅に調節しておけば、第1部材425と第2部材427とはそれらの間の摺動部の摩擦によって保持されて、簡単には相対移動を来すことはないので、当該幅寸法を容易に維持したまま取付けることができる。
【0059】
さらに、第1部材425と第2部材427とは、共に矩形筒体状をなすので形状的にその剛性が高く、さらに第1摺動板431と第2摺動板441とによって、上下両側で相互に摺動移動自在に係合されるから、通気層形成部材301全体としての強度は従来のものに比して格段に優れたものとなり、垂れ下がりを生じることがない。よって設置時にあっても容易にその取付作業を行うことができるようになる。
【0060】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0061】
即ち、例えば各通気層形成部材101,201,301,401には、その段ボール素材の表面にアルミ箔もしくはアルミ蒸着シート等を貼着してその断熱性を高めるようにしても良い。また、火災時の火炎に晒されて加熱されると塗膜が発泡膨潤して炭化層となり、この炭化層の断熱性により基材を火災から保護し得るようにした発泡耐火塗装剤を、各通気層形成部材101,201,301,401の段ボール素材の表面に塗布するようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 屋根
3 野地板
5 垂木材
7 断熱材
101、201、301、401 通気層形成部材
103a、103b、203a、203b、303a、303b、403a、403b 通気路
105、205、305、405 通気路形成部
107a、107b、207a、207b、307a、307b、407a、407b 係止部
109a、109b 底壁
111、211 案内板
113、219 貫通孔
213 上壁(平坦部)
215、439 スペーサ
217 押さえ板
325、425 第1部材
327、427 第2部材
303a、403a 固定幅通気路
303b、403b 可変幅通気路
329a、429a 上壁
329b、429b 下壁
333、435 係合孔
335、437 係合板
431、441 摺動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する垂木材間に両側端が固定されて設置され、該垂木材間に充填される断熱材と該垂木材の上側に設けられる野地板とに挟まれて、その設置部位に垂木材の延出方向に沿った通気路を区画形成する通気層形成部材であって、紙あるいは樹脂を素材とした段ボールで成形されており、
該通気層形成部材は、該通気路を形成する通気路形成部と、該通気路形成部の両側端に設けられて該垂木材に固定係止される係止部とを有し、
該通気路形成部には、該垂木材の配設ピッチ方向に拡縮自在な通気路と、該通気路の拡縮を案内して該通気路形成部の該配設ピッチ方向の幅寸法を所定値に保持する案内板が設けられている、
ことを特徴とする通気層形成部材。
【請求項2】
請求項1に記載の通気層形成部材であって、
前記通気路は前記段ボールが曲折されて、その通路断面形状が三角形若しくは四角形にに形成され、
前記案内板は、その一端が一方の係止部側に固定されて設けられるとともに他端が他方の係止部に向けて所定長延出されて、該通気路を形成している該段ボールに開口された貫通孔に摺動自在に挿通されている、
ことを特徴とする通気層形成部材。
【請求項3】
請求項1に記載の通気層形成部材であって、
前記通気路は前記段ボールが曲折されて、その通路断面形状が上側に平坦部を有する四角形に形成され、
該平坦部の上面にはスペーサを介して短冊状の押さえ板が貼着されて貫通孔が設けられ、
前記案内板は、一方の係止部側に一端を固定されて、該貫通孔に摺動自在に挿通されて他方の係止部に向けて所定長延出されている、
ことを特徴とする通気層形成部材。
【請求項4】
隣接する垂木材間に両側端が固定されて設置され、該垂木材間に充填される断熱材と該垂木材の上側に設けられる野地板とに挟まれて、その設置部位に垂木材の延出方向に沿った通気路を区画形成する通気層形成部材であって、紙あるいは樹脂を素材とした段ボールで成形されており、
該通気層形成部材は、該通気路を形成する通気路形成部と、該通気路形成部の両側端に設けられて該垂木材に固定係止される係止部とを有し、
該通気路形成部は、該垂木材の配設ピッチ方向に相互に摺動自在に係合して、該垂木材の配設ピッチ方向に拡縮する可変幅通気路を区画形成する第1部材と第2部材とからなる、
ことを特徴とする通気層形成部材。
【請求項5】
請求項4に記載の通気層形成部材であって、
前記第1部材は矩形筒体状をなして前記配設ピッチ方向の幅が拡縮しない固定幅通気路を形成しており、
前記第2部材はコ字状をなしてその上下の板部が該固定幅通気路の上壁面と下壁面との外周に摺動可能に覆い被さって、該固定幅通気路の側壁面とによって前記配設ピッチ方向の幅が拡縮可能な可変幅通気路を形成し、
該第1部材には、該固定幅通気路を画成する上壁と下壁とに対をなす係合孔が該垂木材の配設ピッチ方向に沿って所定長に亘って形成され、
該第2部材には、該第1部材の対をなす上下の係合孔を貫通して、該第2部材の上下の板部を繋ぐ係合板が設けられている、
ことを特徴とする通気層形成部材。
【請求項6】
請求項4に記載の通気層形成部材であって、
前記第1部材と前記第2部材とは矩形筒体状をなして配設ピッチ方向の幅が拡縮しない固定幅通気路をそれぞれ有して、それぞれの一側には前記係止部が設けられ、
該第1部材には、その固定幅通気路の上壁を形成する段ボールが該第1部材の係止部とは反対側に所定長延出されて該第2部材の固定幅通気路の上壁面に摺動自在に係合する摺動板が設けられるとともに、該第2部材には、その固定幅通気路の下壁を形成する段ボールが該第2部材の係止部とは反対側に所定長延出されて該第1部材の固定幅通気路の下壁面に摺動自在に係合する摺動板が設けられ、
該第2部材の固定幅通気路の上壁面と該第1部材の固定幅通気路の下壁面とには、対応する摺動板を摺動自在に支持して係合する係合板がそれぞれ設けられ、
該第1部材と前記第2部材との間に可変幅通気路が区画形成される、
ことを特徴とする通気層形成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−12414(P2011−12414A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155786(P2009−155786)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(509185332)北海道気密販売株式会社 (1)
【出願人】(509184335)株式会社高千穂 (1)
【出願人】(509185343)株式会社シャドー (1)
【Fターム(参考)】