説明

通気部材およびそれを備えた通気筐体

【課題】難燃性、耐水性および絶縁性が高い通気筐体を提供し、さらにこのような通気筐体を構成するための通気部材を提供する。
【解決手段】筐体7の開口部8を覆うように、筐体7に固着される通気部材1であって、貫通孔3が形成された支持体2と、貫通孔3を被覆し、開口部8を通過する気体が透過する通気膜5とを備えている。支持体2は、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリフェニレンオキサイド樹脂を含み、通気膜5は、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜のみにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子ボックスに適した通気筐体、さらには通気筺体を構成するための通気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で用いられる太陽電池等の電気製品には、内部に電気部品が配置された端子ボックス等の筺体が必要となることが多い。例えば、太陽電池用端子ボックスの内部には、バイパスダイオードが収納されている。このような端子ボックスの内部に雨水等の水分や粉塵が侵入すると、ショートや発火が生じるおそれがある。これを防ぐ方法として、ポッティング材により電気部品を封止し、電気部品と水または粉塵との接触を防止する方法がある。また、別の方法として、筐体の開口部を栓等により塞ぎ、筐体内部を外部と遮断することで電気部品と水または粉塵との接触を防止する方法がある。筐体の開口部を塞ぐ場合は、筐体を完全に密閉すると、電気部品の動作に伴う筐体内部の温度上昇により、筐体内部の圧力も上昇することになる。筐体内部の圧力が上昇すると、筐体内面に力がかかり、開口部を塞ぐ栓が外れてしまう等の問題が生じる。そこで、通気性を有し、粉塵や水を通さない通気部材により、筐体の開口部を覆う方法が取られている。開口部を有する筐体に固着される通気部材としては、例えば、特許文献1、2に開示された通気部材がある。これらの通気部材は、筐体の開口部を覆うことができる大きさの支持体と、支持体に形成された貫通孔を被覆する通気膜とを有していて、開口部上に通気膜が位置するように筐体に固着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−318557号公報
【特許文献2】特開2008−237949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池用端子ボックスに代表される、家屋に設置される端子ボックスには、難燃性が要求される。このため、太陽電池用端子ボックスに用いる通気部材としては、難燃性の高い焼結金属フィルタが用いられることが多い。しかし、焼結金属フィルタは、耐水性や撥液性が低いという問題があった。さらに、焼結金属フィルタは絶縁体ではないために、端子ボックス内部に配置された電気部品から所定の距離(絶縁距離)以上離間して配置する必要がある。そのため、太陽電池用端子ボックスの設計の自由度が低下し、端子ボックスが大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされた発明であり、その目的は、難燃性、耐水性および絶縁性が高い通気筐体を提供し、さらにこのような通気筐体を構成するための通気部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通気部材は、筐体の開口部を覆うように、前記筐体に固着される通気部材であって、貫通孔が形成された支持体と、前記貫通孔を被覆し、前記開口部を通過する気体が透過する通気膜とを備え、前記支持体が、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリフェニレンオキサイド樹脂を含み、前記通気膜が、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜のみにより構成されている。
【0007】
また、本発明の通気筐体は、本発明の通気部材と、開口部を有する筐体とを備え、前記筐体が、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリフェニレンオキサイド樹脂を含み、前記通気部材が、前記開口部を覆うように前記筐体に固着されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る通気部材において、支持体はポリフェニレンエーテル樹脂またはポリフェニレンオキサイド樹脂を含む。通気膜はポリテトラフルオロエチレン多孔質膜のみであり、他に補強材を用いない構成である。ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜は、それぞれ、難燃性、耐水性および絶縁性に優れていることから、この通気部材も難燃性、耐水性および絶縁性に優れている。したがって、本発明に係る通気部材は、電気部品等のように水や粉塵との接触が好ましくない部材が内部に配置された通気筐体の構成部材として適している。また、本発明に係る通気筐体は、難燃性、耐水性および絶縁性を有し、通気部材と電気部品の配置を考慮せずに設計できるので、設計の自由度が高く、小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る通気部材の一形態を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】本発明に係る通気筐体の一形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る通気部材と筐体との固着の例を示す拡大断面図である。
【図5】本発明に係る通気部材と筐体との固着の他の例を示す拡大断面図である。
【図6】本発明に係る通気部材の他の一形態を示す分解斜視図である。
【図7】比較例2の通気筐体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係る通気部材の一形態を示す斜視図であり、図2は図1のII−II断面図である。図3は本発明に係る通気筐体の一形態を示す断面図である。図1、図2および図3を参照して、本発明の通気部材および通気筐体の構成について説明する。通気部材1は、水や粉塵を通さず、気体が透過可能である通気膜5と、支持体2とを備えている。支持体2は外周が円形の平板であり、その中心に円形の貫通孔3が形成されている。通気膜5は、貫通孔3を被覆するように、支持体2の一方の主面に固着されている。通気筐体10は、開口部8が形成された筐体7と、通気部材1とを備えている。通気部材1は、開口部8を覆うように筐体7に固着されている。開口部8上には、通気膜5が位置している。
【0011】
通気膜5は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)多孔質膜のみにより構成された膜であり、他に補強材を備えてはいない。PTFE多孔質膜は、小面積であっても通気性を維持でき、水や粉塵を阻止する能力が高い。PTFE多孔質膜は、エアフィルタ等の用途においては、通常、強度を補うために補強材と積層して用いられる。補強材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる織布、不織布、ネット等がよく用いられている。しかし、補強材を用いると、通気部材の難燃性および絶縁性が低下する。PTFE多孔質膜のみからなる通気膜5は難燃性、絶縁性、耐水性および撥液性に優れている。
【0012】
通気膜5は、支持体2の貫通孔3を被覆するように、支持体2の一方の主面に溶着されている。通気膜5は、支持体2に溶着により固着されているため、剥がれや浮きなどが生じにくい。溶着の方法は特に限定されず、熱溶着、超音波溶着、インパルス溶着等を用いればよい。なお、生産効率、初期投資を考慮すると、熱溶着が好ましい。
【0013】
撥水性、撥油性を高めるために、通気膜5に撥液処理を施してもよい。PTFE多孔質膜自体が有する撥液性能を上回るためには、フッ素で飽和した炭化水素基(ペルフルオロアルキル基)を側鎖に含み、主鎖がアクリル系、メタクリル系、シリコーン系等である化合物を成分とする撥液剤を通気膜5に塗布すればよい。通気膜5に撥液剤を塗布する方法としては、キスコーティング、グラビア塗工、スプレー塗工、浸漬等が挙げられる。通気筐体10の外部から内部への水の浸入を防ぐためには、通気膜5は、通気筐体10に搭載された状態で、撥液性が高い面が外側(筐体7の反対側)を向くように配置されることが好ましい。
【0014】
通気膜5であるPTFE多孔質膜は、公知の方法に準じて製造することができる。例えば、PTFEファインパウダーとケロシン等の潤滑材とからなるペースト押出物を延伸後焼成する方法により製造することができる。また、市販品として入手することも可能である。
【0015】
通気膜5の目付量は、20g/m2以上であることが好ましい。それにより、通気膜5の耐水性が向上する。例えば、通気筐体10を屋外で使用した場合に、雨等により通気膜5に水がかかったとしても、通気筐体10の内部への水の浸入を防ぐことができる。
【0016】
通気度を高めるためには、通気膜5の厚みは薄い方がよいが、薄すぎると強度が低下する。通気膜5の厚みは、0.1mm〜0.5mmであることが好ましい。
【0017】
通気膜5の絶縁破壊電圧は、JIS C2110に従い、2000V以上であることが好ましい。それにより、通気膜5の絶縁性が向上する。例えば、筐体内7に設置されるバイパスダイオード等の電気部品の近傍に通気膜5が配置されたとしても、漏電等が生じにくい。絶縁破壊電圧の測定法について、以下に簡単に説明する。直径が12.5mmの球状の2つの電極を、通気膜の厚さ方向について互いに対向するように配置し、電極により通気膜を挟む。電極により、通気膜の厚さ方向に約500gの荷重をかけた状態で、電極間の電圧を1kV/秒の割合で昇圧していき、絶縁破壊が生じた際の電圧を測定し、その値を絶縁破壊電圧とする。
【0018】
通気膜5の通気度は、JIS P8117に従い、ガーレー数で40sec/100ml以下であることが好ましい。それにより、通気膜5の通気性が向上する。
【0019】
通気膜5の耐水圧は、JIS L1092に従い、0.05MPa以上であることが好ましい。それにより、通気膜5の耐水性が向上する。例えば、通気筐体10を屋外で使用した場合に、雨等により通気膜5に水がかかったとしても、通気筐体10の内部への水の浸入を防ぐことができる。
【0020】
支持体2は、ポリフェニレンエーテル樹脂(以下、「PPE」という)またはポリフェニレンオキサイド樹脂(以下、「PPO」という)を含んで構成され、好ましくはPPEまたはPPOから構成されている。PPEおよびPPOはいずれも難燃性、絶縁性および耐水性に優れていることから、PPEまたはPPOを含む支持体2も難燃性、絶縁性および耐水性に優れている。
【0021】
支持体2を溶着により筐体7に固着する場合には、支持体2と筐体7との相溶性がよいことが好ましい。それにより、支持体2と筐体7との固着強度が向上する。したがって、支持体2および筐体7の主成分が同じであることが好ましく、主成分以外の成分が同一であることがさらに好ましく、各成分の成分比が同一であることがより好ましい。なお、主成分とは、含有率が50%よりも多い成分をいう。
【0022】
支持体2は、筐体7と固着されるための固着面4を有している。固着面4は支持体2の主面のうち、通気膜5が配置されている面の反対側の面である。固着面4には凸状の溶着用リブ4aが配置されている。溶着用リブ4aは、PPEまたはPPOを含んで構成されていることが好ましく、より好ましくはPPEまたはPPOから構成されている。溶着用リブ4aが熔解して、固着面4と筐体7の被固着面9との間に広がり、その状態で固化することで溶着がなされる。なお、固着面4が溶着可能な材料により構成されていれば、溶着用リブ4aが配置されていなくてもよい。固着面4は、PPEまたはPPOを含んで構成されていることが好ましく、より好ましくはPPEまたはPPOから構成されている。
【0023】
支持体2は、筐体7に形成された開口部8の径よりも大きい外径を有し、開口部8を覆うように筐体7に固着できる形状であればよい。支持体2は、平板であることが好ましい。筐体7において、支持体2が固着される被固着面9は一般的に平面であることから、支持体2が平板であると、固着面4が被固着面9に密着しやすく、支持体2がより安定して筐体7に固着される。さらに、支持体2に通気膜5を溶着することも容易に行うことができる。
【0024】
貫通孔3の大きさは、通気筐体10の用途および通気膜5の通気量等を考慮して適宜決定すればよい。
【0025】
支持体2の厚みは、2.5mm程度またはそれ以上が好ましい。それにより、支持体2の難燃性が向上する。支持体2の厚みは、支持体2に用いられる材料を試験片とした場合に、UL(Under Writers Laboratories Inc)規格のUL94に従って、5VA程度の難燃性を有する厚みであることが好ましい。5VAとは難燃性を示す基準である。5VAの基準を満たすためには、以下に示す短冊試験片を用いた燃焼試験および平板試験片を用いた燃焼試験のいずれの条件も満たさなければならない。具体的には、垂直に保持された短冊試験片に対して、125mmの炎により5秒間の接炎を5回行い、その後の有炎および無炎を含む燃焼時間が60秒以下であること、かつ、その際に短冊試験片の下方に置かれた脱脂綿を発火させる滴下物がないことが必要である。さらに、水平に保持された平板試験片に対して、下方から、125mmの炎の5秒間接炎を5回行った後の平板試験片に、穴が無いことが必要である。
【0026】
支持体2の成形方法としては、特に限定されるものではなく、例えば射出成形や切削などにより行えばよい。
【0027】
筐体7は、PPEまたはPPOを含んで構成されることが好ましく、PPEまたはPPOから構成されていることがさらに好ましい。それにより、筐体7は、難燃性、絶縁性および耐水性に優れている。
【0028】
通気筐体10は、筐体7の開口部8を外側から覆うように通気部材1が筐体7に固着されて構成されている。
【0029】
通気部材1は、溶着により筐体7に固着されることが好ましい。それにより、容易に固着が可能である。通常、筐体7の被固着面9は凹凸形状ではなく、同一平面上にあることから、支持体2の固着面4も同一平面上にあればよい。それにより、被固着面9と固着面4とが密着することができ、より安定した溶着が可能である。溶着方法は、特に限定されず、熱溶着、超音波溶着またはインパルス溶着を用いればよい。生産効率、初期投資を考慮すると、熱溶着を行うことが好ましい。固着面4に溶着用リブ4aが形成されている場合は、溶着用リブ4aが溶けて固着面4と被固着面9との間に広がり、その状態で固化するため、通気筺体10の気密性が向上する。
【0030】
支持体を用いずに、筐体に通気膜を直接溶着する場合には、様々な問題が生じていた。例えば、通気膜が均一に溶着されなかったり、通気膜が均一に溶着されていても全体的に溶着不足であったり、溶着作業中に通気膜が損傷したり、といった問題が生じていた。本発明では、通気膜5が溶着された支持体2を筐体7に溶着することから、上記問題が生じにくい。
【0031】
また、筐体7への通気部材1の固着の形態としては、例えば図4および図5に示すような構成としてもよい。図4および図5は、本発明に係る通気部材と筐体との固着の例および他の例を示す拡大断面図であり、固着面および被固着面周辺の断面形状を拡大して示している。図4に示した例では、支持体2の外周部および開口部8が共に段差部分を有しており、段差同士が互いに嵌り合う形状となっている。また、図5に示した例では、開口部8のみが段差部分を有しており、開口部8の段差部分に支持体2が嵌り込む形状となっている。図4または図5に示すような構成とすることで、通気膜5を除いて、通気筐体10の表面の段差をなくすことができる。それにより、通気筐体10の設置スペースを減少させることができる。また、筐体7に対して、通気部材1が嵌り込んで固定されるので、筐体7に通気部材1を溶着する際に、溶着作業を容易に行うことができる。
【0032】
筐体7と通気部材1とを溶着により固着する方法について説明したが、溶着以外の方法により筐体7に支持体2を固着してもよい。例えば筐体7と支持体2とを射出成形等により一体成形することとしてもよい。
【0033】
図2では、貫通孔3が一つの場合の通気部材1の形態を示したが、図6に示されるように、貫通孔が複数形成されていることとしてもよい。図6は、本発明に係る通気部材の他の一形態を示す分解斜視図である。図6に示すように、外周が円形の支持体22の中心を取り囲むように4つの円形の貫通孔23が形成されている。なお、貫通孔23の数は、4つに限定されるわけではない。支持体22は、貫通孔23が複数である点以外は、図2の支持体2と同様の構成である。支持体22のすべての貫通孔23を被覆するように、通気膜5が支持体22の一方の主面に溶着により固着されて、通気部材が構成される。通気部材1と同様に、この通気部材を筐体7に固着することで通気筐体10を形成できる。それにより、通気膜5は、その外周部分および貫通孔23間に対応する部分が支持体22に溶着されることになり、固着の強度が向上するし、破損しにくくなる。各貫通孔23の大きさは、貫通孔が一つの場合に比べて小さくなっているが、複数形成されることで、所望の通気量を得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0035】
(実施例1)
図1、2に示すような支持体を射出成形により作製した。材料である樹脂には、PPE(三菱瓦斯化学株式会社製 ユピエースLN40)を用いた。支持体は外周が円形の平板であり、中心に円形の貫通孔が形成されている。支持体の厚みは2.5mmであり、外径は18mmとした。貫通孔の内径は、6mmとした。通気膜には、直径が10mmのPTFE多孔質膜(日東電工株式会社製 S−NTF8031)を用いた。温度290℃のホーン(φ7×φ8)を用いて、3MPaにて3秒間かけて、通気膜を支持体に溶着することで通気部材を得た。支持体と同様に、PPE(三菱瓦斯化学株式会社製 ユピエースLN40)を用いて、射出成形により筐体を作製した。筐体の壁の厚さは3mmとし、開口部の内径は12mmとした。
【0036】
通気部材を筺体の開口部を覆うようにして配置し、超音波溶着機(超音波工業株式会社製)を用いて、周波数30kHz、圧力3MPaの条件で通気部材を筺体に溶着して、通気筺体を得た。
【0037】
(実施例2)
実施例1で用いたPTFE多孔質膜とは、目付量および厚みの異なるPTFE多孔質膜(日東電工株式会社製 S−NTF810A 直径:10mm)を通気膜とした。それ以外は、実施例1と同じ材料を用いて、同じ方法により通気筐体を得た。
【0038】
(比較例1)
PTFE多孔質膜および補強材(ポリオレフィン系不織布)が積層された構成の膜(日東電工株式会社製 S−NTF1033−K02 直径:10mm)を通気膜とした。なお、この通気膜の厚みは0.15mmであり、PTFE多孔質膜の厚みは10μmであり、補強材の厚みは140μmである。それ以外は、実施例1と同じ材料を用いて、同じ方法により通気筐体を得た。
【0039】
(比較例2)
Cu−Sn−Zn合金の焼結金属体である焼結金属フィルタを通気部とした。通気部の形状は、外径が6mmの円形平板である。予め、通気部である焼結金属フィルタを設置した金型にPPE(三菱瓦斯化学株式会社製 ユピエースLN40)を流し込み、射出成形により、焼結金属フィルタと筐体とが一体成形された通気筐体を作製した。図7は、比較例2の通気筐体の構成を示す断面図である。筐体37の壁および焼結金属フィルタである通気部35の厚さは共に3mmである。
【0040】
得られた通気筐体に対し、以下に示す各試験を行い、試験結果を表1に示した。なお、筐体耐水試験のみ通気筺体に対して行い、他の試験は通気膜(部)に対して行った。
【0041】
[筺体耐水試験]
内側にウォーターフィーリングペースト(三共化学工業株式会社製)を塗布した通気筐体を、水深が1mの深さの水槽に沈め、30分間放置した後に引き上げて、通気筐体内に水が浸入したか否かを判定した。判定は、ウォーターフィーリングペーストの色の変化を目視により確認することにより行った。ウォーターフィーリングペーストは通常青色であるが、水に触れると赤色に変色するため、通気筐体内への水の浸入を、目視により判定することができる。
【0042】
[耐水圧試験]
通気膜(部)において、JIS L1092に従い、100kPa/1分間の昇圧速度での耐水圧力を測定した。
【0043】
[通気度試験]
通気膜(部)において、JIS P8117に従い、1.23kPaで100cm3の空気が、642mm2の通気面積の試料を通過する際の時間を測定した(ガーレー法)。
【0044】
[絶縁破壊電圧試験]
通気膜(部)において、JIS C2110に従い、直径が12.5mmの球状の2つの電極により、通気膜をその厚さ方向に沿って挟む。電極により、通気膜に約500gの荷重がかかるようにし、電極間の電圧を1kV/秒の割合で昇圧していき、絶縁破壊が生じた際の電圧を測定した。
【0045】
[燃焼性試験]
通気膜(部)において、UL規格におけるUL94V垂直燃焼性試験に従い、燃焼性について測定した。UL規格におけるUL94V垂直燃焼性試験は、以下に示す方法で行われる。試験片(5本)をクランプに垂直に取付け、試験片に対して20mmの炎による10秒間接炎を2回行い、試験片の燃焼挙動により判定を行う。判定基準には、V0、V1、V2がある。V0の基準を満たすためには、各試験片における各回の接炎後の有炎燃焼時間が10秒以下であり、5本の試験片におけるすべての回の接炎後の有炎燃焼時間の合計が50秒以下であり、各試験片における2回目の接炎後の有炎および無炎を含む燃焼時間が30秒以下であり、各試験片が燃え尽きず、各試験片の下方に置かれた脱脂綿を発火させる滴下物がないことが必要である。また、V1の基準を満たすためには、各試験片における各回の接炎後の有炎燃焼時間が30秒以下であり、5本の試験片におけるすべての回の接炎後の有炎燃焼時間の合計が250秒以下であり、各試験片における2回目の接炎後の有炎および無炎を含む燃焼時間が60秒以下であり、各試験片が燃え尽きず、各試験片の下方に置かれた脱脂綿を発火させる滴下物がないことが必要である。また、V2の基準を満たすためには、各試験片における各回の接炎後の有炎燃焼時間が30秒以下であり、5本の試験片におけるすべての回の接炎後の有炎燃焼時間の合計が250秒以下であり、各試験片における2回目の接炎後の有炎および無炎を含む燃焼時間が60秒以下であり、各試験片が燃え尽きないことが必要であり、各試験片の下方に置かれた脱脂綿を発火させる滴下物があってもよい。
【0046】
【表1】

【0047】
表1より、PTFE多孔質膜が、難燃性および絶縁性を有することがわかる。また、PTFE多孔質膜の目付量または厚みが大きい方が、絶縁破壊電圧が大きくなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の通気部材は、難燃性、耐水性または絶縁性が要求されるような状況において使用する通気筐体に用いられることが好ましい。例えば、太陽電池用端子ボックスに用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0049】
1 通気部材
2、22 支持体
3、23 貫通孔
4 固着面
4a 溶着用リブ
5 通気膜
7、37 筐体
8 開口部
9 被固着面
10 通気筐体
35 通気部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の開口部を覆うように、前記筐体に固着される通気部材であって、
貫通孔が形成された支持体と、
前記貫通孔を被覆し、前記開口部を通過する気体が透過する通気膜とを備え、
前記支持体が、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリフェニレンオキサイド樹脂を含み、
前記通気膜が、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜のみにより構成されている、通気部材。
【請求項2】
前記通気膜が、前記支持体の表面に溶着されている、請求項1に記載の通気部材。
【請求項3】
前記支持体が、前記筺体と固着するための固着面を有しており、
前記固着面には、溶着用リブが配置されている、請求項1または2に記載の通気部材。
【請求項4】
前記支持体が、前記筺体と固着するための固着面を有しており、
前記固着面が、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリフェニレンオキサイド樹脂により構成されている、請求項1または2に記載の通気部材。
【請求項5】
前記支持体が平板である、請求項1ないし4のいずれかに記載の通気部材。
【請求項6】
前記通気膜の目付量が、20g/m2以上である、請求項1ないし5のいずれかに記載の通気部材。
【請求項7】
前記通気膜の厚みが、0.1mm〜0.5mmである、請求項1ないし6のいずれかに記載の通気部材。
【請求項8】
前記通気膜の絶縁破壊電圧が、2000V以上である、請求項1ないし7のいずれかに記載の通気部材。
【請求項9】
前記通気膜の通気性が、ガーレー数で40sec/100ml以下である、請求項1ないし8のいずれかに記載の通気部材。
【請求項10】
前記通気膜の耐水圧が、0.05MPa以上である、請求項1ないし9のいずれかに記載の通気部材。
【請求項11】
前記貫通孔が、複数形成されている、請求項1ないし10のいずれかに記載の通気部材。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の通気部材と、
開口部を有する筐体とを備え、
前記筐体が、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリフェニレンオキサイド樹脂を含み、
前記通気部材が、前記開口部を覆うように前記筐体に固着されている、通気筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−233580(P2011−233580A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100073(P2010−100073)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】