説明

通話録音システム

【課題】 使用する交換機の種類に依存せずに通話録音が可能な通話録音システムを提供する。
【解決手段】 通話録音システムは、LAN3上を流れる情報の中から音声パケットを抽出するパケットフィルタ装置4と、IP電話機7の通話開始に応じて、抽出した音声パケットの音声データへの変換処理を開始し、通話終了に応じて処理を終了してIP電話機7の通話に係る録音データを作成する録音サーバ5と、IP電話機7の通話開始および通話終了に係る情報を通話ログとして記録し、前記録音データを録音ログとして通話ログに対応付けて記録するデータベースサーバ6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP電話機を有するネットワークシステムにおける通話録音システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
IP電話機を有するネットワークシステムにおいてIP電話機の通話を記録する方法としては例えばIP電話機に個別に録音装置を備えるものがある。この方法はIP電話機の数が多くなるとそれだけ録音装置の数も多くなりコスト的およびスペース的に不利である。そこで、例えば特許文献1には、IP電話システムにおける通話録音システムが提案されている。このシステムは、IPネットワーク上の任意の電話機端末間の通話について録音要求が発生した場合、各電話機端末の通話相手を通話録音サーバに切替える呼制御手段と、各電話機端末から通話録音サーバに送られた音声パケットを各電話機端末の元の通話相手に転送する転送手段と、各電話機端末から通話録音サーバに送られた音声パケット/データを記録装置に蓄積する記憶手段とを備え、各電話機端末間の通話を録音するよう動作するものである。これにより、導入コストを軽減するとともに、既存のIPネットワークへの影響を抑えることが可能となるというものである。
【0003】
【特許文献1】特開2003−46646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の技術では、交換機からの呼制御情報に依存した録音開始・終了制御方式とされているため、交換機の種類を変更した場合には通話録音ができなくなるという問題がある。
本発明の目的は、使用する交換機の種類に依存せずに通話録音が可能な通話録音システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、IP電話機を有するネットワークシステムにおける通話録音システムであって、ネットワーク上を流れる情報の中から音声パケットを抽出する音声パケット抽出手段と、前記IP電話機の通話開始に応じて前記抽出した音声パケットの音声データへの変換処理を開始し、通話終了に応じて前記処理を終了して前記IP電話機の通話に係る録音データを作成する録音手段と、前記通話開始および通話終了に係る情報を通話ログとして記録し、前記録音データを録音ログとして前記通話ログに対応付けて記録する記録手段とを備えた通話録音システムにより達成される。ここで、前記記録手段は、前記IP電話機に係るIPアドレスと内線番号との対応テーブルを備えることができる。
【0006】
また、本発明に係るネットワークシステムは、公衆網と接続されるゲートウェイと、IP電話機と、前記ゲートウェイを介して前記IP電話機の通話を確立するための交換機とを備えたものであって、前記IP電話機が前記交換機により前記ゲートウェイを介して通話を確立する通話経路と、ネットワーク上を流れる情報の中から音声パケットを抽出し音声データに変換して前記IP電話機の通話に係る録音データを作成するとともに前記IP電話機の通話開始および通話終了に係る情報を通話ログとして記録し、前記録音データを録音ログとして前記通話ログに対応付けて記録する録音経路とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用する交換機の種類に依存せずに通話録音が可能な通話録音システムを得ることができる。また、本発明では、ネットワーク上を流れる音声パケットにより通話の開始・終了を認識し通話録音を行うため、交換機から呼制御情報が得られなくとも通話録音を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る通話録音システムの実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明に係る通話録音システムを用いたネットワークシステムの一実施例を示す図である。本ネットワークシステムは、図1に示すように、交換機1と、交換機1からの呼制御情報を受付ける呼制御情報処理サーバ2と、ネットワーク(例えばLAN)3上を流れる情報の中から音声パケットを抽出する音声パケット抽出手段(例えばパケットフィルタ装置)4と、抽出した一通話の音声パケットを音声データに変換して録音データを作成する録音手段(例えば録音サーバ)5と、録音データ等を記録する記録手段(例えばデータベースサーバ)6と、通話を行うための複数のIP電話機7と、録音データの検索および再生を行う検索用クライアントPC8と、ISDN等の公衆網10と接続されるVoIPゲートウェイ9とを備えて構成されている。公衆網10には電話機11が接続され、IP電話機7と通話可能とされる。
【0010】
即ち、本発明では、IP電話機7が交換機1によりゲートウェイ9を介して通話を確立する通話経路と、LAN3上を流れる情報の中から音声パケットを抽出し音声データに変換してIP電話機7の通話に係る録音データを作成するとともにIP電話機7の通話開始および通話終了に係る情報を通話ログ601として記録し、録音データを録音ログ602として通話ログ601と対応付けて記録する録音経路とを備える。このように本発明では、通話経路と録音経路を分けて構成しているので、録音経路のどこかで故障が発生したとしても、通話経路によりIP電話機7で通話を続行することができる。
【0011】
図1において、パケットフィルタ装置4は、LAN3上を流れる情報の中から音声パケットを抽出する。音声パケットの抽出方法は各種方法を用いることができる。例えば、音声パケットを他のパケットよりも優先順位を高くしておいて優先順位の高い音声パケットだけをフィルタに通すことにより抽出することができる。また、音声パケットに特定のデータ例えば選択番号を割り当てて当該データを有する音声パケットを選択することにより抽出することができる。前記優先順位または特定のデータはゲートウェイ9およびIP電話機7において割り当てる。
【0012】
録音サーバ5は、IP電話機7の通話開始に応じて、抽出した音声パケットの音声データへの変換処理を開始し、通話終了に応じてその処理を終了して、IP電話機7の通話に係る録音データを作成する。
【0013】
データベースサーバ6は、IP電話機7の通話開始および通話終了に係る情報を通話ログ601として記録し、また録音サーバ5で作成した録音データを録音ログ602として通話ログ601と対応付けて記録するものであり、さらにIPアドレス−内線番号対応テーブル603を備える。これらの内容については後述する。ここで、データベースサーバ6は録音サーバ5と別個で構成されているが、録音サーバ5にデータベースサーバ6を取り込んで、または逆にデータベースサーバ6に録音サーバ5を取り込んで、両者を一体に構成することもできる。
【0014】
図2は、IP電話機の一通話における状態遷移の一例を示す図である。図示のように、交換機1は着信・発信に対応して、内線番号やオペレータ番号等からなる呼制御情報を呼制御情報処理サーバ2に送信する。呼制御情報処理サーバ2は受信した呼制御情報をデータベースサーバ6の通話ログ601に記録する。一方、パケットフィルタ装置4は、LAN3上を流れる全てのパケットの中から音声パケット401を抽出する。録音サーバ5では、パケットフィルタ装置4から新たな呼の音声パケットを受信すると、音声パケットを音声データに変換する処理を開始する。この後通話が終了するまでは継続して音声パケットが流れるため、録音サーバ5は音声パケットの音声データへの変換を繰り返すことで録音データを作成する。通話終了により録音データの作製を終了し、録音データをデータベースサーバ6の録音ログ602に記録する。この時、音声パケットに含まれるIPアドレスをキーとしてIPアドレス−内線番号対応テーブル603により内線番号を取得し録音ログ602に記録する。通話ログ601が登録されている時には、ログ対応付け処理により録音ログ602と通話ログ601との対応付けを行い、録音ログ602に通話ログ601の情報を記録する。
【0015】
図3は、通話ログと録音ログのログ対応付け処理の一例を示すフロー図であり、図4は、通話ログと録音ログのログ対応付け方法の一例を示す図である。本発明は通話ログと録音ログとを別々に記録する方式のため、両ログの対応付け処理が必要である。両ログを対応付けるキーは日時および内線番号であるが、呼制御情報により得られる交換機1が認識した通話開始・終了日時と、録音サーバ5が記録した録音データの録音開始・終了日時とは必ずしも一致しないことから、ログ対応付けは次のような処理フローに示す方法により行う。
【0016】
はじめにステップ31にて、録音ログの録音開始日時以降に通話が終了した通話ログがあるかどうかを判定する。対応する通話ログがなし(NO)の場合は、対応付け処理を終了する。対応する通話ログがあり(YES)の場合は、ステップ32にて、録音ログの録音終了日時以前に通話が開始した通話ログがあるかどうかを判定する。対応する通話ログがなし(NO)の場合は、対応付け処理を終了する。対応する通話ログがあり(YES)の場合は、ステップ33にて、録音ログに該当する通話ログの情報を記録し、対応付け処理を終了する。
【0017】
図5は、通話ログと録音ログの開始・終了日時がずれている時の時間関係がどの範囲で対応付けできるかを説明するための図で、(A)は対応付けられる場合、(B)は対応付けられない場合を示す図である。図5(A)の(a)に示すように、一般的には通話ログの持つ開始・終了日時と録音ログの持つ開始・終了日時とは一致しており、この場合には前記対応付け処理のフローの条件判定により両者の対応付けを行うことができる。しかし、両ログの持つ開始・終了日時が一致しない場合もある。
【0018】
例えば、図5(A)の(b)に示すように、録音ログの持つ開始日時が通話ログの持つ開始日時よりも前で、かつ録音ログの持つ終了日時が通話ログの持つ終了日時よりも後である場合、同(c)に示すように、録音ログの持つ開始日時が通話ログの持つ開始日時よりも後で、かつ録音ログの持つ終了日時が通話ログの持つ終了日時よりも前である場合、同(d)に示すように、録音ログの持つ開始日時が通話ログの持つ開始日時よりも前で、かつ録音ログの持つ終了日時が通話ログの持つ終了日時よりも前である場合、同(e)に示すように、録音ログの持つ開始日時が通話ログの持つ開始日時よりも後で、かつ録音ログの持つ終了日時が通話ログの持つ終了日時よりも後である場合がある。これらの場合、前記対応付け処理のフローの条件判定により両者の対応付けを行うことができる。例えば電話発信時において呼び出し音の時間等により両ログの開始時間がずれる場合でも、上記のような条件を満たすことで両者の対応付けが可能である。
【0019】
これに対して、図5(B)の(f)に示すように、録音ログの持つ開始日時および終了日時がそれぞれ通話ログの持つ開始日時よりも前である場合、および同(g)に示すように、録音ログの持つ開始日時および終了日時がそれぞれ通話ログの持つ終了日時よりも後である場合は、両者の対応付けを行うことができない。つまり、通話ログの開始日時〜終了日時に録音ログの開始日時〜終了日時が少しでも重なる場合は録音ログと通話ログとは対応付けられるが、通話ログの開始日時〜終了日時と録音ログの開始日時〜終了日時とが重ならない場合は両者を対応付けることができない。
【0020】
図6は、データベースサーバにおける各種テーブルのフォーマットの例を示す図で、(a)は通話ログ、(b)は録音ログ、(c)はIPアドレス−内線番号対応テーブルを示す図である。通話ログ601としては、図6(a)に示すように、開始日時、終了日時、内線番号、発信または着信の種別、通話先電話番号が記録される。録音ログ602としては、図6(b)に示すように、録音ファイル名(録音データ)、開始日時、終了日時、内線番号、発信または着信の種別、通話先電話番号が記録される。IPアドレス−内線番号対応テーブル603には、IPアドレスに対応して内線番号が記録されている。通話ログ601の全てのフィールドは呼制御情報処理サーバ2によりデータが設定される。録音ログ602の開始日時・終了日時の各フィールドは、録音サーバ5によりそのデータが設定される。内線番号フィールドは録音サーバ5からのIPアドレスをキーとして内線番号対応テーブル603を検索し該当する内線番号を取得し設定する。上述のログ対応付け処理により録音ログに対応する通話ログが対応付けられた時、通話ログ601の該当レコードの開始日時・終了日時・種別・通話先フィールドデータを録音ログ602の同フィールドに設定する。録音データを再生するときには、検索用クライアントPC8にて検索条件を入力し、録音ログ602を検索することで録音データを取得し再生することができる。
【0021】
このように本発明では、IP−PBX等の交換機および通話を録音しデータベースに記録するサーバを有する通話録音システムにおいて、交換機からの呼制御情報と録音データとを対応付けるものであり、通話に伴い伝送される音声パケットにより呼の開始・終了を検知して録音の開始・終了を制御することで、交換機には依存せずに録音データを作成することができる。音声パケット内のIPアドレスを録音データとともに記録し、IPアドレスから内線番号への変換テーブルにより内線番号に対応付けることができる。交換機から呼に関する情報を取り込める時には、録音データと交換機からの呼制御情報とを対応付ける手段を持たせることにより詳細な情報が付加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、IP電話機を有するネットワークシステムにおける通話録音システムに関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る通話録音システムを用いたネットワークシステムの一実施例を示す図である。
【図2】IP電話機の一通話における状態遷移の一例を示す図である。
【図3】通話ログと録音ログのログ対応付け処理の一例を示すフロー図である。
【図4】通話ログと録音ログのログ対応付け方法の一例を示す図である。
【図5】通話ログと録音ログの開始・終了日時がずれている時の時間関係がどの範囲で対応付けできるかを説明するための図で、(A)は対応付けられる場合、(B)は対応付けられない場合を示す図である。
【図6】データベースサーバにおける各種テーブルのフォーマットの例を示す図で、(a)は通話ログ、(b)は録音ログ、(c)はIPアドレス−内線番号対応テーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 交換機
2 呼制御情報処理サーバ
3 LAN
4 パケットフィルタ装置
5 録音サーバ
6 データベースサーバ
7 IP電話機
8 検索用クライアントPC8
9 ゲートウェイ
10 公衆網
11 電話機
601 通話ログ
602 録音ログ
603 IPアドレス−内線番号対応テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP電話機を有するネットワークシステムにおける通話録音システムであって、ネットワーク上を流れる情報の中から音声パケットを抽出する音声パケット抽出手段と、前記IP電話機の通話開始に応じて前記抽出した音声パケットの音声データへの変換処理を開始し、通話終了に応じて前記処理を終了して前記IP電話機の通話に係る録音データを作成する録音手段と、前記通話開始および通話終了に係る情報を通話ログとして記録し、前記録音データを録音ログとして前記通話ログに対応付けて記録する記録手段とを備えたことを特徴とする通話録音システム。
【請求項2】
前記記録手段が、前記IP電話機に係るIPアドレスと内線番号との対応テーブルを備えたことを特徴とする請求項1記載の通話録音システム。
【請求項3】
公衆網と接続されるゲートウェイと、IP電話機と、前記ゲートウェイを介して前記IP電話機の通話を確立するための交換機とを備えたネットワークシステムであって、前記IP電話機が前記交換機により前記ゲートウェイを介して通話を確立する通話経路と、ネットワーク上を流れる情報の中から音声パケットを抽出し音声データに変換して前記IP電話機の通話に係る録音データを作成するとともに前記IP電話機の通話開始および通話終了に係る情報を通話ログとして記録し、前記録音データを録音ログとして前記通話ログに対応付けて記録する録音経路とを備えたことを特徴とするネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−98905(P2008−98905A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277603(P2006−277603)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】