説明

通電加熱式触媒装置

【課題】NTC特性を有する触媒担体を用いても、排気ガスの浄化機能を十分に発揮する。
【解決手段】通電加熱式触媒装置は、排気ガスの浄化用触媒をジュール熱によって加熱する通電加熱式触媒装置である。この通電加熱式触媒装置の所定位置には正電極及び負電極が設置され、触媒担体がこれら正電極及び負電極を電気的に接続する。触媒担体は、温度が上昇すると抵抗値が連続的に減少するNTC特性を有する。そして、区画手段が、触媒担体を絶縁部材により区画し、該区画された電流経路の少なくとも一部を導電部材により直列に接続することで、該絶縁部材により区画されていない場合に比べて触媒担体を流れる電流の電流経路を長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の排気ガスを浄化するための通電加熱式触媒装置であって、例えば炭化ケイ素SiCのように、温度が上昇すると抵抗値が連続的に減少するNTC(Negative Temperature Coefficient:NTC)特性を有する電流経路を用いる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、触媒装置の排気ガス浄化能力を十分に発揮させるには、当該触媒装置内部の温度を触媒活性化温度まで均一に昇温させることが好ましい。そこで、例えば、特許文献1の図1に示されているように、触媒装置を構成する通電加熱式ハニカム体の外周面上において、所望の周長の間隔をおいて設定される相対向する部位に、所定の周長の電極板を相対向させて配設したものを使用する技術が提案されている。この構成によると、相対向する電極板の一方から他方へ電流が流れる触媒担体における単位体積当たりの抵抗値がほぼ同じものとなり、ハニカム体の内部は均一に抵抗加熱されるという(特許文献1の明細書段落0014を参照)。
【0003】
ところが、上記構成では、触媒装置の触媒担体がNTC特性を有する場合に対する配慮が十分にはなされていない。したがって、仮に当該触媒装置の触媒担体の温度分布がひとたび不均一になると、その傾向が助長されるおそれがある。具体的には、電極板への供給電流の増加に伴って触媒担体の一部の温度がひとたび上昇すると、その一部はNTC特性により抵抗値が低下するため、その一部に一層電流が流れ、局所的な温度上昇を助長するおそれがある。その結果、当該触媒装置の電流経路の温度分布および活性化状態も不均一になり、当該触媒装置が排気ガスの浄化機能を十分に発揮できないおそれがある。
【0004】
【特許文献1】特開平5−115795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みてなされたものであり、NTC特性を有する触媒担体を用いても、排気ガスの浄化機能を十分に発揮可能な通電加熱式触媒装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通電加熱式触媒装置は、上記課題を解決するため、排気ガスの浄化用触媒をジュール熱によって加熱する通電加熱式触媒装置であって、当該通電加熱式触媒装置の所定位置に設置された正電極及び負電極と、前記正電極及び前記負電極を電気的に接続するとともに、温度が上昇すると抵抗値が連続的に減少するNTC特性を有する触媒担体と、前記触媒担体を絶縁部材により区画し、該区画された電流経路の少なくとも一部を導電部材により直列に接続することで、該絶縁部材により区画されていない場合に比べて前記触媒担体を流れる電流の電流経路を長くする区画手段とを備える。
【0007】
本発明の通電加熱式触媒装置によれば、排気ガスの浄化用触媒が、ジュール熱によって加熱される。当該通電加熱式触媒装置の所定位置には、正電極及び負電極が設置されている。例えば、排気ガスの入口側に正電極を、出口側に負電極が設置される。但し、正電極及び負電極の設置位置はその逆でもよいし、共に何れか一端でもよい。そして、正電極及び負電極は、触媒担体によって、電気的に接続されている。この触媒担体は、例えば炭化ケイ素SiCのように、温度が上昇すると抵抗値が連続的に減少するNTC特性を有する半導体である。なお、触媒担体は、通電時にジュール熱を発生させることにより、担持した触媒を加熱する。加えて、区画手段が、この触媒担体を絶縁部材により区画し、該区画された触媒担体の少なくとも一部を導電部材により直列に接続している。この結果、絶縁部材が無い場合に比べて触媒担体を流れる電流の電流経路が長くなる。
【0008】
ここで仮に、絶縁部材により区画されていないと、上記課題として指摘したように、触媒担体の一部の温度が周囲に比べて上昇すると、NTC特性ゆえに抵抗値が他部に比べて低下して、電流が更に多く流れるようになり、温度分布の不均一さが助長されてしまうおそれがある。そうすると、触媒担体に担持された触媒の排気ガスの浄化機能を十分に発揮できないおそれがある。
【0009】
しかるに、本発明の通電加熱式触媒装置の構成によれば、上述のように、触媒担体における電流経路が、絶縁部材が無い場合に比べて長くされている。そうすると、電流が触媒担体全体を一段ときめ細かく流れ、触媒に流れる電流の密度分布の差が一段と小さくなる。仮に、触媒担体の一部の温度が他部に比べて上昇しても、該一部と他部とが電流経路として直列に接続されているため各々を流れる電流密度は同じなので、温度分布の不均一さが助長されることはない。むしろ、NTC特性のおかげで、温度が上昇する一部の抵抗値は他部に比べて低下するので、該一部で発生するジュール熱は、他部に比べて低くなる。すなわち、本構成によれば、触媒担体における温度差が解消する方向に作用するのである。
【0010】
以上見てきたように、本発明の通電加熱式触媒装置によれば、NTC特性を有する電流経路を用いても、内部の触媒担体における温度分布の不均一さを解消でき、もって、触媒担体に担持された触媒の排気ガスの浄化機能を十分に発揮せしめることが可能である。
【0011】
本発明の通電加熱式触媒装置の一態様では、前記触媒担体は、当該通電加熱式触媒装置における排気ガスの通路でもあり、前記区画手段は、該排気ガスの通路の断面が前記絶縁部材により複数に区画され、かつ、前記絶縁部材が前記排気ガスの通路に沿って延在するように、前記触媒担体を区画する。
【0012】
この態様によると、触媒担体は、当該通電加熱式触媒装置における排気ガスの通路でもある。例えば、触媒担体はハニカム状に形成されており、担持する触媒に排気ガスが接触するように、排気ガスの通路となる空間が設けられている。そして、区画手段は、該排気ガスの通路の断面が絶縁部材により複数に区画され、かつ、絶縁部材が排気ガスの通路に沿って延在するように、触媒担体を区画する。各区画は上記導電部材によって、少なくとも一部が直列に接続されている。例えば、直列に接続される区画は、一端で前の区画と接続され、他端で後の区画と接続される。そうすると、電流は、正電極から負電極に向けて、排気ガスの通路に沿って往復しながら、各区画を順次流れる。したがって、いずれの区画においても、触媒が同様に活性化されるので、通過する排気ガスを一様に浄化できる。
【0013】
この態様では、前記区画手段は、前記排気ガスの通路の断面において中央寄りに位置する区画の断面積の方が外周寄りのそれと比べて大きくなるように、前記触媒担体を区画してもよい。
【0014】
この構成によると、排気ガスの通路(つまり触媒担体)の断面において中央寄りの方が外周寄りと比べて熱が集中しやすいところ、中央寄りに位置する区画の断面積が外周寄りのそれよりも大きくされるので、その電流密度が外周寄りに比べて下がり、発熱を抑制できる。なお、「中央寄りに位置する区画」とは、必ずしも触媒担体の中央に位置する区画である必要はなく、最外周に位置する区画よりも中央寄りに位置する区画であればよい。
【0015】
あるいは、この態様では、前記区画手段は、排気ガスの通路の断面において中央寄りに位置する少なくとも2つの区画は並列に接続するように、前記触媒担体を区画してもよい。
【0016】
この構成によると、排気ガスの通路(つまり触媒担体)の断面において中央寄りの方が外周寄りと比べて熱が集中しやすいところ、並列に接続された中央寄りに位置する少なくとも2つの区画を、断面積が広げられた一つの区画とみなすことで、上述の態様と同様に、中央寄りの発熱を抑制できる。
【0017】
あるいは、この態様では、前記触媒担体は、前記排気ガスの通路の断面において中央寄りに位置する区画の抵抗値の方が外周寄りのそれと比べて小さくなるように構成されてもよい。
【0018】
この構成によると、排気ガスの通路(つまり触媒担体)の断面において中央寄りの方が外周寄りと比べて熱が集中しやすいところ、その抵抗値を外周寄りのそれと比べて下げることで、同じ電流が流れても発生するジュール熱を低下させ、もって中央寄りの発熱を抑制できる。
【0019】
本発明の作用及び他の利得は、次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、発明を実施するための最良の形態として本発明の実施形態を、図面に基いて詳細に説明する。
【0021】
(1)第1実施形態
先ず図1を参照して、内燃機関40の詳細な構成について説明を加える。ここで、図1は、第1実施形態に係る内燃機関40を示す模式的な断面図である。
【0022】
図1において、吸気管206は、シリンダ201と外気とを連通しており、内燃機関40のシリンダ201内へと空気を吸入可能に構成されている。吸気管206の管路には、吸入空気を浄化するクリーナ、吸入空気の質量流量(即ち、吸入空気量)を検出するエアフローメータ、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ、スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサ、及び運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に基づいてスロットルバルブを駆動するスロットルバルブモータが備わる。更に下流には、吸入空気を貯蔵するとともに複数気筒の各々に分配するサージタンク2061、サージタンク2061における吸気管圧力を検出する圧力センサ2062、及び燃料噴射弁207が備わる。燃料噴射弁207は、燃料タンク223から供給される燃料を、制御装置30の制御に従って、吸気管206内に噴射する。噴射された燃料は、吸気管206を介して吸入された空気と混合されて混合気を形成し、該混合気がシリンダ201内での燃焼に使用される。
【0023】
燃料タンク223は、給油口311から給油される燃料を貯蔵している。この燃料は、内燃機関40の燃焼に使用される。ここで給油される燃料は、例えばガソリン又はアルコール、あるいはその混合燃料である。ポンプ225は、この燃料を適宜吸い上げて燃料噴射弁207へと供給する。燃料センサ224は、貯蔵されている燃料の量を検出するとともに、制御装置30へと伝達する。
【0024】
内燃機関40は、点火プラグ202の点火により、シリンダ201内で混合気を燃焼させる。このときの爆発力に応じたピストンの往復運動は、コネクションロッドを介してクランクシャフトの回転運動に変換され、この回転運動が駆動力となる。内燃機関40の周囲には、冷却水の温度を検出する水温センサ、クランク角を定期的に検出することで内燃機関40の回転数を検出可能なクランクポジションセンサ等の各種センサが配設されている。各センサの出力は、対応する検出信号として制御装置30へと供給される。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり、吸気弁208の開閉に連動して開閉する排気弁209を通過して排気管210を介して排気される。これらの開閉タイミングは、例えば周知の可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing-intelligent system:VVT−i)により構成される可変動弁装置によって調整される。
【0025】
制御装置30は、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、制御プログラムを格納した読み出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)及び各種データを格納する随時書き込み読み出しメモリ(Random Access Memory:RAM)等を中心とした論理演算回路として構成されている。制御装置30は、各種センサから入力信号を受ける入力ポートと、可変バルブタイミング機構や通電加熱式触媒装置50等の各種アクチュエータに制御信号を送る出力ポートとに、バスを介して接続されている。
【0026】
排気管210の管路には、空燃比センサ221、及び通電加熱式触媒装置50が備わる。
【0027】
空燃比センサ221は、例えばジルコニア固体電解質などで構成されており、排気管210中の排気ガスの空燃比(A/F)を検出するとともに、検出信号を制御装置30へと供給する。この検出信号に基づいて、空燃比フィードバック補正が行われる。
【0028】
通電加熱式触媒装置(Electrical Heated Catalyst:EHC)50は、例えば白金やロジウムなどの貴金属を活性成分とした三元触媒であり、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などを除去する機能を有する。加えて、通電加熱式触媒装置50は、制御装置30の制御下で通電状態が制御され、通電時には加熱してその温度を最低でも触媒の活性温度(例えば350℃程度)にまで上昇させる。
【0029】
ここで、第1実施形態に係る通電加熱式触媒装置50の構造について、図2から図5を参照しながら詳述する。先ず、比較例について、その後、第1実施形態について説明する。
【0030】
比較例に係る通電加熱式触媒装置50の構造が、図2および図3に示されている。ここで、図2は、比較例に係る通電加熱式触媒装置50を側面から見た場合の模式的な断面図である。図3は、比較例に係る通電加熱式触媒装置50を図2の位置Lにおいて排気ガスの入口側の正面から見た場合の模式的な断面図である。
【0031】
図2に示すように、通電加熱式触媒装置50は、通電加熱式触媒装置50の外形を形成すると共に排気管210との連結口が開放されている外殻51と、外殻51に囲われた通電触媒担体52と、通電触媒担体52に通電するための電源531、正電極532、および負電極533と、制御装置30の制御下で通電状態を切り替えるスイッチ534とを備える。ここで、通電触媒担体52は、例えば粉末状の触媒を担持するための担体であり、例えばペレット状、或いはハニカム状のように排気ガスがその内部を通過可能に構成されている。なお、図2において太い矢印に示されるように、左から右に向かって排気ガスが流れる。加えて、通電触媒担体52は、例えば炭化ケイ素SiCのようにNTC特性を有する導体あるいは半導体であり、通電時にはジュール熱によって昇温すると、それに伴い自己の抵抗値が減少する特性を有する。
【0032】
比較例に係る通電加熱式触媒装置50において、図2に示すように、通電触媒担体52は一つである、言い換えれば、通電触媒担体52を区画する絶縁体がない。ここで仮に、通電触媒担体52全体を活性温度にまで加熱するために、排気ガスの入口側に正電極532を、出口側に負電極533を設置する。そうすると、図2において破線矢印で示されるように、通電時に電源531から供給される電流は、排気ガスの入口側から出口側に向かって流れる(ただし、電流の向きは逆向きであっても構わない)。
【0033】
この際、図3に示すように、通電触媒担体52の外周部は外殻51のように発熱していない部材と接するので、放熱してしまう。そうすると、通電触媒担体52の中央部の温度は、外周部の温度に比べて高くなる。そうすると、NTC特性を有する通電触媒担体52の中央部の抵抗値は、外周部の抵抗値に比べて低くなる。そうすると、電流は通電触媒担体52の外周部よりも中央部を通る。そうすると、電流は通電触媒担体52の中央部は、一層加熱されることとなり、温度分布の不均一さが助長されてしまうおそれがある。そして、結果的に、通電触媒担体52の外周部は活性化されず、外周部を通過する排気ガスを十分に浄化することができないおそれがある。なお、図3において、通電触媒担体52の濃淡は、温度分布の不均一さを模式的に示し、丸印の中にX印が含まれた記号は、手前から奥に向かって(つまり、排気ガスの入口側から出口側に向かって)電流が流れることを示す。因みに、後述の図5において、丸印の中に点が含まれた記号は、奥から手前に向かって(つまり、排気ガスの出口側から入口側に向かって)電流が流れることを示す。
【0034】
これに対して、第1実施形態に係る通電加熱式触媒装置50は、図4に示すように構成されている。ここで、図4は、第1実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を側面から見た場合の模式的な断面図である。
【0035】
図4に示すように、第1実施形態に係る通電加熱式触媒装置50は、比較例と異なり、複数の通電触媒担体52と、これらを区画する絶縁材54と、これらのうち少なくとも一部を電気的に直列に接続する導電材55とを備える。通電触媒担体52全体を活性温度にまで加熱するために、排気ガスの出口上端に正電極532を、出口下端に負電極533を設置する。そうすると、図4において破線矢印で示されるように、通電時に電源531から供給される電流は、直列に接続された複数の通電触媒担体52を、排気ガスが流れる方向に沿って往復しながら上から下へ隈なく流れる(ただし、電流の向きは逆向きであっても構わない)。
【0036】
この構成を別の視点から見た変形例を、図5を参照して説明する。ここで、図5は、第1実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を図4の位置Lにおいて排気ガスの入口側の正面から見た場合の模式的な断面図である。
【0037】
図5において、通電加熱式触媒装置50は、16個の通電触媒担体52から構成されており、これらは絶縁材54によって区画されている。16個の通電触媒担体52のうち少なくとも2つは電気的に直列に接続される。図5においては、16個全ての通電触媒担体52がNo.01からNo.16の順に直列に接続されている。具体的には、No.01の通電触媒担体52の一端(例えば、排気ガスの入口側)には正電極532が、No.16の通電触媒担体52の一端には負電極533が、夫々設置されている。そして、No.01の通電触媒担体52の他端(例えば、排気ガスの出口側)はNo.02の通電触媒担体52の他端と導電材55によって電気的に接続されている。No.02の通電触媒担体52の一端は、No.03の通電触媒担体52の一端と導電材55によって電気的に接続されている。同様の構成が、No.16の通電触媒担体52まで続く。それゆえ、通電時に電源531から供給される電流は、正電極532から流入し、各通電触媒担体52を、No.01からNo.16の順に、排気ガスが流れる方向に沿って往復しながら流れ、最終的に負電極533へと到る。この際、複数の通電触媒担体52を直列に接続してあるので、中央部に位置する通電触媒担体52(例えば、No.06、07、10、及び11の通電触媒担体52の各々)と、外周部に位置する通電触媒担体52(例えば、No.01、02、03、04、05、08、09、12、13、14、15、及び16の通電触媒担体52の各々)とを夫々通過する電流とは夫々等しい。
【0038】
そして、図4および図5に示す構成によると、以下に詳述するように、仮に中央部に位置する通電触媒担体52の温度が、外周部に比べて高くなったとしても、温度分布の不均一さが緩和され、もって通電触媒担体52を均一に活性化することができる。
【0039】
先ず、上記目的を達成するにあたり、重要なことは、区画された複数の通電触媒担体52間での温度差を極力なくすことである。通電加熱式触媒装置50において、通電触媒担体52の温度を決定する大きな要因は、ジュール熱である。通電触媒担体52で発生するジュール熱(すなわち、消費される電気エネルギー)は、通電触媒担体52を流れる電流の2乗と抵抗値との積に比例する。
【0040】
ここで仮に、中央部に位置する通電触媒担体52の温度が、外周部に比べて高くなったとする。この場合でも、通電触媒担体52の各々を流れる電流は、上記した直列接続のおかげで差がない。通電触媒担体52の各々の抵抗値は、上記したNTC特性のおかげで、中央部に位置する通電触媒担体52の方が外周部に比べて低くなる。そうすると、中央部に位置する通電触媒担体52で発生するジュール熱は、外周部に比べて低くなる。すなわち、本構成によれば、通電触媒担体52間での当初の温度差が解消する方向に作用する。
【0041】
したがって、本実施形態に係る通電加熱式触媒装置50によると、NTC特性を有する触媒を用いても、通電触媒担体52間の温度分布を略均一に保つことが可能となり、もって通電加熱式触媒装置50を好適に活性化することができる。
【0042】
なお、図5では、区画数を16としたが、2以上であれば大なり小なりその恩恵を受ける。通電加熱式触媒装置50の断面積は必ずしも四角形である必要はなく、例えば、三角形や楕円形でもよい。
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態に係る通電加熱式触媒装置50の構成について、図6を用いて説明する。ここで、図6は、第2実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を図4の位置Lにおいて正面から見た場合の模式的な断面図である。なお、通電加熱式触媒装置50以外の内燃機関40の構成は図1に示す第1実施形態と同様でよく、同一の構成については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。
【0043】
図6に示すように、第2実施形態に係る通電加熱式触媒装置50は、複数の通電触媒担体52のうち、外周部に比べて温度が上昇しやすい中央部について配慮がなされている。具体的には、中央部に位置する4個の通電触媒担体52(すなわち、図6におけるNo.06の通電触媒担体52)を、十字型の導電材56によって、排気ガスの入口側から出口側まで電気的に接続している。言い換えれば、中央部に位置する4個の通電触媒担体52は電気的に並列としている。そして、図6におけるNo.06の通電触媒担体52と、電気的に一体となった4個のNo.06の通電触媒担体52と、No.07の通電触媒担体52とが直列に接続されている。この構成によれば、No.06の通電触媒担体52、電気的に一体となった4個のNo.06の通電触媒担体52、No.07の通電触媒担体52の各々に流れる電流は等しい。一方で、電気的に一体となった4個のNo.06の通電触媒担体52の断面積は、No.06あるいはNo.07の通電触媒担体52のそれよりも広い。そうすると、電気的に一体となった4個のNo.06の通電触媒担体52の電流密度は、No.06あるいはNo.07の通電触媒担体52のそれよりも小さい。したがって、複数の通電触媒担体52のうち、外周部に比べて温度が上昇しやすい中央部(つまり、電気的に一体となった4個のNo.06の通電触媒担体52)で単位断面積あたりに発生するジュール熱が、外周部に比べて抑制される。
【0044】
以上見てきたように、本実施形態に係る通電加熱式触媒装置50によれば、外周部に比べて温度が上昇しやすい中央部の電流密度を低下させて、外周部と中央部との温度上昇のバランスを向上させることができる。
(3)第3実施形態
次に、第3実施形態に係る通電加熱式触媒装置50の構成について、図7を用いて説明する。ここで、図7は、第3実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を図4の位置Lにおいて正面から見た場合の模式的な断面図である。なお、通電加熱式触媒装置50以外の内燃機関40の構成は図1に示す第1実施形態と同様でよく、同一の構成については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。
【0045】
図7に示すように、第3実施形態に係る通電加熱式触媒装置50でも、第2実施形態と同様に、複数の通電触媒担体52のうち、外周部に比べて温度が上昇しやすい中央部について配慮がなされている。ただし、第2実施形態では、中央部に位置する4個の通電触媒担体52を十字型の導電材56によって電気的に一体化したのに対し、本実施形態では当初から、中央部に位置する通電触媒担体52を外周部に比べて断面積が広いもの一つにしている点で異なる。しかし、この構成でも、第2実施形態と同様に、外周部に比べて温度が上昇しやすい中央部の電流密度を低下させるので、外周部と中央部との温度上昇のバランスを向上させることができる。
(4)第4実施形態
次に、第4実施形態に係る通電加熱式触媒装置50の構成について、図8を用いて説明する。ここで、図8は、第4実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を図4の位置Lにおいて正面から見た場合の模式的な断面図である。なお、通電加熱式触媒装置50以外の内燃機関40の構成は図1に示す第1実施形態と同様でよく、同一の構成については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。
【0046】
図8に示すように、第4実施形態に係る通電加熱式触媒装置50でも、第2実施形態と同様に、複数の通電触媒担体52のうち、外周部に比べて温度が上昇しやすい中央部について配慮がなされている。ただし、第2実施形態では、中央部に位置する4個の通電触媒担体52を十字型の導電材56によって電気的に一体化したのに対し、本実施形態では、中央部に位置する4個の通電触媒担体57の物性を外周部に位置する通電触媒担体52に比べて温度上昇し難いものにしている点で異なる。具体的には、中央部に位置する4個の通電触媒担体57の抵抗値を、外周部に位置する通電触媒担体52のそれよりも小さくする。これは、中央部に位置する4個の通電触媒担体57のセル数を、外周部に位置する通電触媒担体52のそれよりも多くすることによって、あるいは、中央部に位置する4個の通電触媒担体57の気孔率を、外周部に位置する通電触媒担体52のそれよりも小さくすることによって実現される。この構成によれば、第2実施形態と同様に、外周部に比べて温度が上昇しやすい中央部の抵抗値を低下させるので、外周部と中央部との温度上昇のバランスを向上させることができる。
【0047】
なお、上記各実施形態において、通電加熱式触媒装置50は本発明に係る「通電加熱式触媒装置」の一例であり、正電極532は本発明に係る「正電極」の一例であり、負電極533は本発明に係る「負電極」の一例であり、通電触媒担体52及び通電触媒担体57は本発明に係る「触媒担体」の一例であり、絶縁材54及び導電材55,56は本発明に係る「区画手段」の一例である。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う通電加熱式触媒装置も又、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態に係る内燃機関40を示す模式的な断面図である。
【図2】比較例に係る通電加熱式触媒装置50を側面から見た場合の模式的な断面図である。
【図3】比較例に係る通電加熱式触媒装置50を図2の位置Lにおいて排気ガスの入口側の正面から見た場合の模式的な断面図である。
【図4】第1実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を側面から見た場合の模式的な断面図である。
【図5】第1実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を図4の位置Lにおいて排気ガスの入口側の正面から見た場合の模式的な断面図である。
【図6】第2実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を図4の位置Lにおいて正面から見た場合の模式的な断面図である。
【図7】第3実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を図4の位置Lにおいて正面から見た場合の模式的な断面図である。
【図8】第4実施形態に係る通電加熱式触媒装置50を図4の位置Lにおいて正面から見た場合の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0050】
30…制御装置、40…内燃機関、202…点火プラグ、223…燃料タンク、311…給油口、224…燃料センサ、206…吸気管、208…吸気弁、209…排気弁、210…排気管、221…空燃比センサ、50…通電加熱式触媒、532…正電極、533…負電極、52…通電触媒担体、54…絶縁材、55…導電材、56…導電材、57…通電触媒担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの浄化用触媒をジュール熱によって加熱する通電加熱式触媒装置であって、
当該通電加熱式触媒装置の所定位置に設置された正電極及び負電極と、
前記正電極及び前記負電極を電気的に接続するとともに、温度が上昇すると抵抗値が連続的に減少するNTC特性を有する触媒担体と、
前記触媒担体を絶縁部材により区画し、該区画された電流経路の少なくとも一部を導電部材により直列に接続することで、該絶縁部材により区画されていない場合に比べて前記触媒担体を流れる電流の電流経路を長くする区画手段と
を備えることを特徴とする通電加熱式触媒装置。
【請求項2】
前記触媒担体は、当該通電加熱式触媒装置における排気ガスの通路でもあり、
前記区画手段は、該排気ガスの通路の断面が前記絶縁部材により複数に区画され、かつ、前記絶縁部材が前記排気ガスの通路に沿って延在するように、前記触媒担体を区画する
ことを特徴とする請求項1に記載の通電加熱式触媒装置。
【請求項3】
前記区画手段は、前記排気ガスの通路の断面において中央寄りに位置する区画の断面積の方が外周寄りのそれと比べて大きくなるように、前記触媒担体を区画する
ことを特徴とする請求項2に記載の通電加熱式触媒装置。
【請求項4】
前記区画手段は、前記排気ガスの通路の断面において中央寄りに位置する少なくとも2つの区画は並列に接続するように、前記触媒担体を区画する
ことを特徴とする請求項2に記載の通電加熱式触媒装置。
【請求項5】
前記触媒担体は、前記排気ガスの通路の断面において中央寄りに位置する区画の抵抗値の方が外周寄りのそれと比べて小さくなるように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の通電加熱式触媒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−82873(P2009−82873A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258734(P2007−258734)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】