説明

速溶性フィルム状製剤

【課題】口の中で速やかに溶解する薄いフィルム状の製剤を提供する。
【解決手段】薬物および可食性高分子物質を含有し、そのフィルムの破断強度が200〜3000g/φ7mm、フィルムの引張強度が200〜3000g/15mmであり、かつ水崩壊時間Y[秒]が300秒以内であって(Y≦300)、フィルムの比表面積の逆数[mg/mm]をXとした場合(X≧0)、水崩壊時間Y[秒]≧7500Xの関係にある速溶性フィルム状製剤であり、可食性高分子物質がヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、薬物の配合比率は製剤全体に対して0.01〜40重量%、可食性高分子物質は製剤全体に対して60〜99.99重量%であって、薬物を含有する層1層からなる速溶性フィルム状製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病気の治療や診断に有用な薬物を含み、水なしで服用可能な口腔内溶解型のフィルム状製剤に関する。更に詳しくは、本発明製剤は薬物及び可食性高分子物質を含有し、口腔内に投与されると口腔内水分により速やかに(おおよそ60秒以内)溶解する口腔内溶解型のフィルム状製剤である。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔内投与される剤型としては、錠剤、チューワブル錠、舌下錠、カプセル剤、丸薬、トローチ錠、水薬、口腔内粘膜貼付型製剤を含めて口腔内溶解型製剤などがあり、このうち錠剤が最も広く利用されているが、カプセル剤、水薬なども広く利用されている。
そして、口腔内溶解型の製剤については、以下のようなものが一般的に知られている。(1)賦形剤、可塑剤及び結合剤を配合してなるシート状可食性成形物からなるものであり、賦形剤、可塑剤、結合剤の食品素材及び/又は薬物とを混合し、この混合物をスクリュー押出機より押し出して得られるものであり、その押し出し厚みが0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3mmである製剤(例えば特許文献1参照)。(2)20〜60重量%のフィルム形成剤と、2〜40重量%のゲル形成剤と、0.1〜35重量%の活性物質と、更に40重量%未満の不活性充填剤とを有する物質をキャリア上に施すか、またはサポートなしの経口投与または取り入れを行う医薬、菓子、その他の食料、化粧料等のシート状の個々に投与される投与形成物からなり、物質の層の厚みは0.003〜4mm、好ましくは20〜400μm、特に70〜150μmであり、製法としては、スプレッドあるいは押し出したもので、そして10分以内に口中で完全に分解するものである製剤(例えば特許文献2参照)。(3)作用物質及び/又は分離剤を溶かしないしは懸濁させ、フォイル形成剤及び場合により充填剤を混入し、場合により均質化し、同溶液ないしは懸濁液をフォイル形成機上にフォイル状に塗布し、塗布物の乾燥により得られるフォイルを任意の小片(単位)に分割することにより得られるフォイル形状の薬剤であって、乾燥フォイルの厚さは約0.1〜2mm、有利には0.07〜0.3mmである製剤(例えば特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−179045号公報(第2頁左欄及び第3頁右欄〔0016〕の項)
【特許文献2】特開平7−100186号公報(第2頁及び第4頁右欄〔0035〕の項)
【特許文献3】特開昭51−29218号公報(第1頁及び第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の口腔内溶解型製剤である特許文献1(特開平10−179045号)のものは押し出し成型のものであるので、その実施例にあるように単軸スクリュー押出し機により製造され、フィルム厚は1mm或いは2mmであって厚いものとなり、溶解には時間がかかり、口腔内で60秒以内に溶解されるのは無理であると考えられる。そして、この厚さでは製剤として異物感が出て来る。
この製剤はスクリュー押出し機で製造するものであるが、スクリュー押出し機で製造した製剤は、必ずブロッキング防止剤(この引用例では澱粉)を必要としている(ブロッキング防止剤を使用しないと、製品同志が付着してしまう)。これは、少量の水で容易に製剤を溶解させるために用いられる高分子の特性に起因するもと考えられるが、工程数を増やしコスト高が懸念される。また、特に医薬品やその他診断薬を含有した製剤の場合その視覚的価値は重要であるが、ブロッキング剤によってそれを低下させる可能性がある。
又、ここで、スクリュー押出し機で製造した製剤は、比較的低温(20℃)で12時間エージングを行っている。この製造法の場合、乾燥工程を必要としないため熱安定性の低い素材の使用が可能となると言う利点はあるが、12時間と非常に長い時間がかかるので製造効率も悪い。
前記特許文献2(特開平7−100186号)のものは各種方法によって製造され、その厚さは0.003〜4mmである。因みに実施例において医薬品はプランジャー型押出し機により製造されているが、押出し法の場合はどうしてもその厚みが大きくなる傾向があり、溶解に10分間かかるとあるようにその溶解時間が長い欠点がある。この溶解時間が長すぎると異物感が持続し好ましくない。
この特許文献2にフィルム形成剤として列挙されているものは、通常、賦形剤、可塑剤、崩壊剤、溶解補助剤等として使用されるものであって、フィルム形成能を有しているものとは言い難いものである。どちらかというと、特許文献2でゲル形成剤として用いられているものの中にフィルム形成能を有している高分子が見うけられる。しかし、そのゲル形成剤の配合量が少ないために(殊に実施例2参照)、このゲル形成剤はフィルム形成能を発揮することはないと考えられる。
例えば、この特許文献2の実施例2でフィルム形成剤として使用されているポリエチレングリコールは、室温にて固体状であり、この室温での凝固性によって1mmの厚さのシート状形成物を形成している。このシート状形成物は、口腔内温度である程度の溶解性を期待できるものの、室温での凝固性を利用したものなので、その強度はそれほど期待出来ない。事実、この特許文献2の記述では、製造上である程度の強度を必要とするとしており(段落番号〔0017〕)、製剤の厚さは、いやが上でも厚くなる。この厚さのために、その溶解時間がより長くなると考えられる。しかも、実施例2の如く、薬物含有量が3.75重量%と低いために含有できる薬物の種類に制限があり、利用性に欠ける。
更に、特許文献3(特開昭51−29218号)のものは、箔を形成するとしているフォイル形成剤が溶液又は懸濁液中に6〜20%であり、その割合が少ない。そして、この特許文献3にはフィルム強度についての記載はなく、このように少ない割合のフォイル形成剤では形成されたフィルムの破断強度や引張強度は小さく、製品が脆く取り扱いにくいものとなる。そしてその上、「速溶性」があるものでもない。
以上のように、従来の口腔内溶解型製剤は、厚すぎたり、異物感があったり、強度が小さく脆い、薬物含有量が低い等の不都合があった。 このようなことから、薄いフィルム状のもので口の中で簡単に溶解する利用性の高い製剤の出現が望まれていた。即ち、口腔内の水分で容易に溶解し、薬物が速やかに消化管吸収や口腔粘膜吸収が行われると共に、所要により薬物含有量を大きくできる口腔内溶解型フィルム状製剤の出現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、即ち口腔内水分で容易に溶解するフィルム状製剤を提供すべく、鋭意検討した。
即ち、速溶性フィルム状製剤に求められる製剤特性として以下の点、
(1)速く溶けること、即ちおおよそ60秒以内で口内で溶解可能であること、
(2)使用し易い剤形であること、即ち、服用時製剤が破損しない強度を保持していること、強度が強すぎて口腔内で違和感が生じないものであること、製剤が薄すぎることでハンドリングが不都合なものでないこと、および服用しやすい製剤サイズであること、
(3)適用される薬剤の許容性が広いこと、即ち、薬物含有量の限界値が高いもの、薬物の物理化学的性質に製剤が対応できるものであること、
が必要であるとの知見を得た。
そして、(1)を可能にするためには、製剤の厚さを薄くすればよいが、薄くすることで(3)の薬物含有量の限界値が数ミリグラムと少なくなり、また薄いことでも影響が出、(2)も満たされなくなる可能性がある。
(2)を可能にするためには、ある程度の強度が要求されるので、強度を保持させるために通常は高分子物質の配合比率を高く設定したり、重合度の比較的高い高分子物質を用いるが、結果として(1)及び/または(3)が満たされない可能性がある。そして、高分子が多くなると溶けにくくなると共に、口腔内で違和感が生じてしまう。
そして、(1)〜(3)の中でも(3)の含有させる薬物の限界値を高く設定出来ることが、フィルム状製剤を普及させる上で重要である。これを満たすためには、薬剤の配合比率を高く設定したり、製剤サイズを大きくすればよいが、薬剤配合比率を高く設定することで強度が保てなくなったり、また製剤サイズが大きすぎると服用に不都合が生じ、(2)が満たされない可能性がある。さらに製剤の厚さを厚くすることも考えられるが、その結果として(1)が満たされなくなる。
【0006】
以上の点を考慮し検討を進めた結果、フィルムの破断強度が200〜3,000g/φ7mm(後述のFUDOHレオメーターにより測定)、フィルムの引張強度が200〜3,000g/15mm(後述のFUDOHレオメーターにより測定)であるものが好適であることを見出した。
また製剤が薄すぎることでハンドリングが不都合でないものということを考慮すると、フィルムは30μm以上の厚さが必要であり、また服用し易い製剤サイズであることを考慮すると300μm以下の厚さが好適であることも見出した。
そして、上記のフィルムの破断強度が200〜3,000g/φ7mm、フィルムの引張強度が200〜3,000g/15mmのフィルム状製剤、及びこの範囲を越えているものを後述の実施例及び比較例のようにして作成し、その口腔内溶解時間[秒]をYとし、フィルムの比表面積[mm2/mg]の逆数[mg/mm2]をXとしプロットしてみたところ、驚くべきことに、図1のフィルム製剤の口腔内溶解時間とフィルムの比表面積の逆数との関係を示すグラフが得られた。即ち、フィルムの破断強度が200〜3,000g/φ7mm、フィルムの引張強度が200〜3,000g/15mmのフィルム状製剤はその口腔内溶解時間が全て60秒以内であり、本願で求めている速溶性フィルム状製剤が得られているものであった。
本発明者らは上記の条件について更に検討を重ねた結果、上記のフィルム製剤の口腔内溶解時間に代えて水崩壊時間(水崩壊性試験については後述の通り)をYとしフィルムの比表面積[mm2/mg]の逆数[mg/mm2]をXとしてプロットしてみたところ、図2のフィルム製剤の水崩壊時間とフィルムの比表面積の逆数との関係を示すグラフが得られ、図1における口腔内溶解時間60秒以内が図2の水崩壊時間300秒以内に相当することも見出した。
本発明はこの水崩壊時間(Y)がフィルムの比表面積[mm2/mg]の逆数(X)と相関しているという、これまでに全く知られていない新規な知見に基いて達成されたものであり、以下の点をその要旨とするものである。
【0007】
即ち、本発明は(1)薬物および可食性高分子物質を含有し、そのフィルムの破断強度が200〜3000g/φ7mm、フィルムの引張強度が200〜3000g/15mmであり、かつ口腔内において60秒以内で溶ける速溶性フィルム状製剤;(2)薬物および可食性高分子物質を含有し、そのフィルムの破断強度が200〜3000g/φ7mm、フィルムの引張強度が200〜3000g/15mmであり、かつ水崩壊時間Y[秒]が300秒以内であって(Y≦300)、フィルムの比表面積の逆数[mg/mm]をXとした場合(X≧0)、水崩壊時間Y[秒]≧7500Xの関係にある速溶性フィルム状製剤;(3)薬物は、一回の投与量が0.001mg〜50mgの量であるように含有し、水−エタノール系溶媒に可溶もしくは分散可能なものである(1)又は(2)記載の速溶性フィルム状製剤;(4)可食性高分子物質がヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースである(1)、(2)又は(3)記載の速溶性フィルム状製剤;(5)薬物の配合比率は製剤全体に対して0.01〜40重量%、可食性高分子物質の配合比率は製剤全体に対して40〜99.99重量%である(1)、(2)、(3)又は(4)記載の速溶性フィルム状製剤;(6)フィルム状製剤が薬物含有層単層からなる(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の速溶性フィルム状製剤;(7)薬物含有層の片面或いは両面に、可食性高分子物質を含有する支持層を有する(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の速溶性フィルム状製剤;(8)支持層の可食性高分子物質はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、その配合比率が50重量%以上であり、薬物含有層の可食性高分子物質はヒドロキシプロピルセルロースであり、その配合比率が40〜99.99重量%である、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)又は(7)記載の速溶性フィルム状製剤;(9)更に糖質を含有する(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)記載の速溶性フィルム状製剤;(10)薬物と糖質の総和が、製剤全体に対して25〜40重量%である(9)記載の速溶性フィルム製剤;(11)水崩壊時間Y[秒]が60000X≧Y≧7500Xの関係にある(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は(10)記載の速溶性フィルム製剤;に関するものである。
【0008】
上記(2)において、「水崩壊時間Y[秒]が300秒以内」の意義は先に述べたように「口腔内において60秒以内で溶ける」と同意であり、人種、個人差をなくし客観性を保つことができる。また、水崩壊時間Y[秒]<7500X(図3のフィルム製剤の水崩壊時間とフィルムの比表面積の逆数との関係を示すグラフにおける(B)の領域)では、フィルム製剤の溶解は速いけれども、目的とする強度が保てないものである。本発明のフィルム製剤においては、その厚さが30μm以上、300μm以下が好適である。
破断強度が200g/φ7mmより低いと製品が脆くなり取り扱いずらくなったりして好ましくない。又3,000g/φ7mm以上になると口に含んだ場合、違和感があり好ましくない。
引張強度が200g/15mmより低いと製品が脆くなり取り扱いずらくなったりして好ましくない。又3,000g/15mm以上になると口に含んだ場合、違和感があり好ましくない。
そして、破断強度が3,000g/φ7mmより大、引張強度が3,000g/15mmより大になると、溶解時間が長くなる恐れがあり、好ましくない。
上記(3)において、本発明の一つのフィルム製剤においては、必要により50mgという多量な薬物を含有できる。例えば、50mgの薬剤を含有した本発明のフィルム製剤の最小総重量や寸法を示すと、総重量では125mgで最小寸法が28mm×20mm×190μmとなる。
上記(7)において、フィルム状製剤を一層で形成するのでなく、薬物含有層の片面或いは両面に、可食性高分子物質を含有する支持層を設けてもよい。一層で薬物の配合比率を高く(例えば、25〜40重量%)設定すると、強度が所要の強度にならない場合があるが、薬物含有層の片面或いは両面に、可食性高分子物質を含有する支持層を設けると、速溶性フィルム状製剤に求められる製剤特性すべてを満たすことが可能となると共に、製剤同士のブロッキング性(付着性)を回避することが可能となり、さらには製剤の視覚的価値を飛躍的に向上させることが可能となるため、単に製剤強度を増すだけのメリットだけでなく、相乗的作用が期待できる。
上記(8)において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、易水溶性の可食性高分子物質であり、外気の湿度の影響を受け難く、フィルム製剤にした場合光沢があり、かつ酸化チタンや着色料を入れても比較的強度が落ち難く、支持層に好適である。
一方、ヒドロキシプロピルセルロースは、水から100%エタノールの全範囲において可溶性であり、薬物に対して水から100%エタノールの広い範囲から可溶範囲を選択できるという長所がある。
また好ましい態様として、支持層には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース50重量%以上、糖質10〜30%及び可塑剤5〜20%、並びに酸化チタン15重量%以下又は着色料5.0%以下を配合、薬物層にはヒドロキシプロピルセルロース40〜99.99重量%および薬物を必須配合とし、必要により糖質又は/および可塑剤を配合する。
上記(9)において、糖質は、薬物と混合させてもむろんよい。これにより、水溶性や水崩壊性が向上する。特に、糖質は薬物の性状に影響を及ぼさない点でも水溶性と水崩壊性とを向上するものとして好適である。薬物層と支持層に分ける場合は、支持層だけに含有させたり、支持層に多く含有させることが好ましい。
上記(11)において、水崩壊時間Y[秒]が60000X≧Y≧7500Xの関係にあるものは、図3のグラフにおける(A)の領域がそれに当たる。60000X≧水崩壊時間Y[秒]の意義は、薬物を比較的多く含有出来る領域を示し、60000X<Yの範囲(図3のグラフにおける(C)の領域)であると薬物を極めて少なくしか含有できない状態を示すものである。
【0009】
本発明のフィルム状製剤においては、その破断強度及び引張強度が上記の範囲内であれば、その厚さについては特に限定されないが、製品の取り扱い易さや、服用時の違和感など、更には溶解時間をも考慮すると30〜300μmが好ましい。
本発明のフィルム状製剤は口腔内において大略60秒以内で溶解し、違和感も少なく服用しやすく有利である。また、このように短時間で溶解することで、薬物は消化管吸収や口腔粘膜吸収が速やかに行われるものである。
本発明フィルム製剤が口腔内で速やかに(大略60秒以内)溶解し、薬物の物理化学的性質により消化管吸収や口腔粘膜吸収が行われ、薬物の作用が速やかに発現される。特に、唾液量の少ない高齢者にとっても、水の飲用なしに服用しても口腔内で容易に溶解する。
したがって、本発明フィルム製剤は、錠剤やカプセル剤といった従来の経口製剤と同等の薬理効果を期待でき、且つ水無しで容易に服用できることから高齢者や小児にも安全に投与できるという利点を持つ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の速溶性フィルム製剤は、水の飲用なしに服用しても口腔内で容易に溶解するため、老人や小児にも安全に投与できる。又仰臥位(仰向け位置)での服用も容易であるので、寝たきりの老人などでも安心して投与できる。更に、本製剤は薄いフィルム状なので携帯するにも有利である。更に本発明の速溶性フィルム製剤は、薬物と糖質の総和が製剤全体に対して25〜40重量%とかなり多量の薬物を含有することができ、有効投与量が大きな薬物に対しても有効に用いることができる。
本発明の速溶性フィルム製剤は塗布により製造されるものであり、従来の押し出し成型のもののように滑沢剤の添加や、シート状形成物の表面にブロッキング防止の為に、粉糖、澱粉などをふりかけたり、糖衣などの表面コートを行う必要もなく、室温20℃、湿度50%での12時間エージングなどの必要がないため、それら滑沢剤が製剤に及ぼす影響を懸念する必要が無く、その製造操作が極めて簡単であり、またコスト面でも有利である。
また、本発明の塗布によるもの、特に製剤の両面に支持層を有するものは、ブロッキング性を充分に回避でき、さらには製剤の視覚的価値を飛躍的に向上させることが出来る。
本発明の塗布によるものは、乾燥工程を必要とするがその乾燥時間は代表的なもので60℃,5分であり、この場合だと熱安定性の低い素材の使用も可能であり、12時間と非常に長いエージング行程を行わずして製剤を得ることが可能である。
本発明フィルム状製剤は、フィルム形成剤として可食性高分子物質(HPCやHPMC等)を使用しているが、これら可食性高分子物質は、フィルム形成能を充分に有しており、さらに本発明フィルム状製剤は適度の強度を有しているため、特段に製剤を厚くする必要もなく速やかに(おおよそ60秒)口腔内で溶解することが出来る。そして、本発明フィルム状製剤の破断強度は200〜3000g/φ7mm、フィルムの引張強度は200〜3000g/15mmであるが、この範囲内では製品は脆くなく、口に含んだ場合、違和感がなく、使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の速溶性フィルム製剤の口腔内溶解時間とフィルムの比表面積[mm2/mg]の逆数との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の速溶性フィルム製剤の水崩壊時間とフィルムの比表面積[mm2/mg]の逆数との関係を示すグラフである。
【図3】フィルム製剤の水崩壊時間とフィルムの比表面積[mm2/mg]の逆数との関係を示すグラフにおいて、本発明の速溶性フィルム製剤が満たすべき領域を示すグラフである。
【図4】本発明で使用する破断強度測定装置の斜視模式図である。
【図5】破断強度測定装置における破断応力用アダプターの一部の形状及び大きさを示す斜視模式図である。
【図6】破断強度測定装置における破断応力用アダプターの試験片固定用下部プレート及び該プレートに載置されるリング及び試験片の断面形状及び大きさを示すx−x断面図である。
【図7】本発明で使用する引張強度測定装置の引張強度測定用アダプターの斜視模式図である。
【図8】上部アダプターが取付られている引張強度測定装置の検出部の斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明のフィルム製剤は、薬物を含有する薬物層一層でもよく、又薬物層の片面或いは両面に支持層を設けた二層或いは三層であってもよい。本発明の薬物層は、薬物と可食性高分子物質及び所望により糖類と可塑剤などを含有する。又支持層は可食性高分子物質と所望により糖類と可塑剤などを含有する。薬物層単層でも、薬物層と支持層の二層或いは三層であっても、厚さを30〜300μmに調整し、その物の破断強度が200〜3,000g/φ7mm、引張強度が200〜3,000g/15mmであれば口腔内において大略60秒以内で溶解し、薬物は消化管の方に送られる。そして製剤も取り扱いやすく、服用時も違和感がなく有利である。
支持層の存否による違いは、支持層を設けた場合、口腔内での高い溶解性を保持しつつ一定の強度を保ち易いという効果が得られる。更に製剤のブロッキング性を回避でき、製剤の視覚的価値を向上させ得ることなどが挙げられる。
【0013】
本発明で用いられる可食性高分子物質としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース‐Na(CMC-Na)、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルギン酸-Naなどを挙げることが出来るが、HPCやHPMCが好適に用いられる。所望により用いられる糖類としては、マルトース、還元麦芽糖水飴、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、ショ糖、ソルビトールなどを挙げることが出来るが、マルトースやマルチトール、還元麦芽糖水飴が好適に用いられる。同様所望により用いられる可塑剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセリン、ソルビトールなどを挙げることが出来るがPEG‐400やPEG‐4000が好適に用いられる。又サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどの甘味料も所望により用いられる。更に種々の香料、酸化チタンなどの着色剤、各種色素等も勿論使用して差し支えない。
本発明で用いる薬物は、一回の投与量が0.001mg〜50mgのものが適しており、水‐エタノール系溶媒に可溶もしくは分散可能な薬物であれば特に制限はない。そして本発明の速溶性フィルム製剤は、本来水の飲用なしに服用出来ることが有利な点であるので、そのような場合でも消化器官などに悪影響を与えない薬物が望ましい。例えば以下のごとき薬物を挙げることが出来る。
アルプラゾラム、フルジアゼパム、ロラゼパムなどのマイナートランキライザー、酒石酸ゾルピデムなどの入眠剤、カベルコリン、塩酸メチキセンなどの抗パーキンソン剤、塩酸ドネペジルなどのアルツハイマー型痴呆治療剤、コルヒチンなどの痛風治療剤、塩酸クレンブテロール、硫酸サルブタモール、臭化水素酸フェノテロール、塩酸プロカテロールなどの気管支拡張剤、ラベプラゾールNa、ファモチジン、ラフチジンなどの消化性潰瘍治療剤、ボグリボースなどの糖尿病用剤、塩酸インデノロール、塩酸ブフェトロールなどの不整脈用剤、マレイン酸エナラプリル、塩酸キナプリル、シラザプリル、ニフェジピン、フェロジピン、塩酸ベニジピンなどの降圧剤、シンバスタチンなどの高脂血症用剤、塩酸チアミン、酢酸ヒドロキソコバラミンなどのビタミン剤、タクロリムス水和物などの免疫抑制剤・アトピー性皮膚治療剤、エチニルエストラジオール・メチルエストレノロンなどのホルモン剤、塩酸ロメリジンなどの片頭痛治療剤、酒石酸イフェンプロジルなどの鎮うん剤、クロペラスチン、塩酸クロフェダノールなどの鎮咳剤、塩酸ロペラミドなどの止瀉剤、ピコスルファートNaなどの下剤、塩酸アザセトロン、塩酸グラニセトロン、塩酸ラモセトロンなどの制吐剤、メキタジン、塩酸ホモクロルシクリジン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤、塩酸セチリジン、フマル酸エメダスチンなどの抗アレルギー剤、塩酸エチルモルヒネ、塩酸モルヒネなどのアヘンアルカロイド系鎮痛鎮咳剤などである。
本発明において、薬物の配合比率は製剤全体に対して0.01〜40重量%、可食性高分子物質は同じく40〜99.99重量%、糖類は同じく0〜60重量%、可塑剤は同じく0〜20重量%、その他着色剤は同じく0〜10重量%、香料は同じく0〜1.0重量%である。本発明のフィルム製剤において、支持層を設ける場合、支持層の厚さは5〜40μm前後が好適であり、薬物層の厚さは15〜290μmが好適である。そして全体の厚さとしては上記の如く30〜300μmが好適であり、更に好適な厚さは35〜160μm、より好ましくは35〜130μmである。薬物層だけの場合でも、薬物層と支持層とから成る場合でも厚さが300μmを超えると服用時違和感があり好ましくない。30μmより薄いと取り扱いにくくなり、又主薬の含有量も制限されてしまい好ましくない。
【0014】
本発明フィルム状製剤のフィルムの破断強度、フィルムの引張強度の測定及び水崩壊性試験、口腔内溶解試験については、次の方法により行った。
[試験方法]
1)[破断強度]
(1)破断強度測定装置はレオメータ(株式会社レオテック製、RT−3020D−CW型)を使用した。図4は本発明で使用する破断強度測定装置の斜視模式図であり、図5は該破断強度測定装置の破断応力用アダプターの一部の形状及び大きさを示す斜視模式図であり、図6は破断応力用アダプターの試験片固定用下部プレート及び該プレートに載置されるリング及び試験片の断面形状及び大きさを示すx−x断面図である。図中1は破断応力用アダプター、2は粘性用アダプター、3は試験片用固定下部プレート、4はリング、5は試験片、6は試験片固定用中間プレート、7は試験片固定用上部プレート、8,8’は止めネジ、9は基板、10,10’は支柱、11はアダプター固定用ネジ、12は試験台、13は試験台上下移動開口部、14は移動速度用等間隔目盛、21は棒状体、22は球状体である。図4〜図6に示すように、この装置は破断応力用アダプター1と試験片を破断する粘性用アダプター2とからなる。破断応力用アダプター1は、中央部に直径30mmの穴の貫通する横40mm、縦70mm、厚さ5mmのその両端部に固定手段を有する形状の試験片固定用下部プレート3、該下部プレート3の中央の穴上に嵌められる内径17mm、厚さ2mmのリング4、リング4の上の試験片5(30mm×30mm)(図5及び図6参照)、該試験片5上に設けられ中央に内径16mmの穴のあけられている試験片固定用中間プレート6(横40mm、縦70mm、厚さ3mmの軟質塩化ビニル板)及び該中間プレート6上に置かれる中央に内径30mmの穴が開けられている試験片固定用上部プレート7(横40mm、縦70mm、厚さ3mm)が順次載置されるものからなり(図4参照)、該固定用下部プレート3は、その中央には、外径35mm、内径17mmのリング4が嵌合するように、その表面より2mmの深さで、その径が35mmの大きさの凹部が貫通する直径30mmの上部に設けられている(図6参照)。これらプレート3、6及び7はその両端部は止めネジ8,8’で固定され、基板9上に支柱10,10’で支えられ、アダプター固定用ネジ11で該基板9と共に試験台12に固定されている(図4参照)。基板9は横40mm、縦80mm、厚さ2mmのステンレス製の板であり、基板9から試験片固定用下部プレート3の表面までの高さは57mmである(図5参照)。又、粘性用アダプター2は棒状体21の先端部にステンレス製の直径7mmの球状体22が取付けられたものからなる(図4参照)。
そして、試験台12は試験片の破断応力測定時には、図4に示す試験台上下移動用開口部13に沿って、一定の速度で移動し、試験片を粘性用アダプターの球体22により、押圧して破断させ、その破断応力を付属するレコーダー(図示せず)で、記録し、破断強度を求める。
(2)測定方法
試験台に固定された破断応力用アダプター1の試験片固定用下部プレート3上に嵌められているリング4上にフィルム製剤試験片5(30mm×30mm)をのせ、その上に中央に内径16mmの穴のあけられている試験片固定用中間プレート6(横40mm、縦70mm、厚さ3mmの軟質塩化ビニル板)で上から押さえ、さらにその上に中央に内径30mmの穴のあけられている金属製試験片固定用上部プレート7(横40mm、縦70mm、厚さ3mm)で該試験片5を押さえ、これらの重ねられたプレートの該上部プレート7の両端に設けられている止めネジ8,8’を締めて試験片5を固定した。次いで破断応力用アダプター1が固定されている試験台12を10cm/minの速度で試験台上下移動開口部13に沿って上昇させ、粘性用アダプター2の球状体22で該試験片5を破断した。その破断応力を付属するレコーダーで記録し、3回の平均値を求め、それを破断強度とした。結果は表7に示す。
2)[引張強度]
(1)引張強度測定装置はレオメータ(株式会社レオテック製、RT−3020D−CW型)を使用した。図7は本発明で使用する引張強度測定装置の引張強度測定用アダプターの斜視模式図であり、図8は上部アダプターが取付けられている引張強度測定装置の検出部の斜視模式図である。図中31は引張強度測定用アダプター、32は試験片固定用上部アダプター、33は試験片固定用下部アダプター、34は試験片、35は上部アダプター取付部、36は試験台、37は上部アダプター止めネジ、38は下部アダプター止めネジ、39は試験台上下移動開口部、40は移動速度用等間隔目盛、41は検出部、42は指針粗調整ツマミ、43は指針微調整ツマミである。
本発明で使用した引張強度測定装置の引張強度測定用アダプター31は、図7及び図8に示すように、試験片固定用上部アダプター32が上部アダプター取付部35を介して検出部41に取付けられ、下部に試験台36上に試験片固定用下部アダプター33が取付けられたものからなり、試験片34を上部及び下部アダプター間に一定の長さに固定し、試験台を下部に下降させて試験片を切断し、試験片の最大張力を測定する。試験片固定用上部アダプター32は上下に移動でき、試験片を所望の長さの位置で止めネジ37を締めて固定する。試験片固定用下部アダプター33は試験台を上下に移動でき、試験片を固定及び切断できるようにされており、試験片は試験片固定用上部アダプター32と同下部アダプター33との間の長さが7cmになるようにその位置を調整し止めネジ38で固定する。試験台36は試験台上下移動用開口部39に沿って上下に移動し、試験片の引張強度の測定にあたっては下方へ一定速度(6cm/min)で移動させる。移動用開口部39にはその移動速度用の等間隔目盛40が刻まれている。
図8に示すように試験片固定用上部アダプター取付部35は更に検出部41が設置されている。この検出部41は引張強度を検出するためのものであり、試験片が切断されたときの引張強度を検出記録し、測定値を算出する。検出部41には指針粗調整ツマミ42及び指針微調整ツマミ43が設けられており、これは引張強度測定時に最初の値を0に調整するためのものである。上、下のアダプター32、33の大きさは横30mm、縦30mm、高さ30mmのものである。
(2)測定方法
試験片固定用上部アダプター32に15×100mmに切断した試験片34を上から1.5cmの部分で固定し、次に試験台を上方向へ移動させて試験片固定用下部アダプター33に、上部アダプター32に固定されている試験片34の長さが7cmになるように調整して、該試験片の下部を固定する。次いで試験台36を6cm/minの速さで下降させ、試験片34を切断する。試験片34の切断に至るまでの最大引張力を付属するレコーダーで記録し、測定値を求めた。3回の試験測定の平均値を求めそれを引張強度とした。結果を表7に示した。
3)[水崩壊性試験]
フィルム製剤試験片の四隅に油性マジックで点をつける。予め25℃に加温した精製水400mlを試験液とし500ml用ビーカーに入れ、撹拌子を入れ100rpmで撹拌する。そして、25℃±1℃に保持した状態の試験液に、撹拌下で前記のフィルム製剤試験片を浮かべ、予め四隅に付けた油性マジックの点が分散するまでの時間を測定した。試験は5回行われ、結果は5回の平均値を求めた。結果は表7に示す。
4)本発明フィルム製剤の口腔内における溶解性は60秒以内である。溶解性は下記の如く測定した。
本発明フィルム製剤を健康な成人の口腔内に水なしで含ませ、フィルム製剤が口腔内の唾液のみで完全に崩壊分散するまでの時間を測定した。試験は2回行い、その平均値を算出した。
本発明のフィルム製剤については特に溶解性について規定があるわけではないが、薬効の発現とか違和感の問題等種々の条件を考慮すると、60秒以内というのが適切である。
【0015】
本発明の速溶性フィルム製剤は、以下のような方法によって製造される。
(1)薬物層のみ(1層)の場合
適量の溶媒(水−エタノール系溶媒)に薬物、可食性高分子物質、所望により糖類や可塑剤を、更に必要により甘味料や着色剤を加えて攪拌溶解し、ポリエステルなどの剥離フィルム上に展延し乾燥してフィルムを得、それを適切な大きさに打ち抜き製品とする。なお、薬物が溶媒に溶解でなく分散するようなものであるときは、薬物を先に溶媒中に分散してから可食性高分子物質を加えるとよい。
(2)薬物層とその片面に支持層積層(2層)の場合
適量の溶媒(水−エタノール系溶媒)に可食性高分子物質、所望により糖類や可塑剤を、更に必要により着色剤(例えば酸化チタン)などを加えて攪拌溶解或いは分散して、支持層溶液とする。別に適量の溶媒(水−エタノール系溶媒)に薬物、可食性高分子物質、所望により糖類や可塑剤、更には甘味料、香料などを加えて攪拌溶解して薬物層溶液とする。次に、支持層溶液をポリエステルなどの剥離フィルム上に展延乾燥して適切な厚さのフィルムとする。その上に薬物層溶液を、支持層を含めた厚さが所望の値になるように展延乾燥してフィルムとする。これを適切な大きさに打ち抜き製品とする。
(3)薬物層とその両面に支持層積層(3層)の場合
(2)と同様に支持層溶液と薬物層溶液を用意し、上記同様2層のフィルムを作る。支持層のない薬物層面に支持層溶液を展延乾燥して所望の厚さのフィルムとする。このフィルムを適切な大きさに打ち抜き製品とする。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
適量のエタノール/水混合溶媒にマレイン酸クロルフェニラミン30.0重量部、還元麦芽糖水飴10.0重量部及びHPMC 60.0重量部をこの順に加えて撹拌溶解し、脱気後ポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ74.2μmのフィルムを得た。得られたフィルムを一辺16mmの正方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例2】
【0017】
適量のエタノール/水混合溶媒に塩酸チアミン15.0重量部、ポリエチレングリコール15.0重量部及びHPMC 70.0重量部をこの順に加えて撹拌溶解し、脱気後ポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ61.8μmのフィルムを製造した。得られたフィルムを一辺16mmの正方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤を得た。
【実施例3】
【0018】
表1の処方で実施例2と同様にして速溶性フィルム製剤を得た。
【実施例4】
【0019】
表1の処方で実施例2と同様にして速溶性フィルム製剤を得た。
【実施例5】
【0020】
表1の処方で実施例2と同様にして速溶性フィルム製剤を得た。
【表1】

【実施例6】
【0021】
適量のエタノール/水混合溶媒に塩酸チアミン20.0重量部、還元麦芽糖水飴10.0重量部及びHPC 70.0重量部をこの順に加えて撹拌溶解し、脱気後ポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ80.8μmのフィルムを得た。得られたフィルムを一辺16mmの正方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例7】
【0022】
表2の処方で実施例6と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例8】
【0023】
表2の処方で実施例6と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例9】
【0024】
表2の処方で実施例6と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例10】
【0025】
表2の処方で実施例6と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【表2】

【実施例11】
【0026】
適量のエタノール/水混合溶媒に還元麦芽糖水飴20.0重量部を加えて撹拌溶解後、酸化チタン10.0重量部を加えて撹拌分散し、さらにHPMC 70.0重量部を加えて支持層溶液とする。別に適量のエタノール/水混合溶媒にマレイン酸クロルフェニラミン50.0重量部、及びHPC 50.0重量部を加えて撹拌溶解して薬物層溶液とする。次に、支持層溶液をポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ約15μmのフィルムとする。その上に薬物層溶液を展延乾燥して厚さ約45μmのフィルムとする。最後にその上に支持層溶液を展延乾燥して厚さ約15μmのフィルムとする。このように積層し全体として74.6μmのフィルムを得た。得られたフィルムを一辺16mmの正方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例12】
【0027】
表3の処方で実施例11と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例13】
【0028】
表3の処方で実施例11と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例14】
【0029】
表3の処方で実施例11と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【表3】

【実施例15】
【0030】
適量のエタノール/水混合溶媒に還元麦芽糖水飴10.0重量部及びPEG 5重量部を加えて撹拌溶解後、酸化チタン15.0重量部を加えて撹拌分散し、さらにHPMC 70.0重量部を加えて支持層溶液とする。別に適量のエタノール/水混合溶媒にマレイン酸クロルフェニラミン50.0重量部、及びHPC 50.0重量部を加えて撹拌溶解して薬物層溶液とする。次に、支持層溶液をポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ約16μmのフィルムとする。その上に薬物層溶液を展延乾燥して厚さ約50μmのフィルムとする。最後にその上に支持層溶液を展延乾燥して厚さ約16μmのフィルムとする。このように積層し全体として81.4μmのフィルムを得た。得られたフィルムを一辺16mmの正方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例16】
【0031】
表4の処方で実施例15と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例17】
【0032】
表4の処方で実施例15と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例18】
【0033】
表4の処方で実施例15と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例19】
【0034】
表4の処方で実施例15と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【表4】

【実施例20】
【0035】
適量のエタノール/水混合溶媒に還元麦芽糖水飴10.0重量部及びPEG 5.0重量部を加えて撹拌溶解後、酸化チタン15.0重量部とHPMC 70.0重量部とを加えて撹拌分散して支持層溶液とする。別に適量のエタノール/水混合溶媒にマレイン酸クロルフェニラミン50.0重量部、PEG 10.0重量部及びHPC 40.0重量部を加えて撹拌溶解して薬物層溶液とする。次に、支持層溶液をポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ約11μmのフィルムとする。その上に薬物層溶液を展延乾燥して厚さ約60μmのフィルムとする。最後にその上に支持層溶液を展延乾燥して厚さ約11μmのフィルムとする。このように積層し全体として82μmのフィルムを得た。得られたフィルムを一辺16mmの正方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例21】
【0036】
表5の処方で実施例20と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例22】
【0037】
表5の処方で実施例20と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【実施例23】
【0038】
表5の処方で実施例20と同様にして速溶性フィルム製剤とした。
【表5】

【実施例24】
【0039】
適量のエタノール/水混合溶媒にマレイン酸クロルフェニラミン5.0重量部、エリスリトール35.0重量部、サッカリンナトリウム 0.3重量部、l−メントール 0.3重量部及び香料 0.1重量部を加えて撹拌溶解し、さらにHPC 59.3重量部を加えて脱気後、ポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ34.2μmのフィルムを得た。得られたフィルムを一辺16mmの正方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例25】
【0040】
適量のエタノール/水混合溶媒にマルチトール10.0重量部及びPEG 5.0重量部を加えて撹拌溶解後、酸化チタン15.0重量部及びHPMC 70.0重量部を加えて撹拌分散して支持層溶液とする。別にエタノール/水混合適量の溶媒にマレイン酸クロルフェニラミン5.0重量部、マルトース35.0重量部、サッカリンナトリウム 0.3重量部、l−メントール 0.3重量部、香料 0.16重量部及びHPC 59.24重量部を加えて撹拌溶解して薬物層溶液とする。次に、支持層溶液をポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ約17μmのフィルムとする。その上に薬物層溶液を展延乾燥して厚さ約26μmのフィルムとする。このように積層し全体として43.2μmのフィルムを得た。得られたフィルムを一辺16mmの正方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例26】
【0041】
適量のエタノール/水混合溶媒に還元麦芽糖水飴10.0重量部、及びPEG 5.0重量部を加えて撹拌溶解後、酸化チタン15.0重量部及びHPMC 70.0重量部を加えて撹拌分散して支持層溶液とする。別にエタノール/水混合適量の溶媒にマレイン酸クロルフェニラミン5.0重量部、マルトース35.0重量部、サッカリンナトリウム 0.5重量部、l−メントール 0.3重量部、香料 0.16重量部及びHPC 59.04重量部を加えて撹拌溶解して薬物層溶液とする。次に、支持層溶液をポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ約18μmのフィルムとする。その上に薬物層溶液を展延乾燥して厚さ約50μmのフィルムとする。最後にその上に支持層溶液を展延乾燥して厚さ約18μmのフィルムとする。このように積層し全体として85.3μmのフィルムを得た。得られたフィルムを一辺16mmの正方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例27】
【0042】
実施例26と同じ処方で薬物層を表6の厚さになるように積層後、支持層を積層し、全体として各々の厚さのフィルムを得た。得られたフィルムを14×20mmの長方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例28】
【0043】
実施例26と同じ処方で薬物層を表6の厚さになるように積層後、支持層を積層し、全体として各々の厚さのフィルムを得た。得られたフィルムを14×20mmの長方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例29】
【0044】
実施例26と同じ処方で薬物層を表6の厚さになるように積層後、支持層を積層し、全体として各々の厚さのフィルムを得た。得られたフィルムを14×20mmの長方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【実施例30】
【0045】
実施例26と同じ処方で薬物層を表6の厚さになるように積層後、支持層を積層し、全体として各々の厚さのフィルムを得た。得られたフィルムを14×20mmの長方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
[比較例1〜4]
実施例26と同じ処方で薬物層を表6の厚さになるように積層後、支持層を積層し、全体として各々の厚さのフィルムを得た。得られたフィルムを14×20mmの長方形に打ち抜き、速溶性フィルム製剤とした。
【表6】

【0046】
表7に、実施例及び比較例のフィルム状製剤の夫々の厚さにおける破断強度、引張強度、口腔内崩壊時間及び水崩壊時間を示すと共に、そのときのフィルム状製剤の比表面積の逆数を示す。
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0047】
薬物およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するフィルムからなるフィルム製剤であり、該フィルムの破断強度が200〜3000g/φ7mm、引張強度が200〜3000g/15mm、かつ口腔内において60秒以内で溶けるものあるいは水崩壊時間Y秒が300秒以内、即ちY≦300秒であって、フィルムの比表面積の逆数mg/mm2をXとした場合、X≧0、水崩壊時間Y秒≧7500X2の関係にある速溶性単層フィルム状製剤とすることにより、取り扱い易く、服用時の違和感もなく、口腔内において大略60秒以内で溶解し、錠剤やカプセル剤といった従来の経口製剤と同等の薬理効果を期待でき、且つ水無しで容易に服用できることから高齢者や小児にも安全に投与できるものである。
【符号の説明】
【0048】
1.破断応力用アダプター
2.粘性用アダプター
3.試験片固定用下部プレート
4.リング
5.試験片
6.試験片固定用中間プレート
7.試験片固定用上部プレート
8,8’.止めネジ
9.基板
10,10’.支柱
11.アダプター固定用ネジ
12.試験台
13.試験台上下移動開口部
14.移動速度用等間隔目盛
21.棒状体
22.球状体
31.引張強度測定装置の引張強度測定用アダプター
32.試験片固定用上部アダプター
33.試験片固定用下部アダプター
34.試験片
35.上部アダプター取付部
36.試験台
37.上部アダプター止めネジ
38.下部アダプター止めネジ
39.試験台上下移動開口部
40.移動速度用等間隔目盛
41.検出部
42.指針粗調整ツマミ
43.指針微調整ツマミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)薬物および(2)ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる可食性高分子物質を含有するフィルムからなるフィルム製剤であり、
該フィルムの破断強度が200〜3000g/φ7mm、引張強度が200〜3000g/15mm、かつ口腔内において60秒以内で溶けるものであり、
薬物の配合比率が製剤全体に対して0.01〜40重量%、可食性高分子物質の配合比率が製剤全体に対して60〜99.99重量%である、
速溶性単層フィルム状製剤。
【請求項2】
(1)薬物および(2)ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる可食性高分子物質を含有するフィルムからなるフィルム製剤であり、
該フィルムの破断強度が200〜3000g/φ7mm、引張強度が200〜3000g/15mm、かつ水崩壊時間Y秒が300秒以内、即ちY≦300秒であって、フィルムの比表面積の逆数mg/mm2をXとした場合、X≧0、水崩壊時間Y秒≧7500X2の関係にあり、
薬物の配合比率が製剤全体に対して0.01〜40重量%、可食性高分子物質の配合比率が製剤全体に対して60〜99.99重量%である、
速溶性単層フィルム状製剤。
【請求項3】
薬物は、一回の投与量が0.001〜50mgの量であるように含有し、水−エタノール系溶媒に可溶もしくは分散可能なものである請求項1又は2記載の速溶性単層フィルム状製剤。
【請求項4】
更に糖質を含有する請求項1、2又は3記載の速溶性単層フィルム状製剤。
【請求項5】
薬物と糖質の総和が、製剤全体に対して25〜40重量%である請求項4記載の速溶性単層フィルム製剤。
【請求項6】
水崩壊時間Y秒が60000X2≧Y≧7500X2の関係にある請求項2、3、4又は5記載の速溶性単層フィルム製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−163463(P2010−163463A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104774(P2010−104774)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【分割の表示】特願2003−135676(P2003−135676)の分割
【原出願日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願人】(000161714)救急薬品工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】