説明

造血系新生物における新規な診断および予後マーカーとしてのTET2

本発明は、被験体において骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍を診断するためのin vitro法であって、(i)配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードするテンイレブントランスロケーションタンパク質ファミリーメンバー2遺伝子(TET2)の突然変異の存在を検出すること、および/または(ii)TET2遺伝子の発現を分析することにより、該被験体からの生体サンプルを分析する工程を含んでなり、このようなTET2突然変異の検出、TET2の無発現の検出または末端切断型TET2の発現の検出が、骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍を発症している、または発症する疾病素因のある被験体の指標となる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本願はそれぞれ2008年6月12日および2009年3月13日に出願された欧州特許出願EP08305255.5およびEP09155169.7の優先権を主張するものであり、これらは引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
発明の分野
本発明は、骨髄性新生物を診断するための遺伝子マーカー、より詳細には、新たに同定された腫瘍抑制遺伝子テンイレブントランスロケーション(Ten Eleven Translocation)タンパク質ファミリーメンバー2遺伝子(TET2)に関する。TET2の遺伝子変異は骨髄異形成/骨髄増殖性症候群、MDS、AMLまたはMPDなどの骨髄性腫瘍およびリンパ性腫瘍の診断に有用である。
【0003】
発明の背景
造血は、造血幹細胞(HSC)があらゆる種類の成熟血液細胞へ分化する多能性前駆体を生じる階層的システムにより維持される。多能性、自己再生、休止およびHSCへの方向付けを制御する分子機構が鋭意研究されている。しかしながら、取り組むべき多くの問題が残っており、これらのプロセスを調節する重要な遺伝子はまだ同定されていない。
【0004】
骨髄性悪性疾患には、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性障害(MPD)、骨髄異形成症候群(MDS)および骨髄異形成/骨髄増殖性症候群が含まれ、総て、クローン幹細胞(HSC)または前駆体の悪性障害である(TIU et al. Leukemia, vol.21(8), p:1648-57, 2007)。
【0005】
いくつかの遺伝子突然変異がAMLに関連づけられており、4つの群が認知されている:(i)RUNX1−ETO融合遺伝子を含む再発性遺伝子異常AML t(8;21)(q22;q22)を有するAML;CBFB/MYH11再配列を伴う異常な骨髄好酸球およびinv(16)(p13;q22)またはt(16;16)(p13;q22)を有するAML;t(15;17)(q22;q12)PML/RARAを有する急性前骨髄球性白血病APL;11q23(MLL)異常を有するAML);(ii)MDSまたはMDS/MPD後またはMDSまたはMPDが先行しない多系列の異形を伴うAML; (iii)AMLまたはMDS療法関連、および(iv)診断がFLT3−ITDまたはNPM1の突然変異などの癌遺伝子の分子分析に基づく、正常な核型を有するAML群を含んでなる他の分類不能型AML。
【0006】
骨髄異形成/骨髄増殖性症候群には、WHOが1999年に分類した4つの骨髄性疾患:慢性骨髄単球性白血病(CMML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、非定型慢性骨髄性白血病(aCML)および分類不能型骨髄異形成/骨髄増殖性症候群(U−MDS/MPS)が含まれる。
【0007】
MDSには、不応性貧血(RA)、および多系列異形を伴う不応性血球減少症(RCMD)が含まれる。MDSは骨髄の1以上の系列における無効な造血を特徴とする。初期のMDSはたいてい過剰なアポトーシスと造血細胞異形を示す(CLAESSENS et al, Blood, vol.99, p:1594-601, 2002; CLASESSENS et al, Blood, vol.105, p:4035-42, 2005)。第三のMDS患者については、この無効な造血が第二のAML(sAML)への進行に先行する。特定のMDSサブタイプ(ELBERT et al, Nature, vol.451(7176), p:335-9, 2008)または疾病転換(BRAUN et al, Blood, vol.107(3), p:1156-65, 2006)に関連するいくつかの分子事象が特定されているが、基礎にある分子欠陥があまり理解されていない。現在のところ、形態的特徴を除き、生物学的マーカーに初期の診断および予後診断に利用できるものはない。
【0008】
ここで骨髄増殖性新生物と呼ばれているMPD(MPN; TEFFERI & VARDIMAN, Leukemia, vol. 22, p:14-22, 2008)は、慢性骨髄性白血病(CML)、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄繊維症(PMF)および特発性骨髄繊維症(IMF)を含む慢性骨髄性である。MPDは1またはいくつかの骨髄性系列の増殖の増大を特徴とする。ほとんどのMPDが散発性疾患であるとすると、正確な罹患率が分かっていないMPDの家族性症例が報告されている(GILBERT, Baillieres Clin. Haematol, vol.11, p:849-858, 1998; KRALOVICS et al, Blood, vol.102, p:3793-3796, 2003; BELLANNE-CHANTELOT et al, Blood, vol.108, p:346-352, 2006)。これらの家族性症例の臨床分析では、それらが散発性症例と表現型が同一であることが示されている。しかしながらやはり、MPD家族は臨床および遺伝的ヘテロ性を特徴とする。第一に、単一家族のMPD症例は、MPDの同じサブタイプを示すこともあれば違うサブタイプを示すこともある(GILBERT,前掲, 1998; BELLANNE-CHANTELOT et al,前掲, 2006; RUMI et al, Cancer, vol.107, p:2206-2211, 2006)。第二に、約6〜15%のPV患者、そして3〜5%のET患者が進行15年後に血液学的合併症を発症するリスクがある(FINAZZI & HARRISON, Semin. Hematol, vol.42, p:230-238, 2005; KILADJIAN et al, Blood, vol.112, p:1746, 2008; PASSAMONTI et al, Blood, vol.111, p:3383-3387, 2008; PASSAMONTI et al, Haematologica, vol.93, p:1645-1651, 2008)。
【0009】
MPDは、散発性症例および家族性症例の双方で共通に、真性赤血球増加症、ほとんどのPV症例ならびにETおよびPMF症例の半数で、JAK2V617F突然変異により例示される獲得された構成的キナーゼ活性に関連している(MORGAN & GILLIGAND, Annu. Rev. Med., vol.59, p:213-22, 2008; DELHOMMEAU et al, Cell Mol. Life Sci., vol.63(24), p:2939-53, 2006, CAMPBELL & GREEN, N. Engl. J. Med., vol.355(23), p:2452-66, 2006; BELLANNE-CHANTELOT et al,前掲, 2006; JAMES et al, Nature, vol.434, p:1144-1148, 2005; BAXTER et al, Lancet, vol.365, p:1054-1061, 2005; LEVINE et al, Blood, vol.106, p:3377-3379, 2005; KRALOVICS et al, N. Engl. J. Med, vol.352, p:1779-1790, 2005)。MPDは構成的チロシンキナーゼタンパク質の発現から起こる場合が多い。
・CMLではBCR−ABL、HESではFIP1L1−PDGFRA、過好酸球増加症を伴うCMMLではTEL−PDGFRB、リンパ性増殖と結びついた希なMPDではZNF198−FGFR1、希なMPD、AMLおよびT細胞リンパ腫ではPCM1−JAK2のような融合による。
・限定された、または単一のヌクレオチド突然変異、すなわち、JAK2 V617F(1849G>T)(PV(98%)、ET(75%)、IMF(50%)および数%のCMML、MDS/MPDおよびU−MPDにおける最近の発見によれば、新しいMPD分類および診断基準および治療の展望が見込める。さらに、全身性肥満細胞増殖においては、KIT突然変異が再発する。
・トロンボポエチン受容体(MPL)の受容体における、特に、トリプトファン515(MPLW515K/L/A)の活性化突然変異による(PIKMAN et al, PLoS Med, vol. 3(e270), 2006; CHALIGNE et al, Leukemia, vol. 22, p1557-66, 2008)。
・t(9;22)(p24;q11)によるBCR/JAK2再配列の場合に呈されるCMLの辺縁症例。
【0010】
染色体9p上のJAK2遺伝子は1型サイトカイン受容体と結合するチロシンキナーゼをコードする。V617F突然変異はこのキナーゼの構成的活性化に対するJH2ドメインの自己阻害効果を損なうと推定されている。野生型JAK2は、変異タンパク質の活性に対してドミナントネガティブ効果を発揮する。よって、ほとんどのMPDサンプルに見られる。有糸分裂組換えによる変異遺伝子の重複に関連する野生型JAK2の欠陥により、変異キナーゼのより高い発現および活性が見込める。
【0011】
しかしながら、野生型JAK2と変異型JAK2を同時に発現する真性赤血球増加症、および変異型MPDから出現するが、芽細胞期にはJAK2の突然変異を欠いている続発性AMLの特徴などのいくつかの知見は、JAK2の突然変異の前に起こる発癌事象を示唆する。さらに、従前に記載されているように、MPD疾患の進行は家族内でも家族間でも実に変動が大きい。よって、MPDに、より具体的にはそれらの進行に関連するJAK2以外の少なくとも1つの突然変異が存在するといういくつかの証拠がある。
【0012】
リンパ性腫瘍はリンパ様の特徴を有する細胞の拡大からなる。急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫はT(T細胞型急性リンパ芽球性白血病;T−ALL)またはB(B前駆細胞型急性リンパ芽球性白血病;BCP−ALL)起源の、リンパ性分化を遮断された細胞の増殖である。白血病リンパ腫にはナチュラルキラー(NK)起源のものがある。リンパ腫には、より成熟したリンパ性細胞(BまたはT)の拡大が含まれる。新生物には慢性のものがあり、T細胞(前リンパ性白血病)またはB細胞(慢性リンパ性白血病)を含み得る。リンパ性新生物の分類は、解剖病理学的分析、分化マーカーおよび病因論データに基づく(Swerdllow S. H., Campo E., Harris N.L., Jaffe E.S.,Pileri S.A.,Stein H.,Thiele J.W., Vardiman J. W. (Eds): WHO classification of tumors of haematopoietc and lymphoid tissues. IARC: Lyon 2008)。例えば、未分化大T細胞リンパ腫はNPM−ALK融合癌遺伝子(およびその変異体)に関連し、濾胞性リンパ腫はt(14;18)(q32;q21)染色体転座の後のBCL2の活性化に関連し、マントル細胞リンパ腫はt(11;14)(ql3;q32)染色体転座の後のCCND1の活性化に関連している。しかしながら、多くのリンパ腫には、病態生理学的メカニズムを示唆する信頼できる分子マーカーが無い。特に、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)の50%、ほとんどの末梢T細胞リンパ腫(PTCL)および非濾胞性低悪性度リンパ腫の場合はそうである。
【0013】
よって、リンパ性および骨髄性新生物、特に、MDSおよびMPDの同定を、ひいてはそれらの進行の予後診断を可能とする信頼できる診断マーカーの差し迫った必要があった。
【0014】
テンイレブントランスロケーションタンパク質ファミリーには、最近同定された、機能は未知であるが、それらのC末端に2つの保存性の高いドメインを共通に持つことを特徴とするメンバーを含む。本明細書において「TETファミリーの遺伝子」とは、最近同定されたテンイレブントランスロケーションファミリーのメンバー、TET1、TET2またはTET3を意味する(Lorsbach et al, Leukemia 2003)。
【0015】
それらのうちTET1は、2つの異なる独立した研究(ONO et al, Cancer Research, vol.62(14), p:4075-80, 2002およびLORSBACH et al, Leukemia, vol.17(3), p:637-41, 2003)において、タンパク質混合型白血病(MLL)との融合相手として同定されたことから、唯一研究されている。このタンパク質は、LCXまたは「N末端領域にCXXCドメインを有する白血病関連タンパク質」とも呼ばれ、そのC末端領域に[α]らせんコイルドコイル領域を含み、この領域は融合MLL−TET1に保持されている。これに対し、TET1のN末端CXXCドメインは、このタンパク質融合体には存在しない(Ono R, Cancer Research 2002)。この2つの保存性の高いカルボキシ末端領域はMLL−TET1融合体に含まれる(Lorsbach et al, Leukemia 2003)。一方の保存領域は転座により分断され、他方はMLLと融合される。MLL融合相手として7年前に記載されているにもかかわらず、TET1遺伝子の機能および配列分析は、本願の優先日の後に、最近報告されたばかりである。
【0016】
MLL遺伝子はヒト染色体11q23に位置し、リンパ性、骨髄性および混合型ヒト白血病の異種の群において再配列されているのが見られる。70を超える遺伝子座が11q23染色体バンドと再配列していることが記載され、これらのうち少なくとも50がクローニングされ、分子レベルで特性決定が行われている。MLL再配列はこれらの遺伝子の8.3kb塩基にマッピングされている。相手の遺伝子は常に5’部分MLLとフレーム内で融合され、MLLそれ自体を含む。MLLの増幅もまた報告されている。相手の遺伝子は異なる機能を有するタンパク質をコードしている。MLL融合では、転写活性化ドメイン、クロマチン改変複合体動員または二量体形成/オリゴマー形成モチーフを提供してもよい。実際、マウスモデルにおいて白血病を誘発するにはMLL−β−ガラクトシダーゼ(四量体形成可能な細菌タンパク質)または二量体形成ドメインの発現で十分である。よって、そのMLLとの融合からタンパク質の機能または細胞形質転換におけるその非依存的関連を推論することはできない(The versatile mixed lineage leukaemia gene MLL and its many associations in leukaemogenesis. Daser A, Rabbitts TH. Semin Cancer Biol. 2005 Jun;15(3):175-88. Review. Chromosomal rearrangements leading to MLL gene fusions: clinical and biological aspects. Harper DP, Aplan PD. Cancer Res. 2008 Dec 15;68(24):10024-7)。
【0017】
これに対して、4q24染色体領域に位置している遺伝子によりコードされているTET2タンパク質と、2p12染色体領域に位置している遺伝子によりコードされているTET3タンパク質について知られていることは少ない。
【0018】
より具体的には、テンイレブントランスロケーション癌遺伝子2(TET2)が最近命名された(Lorsbach et al, Leukemia 2003)。染色体領域4q24に位置しているTET2遺伝子は130Kbを超えて散在する11のエキソンを含んでなり、通常、広く発現される。この遺伝子は受託番号57790で参照され、そのcDNA(受託番号NM_001127208、配列番号1)は2002アミノ酸のタンパク質(受託番号NP_001120680、配列番号2)をコードしている。
【0019】
TET2タンパク質は、オーソロガスショウジョウバエ推定タンパク質と2つの保存性の高い領域を共有する。これらの領域は、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(アミノ酸1134〜アミノ酸1444)と、ii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する第二の80アミノ酸の領域(アミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)である(これらの領域は図1で強調されている)。TET2の推定配列は特定の機能に相当するモチーフが明らかになっていない。
【0020】
本発明者らは、本明細書で、テンイレブントランスロケーション 2(TET2)遺伝子の片方または両方のコピーが、MPD、MDSおよびCMML、またリンパ腫でも、後天的突然変異により不活性化/改変されていることが多いことを報告する。これらの事象は造血幹細胞を標的とし、骨髄性またはリンパ性新生物における腫瘍抑制遺伝子としてのTET2の重要な機能を示す。
【発明の概要】
【0021】
第一の態様において、本発明は、被験体において骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍を診断するためのin vitro法であって、
(i)配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードするテンイレブントランスロケーションタンパク質ファミリーメンバー2遺伝子(TET2)の突然変異の存在を検出すること、および/または
(ii)TET2遺伝子の発現を分析すること
により、該被験体からの生体サンプルを分析する工程を含んでなり、
このようなTET2突然変異の検出、TET2の無発現の検出または末端切断型TET2の発現の検出、が骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍を発症している、または発症する疾病素因のある被験体の指標となる方法を提供する。
【0022】
好ましい実施態様では、前記被験体は哺乳類、好ましくはヒトである。
【0023】
別の好ましい実施態様では、前記骨髄性癌は、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性疾患(MPD)および骨髄異形成/骨髄増殖性症候群からなる群から選択される。
【0024】
さらに別の好ましい実施態様では、前記リンパ性腫瘍はリンパ腫、より好ましくはT細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0025】
好ましくは、前記突然変異は、配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードするTET2遺伝子(配列番号39の配列を有するcDNAによりコードされる)の各コピーで検出され、欠失、挿入および点突然変異(スプライス部位に影響する突然変異、ミスセンス突然変異およびナンセンス突然変異、好ましくは、ミスセンス突然変異およびナンセンス突然変異など)からなる群に含まれる。
【0026】
本発明のより好ましい態様では、該突然変異は、TET2タンパク質の無発現または末端切断型TET2タンパク質の発現をもたらす欠失または挿入である。
【0027】
いっそうより好ましくは、この末端切断型TET2タンパク質は、他のTETタンパク質に共有され、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、またはii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つ、好ましくは、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)を含まない。
【0028】
例えば、これらの欠失または挿入は表I(核酸配列は配列番号39、アミノ酸配列は配列番号2参照)に開示されているものを含んでなる、またはからなる群から選択され得る。
【0029】
【表1】



【0030】
本発明の別のより好ましい態様では、該突然変異は、TET2タンパク質のオープンリーディングフレーム内、好ましくは、TETタンパク質により共有されおり、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、およびii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つの内部、より好ましくは、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)内に位置するミスセンス突然変異である。例えば、これらのミスセンス突然変異は、I1175V、L1197N、H1219Y、E1235V、C1271W、K1299E、L1340P、R1302G、G1370E、A1344E、N1387S、V1417F、H1868R、G1869W、L1872P、I1873T、R1896MおよびS1898Fを含んでなるまたはからなる群から選択することができ、好ましくは、L1197N、H1219Y、E1235V、C1271W、K1299E、L1340P、R1302G、G1370E、A1344E、N1387S、H1868R、G1869W、L1872P、I1873T、R1896MおよびS1898Fを含んでなるまたはからなる群から選択することができ、より好ましくは、H1868R、G1869W、L1872P、I1873T、R1896MおよびS1898Fを含んでなるまたはからなる群から選択することができる。
【0031】
本発明の別のより好ましい態様では、該突然変異は、TET2タンパク質のオープンリーディングフレーム内、好ましくは、TETタンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、およびii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つの手前または内部、より好ましくは、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4アミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)の手前または内部に位置するナンセンス突然変異である。例えば、該ナンセンス突然変異は、Q232Stop、Q321Stop、S354Stop、Q417Stop、R544Stop、R550Stop、Q557Stop、Q574Stop、Q635Stop、Q642Stop、Q685Stop、L699Stop、S792Stop、Q891Stop、Q943Stop、E1026Stop、R1067Stop、R1216Stop、Y1225Stop、R1404Stop、L1457Stop、R1465Stop、R1516Stop、Q1524Stop、Q1542Stop、N1624Stop、Y1724Stop、Y1751Stop、L1819Stop、Q1834StopおよびW1847Stop含んでなるまたはからなる群から選択することができる。
【0032】
本発明の別の態様では、TET2遺伝子の突然変異は、配列番号2の配列を有するポリペプチドの無発現または発現不足を、より好ましくは、TETタンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、およびii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つ、より好ましくは、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)の無発現または発現不足を誘発する。
【0033】
第二の態様において、本発明は、被験体において骨髄性癌を診断するためのキットであって、TET2遺伝子の突然変異の存在を検出するため、および/またはTET2遺伝子の発現を分析するために、これまでに定義されたような方法で使用可能な少なくとも1つの核酸プローブまたはオリゴヌクレオチドまたは少なくとも1つの抗体を含んでなるキットを提供する。
【0034】
本発明の好ましい実施態様では、該オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのPCRプライマー、好ましくはPCRプライマーセットである。
【0035】
より好ましくは、該プライマーセットは配列番号5〜配列番号38からなる群から選択される(実施例参照)。
【0036】
第三の態様において、本発明は、TET2突然変異、TET2の無発現または末端切断型TET2の発現が検出された骨髄性またはリンパ性腫瘍に罹患している患者を処置するための低メチル化剤(hypomethylating agent)の使用を提供する。
【0037】
最後の態様において、本発明は、腫瘍、TET2突然変異、TET2の無発現または末端切断型TET2の発現が検出された骨髄性またはリンパ性腫瘍に罹患している被験体を処置するための方法であって、該被験体に治療上有効な量の低メチル化剤(hypomethylating agent)を投与する工程を含んでなる方法を提供する。
【発明の具体的説明】
【0038】
本発明は、TET2対立遺伝子が一般に、リンパ性腫瘍、またはMPD、AMLもしくはMDSなどの骨髄性腫瘍に罹患している患者の腫瘍細胞における突然変異および/または欠失により標的とされることが多く、ヒト骨髄性悪性疾患の真の腫瘍抑制遺伝子と考えられるという本発明者らによる発見に基づく。
【0039】
第一の態様において、本発明者らは、散発性癌に関して、一連の非選抜患者におけるTET2突然変異の頻度が、MPD患者で12%、MDS患者で18.5%、sAML患者で24%、CMML患者で50%までであったことを報告する。また、本発明者らは、突然変異した造血幹細胞が増殖の増強をもたらす成長の優位性を付与することから、TET2が骨髄性悪性障害における腫瘍抑制遺伝子であることを実証した。
【0040】
第二の態様において、本発明者らは、61の家族性MPD症例(すなわち、PV、ETおよびPMF)の分析により、TET2遺伝子の異常が、より高いPMF罹患率(42%)を有する3つの主要なMPD表現型(PV、ETおよびPMF)の20%に見られることを実証した。
【0041】
PVまたはETを有すると診断されたTET2陽性患者のうち77%が骨髄繊維症(MF)を発症するが、このことはTET2の後天的事象の存在がこの疾患の進行に影響を及ぼすことが示唆される。4人の患者(PVが3人、ETが1人)において、本発明者らは、TET2の欠陥が1〜7年、血液学的合併症を進行させた。TET2に欠陥を有する患者はMFを進行しやすい。このことは、TET2の後天的突然変異と疾患の重篤度の間、より具体的には、TET2とMFの発症の間の関連の可能性を示唆するところが大きい。
【0042】
第三の態様において、本発明者らは、散発性癌に関して、T細胞リンパ性腫瘍に罹患している患者におけるTET2突然変異の頻度が〜20%であったことを報告する。最後に、B細胞リンパ性腫瘍に罹患している患者ではTET2の再配列が見られた。
【0043】
よって、本発明の第一の態様において、被験体において骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍を診断するためのin vitro法であって、
(i)配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードするテンイレブントランスロケーションタンパク質ファミリーメンバー2遺伝子(TET2)の突然変異の存在を検出すること、および/または
(ii)TET2遺伝子の発現を分析すること
により、該被験体からの生体サンプルを分析する工程を含んでなり、
TET2突然変異の検出、TET2の無発現の検出または末端切断型TET2の発現の検出が、骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍を発症している、または発症する疾病素因のある被験体の指標となる方法が提供される。
【0044】
最近の証拠では、TETファミリーのタンパク質が5−メチルシトシンから5−ヒドロキシメチルシトシンへの変換を担う酵素をコードしており(TAHILIANI et al., Sciencexpress, 2009)、従って、CpGの脱メチル化および後生的調節に潜在的役割を有することが示されている。さらに、この参照文献では、ほとんどの場合でTET2突然変異が見られる、保存されているTETドメインがこの活性に関連していることが確認されている。
【0045】
並行して、昨年、いくつかの研究により、MDSにおける低メチル化剤(hypomethylating agent)の役割が確認された(ITZYKSON & FENAUX, Current Opinion in Hematology, vol.16, p:77-83, 2009)。
【0046】
今般、本発明者らの結果はさらに、一部のMDSにおいて見られた低メチル化剤(hypomethylating agent)の有効性がTET2突然変異を有するMDSにおける脱メチル化欠陥に起因することを示す。
【0047】
よって、本発明者らの結果は、腫瘍、TET2突然変異、TET2の無発現または末端切断型TET2の発現が検出された、MDSなどのリンパ性または骨髄性腫瘍に罹患している被験体における低メチル化剤(hypomethylating agent)の使用を示す。
【0048】
結果として、好ましい実施態様によれば、TET2突然変異の検出、TET2の無発現の検出または末端切断型TET2の発現の検出は、脱メチル化欠陥のある骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍を発症している被験体の指標となり、この被験体はアザシチジン(AZA)などの脱メチル化剤で有利に処置することができる。
【0049】
好ましくは、本発明の方法は骨髄性腫瘍を診断するために特化される。
【0050】
実際、本発明者らは、骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍に罹患している患者のTET2突然変異の頻度が10%を超えることを確認した。
【0051】
本発明はさらに、従来の手段によっては病巣または前駆体として検出することができない浸潤性骨髄性新生物または浸潤性リンパ性腫瘍を発達させる可能性を有する細胞の有無を検出するための方法を提供する。
【0052】
本明細書において「被験体」とは、哺乳類、好ましくはヒトを意味する。
【0053】
該被験体は健康であり得るが、本発明の方法は骨髄性癌(すなわち骨髄性腫瘍)またはリンパ性腫瘍を発症している、または発症する疾病素因があると思われる被験体を試験するために特に有用である。その場合、本発明の方法は、骨髄性癌(すなわち骨髄性腫瘍)またはリンパ性腫瘍を発症している、または発症する疾病素因があることを確認することができる。
【0054】
より好ましくは、該リンパ性腫瘍は、TまたはB細胞リンパ腫などのリンパ腫、より好ましくはT細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0055】
いっそうより好ましくは、該骨髄性癌(すなわち骨髄性腫瘍)は、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性障害(MPD)および骨髄異形成/骨髄増殖性症候群からなる群から選択される。有利には、該骨髄性癌は骨髄異形成/骨髄増殖性症候群、好ましくは、慢性骨髄単球性白血病(CMML)である。
【0056】
好ましい実施態様によれば、本発明の方法は被験体において骨髄繊維症(MF)を診断するためのものであり、該被験体は真性赤血球増加症(PV)または血小板血症(ET)に罹患しており、TET2の突然変異またはTET2の発現不足の検出は骨髄繊維症(MF)を発症している、または発症する疾病素因のある被験体の指標となる。
【0057】
さらに別の好ましい実施態様によれば、被験体は骨髄異形成症候群(MDS)に罹患しており、TET2の突然変異またはTET2の発現不足の検出は良好な予後を有する被験体の指標となる。
【0058】
本明細書において、良好な予後とは、MDSに罹患しており、AMLを発症するリスクの低い患者に相当する。
【0059】
実際、本発明者らは、5年生存率が非変異患者に比べてMDSに罹患しているTET2変異患者で有意に高まったことを確認した(p<0.05)。
【0060】
本明細書において「生体サンプル」とは、例えば、肺生検などの固形組織;例えば、痰、誘発痰、血液、血清、血漿、尿などの口内スワブ、体液および排泄物を意味する。好ましくは、該生体サンプルは骨髄サンプルである。
【0061】
本発明のこの態様において、該方法は配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードするTET2遺伝子の突然変異の存在を検出する工程を含んでなる。
【0062】
本明細書において「突然変異」とは、元の核酸配列の配列におけるいずれかの改変に相当する。これらの突然変異は小規模突然変異または大規模突然変異を含んでなる。小規模突然変異は、DNAにおける点突然変異、1以上の余分なヌクレオチドの挿入または欠失を含む、1または数個のヌクレオチドで遺伝子に影響を及ぼすものである。点突然変異はサイレント、ミスセンスおよびナンセンス突然変異であり得る。ゲノム構造における大規模突然変異は、遺伝子の重複、欠失、またはその効果が元々離れていたDNA片を近接させ、可能性としては離れていた遺伝子を一緒にして機能的に異なる融合遺伝子を形成させる突然変異などである。これらの最後の突然変異には、染色体転座、中間部欠失、染色体逆位および異型接合性(heterezygosity)の欠損が含まれる。
【0063】
好ましくは、試験する被験体からのゲノムDNA(または場合によりRNA)を含む細胞を含有する生体サンプルだけが必要とされる。
【0064】
好ましくは、この検出工程はTET2遺伝子の各対立遺伝子上で実現される。実際、この診断は、突然変異が配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードするTET2の各対立遺伝子で検出される場合にはより信頼性が高い。
【0065】
特定の実施態様では、本発明のin vitro法は欠失、挿入および点突然変異(スプライス部位に影響する突然変異、ミスセンス突然変異およびナンセンス突然変異、好ましくは、ミスセンス突然変異およびナンセンス突然変異など)からなる群に含まれる突然変異を検出することを目的とする。
【0066】
本発明者らは、このような突然変異の存在が骨髄性またはリンパ性癌に関連していることを確認した。さらに、本発明者らは、TET2タンパク質のポリペプチドC末端ドメインが好都合にも、検討される患者の有害な突然変異により標的とされることを見出した(実施例参照)。
【0067】
欠失または挿入については、この欠失または挿入は好ましくは、TET2タンパク質の無発現または末端切断型TET2タンパク質の発現をもたらし、この末端切断型TET2タンパク質は、他のTETタンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、またはii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域の少なくとも1つを含まない。より好ましくは、該末端切断型TET2タンパク質は、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)を含まない。
【0068】
例えば、これらの欠失または挿入は表1に開示されているものから選択することができる。
【0069】
ミスセンス突然変異については、このミスセンス突然変異は好ましくは、TET2タンパク質のオープンリーディングフレームに、好ましくは、TETタンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、およびii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つに位置する。
【0070】
例としては、このミスセンス突然変異は、I1175V、L1197N、H1219Y、E1235V、C1271W、K1299E、L1340P、R1302G、G1370E、A1344E、N1387S、V1417F、H1868R、G1869W、L1872P、I1873T、R1896MおよびS1898Fを含んでなるまたはからなる群から、好ましくは、I1175V、L1197N、H1219Y、E1235V、C1271W、K1299E、L1340P、R1302G、G1370E、A1344E、N1387S、H1868R、G1869W、L1872P、I1873T、R1896MおよびS1898Fを含んでなるまたはからなる群から選択される。
【0071】
より好ましくは、該ミスセンス突然変異はタンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に位置する。いっそうより好ましくは、該ミスセンス突然変異は、H1868R、G1869W、L1872P、I1873T、R1896MおよびS1898F、例としてはI1873T、R1896MおよびS1898Fを含んでなるまたはからなる群から選択される。
【0072】
ナンセンス突然変異については、このナンセンス突然変異は好ましくは、TET2タンパク質のオープンリーディングフレーム内、好ましくは、TET2タンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、またはii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つの手前に停止突然変異の導入をもたらす。
【0073】
例として、該ナンセンス突然変異は、Q232Stop、Q321Stop、S354Stop、Q417Stop、R544Stop、R550Stop、Q557Stop、Q574Stop、Q635Stop、Q642Stop、Q685Stop、L699Stop、S792Stop、Q891Stop、Q943Stop、E1026Stop、R1067Stop、R1216Stop、Y1225Stop、R1404Stop、L1457Stop、R1465Stop、R1516Stop、Q1524Stop、Q1542Stop、N1624Stop、Y1724Stop、Y1751Stop、L1819Stop、Q1834StopおよびW1847Stopを含んでなるまたはからなる群、好ましくは、Q321Stop、S354Stop、R544Stop、Q557Stop、R1216StopおよびY1724Stopを含んでなるまたはからなる群から選択される。
【0074】
また、該ナンセンス突然変異は、TET2タンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、またはii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つの内部に停止突然変異の導入をもたらし得る。
【0075】
より好ましくは、該ナンセンス突然変異は、TET2タンパク質のオープンリーディングフレーム内の、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)の手前に停止突然変異の導入をもたらし得る。例として、該ナンセンス突然変異は、Q232Stop、Q321Stop、S354Stop、Q417Stop、R544Stop、R550Stop、Q557Stop、Q574Stop、Q635Stop、Q642Stop、Q685Stop、L699Stop、S792Stop、Q891Stop、Q943Stop、E1026Stop、R1067Stop、R1216Stop、Y1225Stop、R1404Stop、L1457Stop、R1465Stop、R1516Stop、Q1524Stop、Q1542Stop、N1624Stop、Y1724Stop、Y1751Stop、L1819StopおよびQ1834Stopを含んでなるまたはからなる群から選択される。
【0076】
また、該ナンセンス突然変異は、TET2タンパク質のオープンリーディングフレーム内の、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)内に停止突然変異の導入をもたらし得る。例として、該ナンセンス突然変異はW1847Stopである。
【0077】
突然変異の存在を検出するための典型的な技術としては、制限断片長多型、ハイブリダイゼーション技術、DNAシーケンシング、エキソヌクレアーゼ耐性、マイクロシーケンシング、ddNTPを用いた固相エクステンション、ddNTPを用いた液相エクステンション、オリゴヌクレオチド連結アッセイ、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションなどの一塩基多型検出法、連結連鎖反応、ミニシーケンシング、DNA「チップ」、PCRまたはモレキュラービーコンと併合した単一または二重標識プローブを用いた対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションその他を含み得る。
【0078】
有利には、変更はPCRと配列決定、SNP−アレイまたはCGH(これらは総て、当業者に周知である)のいずれかによりTET2遺伝子のcDNAまたはDNAで検出される。
【0079】
分子生物学および生物情報科学において、SNPアレイは集団内に多型を検出するために用いられる一種のDNAマイクロアレイである。SNPアレイの基本原理はDNAマイクロアレイと同じである。これらはDNAハイブリダイゼーションと蛍光顕微鏡と固相表面DNA捕捉を合わせたものである。SNPアレイの3つの必須成分は、i)固定化された核酸配列または標的を含むアレイ;ii)1以上の標識対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ;およびiii)ハイブリダイゼーションシグナルを記録および解釈する検出系である(Sheils, O., Finn, S. and O'Leary J. (2003) "Nucleic acid microarray: an overview." Current Diagnostic Pathology. 9:155-158参照)。
【0080】
比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)は、腫瘍の遺伝子変異をスクリーニングする分子細胞遺伝学的方法である。この変異はDNAの増分および損失として分類され、染色体レベルおよび染色体下レベルでの突然変異を含む特徴的なパターンを明らかにする。この方法は蛍光標識された腫瘍DNA(多くの場合、フルオレセイン(FITC))および正常DNA(多くの場合、ローダミンまたはテキサスレッド)と正常ヒト分裂中期標本とのハイブリダイゼーションに基づく。エピ蛍光顕微鏡と定量的画像解析を用い、対照DNAに対する増分/欠損の蛍光比の領域的違いを検出し、ゲノムにおける異常な領域を同定するために使用することができる。CGHはアンバランスな染色体変異だけを検出する。バランスのとれた相互転座または逆位などの構造的な染色体異常は、コピー数を体系的に変化させないので、通常は検出できない(Emanuel BS, Saitta SC. From microscopes to microarrays: dissecting recurrent chromosomal rearrangements. Nat Rev Genet. 2007 Nov;8(11):869-83. Review)。
【0081】
本発明の別の好ましい実施態様では、該方法はTETファミリーメンバー2遺伝子(TET2)の発現を分析する工程を含んでなる。
【0082】
本発明者らにより得られた結果によれば、これまでに開示されているようなTET2タンパク質の無発現もしくは発現不足、または末端切断型TET2タンパク質の発現は骨髄性癌に関連している。
【0083】
遺伝子の発現を分析する方法は当業者に周知である。
【0084】
本発明の特定の実施態様では、このTET2遺伝子の発現は、該遺伝子のmRNA転写物、または新生RNAなどのmRNA前駆体の発現を分析することにより評価される。
【0085】
このような分析は、被験体由来の生体サンプルの細胞からmRNA/cDNAを調製し、このmRNA/cDNAを参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることにより評価することができる。調製されたmRNA/cDNAは、限定されるものではないが、サザンまたはノーザン分析、定量的PCR(TAQMAN)などのポリメラーゼ連鎖反応分析、およびGENECHIP(商標)DNAアレイ(AFFYMETRIX)などのプローブアレイを含むハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて使用することができる。
【0086】
有利には、TET2遺伝子から転写されたmRNAの発現レベルの分析は、例えば、RT−PCR(米国特許第4,683,202号に示されている試験実施態様)、リガーゼ連鎖反応(BARANY, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.88, p: 189-193, 1991)、自律的配列複製(GUATELLI et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.87, p: 1874-1878, 1990)、転写増幅系(KWOH et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.86, p: 1173-1177, 1989)、Q−βレプリカーゼ(LIZARDI et al, Biol. Technology, vol.6, p: 1197, 1988)、ローリング・サークル・レプリケーション(米国特許第5,854,033号)または他のいずれかの核酸増幅法などによる核酸増幅のプロセスと、その後の当業者に周知の技術を用いた増幅分子の検出を含む。これらの検出スキームは、核酸分子が極めて少ない数でしか存在しない場合に、このような分子の検出に特に有用である。本明細書において、増幅プライマーは、遺伝子の5’または3’領域(それぞれプラス鎖およびマイナス鎖、またはその逆)とアニールすることができ、間に短い領域を含む、核酸分子対であると定義される。一般に、増幅プライマーは、約10〜30ヌクレオチド長であり、約50〜200ヌクレオチド長の領域をフランキングする。適当な条件下で、適当な試薬を用い、このようなプライマーは、プライマーによりフランキングされたヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子の増幅を可能とする。
【0087】
別の特定の実施態様において、TET2遺伝子の発現は、該遺伝子から翻訳されたTET2タンパク質の発現を分析することにより評価される。
【0088】
このような分析は、抗体(例えば、放射性標識、発色団標識、蛍光団標識または酵素標識抗体)、抗体誘導体(例えば、基質、またはタンパク質/リガンド対(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン)のタンパク質またはタンパク質のリガンドとの抗体コンジュゲート)、またはTET2タンパク質と特異的に結合する抗体断片(例えば、単鎖抗体、単離された抗体超可変ドメインなど)を用いて評価することができる。該分析は、限定されるものではないが、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット分析および酵素結合免疫吸着法(ELISA)を含む、当業者に周知の多様な技術により評価することができる。
【0089】
ポリクローナル抗体は、マウス、ウサギまたはヤギなどの好適な動物をTET2タンパク質(配列番号2)またはその断片(例えば、少なくとも10または15アミノ酸)で免疫することにより作製することができる。免疫した動物の抗体力価は、固定化ポリペプチドを用いたELISAによるなどの標準的な技術により経時的にモニタリングすることができる。免疫後の適当な時点、例えば、特定の抗体力価が最高になった際に、動物から抗体生産細胞を取得し、最初にKOHLER and MILSTEIN (Nature, vol.256, p:495-497, 1975)により記載されているハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(KOZBOR et al, Immunol, vol.4, p: 72, 1983)、EBV−ハイブリドーマ技術(COLE et al, In Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc, p: 77-96, 1985)またはトリオーマ技術などの標準的な技術により、モノクローナル抗体(mAb)を作製するために使用することができる。ハイブリドーマを生産するための技術は周知である(一般に、Current Protocols in Immunology, COLIGAN et al. ed., John Wiley & Sons, New York, 1994参照)。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば標準的なELISAを用い、ハイブリドーマ培養上清を目的ポリペプチドと結合する抗体に関してスクリーニングすることにより検出される。
【0090】
これまでに述べたように、TET2遺伝子の突然変異はTET2タンパク質の無発現または発現不足を誘発し得る。
【0091】
本明細書においてポリペプチドの「発現不足」は、その遺伝子の転写および/または翻訳が突然変異によって影響を受け、生体サンプルにおいて、発現を評価するために用いられるアッセイの標準誤差より低い、好ましくは該遺伝子の正常な発現レベルよりも少なくとも20%劣る、好ましくは該遺伝子の正常な発現レベルよりも少なくとも50%劣る、最も好ましくは該遺伝子の正常な発現レベルよりも少なくとも100%劣る発現レベルをもたらす場合に生じる。
【0092】
よって、本発明の方法は、被験体からの生体サンプルにおけるTET2遺伝子の発現レベルを対照におけるその発現レベル(すなわち、正常な発現レベル)と比較することを含み得る。被験体の生体サンプルにおける該遺伝子の発現レベルが正常な発現レベルに比べて有意に低ければ、その患者は骨髄性新生物を発症する可能性があることを示す。
【0093】
本明細書において「対照」は、好ましくは、非腫瘍細胞を含んでなる対照サンプルに相当する。好ましくは、該対照は末梢血白血球(PBL)に、最も好ましくは、エプスタイン・バーウイルスで不死化された末梢血白血球に相当する。
【0094】
よって、TET2遺伝子の「正常な」発現レベルは、非腫瘍細胞の生体サンプルにおける該遺伝子の発現レベルである。好ましくは、該正常な発現レベルは対照サンプルで評価され、好ましくは、いくつかの対照サンプルで該遺伝子の平均発現レベルが評価される。
【0095】
TET2遺伝子の正常な発現の分析は、これまでに記載されているように、転写された核酸または翻訳されたタンパク質の発現を検出するための多様な周知の方法のいずれによって評価してもよい。
【0096】
本発明の好ましい実施態様では、このようなTET2遺伝子の突然変異は、TETタンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、およびii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域、より好ましくは、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)の無発現または発現不足を誘発する。
【0097】
第二の態様において、本発明は、TET2遺伝子の突然変異の存在を検出するため、および/またはTET2遺伝子の発現を分析するために、本発明で定義される方法において使用可能な、少なくとも1つの核酸プローブまたはオリゴヌクレオチドまたは少なくとも1つの抗体を含んでなる、被験体において骨髄性癌またはリンパ性癌を診断するためのキットに関する。
【0098】
好ましくは、該オリゴヌクレオチド少なくとも1つのPCRプライマーであり、好ましくは、TET2遺伝子またはその断片を増幅することができるPCRプライマーセットが提供される。当業者ならば、TET2の核酸配列が周知であれば(受託番号NM_001127208、配列番号1)(Current Protocols in Molecular Biology; Fred M. Ausubel et al編,前掲)、TET2遺伝子の領域を増幅することができるオリゴヌクレオチドまたはPCRプライマーセットを容易に準備することができる。
【0099】
好ましい実施態様では、該キットは、TET2遺伝子の突然変異の存在を検出するため、および/または該遺伝子の発現を分析するために、配列番号5〜配列番号38(実施例および配列表を参照)からなる群から選択される少なくとも1つのPCRプライマーを含んでなる。
【0100】
本明細書において「キット」とは、材料を送達するための任意の送達系を意味する。反応アッセイに関しては、このような送達系は、反応試薬(例えば、適当な容器中のオリゴヌクレオチド、酵素など)の貯蔵、輸送またはある場所から別の場所への送達を可能とする系および/または補助材料(例えば、バッファー、アッセイの実施に関する説明書など)を含む。例えば、キットは関連のある反応試薬および/または補助材料を含む1以上の封入物(例えば箱)を含む。本明細書において「断片化キット(fragmented kit)」とは、それぞれ全キット成分の一部分を含む2以上の個別容器を含んでなる送達系を意味する。これらの容器は意図する受容者に一緒にまたは個別に送達することができる。例えば、第一の容器にアッセイに用いる酵素を含有し、第二の容器にオリゴヌクレオチドを含有してもよい。「断片化キット」とは、連邦食品・医薬品・化粧品法の520(e)条の下で規制されているアナライト特異的試薬(ASR)を含有するキットを包含するものとするが、これに限定されるものではない。実際、それぞれ全キット成分の一部分を含む2以上の個別容器を含んでなるいずれの送達系もこの「断片化キット」という用語に含まれる。これに対し、「組合せキット」とは、単一の容器(例えば、それぞれ所望の成分を収容する単一の箱)に反応アッセイの全成分を含有する送達系を意味する。「キット」とは、断片化キットと組合せキットの双方を含む。
【0101】
本キットはまた、本方法の実施を容易にするための、1以上の試薬、バッファー、ハイブリダイゼーション媒体、核酸、プライマー、ヌクレオチド、プローブ、分子量マーカー、酵素、固相支持体、データベース、処理順序を計算するためのコンピュータープログラムおよび/またはマルチウェルプレートなどの使い捨て実験器具も含み得る。本キットに含めることができる酵素としては、ヌクレオチドポリメラーゼなどが挙げられる。固相支持体としてはビーズなどが挙げられ、分子量マーカーとしてはコンジュゲート可能なマーカー、例えば、ビオチンおよびストレプトアビジンなどが挙げられる。
【0102】
一つの実施態様では、このキットは、被験体において骨髄性癌またはリンパ性癌を診断するために本明細書に記載される方法を実施するための説明からなる。これらの説明は、紙に印刷したものまたはコンピューターで読み取り可能な媒体などの有形媒体によって理解できる任意の形態で提供することができる。
【0103】
本発明のなおさらなる態様は、TET2遺伝子の突然変異の存在を検出するため、および/またはTET2遺伝子の発現を分析するために、定義されたような方法で使用可能な、少なくとも1つの核酸プローブまたはオリゴヌクレオチドまたは少なくとも1つの抗体を含んでなる上述のキットの、骨髄性癌またはリンパ性癌を診断するための使用に関する。
【0104】
有利には、骨髄性癌は骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患および骨髄異形成/骨髄増殖性症候群からなる群から選択される。
【0105】
いっそう有利には、該リンパ性癌は、TまたはB細胞リンパ腫などのリンパ腫、より好都合にはT細胞リンパ腫からなる群から選択される。
【0106】
さらに別の態様において、本発明は、腫瘍、TET2の突然変異、TET2の無発現または末端切断型TET2の発現が検出された、骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍に罹患している患者を処置するための低メチル化剤(hypomethylating agent)の使用に関する。
【0107】
好ましくは、該骨髄性腫瘍はMDSではない。
【0108】
低メチル化剤(hypomethylating agent)は当業者に周知であり、例えば、アザシチジンが挙げられる。
【0109】
最後の態様において、本発明は、腫瘍、TET2の突然変異、TET2の無発現または末端切断型TET2の発現が検出された、骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍に罹患している被験体を処置するための方法であって、該被験体に治療上有効な量の低メチル化剤(hypomethylating agent)を投与する工程を含んでなる方法に関する。
【0110】
好ましくは、該骨髄性腫瘍はMDSではない。
【0111】
好ましくは、該低メチル化剤(hypomethylating agent)はアザシチジンである。
【0112】
治療上有効な量の低メチル化剤(hypomethylating agent)は、当業者ならば簡単に決定することができる。リンパ性腫瘍または骨髄性腫瘍を処置するためのアザシチジンの治療上有効な量の例としては、引用することにより本明細書の一部とされるFENAUX et al. (Blood, vol.110, 817, 2007)に開示されている投与計画を引用することができる。
【0113】
以下、アミノ酸配列、核酸配列および実施例を参照しながら本発明をより詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例の詳細に限定されるものではない。むしろ、本発明は本明細書の例に明示されていないが、当業者が過度な努力無く見出せる詳細を含んでなるいずれの実施態様にも関する。
【実施例】
【0114】
1.MDS、MPDおよびAMLにおけるTET2遺伝子突然変異の同定
本発明者らは、に罹患し、かつ、染色体4切断点4q24近傍にゲノム欠失を伴う後天的染色体転座を持つ骨髄性癌(AML(nAML1、nAML2、nAML3)またはMDS(MDS01、MDS02およびMDS03))に罹患している6人の患者を特定した。これらの欠失は1症例では同型接合性であり、他の症例では異型接合性であり、この領域に腫瘍抑制遺伝子が存在することが示唆され得る。
【0115】
まず、FISH分析で、これらの患者で共通に欠損している領域を〜500kb間に狭めることができる(データは示されていない)。コンピューターおよびRT−PCRを用いた分析により、この領域にある単一の遺伝子テンイレブントランスロケーション(TET2)の構造が明らかになった(図1)。
【0116】
TET2遺伝子は150Kbにわたって散在する11のエキソンを含んでなる。エキソン3〜11によりコードされている推定TET2タンパク質は、ヒトおよびマウスの3メンバーファミリー(TETファミリー)に属す。TETファミリーのタンパク質はそれらの中央とカルボキシ末端部分に単一のオーソロガスショウジョウバエタンパク質を有する2つの保存性の高い領域を共通に持っている(図1)。
【0117】
図1は、TET2のタンパク質配列(配列番号2)を示し、種間で保存されている領域が強調されている(太字)。
【0118】
TET2では、エキソン3の5’末端にある翻訳開始コドン(cDNAのヌクレオチド862〜864またはエキソン3の27〜29)は2002アミノ酸のタンパク質の合成を可能とすると推定された(図1)。エキソン2にある選択的ATG(cDNAのヌクレオチド798〜800またはエキソン2の111〜113)は21多いアミノ酸の合成を命令する。さらなる開始部も排除されない。
【0119】
TET2転写物は広く発現され(ONO et ah,前掲, 2002; LORSBACH et ah,前掲, 2003)、利用可能なデータにより示唆されるように、TET2の発現はヒト骨髄および血液組織においてRT−PCRのより確認された(データは示されていない)。より具体的には、TET2転写物は臍帯血CD34細胞、健常対照の顆粒球および造血細胞系統において検出された。
【0120】
最後に、これら6人の患者は、5人が第4染色体に欠失を有し、MDS01では両コピーとも欠失していた。
【0121】
MPDにおける違うアプローチを用いた場合にも、同じ4q24領域の関与が見られた。CD34CD38多能性前駆体、方向付けされたCD34CD38前駆体および成熟細胞の分析により、本発明者らは診断において造血拡大速度の異なる2つのJAK2 V617F MPDサブセットを特定するに至った(DUPONT et al, Blood, vol.110(3), p:1013-21, 2007)。第一のサブセットは悪性クローン拡大の遅れを特徴し、すなわち、方向付けされた前駆体の下流である。これに対し、第二のサブセットの患者はクローンが早期に拡大し、方向付けされた前駆体の上流である。本発明者らは、第二のサブセットの患者が悪性クローンの早期拡大を促進することができる分子欠陥を持っているという仮説を立てた。この第二のサブセットの5人の患者(MPD01〜MPD05)を、推定クローン細胞(顆粒球)とポリクローナル細胞(末梢血単核細胞またはリンパ球)DNAを比較するために、高分解CGHおよびSNPアレイを用いて分析した。1人の原発性骨髄繊維症(PMF)患者(MPD01)と1人の真性赤血球増加症(PV)患者(MPD04)は、第4染色体のq22からqterの範囲にコピー数の変更なく(片親性ダイソミー;UPD(20))、大きな後天的異型接合性消失(LOH)を示した。第三の患者(MPD05)は、この4q24領域にある後天的欠失を示した。MPD05におけるこの325kbの欠失は、患者MPD01およびMPD04の4q24 LOH領域に含まれ、単一候補遺伝子としてのTET2を含んでいた。この領域は他の2つの検討MPDサンプル(MPD02およびMPD03)では正常であった。
【0122】
4q24領域は骨髄性新生物に罹患している患者では影響を受けており、また、TET2はこの領域に位置していたことから、これらの患者では、TET2遺伝子の完全性が損なわれている可能性がある。さらに、患者MDS01における2コピーのTET2の欠失および他の8人のMDS、MPDまたはAML患者における1コピーの再発欠失により、TET2は候補腫瘍抑制遺伝子であると言える。
【0123】
よって、これらの患者においてTET2遺伝子の変異を検出するために、TET2遺伝子に対してPCRを行った。重要なこととしては、二対立遺伝子性の改変を検出するために両方の対立遺伝子を分析した。
【0124】
2.TET2遺伝子の変異を検出するための試験手順
2.1.TET2の突然変異または欠失の同定に用いるプライマー(表2)
【表2】


【0125】
2.2.PCR
PCRは、APPLIED BIOSYSTEM PCR 9700にて、25〜50ngのDNAから出発し、20μLで行った。
【0126】
各サンプルに対して、TET2遺伝子に存在する突然変異/欠失を検出するために17回のPCRを用いた。混合物は次のように調製した。
【0127】
【表3】

【0128】
本発明者らは次のようなPCRサイクル条件を用いた。
【表4】

【0129】
2.3.PCR産物の配列決定
最後に、Big DyeターミネーターV1.1および3130XLシーケンシングマシーン(双方ともAPPLIED BIOSYSTEMSから)を用い、EUROFINS MWG Biotech (France, 9, rue de la Laponic, 91967 Les Ulis cedex)または"Departement des services commun de l'Institut Cochin" (Plate forme transcriptomique, Hopital Cochin/Bat G. Roussy/3eme etage, 27 rue du Fg St Jacques, 75014 Paris)によりPCR産物の配列決定を行った。
【0130】
3.異型接合性4q24欠失を有するMDSまたはAMLに罹患している患者におけるTET2遺伝子の突然変異
3.1.腫瘍細胞の場合
TET2遺伝子の完全性は、染色体4切断点4q24近傍にゲノム欠失を伴う異型接合性後天的染色体転座を有する上記8人の患者の4q24「完全」コピーで確認した。
【0131】
これらの対立遺伝子におけるTET2遺伝子の突然変異を同定するため、4q24の再配列を有する8人の患者の骨髄サンプルから抽出したDNAの8つのコードエキソンとそれらのスプライス部位の配列を、従前に記載されているようなPCRにより調べた。
【0132】
表3は、MPD、MDSまたはAMLに罹患し、かつ、1つの対立遺伝子に4q24欠失を有する患者における、TET2遺伝子の両対立遺伝子の状態を開示している:
【表5】

【0133】
野生型対応物を有する患者から得られた配列を比較したところ、6人の患者でヌクレオチド変異が同定された(表3)。変異は同定された多型に属するものではなかった。患者nAML1およびnAML2は一ヌクレオチド変異を有し、患者nAML2ではI1873T、患者nAML1ではR1896Mとなっていた。患者MDS03は、N1624の代わりに停止コドンを導入するCAGからTAGへの変異を示した。患者MPD01は、NQ557の代わりに停止コドンを導入する一ヌクレオチド変異を示した。患者MDS02は4塩基対の挿入を有し、L560の後に停止コドンの6アミノ酸をもたらした。患者MPD04はフレーム内に9ヌクレオチドの欠失を持っていた。患者nAML3のDNAには注目に値するヌクレオチド変異は見られなかった。患者MDS01はTET2遺伝子の二対立遺伝子性の欠失を有する。
【0134】
3.2.患者の非腫瘍細胞の場合
見られた変異が体細胞的に獲得されたものであることを確認するために、本発明者らは、入手可能な場合、非腫瘍サンプルのDNAを分析した。
【0135】
患者nAML2では、EBV形質転換B細胞集団のDNAでTからCへの変異は見られなかった(図2)。患者nAML1では、自己骨髄移植後に得られたサンプルを分析したところ、野生型Gと変異型Tの比率が、診断サンプルに比べて逆転していることが示された(データは示されていない)。同様に、変異型Tに相当するシグナルは患者MDS03の刺激されたPBLから抽出されたDNAにはほとんど存在しない(図2)。この分析はまた、非腫瘍細胞において、MPD04では突然変異が存在しないこと、またはMPD05では欠失が存在しないことを示した(データは示されていない)。この分析はさらに、患者MPD01からの末梢単核細胞では少量の残留野生型配列が検出されることを示した(データは示されていない)。
【0136】
図2は、2人の患者nAML2とMDS03から得られたサンプルに対するPCRの配列決定により得られた配列トレースを示し、突然変異が腫瘍サンプル(R:リバースプライマーおよびF:フォワードプライマー)および非腫瘍サンプル(NTまたはPBL)にのみ見られることを示している。
【0137】
これらの結果を考え合わせると、2コピーのTET2遺伝子は多様な骨髄性新生物に罹患している患者において標的とされることを示し、この、欠失および点突然変異を伴う染色体転座という2つの異なる事象により、TET2は腫瘍抑制遺伝子であると確認される。
【0138】
4.細胞遺伝学的に検出可能な4q24欠失の無いMDSまたはAMLに罹患している患者におけるTET2遺伝子の変異
TET2の突然変異が染色体異常とは無関係にも起こるかどうかを確認するため、異なるサブタイプMDS(n=81)、sAML(n=21)、CMML(n=9)、JAK2V617F陽性MPD(n=181)および既知の4q24異常を持たないJAK2V617F陰性MPD(n=17)を有するさらに309人の患者の骨髄サンプルのDNAを、従前に記載されているようなPCRにより分析した。
【0139】
表4は、MDSまたはAMLに罹患している患者において同定されているTET2欠失の状態を開示している:
【表6】

【0140】
RA、不応性貧血;RARS、環状鉄芽球を伴う不応性貧血;RARS−T、血小板増多を伴うRARS;RAEB、芽球増多を伴う不応性貧血;RAEB1:芽球5〜9%;RAEB2:芽球10〜19%;AML、急性骨髄性白血病;FAB、French American British分類;del、欠失;FS、フレームシフト;ND、実施せず。試験した総てのMDS/AML(22/27)はJAK2V617F陰性であった。MDS03はRAEB1期とRAEB2期で試験した。患者MDS34は一連の2サンプルを分析した。試験の初期に分析した選別患者を太字で示す。
【0141】
表5は、MPDに罹患している患者において同定されたTET2欠陥の状態を開示している:
【表7】

【0142】
TET2コード配列の明白な異常が45人の患者に見られ、保存的アミノ酸置換、フレーム内停止コドンの生成またはフレームシフトが起こっていた(表4および5)。さらに1人の患者(MDS07)では、いくつかの条件およびプライマー対を用いたにもかかわらず、エキソン11の5’部分の増幅だけが微量のPCR断片を生じた(データは示されていない)が、これはこの領域に影響を及ぼす未同定の構造的ゲノム再配列によるものであった。MDS(22/111)およびJAK2 V617Fを伴うBCR−ABL陰性(21/181)、またはMPL W515L/K(1/6)またはこれらの突然変異の無いもの(2/11)の総ての種類でTET2の欠陥が見られた。
【0143】
これらの結果は、TET2欠陥は、高い罹患率を有する、選別していない多様な骨髄性障害で確認することができる(46/309=17%)。例として、患者MDS04はK1299DおよびR544Stopをもたらす2つの変異を示した。患者MDS10は2つの突然変異Y1724StopとQ321Stopを持っていた。患者sAML2はS1898Fをもたらす点突然変異を持っていた。見られたこれらの突然変異はTET2タンパク質の部分的または全面的機能欠失をもたらし得る。TET2遺伝子の欠失などの他の欠陥は見逃された可能性があり、従って、これらの悪性疾患におけるTET2欠陥の頻度は過小評価されていると考えることができる。
【0144】
全体的に見て、TET2欠陥を有する患者の19/55では、おそらくTET2の両コピーを標的とする2つの異なる突然変異が検出された。この点は、患者MDS42から得られたPCR断片をサブクローニングした後に個々の分子を配列決定することにより確認した。35/55サンプルで単一の欠陥が見られ、TET2がハプロ不全的にこれらの悪性疾患に役割を果たしている可能性があることを示唆する。
【0145】
5.TET2突然変異はMDSの初期の前駆体を標的とする
MDSはHSCに起源する骨髄性悪性疾患である。もしTET2に見られる突然変異が原因であれば、それらはHSCにおいても見られるはずである。これを検討するため、本発明者らはまず、4人のMDS患者(MDS03、MDS09、MDS28、MDS35)からのHSCおよび造血前駆体を含むCD34細胞におけるTET2欠陥の存在を分析した。
【0146】
図3aは、RAEB1期およびRAEB2期の患者MDS03からの選別したCD34細胞の配列ヒストグラムを示す。比較のために無選別骨髄サンプルと野生型対照に見られる配列を示す。アスタリスクは突然変異ヌクレオチドを示す。
【0147】
図3bは、RAEB1期の選別MDS03 CD34CD38およびCD34CD38細胞から単離されたDNAのPCR−RFLP分析を示す。増幅された断片をTas1で消化し、アガロース泳動によりサイズ分画した。突然変異TET2の割合は、両対立遺伝子(wt+mut)により生じたシグナルに対する変異型(mut)または野生型(wt)シグナルの強度を測定することにより評価した。消化無し(−)および消化(+)。(ctl)は対照DNAからのPCR産物に相当する。MW:分子量。
【0148】
図3cは、BseLIエンドヌクレアーゼを用い、MDS09患者の選別CD34CD38およびCD34CD38細胞から直接行ったTET2のPCR−RFLP分析を示す。
【0149】
図3dは、1ウェル当たり1細胞で増殖させた患者MDS09の選別CD34CD38およびCD34CD38細胞の、BseLIを用いたPCR−RFLPによる遺伝子型分析を示す。注釈はbの場合と同様である。ヒストグラムは野生型(グレー)または変異型(黒)TET2を有するクローンの画分を表す。アスタリスクで示されるCD34CD38クローンに野生型断片が存在しないことに注意。
【0150】
総ての場合で、変異型TET2配列が検出できた(図3)。これらの患者のうち1人(MDS03)で、芽球増多を伴う不応性貧血1(RAEB1)およびRAEB2期でCD34細胞を分析することができた。興味深いことに、RAEB1期では野生型配列が検出されたが、RAEB2期には検出されず(図3a)、このことは疾患の進行とともにTET2変異前駆体が拡大することを示唆する。
【0151】
本発明者らは次に、これら4人の患者からのCD34を、FACSDivaセルソーター(BECTON DICKINSON)にてCD34−PeCy5およびCD38−FITC抗体(IMMUNOTECH)を用い、CD34CD38(HSCおよび多能性前駆体に相当する)とCD34CD38(より成熟した前駆体に相当する)細胞集団に分画した。2人の患者(MDS03およびMDS09)では、変異型TET2配列と野生型TET2配列を識別するためにPCR−RFLP分析を用いた。両患者とも、変異型TET2の存在量はCD34CD38細胞からCD34CD38へと増加していた(MDS03では16%から54%、MDS09では26%から48%)(図3b、c)。MDS09からの単一の造血前駆体を播種することにより、細胞レベルでさらなる分析を行った。
【0152】
MDS09骨髄からの選別CD34CD38細胞を、10%FBS(STEM CELL TECHNOLOGIES)、および前期サイトカインカクテル(トロンボポエチン(Tpo)、インターロイキン−3(IL3)、FLT3−L、幹細胞因子(SCF)およびインターロイキン−6(IL6))を添加したMEMα培地中のMS5細胞系統の密集層に上に1ウェル当たり1細胞で播種した。CD34CD38細胞も、メチルセルロース培養(DUPONT et al,前掲, 2007)で用いたものと同じ「後期」サイトカイン(SCF、IL3、エリスロポエチン(Epo)および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF))の組合せを用いて、1ウェル当たり1細胞で播種した。3週間後(CD34CD38)または10日後(CD34CD38)に、個々のクローンをさらなる遺伝子型分析のために回収した。
【0153】
これらの結果は、TET2突然変異がCD34CD38細胞およびCD34CD38細胞由来のそれぞれ32クローンのうち8(25%)、そして30クローンのうち18(60%)で同定されたことを示す(図3d)。興味深いことに、TET2の野生型コピーは変異型TET2を有するクローンから常に増幅されるわけではなく、このことは大多数の細胞におけるその欠損を示唆する。
【0154】
他の2人の患者(MDS28、MDS35)では、CD34CD38サンプルからCD34CD38サンプルへのTET2突然変異の存在量の増加を、配列グラフを用いて評価した。より厳密にするために、MDS28サンプルからの増幅断片をサブクローニングし、個々の細菌クローンの配列決定を行った。変異型コピーは、MDS28のCD34CD38集団ではまれにしか検出できなかったが、CD34CD38集団ではTET2配列の32%に相当した(データは示されていない)。これらのデータは、TET2突然変異がCD34CD38細胞を標的とすること、そしてMDSでは、TET2変異の存在量が未熟前駆体から成熟前駆体へと増加することを示し、これは造血系分化の初期段階での変異細胞の選択的優位性を示唆する。
【0155】
3つのsAMLサンプル(sAML2、sAML4、sAML5)でも、CD34細胞でTET2の突然変異が見られた(データは示されていない)。分析したところ、sAML4、sAML5選別細胞では、CD34CD38集団とCD34CD38集団の間に変異型TET2の存在量に著しい変化は見られなかった。
【0156】
6.MDSにおけるTET2突然変異の罹患率および予後への影響
MDSにおいてTET2突然変異の罹患率および予後への影響を確認するために、本発明者らは、GFM多施設共同治験に登録されている204件のMDSおよびMDS後AML(RA/RCMD/MDS−U/5q−が41件、RCMDが18件、RARS/RCMD−RS/RARS−Tが28件、RAEB 1が43件、RAEB 2が32件、MDS後AMLが44件)において、TET2突然変異とそれらの予後価の後向き分析を行った。TET2突然変異分析は従前に記載されているように行い、結果を表6に示す。
【0157】
表6は、MDSまたはAMLに罹患している患者において同定されたTET2欠陥の状態を開示している:
【表8】



【0158】
本発明者らは、43/204 ptsにおいて、エキソン3〜11の直接配列決定によりTET2遺伝子の59の突然変異(保存されたドメインにおいて、フレームシフトが27、ナンセンス突然変異が21およびミスセンス突然変異が11)を見出した(表6)。WHOサブタイプによる頻度は、RAが21.8%、RCMDが5.2%、RARS/RARS−T/RCMD−RSが21.4%、RAEB1が34.9%、RAEB2が15.6%、MDS後のAMLが19%であった。4q24領域の異常は、CGHで分析した場合の1/46ptsにおける欠失、SNPアレイで分析した場合の3/22患者における3つのLOH、SNPアレイで分析した場合の5/23ptsにおける2つの欠失などが見られた。よって、4q24異常の全体的な罹患率は患者の21.6%(44/204)であった。20人の患者は、直接配列決定(17人)または配列決定とSNPアレイ(3人)により同定された2つのTET2異常を有しており、変異を有する患者の43.5%でこの2コピーの遺伝子が標的となっていた。
【0159】
次に、TET2突然変異の予後への影響を確認するために、コックスハザード比例モデルを用いて単変量および多変量生存分析を行った。TET2コード配列の突然変異を有する43人の患者と非変異患者を比較したところ、性別、年齢、化学療法または放射線療法歴、Hbレベル、WBC数、ANC、血小板数、%骨髄芽細胞、多系列異形、WHOおよびFABサブタイプ、核型ならびにIPSSに関する最初の特徴には有意差は見られなかった。
【0160】
この分析により、5年生存率(カプラン−マイヤー曲線)は、TET2変異患者では非変異患者に比べて有意に高かった(p<0.05)。
【0161】
7.SNPまたはCGHアレイ分析により検出された4q24異常を有するMPDに罹患している患者におけるTET2遺伝子の再配列
35のMPDサンプルのうち、4人の患者がSNPアレイによりLOHを有しており、両対立遺伝子上のTET2遺伝子内の突然変異を分析した。4サンプルのうち3つで、明確な突然変異または欠失が見られた。
【0162】
表7は、MPDに罹患している患者におけるTET2遺伝子の両対立遺伝子の状態を開示している:
【表9】

【0163】
表7において、「PMF」は原発性骨髄繊維症を、「PV」は真性赤血球増加症を、「EV」は本態性血小板増多症を表す。これらの疾患は総て、クラスIIのMPDである。
【0164】
患者IGR−2は、3つのアミノ酸P1237、L1238、S1239の欠損をもたらす9塩基対フレーム内欠失を有していた。SNP分析および配列トレースの分析により示されたように、患者IGR−1およびIGR−2他方のTET2コピーに欠損を有していた。患者の非腫瘍細胞にはこれらの突然変異は見られなかった。これらのデータから、不活性化TET2がMPDの発症に関与していることが確認される。
【0165】
他の17人の患者でTET2遺伝子を体系的に配列決定したところ、2人の患者が1つの対立遺伝子に停止コドンを有し(IGR17:S354Stop、IGR−18:R1216Stop)、1人の患者がエキソン11にフレームシフトをもたらす1ヌクレオチド欠失を有することが明らかになった。
【0166】
8.TET2再配列の獲得に関する分析
最近では、いくつかのMPDでJAK2V617Fは誘発事象ではない可能性があることを示す証拠がある。従って、本発明者らはMPDサンプルを用いて、これらの疾患におけるTET2欠陥およびJAK2V617F突然変異の相対的役割を評価し、突然変異の一連の獲得への洞察を得た。本発明者らはまず、患者IGR2などの、両遺伝子に突然変異を有する5人のMPD患者からの造血系前駆体を分析した。
【0167】
MPDサンプルでは、未熟CD34CD38細胞は、記載されているように(DUPONT et al.,前掲, 2007)、B、NKおよび顆粒球分化(リンパ−骨髄性分化)の刺激を可能とする条件で、4〜6週間、1ウェル当たり1細胞で播種し、一方、より成熟したCD34CD38細胞は赤血球/顆粒球メチルセルロースアッセイで増殖させた。個々のクローンをフローサイトメトリーおよび遺伝子型分析によるB、NKおよび顆粒球分化の分析のために回収した。CD34CD38細胞は、37%FBS(STEM CELL TECHNOLOGIES)および記載されているようなサイトカインカクテル(DUPONT et al.,前掲, 2007))を添加した2%標準メチルセルロース中、培養ディッシュ当たり1,500〜3,000細胞を播種した。赤血球バースト形成単位(BFU−E)および顆粒球/マクロファージコロニー形成単位(CFU−GM)から増殖させた個々のコロニーを14日目に採取した。得られたクローンの、両分子欠陥の存在を分析した。
【0168】
これらの結果は、試験した総ての患者で、配列分析が、リンパ−骨髄性前駆体に由来するクローンにはTET2およびJAK2の両方の欠陥が存在していたことを明らかにしたことを示した(データは示されていない)。興味深いことに、JAK2V617F突然変異はTET2欠陥が存在しない場合には見られなかったが、TET2突然変異はJAK2V617Fが存在しない場合にも見られた。これらの結果は、MDSの場合と同様、TET2突然変異はMPD患者の未熟な前駆体に存在し、疾患の発症時にTET2欠陥がJAK2突然変異に先行することを示唆する。
【0169】
悪性クローンの増幅におけるTET2突然変異の役割をさらに定義するために、本発明者らは未熟(CD34CD38)前駆体に由来するコロニーの遺伝子型を方向付けされた(CD34CD38)前駆体に由来する赤血球および顆粒球コロニーの遺伝子型と比較した。
【0170】
これらの結果は、3人のMPD患者(MPD01、MPD04、MPD35)において、種々の造血系分化段階のコロニーはほとんど総てTET2突然変異を有していたことを示し、TET2変異型クローンは造血の初期段階で拡大したことが示唆される(データは示されていない)。他の2人の患者(MPD05、MPD20)では、最も未熟な前駆体は野生型であり、最も方向付けされた前駆体はTET2が変異していた。これら2人の患者のJAK2野生型前駆体で、本発明者らは、TET2欠陥を有するクローンの割合が、未熟前駆体(それぞれ2/37と0/34)から方向付けされた前駆体(それぞれ10/23と9/54)へと高くなっていることを見出した。本発明者らの結果を考え合わせると、初期の分化段階でのTET2変異クローンの選択的優位性がJAK2V617F突然変異に依存しないことを示唆される。
【0171】
全体的に見て、MPDサンプルからのこれらのデータは、TET2欠陥が(i)造血系分化の初期段階で起こりこと、(ii)それらがJAK2V617F突然変異の発生に先行し得ること、および(iii)それらが、クローンが骨髄性分化を始める際にそのクローンに選択的優位性を与えることを示している。
【0172】
9.in vivoにおいてTET2変異細胞の移植および増殖
本発明者らは、TET2の機能欠失が造血幹細胞に増殖的優位性を与えると推論した。NOD−SCID再増殖能を有するHSCにおいてTET2突然変異が存在することを実証するために、本発明者らは、NOD−SCIDマウスに、TET2突然変異を有するJAK2V617F MPD患者から単離されたCD34細胞を注射することによる異種移植アッセイを用いた。
【0173】
TET2突然変異を有するJAK2V617F MPD患者からのCD34細胞(1〜10×10細胞)を、事前に200μgの抗CD122抗体(JAMES et al., Blood, vol. 112(6), p:2429-36, 2008)で処理し、致死量以下の照射を行った(3.5Gy)NOD−SCIDマウスに静注した。移植後3、6および12週目に右大腿かヘパリン処理シリンジで骨髄を得、15週目にマウスを屠殺した。ヒト細胞移植片は、フローサイトメトリーにより評価される、ヒト白血球集団(CD45)と赤血球集団(CD45CD36およびCD45CD36グルコホリンA)の合計により評価した。骨髄細胞は、JAMES et al,(前掲, 2008)に記載されているように、ヒト細胞の選択的増殖を可能とするメチルセルロースアッセイおよび長期培養誘導細胞(LTC−IC)アッセイ用にそれぞれ培養ディッシュおよび96ウェルプレートに播種した。その後、個々のコロニーを採取し、遺伝子型分析を行った。
【0174】
本発明者らはまず、これらのJAK2V617F MPD患者からのCD34細胞の移植後のキメラ現象の速度を、TET2欠陥の無い3人のJAK2V617F MPD(MPD09、MPD11、MPD27)のTET2突然変異と比較した。
【0175】
図4aは、移植後3、6、12および15週目にモニタリングしたマウス骨髄中のヒトCD45陽性細胞のパーセンテージを示す。MPD01およびMPD04はTET2欠陥を有する患者であり、MPD09、MPD11およびMPD27は同定されるTET2欠陥が無い対照患者である。
【0176】
図4bは、患者MPD04およびMPD09からのCD34細胞3×10個を移植して15週間後のNOD−SCID骨髄に存在するヒト細胞のフローサイトメトリー分析を示す。ヒトCD45(hCD45)陽性骨髄性細胞およびリンパ性細胞のパーセンテージは抗CD45−PC7、抗CD33−APCおよび抗CD19−PE抗体を用いて測定した。
【0177】
これらの結果は、TET2突然変異の無い3人の患者からのヒト細胞は時間が経つにつれて消失したことを示す(図4a)。
【0178】
これに対して、2人のTET2変異患者からの細胞を移植したマウスの骨髄中のヒト細胞のパーセンテージは時間が経つにつれて増加した(図4a)。これらのマウスでは、分化は、リンパ分化が好ましい正常HSCで見られるものとは異なり、CD33およびCD19抗原フローサイトメトリー分析から判断されるように(図4b)、リンパ性前駆体を犠牲にして骨髄性前駆体へとゆがめられた(ROBERT-RICHARD et al., Haematologica, vol.17(3), p:637-41, 2003)。
【0179】
移植15週間後(W15)のマウス骨髄に存在するヒト細胞をin vitro前駆体およびLTC−ICアッセイで試験し、TET2およびJAK2の突然変異の存在を分析した。MPD01およびMPD04サンプルの双方からのプールしたW15 FU由来コロニー、ならびにマウス中に存在する個々のヒトLTC−ICおよび前駆体の総てでTET2欠陥が見られた(データは示されていない)。これらの結果を移植直前(D0)に行った前駆体アッセイと比較した。患者の方向付けされた前駆体細胞(D0 CFU)から生じたコロニーは総てTET2突然変異を持っていた。
【0180】
これらの結果は、TET2突然変異がHSCに見られることを示す。興味深いことに、これらの結果はさらに、移植時にTET2突然変異のみを有する前駆体細胞の割合はTET2およびJAK2V617Fの両突然変異を有する細胞を犠牲にして増加したことを示した。これらの細胞は元のHSC集団を反映すると思われる。よって、これらの知見は、野生型JAK2を有するTET2変異HSCはTET2/JAK2二重変異体HSCよりも数が多いことを示し、さらにこれらの患者における「−プレJAK2V617F」事象としてのTET2の突然変異が確認される。
【0181】
よって、本発明者らのデータは、TET2欠陥がHSCにJAK2V617Fとは非依存的に選択的移植優位性を付与するという仮説に適合する。
【0182】
10.同定された突然変異のTET2遺伝子上の位置
本発明者らは、TET2の不活性化はヒトMDS、MPDおよびsAMLに共通の初期事象であり、無選別の一連の患者におけるTET2突然変異の頻度が、MDSで15/81=18.5%、CMMLで2/9=22%、MPDで24/198=12%、sAMLで5/21=24%であったことを報告する。これらの分析において、本発明者らは、保存されているドメインの外側に存在するアミノ酸変異を考えなかったことを注記しておかなければならない。表1に示されるプライマー対を用いたTET2遺伝子の配列決定により、TET2遺伝子の突然変異の数を特定することができる(図5)。
【0183】
図5は、タンパク質配列に沿って分布している、TET2遺伝子の同定された突然変異のいくつかの位置を示す。
【0184】
TET2配列に対する、同定されたTET2突然変異のマッピングは、このタンパク質の機能におけるカルボキシ末端保存領域(アミノ酸1860番〜1950番)の必須の役割を示唆する。
【0185】
最後に、変異を有する55人の患者のうち19人で、2つのTET2コピーを標的化する後天的遺伝子欠陥が検出されたことで、この遺伝子はヒト骨髄性悪性疾患の真の腫瘍抑制遺伝子であることが確認される。TET2欠陥は、2つの異なる骨髄性疾患であるMDSおよびMPDの双方で見られた。よって、それらの特徴的な臨床的および生物学的表現型には少なくとも別のさらなる協働事象が必要である可能性がある。TET2およびJAK2双方の突然変異を有するMPDサンプルでは、TET2突然変異はおそらく、本来の病歴の最初に、JAK2V617F突然変異の発生に先立って起こる。
【0186】
11.家族性MPDにおけるTET2遺伝子突然変異の同定
MPDに罹患している少なくとも2人の患者を有する家族を、これまでに記載されているような国内ネットワーク(BELANNE-CHANTELOT et al.,前掲, 2006)から採集した。MPDの診断は、2008年世界保健機関基準1に基づいて再検証した。全患者から書面にてインフォームド・コンセントを得た。
【0187】
第一工程において、本発明者らは常染色体優性遺伝に適合する家族の15人の発端者を、これらの家族性症例を説明する体質性の事象に関する検索で分析した。選抜した発端者はほぼPVまたはETに罹患していた。第二工程において、この分析を血液学的合併症を有する患者に、そしてTET2変異体を有する患者の親族に拡大した。
【0188】
本発明者らは、42のMPD家族(ヨーロッパ40家族、アフリカ2家族:家族F3およびF4)から、求めに応じられる少なくとも2人のMPD患者を含む、合わせて61人の患者の、TET2遺伝子の6009bpコード配列における突然変異を分析した。36人の患者は、PV(15)、ET(12)またはPMF(7)のいずれかからなる単純な表現型を示し、12年の追跡期間の後にも疾患の血液学的進行は見られなかった。他の27人の患者はそれらのMPD表現型に進行を受けており、すなわち、PVは骨髄繊維症(PV後MF、5)またはAML(12)へ進行し、ETはMF(4)またはAML(5)へ進行し、あるいはPMFはAMLとなった(1)。
【0189】
この分析は、頬側スワブから抽出したゲノムDNAにて、ゲノムDNAを放出されるために95℃で10分間加熱した後にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行った。精製したPCR産物を、BIGDYE TERMINATOR chemistry(APPLIED BIOSYSTEMS)を用い、APPLIED BIOSYSTEMS 3100キャピラリーシーケンサーにて配列決定した。
【0190】
JAK2V617F突然変異の状態は、従前にBELANNE-CHANTELOT et al. (前掲, 2006)で報告されているように決定した。
【0191】
TET2遺伝子の全コード領域を従前に記載されているように配列決定した。各TET2エキソンのコピー数を評価するため、単鎖蛍光断片(QMPSF)法(CHARBONNIER et al, Cancer Res., vol.60, p:2760-2763, 2000)の定量的マルチプレックスPCRを用いて2種類のマルチプレックスPCRを設定したF9遺伝子かDSCR1遺伝子のいずれかの短い配列を増幅する2つの付加的プライマー対を内部対照として用いた。PCR産物を、DNAジェネティックアナライザー(ABI 3100)を用いたキャピラリー電気泳動により分離した。この分析は、供試DNAサンプルと対照DNAから生じたピークの高さの比較に基づく。ピークの高さの定量的評価は、市販の分析ソフトウエア(GENEMAPPER VERSION 4.0, APPLIED BIOSYSTEMS)を用いて行った。
【0192】
表8は、12人のMPD患者で同定されたTET2突然変異を示す:
【表10】

【0193】
患者は最初に第二列に示されている表現型を持つと診断され、その後、第三列に示されている血液学的進行を有した。いくつかのサンプルで測定したところ、JAK2V617F対立遺伝子の存在量は一定の範囲を示した。
【0194】
図6は、本研究で同定された突然変異を示すTET2遺伝子およびタンパク質の模式図である。斜線の四角はエキソンを示す。末端切断型突然変異は黒星印で、ミスセンス突然変異は黒逆三角▼で示される。保存されている機能的ドメインはこのタンパク質スキームに四角で示されている。fs:フレームシフト。
【0195】
この分析に従い、本発明者らは、1人の患者でTET2の完全な欠失と、全部で39の点突然変異を同定した。これらの変異体を検討したところ、それらのうちの15(12人の患者で同定)が有害な異型接合性の突然変異であったことが示された。それらは、遺伝子全体の欠失が1つ、末端切断型突然変異が11(ナンセンス突然変異が3、out-of-frame挿入/欠失が6、スプライス部位突然変異が2)およびミスセンス突然変異が3という分布であった(図6、表8)。
【0196】
さらに、3つのミスセンス突然変異は総て民族的に一致する集団の165の対照個体には存在せず、それらの有害な作用が確認された。p.Leu1340Proおよびp.His1868Argの2つは、保存性の高いTET2機能的ドメイン(1134〜1444および1842〜1921)内に位置していた。末端切断型突然変異はこのコード配列にランダムに分布しているものと思われた(図6)。
【0197】
患者P4、P6およびP9では、TET2突然変異が同定された。前者では、エキソン3に位置する2つの突然変異の複対立遺伝子特異的増幅が、これら2つの分子事象が異なる対立遺伝子に起こっていて、TET2の二対立遺伝子性の不活性化をもたらしていることを示した(データは示されていない)。このように、これらの患者でTET2の二対立遺伝子性の不活性化が見られたことは、発癌の2ヒット劣性モデルの基準を満たし、TET2が腫瘍抑制遺伝子として働くという仮説を裏付ける。
【0198】
他の25の変異体はTET2のコード配列上に同定され、短い近傍のイントロン領域は多型であった。7つは非コード領域(イントロンまたは3’UTR)における置換であり、1つはイントロンショートタンデムリピート(縦列反復)の変種であり、4つはコード配列内のサイレント変種であり、13はミスセンス多型であった。それらは総て、公開データベースにおけるそれらの存在、またはそれらが無症候性の家族員で見られたという事実、または対照集団におけるそれらの属性に基づいて多型として分類された。機能的ドメインのいずれのものにもミスセンス多型は存在しないことに着目することが興味深い。
【0199】
12.TET2突然変異は2つの突然変異を有する患者で連続的に獲得された
家族F3の患者P4に関して、最近の三段階の進行PV、MFおよびAMLの7つの血液サンプルを入手できた。これらのサンプルを配列決定したところ、臨床事象および分子事象の時間性を決定することができた。
【0200】
図7は、患者P4(F3)におけるTET2およびJAK2の一連の研究を示す。TET2突然変異およびJAKV617Fのそれぞれに関して一連の電気泳動図が示されている。左の図は診断からの時間経過(年)と各サンプルの相当する表現型(白:ET;グレー:PV;斜線:ET後のMF;黒:AML)を示す。
【0201】
これらの結果は、JAK2V617FおよびTET2 p.Arg550X突然変異は、その患者がPVに罹患していた場合には、最初のサンプルにすでに存在していた。第二の突然変異p.Asn857fsは、7年後でMF診断の5か月前の第二のサンプルで検出可能であった。この一連の分析は、これらの各突然変異の存在量が経時的に、疾患の発症と並行して増えていたことを示した。
【0202】
最後に、TET2突然変異はJAK2V617F陽性および陰性患者で同等の割合で見られたが、このことは両遺伝子における分子事象が互いに独立に生じる可能性があることを示唆している。
【0203】
13.TET2分子事象は主としてPMFを有する患者または血液学的転換に向かって2番目の進行を受けたPVもしくはETを有する患者で見られた
合わせて12人の患者が少なくとも1つのTET2突然変異を有することが分かった。それらは試験した全MPD患者の20%を閉めた。
【0204】
図8は、少なくとも1つのTET2突然変異を有するこれら12人の患者の臨床状態を図で示したものである。白い四角はET段階を、グレーはPVを、斜線は骨髄繊維症(原発性(左上がり)またはPV後/ET(右上がり)のいずれか)を示し、AMLは黒い四角で示されている。分子分析を示す各矢印の上にはTET2に相当する突然変異の注釈がある。疾病期間(年)がバーの下に示され、「0」点は診断時を示す。死亡時点は必要な際に右端に垂直の線で示す。
【0205】
この分析は、これらのTET2欠陥は3つの主要なMPD表現型、PV(4/32)、ET(5/21)およびPMF(3/8)を有すると診断された患者において同定されたことを示す。TET2突然変異は、新生AMLおよび全身肥満細胞症を含む希な血液学的表現型を有する親族で見られた(データは示されていない)。総ての患者がTET2欠陥を有していたが、2人はJAK2V617F突然変異陽性であった。対立遺伝子の存在量は33から95%まで変動した(表6)。陰性例は、極めて活発なAMLを発症したET患者と早期に死亡したET患者であった(P5およびP6、データは示されていない)。本発明者らは、調査時にPV後またはET後MFを発症していなかったP3およびP7の2人の患者は、高レベルのJAK2V617F対立遺伝子存在量(それぞれ82および39%を、表6)を特徴とした。
【0206】
本発明者らの結果を考え合わせると、JAK2V617F陽性患者の20%(10/49)がTET2に関して突然変異しており、JAK2V617F陰性患者では17%(2/12)であったことが分かった。
【0207】
総ての患者がTET2突然変異を有したが、2人は、発症時に起こった、またはPVもしくはET、または二次的なAMLの後に二次的に獲得された骨髄繊維症を有した。従って、PVまたはET後にPMFまたは血液学的合併症を有する患者の29%(10/34)はTET2が変異していたのに対し、12年の平均疾病期間の後にも血液学的合併症と診断されなかった患者では7.4%(2/27)であったことが分かった。しかしながらやはり、TET2突然変異を有し、血液学的転換を示さずにPVまたはETを呈する両患者は疾病の活動経過を持っていた。
【0208】
臨床像、血液学的データまたはさらに患者の疾病経過と突然変異の種類および場所の間、または単一の異型接合性TET2突然変異を有する患者と2つのそれを有する患者の間に相関は無かった。図8に示されるように、TET2突然変異は診断時(P9)から20年後(P8)まで、患者ごとに疾病進行の異なる時点で見られ、すなわち、進行時期も様々であった[1〜16年]。
【0209】
14.TET2突然変異は初期の造血前駆体に存在し、JAK2V617Fとは無関係に獲得された
家族F3の患者P4と家族F2のP2とP3の3人の患者がそれらの前駆体細胞の分析に応じることができた。これらの患者から血液前駆体細胞は、PV段階およびMF後の芽細胞段階の、疾病の異なる二段階で入手できた。
【0210】
図9は、患者P2、P3およびP4の方向付けされた前駆体におけるTET2およびJAK2遺伝子型を開示している。ヒストグラムは、JAKV617FTP突然変異と2つのTET2突然変異を有するクローン(斜線)、JAK2V617F突然変異と1つのTET2突然変異(白)、野生型JAK2と2つのTET2突然変異を有するクローン(薄いグレー)、JAK2V617F突然変異と野生型TET2を有するクローン(グレー)および2つの遺伝子のいずれにも突然変異の無いクローン(黒)の画分を示す。患者P4については2つのサンプルを分析し、各バーの下に相当する段階を示す。分析されたクローンの数が示されている。
【0211】
これらの結果は、診断から8年後のPV段階に、内因性の赤血球コロニーはすでにp.Arg550X突然変異を有しているが(5/29)、p.Asn857fsは見られなかった(0/29、図9)。
【0212】
9年後の白血病転換後、2つを除き、遺伝子型分析をした総ての赤血球バースト形成単位(BFU−E)および総ての顆粒球マクロファージコロニー形成単位(CFU−GM)がJAK2V617Fと両TET2の突然変異を有していた(図9)。従って、前駆体分析によりこれらの事象の時間性を確認したところ、患者P4では、p.Arg550Xは疾病の最も初期に獲得され、最も後の段階はp.Arg550Xおよびp.Asn857fsの双方の存在を特徴とした。興味深いことに、2つのCFU−GMは両TET2突然変異を有し、JAK2V617F突然変異は無かった。患者P2では、JAK2およびTET2双方の突然変異でも、JAK2V617F突然変異単独でも、突然変異無しでもコロニーが見られた(図9)。このことは、この患者に関して、すでにJAK2が変異したクローンにおいてTET2突然変異が見られたことを示す。PVと診断された患者P3からのBFU−EおよびCFU−GMは総てJAK2とTET2双方の突然変異を有しており、JAK2事象とTET2事象に関する結論は得られなかった。
【0213】
15.TET2分子事象は主としてCMMLを有する患者に見られた
TET2における体細胞突然変異の性質および頻度もまた、WHO基準に従ってCMML1(n=70)またはCMML2(n=18)を有する88人の患者から採取した骨髄または末梢血、ならびに事前に同定されたCMMLの14の急性芽細胞転換において試験した。現行の倫理規制に従い、患者からインフォームド・コンセントを得た。慢性期のCMMLを有する患者は新たに診断されたか(n=43)、または造血系疾患が知られており、3か月ごとに治療回避、支援治療または細胞傷害性治療(ほとんどの場合でヒドロキシ尿素による)に関して追跡調査を行った(n=45)。
【0214】
血液および骨髄サンプルをEDTAに採取し、フィコール・ハイパークにより単核細胞を選別した。市販のキット(QIAGEN)を用いてDNAを抽出した。従前に記載されているようにTET2遺伝子のエキソン3〜エキソン11にわたるコード配列を増幅するよう設計された遺伝子特異的プライマーとともに標準的条件を用い、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および直接配列決定反応を行った。各PCR反応について、20ngのゲノムDNAをPCR増幅に用い、その後、磁性ビーズ精製と、ABI 3300キャピラリーシーケンサー(AGENCOURT BIOSCIENCE)を用いた二方向配列決定を行った。Mutation Surveyor(SOFTGENETICS)を用い、1134〜1444および1842〜1921にわたる保存領域に存在するナンセンスおよびミスセンス突然変異を検出し、配列を手動で再検証してフレームシフト突然変異を検出した。TET2異常はFM 992369 EMBLヌクレオチド配列データベースに従ってナンバリングした。
【0215】
TET2において同定された突然変異を表10に挙げている。
【0216】
【表11】



【0217】
これらの結果は、TET2遺伝子の変異状態が88人(50%)の患者のうち44人で検出されたことを明らかにした。診断時に検討した43人の患者で、TET2遺伝子の変異状態は18症例(42%)で確認された。このような変異状態は、疾病の経過に沿って検討した45人の患者のうち26人(58%)で確認された。従って、これらの結果は、TET2突然変異率が試験された他の骨髄性疾患のいずれよりもCMMLで高いことを示唆する。
【0218】
さらに、二対立遺伝子性の遺伝子変異を示唆するTET2配列の2つの異なる突然変異は、44人の慢性期CMMLを有する変異患者のうち18人(40%)(診断時に突然変異が確認された18人の患者のうち5人(27%)を含む)、および疾病の経過に沿って検討された26人の変異患者のうち13人(50%)で確認された。フレームシフト突然変異3、ナンセンス突然変異19、ミスセンス突然変異14およびスプライス部位の突然変異3を含む、合わせて69のTET2突然変異が確認された。これらの突然変異は最も頻繁にエキソン3(22件)、エキソン10(9件)およびエキソン11(10件)を含んだ。
【0219】
少なくとも2か月の追跡調査で診断時にTET2の状態が判定された43人の患者のうち40人で全生存率の分析を行い、TET2突然変異を有するこのコホートの16人の患者よりも1年短い全生存率を示したが、その差は有意に達しなかった。全生存率分析をWHO分類に従い、少なくとも2か月の追跡調査で、CMML1を有する29人の患者に限定したところ、その差は有意となった(p<0.01)。年齢、性別およびFAB分類を含む他の試験パラメーターに生存率に影響を及ぼしたものは無かった。最後に、これらの結果により、TET2突然変異が生存率を有意に引き下げる傾向を有するCMML1を有する29人の患者に関連していたことが確認された。
【0220】
16.リンパ性癌に罹患している患者におけるTET2遺伝子の変異
B細胞リンパ腫に罹患している157人の患者のCGH分析を行ったところ、2例で第4染色体全体の欠損、4例でTET2遺伝子を欠いた染色体4q配列の部分的欠失、および1例でTET2の下流側の重複を伴ったTET2の上流側の欠失が示された。これらの再配列はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(107例)で見られたが、濾胞性リンパ腫(50例)では再配列は見られなかった。
【0221】
本発明者らは、TET2のコード配列内のバリエーションに関して93人の患者を分析した。それらは33人がT細胞リンパ腫であり、60人がB細胞リンパ腫であった。
【0222】
T細胞リンパ腫からの10サンプルでは、フレームシフト10とナンセンス突然変異2とミスセンス突然変異2を含む14の突然変異が見られた。
【0223】
表9は、10人のT細胞リンパ腫患者で同定されたTET2突然変異を示す:
【表12】

【0224】
よって、これらの結果により、T細胞リンパ性腫に罹患している患者のTET2突然変異の頻度が30%であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】TET2のタンパク質配列(配列番号2)を示す。種間で保存されている領域が強調されている(太字)。
【図2】2人の患者AおよびEから得られたサンプルに関して得られたPCR産物の配列決定により得られた配列トレースを示す。突然変異は腫瘍サンプルのみに存在し、非腫瘍サンプル(NT)および末梢血リンパ球(PBL)には存在しないことが示されている。Rはリバースプライマーで得られた配列に相当し、Fはフォワードプライマーで得られた配列に相当する。WTは健常個体で得られた配列に相当する。
【図3】MDSサンプルにおいて、変異型TET2が未熟CD34細胞に見られ、で得られ、変異型クローンのin vivo拡大に関連していることを示す。
【図4】TET2欠陥を伴うJAK2V617F陽性MPD造血幹細胞は、高いNOD/SCID再増殖能を呈することを示す。
【図5】タンパク質配列に沿って分布したTET2遺伝子の同定された突然変異のいくつかを示す。保存された領域をグレーの斜線で示す。矢印はエキソン境界の位置を示す。FS:フレームシフト。
【図6】家族性骨髄増殖性新生物で同定された突然変異を示すTET2遺伝子およびタンパク質の模式図を示す。斜線の四角はエキソンを示す。末端切断突然変異は黒星印で、ミスセンス突然変異は黒逆三角▼で示す。保存されている機能的ドメインはタンパク質スキームに四角で示されている。fs:フレームシフト。
【図7】患者P4(F3)におけるTET2およびJAK2の一連の研究を示す。TET2突然変異およびJAKV617Fの各々に関する一連の電気泳動図を示す。左の図は診断からの時間経過(年)と各サンプルに関する対応する表現型を示す(白:ET;グレー:PV;斜線:ET MF後;黒:AML)。
【図8】少なくとも1つのTET2突然変異を有する12人の患者の臨床状態の模式図を示す。白い四角はET段階、グレーはPV、斜線は原発性(左上がり)またはPV後/ET(右上がり)のいずれかの骨髄繊維症を示し、AMLは黒い四角で示される。分子分析を示す各矢印の上にはTET2に相当する突然変異の注釈がある。疾病期間(年)がバーの下に示され、「0」点は診断時を示す。死亡時点は必要な際に右端に垂直の線で示す。
【図9】患者P2、P3およびP4の方向付けされた前駆体におけるTET2およびJAK2遺伝子型を示す。ヒストグラムは、JAKV617Fと2つのTET2突然変異(斜線)、JAK2V617Fと1つのTET2突然変異(白)、野生型JAK2と2つのTET2突然変異(薄いグレー)、JAK2V617Fと野生型TET2(グレー)および2つの遺伝子のいずれにも突然変異無し(黒)を有するクローンの画分を示す。患者P4に関して2つのサンプルを分析した(相当するステージを各バーの下に示す)。分析したクローンの数を示す。
【図10】MDS患者における臨床状態とTET2遺伝子型を示す。白い四角は低/int−1段階のMDSを示し、斜線の四角はint−2/高段階のMDSを示し、グレーは続発性のAMLを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍を診断するためのin vitro法であって、
(i)配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードするテンイレブントランスロケーションタンパク質ファミリーメンバー2遺伝子(TET2)の突然変異の存在を検出すること、および/または
(ii)TET2遺伝子の発現を分析すること
により、該被験体からの生体サンプルを分析する工程を含んでなり、
このようなTET2突然変異の検出、TET2の無発現の検出または末端切断型TET2の発現の検出が、骨髄性腫瘍またはリンパ性腫瘍を発症している、または発症する疾病素因のある被験体の指標となる、方法。
【請求項2】
診断対象の腫瘍が、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄増殖性疾患(MPD)および骨髄異形成/骨髄増殖性症候群を含む群から選択される骨髄腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨髄腫瘍が、骨髄異形成/骨髄増殖性症候群、より好ましくは慢性骨髄単球性白血病(CMML)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
診断対象の腫瘍が、リンパ腫、好ましくはT細胞リンパ腫からなる群から選択されるリンパ性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体が真性赤血球増加症(PV)または血小板血症(ET)に罹患しており、TET2の突然変異またはTET2の発現不足の検出が骨髄繊維症(MF)を発症している、または発症する疾病素因のある被験体の指標となる、被験体において骨髄繊維症(MF)を診断するための請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体が骨髄異形成症候群(MDS)に罹患しており、TET2の突然変異またはTET2の発現不足の検出が良好な予後を有する被験体の指標となる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記被験体が哺乳類、好ましくはヒトである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記突然変異が、配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードするTET2遺伝子の片方または両方の対立遺伝子で検出される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記突然変異が、欠失、挿入および点突然変異(スプライス部位に影響する突然変異、ミスセンス突然変異およびナンセンス突然変異など)からなる群に含まれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記欠失または挿入が、TET2タンパク質の無発現または末端切断型TET2タンパク質の発現をもたらす、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記末端切断型TET2タンパク質が、他のTETタンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、またはii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域の少なくとも1つ、好ましくは、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)を含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記欠失または挿入が、表I(核酸配列は配列番号39、アミノ酸配列は配列番号2参照)に挙げられている欠失または挿入の群から選択される、請求項11に記載の方法。
【表1】


【請求項13】
前記ミスセンス突然変異が、TET2タンパク質のオープンリーディングフレームに、好ましくは、TETタンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、およびii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つ、より好ましくは、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に位置する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ミスセンス突然変異が、I1175V、L1197N、H1219Y、E1235V、C1271W、K1299E、L1340P、R1302G、G1370E、A1344E、N1387S、V1417F、H1868R、G1869W、L1872P、I1873T、R1896MおよびS1898Fを含んでなるまたはからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ナンセンス突然変異が、TET2タンパク質のオープンリーディングフレーム内、好ましくは、TETタンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、およびii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つの手前または内部、より好ましくは、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)の手前または内部に位置する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記ナンセンス突然変異が、Q232Stop、Q321Stop、S354Stop、Q417Stop、R544Stop、R550Stop、Q557Stop、Q574Stop、Q635Stop、Q642Stop、Q685Stop、L699Stop、S792Stop、Q891Stop、Q943Stop、E1026Stop、R1067Stop、R1216Stop、Y1225Stop、R1404Stop、L1457Stop、R1465Stop、R1516Stop、Q1524Stop、Q1542Stop、N1624Stop、Y1724Stop、Y1751Stop、L1819StopおよびQ1834Stopを含んでなるまたはからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記TET2遺伝子の突然変異が、配列番号2の配列を有するポリペプチドの無発現または発現不足を、好ましくは、TETタンパク質により共有されており、i)タンパク質TET2の中央付近に位置する310アミノ酸の領域(配列番号3のアミノ酸1134〜アミノ酸1444)、およびii)タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)に相当する2つの保存性の高い領域のうちの少なくとも1つ、より好ましくは、タンパク質TET2のカルボキシ末端付近に位置する80アミノ酸の領域(配列番号4のアミノ酸1843からアミノ酸1922までに相当する)の無発現または発現不足を誘発する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
被験体において骨髄性癌またはリンパ性癌を診断するためのキットの使用であって、該キットが、TET2遺伝子の突然変異の存在を検出するため、および/またはTET2遺伝子の発現を分析するために請求項1〜17のいずれか一項で定義された方法において使用することができる、少なくとも1つの核酸プローブまたはオリゴヌクレオチドまたは少なくとも1つの抗体を含んでなる、使用。
【請求項19】
前記オリゴヌクレオチドが、TET2遺伝子の領域の増幅を可能とする少なくとも1つのPCRプライマー、好ましくはPCRプライマーのセットである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
TET2突然変異、TET2の無発現または末端切断型TET2の発現が検出された骨髄性またはリンパ性腫瘍に罹患している患者を処置するための、低メチル化剤の使用。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−525107(P2011−525107A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512994(P2011−512994)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057295
【国際公開番号】WO2009/150229
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(500025477)アンスティテュ、ナショナル、ド、ラ、サント、エ、ド、ラ、ルシェルシュ、メディカル(アンセルム) (19)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA    RECHERCHE MEDICAL (INSERM)
【出願人】(505031808)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT GUSTAVE−ROUSSY
【Fターム(参考)】