説明

連結複数容器の内容物放出機構および、この内容物放出機構を備えたエアゾール式製品

【課題】エアゾール式製品などの連結複数容器の各内容物の同時噴射の確実化を図る。
【解決手段】容器本体1,1’を連結するカバー体5には単一操作レバー7と一体の蓋状体6が取り付けられている。操作レバー7は、その基部7bを中心にして回動可能であり、静止モードにおいては幅広の垂下片部7dがカバー体5の開口域5dに弾性タブ5fで内側壁状部5eの方に付勢された状態で突状部5fに仮保持される。そのため作動モード設定操作の際にも、操作レバー7は、操作面7aへの利用者の押圧力が弱い操作初期段階では仮保持されたままで、この押圧力が所定の強さになった段階ではじめて弾性タブ5fを外側に変位させながら突状部5fを乗り越えていわば一気に下動する。この一気の下動により、ステムのバルブ作用部はともに開状態となり、各容器の内容物が共通通路4bの噴射口4cから同時噴射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結状態の複数容器に対する単一の操作部材の作動モード設定操作により、当該複数容器それぞれの内容物が共通の出力部材を経て外部空間に放出される連結複数容器の内容物放出機構に関し、特に各容器のバルブ機構における作動モードへの移行タイミングの同時化を図るようにしたものである。
【0002】
本明細書では、通常の作動モードにおける容器内容物の噴射口の側を「前」とし、それとは容器平面図の中心を挟んで反対の側を「後」とする。すなわち例えば図2の左側方向が「前」で、右側方向が「後」となる。
【0003】
また、説明の便宜上、以下の記載はエアゾール式製品を前提とする内容になっているが、発明の対象としてはこれに限定されるものではなく、ポンプ式製品も当該対象に含まれる。
【0004】
一般に、連結状態の複数容器を作動モードに設定する場合にはその中の一部だけが当該モードに切り替わっているといったタイミング状態の実質的な発生を極力さけることが望ましく、本発明はこのような要請に応えるものである。
【背景技術】
【0005】
従来、連結状態の第1および第2のエアゾール容器の各内容物を、単一操作部材の作動モード設定操作で略同時に噴射できるようするための内容物放出機構を備えたエアゾール装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
この内容物放出機構の場合、第1および第2のエアゾール容器のステム同士を結ぶ線方向で幅広の(長い)ヒンジ部を中心にして回動するタイプの操作部材を用いることにより、当該エアゾール容器の各ステムを均等に下動させようとするものである。
【特許文献1】特開2000−109150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように連結状態の第1,第2のエアゾール容器の各内容物を同時噴射するための従来の内容物放出機構においては、作動モード設定操作の際の当該容器の各ステムに対する操作部材自体のいわば移動バランスを確保する、すなわち操作部材がこれらステムのどちらか一方にかたよることを防止する形になっている。
【0008】
そして、この操作部材自体の移動バランスの確保によって上記各容器の内容物の同時噴射が期待できるのは、連結状態の当該容器の各ステムや、これと一体で当該操作部材によって駆動されるノズル部材(出力部材)などの位置,動作態様がそれぞれ、当該操作部材からみて均等であることが前提になっている。
【0009】
そのため、この前提条件が満たされない形の連結容器の場合には上記各容器の内容物の同時噴射を行うことが難しいという問題点があった。
【0010】
そこで本発明では、操作部材に対する利用者の作動モード設定操作の態様と、当該設定操作にともなう連結複数容器の各ステムの移動態様との関係を、利用者の操作力や操作部材の移動ストロークの変化に比して当該ステムの移動距離が急激に増加する、すなわちこの増加によって実用的には当該複数容器それぞれのステムが(上述の位置,動作態様の如何にかかわらず)瞬時に作動モードに移行するように設定し、これにより上述の前提条件を満足していない連結複数容器の場合にもそれぞれの内容物の同時噴射の確実化を図ることを目的とする。
【0011】
また、操作部材を作動モード位置とは逆方向に回動してそのプロテクトモード位置に、ステムを駆動できない態様で積極的に保持し、これにより操作部材が本来の操作対象時ではないのに不用意に駆動されて作動モードに移行してしまうといった誤作動の防止化を図ることを目的とする。
【0012】
また、プロテクトモード位置の操作部材で内容物出力部材の噴射口側部分を上側から覆った状態にし、これにより当該噴射口側部分が不用意に駆動されて作動モードに移行してしまうといった誤作動の防止化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)連結状態の複数容器(例えば後述のエアゾール式製品の容器本体1,1’)に対する単一の操作部材(例えば後述の操作レバー7)の作動モード設定操作により、当該複数容器それぞれの内容物が共通の出力部材(例えば後述の吐出部材4)を経て外部空間に放出される連結複数容器の内容物放出機構において、
前記操作部材は、前記出力部材を作動モード位置に移行させるための駆動部分(例えば後述の突状作用部7c)を有し、
前記作動モード設定操作の操作力が弱い段階では前記操作部材の移動を一時的に阻止するための微作動防止手段(例えば後述の突状部5f,タブ5g,垂下片部7d)を備える。
(2)上記(1)において、
前記微作動防止手段は、
前記操作部材に形成された被阻止部(例えば後述の垂下片部7d)と、
前記操作力が弱い段階の前記被阻止部を一時的に保持する態様で前記複数容器との一体化部分(例えば後述のカバー体5)に形成された仮保持部(例えば後述の突状部5f,タブ5g)と、
をからなる。
(3)上記(2)において、
前記仮保持部は、
前記一体化部分を構成する容器カバー体(例えば後述のカバー体5)の開口域(例えば後述の開口域5d)に形成され、
前記被阻止部は、
前記操作力が弱い段階を越えたときにはじめて前記開口域を通って作動モード位置に移動できる態様のものである。
(4)連結状態の複数容器(例えば後述のエアゾール式製品の容器本体1,1’)に対する単一の操作部材(例えば後述の操作レバー17)の作動モード設定操作により、当該複数容器それぞれの内容物が共通の出力部材(例えば後述の吐出部材4)を経て外部空間に放出される連結複数容器の内容物放出機構において、
前記操作部材は、前記出力部材を作動モード位置に移行させるためのカム部(例えば後述のカム部17c)からなる駆動部分を有し、
前記カム部は、作動モード設定操作における前記操作部材の移動分よりも大きな変位量で前記出力部材を作動モード位置の方向に動かす態様により設定された、カム面を備える。
(5)上記(4)において、
前記操作部材は、
前記複数容器のカバー体に支持された回動タイプのもので、作動モード設定操作とは逆方向への回動によってプロテクトモード位置(図7参照)まで移動し、かつ、この移動の際に前記カム部が前記出力部材に作用しない態様のものであり、
前記カバー体は、
前記プロテクトモード位置まで移動した前記操作部材を保持して当該操作部材が不用意に駆動されないようにするための受け部(例えば後述の前側上面部分16f)を備えている。
(6)上記(5)において、
前記プロテクトモード位置は、
前記操作部材が前記出力部材の噴射口側の横方向露出部分と対向してこれを上側から覆う形の位置である。
【0014】
以上の構成からなる内容物放出機構や、この内容物放出機構を備えたエアゾール式製品などを本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、このように操作部材に対する利用者の作動モード設定操作の態様と、当該設定操作にともなう連結複数容器の各ステムの移動態様との関係を、利用者の操作力や操作部材の移動ストロークの変化に比して当該ステムの移動距離が急激に増加するように設定しているので、上述の前提条件を満足しない形の連結複数容器の場合にもそれぞれの内容物の同時噴射の確実化を図ることができる。
【0016】
また、回動タイプの操作部材を作動モード位置とは逆方向に回動した状態のプロテクトモード位置に、ステムを駆動できない態様で積極的に保持しているので、本来の操作対象時ではないのに操作部材が不用意に駆動されて作動モードに移行してしまう、といった誤作動の防止化を図ることができる。
【0017】
また、プロテクトモード位置の操作部材で内容物出力部材の噴射口側部分をいわば覆った状態にしているので、当該噴射口側部分が不用意に駆動されて作動モードに移行してしまうといった誤作動の防止化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1乃至図7を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0019】
図1〜図3は、連結複数容器において、利用者の操作部材に対する作動モード設定操作力が弱い(回動操作)初期段階では当該操作部材が移動しない形の微作動防止機能を有する、内容物放出機構を示す説明図である。
【0020】
ここで、図1は静止モードの斜視図,図2は静止モードの断面図,図3は作動モードをそれぞれ示している。
【0021】
なお、以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば環状凹状部1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば容器本体1)の一部であることを示している。
【0022】
図1〜図3において、
1,1’は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の(連結状態の)容器本体,
1a,1a’は容器本体外周面の上端側に形成されて後述のカバー体5を嵌合保持するための環状凹状部,
2,2’は容器本体1,1’の開口端部側に取り付けられたマウンティングキャップ,
3,3’は周知のバルブ機構(図示省略)の構成要素であるステム,
4はステム3,3’に取り付けられた内容物放出用の吐出部材,
4a,4a’はステム3,3’の出力側に直結している個別通路,
4bは当該個別通路のそれぞれが合流した形の共通通路,
4cは当該共通通路の出力端である噴射口,
5は容器本体1,1’の連結機能を併せ持つとともに、吐出部材4に対応した前上方欠落部および後述の操作レバー7に対応した後上方欠落部を備えている筒状のカバー体(肩カバー),
5aは環状凹状部1a,1a’と嵌合して各容器本体1,1’を連結状態で保持するための複数のリブ状部,
5bは当該リブ状部の一部であって当該連結状態のマウンティングキャップ2,2’の上面部分と当接する段部、
5cは当該リブ状部の一部であって当該連結状態の環状凹状部1a,1a’に入り込む嵌合用の突状部,
5dは後述の垂下片部7dが入り込む微作動防止用の開口域(貫通部),
5eは当該開口域のステムに近い側から下方に続く内側壁状部,
5fは当該内側壁状部の外側の周面に形成されて後述の垂下片部7dの先端部分を仮保持するための突状部,
5gは当該壁状部と対向する態様で形成されて弾性変形性状のタブ,
5hは後述のC型蓋状体を係止して保持するための段部,
6はカバー体5に着脱可能な形で取り付けられたC型蓋状体,
7はC型蓋状体6との一体成形物であって吐出部材4を作動モード位置に駆動する回動タイプの操作レバー,
7aは利用者が押下げ操作するときの操作面,
7bは薄肉状で操作時のいわば回動中心となる基部,
7cは吐出部材4の上面部分に当接して当該部材を作動モード位置に駆動する三個の突状作用部,
7dはカバー体5の開口域5dに入り込んで仮保持される幅広の垂下片部,
をそれぞれ示している。
【0023】
ここで、ステム3,3’,吐出部材4,カバー体5,C型蓋状体6および操作レバー7はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。また、容器本体1,1’およびマウンティングキャップ2,2’は金属製のものである。
【0024】
図1,図2(静止モード)の操作レバー7の操作面7aを利用者が押下げると、当該操作レバーはその基部7bを中心にして時計方向に回動しようとする。
【0025】
一方、操作レバー7の垂下片部7dは元々、その下端部分がカバー体5(内側壁状部5e)の突状部5fに止められ、かつ、その両面部分が内側壁状部5eとタブ5gとの間に当該タブの弾性力により挟持された状態で、仮保持されている。
【0026】
そのため、操作面7aに対する利用者の押下げ荷重が小さい初期段階ではこの仮保持状態が継続する。
【0027】
そして、この押下げ荷重が大きくなって所定段階に達すると、操作レバー7の垂下片部7dがカバー体5のタブ5gをその弾性力に抗する形で外方(図3の右方向)に移動させながら内側壁状部5eの突状部5fを乗り越える。
【0028】
図3(作動モード)に示すように、突状部5fを乗り越えた操作レバー7は下方向に移動する。その結果、操作レバー7の三個の突状作用部7cがそれぞれ吐出部材4およびこれと一体のステム3,3’を下方向に駆動する。
【0029】
このステム3,3’の下方向への移動により、周知のバルブ機構(図示省略)のバルブ作用部が開いて容器本体1,1’の内容物がそれぞれ「ステム内部通路−吐出部材4の個別通路4a,4a’」を経て吐出部材4の共通通路4bに流入し、噴射口4cから外部空間に放出される。
【0030】
上述したように、吐出部材4およびこれと一体のステム3,3’が下動して作動モードに移行するタイミングは、利用者が操作レバー7を押し始めてまだその力が弱い状態の初期段階ではなく、利用者の押す力が所定荷重になった段階である。
【0031】
すなわち利用者の押圧荷重が大きくなって、操作レバー7の垂下片部7dがカバー体5のタブ5fを弾性力に抗する形で移動させながら内側壁状部5cの突状部5eを乗り越えた後の段階である。
【0032】
そのため、吐出部材4は操作レバー7の複数(三個)の突状作用部7cによって一気にいわばステップ動作的に押下げられることになる。
【0033】
したがって、ステム3,3’,吐出部材4および操作レバー7などの組立後の関連機構が,仮に各容器本体のステム3,3’のそれぞれと当該突状作用部との当接のタイミングやその後の当該各ステムの移動速度などにバラツキが生じるような形になっていたとしても、容器本体1,1’それぞれのバルブ機構の作動モードへの移行タイミングが略同時に設定されることになる。
【0034】
その結果、操作レバー7に対する利用者の操作初期段階で容器本体1,1’のいずれか一方の内容物のみが噴射されることを実質的に防止できる。
【0035】
なお、操作レバー7における三つの突状作用部7cの設定箇所はステム3,3’の丁度中間部分および、それを中心とした対称位置になっている。
【0036】
そのため、操作レバー7から二つのステム3,3’(吐出部材4)に均等な押下げ力を加えることができる。
【0037】
図4〜図7は、連結複数容器において、カムの作用により、利用者の操作部材の移動ストロークの変化に比して当該容器の各ステムの移動距離が急激に増加するように設定し、各ステムが実用的にはこの急激増加のタイミングで同時に開くようにした内容物放出機構を示す説明図である。
【0038】
ここで、図4は静止モードの斜視図,図5は静止モードの断面図,図6は作動モード,図7はプロテクトモードをそれぞれ示している。
【0039】
なお、アルファベット付き参照番号の構成要素と当該参照番号の数字部分の構成要素との対応関係は図1〜図3の場合と同様である。
【0040】
図4〜図7では容器本体1,1’,マウンティングキャップ2,2’,ステム3,3’および吐出部材4の構成要素については図1〜図3の参照番号をそのまま用い、これら以外のカバー体,連結部材および操作レバーに関しては以下の新たな参照番号を用いる。なお、円柱周面状の上面部分4dも新たに用いている。
【0041】
図4〜図7の連結複数容器の内容物放出機構も、図1〜図3のそれと同じように、利用者の操作段階でいずれか一方の内容物のみが噴射されることを実質的に防止するものである。ただ、この一方の内容物のみの噴射防止のための手段が異なっている。
【0042】
すなわち、操作レバーと一体であって吐出部材などを駆動するカム面形状を、作動モード設定操作にともなう当該作動モードへの移行タイミング時の吐出部材および各ステムの移動ストロークが操作レバー自体のそれよりも大きくなる態様で設定し、これにより各容器本体のバルブが当該移行タイミングの段階で実質的に略同時に開くようにしている。
【0043】
図4〜図7で用いる新たな参照番号(4d,15〜17)は次の通りであり、
4dは吐出部材4の一部であって後述のカム部17cのカム面が当接する円柱周面状の上面部分,
15は容器本体1,1’それぞれの環状凹状部1a,1a’に嵌合して当該容器本体を一体化する連結部材,
15aは当該連結部材の外周面に間歇的に形成されて後述のカバー体16を係合保持するためのテーパ段部状の係止部,
15bは作動モード設定操作にともなうカム部17cの作用によって吐出部材4などが前方向に変位することを防ぐためのガイド起立部,
16は連結部材15の係止部15aなどに係合し、吐出部材4に対応した前上方開口部,後述の操作レバー17に対応した上方欠落部および、後述の操作部材を保護するための一対の壁状部分などを備えたカバー体(肩カバー),
16aは連結部材15と係合する複数のリブ状部,
16bは当該リブ状部の一部であって連結部材15の上面部分と当接する段部、
16cは連結部材15の係止部15aに係合保持されるテーパ段部状の被係止部,
16dは後述の操作レバー17(回動軸17b)の軸受部,
16eは当該カバー体の一部であって作動モードの操作レバー17(図6参照)を受ける後側上面部分,
16fは当該カバー体の一部であってプロテクトモードの操作レバー(図7参照)を受ける前側上面部分,
16gは後述のカム部17cの中側二個それぞれに対する開口域,
17は全体が一体化されている回動タイプの操作レバー,
17aは利用者が押下げ操作するときの操作面,
17bは両端部分をカバー体16の軸受部16dに支持された回動軸,
17cは吐出部材4の上面部分4dに当接して当該部材を作動モード位置に駆動する四個のカム部(カム板),
をそれぞれ示している。
【0044】
ここで、連結部材15,カバー体16および操作レバー17はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0045】
図4〜図7の内容物放出機構の基本的特徴は、操作レバー17に対する回動操作により、当該操作レバーと一体の複数のカム部17cが吐出部材4およびステム3,3’を押下げ、かつ、カム部17cのカム面が、吐出部材4を、この押下げ動作の所定段階において操作レバー17の移動分(回動分)よりも大きな変位量で下方向に動かす、態様に設定されていることである。
特に、吐出部材4を、操作レバー17の移動分よりも大きな変位量で下方に動かすことにより、ステム3,3’それぞれに連動する2つの周知のバルブ作用部(図示省略)が全開になるタイミングを合わせやすくなる。
【0046】
これにより、利用者が、静止モードの操作レバー17を、作動モードの方向(図示時計方向)に上記所定段階まで回動させた場合に、各容器のステム3,3’は、それぞれの周知のバルブ作用部(図示省略)が略同時に開状態となる位置まで一気に下動する。
【0047】
したがって、ステム3,3’,吐出部材4および操作レバー17などの組立後の関連機構が,仮に各容器本体のステム3,3’の高さや吐出部材の傾き、さらには吐出部材の上面部分4dとカム部17cとの当接のタイミングやその後の当該各ステムの移動速度などにバラツキが生じるような形になっていたとしても、容器本体1,1’それぞれのバルブ機構の作動モードへの移行タイミングが略同時に設定されることになる。
【0048】
なお、図示のカム面形状は、静止モードの操作レバーの(時計方向への)回動初期段階では吐出部材4およびステム3,3’をほとんど押下げない態様、すなわち図1〜図3の場合と同じように回動操作初期段階での微作動防止機能を備えた形になっている。
【0049】
なおカム部17cのカム面を、回動操作初期段階においてステム3,3’の各バルブ作用部が略同時に開状態となる位置まで当該ステムをいわば一気に下動させる、態様のものにしてもよい。
【0050】
ここで操作レバー17は回動軸17bを中心に回動するので、利用者が当該操作レバーの中心から離れた部分を押し下げても、さらには斜め方向に押し下げても、吐出部材4には垂直方向の操作力が作用する。
【0051】
図4からも明らかなように、回動軸17bにおける四つのカム部17cの設定箇所はそれぞれステム3,3’の丁度中間部分を中心とした対称位置になっている。
さらに、当該中間部の左右各側の2個のカム部(外側カム部および中側カム部)はそれぞれステム3,3’が中心となる対称位置に設けられている。
【0052】
そのため、操作レバー17から二つのステム3,3’(吐出部材4)に均等な押下げ力を加えることができる。
【0053】
二つのステム3,3’の上記バルブ作用部が開状態になると、図1〜図3の内容物放出機構の場合と同じように、容器本体1,1’の内容物がそれぞれ「ステム内部通路−吐出部材4の個別通路4a,4a’」を経て吐出部材4の共通通路4bに流入し、噴射口4cから外部空間に放出される。
【0054】
図6に示されるように、作動モードの最終段階では、操作レバー17の操作面17aとは反対側の面部分がカバー体16の後側上面部分16eに当接した状態になっている。
【0055】
そして、操作レバー17が不用意に押されて静止モードに移行するのを防止するには、図7に示すように当該操作レバーをその静止モード位置から図示反時計方向に回動して、操作面17aの部分がカバー体16の前側上面部分16fに保持される態様に設定すればよい。
【0056】
このプロテクトモードでは、カム部17cのカム面が吐出部材4の上面部分4dから離間し、かつ、操作部材17は下方向への押圧力を受けたとしても何ら移動できない状態になっている。
【0057】
本明細書の最初の部分で明記したように、本発明は、エアゾール式製品のみではなくポンプ式製品の内容物放出機構も対象としている。
【0058】
本発明が適用されるエアゾール式製品,ポンプ式製品としては、2種類の内容物を別々の容器に充填しておき、吐出して混合することにより効果が得られる2液反応製剤があげられ、たとえば、酸化染毛剤、パーマ剤、温感の得られるクレンジング、シェービング、パック剤、増粘が高くなるローション、トニック、ミストなど、人体に使用する化粧品、医薬部外品、医薬品があげられる。また、混合した状態では劣化し効果が低下する成分を含有する製剤にも用いることができ、たとえばビタミンや酵素などを含むスキンケア剤、洗浄剤などがあげられる。その他、清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0059】
容器本体に収納する内容物は、液状、クリーム状、ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分、水などが挙げられる。なお、内容物がクリーム状やゲル状などの粘度が高い場合や金属への腐食性が高い場合は、容器本体の内部に合成樹脂製の内袋を備えた二重構造のエアゾール容器を用いることが好ましい。
【0060】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0061】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0062】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0063】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0064】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0065】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0066】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0067】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】連結複数容器において、利用者の操作部材に対する作動モード設定操作力が弱い初期段階では当該操作部材が移動しない形の微作動防止機能を有する、内容物放出機構の静止モード(斜視状態)を示す説明図である。
【図2】図1の内容物放出機構の静止モード(断面状態)を示す説明図である。
【図3】図1の内容物放出機構の作動モードを示す説明図である。
【図4】連結複数容器において、カムの作用により、利用者の操作部材の移動ストロークの変化に比して当該容器の各ステムの移動距離が急激に増加するように設定し、各ステムが実用的にはこの急激増加のタイミングで同時に開くようにした内容物放出機構の静止モード(斜視状態)を示す説明図である。
【図5】図4の内容物放出機構の静止モード(断面状態)を示す説明図である。
【図6】図4の内容物放出機構の作動モードを示す説明図である。
【図7】図4の内容物放出機構のプロテクトモードを示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1,1’:エアゾール式製品の(連結状態の)容器本体
1a,1a’:環状凹状部
2,2’:マウンティングキャップ
3,3’:ステム
4:内容物放出用の吐出部材
4a,4a’:個別通路
4b:共通通路
4c:噴射口
4d:円柱周面状の上面部分(図4〜図7で使用)
5:カバー体(肩カバー)
5a:リブ状部
5b:段部
5c:嵌合用の突状部
5d:微作動防止用の開口域(貫通部)
5e:内側壁状部
5f:仮保持用の突状部
5g:弾性変形性状のタブ
5h:段部
6:C型蓋状体
7:操作レバー
7a:操作面
7b:回動中心となる基部
7c:三個の突状作用部
7d:幅広の垂下片部
15:連結部材
15a:テーパ段部状の係止部
15b:ガイド起立部
16:カバー体(肩カバー)
16a:リブ状部
16b:段部
16c:テーパ段部状の被係止部
16d:軸受部
16e:後側上面部分
16f:前側上面部分
16g:開口域
17:操作レバー
17a:操作面
17b:回動軸
17c:カム部(カム板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結状態の複数容器に対する単一の操作部材の作動モード設定操作により、当該複数容器それぞれの内容物が共通の出力部材を経て外部空間に放出される連結複数容器の内容物放出機構において、
前記操作部材は、前記出力部材を作動モード位置に移行させるための駆動部分を有し、
前記作動モード設定操作の操作力が弱い段階では前記操作部材の移動を一時的に阻止するための微作動防止手段を備えた、
ことを特徴とする連結複数容器の内容物放出機構。
【請求項2】
前記微作動防止手段は、
前記操作部材に形成された被阻止部と、
前記操作力が弱い段階の前記被阻止部を一時的に保持する態様で前記複数容器との一体化部分に形成された仮保持部と、
からなることを特徴とする請求項1記載の連結複数容器の内容物放出機構。
【請求項3】
前記仮保持部は、
前記一体化部分を構成する容器カバー体の開口域に形成され、
前記被阻止部は、
前記操作力が弱い段階を越えたときにはじめて前記開口域を通って作動モード位置に移動できる態様のものである、
ことを特徴とする請求項2記載の連結複数容器の内容物放出機構。
【請求項4】
連結状態の複数容器に対する単一の操作部材の作動モード設定操作により、当該複数容器それぞれの内容物が共通の出力部材を経て外部空間に放出される連結複数容器の内容物放出機構において、
前記操作部材は、前記出力部材を作動モード位置に移行させるためのカム部からなる駆動部分を有し、
前記カム部は、作動モード設定操作における前記操作部材の移動分よりも大きな変位量で前記出力部材を作動モード位置の方向に動かす態様により設定された、カム面を備えている、
ことを特徴とする連結複数容器の内容物放出機構。
【請求項5】
前記操作部材は、
前記複数容器のカバー体に支持された回動タイプのもので、作動モード設定操作とは逆方向への回動によってプロテクトモード位置まで移動し、かつ、この移動の際に前記カム部が前記出力部材に作用しない態様のものであり、
前記カバー体は、
前記プロテクトモード位置まで移動した前記操作部材を保持して当該操作部材が不用意に駆動されないようにするための受け部を備えている、
ことを特徴とする請求項5記載の連結複数容器の内容物放出機構。
【請求項6】
前記プロテクトモード位置は、
前記操作部材が前記出力部材の噴射口側の横方向露出部分と対向してこれを上側から覆う形の位置である、
ことを特徴とする請求項6記載の連結複数容器の内容物放出機構。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の連結複数容器の内容物放出機構を備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−290755(P2008−290755A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139721(P2007−139721)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】