説明

連結部材及び穿孔装置

【課題】 従来の穿孔装置の連結部材では、1つの連結部材を効果的に使用できないという課題があった。
【解決手段】 削岩機5により穿孔対象部に形成された孔に挿入される案内ロッド6と削岩機5のドリル部3とを連結し、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿った方向に前後にスライド可能とする連結部材8において、ドリル部に取付けられる取付体(筒体50)と、案内ロッドにスライド可能に取付けられるスライド体51と、取付体とスライド体とを連結する連結体(連結板27)と、連結体の前端と後端との両方にそれぞれ設けられた切削刃部53;53とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の孔を連続させた溝を形成するための連結部材及び穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地山の岩盤に複数の孔を一定間隔隔てて連続させて形成でき、複数の孔を連続させた溝を形成可能な穿孔装置が知られている。この穿孔装置を図5に基づいて説明する。尚、図5の右側を「前」、左側を「後」と定義して説明する。穿孔装置1Pは、図外の操縦機のアームに連結されるガイドセルと呼ばれる基台17Pと、基台17Pに前後移動可能に設けられた削岩機2Pと、基台17Pの前部に設けられた支持部13Pと、支持部13Pに連結されて前方に突出する案内ロッド11Pと、削岩機2Pのドリル部3Pが案内ロッド11Pの軸線に沿った方向にスライド可能となるようドリル部3Pの穿孔ロッド14Pと案内ロッド11Pとを互いに連結するリニアガイドと呼ばれる連結部材15Pとを備える。削岩機2Pは、ドリル部3Pとドリル部3Pを駆動する図外の駆動装置とを備える。ドリル部3Pは、駆動装置により回転する回転軸14dと回転軸14dの前端に回転軸14dと一緒に回転するように連結された穿孔ロッド14Pとを備える。穿孔ロッド14Pは、前端に穿孔ビットと呼ばれる切削部14bを備える。案内ロッド11Pは、後端部が支持部13Pに連結固定され前端には先鋭なキャップ12Pを備える。連結部材15Pは、穿孔ロッド14Pに連結された連結部15bと案内ロッド11Pの筒内をスライドするスライド部材15aとこれら連結部15bとスライド部材15aとを連結する連結板15cとで構成される。連結部材15Pの連結板15cの前端には、岩盤破砕用の硬質部材であるチップと呼ばれる切削刃部16Pが設けられる。支持部13Pの前面には規制部材18Pが取付けられる。ドリル部3Pは支持部13Pに形成された孔19Pを貫通し、前後に移動可能である。基台17Pの前端に連結される支持部13Pは、基台17Pの延長方向に対して上方に垂直に延長する鋼板のような剛体よりなる。
穿孔装置1Pによる穿孔作業を説明する。まず、削岩機2Pの駆動装置を駆動してドリル部3Pの前端の切削部14bで岩盤を削って図外の先行孔を形成する。次に支持部13Pに案内ロッド11Pを取り付ける。そして、操縦機によってアームを制御して案内ロッド11Pを先行孔内に挿入する。その後、削岩機2Pの駆動装置を駆動してドリル部3Pの切削部14bと連結部材15Pの切削刃部16Pとで岩盤を削ることで、先行孔と一定の間隔を隔てた図外の後行孔が切削部14bにより形成され、先行孔と後行孔とを一定の間隔で連結する図外の連結孔が切削刃部16Pにより形成される。以後、孔を穿孔する際に当該孔を穿孔する前に形成した孔を先行孔として利用していって複数の孔を形成していくことで、複数の孔を数珠繋ぎのように連続させた連続削孔と呼ばれる孔溝、すなわち、複数の孔の周囲が連結孔により互いに連結された溝を形成できる。
【特許文献1】特開2002−327589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した穿孔装置1Pの連結部材15Pでは、1つの連結部材を効果的に使用できないという課題があった。例えば、連結部材15Pは、連結部としての連結板15cの前端に切削刃部16Pが設けられているだけなので、切削刃部16Pが磨耗して使用できなくなると連結部材そのものを交換しなくてはならず、連結部材の連続使用可能時間が少ないという課題があった。また、掘削対象部である岩盤に孔溝を形成して岩盤の破砕に利用する場合、岩盤の硬軟に応じて先行孔と後行孔と間の距離を変更することが効率的であるが、連結部材15Pでは、連結部材15Pで連結される案内ロッド11Pとドリル部3Pとの間の距離を変更できないので、先行孔と後行孔と間の距離を変更できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明に係る連結部材は、削岩機により穿孔対象部に形成された孔に挿入される案内ロッドと削岩機のドリル部とを連結し、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿った方向に前後にスライド可能とする連結部材において、ドリル部に取付けられる取付体と、案内ロッドにスライド可能に取付けられるスライド体と、取付体とスライド体とを連結する連結体と、連結体の前端と後端との両方にそれぞれ設けられた切削刃部とを備えたことを特徴とする。
本願発明に係る連結部材は、削岩機により穿孔対象部に形成された孔に挿入される案内ロッドと削岩機のドリル部とを連結し、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿った方向に前後にスライド可能とする連結部材において、ドリル部に取付けられる取付体と、案内ロッドにスライド可能に取付けられるスライド体と、取付体とスライド体とを連結する連結体と、ドリル部と案内ロッドとの間の距離を変更可能とする調整部とを備えたことを特徴とする。案内ロッドが、案内ロッドの軸線に沿った方向に延長する筒状のスライドレールを備え、スライド体が、スライドレールの筒径に合致した形状の面を有してスライドレールの内面を摺動する調整部材と、調整部材の面に連結される連結部とを備え、調整部が、連結部を調整部材の面における二以上の異なる位置に連結可能とする構成を備えたことで、ドリル部と案内ロッドとの間の距離を変更可能としたことも特徴とする。
本願発明に係る穿孔装置は、操縦機に連結される基台と、基台に前後移動可能に設けられた削岩機と、削岩機により穿孔対象部に形成された孔に挿入される案内ロッドと、案内ロッドと削岩機のドリル部とを互いに連結する連結部材とを備え、連結部材が、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿った方向に前後にスライド可能とした穿孔装置において、連結部材が、ドリル部に取付けられる取付部と、案内ロッドにスライド可能に取付けられるスライド部と、取付部とスライド部とを連結する連結部と、連結部の前端と後端との両方にそれぞれ設けられた切削刃部とを備え、連結部材が案内ロッドとドリル部とに前後可逆に取付可能に構成されたことで、連結部の切削刃部のいずれか一方が案内ロッドとドリル部との間の前部に位置するよう設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の連結部材によれば、連結部材が連結体の前端と後端との両方にそれぞれ切削刃部を備えたので、一方の切削刃部が磨耗して使用できなくなったとしても他方の切削刃部を使用でき、連結部材の連続使用可能時間を長くできる。
本発明の連結部材によれば、ドリル部と案内ロッドとの間の距離を変更可能とする調整部とを備えたので、掘削対象部の岩盤の硬軟に応じて先行孔と後行孔と間の距離を変更することができる。また、筒状のスライドレール内を摺動するスライド体を備え、スライド体の連結部をスライド体の調整部材の面における二以上の異なる位置に連結可能とする構成の調整部を備えたので、スライド体がスライドレール内をスムーズに前後移動し、また、調整部により、ドリル部と案内ロッドとの間の距離を容易に変更できる。
本発明の穿孔装置によれば、連結部材が、案内ロッドとドリル部とに前後可逆に取付可能に構成されたことで、連結部の切削刃部のいずれか一方が案内ロッドとドリル部との間の前部に位置するよう設定されたことにより、両方の切削刃部のうちのいずれか一方を案内ロッドとドリル部との間の前部に設定する作業を簡単に行えるようになる。また、案内ロッドとドリル部との間の前部に位置させる切削刃部を頻繁に変えることで、両方の切削刃部を均等に磨耗させることができるので、切削刃部の磨耗の少ない状態での連続使用可能時間を長くでき、穿孔効率の良い穿孔作業を長時間行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1〜図3は本発明の最良の形態を示し、図1(a)は連結部材の正面図を示し、図1(b)は図1(a)のA−A断面を示し、図2は穿孔装置を示し、図3は穿孔装置を分解して示す。尚、図2における案内ガイドの位置する側を「前」、駆動装置の位置する側を「後」と定義して説明する。
【0007】
まず、図2を参照し、本形態の連結部材を用いる穿孔装置を説明する。穿孔装置1は、操縦機2のアーム2aに取付けられる。操縦機2は、例えばドリルジャンボウと呼ばれる機械である。穿孔装置1は、基台4と削岩機5と案内ロッド6と支持部7とリニアガイドと呼ばれる連結部材8とを備える。基台4は、上面にガイドレール4aを備える。ガイドレール4aには、削岩機5の駆動装置9が前後方向に移動可能に搭載される。削岩機5は、駆動装置9とドリル部3とを備える。ドリル部3は、回転軸10と穿孔ロッド11とを備える。駆動装置9は、図外のモータによる回転駆動源及び油圧機構による前後駆動源を備える。駆動装置9の回転駆動源には、回転軸10が回転可能に連結される。穿孔ロッド11は、回転軸10の前端に連結されて回転軸10の回転力で回転する。穿孔ロッド11は前端に穿孔ビットと呼ばれる切削部41を備える。切削部41の前面には切削刃42を備える。駆動装置9に連結された図外の前後移動機構を操縦機2で操縦して駆動装置9の筐体を前後に移動させることで削岩機5の前後位置を調整できる。削岩機5による穿孔時には、駆動装置9を駆動させて回転駆動源により回転軸を回転させるとともに前後駆動源により駆動装置9の筐体を前後に振動させて穿孔ロッド11に回転力と打撃力とを加えることで穿孔ロッド11の切削部41が地山の岩盤などの穿孔対象物を切削するので穿孔対象物に孔を形成できる。連結部材8は、穿孔ロッド11と案内ロッド6とを互いに連結するとともに、穿孔ロッド11と案内ロッド6との間の距離を一定に保ちながら穿孔ロッド11を案内ロッド6の軸線Gに沿う方向にスライド可能とするものである。支持部7は、基台側支持部13と案内ロッド取付体14と連結装置15とを備え、基台4の前端に連結固定された鋼板のような板よりなる基台側支持部13と基台側支持部13の上方に配置された鋼板のような板よりなる案内ロッド取付体14とが左右2つの連結装置15;15により互いに連結されて構成される。削岩機5のドリル部3は、案内ロッド取付体14に形成された孔16を前後に貫通し前後に移動可能である。案内ロッド6は、案内ロッド6の後部が案内ロッド取付体14に連結固定されて案内ロッド取付体14の前方に延長する。基台側支持部13の前面には規制部材18が取付けられる。穿孔装置1の基台4と操縦機2のアーム2aとが互いに連結され、操縦機2のアーム2aは、図外の油圧機構により駆動する。よって、操縦者が操縦機2を操縦してアーム2aの動きを制御することで、穿孔装置1の前端の案内ロッド6の位置や角度を調整し、案内ロッド6を先行孔内に挿入する際の案内ロッド6の位置決め作業を行う。
【0008】
図3の穿孔装置1の分解斜視図を参照し、穿孔装置1の構造を詳細に説明する。連結装置15は、弾性部材としての鋼製のコイルばね20と上取付部21と下取付部22とを備え、鋼製の円柱体のような上取付部21と鋼製の円柱体のような下取付部22とが鋼製のコイルばね20により互いに連結された構成である。すなわち、コイルばね20の上端が上取付部21に連結され、コイルばね20の下端が下取付部22に連結された構成である。連結装置15の上取付部21は、固定具23により案内ロッド取付体14に固定され、下取付部22は、固定具23により基台側支持部13に固定される。固定具23は、鋼棒のような棒をU字形状に形成して両端に図外のねじ部を形成したものである。基台側支持部13及び案内ロッド取付体14の左右には、板の前後に貫通して固定具23のU字の両端を挿通するための左右一対の孔24;24が形成される。左右一対の孔24;24は、基台側支持部13及び案内ロッド取付体14の左右において上下に形成される。基台側支持部13の前面における左右一対の孔24;24の間に連結装置15の下取付部22を配置し、基台側支持部13の前方から固定具23のU字の両端を左右一対の孔24;24に通して固定具23のU字の内側で下取付部22を基台側支持部13に押し付けた状態で、基台側支持部13の後方に突出した固定具23のU字の両端のねじ部に図外のナットを取り付けて締結することにより、下取付部22と基台側支持部13とが連結固定される。案内ロッド取付体14の前面における左右一対の孔24;24の間に上取付部21を配置し、案内ロッド取付体14の前方から固定具23のU字の両端を左右一対の孔24;24に通して固定具23のU字の内側で上取付部21を案内ロッド取付体14に押し付けた状態で、案内ロッド取付体14の後方に突出した固定具23のU字の両端のねじ部に図外のナットを取り付けて締結することにより、上取付部21と基台側支持部13とが連結固定される。以上のように連結装置15を上取付部21と下取付部22とを備えたコイルばね20により形成したことで、案内ロッド取付体14と基台側支持部13とを連結装置15により容易に連結でき、支持部7を容易に形成できる。
【0009】
案内ロッド取付体14の中央には、上部開放で板の前後に貫通する案内ロッド6の位置決め設置用の孔25が形成される。孔25の下方には、削岩機5のドリル部3を前後に移動可能に貫通させる孔16が形成される。孔25と孔16とは、連絡孔26により上下に連続している。案内ロッド6は、円筒状パイプ28の前端に円錐形状の先鋭なキャップ部材29が着脱可能に取り付けられたものである。案内ロッド6の前端にキャップ部材29を備えることで、案内ロッド6の前端の先行孔への挿入を容易にしている。円筒状パイプ28は、円筒パイプの外周において円筒パイプの軸線に沿う方向に一直線状の開口溝30が形成されたものである。案内ロッド6の後部が取付板31に取り付けられる。取付板31の中央には、下部開放で板の前後に貫通する嵌合孔32が形成される。案内ロッド6の後部が、取付板31の嵌合孔32に嵌め込まれて、案内ロッド6の開口溝30と嵌合孔32の開口部33との位置が合わされた状態で、案内ロッド6の後端部の周囲と取付板31の後面とが溶接のような連結手段で連結されることで、案内ロッド6と取付板31とが互いに連結される。案内ロッド6が取り付けられた取付板31は、案内ロッド取付体14に連結固定される。つまり、案内ロッド6の後部を設置用の孔25内に位置させ、案内ロッド取付体14の後面に取付板31の前面を当てて開口部33と連絡孔26との位置を前後で一致させて案内ロッド取付体14と取付板31とをボルト34,ナット35のような固定具36(図2参照)で連結することで、案内ロッド6が案内ロッド取付体14に着脱可能に取り付けられる。設置用の孔25を上部開放としたため、案内ロッド6を孔25の上方から取り付けることができ、案内ロッド取付体14に対する案内ロッド6の着脱作業を容易とできる。
【0010】
穿孔ロッド11は、連結部材保持体40と切削部41とを備える。連結部材保持体40は、回転軸10の前端に連結される。切削部41は、連結部材保持体40の前端に着脱可能に取り付けられるので、交換が容易である。切削部41の前面には、クロムモリブデン鋼やタングステン鋼などの超硬物質で形成された切削刃42を備える。連結部材保持体40は、前軸45と後軸46とで形成される。前軸45は、切削部41の後部に着脱可能に連結される。後軸46は、前軸45の後部に着脱可能に連結される。後軸46は、後部に設けられた径の大きい大径軸部47と大径軸部47の前部に設けられた径の小さい小径軸部48とを備える。
【0011】
図1;図3に示すように、連結部材8は、ドリル部3に取付けられる取付体としての筒体50と、案内ロッド6にスライド可能に取付けられるスライド体51と、筒体50とスライド体51とを連結する連結体としての連結板27とを備える。連結部材8の筒体50は、穿孔ロッド11の連結部材保持体40に連結保持される。連結部材8のスライド体51は、連結部材8のスライド体51案内ロッド6の筒孔により形成されたスライドレール55内に挿入され、連結部材8の連結板27は、案内ロッド6の開口溝30を経由してスライドレール55の内外に貫通する。よって、連結部材8のスライド体51が案内ロッド6のスライドレール55内を前後にスライド可能であり、連結部材8が連結されたドリル部3も案内ロッド6の軸線に沿って前後に移動可能である。連結板27の前端と後端とにはそれぞれチップと呼ばれる切削刃部53が設けられる。即ち、連結部材8が、連結板27の前端と後端との両方に切削刃部53を備える。切削刃部53はクロムモリブデン鋼やタングステン鋼などの超硬物質で形成される。切削刃部53の先端部は先鋭に形成される。図1(b)に示すように、切削刃部53の先端部の刃先角度αは110°程度に設定される。切削刃部53は、連結板27の前端と後端とにそれぞれ溶接などの接合手段で取り付けられる。切削刃部53は、案内ロッド6と穿孔ロッド11の切削部41との間の岩盤を削岩できるように、少なくとも、案内ロッド6の下端6bと穿孔ロッド11の切削部41の上端に相当する位置41aとに跨るような長さに設けられる(図1(a)参照)。
【0012】
穿孔装置1による穿孔作業を説明する。最初の先行孔を形成する際には、案内ロッド6と連結部材8は取り外されている。つまり、穿孔ロッド11の後軸46の小径軸部48に連結部材8が取付けられていない状態で小径軸部48の前部と前軸45の後部とが連結される。この形態でドリル部3の穿孔ロッド11を案内ロッド取付体14の孔16を経由させて前方に進め、駆動装置9でドリル部3を駆動して切削部41で地山の岩盤を切削して図外の先行孔を形成する。
【0013】
先行孔を形成した後に、ドリル部3を案内ロッド取付体14より後方に移動してから、上述したように案内ロッド6を案内ロッド取付体14に取付ける。そして、穿孔ロッド11の後軸46から前軸45を取り外し、後軸46の小径軸部48を連結部材8の筒体50の孔52の一端から他端に挿入して、他端に突出した小径軸部48の前部と前軸45の後部とを連結する。これにより、連結部材8の筒体50が小径軸部48に保持され、かつ、前軸45の後端と大径軸部47の前端とで筒体50の前後移動が規制されて、連結部材8が小径軸部48により前軸45の後端と大径軸部47の前端との間に保持される。即ち、連結部材8の筒体50は、穿孔ロッド11が回転しても回転しない状態に保持される。小径軸部48の前部と前軸45の後部との着脱可能な連結手段としては、小径軸部48の前部に形成された雄ねじ部49と前軸45の後部に形成されたねじ孔49aとのねじ結合や、前軸45の後部に形成された図外の嵌合孔に小径軸部48の前部を嵌め込んで嵌合孔の外周面に形成された図外のねじ孔にねじをねじ込んで小径軸部48の前部を締結することによるねじ結合などである。以上のように、小径軸部48を連結部材8の筒体50の孔52に通して前軸45の後部に連結するだけで穿孔ロッド11に連結部材8を取り付けることでき、穿孔ロッド11に対する連結部材8の着脱作業を容易とできる。そして、ドリル部3を前進させ、穿孔ロッド11の連結部材保持体40に保持された連結部材8のスライド体51を、取付板31の後方から案内ロッド6の筒孔により形成されたスライドレール55内に挿入することで、案内ロッド6に連結部材8を取り付けることができ、案内ロッド6に対する連結部材8の着脱作業を容易とできる。取付板31の開口部33と案内ロッド取付体14の連絡孔26と案内ロッド6の開口溝30の横幅は、連結部材8の連結板27の板幅より長く形成され、連結板27が通過できる。したがって、ドリル部3を孔16を経由させて前方に進行させると、連結部材8のスライド体51がスライドレール55内を前方に進みドリル部3が案内ロッド6に沿って前方に進む。これにより、ドリル部3は、案内ロッド6に対して一定の距離を保ちながら、案内ロッド6の軸線に沿った方向に移動可能となる。すなわち、連結部材8によりドリル部3が案内ロッド6と一定の距離を維持しながら案内ロッド6に沿って前後に移動可能となる。
【0014】
上述のように、連結部材8により案内ロッド6に対してドリル部3を前後にスライド可能に取付けた後に、操縦機2の運転者が操縦によってアーム2aの動きを制御して穿孔装置1の位置を調整し、案内ロッド6を先行孔内に挿入する作業を行う。本形態の穿孔装置1によれば、連結装置15のコイルばね20の弾性により案内ロッド6が可動な状態に維持されているので、案内ロッド6と先行孔との衝突によって案内ロッド6に加わる力により、案内ロッド6が案内ロッド6の進行方向を変えるように動いたり、案内ロッド6に沿った方向と直交する方向に動くことが可能である。従って、地山の岩盤に形成された先行孔の進行方向とアーム2aにより前進する案内ロッド6の進行方向とが一致していないような場合において、案内ロッド6の前端を先行孔内に挿入した後に、アーム2aを操縦して穿孔装置1を前方に進めると、先行孔と案内ロッド6との衝突によって案内ロッド6に加わる力により、案内ロッド取付体14が案内ロッド6からの力で動き、案内ロッド6が進行方向を変えながら先行孔内を前進するので、案内ロッド6を先行孔内に容易に挿入することができる。つまり、先行孔の進行方向とアーム2aにより前進する案内ロッド6の進行方向とが一致していないような場合に、アーム2aによる困難な案内ロッド6の位置や角度の細かい制御を行わずとも、案内ロッド6の前端を先行孔内に挿入した後にアーム2aを操縦して穿孔装置1を前方に進めることにより案内ロッド6を先行孔内に容易に挿入することができるので、案内ロッド6を先行孔内に挿入する作業を容易とできる。
【0015】
案内ロッド6を先行孔内に挿入した後、規制部材18の前端を岩盤に突付けてから、ドリル部3の前端の切削部41を岩盤まで移動した後に削岩機5を駆動することにより、削岩機5の前端の切削部41が、先行孔の下方の岩盤を切削し、先行孔と一定の間隔を隔てて連続する図外の後行孔を穿孔する。この際、先行孔と後行孔との間は連結部材8の前端の切削刃部53で削岩されることによって、先行孔と後行孔との間を繋ぐ連結孔が形成される。以後、孔を穿孔する際に当該孔を穿孔する前に形成した孔を先行孔として利用していって複数の孔を形成していくことで、複数の孔を数珠繋ぎのように連続させた連続削孔と呼ばれる孔溝、すなわち、複数の孔の周囲が連結孔により互いに連結された溝を形成でき、この溝を岩盤57の破砕に利用することで、例えば、横坑を掘削する。
【0016】
本形態によれば、連結部材8が、連結板27の前端に切削刃部53を備えるとともに連結板27の後端にも切削刃部53を備えるので、例えば、連結板27の前端の切削刃部53が岩盤の切削による摩擦で磨り減ったりして削岩の効率が悪くなった場合には、連結部材8を連結部材保持体40より取り外し、連結部材8の前後を逆にしてから連結部材8を連結部材保持体40に取り付ける。これにより、今までの連結部材8の前端と後端とが前後に入れ替わり、今まで案内ロッド6とドリル部3との間の後部に位置していた切削刃部53が案内ロッド6とドリル部3との間の前部に設定され、よって、新しい切削刃部53で削岩できるようになる。つまり、連結部材8が連結板27の前端と後端との両方にそれぞれ切削刃部53を備えたことで、一方の切削刃部53の磨耗が激しくなって使用できなくなったとしても他方の切削刃部53を使用できて連結部材8そのものを交換しなくてもよくなり、連結部材8の連続使用可能時間を長くできる。また、穿孔装置1が、連結部材8を案内ロッド6とドリル部3とに前後可逆に取付可能に構成されたことで、連結板27の切削刃部53のいずれか一方が案内ロッド6とドリル部3との間の前部に位置するよう設定されたことにより、両方の切削刃部53;53のうちのいずれか一方を案内ロッド6とドリル部3との間の前部に設定する作業を簡単に行えるようになる。例えば、一方の切削刃部53の磨耗が激しくなった場合に、他方の切削刃部53を案内ロッド6とドリル部3との間の前部に設定する作業を簡単に行えるようになる。さらに、連結部材8の前後が逆になるように連結部材8の取付方を頻繁に変えることによって、案内ロッド6とドリル部3との間の前部に位置させる切削刃部53を頻繁に変えることが容易となる。これによって、両方の切削刃部53;53を均等に磨耗させることができるので、一方の切削刃部53の磨耗が激しくなってから他方の切削刃部53を使用するような使い形に比べて、切削刃部53;53の磨耗の少ない状態での連続使用可能時間を長くでき、穿孔効率の良い穿孔作業を長時間行えるようになる。
【0017】
図4を参照し、本発明の他の連結部材81を説明する。当該連結部材81は、スライド体51Aを、連結部としての円柱体79と円柱体79の円面である前端面と後端面とに取り付けられる調整部材80;80とで構成し、案内ロッド6とドリル部3との間の距離を変更できるようにし、先行孔と後行孔との間隔を調整可能とした構成である。この場合、円柱体79の径を案内ロッド6の軸線Gに沿った方向に延長する筒状のスライドレール55を形成する筒孔の径よりも小さく形成し、スライドレール55を形成する筒孔の径と合致した形状の円面を有する円柱体により調整部材80を形成する。そして、円柱体79の前端面と後端面とにそれぞれ調整部材80を連結し、調整部材80;80の円柱体の周面がスライドレール55の筒孔の内面を摺動する構成とする。円柱体79の前端面と後端面とには、円面の中心部分において横に2つ並ぶようにねじ孔82;82が形成される。調整部材80の円柱体の円面には、円の中心より偏心した位置において円柱体の前後の円面を貫通する貫通孔83;83が横に2つ並ぶように形成される。そして、調整部材80の貫通孔83と円柱体79のねじ孔82とが連続するように調整部材80と円柱体79とを互いに位置決めした後に貫通孔83にねじなどの締結具84を通してねじ孔82に締結することで円柱体79の前端面と後端面とにそれぞれ調整部材80を連結する。円柱体79のねじ孔82と調整部材80の貫通孔83と締結具84とで調整部が構成され、この調整部が、連結部としての円柱体79を調整部材80の面における二以上の異なる位置に連結可能とする。図4(a)の実線の調整部材80のように、調整部材80の貫通孔83を下方にして調整部材80を円柱体79に取り付けた場合は、図4(b)のように、連結板27が案内ロッド6の開口溝30より下方に突出する長さが長くなる。一方、図4(a)の想像線の調整部材80のように、調整部材80の貫通孔83を上方にして調整部材80を円柱体79に取り付けた場合は、図4(c)のように、連結板27が案内ロッド6の開口溝30より下方に突出する長さが、図4(b)に比べて長さh分だけ短くなる。従って、円柱体79の前端面と後端面とに対する調整部材80の取り付けの向きによって、連結部材81で連結される案内ロッド6とドリル部3との間の距離を変更でき、先行孔と後行孔と間の距離を変更できる。例えば、岩盤が硬岩の場合には、先行孔と後行孔と間の距離を短くし、岩盤が軟岩の場合には、先行孔と後行孔と間の距離を長くするといったように、岩盤の硬さに応じて先行孔と後行孔と間の距離を選定できるようになる。よって、掘削対象部である岩盤の硬軟に応じて先行孔と後行孔と間の距離を変更することが可能なことで、岩盤に孔溝を形成して岩盤の破砕に利用する際に、岩盤の破砕作業を効率的に行える。本形態の連結部材81によれば、筒状のスライドレール55内を摺動するスライド体51Aを備え、スライド体51Aの連結部としての円柱体79の面を調整部材80の面における二以上の異なる位置に連結可能とする構成の調整部を備えたので、スライド体51Aがスライドレール55内をスムーズに前後移動する構造を提供でき、また、ねじ孔82と貫通孔83と締結具84とによる調整部により、ドリル部3と案内ロッド6との間の距離を容易に変更できる。円の中心より偏心した位置において円柱体79の前後の円面を貫通する貫通孔83;83が横に2つ並ぶように形成された場合、1組の貫通孔83;83により、円柱体79を調整部材80の円面における二以上の異なる位置に連結可能とできる。調整部が、連結部としての円柱体79を調整部材80の円面における3以上の異なる位置に連結可能とする構成を備えてもよい。例えば、調整部材80の円面に連結用の1組の貫通孔83;83を3組以上設ける。また、円柱体79の円面に1組のねじ孔82;82を2組以上設けることで、円柱体79を調整部材80の円面における二以上の異なる位置に連結可能とできる。また、調整部材80の円面の上下方向に複数の貫通孔83を設けたり、円柱体79の円面の上下方向に複数のねじ孔82を設けるようにしても、円柱体79を調整部材80の円面における二以上の異なる位置に連結可能とできる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
スライド体51Aのスライドレール55を例えば断面逆T字状のレールにより形成し、スライド体51Aを当該レールに係合する形状に形成してもよい。そして、当該スライド体51Aの下部に連結板を設け、この連結板と連結板27との連結位置を上下に変更できる構成の調整部を備えた連結部材を設けることで、案内ロッド6とドリル部3との間の距離を変更できるようにしてもよい。この場合の調整部は、例えば、スライド体51Aの下部の連結板の上下方向に形成された複数個の貫通ねじ孔と連結板27に形成された少なくとも1個の貫通孔と貫通孔を通過して貫通ねじ孔に締結されるボルトとこのボルトに締結されるナットとで構成できる。このような構成の連結部材を用いても、掘削対象部の岩盤の硬軟に応じて先行孔と後行孔と間の距離を変更することができる。
上記では、基台側支持部13と案内ロッド取付体14とを互いに連結する連結装置15の弾性部材としてコイルばね20を用いた例を示したが、連結装置15の弾性部材として板ばねを用いても良い。連結装置15の弾性部材としてコイルばね20と板ばねとを併用しても良い。
上記では、基台側支持部13と案内ロッド取付体14とこれらを互いに連結する連結装置15とにより構成された支持部7に連結された案内ロッド6とドリル部とを連結部材で連結した穿孔装置を示したが、本発明の連結部材8;81は、図5の従来例に示すように、基台17Pの延長する方向に対して上方に垂直に延長するように基台17Pの前部に連結された支持部13Pを備えた穿孔装置において、支持部13Pに連結された案内ロッド11Pとドリル部3Pとを連結する場合や、あるいは、案内ロッドを連結する支持部を備えない構成の穿孔装置において、案内ロッドのみを先行孔に挿入した後に、この先行孔に挿入された案内ロッドとドリル部とを連結する場合にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の連結部材を示す図(最良の形態)。
【図2】本発明の穿孔装置を示す斜視図(最良の形態)。
【図3】本発明の穿孔装置を示す分解斜視図(最良の形態)。
【図4】本発明の連結部材の他の形態を示す図。
【図5】従来の穿孔装置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0020】
1 穿孔装置、2 操縦機、3 ドリル部、4 基台、5 削岩機、
6 案内ロッド、8;81 連結部材、27 連結板(連結体)、
50 筒体(取付体)、51;51A スライド体、53 切削刃部、
55 スライドレール、80 調整部材、82 ねじ孔(調整部)、
83 貫通孔(調整部)、84 締結具(調整部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削岩機により穿孔対象部に形成された孔に挿入される案内ロッドと削岩機のドリル部とを連結し、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿った方向に前後にスライド可能とする連結部材において、ドリル部に取付けられる取付体と、案内ロッドにスライド可能に取付けられるスライド体と、取付体とスライド体とを連結する連結体と、連結体の前端と後端との両方にそれぞれ設けられた切削刃部とを備えたことを特徴とする連結部材。
【請求項2】
削岩機により穿孔対象部に形成された孔に挿入される案内ロッドと削岩機のドリル部とを連結し、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿った方向に前後にスライド可能とする連結部材において、ドリル部に取付けられる取付体と、案内ロッドにスライド可能に取付けられるスライド体と、取付体とスライド体とを連結する連結体と、ドリル部と案内ロッドとの間の距離を変更可能とする調整部とを備えたことを特徴とする連結部材。
【請求項3】
案内ロッドが、案内ロッドの軸線に沿った方向に延長する筒状のスライドレールを備え、スライド体が、スライドレールの筒径に合致した形状の面を有してスライドレールの内面を摺動する調整部材と、調整部材の面に連結される連結部とを備え、調整部が、連結部を調整部材の面における二以上の異なる位置に連結可能とする構成を備えたことで、ドリル部と案内ロッドとの間の距離を変更可能としたことを特徴とする請求項2に記載の連結部材。
【請求項4】
操縦機に連結される基台と、基台に前後移動可能に設けられた削岩機と、削岩機により穿孔対象部に形成された孔に挿入される案内ロッドと、案内ロッドと削岩機のドリル部とを互いに連結する連結部材とを備え、連結部材が、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿った方向に前後にスライド可能とした穿孔装置において、連結部材が、ドリル部に取付けられる取付部と、案内ロッドにスライド可能に取付けられるスライド部と、取付部とスライド部とを連結する連結部と、連結部の前端と後端との両方にそれぞれ設けられた切削刃部とを備え、連結部材が案内ロッドとドリル部とに前後可逆に取付可能に構成されたことで、連結部の切削刃部のいずれか一方が案内ロッドとドリル部との間の前部に位置するよう設定されたことを特徴とする穿孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−328807(P2006−328807A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154052(P2005−154052)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(505195292)古河ロックドリル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】