説明

連結金具及びこれを備えた耐力壁並びにこれを用いた建築物

【課題】ブレースから入力される引っ張り力によるフレームの変形を抑制可能な連結金具及びこれを備えた耐力壁並びにこれを備えた建築物を提供すること。
【解決手段】縦フレーム7A、7Bの縦ウェブ7aに沿って配置された状態で縦ウェブ7aの内側面に対してボルトB2によって取付可能な縦フレーム取付部11aと、縦フレーム取付部11aの両端から一対の縦フランジ7bに沿って平行に延びるとともに一対の縦切欠部7d、7dを通って縦フレーム7A、7Bから内側に導出される一対の延設部11b、11bと、一対の延設部11b、11bに溶接され、縦フレーム取付部11aよりも内側の位置でブレース10A、10Bの端末を取付可能なブレース取付板12と、縦フレーム取付部11aに溶接され、かつ、枠状に配置された状態で外側を向く横フレーム8A、8Bの外側面に沿って配置された状態で梁部材4又は基礎2に固定可能な固定板14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に用いられる耐力壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基礎と、水平方向に延びる梁部材と、前記基礎又は梁部材に固定される耐力壁とを備えた建築物が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、次のような耐力壁が記載されている。特許文献1に記載の耐力壁は、枠状に配置された一対の縦架材及び一対の横架材と、縦架材の端部と横架材の端部とを連結する4つの連結金具と、前記枠の対角線上に配置される一対の連結金具間に張設された2本の筋違ボルト(ブレース)とを備えている。
【0004】
前記縦架材及び横架材は、それぞれウェブと一対のフランジとを有する溝型鋼である。前記連結金具は、対向する一対の側片と、これら側片の基部を連結する中間部とを有する門型の部材である。また、連結金具の各側片には、筋違ボルトを固定するための固定板が各側片間に跨った状態で固着されている。
【0005】
そして、前記縦架材の各フランジは、連結金具の各側片の間に配置された状態で、当該各側片に対してそれぞれ固着されている。同様に、横架材の各フランジは、連結金具の各側片の間に配置された状態で、当該各側片に対してそれぞれ固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60−133012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の耐力壁では、縦架材及び横架材の各フランジに対して連結金具の各側片がそれぞれ固着されているため、ブレースに生じる引っ張り力によって縦架材及び横架材が変形するおそれがある。具体的に、ブレースに生じる引っ張り力のうち横方向の成分は、縦架材のフランジに対してせん断力として直接伝達する一方、ブレースに生じる引っ張り力のうち縦方向の成分は、横架材のフランジに対してせん断力として直接伝達する。したがって、特許文献1に記載の耐力壁では、ブレースに生じる引っ張り力によって縦架材及び横架材のフランジが変形するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、ブレースから入力される引っ張り力によるフレームの変形を抑制することができる連結金具及びこれを備えた耐力壁並びにこれを備えた建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、枠状の配置される一対の縦フレーム及び一対の横フレームと前記縦フレーム及び前記横フレームに生じる力を支持するブレースとを有するとともに建築物の基礎、梁部材の少なくとも一方に固定される耐力壁を形成するために、前記縦フレームの端部と前記横フレームの端部とを連結可能な連結金具であって、前記縦フレームは、縦ウェブと、前記縦ウェブの両端から立ち上がる一対の縦フランジと、前記一対の縦フランジからそれぞれ近接する方向に延びる一対の縦リップと、前記縦フレームの端末から所定の縦範囲にわたり前記一対の縦リップが切り欠かれた一対の縦切欠部とを有し、枠状に配置された状態で内側を向く前記縦ウェブの内側面に沿って配置された状態で前記縦ウェブの内側面に対してねじ部材によって取付可能な縦フレーム取付部と、前記縦フレーム取付部の両端から前記一対の縦フランジに沿って平行に延びるとともに、前記一対の縦切欠部を通って前記縦フレームから内側に導出される一対の延設部と、前記一対の延設部間に跨るように配置された状態で前記一対の延設部に対して溶接され、前記縦フレーム取付部よりも内側の位置で前記ブレースの端末を取付可能なブレース取付部と、前記縦フレーム取付部に溶接され、かつ、枠状に配置された状態で外側を向く前記横フレームの外側面に沿って配置された状態で前記梁部材又は前記基礎に固定可能な固定板とを備えている、連結金具を提供する。
【0010】
本発明によれば、縦フレーム取付部が縦フレーム(縦ウェブ)とブレース取付部との間で縦フレームの内側面に沿って配置されているとともに、この縦フレーム取付部が基礎又は梁部材に固定可能な固定部に溶接されている。そのため、ブレースに生じる引っ張り力のうちの横方向の成分を縦フレーム取付部自体で受けることができるとともに、この横方向の成分を固定部を介して基礎又は梁部材に有効に伝えることができる。したがって、ブレースから伝わる引っ張り力の横方向の成分が直接縦フレームに伝わるのを抑制することにより、縦フレームの変形を抑制することができる。
【0011】
また、本発明では、一対の延設部が縦フレーム取付部から一対の縦フランジに沿って平行に延びるとともに一対の切欠部を通って縦フレームの内側に導出されている。そのため、縦フレームの一対の縦リップを残して、これら一対の縦リップ間を通すことができる間隔の一対の延設部を形成する場合と比較して、一対の延設部の間隔を広げることができる。そして、こられ延設部の間には、ブレース取付部が溶接されているため、各延設部の間隔の広さに応じてブレース取付部の幅を大きくすることができる。したがって、本発明によれば、ブレースからの引っ張り力に対するブレース取付部の強度を向上することができる。
【0012】
さらに、本発明では、縦フレーム取付部が縦フレームに対してねじ部材によって取付可能である。そのため、縦フレームに対して連結金具を溶接する場合と比較して、耐力壁の製造工程を簡素化することができる。
【0013】
前記連結金具において、前記横フレームは、横ウェブと、前記横ウェブの両端から内側に立ち上がる一対の横フランジと、前記一対の横フランジからそれぞれ近接する方向に延びる一対の横リップと、前記横フレームの端末から所定の横範囲にわたり前記横ウェブが切り欠かれた第1横切欠部と、前記所定の横範囲にわたり前記一対の横リップが切り欠かれた一対の第2横切欠部とを有するとともに、前記所定の横範囲以外の範囲において前記所定の縦範囲以外の範囲における縦フレームと同等の断面形状を有し、前記一対の延設部は、前記一対の延設部を挟むように配置された前記所定の横範囲内に位置する前記一対の横フランジをねじ部材によって取付可能であることが好ましい。
【0014】
この態様では、横フレームのうち所定の横範囲以外の部分が縦フレームのうち所定の縦範囲以外の部分と同等の断面形状を有している。そのため、縦フレーム及び横フレームの部品コストの低減を図ることができる。具体的に、例えば、前記断面形状を有する長尺のフレーム基材を裁断して縦フレーム及び横フレームを形成することができる。これにより、縦フレームと横フレームとが異なる断面形状を有する場合と比較して、縦フレームと横フレームの製造工程の重複範囲を拡大することができる。そのため、各フレームの部品コストを低減することができる。しかも、前記態様では、縦フレームと同等の断面形状を有する横フレームが第1横切欠部及び一対の第2横切欠部を有する。そのため、縦フレームの縦フランジの内側面に沿って平行に延びる一対の延設部を挟むように、所定の横範囲に位置する一対の横フランジを配置することができる。そして、一対の延設部を利用して、ねじ部材によって一対の横フランジを取り付けることができる。
【0015】
前記連結金具において、前記固定板は、前記縦フレーム取付部に取り付けられた前記縦ウェブの端面の全範囲と当接可能な当接面を有することが好ましい。
【0016】
この態様では、固定板が縦ウェブの端面の全範囲と当接可能な当接面を有する。そのため、縦フレームに生じる圧縮力を固定板によって受けることができる。したがって、縦フレームに生じた圧縮力を固定板を介して基礎又は梁部材に確実に伝えることができる。
【0017】
前記連結金具において、前記縦フレーム取付部と、前記一対の延設部とが一体に構成されていることが好ましい。
【0018】
この態様では、縦フレーム取付部と一対の延設部とが一体に構成されている。つまり、縦フレーム取付部と一対の延設部とが互いに交差する方向に延びる断面形状を有する部材が形成されている。そのため、縦フレームに生じる圧縮力によって変形(座屈)し難い連結金具を得ることができる。したがって、ブレースに生じる力の縦方向の成分をより有効に固定部(基礎又は梁部材)に伝えることができる。
【0019】
前記連結金具において、前記一対の延設部は、前記固定板に対して溶接されていることが好ましい。
【0020】
この態様では、縦フレーム取付部だけでなく一対の延設部も固定板に溶接されている。そのため、ブレース取付部からの引っ張り力をより確実に固定板に伝達することができる。
【0021】
また、本発明は、建築物の基礎、梁部材の少なくとも一方に固定される耐力壁であって、枠状に配置された一対の縦フレーム及び一対の横フレームと、前記縦フレームの端部と前記横フレームの端部とを連結可能な4つの連結金具と、前記4つの連結金具のうち前記枠の対角に配置される2つの連結金具の間にそれぞれ設けられ、前記縦フレーム及び横フレームに生じる力を支持する2本のブレースとを備え、前記4つの連結金具は、前記連結金具である、耐力壁を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、建築物であって、基礎と、梁部材と、前記基礎、梁部材の少なくとも一方に固定された前記耐力壁とを備えている、建築物を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ブレースから入力される引っ張り力によるフレームの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る家屋を示す斜視図である。
【図2】図1の家屋に用いられる耐力壁の正面図である。
【図3】図2の耐力壁の連結金具を拡大して示す斜視図である。
【図4】図1の家屋の一部を拡大して示す正面断面図である。
【図5】図4のV―V線断面図である。
【図6】ブレースに生じた引っ張り力が伝わる様子を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る建築物の一例である家屋を示す斜視図である。家屋1は、基礎2と、この基礎2上に設けられた家屋本体3とを備えている。
【0027】
家屋本体3は、水平方向に延びる梁部材4と、前記梁部材4と前記基礎2との間に設けられた複数の耐力壁5と、前記梁部材4及び耐力壁5の外側に設けられた外壁6とを備えている。
【0028】
なお、図1では図示を省略しているが、家屋本体3は、複数本の梁部材4を有する。具体的に、梁部材4は、2階以上の階数に対応して垂直方向に複数本設けられるとともに、1つの階においても水平方向に複数本設けられている。
【0029】
また、図1では、基礎2と梁部材4との間に設けられた耐力壁5が図示されているが、耐力壁5の設置箇所はこれに限定されない。具体的に、家屋本体3は、垂直方向に並ぶ2本の梁部材4の間に設けられた耐力壁5、及び水平方向に並ぶ2本の梁部材4の間に設けられた耐力壁5も有する。
【0030】
図2は、図1の家屋に用いられる耐力壁の正面図である。
【0031】
耐力壁5は、上述のように基礎2、梁部材4の少なくとも一方に固定される。具体的に、耐力壁5は、枠状に配置された一対の縦フレーム7A、7B及び一対の横フレーム8A、8Bと、縦フレーム7A、7Bの端部と横フレーム8A、8Bの端部とを連結可能な4つの連結金具9A〜9Dと、各フレーム7A、7B、8A、8Bに生じる力を支持する2本のブレース10A、10Bとを備えている。なお、前記フレーム7A、7B、8A、8Bにより形成される枠の内側に向く方向を内側方向とし、枠の外側を向く方向を外側方向として、以下説明する。
【0032】
図3は、図2の耐力壁の連結金具を拡大して示す斜視図である。
【0033】
縦フレーム7A、7Bは、厚み2.3mmの鋼材により形成されたC型鋼である。具体的に、縦フレーム7A、7Bは、縦ウェブ7aと、この縦ウェブ7aの両端から内側に折り返された一対の縦フランジ7b、7bと、これら一対の縦フランジ7b、7bの先端から互いに近接する方向に折り返された一対の縦リップ7c、7cと、縦フレーム7A、7Bの端末から所定の縦範囲D1にわたり一対の縦リップ7c、7cが切り欠かれた一対の縦切欠部7d、7dとを有する。前記縦ウェブ7aには、縦方向に並ぶ一対の貫通孔7e、7eが形成されているとともに、一対の縦フランジ7b、7bには、縦方向に並ぶ3つの貫通孔7f、7f、7fが形成されている。
【0034】
横フレーム8A、8Bは、厚み2.3mmの鋼材により形成されたC型鋼である。また、横フレーム8A、8Bは、前記縦フレーム7A、7Bと同等の断面形状を有する。具体的に、横フレーム8A、8Bは、横ウェブ8aと、この横ウェブ8aの両端から内側に折り返された一対の横フランジ8b、8bと、これら横フランジ8b、8bの先端から互いに近接する方向に折り返された一対の横リップ8c、8cと、前記横フレーム8A、8Bの端末から所定の横範囲D4にわたり前記横ウェブ8aが切り欠かれた第1横切欠部8eと、前記横範囲D4にわたり前記一対の横リップ8c、8cが切り欠かれた一対の第2横切欠部8d、8dとを有している。前記一対の横フランジ8b、8bには、横方向に並ぶ一対の貫通孔8f、8fがそれぞれ形成されている。
【0035】
図2を参照して、連結金具9Aは、縦フレーム7Aの端部と横フレーム8Aの端部とを連結する。連結金具9Bは、縦フレーム7Aの端部と横フレーム8Bの端部とを連結する。連結金具9Cは、縦フレーム7Bの端部と横フレーム8Aの端部とを連結する。連結金具9Dは、縦フレーム7Bの端部と横フレーム8Bの端部とを連結する。また、各連結金具9A、9Cは、各横フレーム8Aの外側面に沿って配される基礎2又は梁部材4に固定可能である。一方、各連結金具9B、9Dは、各横フレーム8Bの外側面に沿って配される基礎2又は梁部材4に固定可能である。また、連結金具9Aと連結金具9Dとの間には、前記ブレース10Aが設けられている。連結金具9Bと連結金具9Cとの間には、前記ブレース10Bが設けられている。そして、各連結金具9A〜9Dは、それぞれ同様の構成を有する。
【0036】
図3を参照して、連結金具9A〜9Dは、縦フレーム7A、7B及び横フレーム8A、8Bを取り付けるための取付部材11と、前記ブレース10A、10Bを取り付けるためのブレース取付板12と、前記取付部材11を基礎2又は梁部材4に固定するための固定板14とを有する。
【0037】
取付部材11は、当該取付部材11に被せられた縦フレーム7A、7B及び横フレーム8A、8Bを取付可能である。具体的に、取付部材11は、縦ウェブ7aの内側面に沿って配置される縦フレーム取付部11aと、この縦フレーム取付部11aの両端から直角に折り返されて前記一対の縦フランジ7b、7bに沿って平行に延びる一対の延設部11b、11bとを備えている。このように、取付部材11は、縦フレーム取付部11aと一対の延設部11b、11bとが互いに交差する断面形状を有する。そのため、取付部材11は、縦フレーム7A、7Bの長手方向に沿った圧縮力に対して強い。また、縦フレーム取付部11a及び一対の延設部11b、11bの端面は、それぞれ後述する固定板14に対して突き合せ溶接されている。
【0038】
前記縦フレーム取付部11a及び一対の延設部11b、11bは、それぞれ前記一対の縦フレーム7A、7Bの所定の縦範囲D1よりも小さな高さ寸法D2を有する。また、前記一対の延設部11b、11bは、前記一対の縦フランジ7b、7bの突出寸法よりも大きな突出寸法D3を有する。したがって、前記縦フレーム取付部11aを前記縦ウェブ7aの内側面に沿って配置した状態で、前記一対の延設部11b、11bは、前記一対の縦切欠部7d、7dを通って縦フレーム7A、7Bから内側に導出される。さらに、一対の延設部11b、11bの突出寸法D3うち縦フレーム7A、7Bから導出された部分の寸法は、前記横フレーム8A、8Bの所定の横範囲D4よりも大きく設定されている。したがって、前記所定の横範囲D4内に位置する横フランジ8b、8bを、延設部11b、11bを外側から挟むように配置することができる。
【0039】
図3〜図5を参照して、前記縦フレーム取付部11aは、ボルト(ねじ部材)B2によって縦フレーム7A、7Bを取付可能である。具体的に、縦フレーム取付部11aは、前記縦フレーム7A、7Bの貫通孔7e、7eに対応する位置に形成された2つの貫通孔11c、11cを有する。図4に示すように、貫通孔7e、11cにボルトB2を挿通するとともに、このボルトB2にナットを締結することにより、縦フレーム取付部11aに縦フレーム7A、7Bを取り付けることができる。なお、図4では、隣り合う2つの連結金具9B、9Dに共通のボルトB2を用いた状態を示すが、1個の連結金具9A〜9D当たり1本のボルトB2を用いてもよい。また、図4は、ボルトB2によって連結金具9B、9Dを互いに連結する状態を示すが、連結金具9A〜9Dと図外の柱材とを連結してもよい。なお、一対の延設部11b、11bに形成された貫通孔11dは、縦フレーム7A、7Bの貫通孔7fに対応する位置に設けられている。これら貫通孔7f、11dにビスを螺合することにより、前記外壁6を耐力壁5に取り付けることができる。
【0040】
図3〜図5を参照して、一対の延設部11b、11bは、前記一対の縦フランジ7b、7bに沿って互いに平行に延びている。また、一対の延設部11b、11bは、ボルト(ねじ部材)B3によって、横フレーム8A、8Bを取付可能である。具体的に、一対の延設部11b、11bは、前記横フレーム8A、8Bの貫通孔8fに対応する位置に形成された2つの貫通孔(横フレーム取付部)11e、11eを有する。貫通孔8f、11eにボルトB3を挿通するとともに、このボルトB3にナットを締結することにより、一対の延設部11b、11bに横フレーム8A、8Bを取り付けることができる。
【0041】
ブレース取付板12は、耐力壁5の対角線に沿って設けられている。具体的に、ブレース取付板12は、前記一対の延設部11b、11bの対向する面間の距離に対応する幅寸法D5(図3参照)を有する略長方形の板材である。このブレース取付板12の一部は、前記一対の延設部11b、11bの間に配置された状態で当該一対の延設部11b、11bに突き合せ溶接されている。このように本実施形態では、ブレース取付板12が一対の縦切欠部7d、7dを通して縦フレーム7A、7Bから内側に導出された一対の延設部11b、11b間に設けられている。そのため、一対の縦切欠部7d、7dを形成せずに、一対の縦リップ7c、7c間を通って縦フレーム7A、7Bの内側に導出された一対の延設部を設けるとともにこれら延設部間にブレース取付部を設ける場合と比較して、ブレース取付板12の幅寸法D5を大きくすることができる。したがって、ブレース10A、10Bに生じる引っ張り力に対するブレース取付板12の強度を向上することができる。
【0042】
固定板14は、前記取付部材11が溶接されるとともに、基礎2又は梁部材4に固定可能である。具体的に、固定板14の表面には、前記取付部材11が突き合せ溶接されている。また、図5に示すように、固定板14の表面のうち前記縦フレーム取付部11aの外側の範囲は、縦フレーム取付部11aに取り付けられた縦ウェブ7aの端面の全範囲と当接可能な当接面14aとされている。この当接面14aは、縦フレーム取付部11aの外側面から縦ウェブ7a外側面までの寸法D7よりも大きな幅寸法D6だけ縦フレーム取付部11aよりも外側に突出する。なお、本実施形態では、寸法D7よりも大きな幅寸法D6を有する当接面14aを設けているが、当接面14aの幅寸法D6は、少なくとも寸法D7と同一でよい。
【0043】
以下、図6を参照して、前記実施形態の作用について説明する。
【0044】
図6に示すように、ブレース10Aに対して引っ張り力F1が生じた場合を想定する。この引っ張り力F1は、縦方向の成分F2と、横方向の成分F3とに分解することができる。本実施形態では、縦ウェブ7aとブレース取付板12との間に縦フレーム取付部11aが配置されている。そのため、横方向の成分F3を縦フレーム取付部11aによって受けることができる。したがって、横方向の成分F3が縦フレーム7A、7Bに直接伝達するのを抑制することができる。
【0045】
また、前記実施形態では、取付部材11が固定板14に対して溶接されている。そのため、引っ張り力F1を固定板14に有効に伝達することができる。したがって、引っ張り力F1が各フレーム7A、7B、8A、8Bに伝達するのを抑制することができる。したがって、引っ張り力F1によって各フレーム7A、7B、8A、8Bが変形するのを抑制することができる。
【0046】
以上説明したように、前記実施形態では、縦フレーム取付部11aが縦ウェブ7aとブレース取付板12との間で縦ウェブ7aの内側面に沿って配置されているとともに、この縦フレーム取付部11aが基礎2又は梁部材4に固定可能な固定板14に溶接されている。そのため、ブレース10A、10Bに生じる引っ張り力F1のうちの横方向の成分F3を縦フレーム取付部11a自体で受けることができるとともに、この横方向の成分F3を固定部を介して基礎2又は梁部材4に有効に伝えることができる。したがって、ブレース10A、10Bから伝わる引っ張り力F1の横方向の成分F3が直接縦フレーム7A、7Bに伝わるのを抑制することにより、縦フレーム7A、7Bの変形を抑制することができる。
【0047】
また、前記実施形態では、一対の延設部11b、11bが縦フレーム取付部11aから一対の縦フランジ7b、7bに沿って平行に延びるとともに一対の縦切欠部7d、7dを通って縦フレーム7A、7Bの内側に導出されている。そのため、縦フレーム7A、7Bの一対の縦リップ7c、7cを残して、これら一対の縦リップ間を通すことができる間隔の一対の延設部を形成する場合と比較して、一対の延設部11b、11bの間隔を広げることができる。そして、これら延設部11b、11bの間には、ブレース取付板12が溶接されているため、各延設部11b、11bの間隔の広さに応じてブレース取付板12の幅D5を大きくすることができる。したがって、本発明によれば、ブレース10A、10Bからの引っ張り力F1に対するブレース取付板12の強度を向上することができる。
【0048】
さらに、前記実施形態では、縦フレーム取付部11aが縦フレーム7A、7Bに対してボルトB2によって取付可能である。そのため、縦フレーム7A、7Bに対して連結金具9A〜9Dを溶接する場合と比較して、耐力壁5の製造工程を簡素化することができる。
【0049】
前記実施形態では、横フレーム8A、8Bのうち所定の横範囲D4以外の部分が縦フレーム7A、7Bのうち所定の縦範囲D1以外の部分と同等の断面形状を有している。そのため、縦フレーム7A、7b及び横フレーム8A、8Bの部品コストの低減を図ることができる。具体的に、例えば、前記断面形状を有する長尺のフレーム基材を裁断して縦フレーム7A、7B及び横フレーム8A、8Bを形成することができる。これにより、縦フレーム7A、7Bと横フレーム8A、8Bとが異なる断面形状を有する場合と比較して、縦フレーム7A、7Bと横フレーム8A、8Bの製造工程の重複範囲を拡大することができる。しかも、前記実施形態では、縦フレーム7A、7Bと同等の断面形状を有する横フレーム8A、8Bが第1横切欠部8e及び一対の第2横切欠部8d、8dを有する。そのため、縦フレーム7A、7bの縦フランジ7b、7bの内側面に沿って平行に延びる一対の延設板11b、11bを挟むように、所定の横範囲D4に位置する一対の横フランジ8b、8bを配置することができる。そして、一対の延設部11b、11bを利用して、ビスによって一対の横フランジ8b、8bを取り付けることができる。
【0050】
前記実施形態では、固定板14が縦ウェブ7aの端面の全範囲と当接可能な当接面14aを有する。そのため、縦フレーム7A、7Bに生じる圧縮力を固定板14によって受けることができる。したがって、縦フレーム7A、7Bに生じた圧縮力を固定板14を介して基礎2又は梁部材4に確実に伝えることができる。
【0051】
前記実施形態では、縦フレーム取付部11aと一対の延設部11b、11bとが一体に構成されている。つまり、取付部材11は、縦フレーム取付部11aと一対の延設部11b、11bとが互いに交差する方向に延びる断面形状を有する。そのため、縦フレーム7A、7Bに生じる圧縮力によって変形(座屈)し難い連結金具9A〜9Dを得ることができる。したがって、ブレース10A、10Bに生じる力の縦方向の成分をより有効に固定板14を介して基礎2又は梁部材4に伝えることができる。
【0052】
銭意実施形態では、縦フレーム取付部11aだけでなく一対の延設部11b、11bも固定板に溶接されている。そのため、ブレース取付板12からの引っ張り力F1をより確実に固定板14に伝達することができる。
【符号の説明】
【0053】
B2、B3 ボルト(ねじ部材)
D1 縦範囲
D4 横範囲
F1 引っ張り力
F2 縦方向の成分
F3 横方向の成分
1 家屋(建築物の一例)
2 基礎
4 梁部材
5 耐力壁
7A、7B 縦フレーム
7a 縦ウェブ
7b 縦フランジ
7c 縦リップ
7d 縦切欠部
8A、8B 横フレーム
8a 横ウェブ
8b 横フランジ
8c 横リップ
8d 第2横切欠部
8e 第1横切欠部
9A〜9D 連結金具
10A、10B ブレース
11 取付部材
11a 縦フレーム取付部
11b 延設部
12 ブレース取付板
14 固定板
14a 当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の配置される一対の縦フレーム及び一対の横フレームと前記縦フレーム及び前記横フレームに生じる力を支持するブレースとを有するとともに建築物の基礎、梁部材の少なくとも一方に固定される耐力壁を形成するために、前記縦フレームの端部と前記横フレームの端部とを連結可能な連結金具であって、
前記縦フレームは、縦ウェブと、前記縦ウェブの両端から立ち上がる一対の縦フランジと、前記一対の縦フランジからそれぞれ近接する方向に延びる一対の縦リップと、前記縦フレームの端末から所定の縦範囲にわたり前記一対の縦リップが切り欠かれた一対の縦切欠部とを有し、
枠状に配置された状態で内側を向く前記縦ウェブの内側面に沿って配置された状態で前記縦ウェブの内側面に対してねじ部材によって取付可能な縦フレーム取付部と、
前記縦フレーム取付部の両端から前記一対の縦フランジに沿って平行に延びるとともに、前記一対の縦切欠部を通って前記縦フレームから内側に導出される一対の延設部と、
前記一対の延設部間に跨るように配置された状態で前記一対の延設部に対して溶接され、前記縦フレーム取付部よりも内側の位置で前記ブレースの端末を取付可能なブレース取付部と、
前記縦フレーム取付部に溶接され、かつ、枠状に配置された状態で外側を向く前記横フレームの外側面に沿って配置された状態で前記梁部材又は前記基礎に固定可能な固定板とを備えている、連結金具。
【請求項2】
前記横フレームは、横ウェブと、前記横ウェブの両端から内側に立ち上がる一対の横フランジと、前記一対の横フランジからそれぞれ近接する方向に延びる一対の横リップと、前記横フレームの端末から所定の横範囲にわたり前記横ウェブが切り欠かれた第1横切欠部と、前記所定の横範囲にわたり前記一対の横リップが切り欠かれた一対の第2横切欠部とを有するとともに、前記所定の横範囲以外の範囲において前記所定の縦範囲以外の範囲における縦フレームと同等の断面形状を有し、
前記一対の延設部は、前記一対の延設部を挟むように配置された前記所定の横範囲内に位置する前記一対の横フランジをねじ部材によって取付可能である、請求項1に記載の連結金具。
【請求項3】
前記固定板は、前記縦フレーム取付部に取り付けられた前記縦ウェブの端面の全範囲と当接可能な当接面を有する、請求項1又は2に記載の連結金具。
【請求項4】
前記縦フレーム取付部と、前記一対の延設部とが一体に構成されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の連結金具。
【請求項5】
前記一対の延設部は、前記固定板に対して溶接されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の連結金具。
【請求項6】
建築物の基礎、梁部材の少なくとも一方に固定される耐力壁であって、
枠状に配置された一対の縦フレーム及び一対の横フレームと、
前記縦フレームの端部と前記横フレームの端部とを連結可能な4つの連結金具と、
前記4つの連結金具のうち前記枠の対角に配置される2つの連結金具の間にそれぞれ設けられ、前記縦フレーム及び横フレームに生じる力を支持する2本のブレースとを備え、
前記4つの連結金具は、請求項1〜5の何れか1項に記載の連結金具である、耐力壁。
【請求項7】
建築物であって、
基礎と、
梁部材と、
前記基礎、梁部材の少なくとも一方に固定された請求項6に記載の耐力壁とを備えている、建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−172470(P2012−172470A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37443(P2011−37443)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】