説明

連続合成装置及び方法

【課題】
原料を溶かした溶媒を流しつづけるだけで、目的とする合成物を連続的に生成することができるようにする。
【解決手段】
比重が異なり温度に応じて相溶性/相分離性を呈する二種類の溶媒を用い、比重の軽い軽量溶媒に溶ける第一原料(X)と、比重の重い重量溶媒に溶ける第二原料(Y)を相溶性領域で反応させ、軽量溶媒及び重量溶媒のいずれか一方にのみ溶ける合成物(Z)を連続的に生成する連続合成装置(1)であって、上段及び下段が溶媒の相分離温度に維持され、中段が溶媒の相溶温度に維持される温度制御装置を備えた反応管(2)と、その下端から第一原料(X)を軽量溶媒と共に供給する軽量溶媒供給系(5L)と、その上端から第二原料(Y)を重量溶媒と共に供給する重量溶媒供給系(5H)を備えると共に、合成物(Z)が溶けた溶媒を回収する合成物回収口(12L)を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比重が異なり温度に応じて相溶性/相分離性を呈する二種類の溶媒を用いて、二種類以上の原料反応させて合成物を連続的に生成する連続合成装置及び方法に関し、特に、ペプチド、蛋白質、DNA、RNA、多糖類などオリゴマー、ポリマー類の合成に適している。
【背景技術】
【0002】
近年、核酸(DNA)、タンパク質に続く第三の鎖状生命分子として、糖鎖分子が注目されている。
糖鎖とは、グルコースやガラクトース等の8種類の単糖がつながったものであり、一般的には、数個〜十数個の単糖がつながった糖鎖をオリゴ糖、それ以上のものが多糖と呼ばれている。
【0003】
この糖鎖分子は、ヒトを構成する約60兆個の全ての細胞表面を覆い、細胞間の認識や相互作用に関わる働きを有している。
そして、細胞自身に異常を来たすと、細胞表面にある糖鎖も乱れ、癌、慢性疾患、感染症、免疫不全などの異常や、肉体及び神経系、脳機能の老化につながる。
例えば、細胞が癌化すると糖鎖の構造変化が起こり、コレラ菌やインフルエンザウィルスなどは、細胞表面に存する特定の糖鎖を認識し結合することにより細胞内に侵入して感染することが知られている。
したがって、糖鎖の分子認識脳を解明することにより、新しい原理に基づく医薬品や食品を開発することができ、さらには、病気の予防や治療に役立てることができるなど幅広い応用が期待される。
【0004】
この基礎研究としてまず糖鎖を人工的に合成するため、温度に応じて相溶性状態と相分離性状態とに可逆的に変化する溶媒システムを用いて糖鎖ペプチドなどを合成する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2003−183298
【0005】
これは、第一原料及び第二原料を反応させて合成物を生成する際に、比重が異なり、常温で相分離性/50℃前後で相溶性を呈する二種類の溶媒を用いる。
そして、例えば、比重の軽い軽量溶媒としては第一原料及び合成物を溶かし第二原料を溶かさない液体が選定され、比重の重い重量溶媒としては第一原料及び合成物を溶かさず第二原料を溶かす液体が選定されている。
【0006】
そして、まず、第一原料を溶かした軽量溶媒と、第二原料を溶かした重量溶媒を反応容器に所定量注入すると、常温で溶媒同士が相分離性を呈し、軽量溶媒と重量溶媒が分離される。
次いで、反応容器を50℃に加熱して攪拌させると、溶媒同士が相溶性を呈して溶け合うので、夫々の溶媒中に溶けていた第一原料及び第二原料が相溶性溶媒中で反応し、合成物が生成される。
最後に、溶媒を常温に戻すと、溶媒同士が相分離性を呈し、軽量溶媒と重量溶媒が分離され、生成された合成物は重量溶媒には溶けないので軽量溶媒中に存在することとなり、この軽量溶媒中から合成物を抽出することにより目的とする合成物が得られる。
【0007】
しかしながら、このようなバッチ処理は非効率的であり、反応を行なう度に溶媒を入れ替えたり、昇温/降温させて温度コントロールするのも面倒であり、自動化するには困難であった。
特に、目的とする合成物を得るのに反応を何回も繰り返さなければならない場合は、合成物が溶けた軽量溶媒を別の反応容器に移して、次に反応させる第二原料を溶かした重量溶媒を入れ、同様の反応処理を必要な回数だけ繰り返さなければならないという面倒があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、溶媒を移し変えることなく流しつづけるだけで、目的とする合成物を連続的に生成することができるようにすることを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、比重が異なり温度に応じて相溶性/相分離性を呈する二種類の溶媒を用い、比重の軽い軽量溶媒に溶ける第一原料と、比重の重い重量溶媒に溶ける第二原料を相溶性領域で反応させ、軽量溶媒及び重量溶媒のいずれか一方にのみ溶ける合成物を連続的に生成する連続合成装置であって、上段及び下段が溶媒の相分離温度に維持され、中段が溶媒の相溶温度に維持される温度制御装置を備えた反応管と、その下端から第一原料を軽量溶媒と共に供給する軽量溶媒供給系と、その上端から第二原料を重量溶媒と共に供給する重量溶媒供給系を備えると共に、合成物が溶けた溶媒を回収する合成物回収口が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の連続合成装置によれば、反応管内を上昇する軽量溶媒と、反応管内を流下する重量溶媒が中段に達すると相溶性を呈し、夫々に溶けている第一原料と第二原料が反応し、反応管上段まで上昇した軽量溶媒中には生成された合成物が溶けている。
したがって、第二原料が溶けた重量溶媒を反応管に所要量充填した状態で、第一原料が解けた軽量溶媒を供給しつづければ、合成物が溶けた軽量溶媒が反応管の上端に形成された合成物回収口から流出し、連続的に合成物を生成することができるという効果がある。
【0011】
また、反応管を多段に接続して、前段の反応管で生成された合成物を次段の反応管の第一原料として順送りすることにより、夫々の反応管で順次反応を行わせれば、目的とする合成物を得るために何度も反応を繰り返さなければならない場合に溶媒を流すだけで複数種類の反応を順次行わせることができるという効果がある。
さらに、各反応管で同じ反応を繰返し行わせれば、供給した原料を効率良く反応させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本例では、目的とする合成物を連続的に生成することができるようにするという課題を、合成物を溶かす溶媒を移し変えることなく流しつづけるだけで達成できるようにした。
【0013】
図1は本発明に係る連続合成装置の説明図、図2はその使用方法を示す説明図、図3は他の実施形態を示す説明図、図4はその使用方法を示す説明図、図5はさらに他の実施形態を示す説明図、図6はその使用方法を示す説明図である。
【実施例1】
【0014】
図1に示す連続合成装置1は、比重が異なり温度に応じて相溶性/相分離性を呈する二種類の溶媒を用い、比重の軽い軽量溶媒に溶ける第一原料と、比重の重い重量溶媒に溶ける第二原料を相溶性領域で反応させ、例えば軽量溶媒にのみ溶ける合成物を連続的に生成するものである。
【0015】
この連続合成装置1は、軽量溶媒に溶けた第一原料と、重量溶媒に溶けた第二原料を反応させる反応管2と、その反応管2の長手方向に任意の温度分布を形成する温度制御装置3を備えている。
【0016】
温度制御装置3は、反応管2の上段、中段、下段の温度管理を個別に行う冷熱器4U、4M、4Dを備え、上下両段を各溶媒の相分離温度(例えば室温)に維持すると共に、中段を各溶媒の相溶温度(例えば50℃)に維持している。
これにより、上段及び下段では軽量溶媒と重量溶媒が溶け合うことなく完全に分離され、中段では軽量溶媒と重量溶媒が完全に溶け合う相溶性を呈する。
【0017】
また、反応管2には、その下端側から第一原料を軽量溶媒と共に供給する軽量溶媒供給系5Lと、その上端側から第二原料を重量溶媒と共に供給する重量溶媒供給系5Hが接続されている。
軽量溶媒供給系5Lは、軽量溶媒のみを貯留した溶媒タンク6Lと、第一原料を溶かした状態で軽量溶媒を貯留した原料タンク7Lが、切換バルブ8Lを介してポンプ9Lに接続され、ポンプ9Lの吐出口が軽量溶媒供給管10Lを介して反応管2の下端面から所要長さ上方へ突出された流入口11Lに接続されている。
重量溶媒供給系5Hは、重量溶媒のみを貯留した溶媒タンク6Hと、第二原料を溶かした状態で重量溶媒を貯留した原料タンク7Hが、切換バルブ8Hを介してポンプ9Hに接続され、ポンプ9Hの吐出口が重量溶媒供給管10Hを介して反応管2の上端面から所要長さ下方へ突出された流入口11Hに接続されている。
また、反応管2の上端面には反応管2内を上昇してきた軽量溶媒を流出させる軽量溶媒流出口(合成物回収口)12Lが開口形成されて回収タンク13に接続され、下端面には、反応管2内を流下してきた重量溶媒を流出させる重量溶媒流出口12Hが開口形成されて廃液タンク14に接続されている。
そして、各流入口11L及び11HにはオンオフバルブV及びVが設けられ、流出口12L及び12Hには流量調整弁V及びVが設けられている。
なお、図示は省略するが反応管の中段には攪拌器が設けられている。
【0018】
以上が本発明の一構成例であって、次にその作用について説明する。
まず、図2(a)に示すように、溶媒タンク6L及び6Hから、軽量溶媒(例えばシクロヘキサン)と重量溶媒(DMF/DMA溶液)を1:1で反応管2内に貯留すると、これらは室温では相分離性を呈するので、軽量溶媒と重量溶媒が上層及び下層に分離する。
ここで、温度制御装置3により各冷熱器4U、4M、4Dの温度をコントロールし、反応管2の上段及び下段を相分離温度に維持し、中段を相溶温度に維持すると、図2(b)に示すように、反応管2の中段に軽量溶媒と重量溶媒が溶け合った相溶領域2Mが形成され、上段には軽量溶媒領域2U、下段には重量溶媒領域2Dが形成される。
【0019】
この状態で、図2(c)に示すように、各原料タンク7L及び7Hからポンプ9L及び9Hにより第一原料X(例えば、シクロヘキサン可溶性担体((C1837O)COH)):(3,4,5−トリオクタデシルオキシフェニル)メタン−1−オール)及び第二原料Y(例えば(Fmoc−Val−)−O(9−フルオレニルメトキシカルボニル)バリン)を供給し、その供給流量に応じて夫々の流出口12L及び12Hの流量制御弁V及びVを調節しておく。
これにより、第一原料Xを溶かした軽量溶媒は反応管2の下段に沈んだ重量溶媒より比重が軽いので上方に移動し、軽量溶媒流出口12Lから軽量溶媒が回収タンク13に流出される。
第二原料Yを溶かした重量溶媒は反応管2の上段の軽量溶媒より比重が軽いので下方に流下し、重量溶媒流出口12Hから重量溶媒が廃液タンク14に流出される。
ていく。
【0020】
このとき反応管2の下段及び上段は相分離温度に維持されているので、軽量溶媒と重量溶媒が溶け合うことなく中段の相溶領域2Mに達し、反応管2内を攪拌すれば、軽量溶媒及び重量溶媒の夫々に溶けている第一原料Xと第二原料Yが互いに反応して合成物XYが生成される。
合成物XYは軽量溶媒に溶けて重量溶媒には溶けないので、相溶領域に存在する軽量溶媒に溶け込んで軽量溶媒と共に上方に移動する。
したがって、軽量溶媒流出口12Lから回収タンク13に流出された軽量溶媒には合成物XYが溶け込んでいるので、これを抽出することにより目的とする合成物XYを得ることができる。
【0021】
なお、上述の説明では、合成物が軽量溶媒に溶ける場合について説明したが、重量溶媒に溶ける場合は、重量溶媒流出口12Hを合成物回収口として回収タンク13を接続し、軽量溶媒流出口12Lに廃液タンク14を接続すればよい。
【実施例2】
【0022】
図3は本発明に係る連続合成装置の他の実施形態を示す。図1と共通する部分は同一符号を付して詳細説明を省略する。
本例の連続合成装置21は、反応管2A〜2Cが直列に多段連結されており、第一反応管2Aで第一原料Xと第二原料Yを反応させて合成物Zを生成し、この合成物Zを第二反応管2Bの第一原料として他の第二原料Yと反応させて合成物Zを生成し、この合成物Zを第三反応管2Cの第一原料としてさらに他の第二原料Yと反応させて合成物Zを生成する。
【0023】
各反応管2A〜2Cには、その下端から第一原料を個別に供給する軽量溶媒供給系22A〜22Cと、その上端から第二原料Y〜Yを個別に供給する重量溶媒供給系23A〜23Cを備えている。
第一反応管2Aの軽量溶媒供給系22Aは、溶媒タンク6Lと原料タンク7Lが切換バルブ8Lを介してポンプ9Lに接続され、その吐出口が重量溶媒供給管10Lを介して重量溶媒流入口11Lに接続されている。
第二及び第三反応管2B、2Cの軽量溶媒供給系22B、22Cは、前段の反応管2A、2Bで生成された合成物Z、Zを流入させることができるように、軽量溶媒流入口11Lをその前段の反応管2A、2Bの軽量溶媒流出口12Lに接続する連通管で形成されている。
【0024】
また、各重量溶媒供給系23A〜23Cは、溶媒タンク6Hと原料タンク7Hが切換バルブ8Hを介してポンプ9Hに接続され、その吐出口が重量溶媒供給管10Hを介して重量溶媒流入口11Hに接続されている。
【0025】
これによれば、図4で示すように、第一反応管2Aでは、軽量溶媒供給系22Aより軽量溶媒に溶かされて供給される第一原料X(例えばシクロヘキサン可溶性担体((C1837O)COH)):(3,4,5−トリオクタデシルオキシフェニル)メタン−1−オール)と、重量溶媒供給系23Aより重量溶媒に溶かされて供給される第二原料Y(例えば(Fmoc−Val−)−O(9−フルオレニルメトキシカルボニル)バリン)が相溶領域2Mで反応して合成物Z(例えば〔SC〕−Val−Fmoc:可溶性担体結合バリン−Fmoc)が生成される。
次いで、第二反応管2Bでは、軽量溶媒供給系22Bを介して第一原料として供給された前記合成物Zが、重量溶媒供給系23Bより重量溶媒に溶かされて供給される第二原料Y(例えば10%EtNH:ジエチルアミン)が相溶領域2Mで反応して合成物Z(例えば〔SC〕−Val−NH:可溶性担体結合バリン−NH)が生成される。
そして、第三反応管2Cでは、軽量溶媒供給系22Cを介して第一原料として供給された前記合成物Zが、重量溶媒供給系23Cより重量溶媒に溶かされて供給される第二原料Y(例えばFmoc−Gly−OBt:Fmoc−グリシン−t−ブトキシカルボニル)が相溶領域2Mで反応して合成物Z(例えば〔SC〕−Val−Fmoc):可溶性担体結合バリン−グリシン−Fmoc)が生成される。
【0026】
このように本例では、各反応管2A〜2Cの夫々に各重量溶媒供給系23A〜23Bより第二原料Y1、Y2、Y3を供給しながら、反応管2Aの軽量溶媒供給系22Aから第一原料Xを供給すると、軽量溶媒に運ばれる第一原料は各反応管2A〜2Cに順次供給され、夫々の反応管2A〜2Cで合成反応が順次実行され、第三反応管2Cで目的とする合成物Zが生成される。
【0027】
なお本例では、合成物Z〜Zが軽量溶媒に溶ける場合について説明したが、重量溶媒に溶ける場合は、図示は省略するが、各反応管2A〜2Cに個別に第一原料を供給する軽量溶媒供給系22A〜22Cとして、溶媒タンク6Lと原料タンク7Lが切換バルブ8Lを介してポンプ9Lに接続され、その吐出口が軽量溶媒供給管10Lを介して軽量溶媒流入口11Lに接続すればよい。
また、各重量溶媒供給系23A〜23Cは、第三反応管2Cの重量溶媒供給系23Cが、溶媒タンク6Hと原料タンク7Hが切換バルブ8Hを介してポンプ9Hに接続され、その吐出口が重量溶媒供給管10Hを介して重量溶媒流入口11Hに接続されている。
第二及び第一反応管2B、2Aの重量溶媒供給系23B、23Aは、第三反応管2C、2Bで生成された合成物Z、Zを流入させることができるように、重量溶媒流入口11Hを反応管2C、2Bの重量溶媒流出口12Hに接続する連通管で形成すればよい。
【実施例3】
【0028】
図5は本発明に係る連続合成装置の他の実施形態を示す。図1及び図3と共通する部分は同一符号を付して詳細説明を省略する。
本例の連続合成装置31は、反応管2A〜2Cが直列に多段連結されており、各反応管2A〜2Cで、第一原料Xと第二原料Yを反応させて合成物Zを生成する同じ反応を繰返し行わせえることにより、原料X、Yを無駄無く高効率で反応さるものである。
【0029】
各反応管2A〜2Cには、その下端から第一原料を個別に供給する軽量溶媒供給系22A〜22Cと、その上端から第二原料を個別に供給する重量溶媒供給系33A〜33Cを備えている。
【0030】
第一反応管2Aの軽量溶媒供給系22Aは、溶媒タンク6Lと原料タンク7Lが切換バルブ8Lを介してポンプ9Lに接続され、その吐出口が、軽量溶媒供給管10Lを介して軽量溶媒流入口11Lに接続されている。
第二及び第三反応管2B、2Cの軽量溶媒供給系22B、22Cは、前段の反応管2A、2Bで余った第一原料Xを順次前段の反応管2B、2Cに流入させることができるように、軽量溶媒流入口11Lをその前段の反応管2A、2Bの軽量溶媒流出口12Lに接続する連通管で形成されている。
【0031】
また、第三反応管2Cの重量溶媒供給系33Cは、溶媒タンク6Hと原料タンク7Hが切換バルブ8Hを介してポンプ9Hに接続され、その吐出口が重量溶媒供給管10Hを介して重量溶媒流入口11Hに接続されている。
第二及び第一反応管2B、2Aの重量溶媒供給系33B、33Aは、第三反応管2C、2Bで余った第二原料Yを順次前段の反応管2B、2Aに流入させることができるように、重量溶媒流入口11Hを後段の反応管2C、2Bの重量溶媒流出口12Hに接続する連通管で形成されている。
【0032】
これによれば、図6に示すように、第一原料Xが軽量溶媒供給系22Aを介して第一反応管2Aに供給され、第二原料Yが重量溶媒供給系33Cを介して第三反応管2Cに供給される。
そして、夫々の反応管2A〜2Cで反応し切れなかった余剰第一原料Xが軽量溶媒供給系22B、22Cを介して順次後段の反応管2B、2Cへ、また、余剰第二原料Yが重量溶媒供給系33B、33Aを介して順次前段の反応管2B、2Aへ供給される。
【0033】
すなわち、第一反応管2Aでは、軽量溶媒供給系22Aを介して供給された第一原料Xと、反応管2C、2Bで反応されずに残った僅かな余剰第二原料Yが相溶領域2Mで合成物Zが生成されるので、余剰第二原料Yはほとんど全てが反応に供される。
次に、第二反応管2Bでは、反応管2Aで生成された僅かな合成物Zと大量の第一原料Xが軽量溶媒供給系22Bを介して供給され、その第一原料Xが反応管2Cで反応されずに残った少なめの余剰第二原料Yと相溶領域2Mで反応するので、余剰第二原料Yはやはりほとんど全てが反応に供される。
そして、第三反応管2Cでは、反応され部に残った少量の第一原料Xと合成物Zが、軽量溶媒供給系22Cを介して供給され、その少量の第一原料Xが重量溶媒供給系33Cを介して供給される第二原料Yと反応するので、第一原料Xはそのほとんど全てが反応に供される。
【0034】
このように本例では、三回繰り返して同じ反応を行わせているので、原料を余剰させることなくその全量を反応に供することができ、高効率の反応を行わせることができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上述べたように、本発明は、比重が異なり温度に応じて相溶性/相分離性を呈する二種類の溶媒を用いて、原料を供給しながらこれらを反応させて、ペプチド、蛋白質、DNA、RNA、多糖類などオリゴマー、ポリマー類など目的とする合成物を連続的に生成する用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る連続合成装置の説明図。
【図2】その使用方法を示す説明図。
【図3】他の実施形態を示す説明図。
【図4】その使用方法を示す説明図。
【図5】さらに他の実施形態を示す説明図。
【図6】その使用方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0037】
1、21、31 連続合成装置
2、2A〜2C 反応管
3 温度制御装置
5L、22A〜22C 軽量溶媒供給系
5H、23A〜23C 33A〜33C 重量溶媒供給系




【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が異なり温度に応じて相溶性/相分離性を呈する二種類の溶媒を用い、比重の軽い軽量溶媒に溶ける第一原料と、比重の重い重量溶媒に溶ける第二原料を相溶性領域で反応させ、軽量溶媒及び重量溶媒のいずれか一方にのみ溶ける合成物を連続的に生成する連続合成装置であって、
上段及び下段が溶媒の相分離温度に維持され、中段が溶媒の相溶温度に維持される温度制御装置を備えた反応管と、その下端から第一原料を軽量溶媒と共に供給する軽量溶媒供給系と、その上端から第二原料を重量溶媒と共に供給する重量溶媒供給系を備えると共に、合成物が溶けた溶媒を回収する合成物回収口が形成されたことを特徴とする連続合成装置。
【請求項2】
前記反応管が直列に多段連結され、各反応管には夫々異なる第一原料又は第二原料を供給する溶媒供給系と、前段又は後段の反応管で生成された合成物を次段の反応管の第一原料又は第二原料として供給する溶媒供給系を備えた請求項1記載の連続合成装置。
【請求項3】
前記反応管が直列に多段連結され、最前段の反応管から第一原料を軽量溶媒と共に供給する軽量溶媒供給系と、最後段の反応管から第二原料を重量溶媒と共に供給する重量溶媒供給系を備え、前段の反応管の余剰第一原料が順次後段の反応管の第一原料として供給されると共に、後段の反応管の余剰第二原料が順次前段の反応管の第二原料として供給される請求項1記載の連続合成装置。
【請求項4】
比重が異なり温度に応じて相溶性/相分離性を呈する二種類の溶媒を用い、比重の軽い軽量溶媒に溶ける第一原料と、比重の重い重量溶媒に溶ける第二原料を相溶性領域で反応させ、軽量溶媒及び重量溶媒のいずれか一方にのみ溶ける合成物を連続的に生成する連続合成方法であって、
上段及び下段が溶媒の相分離温度に維持され、中段が溶媒の相溶温度に維持される温度制御装置を備えた反応管に、その下端から第一原料を軽量溶媒と共に供給し、その上端から第二原料を重量溶媒と共に供給して、合成物を溶かす軽量溶媒又は重量溶媒を供給しながら前記中段領域で合成物を連続的に生成させ、当該溶媒と共に回収する連続合成方法。
【請求項5】
直列に多段連結された各反応管に夫々異なる第一原料又は第二原料を供給すると共に、前段又は後段の反応管で生成された合成物を次段の反応管の第一原料又は第二原料として供給し、最終段で生成された合成物を溶媒と共に回収する請求項4記載の連続合成方法。
【請求項6】
直列に多段連結された反応管のうち、最前段の反応管から第一原料を軽量溶媒と共に供給し、最後段の反応管から第二原料を重量溶媒と共に供給し、前段の反応管で余った余剰第一原料を順次後段の反応管の第一原料として供給すると共に、後段の反応管で余った余剰第二原料を順次前段の反応管の第二原料として供給する請求項4記載の連続合成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−124344(P2006−124344A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316793(P2004−316793)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000138200)株式会社モリテックス (120)
【Fターム(参考)】