説明

連続式加熱処理方法及び連続式加熱処理装置

【課題】非密閉状の加熱処理室を使用しつつも、加熱媒体の室外への流出及び外気遮断が十分に成し得る連続式加熱処理方法及び連続式加熱処理装置を提供する。
【解決手段】入口側外気遮蔽領域S1、出口側外気遮蔽領域S2、及び両遮蔽領域との間に加熱処理領域S3を備えた非密閉状の加熱処理室1と、加熱処理室1内を所定温度以上に加熱して加熱処理雰囲気Fに調整する処理室内加熱機構7と、加熱処理室1内に加熱媒体を噴射する加熱媒体生成機構13と、入口2から出口3に向かって処理対象物Tを搬送する搬送機構12と、加熱処理室1内から強制的に吸い出した加熱媒体を連絡管21内で所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体SKを生成する加熱部23と、生成した再加熱媒体SKを入口側外気遮蔽領域S1と、出口側外気遮蔽領域S2へと噴射させる再加熱媒体生成噴射機構18とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物を連続して加熱処理可能な加熱処理方法及び加熱処理装置に関し、詳しくは、この種の連続式加熱処理方法及び装置において、加熱処理室内部からの加熱媒体の流出及び加熱処理室内部への外気の混入を防止する。
【背景技術】
【0002】
従来から食材や食品などを加熱加工処理(調理・殺菌など)するため、加熱媒体として水蒸気を用いていたものが広く知られている。特に、過熱水蒸気などの加熱媒体を用いて加熱加工処理することが昨今注目されている。
過熱水蒸気は、飽和水蒸気を更に加熱することにより、ある圧力において飽和温度以上の蒸気温度を持って発生する。過熱水蒸気は外気に触れて温度が下がっても、過熱状態を保っていれば凝縮せず、同じ圧力の飽和水蒸気よりも大きな熱量を保有している。例えば、食材の加熱において、食材の低温時には初期凝縮が発生して、飽和水蒸気同様に潜熱による凝縮伝熱が起こるが、食材の品温上昇に伴い、凝縮現象は消えて食材中水分の蒸発が始まる。この結果、食材内部への凝縮水流入が無く、味の変化や成分溶出の少ない加熱処理方法として過熱水蒸気が用いられている。
【0003】
また、食材や食品などを加熱処理する場合、その生産性を向上させるため、無端状に連続したコンベア等を使用して所定の長さ・形状の加熱処理室内で連続処理するのが一般的である。そこで、例えば、上述のように過熱水蒸気などの加熱媒体を用いて連続処理する装置として、特許文献1などが知られている。
【0004】
ここで、特許文献1を含め、過熱水蒸気などの加熱媒体を用いて加熱処理する連続式の加熱処理装置について簡単に説明すると、入口側と出口側にそれぞれ処理対象物が通過可能な開口を備えた加熱処理室と、この入口側の開口と出口側の開口にわたって加熱処理室内に連続して処理対象物を搬送する無端状のコンベアと、この加熱処理室内に加熱媒体(過熱水蒸気)を噴射する加熱媒体生成噴射装置とを備えて構成されている。
この種の装置によれば、加熱処理室内にコンベアによって搬送されてきた処理対象物に加熱媒体(過熱水蒸気)を噴射することによって加熱処理していたものである。また、連続して噴射される加熱媒体(過熱水蒸気)によって加熱処理室内を所定の加熱処理雰囲気(過熱水蒸気雰囲気)に維持させようとしているものである。
【0005】
しかし、コンベア等を使用して連続処理する場合、加熱処理室内を処理対象物が順次連続して搬送可能なように、加熱処理室は中空状で、かつ入口側と出口側にそれぞれ処理対象物が通過可能な程度の開口を備えた非密閉空間を採用せざるを得ない。
このように入口側と出口側に開口が開いているため、この開口から加熱処理室内の加熱媒体(過熱水蒸気)が逃げて(漏れて)しまうことがあり、また、この開口から外気(空気)が混入されてしまうこともあり、所定の加熱処理雰囲気を維持できなくなってしまうという不都合があった。
加熱処理室内からの加熱媒体の流出や加熱処理室内への外気(空気)混入は、水蒸気濃度の低下や食材表面温度の上昇速度の低下などが発生し、食材の加熱に障害がでるばかりか、殺菌効果にも大きな影響が有る。すなわち、加熱処理装置、特にこの種の連続式加熱処理装置において加熱媒体の室外への流出及び外気遮断は重要な要素となる。
【0006】
前記特許文献1では、このような加熱媒体の室外への流出及び外気遮断を図るための遮蔽機構を含む提案をしている。
すなわち、特許文献1では、開口している入口側と出口側にそれぞれカーテンを配設し、処理対象物が加熱処理室に入る時と加熱処理室から出る時のみ、カーテンを押し開いて開口を通過し、それ以外の時は、カーテンによってそれぞれの開口を閉じて加熱媒体の室外への流出及び外気遮断を図るものとしている。
【0007】
また、特許文献2も特許文献1と同様の構成を有しており、開口している入口側と出口側にそれぞれのれん状の緩衝シール材を配設し、処理対象物が加熱処理室に入る時と加熱処理室から出る時のみ、前記緩衝シール材を押し開いて開口を通過し、それ以外の時は、緩衝シール材によってそれぞれの開口を閉じて加熱媒体の室外への流出・外気遮断を図るものとしている。
【0008】
しかし、このように入口側と出口側に配設したカーテンや緩衝シール材を処理対象物が通過する際に押し開く遮蔽機構では次のような不都合が生じてしまう。
(1)このカーテンや緩衝シール材は、処理対象物が通過する際に処理対象物によって容易に押し開くことができる程度であるため、加熱処理室内に噴射される加熱媒体の圧力によって通過時以外でも加熱処理室内の加熱媒体が室外へと流出してしまう。
(2)さらに、このように入口側と出口側に処理対象物が押し開いて通過する遮蔽機構では、加熱処理されて加熱処理室内から搬送される処理対象物(処理済対象物)にカーテンや緩衝シール材が接触するため、処理対象物(処理済対象物)に雑菌などが付着してしまう虞もあった。
【0009】
そこで、このような機械的な遮蔽機構を使用せずに加熱媒体の室外への流出・外気遮断を図る技術的手段を提供する先行技術として特許文献3が提案されている。
特許文献3は、過熱水蒸気は空気よりも軽いという特性に着眼し、過熱水蒸気が滞留し易い機構を採用している。
具体的には、入口側と出口側にそれぞれ処理対象物が搬送して通過可能な開口(以下、開口入口と開口出口とも言う。)をそれぞれ設けた加熱処理室を使用しているが、前記開口入口と開口出口にわたって連通する加熱処理室内の処理対象物搬送空間を段差状に構成しているものである。すなわち、開口入口側と開口出口側を低位置とするとともに、加熱媒体を噴射して加熱処理する処理領域(加熱処理雰囲気領域)を高位置となるように設計している。
これによれば、空気よりも軽い過熱水蒸気は、開口入口や開口出口よりも高位置な処理領域に滞留することとなるため、処理領域よりも低位置の開口入口や開口出口から外部へと流出してしまう虞がない、というものである。したがって、この技術的手段によれば、カーテンや緩衝シール材などの機械的な遮蔽機構を別途開口入口や開口出口に備えなくとも良いということである。
【0010】
しかし、このような先行技術であっても、開口入口や開口出口にて何等外部との遮蔽を施していない状態であったため、加熱処理室内(処理領域)への外気混入を防止することが十分に成し得ておらず、加熱処理室内への外気混入により、水蒸気濃度の低下や食材表面温度の上昇速度の低下などが発生し、食材の加熱に障害が出るばかりか、殺菌効果にも大きな影響が出ている。
【0011】
そこで、本発明者は、水蒸気を使用して食材などの処理対象物を連続して加熱処理する連続式の加熱処理手段において、加熱処理室外への加熱媒体の流出防止とともに加熱処理室内(処理領域)への外気混入を防止し得る新規技術的手段を発明するに鋭意研究を重ねた。
【0012】
また、本発明者は、加熱処理する際の加熱媒体として、一般に知られている過熱水蒸気とは異なる新たな加熱媒体を提供すべく特許文献4を含む多数の出願を既にしている。具体的には、次の構成を有している。
加熱処理室内を、常圧で、かつ処理室内加熱機構によって115℃程度に加熱制御し、
加熱媒体生成機構は、水供給源から供給された水を流通させる管路を内装するとともに、前記管路内に供給された水を所定温度及び所定圧力で沸騰させることで管内に水蒸気と熱水からなる気液混合体を生成し、前記管路の先端部に備え、内圧0.19MPa以上、ノズル内部温度120℃以上、及びノズル内水量0.7gr/sec以上に制御した加熱媒体噴射ノズルを介して前記気液混合体を前記制御された加熱処理室内に噴出することにより、前記加熱処理室内を過熱水蒸気と高温微細水滴が混在する状態の加熱媒体で満たされた加熱処理雰囲気に調整している。
しかし、この種の構成を有している加熱処理装置はバッチ式のものであったため、生産性を向上させることは到底成し得なかった。このような新規な加熱媒体を用いて加熱処理するものであっても非密閉状の加熱室内で同様の効果を得ることは困難である。そこで、この種の加熱処理装置を連続式の加熱処理装置に変える要望も高いため、今般の開発において併せて行うものとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−310438号公報
【特許文献2】特開2005−341834号公報
【特許文献3】特開2006−087641号公報
【特許文献4】特開2009−091386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的とするところは、連続して多数の処理対象物を順次加熱処理することのできる連続式加熱処理方法及び加熱処理装置であって、少なくとも入口側と出口側に、それぞれ搬送されてきた処理対象物が通過することのできる開口を備えた非密閉状の加熱処理室を使用しつつも、加熱媒体の室外への流出及び外気遮断が十分に成し得る連続式加熱処理方法及び連続式加熱処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するために、第1の発明は、一端側に開口した入口と他端側に開口した出口を設けるとともに、それぞれの開口にわたって連通して形成された加熱処理室内に、加熱媒体を噴射して加熱処理室内を加熱処理雰囲気とする加熱媒体供給工程と、
前記加熱処理室内に処理対象物を搬送して加熱処理する加熱処理工程と、
加熱処理室内の加熱処理雰囲気の一部を加熱処理室外へと吸い出し、所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体を生成した後、該体積膨張した再加熱媒体を加熱処理室内に噴射する再加熱媒体生成噴射工程とを含み、
前記体積膨張した再加熱媒体は、加熱処理室内への前記加熱媒体の噴射位置よりも前記入口と前記出口寄りにそれぞれ連続して噴射することを特徴とする加熱処理方法としたことである。
【0016】
第2の発明は、一端側に開口した入口と他端側に開口した出口を設けるとともに、それぞれの開口にわたって連通して形成した加熱処理室内を所定温度以上に加熱し、前記加熱された加熱処理室内に加熱媒体を噴射して加熱処理室内を加熱処理雰囲気とする加熱媒体供給工程と、
前記加熱処理室内に処理対象物を搬送して加熱処理する加熱処理工程と、
加熱処理室内の加熱処理雰囲気の一部を加熱処理室外へと吸い出し、所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体を生成した後、該体積膨張した再加熱媒体を加熱処理室内に噴射する再加熱媒体生成噴射工程とを含み、
前記体積膨張した再加熱媒体は、加熱処理室内への前記加熱媒体の噴射位置よりも前記入口と前記出口寄りにそれぞれ連続して噴射することを特徴とする加熱処理方法としたことである。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、加熱媒体供給工程は、
加熱処理室内を、常圧で、かつ115℃程度に加熱制御し、
水供給源から0.7gr/sec以上で供給された水を所定温度及び所定圧力で沸騰させることで水蒸気と熱水からなる気液混合体を生成するとともに、前記気液混合体を加熱処理室内に噴射する加熱媒体噴射ノズルを備え、
前記加熱媒体噴射ノズルは、内圧0.19MPa以上、ノズル内部温度120℃以上に制御されており、
前記加熱媒体噴射ノズルを介して、前記加熱処理室内に気液混合体を噴射することで、前記加熱処理室内を過熱水蒸気と高温微細水滴が混在する状態の加熱媒体で満たされた加熱処理雰囲気に調整し、
再加熱媒体は、前記加熱処理雰囲気に調整されている加熱処理室内の加熱媒体を再加熱して生成され体積膨張した過熱水蒸気であることを特徴とする加熱処理方法としたことである。
【0018】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかにおいて、加熱媒体は、処理対象物の加熱処理中において、連続して噴射されることを特徴とする加熱処理方法としたことである。
【0019】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかにおいて、加熱処理室の入口上方外部と出口上方外部には、入口側と出口側から室外に溢れ出た再加熱媒体を吸込む室外吸い込み部をそれぞれ備え、前記溢れ出た再加熱媒体とともに、入口付近及び出口付近にある外気を吸込むことを特徴とする加熱処理方法としたことである。
【0020】
第6の発明は、一端側に開口した入口と、他端側に開口した出口を設けた加熱処理室と、
前記入口から前記出口に向かって処理対象物を搬送する搬送機構と、
前記加熱処理室内に加熱媒体を噴射する加熱媒体噴射ノズルを備えた加熱媒体生成機構と、
前記加熱処理室内の少なくとも一部に設けた吸込み口及び噴き出し口と、前記吸込み口と噴き出し口とにわたって連通した連絡管と、該連絡管の所定箇所に備えられ、加熱処理室内に噴射した前記加熱媒体を前記吸込み口から強制的に吸い出す吸込みファンと、該吸込みファンで吸い出した加熱媒体を連絡管内で所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体を生成する加熱部と、前記生成した再加熱媒体を前記噴き出し口から加熱処理室内へと噴射させる再加熱媒体噴射部を備えた再加熱媒体生成噴射機構とを含み、
前記加熱処理室は、入口付近の入口側外気遮蔽領域と、出口付近の出口側外気遮蔽領域と、前記入口側外気遮蔽領域と出口側外気遮蔽領域との間の加熱処理領域とに区分けされており、
前記加熱媒体噴射部は前記加熱処理領域に配設され、
前記再加熱媒体噴射部は、前記入口側外気遮蔽領域と前記出口側外気遮蔽領域に配設されていることを特徴とする加熱処理装置としたことである。
【0021】
第7の発明は、一端側に開口した入口と、他端側に開口した出口を設けた加熱処理室と、
前記入口から前記出口に向かって処理対象物を搬送する搬送機構と、
前記加熱処理室内に加熱媒体を噴射する加熱媒体噴射ノズルを備えた加熱媒体生成機構と、
前記加熱処理室内に配し、加熱処理室内に噴射された前記加熱媒体を所定温度以上に加熱して加熱処理室内を所定の加熱処理雰囲気に調整する処理室内加熱機構と、
前記加熱処理室内の少なくとも一部に設けた吸込み口及び噴き出し口と、前記吸込み口と噴き出し口とにわたって連通した連絡管と、該連絡管の所定箇所に備えられ、加熱処理室内に噴射した前記加熱媒体を前記吸込み口から前記連絡管内へと強制的に吸い出す吸込みファンと、該吸込みファンで吸い出した加熱媒体を連絡管内で所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体を生成する加熱部と、前記生成した再加熱媒体を前記噴き出し口から加熱処理室内へと噴射させる再加熱媒体噴射部を備えた再加熱媒体生成噴射機構とを含み、
前記加熱処理室は、入口付近の入口側外気遮蔽領域と、出口付近の出口側外気遮蔽領域と、前記入口側外気遮蔽領域と出口側外気遮蔽領域との間の加熱処理領域とに区分けされており、
前記加熱媒体噴射部と前記処理室内加熱機構は前記加熱処理領域に配設され、
前記再加熱媒体噴射部は、前記入口側外気遮蔽領域と前記出口側外気遮蔽領域に配設されていることを特徴とする加熱処理装置としたことである。
【0022】
第8の発明は、第7の発明において、加熱処理室は処理室内加熱機構を備え、常圧で、かつ処理室内加熱機構によって115℃程度に加熱制御されており、
加熱媒体生成機構は、加熱部と、水供給源と連絡して前記加熱部により加熱される管路と、前記管路の先端部に備えられ、加熱処理室内に先端を臨ませてなる加熱媒体噴射ノズルを備え、前記加熱媒体噴射ノズルは、内圧0.19MPa以上、内部温度120℃以上に制御されており、
前記管路内に0.7gr/sec以上で供給された水を所定温度及び所定圧力で沸騰させることで管路内に水蒸気と熱水からなる気液混合体を生成し、
前記加熱媒体噴射ノズルを介して前記気液混合体を前記加熱処理室内に噴出することにより、前記加熱処理室内を過熱水蒸気と高温微細水滴が混在する状態の加熱媒体で満たされた加熱処理雰囲気に調整しており、
再加熱媒体は、前記加熱処理雰囲気に調整されている加熱処理室内の加熱媒体を、再加熱媒体生成噴射機構により再加熱して生成され体積膨張した過熱水蒸気であることを特徴とする加熱処理装置としたことである。
【0023】
第9の発明は、第6の発明乃至第8の発明のいずれかにおいて、加熱媒体は、処理対象物の加熱処理中において、連続して噴射されることを特徴とする加熱処理装置としたことである。
【0024】
第10の発明は、第6の発明乃至第9の発明のいずれかにおいて、再加熱媒体噴射部は、その噴射部先端を加熱処理室の上方から入口側外気遮蔽領域と出口側外気遮蔽領域に向けて再加熱媒体を噴射可能に位置させていることを特徴とする加熱処理装置としたことである。
【0025】
第11の発明は、第6の発明乃至第10の発明のいずれかにおいて、加熱処理室の入口上方外部と出口上方外部には、入口側外気遮蔽領域と出口側外気遮蔽領域から室外に溢れ出た再加熱媒体とともに、入口付近及び出口付近にある外気を吸込む室外吸い込み部をそれぞれ備えていることを特徴とする加熱処理装置としたことである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、少なくとも入口側と出口側に、それぞれ搬送されてきた処理対象物が通過することのできる開口を備えた非密閉状の加熱処理室を使用しつつも、加熱媒体の室外への流出及び外気遮断が十分に成し得る連続式加熱処理方法及び連続式加熱処理装置を提供できた。すなわち、非密閉状の加熱処理室を用いて行わざるを得ない連続式の加熱処理であっても、機械的な密閉機構を採用せずとも加熱処理領域を密閉に近い状態で処理し、加熱媒体の室外への流出及び外気遮断が十分に成し得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の連続式加熱処理装置の一実施例を示す概略平面図である。
【図2】本発明の連続式加熱処理装置の一実施例を示す概略正面図である。
【図3】本発明の連続式加熱処理装置の一実施例を示す概略側面図である。
【図4】本発明の連続式加熱処理装置の一実施例を示す概略縦断正面図である。
【図5】本発明の連続式加熱処理装置の一実施例を示す概略縦断側面図である。
【図6】本発明の連続式加熱処理装置に用いられる加熱媒体の実施の一形態における発生メカニズムを示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 加熱処理室
2 入口
3 出口
S1 入口側外気遮蔽領域
S2 出口側外気遮蔽領域
S3 加熱処理領域
12 搬送機構
13 加熱媒体生成機構
17 加熱媒体噴射ノズル
18 再加熱媒体生成噴射機構
19 吸込み口
20 噴き出し口
21 連絡管
22 吸込みファン
23 加熱部
24,25 再加熱媒体噴射部
F 加熱処理雰囲気
H 熱水
M 水蒸気
T 処理対象物
SK 再加熱媒体
KM 過熱水蒸気
KH 高温微細水滴
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の加熱処理方法及びその加熱処理方法を使用する加熱処理装置に関する一実施形態について説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎずなんらこれに限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【実施例1】
【0030】
図1乃至図6は本発明加熱処理装置の一例を示し、加熱処理装置は、加熱処理室1と、加熱処理室1内に処理対象物Tを連続して搬送する搬送機構12と、加熱処理室1内に加熱媒体を噴射する加熱媒体生成機構13と、加熱処理室1内の加熱処理雰囲気Fの一部を吸い出して再加熱媒体SKを生成するとともに、その再加熱媒体SKを再び加熱処理室1内に噴射することで加熱媒体(加熱処理雰囲気F)の室外への流出及び外気Gの室内への侵入を防ぐ再加熱媒体生成噴射機構18とで構成されている(図1乃至図6参照。)。
【0031】
加熱処理室1は、一端側に開口した入口2と他端側に開口した出口3を設けた非密閉状でかつ所定長さの矩形状に形成されており、所定の架台4上に配設されている(図1乃至図4参照。)。図中5は、点検扉である。
前記加熱処理室1は、本実施例において、入口2付近の入口側外気遮蔽領域S1と、出口3付近の出口側外気遮蔽領域S2と、前記入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2との間の加熱処理領域S3とに区分けされている(図4参照。)。
【0032】
なお、本発明において特に限定解釈されるものではないが、前記入口側外気遮蔽領域S1と出口側遮蔽領域S2は、加熱処理領域S3との境界部位に、後述する搬送機構12によって搬送される処理対象物Tの搬送を阻害しない程度に室内に向けて突出する境界壁6を設けている(図4に概略を示す。)。本実施例では、この境界壁6を前壁1aの内面、後壁1bの内面、天井壁1cの内面及び底面1dの内面にそれぞれ突出して備えている。
図中6aは、境界壁6に設けられている貫通した通孔である。なお、この境界壁6を備えない実施の形態であっても本発明の範囲内である。
【0033】
また、本実施例では、加熱処理室1内の前記加熱処理領域S3を所定温度以上に加熱調整するため、処理室内加熱機構7を備えている。
処理室内加熱機構7は、例えば図4乃至図6に示すように、処理対象物Tの搬送方向(図4にて矢印Yで示す方向)に長尺状に形成された室内加熱ヒーターとしてのコイル状加熱部であって、このコイル状加熱部(処理室内加熱機構)7を搬送機構12と平行で、かつ搬送機構12のコンベア幅よりも広く離して前記加熱処理室1内の加熱処理領域S3の天井壁1cに一対配設している。
また、このコイル状加熱部7は、その両端部7a,7bを加熱処理室1の天井壁1cの外面に突出させるとともに、それぞれの両端部7a,7bを図示しない所定の熱源と連絡している。すなわち、本実施例のコイル状加熱部7は、加熱処理領域S3の天井壁1cの内面から領域S3内に吊り下げ状に配設されている。
本実施例では、このコイル状加熱部7によって、加熱処理室1内を、常圧で、かつ115℃程度(好ましくは、105℃〜120℃)に加熱制御している。
また、加熱処理室1は、前記所定温度以上に加熱制御するため、保温可能な材質を選定して形成するようにしている。なお、処理室内加熱機構7の形状及び構造については、適宜設計変更可能であって、何等本実施例に限定解釈されるものではない。
【0034】
本実施例では、加熱処理室1の加熱処理領域S3の天井壁1cに加熱処理室撹拌ファン8を備えている(図5及び図6参照。)図中、符号8aは加熱処理室1内に配設されるファンの羽根車、8bは加熱処理室1外に配設される駆動源(モータ)をそれぞれ示す。なお、図4では駆動源8bのみ図示し、羽根車8aについては図示を省略した。この加熱処理室撹拌ファン8によって、加熱処理室1内の加熱処理雰囲気(加熱媒体)を室内全域に行き渡る様に撹拌して加熱処理効率を高めている。
また、図中9は、羽根車8aを回転して送風する際に気流Nを発生させるための羽根車8aの絞りと、コイル状加熱部7からの輻射熱遮断の役割を有しているファンガードである。
【0035】
さらに、図中10は、加熱処理室1内で発生した凝縮水等を集める排水管で、加熱処理室1の底面1dの外方にて処理対象物の搬送方向にわたって配設されており、加熱処理室1の所定箇所、本実施例では加熱処理室1の底面1dの所定位置、すなわち、例えば、加熱処理領域S3の底面1dの内面と、入口側外気遮蔽領域S1の底面1dの内面と、出口側外気遮蔽領域S2の底面1dの内面のそれぞれに、略円形状に貫通して設けられた排水口11とそれぞれ連通して配設されている。
なお、排水口11の穴形状は処理対象物の搬送方向にわたって長尺状に貫通してなるものであってもよく、また、その穴数も単数、複数限定されない。さらに、凝縮水を集めやすくするため底面1dの内面を排水口11に向けて下り傾斜状に形成するものであってもよい。
【0036】
搬送機構12は、前記入口2から前記出口3に向かって処理対象物Tを順次搬送するもので、特に限定解釈はされないが、本実施例では、無端状に構成された金属製のコンベアチェーンで、所定の駆動機構Kによって入口2側から出口3側へと回転駆動する(図1乃至図6参照。)。加熱処理室1内の所定温度に耐え得る材質であれば特に本実施例の形状・材質に限定解釈されるものではない。
図中Aは、処理対象物Tを搬送するに用いた搬送籠を示す。なお、本実施例では搬送籠Aを用いたがこれに限定はされない。
【0037】
加熱媒体生成機構13は、本実施例では、次の構成からなる機構を採用している。
加熱媒体生成機構13は、所定長さの円筒状に形成された加熱チャンバ(加熱部)14と、該加熱チャンバ14内に一部を内装した金属製の加熱管路(管路)15と、該加熱管路15の先端側に配され、ノズルヘッダー16を介して加熱処理室1内に取り付け配置される加熱媒体噴射ノズル17とで構成されている。
【0038】
加熱管路15は、所定の内径・長さに形成され、所定のポンプ(例えば電磁定量ポンプなどが想定される。)Pを介して内部に供給された水を前記加熱チャンバ14によって所定温度に加熱可能としている。
加熱管路15内に供給される水量は、0.7gr/sec以上、好ましくは0.7gr/sec〜25gr/secとする。なお、加熱チャンバ14の構成、加熱管路15の管径及び長さは特に限定されず本発明の範囲内において適宜設計可能である。
【0039】
加熱媒体噴射ノズル17は、図4〜図6に示すように、加熱管路15を介して加熱処理室1の天井壁1cの外面から加熱処理室1の加熱処理領域S3内に向けて突出して配設されており、本実施例では、加熱処理領域S3の長さ方向、すなわち、加熱処理領域S3において処理対象物Tの搬送方向にわたってノズルヘッダー16を配設し、そのノズルヘッダー16を介して複数個配設されている。
本実施例における加熱媒体噴射ノズル17は、ノズル内径を0.1mm〜10mm(好ましくは0.5mm〜5mm)とし、ノズル内圧を0.19MPa以上(好ましくは、0.19MPa〜0.41MPa)、ノズル内温度:120℃以上(好ましくは120℃〜145℃)に制御されている。
本実施例では、前壁1a側と後壁1b側に沿ってそれぞれノズルヘッダー16を介して3個ずつ配設している。また、本実施例では、加熱媒体噴射ノズル17の噴射口(ノズル先端)17aは、コイル状加熱部7の上面側(天井壁1c寄りの面部)に近い位置で、かつ僅かに搬送機構12(処理対象物T)方向に向くように配設している。すなわち、前記気液混合体(水蒸気Mと熱水H)は、搬送機構12(処理対象物T)に向けて斜めに噴射されるように設計されている。なお、前記噴射方向は本実施例に限定解釈されない。
加熱処理室1内に加熱処理室撹拌ファン8を配置して加熱処理室1内を撹拌しているため、加熱媒体噴射ノズル17の噴射口17aは出来るだけ加熱処理領域S3の中央に寄せた方が効果的である。なお、加熱媒体噴射ノズル17の配設個数や配設角度などは適宜設計変更可能であって何等本実施例に限定解釈されるものではない。
前記気液混合体(水蒸気Mと熱水H)は、処理対象物Tの加熱処理中において、連続して噴射されるものとする。なお、連続とは、僅かな間隔で断続的に噴射する形態も含む概念である。
【0040】
本発明の加熱処理室1内の加熱処理雰囲気について図6に基づいて説明する。
まず、水供給源から定量ポンプPを介して加熱管路15内に0.7gr/secで水を供給し、その供給された水を、前記加熱チャンバ14によって所定温度及び所定圧力(120℃以上、0.19MPa以上)で沸騰させることで加熱管路15内には水蒸気Mと熱水Hからなる気液混合体が生成される。
そして、ノズル内圧0.19MPa以上、ノズル内部温度120℃以上に制御した加熱媒体噴射ノズル17を介し、前記したように115℃程度に加熱制御された加熱処理室1内に前記気液混合体を噴出することにより、前記加熱処理室1内が過熱水蒸気KMと高温微細水滴KHが混在する状態の加熱媒体で満たされた加熱処理雰囲気Fに調整される。
すなわち、水供給源から定量ポンプPを介して加熱管路15内に供給される水量が、加熱媒体噴射ノズル17から噴射される過熱水蒸気KMの流量を超過した場合、供給水量の超過分は、過熱水蒸気としてではなく、高温微細水滴KHとして過熱水蒸気KMとともに加熱媒体噴射ノズル17から噴射される。
【0041】
再加熱媒体生成噴射機構18は、加熱処理室1内の加熱処理雰囲気Fの一部を加熱処理室1外へと吸い出し、所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体SKを生成した後、該体積膨張した再加熱媒体SKを加熱処理室1内に噴射する機構で、吸込み口19、噴き出し口20、連絡管21、吸込みファン(送風機)22、加熱部23、そして再加熱媒体噴射部(24,25)とで構成されている。
具体的な機構の一例について以下説明する。
【0042】
前記加熱処理領域S3が設けられている加熱処理室1の後壁1bの所定位置(加熱処理室1の高さ方向略中央位置)に、所定の大きさで貫通した略円形状の吸込み口19を設ける(図4及び図5参照。)。
そして、入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2が設けられている加熱処理室1の天井壁1cの上面所定位置に、それぞれ所定の大きさで貫通した略矩形状の噴き出し口20を設ける(図1及び図4参照。)。
そして、前記吸込み口19と噴き出し口20とにわたって連通した連絡管21を配設する。
連絡管21は、単一の吸込み口19から二箇所の噴き出し口20,20へと連絡し得るように、加熱処理室1と接続される単一の接続管部21aと、該接続管部21aと連絡されて鉛直状に設けられた単一の直管部21bと、該直管部21bの上端で分岐管部21cを介して二股状に連絡される左横管部21d及び右横管部21eと、左横管部21dと左吸込みファン(左送風機)22とを連絡する左ファン接続管部21fと、右横管部21eと右吸込みファン(右送風機)22とを連絡する右接続管部21gとで構成されている(図1乃至図5参照。)。
【0043】
連絡管21の所定箇所には、吸い出した加熱媒体(加熱処理雰囲気F)を連絡管21内で所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体SKを生成する加熱部23が備えられている。
本実施例では、直管部21b内に加熱部23の一例として一個のコイル状加熱部(過熱水蒸気生成ヒータ)23が配設され、左横管部21d及び右横管部21eにそれぞれ一個ずつコイル状加熱部(過熱水蒸気生成ヒータ)23が配設されている(図4及び図5参照。)。
吸込みファン(送風機)22は、加熱処理室1内の加熱処理雰囲気(加熱媒体)Fを、前記吸込み口19から前記連絡管21内へと強制的に吸い出すファンで、前記左接続管部21dと左再加熱媒体噴射部24との間、及び右接続管部21eと右再加熱媒体噴射部25との間に配設されている。
再加熱媒体噴射部24,25は、前記ファン22,22の出口から噴き出し口20,20に向けて拡開状に形成されたガイド部24a,25aと前記噴き出し口20,20とで構成されており、前記生成した再加熱媒体SKを前記噴き出し口20,20から加熱処理室1内、すなわち、入口側外気遮蔽領域S1内と出口側外気遮蔽領域S2内へと連続して噴射させる。
【0044】
したがって、吸込み口19から吸込みファン22,22を介して強制的に吸込まれた加熱処理雰囲気(加熱媒体)Fの一部は、直管部21bと左右の横管部21d,21eに配設されているそれぞれの加熱部(コイル状加熱部)23,23,23によって、その管21内を通過する間に所定温度に加熱され、再加熱媒体SKとして前記入口側外気遮蔽領域S1と前記出口側外気遮蔽領域S2に向けてそれぞれ連続して噴射される。
例えば、再加熱媒体SKは、前記加熱処理雰囲気Fに調整されている加熱処理室1内の加熱媒体を、再加熱媒体生成噴射機構18により再加熱して生成され体積膨張した過熱水蒸気である。
再加熱媒体(過熱水蒸気)SKの温度は、例えば、加熱処理室1内の温度よりも10℃程度高く設定する。なお、加熱媒体の供給量等によっては、適宜再加熱媒体(過熱水蒸気)SKの加熱温度を上げて比容積の増加(体積膨張)を調整する必要もある。
【0045】
再加熱媒体噴射部(左再加熱媒体噴射部24,右再加熱媒体噴射部25)は、その噴射部先端を加熱処理室1の上方から入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2に向けて再加熱媒体SKを噴射可能に位置させている。
従って、入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2に連続して噴射される体積が膨張した過熱水蒸気(再加熱媒体)SKは、それぞれの領域S1,S2に滞留するとともに、相当量が加熱処理室1内に流入し、その余りが室外に流出するため、加熱媒体の室外への流出及び外気の加熱処理室1内への侵入を防ぐことができる。特に本実施例によれば、入口側外気遮蔽領域S1と加熱処理領域S3との間、及び出口側外気遮蔽領域S2と加熱処理領域S3との間に、それぞれ境界壁6を設けているため、それぞれの境界壁6によってそれぞれの遮蔽領域S1,S2には体積膨張した過熱水蒸気SKが十分に滞留し易い構成となっている。
【0046】
なお、前記吸込み口19を一箇所、噴き出し口20,20を入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2の二箇所に設けた実施の一形態について説明したが、吸い込み口19を複数箇所とすることも可能で本発明の範囲内である。また、噴き出し口20は少なくとも入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2の二箇所は必須であるが、これ以上噴き出し口を設けることを何等妨げるものではない。
【0047】
特に限定されるものではないが、本実施例では、加熱処理室1の入口上方外部2aと出口上方外部3aには、入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2から室外に溢れ出た再加熱媒体SKとともに、入口付近及び出口付近にある外気Gを吸込む室外吸い込み部26,26をそれぞれ備えている。
【0048】
室外吸い込み部26は、加熱処理室1の入口2を設けている入口2側の左側壁1eと出口3を設けている出口3側の右側壁1fに配設されている。
本実施例では、入口2側と出口3側のそれぞれの室外吸い込み部26,26は同一構成を採用しているため、以下、入口2側の室外吸い込み部26をもって説明し、出口3側の室外吸い込み部26の説明は省略する。
【0049】
室外吸い込み部26は、入口2側の左側壁1eに取り付けられ、入口2に向かう搬送機構12の処理対象物T載置面12aに向けて大きく開口した第一吸い込み空間26aを有する第一箱部26bと、該第一吸い込み空間26aの上面に、第一吸い込み空間26aと連通し、かつ第一吸い込み空間26aよりも小さく開口した第二吸い込み空間26cを有する第二箱部26dと、該第二箱部26dの出口側開口26eと連通して備えた吸い込みファン26fと、該吸い込みファン26fの出口側と連通した吐き出し管部26gとで構成されている。
このように構成したため、入口側外気遮蔽領域S1に噴出され、入口2から溢れ出た再加熱媒体SKは、室外吸い込み部26の吸い込みファン26fによって強制的に第一吸い込み空間26aに吸い込まれる。この時、入口2付近にある外気Gも併せて一緒に第一吸い込み空間26aに吸い込まれる。そして、吸い込まれた再加熱媒体SKと外気Gは、第二吸い込み空間26cを経由して吐き出し管部26gへと送られ、該吐き出し管部26gの先端開口26hから外気側へと排出される。
【0050】
本実施例の加熱処理方法は、上述した加熱処理装置において行われる、加熱媒体供給工程と、加熱処理工程と、再加熱媒体生成噴射工程からなる。
【0051】
「加熱媒体供給工程」
本実施例では、加熱処理室1内を上述したように所定温度以上、例えば115℃程度に加熱制御する。
そして、水供給源から定量ポンプPを介して加熱管路15内に0.7gr/sec以上で水を供給する。そして、このように供給された水を、前記加熱チャンバ14によって所定温度及び所定圧力(120℃以上、0.19MPa以上)で沸騰させることで加熱管路15内に水蒸気Mと熱水Hからなる気液混合体を生成する。
そして、ノズル内圧0.19MPa以上、ノズル内部温度120℃以上に制御した加熱媒体噴射ノズル17を介して前記加熱制御された加熱処理室1内に、前記気液混合体を噴出することにより、前記加熱処理室1内を過熱水蒸気KMと高温微細水滴KHが混在する状態の加熱媒体で満たされた加熱処理雰囲気Fに調整する。
【0052】
「加熱処理工程」
次に、前記所定の加熱処理雰囲気Fに調整された加熱処理室1内に、所定の処理対象物Tを搬送籠Aに載置するとともに順次搬送して連続して加熱処理する。
すなわち、搬送機構12によって加熱処理室1内に搬送された処理対象物Tは、所定の加熱処理雰囲気Fとなっている加熱処理室1内を所定の時間掛けて搬送されることで、その加熱処理室1内に充満されている加熱処理雰囲気(加熱媒体)Fによって加熱処理される。すなわち、本実施例によれば、高温微細水滴KHにより処理対象物Tの表面で凝縮伝熱が発生する。また、その周囲は過熱水蒸気KMが充満しており、凝縮伝熱により潜熱を失った微細水滴は、過熱水蒸気KM中に蒸発する。この結果、過熱水蒸気同様に処理対象物Tへの凝縮水による影響が無く、更に、蒸発による内部水分の減少もほとんどない加熱特性が得られる。
【0053】
「再加熱媒体生成噴射工程」
再加熱媒体生成噴射工程は、まず、加熱処理室1内の加熱処理雰囲気Fの一部を、吸い込みファン22,22により吸込み口19から連絡管21内へと吸い出す。そして、その連絡管21内へと吸い出した加熱媒体を、連絡管21内のコイル状加熱部23,23,23によって所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体(過熱水蒸気)SKを生成する。
そしてその後、体積膨張した再加熱媒体(過熱水蒸気)SKを加熱処理室1内の入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2に、左再加熱媒体噴射部24と右再加熱媒体噴射部25のそれぞれの噴き出し口20,20を介して噴射する。
【0054】
前記噴射される体積膨張した再加熱媒体(過熱水蒸気)SKは、それぞれの領域S1,S2に滞留するとともに、相当量が加熱処理室1内に流入し、その余りが室外に流出する(溢れ出る)ため、加熱媒体の室外への流出及び外気の室内への侵入を防ぐことができる。なお、加熱処理室1内に充満している加熱処理雰囲気(加熱媒体)Fそのものが過熱水蒸気KMと高温微細水滴KHが混在する状態の加熱媒体であるため、加熱処理雰囲気Fの加熱処理室1内に過熱水蒸気(再加熱媒体)SKが流入してきても差し支えない。更に過熱水蒸気KM中を飛行する高温微細水滴KHは、距離の経過と共に粒径が更に微細化して、最後には蒸発して過熱水蒸気となる特性のため、加熱処理室1の中央領域である加熱処理領域S3に存する加熱媒体の一部を吸い出して再加熱することにより容易に高温の過熱水蒸気SKを生成する事が可能である。また、そのための費用対効果も比較的低くできる。
【0055】
また、本実施例によれば、加熱処理室1の入口上方外部2aと出口上方外部3aに室外吸い込み部26,26を備える形態を採用としたため、入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2に噴出され、入口2及び出口3から溢れ出た再加熱媒体(過熱水蒸気)SKは、それぞれの室外吸い込み部26,26の吸い込みファン26f,26fによって強制的に第一吸い込み空間26a,26aに吸い込まれる。この時、入口2付近にある外気G及び出口3付近にある外気Gも併せて一緒に第一吸い込み空間26a,26aに吸い込まれる。そして、吸い込まれた再加熱媒体(過熱水蒸気)SKと外気Gは、第二吸い込み空間26c,26cを経由して吐き出し管部26g,26gへと送られ、該吐き出し管部26g,26gの先端開口26h,26hから外気側へと排出される。
よって、入口2付近と出口3付近にある外気Gは、加熱処理室1内へと侵入することなく室外吸い込み部26,26によって強制的に吸込まれて排出されるため、さらに加熱処理室1内への外気の侵入が阻止されるため、加熱処理室1内は、常に所定の加熱処理雰囲気Fが維持できる。
【0056】
上述した加熱媒体供給工程、加熱処理工程、再加熱媒体生成噴射工程は、たとえば、本実施例では、加熱媒体供給工程を経て、加熱処理室1内を所定の加熱処理雰囲気Fとする必要があるため、まず加熱媒体供給工程を最初に行われなければならない。
そして、所定の加熱処理雰囲気Fとなった後、再加熱媒体生成噴射工程を経て入口側外気遮蔽領域S1と出口側外気遮蔽領域S2に体積が膨張した所定の過熱水蒸気SKを噴射して加熱処理領域S3に満たされている加熱媒体の室外への流出及び外気の室内への侵入を防ぐものとする。
このような状況が整った後、加熱処理工程を経て処理対象物を連続して加熱処理室1内に搬送し、加熱処理領域S3にて所定の加熱処理を行うものとしている。
【0057】
なお、本実施例では、加熱処理室1内を所定の加熱処理雰囲気Fとするため、上述した加熱媒体構成を採用しているが、これに限定解釈はされず、例えば、一般に広く知られている過熱水蒸気を加熱媒体として採用することも可能である。
この場合、加熱処理室内に配設した複数個の噴射ノズルから大量の過熱水蒸気を処理対象物に向けて噴射し、処理対象物の周囲を過熱水蒸気雰囲気とすることとなるため、その発生量に見合うだけの再加熱媒体(再生過熱水蒸気)を生成し、入口側外気遮蔽領域S1、出口側外気遮蔽領域S2に噴射するように調整する。この場合、加熱処理室1内に処理室内加熱機構7を備えても備えなくとも良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に開口した入口と他端側に開口した出口を設けるとともに、それぞれの開口にわたって連通して形成された加熱処理室内に、加熱媒体を噴射して加熱処理室内を加熱処理雰囲気とする加熱媒体供給工程と、
前記加熱処理室内に処理対象物を搬送して加熱処理する加熱処理工程と、
加熱処理室内の加熱処理雰囲気の一部を加熱処理室外へと吸い出し、所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体を生成した後、該体積膨張した再加熱媒体を加熱処理室内に噴射する再加熱媒体生成噴射工程とを含み、
前記体積膨張した再加熱媒体は、加熱処理室内への前記加熱媒体の噴射位置よりも前記入口と前記出口寄りにそれぞれ連続して噴射することを特徴とする加熱処理方法。
【請求項2】
一端側に開口した入口と他端側に開口した出口を設けるとともに、それぞれの開口にわたって連通して形成した加熱処理室内を所定温度以上に加熱し、前記加熱された加熱処理室内に加熱媒体を噴射して加熱処理室内を加熱処理雰囲気とする加熱媒体供給工程と、
前記加熱処理室内に処理対象物を搬送して加熱処理する加熱処理工程と、
加熱処理室内の加熱処理雰囲気の一部を加熱処理室外へと吸い出し、所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体を生成した後、該体積膨張した再加熱媒体を加熱処理室内に噴射する再加熱媒体生成噴射工程とを含み、
前記体積膨張した再加熱媒体は、加熱処理室内への前記加熱媒体の噴射位置よりも前記入口と前記出口寄りにそれぞれ連続して噴射することを特徴とする加熱処理方法。
【請求項3】
加熱媒体供給工程は、
加熱処理室内を、常圧で、かつ115℃程度に加熱制御し、
水供給源から0.7gr/sec以上で供給された水を所定温度及び所定圧力で沸騰させることで水蒸気と熱水からなる気液混合体を生成するとともに、前記気液混合体を加熱処理室内に噴射する加熱媒体噴射ノズルを備え、
前記加熱媒体噴射ノズルは、内圧0.19MPa以上、ノズル内部温度120℃以上に制御されており、
前記加熱媒体噴射ノズルを介して、前記加熱処理室内に気液混合体を噴射することで、前記加熱処理室内を過熱水蒸気と高温微細水滴が混在する状態の加熱媒体で満たされた加熱処理雰囲気に調整し、
再加熱媒体は、前記加熱処理雰囲気に調整されている加熱処理室内の加熱媒体を再加熱して生成され体積膨張した過熱水蒸気であることを特徴とする請求項2に記載の加熱処理方法。
【請求項4】
加熱媒体は、処理対象物の加熱処理中において、連続して噴射されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の加熱処理方法。
【請求項5】
加熱処理室の入口上方外部と出口上方外部には、入口側と出口側から室外に溢れ出た再加熱媒体を吸込む室外吸い込み部をそれぞれ備え、前記溢れ出た再加熱媒体とともに、入口付近及び出口付近にある外気を吸込むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の加熱処理方法。
【請求項6】
一端側に開口した入口と、他端側に開口した出口を設けた加熱処理室と、
前記入口から前記出口に向かって処理対象物を搬送する搬送機構と、
前記加熱処理室内に加熱媒体を噴射する加熱媒体噴射ノズルを備えた加熱媒体生成機構と、
前記加熱処理室内の少なくとも一部に設けた吸込み口及び噴き出し口と、前記吸込み口と噴き出し口とにわたって連通した連絡管と、該連絡管の所定箇所に備えられ、加熱処理室内に噴射した前記加熱媒体を前記吸込み口から強制的に吸い出す吸込みファンと、該吸込みファンで吸い出した加熱媒体を連絡管内で所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体を生成する加熱部と、前記生成した再加熱媒体を前記噴き出し口から加熱処理室内へと噴射させる再加熱媒体噴射部を備えた再加熱媒体生成噴射機構とを含み、
前記加熱処理室は、入口付近の入口側外気遮蔽領域と、出口付近の出口側外気遮蔽領域と、前記入口側外気遮蔽領域と出口側外気遮蔽領域との間の加熱処理領域とに区分けされており、
前記加熱媒体噴射部は前記加熱処理領域に配設され、
前記再加熱媒体噴射部は、前記入口側外気遮蔽領域と前記出口側外気遮蔽領域に配設されていることを特徴とする加熱処理装置。
【請求項7】
一端側に開口した入口と、他端側に開口した出口を設けた加熱処理室と、
前記加熱処理室内に配し、加熱処理室内を所定温度以上に加熱して所定の加熱処理雰囲気に調整する処理室内加熱機構と、
前記入口から前記出口に向かって処理対象物を搬送する搬送機構と、
前記加熱処理室内に加熱媒体を噴射する加熱媒体噴射ノズルを備えた加熱媒体生成機構と、
前記加熱処理室内の少なくとも一部に設けた吸込み口及び噴き出し口と、前記吸込み口と噴き出し口とにわたって連通した連絡管と、該連絡管の所定箇所に備えられ、加熱処理室内に噴射した前記加熱媒体を前記吸込み口から前記連絡管内へと強制的に吸い出す吸込みファンと、該吸込みファンで吸い出した加熱媒体を連絡管内で所定温度以上に加熱して体積膨張した再加熱媒体を生成する加熱部と、前記生成した再加熱媒体を前記噴き出し口から加熱処理室内へと噴射させる再加熱媒体噴射部を備えた再加熱媒体生成噴射機構とを含み、
前記加熱処理室は、入口付近の入口側外気遮蔽領域と、出口付近の出口側外気遮蔽領域と、前記入口側外気遮蔽領域と出口側外気遮蔽領域との間の加熱処理領域とに区分けされており、
前記加熱媒体噴射部と前記処理室内加熱機構は前記加熱処理領域に配設され、
前記再加熱媒体噴射部は、前記入口側外気遮蔽領域と前記出口側外気遮蔽領域に配設されていることを特徴とする加熱処理装置。
【請求項8】
加熱処理室は処理室内加熱機構を備え、常圧で、かつ処理室内加熱機構によって115℃程度に加熱制御されており、
加熱媒体生成機構は、加熱部と、水供給源と連絡して前記加熱部により加熱される管路と、前記管路の先端部に備えられ、加熱処理室内に先端を臨ませてなる加熱媒体噴射ノズルを備え、前記加熱媒体噴射ノズルは、内圧0.19MPa以上、内部温度120℃以上に制御されており、
前記管路内に0.7gr/sec以上で供給された水を所定温度及び所定圧力で沸騰させることで管路内に水蒸気と熱水からなる気液混合体を生成し、
前記加熱媒体噴射ノズルを介して前記気液混合体を前記加熱処理室内に噴出することにより、前記加熱処理室内を過熱水蒸気と高温微細水滴が混在する状態の加熱媒体で満たされた加熱処理雰囲気に調整しており、
再加熱媒体は、前記加熱処理雰囲気に調整されている加熱処理室内の加熱媒体を、再加熱媒体生成噴射機構により再加熱して生成され体積膨張した過熱水蒸気であることを特徴とする請求項7に記載の加熱処理装置。
【請求項9】
加熱媒体は、処理対象物の加熱処理中において、連続して噴射されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の加熱処理装置。
【請求項10】
再加熱媒体噴射部は、その噴射部先端を加熱処理室の上方から入口側外気遮蔽領域と出口側外気遮蔽領域に向けて再加熱媒体を噴射可能に位置させていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の加熱処理装置。
【請求項11】
加熱処理室の入口上方外部と出口上方外部には、入口側外気遮蔽領域と出口側外気遮蔽領域から室外に溢れ出た再加熱媒体とともに、入口付近及び出口付近にある外気を吸込む室外吸い込み部をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の加熱処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−120487(P2011−120487A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278614(P2009−278614)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(591048324)株式会社タイヨー製作所 (10)
【Fターム(参考)】