説明

連続気孔弾性体及びその製造方法、並びに液切りローラー、絞りローラー及びスワブ

【課題】 熱可塑性エラストマーからなり、吸液性や吸液した液を吐き出す性質に優れる連続気孔弾性体、さらに耐薬品性や低溶出性等に優れる連続気孔弾性体、並びに、それを用いて得られる液切りローラー、絞りローラー及びスワブ、並びに、この連続気孔弾性体の製造方法を提供する。
【解決手段】 熱可塑性エラストマーからなり、3次元膜構造を有する連続気孔弾性体であって、その500μm×500μmの切断面内に、その最大径が40μm以上の気孔を20〜100個含み、該気孔が膜により形成され、かつ該気孔の70%以上が、該気孔の最大径の1/20以上で20μm以下の開口部最大径を有する貫通孔を、それぞれの気孔内に3個以上含むことを特徴とする連続気孔弾性体、その製造方法、及びその連続気孔弾性体を用いて得られる液切りローラー、絞りローラー及びスワブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマーからなる連続気孔弾性体及びその製造方法に関する。本発明は、さらに、前記連続気孔弾性体を用いた液切りローラー、絞りローラー及びスワブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に連続気孔弾性体は、軽量であり、かつ液体を吸収する、液体を貯蔵する、液・気体を通過する、音を吸収する、固体を選別除去する、衝撃を吸収する等の機能に優れるので、インクロール、浸透印、筆ペン、フィルター、化粧用スポンジ等に使用されている。
【0003】
多孔質体を製造する方法としては、主材料に、低沸点脂肪族炭化水素等の熱により揮発する成分や、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド等の熱により分解して窒素やアンモニア等のガスを発生する発泡剤を混合し、加熱して気孔を生成する発泡法が知られている(特開平9−249760号公報等)

【0004】
しかし、これらの発泡法によれば、独立気泡タイプの多孔質体が形成されやすい。発泡法により連続気孔弾性体を得るためには、金型内で発泡させる際の圧力と温度を制御する必要があるが、この圧力と温度の制御は、通常困難である。特に平均気孔径を200μm以下で制御するためには、非常に厳密かつ困難な制御を要する。従って、発泡法により、連続気孔弾性体を得ることは困難であり、特に精密部品や電子部品の表面に付着した微細な水滴等の液滴を清浄に効率良く吸い取ることが出来る200μm以下の平均気孔径を有する連続気孔弾性体を得ることは困難であった。
【0005】
又、低沸点脂肪族炭化水素を用いる場合は、揮発成分の引火を防ぐために、環境対策や回収装置が必要になる。一方、発泡剤を用いる場合は、発泡剤の全てが発泡するとは限らず、かつ発泡剤の分解残留物が主剤中に異物として残留する。そこで、これを除去ためには、有機溶剤を使用する必要があり、作業環境が劣悪化するとの問題があった。
【0006】
連続気孔弾性体の他の製造方法として、気孔生成剤を用いた溶出法が提案されている。例えば、特開昭52−32971号公報(特許文献1)には、熱可塑性ポリウレタン、炭酸カルシウム、界面活性剤又は多価アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン等からなる組成物を混練して熱成形し、この成形物を塩酸水溶液に浸漬して炭酸カルシウムを、水で抽出して気孔を生成し、水洗、乾燥して製造される多孔質体が開示されている。ここで、界面活性剤は、炭酸カルシウムを水抽出しやすくする目的で添加されている。
【0007】
又、特開昭58−189242号公報(特許文献2)には、高分子材料、例えば、酢酸セルロースをアセトン等の溶剤に溶解させ、これにメチルセルロース等の気孔生成剤を配合した組成物を撹拌し、所定の型内に充填して酢酸セルロースの非溶剤中で凝固させ、その後大量の水にてこの気孔生成剤を溶出させることにより製造される高分子多孔質体が開示されている。
【0008】
近年、電子機器産業の発展に伴い、精密部品や電子部品の製造で使用される部材として、次に述べるような各種の用途があり、これらの用途に連続気孔弾性体が期待されている。
【0009】
1)精密機器、電子部品の薬品処理工程、例えば現像工程、エッチング工程、無電解メッキ工程で、工程毎に使用する薬液、すなわち現像液、エッチング液、硫酸銅等の無電解メッキ液等を次の工程に持ち出さないようにする液切りスポンジ(液切りローラー)、
2)薬品処理工程後の洗浄工程において、製品を洗浄した後の製品(被洗浄物)表面に付着した水やその他の溶剤を均一かつ清浄に拭き取る絞りスポンジ(絞りローラー)、
3)シリコンウェハ、フォトマスク用や液晶表示用などのガラス板、磁気ディスク用のアルミもしくはガラス円板、精密加工した金属部品等から不溶性の粒子汚れを洗浄するいわゆるスクラブ洗浄用スポンジ、
4)精密機器、電子部品に付着した水等の液を吸取るためのスワブ、
等。例えば、液切りスポンジ、絞りスポンジ、スクラブ洗浄用スポンジは、プリント配線基板製造機、ミニラボ機(自動写真現像機)、メダル洗浄機等に、それぞれ単独で、又は、複合的に使用される。
【0010】
このような用途に用いられる連続気孔弾性体には、次のような性質が求められる。すなわち、液切りスポンジや絞りスポンジとしては、瞬時に吸水、吸液する性質(吸液性)とともに、外力で圧縮することにより効率良く吸液した液を吐き出す性質が求められる。スワブ用途にあっても、拭き取り時に、汚れを押し広げる前に吸い取る必要があり、素早い吸液性が求められる。又、液切りスポンジには、耐薬品性が求められる。さらに、液切りスポンジやスワブには、薬液等により、可塑剤等の低分子量化合物が溶出しないとの性質も求められる場合がある。
【0011】
しかし、このような性質を満たす連続気孔弾性体は、前記の気孔生成剤を用いた溶出法により製造される連続気孔弾性体によっても得ることが困難であった。そこで素早く吸液する等のすぐれた性質を有する連続気孔弾性体の開発が望まれていた。
【0012】
又、このような連続気孔弾性体の製造方法についても、次のような問題があった。すなわち、特許文献1に記載の前記の製造方法では、混練物を製造する工程において有機溶剤を使用し、高温度に加熱することが必要であり、作業環境の劣悪化、製造コストの上昇や素材の劣化の原因ともなる。又アセトン等の低沸点溶剤を使用すれば高温下で引火の可能性もある。さらに有機溶剤や塩酸水溶液等を使用するので、廃液の微生物分解や中和等が必要となり、これもコスト高の原因となる。
【0013】
又特許文献2に記載の製造方法では、高分子材料を溶剤に溶解させるため、溶剤の回収が必要となり、又、高分子材料を非溶剤(通常は水)で凝固(析出)させるためには、長時間、例えば、肉厚10mmの場合、20℃で約2日を要する。
【特許文献1】特開昭52−32971号公報
【特許文献2】特開昭58−189242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたもので、熱可塑性エラストマーからなり、吸液性や吸液した液を吐き出す性質に優れる連続気孔弾性体、さらに耐薬品性や低分子化合物の低溶出性に優れる連続気孔弾性体、並びに、それを用いて得られる液切りローラー、絞りローラー及びスワブを提供することを課題とする。本発明はさらに、このような優れた性質を有する連続気孔弾性体を、有機溶剤や酸等の劇薬の使用を必要とせずに、容易に製造することができる連続気孔弾性体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ポリウレタンやポリオレフィン等の熱可塑性エラストマーからなり、3次元膜構造であって、膜部分に貫通孔を有する連続気孔弾性体が、アルコール等の液滴を瞬時に吸い取ることができる高い吸液性や吸液した液を吐き出す性質を有することを見出した。さらに、高いHLB値を有する界面活性剤を含有することにより、付着水を瞬時に吸水する優れた吸水性を付与できることを見出した。
【0016】
本発明者はさらに、特定の粒度分布を有する気孔生成剤を熱可塑性エラストマーの材料とともに混練し、成形、固化させた後、成形物から前記気孔生成剤を水抽出する方法により、液滴を瞬時に吸液する性質を有する、又はこの性質を付与することが可能な連続気孔弾性体を、酸等の劇薬を使うことなく、かつ有機溶剤の無害化処理を要せずに製造することができることを見出した。本発明は、このようにして完成されたものである。
【0017】
本発明は、先ず、熱可塑性エラストマーからなり、3次元膜構造を有する連続気孔弾性体であって、その500μm×500μmの切断面内に、その最大径が40μm以上の気孔を20〜100個含み、該気孔が膜により形成され、かつ該気孔の70%以上が、該気孔の最大径の1/20以上で20μm以下の開口部最大径を有する貫通孔を、それぞれの気孔内に3個以上含むことを特徴とする連続気孔弾性体(請求項1)を提供する。
【0018】
本発明の連続気孔弾性体は、熱可塑性エラストマーからなり、3次元膜構造を有する。3次元膜構造とは、所定の大きさの気孔が、3次元方向に均等に分布しかつ3次元方向に連続しているとともに、該気孔が、膜により形成されている構造を言う。
【0019】
気孔の外周は、膜の部分、及び他の気孔等と接する開口部から構成される。該気孔が、膜により形成されているとは、気孔の表面において、膜の部分の面積が、他の気孔等と接する開口部の面積より大きいことを言う。
【0020】
ここで、他の気孔等と接する開口部とは、最大径が20μmを越える開口部を言い、最大径が20μm以下の開口部は貫通孔の開口部として、その面積は、膜の面積に含む。貫通孔とは、膜の部分に形成され他の気孔とつながっている孔であって、最大径が20μm以下の開口部を有するものを言う。
【0021】
膜とは、熱可塑性エラストマーから構成され、気孔間の区切りをなす部分であり、その形状は特に限定されない。ただし、本発明の連続気孔弾性体の膜は、後述のように、貫通孔を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の連続気孔弾性体は、その切断面の500μm×500μmの範囲内に、その最大径が40μm以上の気孔が、20〜100個含まれることをその特徴の一つとする。ここで、切断面内に含まれる気孔の数は、切断面の500μm×500μmの範囲について顕微鏡写真を撮り、顕微鏡写真上での最大径が40μm以上のものを数えて得られる値である。
【0023】
図1は、連続気孔弾性体の気孔及び貫通孔の開口部の最大径を説明する説明図であり、切断面の顕微鏡写真の模式図であるが、最大径とは、図1に示されるように、顕微鏡写真上で視認される孔の外周上の2点(図1中のA、B)を結ぶ距離の中で最大の距離(図1中のL)を言う。なお、孔は、略円形又は楕円形の形状を有するものが多いが、略円形又は楕円形より大きく異なる形状を有するもの、例えば中央部に幅20μm程度未満のくびれを有するもの等は、略円形又は楕円形の形状を有する2以上の孔に分割して孔数を数える。図1の例では、孔aは、a1、a2及びa3の3つの孔に、孔bは、b1、b2、b3及びb4の4つの孔に分割される。顕微鏡写真を撮る顕微鏡としては、光学顕微鏡や電子顕微鏡が用いられる。
【0024】
本発明の連続気孔弾性体は、前記の最大径が40μm以上の気孔の70%以上が、該気孔の最大径の1/20以上で20μm以下の開口部最大径を有する貫通孔を、それぞれの気孔内に3個以上含むこともその特徴の一つとする。ここで、最大径とは前記と同様に顕微鏡写真に基づいて得られた値であり、顕微鏡写真上で視認できる孔を貫通孔として、その数を数える。
【0025】
本発明の連続気孔弾性体は、前記の複数の特徴を有することにより、アルコール等に対する優れた吸液性を発揮する。又、高いHLB値を有する界面活性剤を含有させることにより、精密製品等に付着した水等を瞬時に吸水する優れた吸水性を得ることができる。又、水を吸収した後の連続気孔弾性体を外力で圧縮する際の、効率良く水を吐き出す性質がより優れたものとなる。
【0026】
例えば、貫通孔の数が少なく、最大径が40μm以上の気孔の70%以上が、該気孔の最大径の1/20以上で20μm以下の開口部最大径を有する貫通孔を、それぞれの気孔内に3個以上含むとの条件が満たされない場合は、吸上げ速度、吸上げ量等の吸液性が劣る。なお、貫通孔の開口部の面積が気孔の外周面積の半分以上の場合は機械的強度が劣り、好ましくない場合がある。
【0027】
本発明の連続気孔弾性体の見掛け密度は、0.1〜0.45g/cmの範囲内が好ましい。請求項2は、この好ましい態様に該当する。ここで見掛け密度とは、JIS K 7222に記載の方法に従って測定された値を言う。見掛け密度は、0.1〜0.45g/cmの範囲とすることにより、連続気孔弾性体として優れた機械的強度を有するとともに、吸液性がより優れたものとなる。
【0028】
本発明の連続気孔弾性体を構成する熱可塑性エラストマーとは、常温では加硫ゴムの性質(エラストマーとしての性質)を示すが、高温では塑性変形が可能となり、プラスチックの加工機で成形できる高分子材料を言う。具体的には、SBSブロックコポリマー(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、SISブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、SEBSブロックコポリマー(スチレンーエチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体)、SEPSブロックコポリマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)、HSBRブロックコポリマー(水素添加型スチレン・ブタジエンランダム共重合体)等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、単純ブレンド型、インプラント型、動的加硫型等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン系、トランス1,4−ポリイソプレン系、天然ゴム系等のポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリエチレン系等の塩素系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系等のエンプラ系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、生分解性熱可塑性エラストマー等が例示される。
【0029】
本発明の連続気孔弾性体を構成する熱可塑性エラストマーとしては、柔軟かつ反発弾性があり、耐熱性(使用温度70℃以上に耐える)のあるポリウレタン系熱可塑性エラストマーおよびポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが本発明の用途に特に例示されるが、これらに限られるものではない。請求項3は、前記の連続気孔弾性体であって、熱可塑性エラストマーとしてポリウレタン系熱可塑性エラストマーを用いた態様に該当し、請求項5は、前記の連続気孔弾性体であって、熱可塑性エラストマーとしてポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いた態様に該当する。
【0030】
ここで、ポリウレタンとは、高分子ポリオールと鎖伸長剤からなるポリオール成分とポリイソシアネート化合物を反応させて得られるものである。高分子ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリマーポリオールなどのポリエーテル系ポリオール、アジペート系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどのポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどがあり、これらをそれぞれ単独で、あるいは同時に使用できる。高分子ポリオールの望ましい分子量は500〜10000である。
【0031】
前記のポリオール成分としては、長期間にわたり耐磨耗性に優れかつ耐薬品性の良好な高吸液性連続気孔弾性体を得るためには、ポリカーボネート系ポリオールを少なくとも使用することが好ましい。請求項4は、この好ましい態様に該当する。特にポリカーボネート系ポリオールを単独で使用することが好ましい。
【0032】
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,5ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、1,3プロパンジオール等が挙げられる。
【0033】
ポリイソシアネート化合物としては、メチレンジフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネートなどの芳香族系イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂環系イソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネン・ジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネート等が挙げられる。
【0034】
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、柔軟であるにもかかわらず耐摩耗性において優れるとの特徴を有するが、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐薬品性、耐溶媒性(極性溶媒で膨潤しにくく、低分子量化合物が溶出しにくいとの性質)、耐候性において優れるとの特徴を有する。前記のようにポリオレフィン系熱可塑性エラストマーには、単純ブレンド型、インプラント型、動的加硫型の3種類があるが、いずれも、ハードセグメントにはポリプロピレンまたはポリエチレンが主として用いられる、ソフトセグメントとしては、EPDM,NBRなどが主として用いられる。ただし、構成成分の分子構造の差や組み合わせによりさらに多くの種類に分かれる。
【0035】
本発明の連続気孔弾性体は、HLB値が8以上である界面活性剤を含有させることにより、精密製品等に付着した水等を瞬時に吸水する優れた吸水性を得ることができる。請求項6は、この優れた態様に該当し、前記の連続気孔弾性体であって、HLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とする連続気孔弾性体を提供するものである。
【0036】
ここでHLB値とは、界面活性剤の親水性と疎水性とのバランスを示す公知の指標であり、大木道則他編集、東京化学同人発行の化学辞典、第178頁等にその求め方が記載されている。例えば界面活性剤が脂肪酸エステルの場合は、次の式にしたがって計算される。
HLB=20×(1−SV/NV)
ここで、SVはエステルのケン化価、NVは脂肪酸の中和価である。
【0037】
HLB値が8以上である界面活性剤を含有した本発明の連続気孔弾性体は、水を瞬時に連続気孔弾性体内に吸収するという優れた効果を発揮する。具体的には、後記の実施例において記載されている残存水分量の測定方法の測定値を、0.5g/1000cm以下とするものである。なお、界面活性剤のHLB値が8よりも小さいとこの効果を得ることは困難である。
【0038】
界面活性剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100重量部に対して0.5〜40部の範囲が好ましい。0.5重量部より小さいと水を瞬時に連続気孔弾性体内に吸収する性質が不十分なものとなる。また、含有量が40重量部を超えると、界面活性剤の連続気孔弾性体から外部への移行が生じるとともに、連続気孔弾性体の機械的強度も低下する場合がある。
【0039】
界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、牛脂グリセライドエトキシレート、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル等の脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンエーテルタロエート、ポリオキシエチレングリコールオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミドまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、ノニルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート等のアルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0040】
本発明は、熱可塑性エラストマー、及び、水に可溶な無機塩の粒子であり、かつ粒径45〜150μmの割合が4〜90重量%、粒径45μm未満の割合が5〜30重量%である気孔生成剤粒子を、主原料として含有する組成物を混練する工程、当該組成物を脱泡、成形する工程、得られた成形物を固化する工程、及び、固化された成形物から前記気孔生成剤を水抽出して除去しその後乾燥する工程を有することを特徴とする連続気孔弾性体の製造方法(請求項7)をさらに提供する。この製造方法により、前記の本発明の連続気孔弾性体を製造することができる。
【0041】
本発明者は、気孔生成剤を用いた所謂溶出法による連続気孔弾性体の製造において、気孔生成剤として、水に可溶な無機塩の粒子であり、前記の粒度分布を有する粒子を用いることにより、前記の本発明の連続気孔弾性体が得られることを見出した。
【0042】
前記のように、本発明の製造方法により得られる連続気孔弾性体は、HLB値が8以上の界面活性剤を含有することにより、水を瞬時に連続気孔弾性体内に吸収するとの優れた効果を発揮する。すなわち、後記の実施例において記載されている残存水分量の測定方法で測定した残留水分量を、0.5g/1000cm以下とすることができる。
【0043】
HLB値が8以上の界面活性剤を含有させる方法としては、熱可塑性エラストマー及び気孔生成剤を主原料として含有する組成物に、さらにHLB値が8以上の界面活性剤を含有させて、請求項7の方法におけるその後の工程を行う方法が例示される。この場合、界面活性剤のHLB値は、19以下であることが好ましい。このHLB値が19を越えると、連続気孔弾性体を製造する際の水洗工程で、界面活性剤が水抽出され、連続気孔弾性体内に残留する界面活性剤が少なくなり、吸水性能が不十分となる場合がある。請求項8は、この態様に該当する連続気孔弾性体の製造方法である。
【0044】
HLB値が8以上の界面活性剤を含有させる他の方法としては、前記の請求項7の方法における気孔生成剤の水抽出の後、又はさらに乾燥の後、得られた成形物にHLB値が8以上の界面活性剤を添加する方法が例示される。請求項9は、この態様に該当する連続気孔弾性体の製造方法であり、請求項7に記載の連続気孔弾性体の製造方法であって、固化された成形物から前記気孔生成剤を水抽出した後、該成形物にHLB値が8以上の界面活性剤を添加する工程を、さらに有することを特徴とする。界面活性剤を添加する方法としては、得られた成形物を、界面活性剤を含む液中に浸して含浸させ、乾燥する方法等が挙げられる。
【0045】
熱可塑性エラストマー及び気孔生成剤等を含有する組成物を加熱混練した後、混練組成物を脱泡、成形する。脱泡の目的は該組成物中の気泡を除去することである。
【0046】
成形の後、当該成形物を固化する。固化の方法としては、空気や水等を使用して冷却する方法が例示される。固化された成形物から前記気孔生成剤を水抽出する方法には特に制限はなく、例えば約60℃の温水に1昼夜以上浸漬することにより、水抽出することが出来る。
【0047】
本発明の連続気孔弾性体は、吸液性が優れているので、この性質が求められる液切りスポンジ、絞りスポンジやスワブに好適に用いられる。請求項10は、前記本発明の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする液切りローラー(液切りスポンジ)を提供するものであり、請求項11は、前記本発明の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする絞りローラー(絞りスポンジ)を提供するものであり、請求項12は、前記本発明の連続気孔弾性体を用いることを特徴とするスワブを提供するものである。
【0048】
本発明の液切りローラーや絞りローラー等、本発明の連続気孔弾性体を用いるローラーは、本発明の連続気孔弾性体を筒状に成形し、この中心孔にシャフトを装着して形成することができる。この時、シャフトと連続気孔弾性体の間に接着剤を使用して接着しても良い。次いで、ローラーの外径、外径表面の平滑度、真円度を高めるために、研磨加工が通常行なわれる。
【0049】
HLB値が8以上の界面活性剤を含有させた吸液ローラーは、瞬時に水を吸水する性質を有するので、精密製品の製造において、製品を水洗した後の製品表面に付着した水滴を、清浄均一に水切りする用途等に好適に用いることができる。特に、界面活性剤のHLB値が19以下とした連続気孔弾性体を用いたものは、外力で圧縮することにより効率良く水を吐き出す性質も優れているので好ましい。
【0050】
本発明の連続気孔弾性体の、素早く液を吸い取るとの特徴および一体物であるが由に自己発塵性がないとの特徴は、電子部品、光学部品等の製造において、狭い特定部分、コーナー部、溝等の狭い局部空間のワイピングに使用されるスワブに用いる場合にも有用である。従来、清拭部に綿を用いた綿棒の他にも、ポリエステルニット布、発泡法によるポリウレタンスポンジ、0.5デニール以下の極細フィラメント布等を清拭部とした多種多様なスワブが知られているが、綿棒、ポリエステルニット布、極細フィラメント布等は自己発塵性があり、発泡法によるポリウレタンスポンジは、微細な気孔径を有しておらず、水等の液を素早く吸い取る特徴はなかった。
【0051】
電子部品、光学部品等の製造にあっては、拭き残りの少ないワイピング性能が求められ、ワイピング対象の汚れや、ワイピング時に併用される液で希釈された汚れを拭き残りなく拭き取るためには、清拭部で押し広げてしまう前に、素早く清拭部に吸い取ることが必要である。本発明の連続気孔弾性体は素早く吸い取ることが可能であるので、スワブの清拭部に、好適に用いられる。又、本発明のスワブは、スポンジであるため、拭き取り対象物を拭き取りにより傷を付けることはない。
【0052】
本発明の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする本発明のスワブは、清拭部のサイズ、形状で穴を有する前記連続気孔弾性体を成形し、その穴にポリプロピレン等により作られた棒状物の先端を差し込むことにより得ることができる。
【0053】
なお、本発明の連続気孔弾性体は、吸液と同時に微小な不溶粒子汚れを吸い込むので、スクラブ洗浄用スポンジ(スクラブ洗浄パッド)にも好適に用いられる。従来、スクラブ材としては、ラクダの毛、モヘア、ナイロンなどで作った毛ブラシが使用されていたが、毛の太さが25〜100ミクロンであり、また毛の間隔があるため数μm以下の粒子だと拭き残りができる。そこで、より微小な粒子をスクラブ出来るようにするため、ポリビニルアルコール樹脂で作ったスポンジ等が使用されている。しかし、ポリビニルアルコールで作ったスポンジは乾燥時弾性を失い、耐摩耗性においてもポリウレタン系スポンジよりも劣る。本発明の連続気孔弾性体は、微小な粒子をスクラブ出来、乾燥時弾性を失うこともなく、又耐摩耗性においても優れるものである。
【0054】
さらに、本発明の連続気孔弾性体は、低い見掛け密度、強い引張強度、大きな伸長率も合せて有するため、液タンク、フィルター、クッション材等の各種スポンジ製品としても有用である。
【発明の効果】
【0055】
本発明の連続気孔弾性体は、アルコール等に対する優れた吸液性を発揮する。又、HLB値が8以上の界面活性剤を含有させることにより、精密製品等に付着した水等を瞬時に吸水する優れた吸水性を得ることができる。具体的には、後記の実施例において記載されている残存水分量の測定値を、0.5g/1000cm以下とするものである。又、水を吸収した後の連続気孔弾性体を外力で圧縮する際の、効率良く水を吐き出す性質も優れている。従って、瞬時に水を吸い取る性質が求められる液切りローラー(スポンジ)、絞りローラー(スポンジ)、スワブやスクラブ洗浄用スポンジ等に好適に用いられる。
【0056】
本発明の連続気孔弾性体の製造方法によれば、前記の優れた性質を有する連続気孔弾性体を、酸やアルカリなどの薬品を使用することなく、又、熱可塑性エラストマーを溶解する溶剤を用いることなく、製造することができる。このようにして、得られた連続気孔弾性体に、HLB値が8以上の界面活性剤を含有させることにより、優れた吸水性も付与することができる。
【0057】
本発明の連続気孔弾性体を用いて得られた液切りローラー(スポンジ)、絞りローラー(スポンジ)やスワブは、吸液性に優れるものであり、例えば、精密製品を製造する工程において水洗した後、製品表面に付着した水滴を清浄均一に除去する用途や、電子部品、光学部品等の製造におけるワイピングの用途等、各種の吸液用途に好適に用いられるものである。又本発明の連続気孔弾性体を用いて得られたスクラブ洗浄用スポンジは、シリコンウェハ、ガラス板、アルミ板、精密加工した金属部品等に付着した不溶性の粒子汚れを効率よく洗浄除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、本発明を実施するための具体的な形態、特に好ましい形態の例を説明する。
【0059】
本発明の製造方法における熱可塑性エラストマー、気孔生成剤、及び場合により界面活性剤を含有する組成物は、必要に応じて着色剤や酸化防止剤、防黴剤、抗菌剤、各種の滑剤機能を発現する材料、難燃剤、及びカーボンブラックなどの導電材等の機能性材料等を、さらに含んでもよい。
【0060】
次に、本発明の連続気孔弾性体の製造方法について説明する。
【0061】
まず、気孔生成剤である水溶性の無機微粒子と熱可塑性エラストマーを主原料として含有する組成物を加熱混練する。ここで、無機微粒子とは、水溶性であり、前記の所定の粒度分布を有するものであれば制限はなく、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の塩化物、硫酸塩等が使用でき、これらを1種類単独でも2種類以上混合して使用してもよい。
【0062】
熱可塑性エラストマー100重量部に対して、無機微粒子を100〜2000重量部、好ましくは300〜1200重量部の範囲で添加することが好ましい。100重量部以下では組成物中で無機微粒子が繋がりなく分散するために、連続気孔弾性を得ることが出来ない。また、2000重量部を超えると、得られた連続気孔弾性体の機械的強度が極端に低下するために使用に耐えないものになる。
【0063】
混練の際の加熱温度は、熱可塑性エラストマー等の組成物原料が溶融する温度以上で、かつ変色や分解する温度未満であることが必要であり、80℃〜230℃が好ましい。組成物は、必要に応じて着色剤や酸化防止剤、防黴剤、抗菌剤、界面活性剤や各種の滑剤機能を発現する材料、難燃剤及びカーボンブラックなどの導電材等の機能性材料を含ませてもよい。
【0064】
組成物の混練には、ミキシングロール、ニーダー、スクリュー押出機などを使用する。加熱混練中は、組成物が可塑化して粘土に近い高粘度状態になるため、これを容易に攪拌できる装置を使用することが必要である。
【0065】
次いで、このようにして出来た混練組成物を脱泡、成形する。脱泡の目的は組成物中の気泡を除去することであり、成形の方法は特に制限されず、押出成形、圧縮成形、射出成形等、いずれの方法も可能である。より具体的には、例えば、ベント式押出機を使用して減圧脱泡を行なう方法が挙げられ、上記押出機に成形口金を接続して所望の形状に賦型する方法が好ましく例示される。
【0066】
このようにして押出された組成物は、熱時は粘土状の可塑性物であり、これを直接水中に押出すかコンベア等の支持体上に押出しながら押出組成物の溶融温度より低い温度になるよう冷風、水などで冷却することにより固化する。
【0067】
気孔生成剤を水抽出して除去する具体的な方法は、上記固化組成物を温水中に放置して気孔生成剤の大半を抽出した後、一般的な洗濯機などにこれを投入し、20〜80℃の水で15分〜90分ほど洗浄と数回の水交換を行なうことで、気孔生成剤を除去することが出来る。
【0068】
この成形体を110℃以下で乾燥する。具体的には、箱型乾燥機、タンブラー型乾燥機を使用する。このようにして連続気孔弾性体が得られる。
【実施例】
【0069】
次に、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、この実施例により限定されるものではない。
【0070】
先ず、各実施例及び比較例で得られた連続気孔弾性体の評価方法を示す。
評価方法
[見掛け密度]: JIS K 7222に従い測定した。
[引張り強度及び伸長率]: JIS K 6400−5に従い測定した。
[吸水性滴下法]:水滴を連続気孔弾性体に滴下し、水滴が吸い込まれ、水滴面が消滅するまでの時間を測定した。
[吸水性パイレックス法]: JIS L 1907(パイレック法に準じ、吸水高さの測定時間を60秒後とした)に従った。
【0071】
[IPA吸上高さ] イソプロピルアルコールに清拭部(スワブ)の端部(15mm長に切断した面)を液面に平行に素早く浸漬し、イソプロピルアルコール吸い上がり面をビデオ撮影し、5秒後の高さを測定した。液温は20±5℃であった。
[スピンドルオイル吸上高さ] スピンドルオイル(ISO VG10)に清拭部(スワブ)の端部(15mm長に切断した面)を液面に平行に素早く浸漬し、スピンドルオイル吸い上がり面をビデオ撮影し、5秒後の高さを測定した。液温は20±5℃であった。
[表面傷つけ性] コンパクトディスクを荷重10g/cmにて2回拭取り、拭取り面を肉眼および走査型電子顕微鏡にて判断した。
【0072】
[残留水分量]
下記の測定条件で、ローラー間を連続して通過するAl板(アルミニウム板)の数は50000枚/時間として運転し、運転開始後1時間以上経過した時、通過直後のAl板から100〜130枚を抜き取り、Al板表面に残留した水分重量を精密天秤で測定した。この水分重量は、抜き取ったAl板の枚数に対応するものであるので、一般化のためにAl板の表面積が1000cmになるよう換算して、単位がg/1000cmで表される残留水分量を求めた。
【0073】
ちなみに、この残留水分量と手で触れた時の触感との関係は次のとおりである
0.50g/1000cm以上: 明らかに濡れている。
0.20g/1000cm : 僅かに濡れている。
0.10g/1000cm以下: 濡れを感じない。
【0074】
・測定条件
ローラーの寸法 ほぼ外径42mm、内径19mmの筒状連続気孔弾性体の中孔に、両面テープを貼った外径22mmのシャフトを圧入し、筒状連続気孔弾性体を、外径40mmに研磨するとともに、長さ200mmに切断する。
ローラーの構成 上ローラーと下ローラー各2組(ローラー数は合計4本)
上下軸芯間隔 35mm
前後軸芯間隔 45mm
試験基材 Al板 外径24.9mm×1.2mm厚
ローラー通過前の試験基材表面への水分付着量 22g/1000cm
水温 20±2℃
ローラー回転数 100〜150rpm
【0075】
[最大径が40μm以上の気孔数の測定]
30倍ないし200倍の走査型電子顕微鏡写真にて、写真上での最大径が40μm以上の気孔数を数え、500μm×500μmの切断面当りの数に換算した。
【0076】
[貫通孔の数の測定]
300倍ないし600倍の走査型電子顕微鏡写真にて、写真上での最大径が40μm以上の気孔を10個任意に選び、7個以上の各気孔内に、各気孔の最大径の1/20以上で20μm以下の最大径を有する孔(貫通孔)が、写真上で、3個以上視認できる場合を○、それ以外の場合を×とした。
【0077】
実施例1
下記のポリウレタン、気孔生成剤を主原料として使用した。
【0078】
主原料
ミラクトラン E980 100重量部
(日本ポリウレタン工業(株)製ポリカーボネート系ポリウレタン)
無水硫酸ナトリウム 800重量部
(径45〜150μmの粒子が83重量%、径45μm未満の粒子が17重量%、嵩比重1.58 (JIS Z 8807に準拠))
【0079】
副原料
アデカスタブ AO−80 1重量部
(酸化防止剤 旭電化工業(株)製高分子量ヒンダードフェノール)
PEG1000 20重量部
(日本油脂(株)製 ポリエチレングリコール)
【0080】
これらの原料を、加圧ニーダーに投入し、回転数30rpm、170℃で15分間混練した。これを外径5mm、内径1mmのチューブ成形用口金を接続したスクリュー径40mmのベント式押出機から170℃で押出し、20℃の水シャワーにて冷却固化させた。次いで50℃の水中に24時間放置した。その後、洗濯機にて水洗、箱型乾燥機にて乾燥を行ない、連続気孔弾性体を得た。このようにして得られた連続気孔弾性体を15mm長に切断し、その中心部にある穴に、先端を円錐状に削った2.0mm径、長さ10cmのポリプロピレン製棒状物を差込み、スワブを得た。
【0081】
このようにして得られた連続気孔弾性体およびスワブの評価結果を表1に示した。またこの走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。この電子顕微鏡写真より明らかなように、得られた連続気孔弾性体は、3次元膜構造を有する連続気孔弾性体である。又、この電子顕微鏡写真より、前記の方法にて、最大径が40μm以上の気孔数、及び貫通孔の数の測定を行った。その結果も表1に示した。
【0082】
実施例2
下記のポリオレフィン、気孔生成剤を主原料として使用した。
【0083】
主原料
ミラストマー4010N 100重量部
(三井化学(株)製オレフィン系熱可塑性エラストマー)
無水硫酸ナトリウム 600重量部
(径45〜150μmの粒子が83重量%、径45μm未満の粒子が17重量%、嵩比重1.58)
【0084】
副原料
アデカスタブ AO−80 1重量部
(酸化防止剤 旭電化工業(株)製高分子量ヒンダードフェノール)
PEGlOOO 20重量部
(日本油脂(株)製 ポリエチレングリコール)
【0085】
これらの原料を、加圧ニーダーに投入し、混練以降の各工程を実施例1と同様に行い、連続気孔弾性体およびスワブを得た。このようにして得られた連続気孔弾性体およびスワブの評価結果を表1に示した。またこの走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0086】
比較例1
下記のポリウレタン、気孔生成剤を主原料として使用した。
【0087】
主原料
ミラクトラン E980 100重量部
(日本ポリウレタン工業(株)製ポリカーボネート系ポリウレタン)
無水硫酸ナトリウム 800重量部
(径120〜250μmの粒子が100重量%、径45μm未満の粒子が0重量%、嵩比重1.65)
副原料
アデカスタブ AO−80 1重量部
(酸化防止剤 旭電化工業(株)製高分子量ヒンダードフェノール)
PEGlOOO(日本油脂(株)製 ポリエチレングリコール) 20重量部
【0088】
これらの原料を、加圧ニーダーに投入し、混練以降の各工程を実施例1と同様に行い、連続気孔弾性体およびスワブを得た。このようにして得られた連続気孔弾性体およびスワブの評価結果を表1に示した。またこの走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0089】
実施例3
実施例1の原料組成物に、さらにアデカノールNK−4(旭電化工業(株)製牛脂グリセライドエチレンオキサイド付加物、HLB値9)の10重量部を追加して、混練以降の各工程を実施例1と同様に行ない、筒状連続気孔弾性体を得た。この場合の成形用口金は外径46mm、内径20mmのものを用いた。得られた筒状連続気孔弾性体の中心穴にシャフトを装着してローラーを形成し、その後、ローラー表面の平滑度、真円度を高めるために研磨加工を行い、残留水分量の測定を行った。その結果を、他の評価結果とともに表2に示した。
【0090】
実施例4
実施例1の原料組成物に、さらにSYグリスターML−750(阪本薬品工業(株)製デカグリセリンモノラウリン酸エステル、HLB値14.8)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0091】
実施例5
実施例1の原料組成物に、さらにノニオンS−40(日本油脂(株)製ポリエチレングリコールモノステアレート、HLB値18.2)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0092】
実施例6
実施例2の原料組成物に、さらにアデカノールNK−4(旭電化工業(株)製牛脂グリセライドエチレンオキサイド付加物、HLB値9)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0093】
実施例7
実施例2の原料組成物に、さらにSYグリスターML−750(阪本薬品工業(株)製デカグリセリンモノラウリン酸エステル、HLB値14.8)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0094】
実施例8
実施例2の原料組成物に、さらにノニオンS−40(日本油脂(株)製ポリエチレングリコールモノステアレート、HLB値18.2)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0095】
実施例9
SYグリスターML−750(阪本薬品工業(株)製デカグリセリンモノラウリン酸エステル、HLB値14.8)が1重量%含まれる40℃の水溶液に、成形用口金の外径を46mm、内径を20mmとする以外は実施例1と同様に行って得られた連続気孔弾性体を、浸漬し、10分間放置した後、取り出して遠心脱水を行なった。浸漬前の連続気孔弾性体の重量は45gであったが、遠心脱水後の重量は77gであった。これを箱型熱風乾操機で乾操した後、実施例3と同様の方法で研磨加工を行ない、残留水分量の測定を行った。評価結果を表2に示した。
【0096】
実施例10
SYグリスターML−750(阪本薬品工業(株)製デカグリセリンモノラウリン酸エステル、HLB値14.8)が1重量%含まれる40℃の水溶液に、成形用口金の外径を46mm、内径を20mmとする以外は実施例2と同様に行って得られた連続気孔弾性体を、浸漬し、10分間放置した後、取り出して遠心脱水を行なった。浸漬前の連続気孔弾性体の重量は38gであったが、遠心脱水後の重量は66gであった。これを箱型熱風乾燥機で乾燥した後、実施例3と同様の方法で研磨加工を行ない、残留水分量の測定を行った。評価結果を表2に示した。
【0097】
実施例11
実施例1の原料組成物に、さらにSYグリスターTS−500(阪本薬品工業(株)製ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル、HLB値7.0)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0098】
実施例12
実施例1の原料組成物に、さらにSYグリスターPS−310阪本薬品工業(株)製テトラグリセリンペンクステアリン酸エステル、HLB値2.6)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0099】
実施例13
実施例1の原料組成物に界面活性剤を追加しない以外は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0100】
実施例14
実施例2の原料組成物に、さらにSYグリスターTS−500(阪本薬品工業(株)製ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル、HLB値7.0)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0101】
実施例15
実施例2の原料組成物に、さらにSYグリスターPS−310阪本薬品工業(株)製テトラグリセリンペンクステアリン酸エステル、HLB値2.6)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0102】
実施例16
実施例2の原料組成物に界面活性剤を追加しない以外は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0103】
比較例2
比較例1の原料組成物に、さらにSYグリスターML−750(阪本薬品工業(株)製デカグリセリンモノラウリン酸エステル、HLB値14.8)の10重量部を追加して、その後は、実施例3と同様の作業、評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0104】
【表1】

【0105】
表1より明らかなように、実施例1および実施例2においては、請求項1に該当する連続気孔弾性体が得られたが、比較例1では得られなかった。又、実施例1および実施例2で得られた連続気孔弾性体は、表1のIPA吸上高さ、スピンドルオイル吸上高さに示されるように優れた吸液性を有するが、比較例1で得られた連続気孔弾性体は、吸液性に劣るものであった。
【0106】
試験例1
実施例1、実施例2および比較例1にて得たスワブを用いて、ガラス板上のIPA(イソプロピルアルコール)液滴を拭いた。IPA液滴は、実施例1および実施例2で得られたスワブでは、1〜2秒以内に、連続気孔弾性体中に吸い込まれ、ガラス板上のIPA液滴を完全に拭き取ることが出来たが、比較例1のスワブでは、5秒経過後も、連続気孔弾性体に吸い込まれず、ガラス板上のIPA液滴を完全に拭き取ることは出来なかった。
【0107】
【表2】

【0108】
表2より明らかなように、実施例1および実施例2で得られた連続気孔弾性体に、HLB値が8〜19の界面活性剤を混練または含浸法により添加した連続気孔弾性体は、優れた吸水性を示し、この連続気孔弾性体より形成されたローラーにより、残留水分量0.5g/1000cm以下が得られている。
【0109】
【表3】

【0110】
実施例13および実施例16の連続気孔弾性体は、各々実施例1、実施例2の連続気孔弾性体と同一物である。これらは、界面活性剤を含まないため、吸水性については劣るが、優れた吸液性(IPA吸上高さ、スピンドルオイル吸上高さ)を示す。
【0111】
実施例11、12、14及び15の連続気孔弾性体も、HLB値が8未満の界面活性剤を使用しているため、吸水性については劣るが、実施例13および実施例16と同様に、優れた吸液性(IPA吸上高さ、スピンドルオイル吸上高さ)を示す。
【0112】
比較例2の連続気孔弾性体にあっては、HLB値が14.8の界面活性剤を使用しているにもかかわらず、吸水性、吸液性とも劣る。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】連続気孔弾性体の気孔及び貫通孔の開口部の最大径を説明する説明図である。
【図2】実施例1で得られた連続気孔弾性体の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例2で得られた連続気孔弾性体の電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例1で得られた連続気孔弾性体の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーからなり、3次元膜構造を有する連続気孔弾性体であって、その500μm×500μmの切断面内に、その最大径が40μm以上の気孔を20〜100個含み、該気孔が膜により形成され、かつ該気孔の70%以上が、該気孔の最大径の1/20以上で20μm以下の開口部最大径を有する貫通孔を、それぞれの気孔内に3個以上含むことを特徴とする連続気孔弾性体。
【請求項2】
見掛け密度が、0.1〜0.45g/cmであることを特徴とする請求項1に記載の連続気孔弾性体。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマーが、ポリウレタンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の連続気孔弾性体
【請求項4】
前記ポリウレタンが、ポリオール成分として、ポリカーボネート系ポリオールを含むポリオール成分を用いて得られたことを特徴とする請求項3に記載の連続気孔弾性体。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーが、ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の連続気孔弾性体。
【請求項6】
HLB値が8以上である界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の連続気孔弾性体。
【請求項7】
熱可塑性エラストマー、及び、水に可溶な無機塩の粒子であり、かつ粒径45〜150μmの割合が4〜90重量%、粒径45μm未満の割合が5〜30重量%である気孔生成剤粒子を、主原料として含有する組成物を混練する工程、当該組成物を脱泡、成形する工程、得られた成形物を固化する工程、及び、固化された成形物から前記気孔生成剤を水抽出して除去しその後乾燥する工程を有することを特徴とする連続気孔弾性体の製造方法。
【請求項8】
前記組成物が、さらに、HLB値が8〜19の界面活性剤を含有することを特徴とする請求項7に記載の連続気孔弾性体の製造方法。
【請求項9】
固化された成形物から前記気孔生成剤を水抽出した後、該成形物にHLB値が8以上の界面活性剤を添加する工程をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の連続気孔弾性体の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする液切りローラー。
【請求項11】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする絞りローラー。
【請求項12】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の連続気孔弾性体を用いることを特徴とするスワブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−104436(P2006−104436A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2005−37689(P2005−37689)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2004年12月1日から3日 SEMIジャパン開催の「SEMICON Japan 2004」に出品
【出願人】(591286270)株式会社伏見製薬所 (50)
【Fターム(参考)】