説明

連続熱処理炉

【課題】電気や光等を導通路でガイドして検出を行うことにより、調整が容易で設計の自由度も高い連続熱処理炉を提供する。
【解決手段】駆動端側が同期して回転駆動される多数のローラ3上に被処理材を載置して加熱炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉において、各ローラ3の従動端部の周縁部に、回転側導電体6を介して接続された一対の回転側導電端子7,7が配置されると共に、各ローラ3の従動端部の周縁部外側に、一対で1組となる第1導電端子8,8と第2導電端子9,9が2組配置され、各ローラ3における各組の一方の第1導電端子8や第2導電端子9が、隣接するローラ3の対応する組の他方の第1導電端子8や第2導電端子9と第1電線10や第2電線11を介して接続された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のローラ上に被処理材を載置して加熱炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラット・ディスプレイ・パネル(FDP)に用いられるガラス基板をローラ上で搬送しながら熱処理を行うローラ・ハース・キルン(roller hearth kiln)は、図5に示すように、被処理材であるガラス基板1をセラミックス板等からなるセッター2上に載置して、多数のローラ3からなるコンベアにより加熱炉4内を搬送することによって熱処理を行うものである。多数のローラ3は、回転軸が互いに平行で、この回転軸と直交する方向に等間隔に直線状に並ぶように回転可能に配置され、軸方向の一方の駆動端側がチェーンや歯車のような伝動装置を介してそれぞれ回転駆動されることにより、各ローラ3の回転角が常に一致するように同期して回転するようになっている。このため、ローラ3に折損が発生すると、このローラ3の折損位置よりも従動端側に駆動端側からの駆動力が伝わらなくなり回転が停止するので、1本のローラ3でも折損事故が発生すると、セッター2上に載置したガラス基板1の搬送に支障が生じる。ただし、ローラ3の本数は実際には極めて多数本であるために、個々のローラ3の折損事故を常時目視で検出することは困難であり、各ローラ3ごとにマイクロスイッチ等を用いて回転状態を検出するのでは、多数のマイクロスイッチ等が必要となり、検出装置にコストがかかりすぎる。
【0003】
そこで、従来は、各ローラ3の従動端に位相を揃えて半円形の遮光体を取り付けると共に、これら複数のローラ3の従動端部の前後に上下1組ずつの投受光器を配置することにより、各ローラ3の折損事故を検出するようにした連続熱処理炉があった(例えば、特許文献1参照。)。この場合、全てのローラ3は、半円形の遮光体が位相を揃えて回転するので、これらの遮光体の半円形部分が下方位置に来たときにのみ、上方の組の投光器からの光が受光器に達し、半回転後にこれら半円形部分が上方位置に来たときにのみ、下方の組の投光器からの光が受光器に達する。このため、これら上下の受光器が交互に受光を繰り返していることを検知することにより、全てのローラ3が折損事故を起こすことなく回転していることを確認することができる。また、いずれかのローラ3が折損事故を起こし、このローラ3の遮光体の半円形部分が下方位置で停止すると、下方の組の投光器からの光が常時遮られ、この半円形部分が上方位置で停止すると、上方の組の投光器からの光が常時遮られる。さらに、この半円形部分がその他の右側や左側の位置で停止すると、上下2組の投光器からの光が共に常時遮られる。従って、上下いずれか又は上下双方の受光器が受光しなくなったことを検知することにより、いずれかのローラ3が折損事故を起こしたことを確実に検出することができる。
【0004】
ところが、上記従来の連続熱処理炉では、各ローラ3の従動端に取り付ける半円形の遮光体の位相を全て揃える必要があるので、この位相の調整作業が極めて面倒なものになるという問題があった。即ち、ローラ3の回転角を駆動端側で調整しようとすると、チェーンのスプロケットや歯車の歯の噛み合わせによって、微妙な角度調整ができず、従動端側で調整しようとすると、半円形の遮光体をローラ3に対して回転可能にし、かつ、任意の角度で固定できるような取り付け構造とする必要があるので、部品構成が複雑になる。
【0005】
また、上記従来の連続熱処理炉では、投光器から受光器に向けて空間を直線的に進む光を半円形の遮光体で遮断したり通過させることにより検出を行うので、各ローラ3が直線状に並んでいる必要があり、コンベアの搬送方向が直線方向に限定されるという問題もあった。しかも、投光器と受光器の配置にも自由度がなくなり、連続熱処理炉の設計上の障害になるおそれがあるという問題も生じていた。さらに、ローラ3の回転停止を検出した場合であっても、どのローラ3が折損事故を起こしたのかを調べる手段がないという問題もあった。
【特許文献1】特開平3−87592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気や光等を導通路でガイドして検出を行うことにより、調整が容易で設計の自由度も高い連続熱処理炉を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、駆動端側が同期して回転駆動される多数のローラ上に被処理材を載置して加熱炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉において、各ローラの従動端部の周縁部に、回転側導通路を介して接続された一対の回転側導通端子が配置されると共に、各ローラの従動端部の周縁部外側に、一対で1組となる固定側導通端子が2組以上配置され、各ローラにおける各組の一方の固定側導通端子が、隣接するローラの対応する組の他方の固定側導通端子と固定側導通路を介して接続されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、駆動端側が同期して回転駆動される多数のローラ上に被処理材を載置して加熱炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉において、各ローラの従動端部の周縁部に、回転側導電体を介して接続された一対の回転側導電端子が配置されると共に、各ローラの従動端部の周縁部外側に、一対で1組となる固定側導電端子が2組以上配置され、各ローラにおける各組の一方の固定側導電端子が、隣接するローラの対応する組の他方の固定側導電端子と固定側導電体を介して接続されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、駆動端側が同期して回転駆動される多数のローラ上に被処理材を載置して加熱炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉において、各ローラの従動端部の周縁部に、光が通過する回転側光路を介して接続された一対の回転側導光端子が配置されると共に、各ローラの従動端部の周縁部外側に、光の入出端として一対で1組となる固定側導光端子が2組以上配置され、各ローラにおける各組の一方の固定側導光端子が、隣接するローラの対応する組の他方の固定側導光端子と、光が通過する固定側光路を介して接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、各ローラの従動端部に互いに導通する一対の回転側導通端子が設けられ、2組以上の固定側導通端子によって、この一対の回転側導通端子間を介した導通状態をローラの回転に伴い交互に検出することができるので、いずれかのローラが折損事故を起こして回転が停止したことを確実に検出することができるようになる。即ち、各組の一対の固定側導通端子は、ローラの1回転の間に1回以上、一対の回転側導通端子間を介して導通するように配置すると共に、各ローラでこの導通のタイミングが合致するように調整すれば、全てのローラが正常に回転を続けている限り、1回転ごと1回以上ずつ、全てのローラにおける各組の一対の固定側導通端子が同時に導通することになる。しかし、いずれか1以上のローラが回転を停止すると、このローラが固定側導通端子のいずれの組も導通していない状態で停止した場合には、1回転の全期間にわたって全ての組の固定側導通端子が同時に導通することがなくなり、このローラが固定側導通端子のいずれかの組だけが導通した状態で停止した場合には、この組を除く他の全ての組の固定側導通端子が1回転の全期間にわたって同時に導通することがなくなる。従って、全てのローラの一対の固定側導通端子が1回転のいずれかの期間に同時に導通することを各組ごとに検出しておけば、いずれかのローラが折損事故を起こして回転が停止したことを確実に検出することができるようになる。
【0011】
また、各組の一対の固定側導通端子は、直線状とは限らない固定側導通路を介してローラ間の接続が行われるので、これらのローラを直線状に限らず、必要に応じて任意のレイアウトで配置することができるようになる。しかも、この固定側導通端子の配置を調整することで導通のタイミングの同期を取ることができるので、各ローラごとの位相の調整も容易に行うことができるようになる。さらに、固定側導通路を任意にレイアウトすることができるので、設計の自由度も向上させることができる。さらに、固定側導通路を切り替え可能とする等の方法により、各ローラごとの導通状態を個別に検出して、折損事故を起こしたローラを特定することも容易に可能となる。
【0012】
なお、回転側導通路や固定側導通路を導通する媒体としては、電気や光が一般的であるが、例えば光以外の電磁波や磁束等を用いることもできる。
【0013】
請求項2の発明によれば、各ローラの従動端部に互いに導通された一対の回転側導電端子が設けられ、2組以上の固定側導電端子によって、この一対の回転側導電端子間を介した導通状態をローラの回転に伴い交互に検出することができるので、いずれかのローラが折損事故を起こして回転が停止したことを確実に検出することができるようになる。即ち、各組の一対の固定側導電端子は、ローラの1回転の間に1回以上、一対の回転側導電端子間を介して導通するように配置すると共に、各ローラでこの導通のタイミングが合致するように調整すれば、全てのローラが正常に回転を続けている限り、1回転ごとに1回以上ずつ、全てのローラにおける各組の一対の固定側導電端子が同時に導通することになる。しかし、いずれか1以上のローラが回転を停止すると、このローラが固定側導電端子のいずれの組も導通していない状態で停止した場合には、1回転の全期間にわたって全ての組の固定側導電端子が同時に導通することがなくなり、このローラが固定側導電端子のいずれかの組だけが導通した状態で停止した場合には、この組を除く他の全ての組の固定側導電端子が1回転の全期間にわたって同時に導通することがなくなる。従って、全てのローラの一対の固定側導電端子が1回転のいずれかの期間に同時に導通することを各組ごとに検出しておけば、いずれかのローラが折損事故を起こして回転が停止したことを確実に検出することができるようになる。
【0014】
また、各組の一対の固定側導電端子は、電線等のような直線状とは限らない固定側導電体を介してローラ間の接続が行われるので、これらのローラを直線状に限らず、必要に応じて任意のレイアウトで配置することができるようになる。しかも、この固定側導電端子の配置を調整することで導電のタイミングの同期を取ることができるので、各ローラごとの位相の調整も容易に行うことができるようになる。さらに、固定側導電体による配線を任意にレイアウトすることができるので、設計の自由度も向上させることができる。さらに、スイッチ等を用いて固定側導電体を切り替え可能とする等の方法により、各ローラごとの導通状態を個別に検出して、折損事故を起こしたローラを特定することも容易に可能となる。
【0015】
なお、固定側導電端子と回転側導電端子は、ローラの回転に伴って互いに直接接触して直流電流が持続的に流れる場合に限らず、接近することにより静電的に結合されたり磁気的又は電磁的に結合されることにより導通する場合も含む。
【0016】
請求項3の発明によれば、各ローラの従動端部に光が通過する一対の回転側導光端子が設けられ、2組以上の固定側導光端子によって、この一対の回転側導光端子間を介した光の通過状態をローラの回転に伴い交互に検出することができるので、いずれかのローラが折損事故を起こして回転が停止したことを確実に検出することができるようになる。即ち、各組の一対の固定側導光端子は、ローラの1回転の間に1回以上、一対の回転側導光端子間を介して光が通過するように配置すると共に、各ローラでこの光が通過するタイミングが合致するように調整すれば、全てのローラが正常に回転を続けている限り、1回転ごとに1回以上ずつ、全てのローラにおける各組の一対の固定側導光端子が同時に光を通過することになる。しかし、いずれか1以上のローラが回転を停止すると、このローラが固定側導光端子のいずれの組も光を通過させない状態で停止した場合には、1回転の全期間にわたって全ての組の固定側導光端子が同時に光を通過することがなくなり、このローラが固定側導光端子のいずれかの組だけが光を通過させる状態で停止した場合には、この組を除く他の全ての組の固定側導光端子が1回転の全期間にわたって同時に光を通過することがなくなる。従って、全てのローラの一対の固定側導光端子が1回転のいずれかの期間に同時に光を通過することを各組ごとに検出しておけば、いずれかのローラが折損事故を起こして回転が停止したことを確実に検出することができるようになる。
【0017】
また、各組の一対の固定側導光端子は、直線状とは限らない固定側光路を介してローラ間の接続が行われるので、これらのローラを直線状に限らず、必要に応じて任意のレイアウトで配置することができるようになる。しかも、この固定側導光端子の配置を調整することで光が通過するタイミングの同期を取ることができるので、各ローラごとの位相の調整も容易に行うことができるようになる。さらに、固定側光路を任意にレイアウトすることができるので、設計の自由度も向上させることができる。さらに、固定側光路を切り替え可能とする等の方法により、各ローラごとの光の通過状態を個別に検出して、折損事故を起こしたローラを特定することも容易に可能となる。
【0018】
なお、回転側光路や固定側光路は、空間だけでなく光ファイバ等で構成することもでき、鏡やプリズム、レンズ等の光学系を用いることもできる。例えば、鏡やプリズムを用いれば、光路を屈曲させることができ、光ファイバを用いれば、電線のように任意に経路を通すことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。なお、これらの図においても、図5に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
【0020】
本実施形態は、従来例と同様のローラ・ハース・キルンで用いるコンベアのローラ3について説明する。これらのローラ3は、いずれもセラミックス・ローラからなり、それぞれ回転自在に並べて配置されている。そして、これらのローラ3は、図2(b)の右側の駆動端にスプロケット5が固着されて、ここでチェーン伝動装置により各ローラ3が同期して回転駆動されるようになっている。また、これらの各ローラ3は、図2(b)の左側が従動端となる。なお、ローラ・ハース・キルンで用いられる全てのローラ3が同期して回転駆動される必要はなく、一定区間ごとの複数のローラ3がそれぞれ同期して回転駆動されるようになっていてもよい。
【0021】
上記ローラ3の従動端部には、図2に示すように、回転側導電体6と回転側導電端子7,7が設けられている。回転側導電体6は、絶縁体からなるローラ3の従動端面に直径方向に形成された溝に埋め込まれた導電性の金属棒である。また、回転側導電端子7,7は、この回転側導電体6の両端面がローラ3の従動端部の外周面に露出する面である。なお、ここでは、回転側導電端子7,7が回転側導電体6の金属棒の両端面によって構成される場合を示したが、例えば耐摩耗性を有し接触抵抗の低い接点材料からなる金属板をローラ3の従動端部の外周部に埋め込んだものを回転側導電端子(回転側導通端子)とすることもできる。そして、この場合には、回転側導電体6の金属棒の両端部をこれら回転側導電端子の金属板に接続する。また、この回転側導電体6は、導電性を有する回転側導通路であればよいので、回転側導電端子間を接続する電線やプリント配線パターン等によって構成することもできる。
【0022】
上記ローラ3の従動部の外周面の外側には、2組の固定側導電端子(固定側導通端子)、即ち一対の第1導電端子8,8と一対の第2導電端子9,9とが配置されている。一対の第1導電端子8,8は、ローラ3の従動部の外周面における水平方向の両外側に配置された導電性の金属材料や炭素材料等からなる接触端子であり、一対の第2導電端子9,9も、ローラ3の従動部の外周面における垂直方向の両外側に配置された導電性の金属材料や炭素材料等からなる接触端子である。これらの第1導電端子8,8と第2導電端子9,9は、それぞれ別の図示しないばね部材やそれ自身の弾性によってローラ3の回転中心に向けて押し出されると共に、図示しないストッパによって、このローラ3の外周面に接触するよりは少し手前側の位置で移動が制限されるようになっているので、これにより、実際にはこのローラ3の外周面から僅かに突出した回転側導電端子7,7の接触面のみを押圧して接触するようになっている。従って、ローラ3がスプロケット5を介して回転駆動されると、回転側導電体6が図2(a)に示すように水平方向を向いたときに、第1導電端子8,8が回転側導電端子7,7に接触し、この回転側導電体6を介して導通することになり、ローラ3が90°回転して回転側導電体6が垂直方向を向いたときに、第2導電端子9,9が回転側導電端子7,7に接触し、この回転側導電体6を介して導通することになる。
【0023】
上記各ローラ3の従動部の外周面の外側に配置された1組目の第1導電端子8,8は、図1に示すように、隣接するローラ3の第1導電端子8,8と第1電線10を介して直列に接続され、2組目の第2導電端子9,9は、隣接するローラ3の第2導電端子9,9と第2電線11を介して直列に接続されている。即ち、例えば図示真ん中のローラ3における1組目の左側の第1導電端子8は、左側に隣接するローラ3の右側の第1導電端子8と第1電線10を介して接続され、右側の第1導電端子8は、右側に隣接するローラ3の左側の第1導電端子8と別の第1電線10を介して接続されている。また、2組目の上側の第2導電端子9は、左側に隣接するローラ3の下側の第2導電端子9と第2電線11を介して接続され、下側の第2導電端子9は、右側に隣接するローラ3の上側の第2導電端子9と別の第2電線11を介して接続されている。
【0024】
上記多数のローラ3は、通常は回転側導電体6が全て同じ向きを向くようにして、スプロケット5をチェーン伝動装置に取り付けられる。ただし、ローラ3の従動端部における回転側導電体6や回転側導電端子7,7が設けられた部分を別部品とし、この部品をローラ3の従動端に取り付ける際に回転側導電体6が全て同じ向きを向くように調整してもよい。また、各ローラ3の回転側導電体6が任意の方向を向いていても、第1導電端子8,8と第2導電端子9,9を配置する際の回転方向の位置を調整して、いずれかのローラ3の回転側導電端子7,7が例えば第1導電端子8,8と接触するときに、他の全てのローラ3も回転側導電端子7,7が第1導電端子8,8と接触するようにしてもよい。ただし、以下の説明では、全てのローラ3の回転側導電体6の向きが揃っているものとする。
【0025】
上記構成の複数のローラ3がスプロケット5を介して同期して回転駆動され、まず、図1(a)に示すように、各ローラ3の回転側導電体6が垂直方向を向くと、全てのローラ3の回転側導電端子7,7が第2導電端子9,9と接触し、これらの第2導電端子9,9を直列に接続した第2電線11のみが同時に導通する。次に、図1(b)に示すように、各ローラ3が45°回転して回転側導電体6が斜め方向を向くと、全てのローラ3の回転側導電端子7,7が第1導電端子8,8と第2導電端子9,9のいずれにも接触せず、これらの第1導電端子8,8や第2導電端子9,9を直列に接続した第1電線10と第2電線11が共に遮断される。また、図1(c)に示すように、各ローラ3がさらに45°回転して回転側導電体6が水平方向を向くと、全てのローラ3の回転側導電端子7,7が第1導電端子8,8と接触し、これらの第1導電端子8,8を直列に接続した第1電線10のみが同時に導通する。そして、各ローラ3の回転に伴って、以降も同様の動作を繰り返す。
【0026】
上記全てのローラ3の第1導電端子8,8を直列接続した第1電線10と第2導電端子9,9を直列接続した第2電線11は、導通状態を常時監視する。この導通状態の監視は、例えば第1電線10の場合、両端のローラ3の第1導電端子8に接続された第1電線10,10間に電圧を印加しておき、これらの間に電流が流れたときに導通したとして検出すればよい。従って、これら全てのローラ3が正常に回転している場合には、図3(a)に示すように、各ローラ3の半回転ごとに第1電線10が1回ずつ導通状態になり、第2電線11はこれよりも1/4回転遅れて導通状態となる。しかしながら、いずれかのローラ3が折損事故により従動端部が回転しなくなると、通常はそれ以降は、第1電線10も第2電線11も遮断されたままとなる。また、ローラ3の従動端部の回転側導電体6が偶然垂直方向を向いた状態で停止した場合には、図3(b)に示すように、第2電線11は各ローラ3の半回転ごとに1回ずつ導通状態になるが、第1電線10は遮断されたままとなる。さらに、ローラ3の従動端部の回転側導電体6が偶然水平方向を向いた状態で停止した場合には、第1電線10は各ローラ3の半回転ごとに1回ずつ導通状態になるが、第2電線11は遮断されたままとなる。
【0027】
この結果、2組の第1導電端子8,8と第2導電端子9,9の導通状態を監視しておけば、いずれかのローラ3の折損事故を確実に検出することができるようになる。しかも、各ローラ3の第1導電端子8,8や第2導電端子9,9は、第1電線10や第2電線11によって接続されるので、例えばローラ3間に遮蔽物があっても支障が生じるようなことがなくなり、設計の自由度が向上するだけでなく、これらのローラ3を直線状に限らず、もし必要があるならば任意のレイアウトで配置することもできるようになる。さらに、各ローラ3は、回転側導電体6の向きを揃える代わりに、第1導電端子8,8や第2導電端子9,9の回転方向の位置を調整することにより位相を揃えることもできるので、この位相の調整も容易に行うことができるようになる。
【0028】
なお、上記実施形態では、第1導電端子8,8や第2導電端子9,9がローラ3の従動端部の回転側導電端子7,7に直接接触して導通する場合を示したが、第1導電端子8,8や第2導電端子9,9が回転側導電端子7,7に接近することにより、これらの間が静電的に結合されたり磁気的又は電磁的に結合されることにより導通するようにしてもよい。例えば、第1導電端子8,8や第2導電端子9,9が回転側導電端子7,7に接近すれば、これらの間の静電容量が増加してコンデンサが介在したことになるので、交流電圧を印加しておけば電流が流れることになり、これによって導通を検出することができるようになる。
【0029】
また、上記実施形態では、各ローラ3に第1導電端子8,8と第2導電端子9,9の2組の固定側導電端子(固定側導通端子)を設ける場合を示したが、3組以上の固定側導電端子を設けることもできる。さらに、上記実施形態では、これらの第1導電端子8,8と第2導電端子9,9や回転側導電端子7,7がローラ3の回転軸を中心とする点対称の位置に配置される場合を示したが、対称とはならない位置に配置することも可能である。ただし、この場合には、通常はローラ3の1回転ごとに1回ずつ導通状態となる。
【0030】
また、上記実施形態では、各ローラ3間で第1導電端子8,8や第2導電端子9,9の接続を行うために第1電線10や第2電線11を用いたが、電線以外の金属棒やプリント配線パターン等の固定側導電体(固定側導通路)を用いることもできる。さらに、スイッチ等を用いてこの固定側導電体を切り替え可能とすることにより、各ローラ3ごとの導通状態を個別に検出して、折損事故を起こしたローラ3を特定することも容易に可能となる。
【0031】
また、上記実施形態では、電気を用いて導通状態を検出する場合を示したが、図4に示すように、光の通過により導通を検出することも可能である。即ち、各ローラ3の従動端面には、直径方向の溝状のスリット12が形成され、このスリット12が回転側光路(回転側導通路)になると共に、このスリット12の両端が回転側導光端子(回転側導通端子)となる。そして、これらのローラ3の従動端部の外周面の外側の上下に鏡13,13を配置して、これを1組目の固定側導光端子(固定側導通端子)としている。しかも、複数のローラ3の並びの両端には、2組の投受光器を配置する。このような構成により、1組目の投光器から発した光は、各ローラ3のスリット12が垂直方向を向いたときにのみ、鏡13,13で反射されながらこれらのスリット12を通過して受光器に達し、2組目の投光器から発した光は、各ローラ3のスリット12が水平方向を向いたときにのみ、これらのスリット12を直接通過して受光器に達する。この際、水平方向を向いたスリット12の両端の外側の空間が2組目の固定側導光端子(固定側導通端子)となる。従って、この場合にも、ローラ3の半回転ごとに2組の受光器が1回ずつ光を受光することになり、いずれかのローラ3の従動端部が折損事故により回転を停止すると、少なくともいずれかの受光器が受光を行わなくなるので、この折損事故を確実に検出することができるようになる。ただし、ここでは、スリット12の空間や鏡13の間の空間を回転側光路(回転側導通路)や固定側光路(固定側導通路)とする場合を示したが、透明な樹脂やガラス、光ファイバ等によって光路を形成することもでき、鏡13以外にも、プリズムやレンズ等の光学系を用いることもできる。さらに、このような光学系を用いて光路を切り替え可能とすることにより、各ローラ3ごとの光の通過状態を個別に検出して、折損事故を起こしたローラ3を特定することも容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、ローラの回転に伴う固定側導電端子間の導通状態の変化を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであって、ローラの構成を示す側面図(a)と部分省略正面図(b)である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであって、ローラが正常に回転している場合(a)と折損事故が発生した場合(b)の第1電線と第2電線の導通状態を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の一実施形態を示すものであって、光を用いて導通状態を検出する例を示す側面図である。
【図5】従来例を示すものであって、ローラ・ハース・キルンの部分省略縦断面側面図である。
【符号の説明】
【0033】
3 ローラ
6 回転側導電体
7 回転側導電端子
8 第1導電端子
9 第2導電端子
10 第1電線
11 第2電線
12 スリット
13 鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動端側が同期して回転駆動される多数のローラ上に被処理材を載置して加熱炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉において、
各ローラの従動端部の周縁部に、回転側導通路を介して接続された一対の回転側導通端子が配置されると共に、
各ローラの従動端部の周縁部外側に、一対で1組となる固定側導通端子が2組以上配置され、
各ローラにおける各組の一方の固定側導通端子が、隣接するローラの対応する組の他方の固定側導通端子と固定側導通路を介して接続されたことを特徴とする連続熱処理炉。
【請求項2】
駆動端側が同期して回転駆動される多数のローラ上に被処理材を載置して加熱炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉において、
各ローラの従動端部の周縁部に、回転側導電体を介して接続された一対の回転側導電端子が配置されると共に、
各ローラの従動端部の周縁部外側に、一対で1組となる固定側導電端子が2組以上配置され、
各ローラにおける各組の一方の固定側導電端子が、隣接するローラの対応する組の他方の固定側導電端子と固定側導電体を介して接続されたことを特徴とする連続熱処理炉。
【請求項3】
駆動端側が同期して回転駆動される多数のローラ上に被処理材を載置して加熱炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉において、
各ローラの従動端部の周縁部に、光が通過する回転側光路を介して接続された一対の回転側導光端子が配置されると共に、
各ローラの従動端部の周縁部外側に、光の入出端として一対で1組となる固定側導光端子が2組以上配置され、
各ローラにおける各組の一方の固定側導光端子が、隣接するローラの対応する組の他方の固定側導光端子と、光が通過する固定側光路を介して接続されたことを特徴とする連続熱処理炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−84134(P2006−84134A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270122(P2004−270122)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】